特許第6218063号(P6218063)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6218063
(24)【登録日】2017年10月6日
(45)【発行日】2017年10月25日
(54)【発明の名称】抹茶入り飲料
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/52 20060101AFI20171016BHJP
   A23L 2/02 20060101ALI20171016BHJP
   A23F 3/16 20060101ALI20171016BHJP
【FI】
   A23L2/00 E
   A23L2/02 Z
   A23F3/16
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-101694(P2013-101694)
(22)【出願日】2013年5月13日
(65)【公開番号】特開2014-221018(P2014-221018A)
(43)【公開日】2014年11月27日
【審査請求日】2015年11月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100163784
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 健志
(72)【発明者】
【氏名】浅野 絵里香
(72)【発明者】
【氏名】出石 聡子
【審査官】 藤澤 雅樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−094387(JP,A)
【文献】 特開平10−234301(JP,A)
【文献】 特開昭63−042649(JP,A)
【文献】 特開2003−259805(JP,A)
【文献】 特開2012−130314(JP,A)
【文献】 特開2005−348676(JP,A)
【文献】 特開2009−082086(JP,A)
【文献】 特開2013−055906(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/035860(WO,A1)
【文献】 特開2001−029053(JP,A)
【文献】 特開2001−061412(JP,A)
【文献】 特開2007−274933(JP,A)
【文献】 特開2002−165560(JP,A)
【文献】 調理科学 (1969) Vol.2, No.2, pp.7-10 (73-77)
【文献】 「「増粘多糖類」って何? Q&A」、食品のQ&A、日本生活協同組合連合会、2012年12月25日、[2016年8月26日検索]、インターネット<URL: http://jccu.coop/food-safety/qa/qa01_05.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00
A23F 3/00
CAplus/FSTA/FROSTI/WPIDS/WPIX(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抹茶と、緑茶葉抽出物及び炒り米抽出物と、甘味成分とを含み、飲料100mLあたりの不溶性固形分が0.3g〜0.9gであり、乳固形分が飲料100mLあたり0.5g以下である、加熱殺菌処理された抹茶入り飲料であって、
20℃における粘度が1.5〜6.5mPa・sである、前記抹茶入り飲料。
【請求項2】
さらに、増粘多糖類を含む、請求項1に記載の抹茶入り飲料。
【請求項3】
甘味成分として含蜜糖を含む、請求項1又は2に記載の抹茶入り飲料。
【請求項4】
甘味成分が糖質甘味料からなる、請求項1〜3のいずれか一項記載の抹茶入り飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、十分な量の抹茶を含有する、抹茶入り飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
玉露茶、煎茶、番茶などの緑茶葉は、生の茶葉を蒸すか炒って加熱し、揉みながら乾燥して製した荒茶を選別して製造されており、これを温水により抽出して緑茶飲料としている。一方、抹茶は、遮光栽培により得られた生茶葉を蒸した後、直ちに(蒸し葉を揉まないで)乾燥してから石臼で微粉末とし、そのまま湯に懸濁させて飲料に供されている。
【0003】
近年、茶葉の機能性に対する健康志向の高まりから、茶葉成分を全て摂取できるという点で抹茶が注目されており、抹茶入り飲料の市場が拡大している。しかし、加熱殺菌を施すことで常温流通を可能にした抹茶入り飲料において、抹茶本来の良好な香りが加熱殺菌によって大幅に減少してしまい、抹茶本来の深いコクや後味の心地良い適度な苦味よりも、渋味、苦味や収斂味が顕著に知覚されて飲みにくくなるという課題があった。また、飲料に多量の抹茶を配合した場合、水不溶性固形分に起因する異物感やざらつきが残り、風味や機能性を生かすほどの含量を使用することは困難であるという課題もあった。
【0004】
そこで、抹茶に甘味成分を加えて飲み易くした抹茶飲料が提案されている(例えば、特許文献1(256頁左上))。また、抹茶に牛乳や豆乳などの乳成分及び甘味成分を加え、ミルクのコクにより味をまろやかにした抹茶飲料も開発されている(例えば、特許文献2[0032])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭57−194749号公報
【特許文献2】特開2002−228953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
牛乳や豆乳などの乳成分を加えた茶飲料は、乳成分のコクが知覚されるため、抹茶本来の味や香り、色味を愉しむには適さない飲料である。
【0007】
本発明の課題は、加熱殺菌処理して得られる常温流通可能な容器詰め飲料であって、十分な量の抹茶を含有し、かつ飲み易い抹茶入り飲料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
多量に水不溶性固形分を含むことによりその風味や機能性を生かすことと飲み易さとは相反するものであり、両者を満足する飲料の提供は困難であると信じられてきた。本発明者らは、果敢にも上記課題を解決するために、実質的に乳成分を含まずに、十分な量の抹茶を含有する飲料について鋭意検討を行った結果、抹茶を緑茶抽出物及び/又は穀類抽出物に懸濁し、甘味成分を配合して調製し、さらに飲料中の不溶性固形分量を一定の範囲となるように調整することにより、抹茶本来の深いコク(味わい)と飲み易さを実現した抹茶入り飲料となること、加熱殺菌処理して得られる抹茶入り飲料の飲用後の残り香や後味を改善できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、これに限定されるものではないが、本発明は以下を包含する。
(1)抹茶と、緑茶葉抽出物及び/又は穀類抽出物と、甘味成分とを含み、飲料100mLあたりの不溶性固形分が0.3g〜0.9gである、加熱殺菌処理して得られる実質的に乳成分を含まない抹茶入り飲料。
(2)20℃における粘度が1.5〜6.5mPa・sである、(1)に記載の抹茶入り飲料。
(3)さらに、増粘多糖類を含む、(1)又は(2)に記載の抹茶入り飲料。
(4)甘味成分として含蜜糖を含む、(1)〜(3)のいずれかに記載の抹茶入り飲料。
(5)甘味成分が糖質甘味料からなる、(1)〜(4)のいずれかに記載の抹茶入り飲料。
【発明の効果】
【0010】
十分な量の抹茶を含有する本発明の抹茶入り飲料は、乳成分や香料、色素等を添加しなくても抹茶本来の深い味わいや香り、色味を愉しむことができ、かつ飲み易さを有する飲料である。すなわち、本発明により、香料無添加、色素類無添加、乳化剤無添加のうちの一以上を満たす抹茶入り飲料の提供が可能となる。これらの飲料は、より自然な味わいを有する飲料として、かつ抹茶の機能性を期待できる飲料として、日常摂取するのに有用な飲料であり、加熱殺菌処理して得られる抹茶入り飲料の残り香や後味を不快と感じる人のみならず、抹茶飲料の愛飲者も好む、爽快な後味を有する抹茶入り飲料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の抹茶入り飲料は、(a)抹茶と、(b)緑茶葉抽出物及び/又は穀類抽出物と、(c)甘味成分と、必要に応じて(d) 増粘多糖類とを含み、実質的に乳成分を含まない飲料である。ここで、本発明でいう「実質的に乳成分を含まない飲料」とは、乳固形分が飲料100mLあたり0.5g以下、好ましくは0.2g以下の飲料をいう。特に好ましい態様は、上記(a)〜(d)成分に由来するものではないタンパク質や脂質(いわゆる外因性のタンパク質や脂質)を含まない飲料である。以下、これらの成分につき、詳述する。
【0012】
(a)抹茶
本発明でいう抹茶とは、茶葉の微粉末をいう。すなわち、遮光栽培により得られた生茶葉を蒸した後、直ちに乾燥して得られる碾茶を、石臼挽き、機械挽き、凍結粉砕等の粉砕手段によって微粉砕したもの(いわゆる抹茶)の他、焙じ茶葉の粉砕物も、便宜上含む。ここで、焙じ茶葉の粉砕物とは、焙じ番茶、京番茶、雁ヶ音焙じ茶、焙じ煎茶等のいわゆる焙じ茶を、前記の粉砕手段によって微粉砕したものをいう。
【0013】
本発明の抹茶入り飲料は、抹茶本来の味や香りを愉しむ観点から、碾茶の粉砕物を必須として含有するが、前記の焙じ茶葉の粉砕物を併用すると、加熱殺菌による抹茶(碾茶の粉砕物)の良好な香りの減少を抑制することができることから、碾茶の粉砕物及び焙じ茶葉の粉砕物を含有する飲料は、本発明の好ましい態様の一例である。焙じ茶葉の粉砕物としては、色差計(例えば、色差計Spectro Color Meter SE2000(日本電色工業(株))で測定した茶葉の明度(L値)が40〜52程度となるように焙煎された焙じ茶葉の粉砕物を用いることが好ましい。焙じ茶葉の粉砕物の配合量は、抹茶全量に対して、1〜30重量%程度、好ましくは1〜10重量%程度である。焙じ茶の粉砕物が抹茶全量に対して30重量%を超える場合には、碾茶の粉砕物の有する青々しい色味が損なわれることがある。
【0014】
これらの抹茶は、舌触りや喉越しがよく、飲み易いという観点から、平均粒子径が100μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは20μm以下となるように茶葉を微粉末化する。
【0015】
本発明の抹茶入り飲料では、抹茶の有する本来の味や香りを堪能でき、その機能性が期待できる十分な量を配合することを特徴とする。具体的には、飲料100mLあたりの水不溶性固形分が0.3〜0.9g、好ましくは0.4〜0.9g、より好ましくは0.4〜0.8g程度となるように、抹茶を配合する。ここで、本発明における水不溶性固形分とは、後述する実施例に記載のように、飲料中の不溶性固形分を濾紙上に集めて乾燥して得られる固形分(重量)をいう。飲料100mLあたりの水不溶性固形分が0.3g未満であると、抹茶のコクや適度な苦味等を感じにくく、飲料100mLあたりの水不溶性固形分が0.9gを超えると、本発明の効果が損なわれ、飲用時にザラツキを感じたり、加熱殺菌処理して得られる抹茶入り飲料特有の飲用後の残り香や後味の不快感を感じることがある。
【0016】
(b)緑茶葉抽出物及び/又は穀類抽出物
本発明の抹茶入り飲料では、緑茶葉抽出物及び/又は穀類抽出物に上記抹茶を懸濁させることを特徴とする。ここで、緑茶葉抽出物とは、碾茶以外の緑茶葉の抽出物を意味し、具体的には、煎茶、番茶、茎茶、焙じ茶、玉露、かぶせ茶、甜茶等の蒸し製の不発酵茶葉の抽出物をいう。また、穀類抽出物とは、飲料として使用できる穀類の抽出物を意味し、具体的には、米(炒り米、玄米など)、麦(大麦、はだか麦など)、ハト麦、そば(日本ソバ、韃靼種などのそば子実の穀粒)等の抽出物をいう。これら緑茶葉抽出物や穀類抽出物は、1種単独で又は複数種類を混合して用いることができる。特に、穀類抽出物として炒り米の抽出物を用いるのが香味の観点から好ましく、煎茶等の緑茶抽出物と炒り米の抽出物を併用して用いるのが特に好ましい。
【0017】
(c)甘味成分
本発明の飲料に配合する甘味成分とは、甘味を呈する成分のことをいう。具体的には、黒砂糖、白下糖、カソナード(赤砂糖)、和三盆、ソルガム糖、メープルシュガーなどの含蜜糖、ザラメ糖(白双糖、中双糖、グラニュー糖など)、車糖(上白糖、三温糖など)、加工糖(角砂糖、氷砂糖、粉砂糖、顆粒糖など)、液糖などの精製糖、単糖類(ぶどう糖、果糖、木糖、ソルボース、ガラクトース、異性化糖など)、二糖類(蔗糖 、麦芽糖、乳糖、異性化乳糖、パラチノースなど)、オリゴ糖類(フラクトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、カップリングシュガーなど)、糖アルコール類(エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、マルチトール、イソマルチトール、ラクチトール、マルトトリイトール、イソマルトトリイトール、パニトール、オリゴ糖アルコール、粉末還元麦芽糖水飴)などのような糖質甘味料の他、天然非糖質甘味料(ステビア抽出物、カンゾウ抽出物等)や合成非糖質甘味料(アスパルテーム、アセスルファムK等)のような高甘味度甘味料などの甘味料が挙げられるが、非糖質甘味料は、加熱殺菌処理して得られる抹茶入り飲料の抹茶本来の味や香りを低減させることがあるので、本発明の飲料には配合しない方がよい。すなわち、甘味成分が糖質甘味料である態様が、本発明の飲料の好適な態様の一つである。中でも糖アルコールを除く糖質甘味料からなる甘味成分が好ましい。
【0018】
抹茶(特に碾茶粉末)は、その風味(味や香り)や色調がデリケートであり、乳成分をほとんど含まない抹茶入り飲料では、加熱殺菌や保存等の工程において、急速にその風味や色調を失ってしまうという問題がある。本発明者らの検討によると、この抹茶入り飲料に含蜜糖を配合すると、抹茶の風味や色調の低減を抑制できる。含蜜糖は、糖密を分離していないため原料本来の風味が残っているものであるが、この原料由来の風味や色素が抹茶の加工工程による品質低下を抑制できると推測される。含蜜糖の中でも黒砂糖を用いることが好ましい。黒砂糖は、固体の状態であってもよいし、液体(いわゆる黒蜜)の状態であってもよい。黒砂糖に含まれるミネラル(例えばカルシウム等)、特有の糖類(例えばプロイドフルクトース)、特有の色素(例えばメトキシフェニルグルコース化合物)の一以上の成分が、抹茶の加工工程による品質低下の抑制に有効に作用する。黒砂糖を用いる場合、飲料全体に対して、0.1〜2.0重量%程度、好ましくは0.5〜1.0重量%程度配合するのが好ましい。上記範囲外では、抹茶の加工工程による品質低下の抑制作用が得られないことがある。
【0019】
(d)増粘多糖類
本発明の飲料は、粘度を一定の範囲となるように調整することにより、抹茶本来の深いコク(味わい)と飲み易さを実現した抹茶入り飲料となる。本発明の飲料の粘度は、1.5〜6.5mPa・s(SV-10型粘度計、20℃)であることが好ましく、2.0〜6.0mPa・sであることがより好ましい。
【0020】
上記の各種成分(a),(b),(c)の種類や濃度を調整することにより、ある程度の粘度調整を行うことは可能であるが、飲料の粘度が低い場合には、増粘多糖類を用いて粘度調整を行うことができる。増粘多糖類としては、飲料で使用可能なものであれば特に制限されないが、飲料の舌触りや喉越し、抹茶のフレーバーリリース(香りの初発性や持続性)の観点から、チキソトロピー性を有する多糖類を用いることが好ましく、中でも発酵セルロースを用いることが好ましい。ここで発酵セルロースとは、アセトバクター属、シュードモナス属、アグロバクテリウム属等に属する細菌であるセルロース生産菌が生産するセルロースを意味する。
【0021】
(その他成分)
抹茶の風味や色調を保持する観点から、本発明の飲料には酸化防止剤及びpH調整剤を配合することが好ましい。この際、本発明の飲料のpHを5.5〜7.5、好ましくは6.0〜7.0に調整すると、抹茶入り飲料の風味や色調を良好に保持することができる。
【0022】
上記各種成分の他、抹茶入り飲料で汎用される成分(例えば香料、色素類、乳化剤など)を用いてもよい。しかし、本発明の飲料の有する抹茶本来の味と香り、色味が損なわれる可能性があることから、これら成分は配合しないことが好ましい。したがって、香料無添加、色素類無添加、乳化剤無添加のうちの一以上を満たす態様は、本発明の好適な態様である。香料、色素類、乳化剤から選択される一以上を配合しない態様は、添加剤に起因する異味や後味の不快感を防止することができるので、より一層、抹茶本来の味わいを知覚できる飲料となる。
【0023】
また、飲料の糖度(Brix)が、5〜11、より好ましくは5〜10となるように調製すると、本発明の効果を顕著に知覚できる。
【0024】
本発明の飲料は、加熱殺菌処理して製造される。具体的には、(a)抹茶、(b)緑茶葉抽出物及び/又は穀類抽出物、(c) 甘味成分、(d) 増粘多糖類と、酸化防止剤及びpH調整剤等の各種原料を混合した上で所定のホモジナイズ処理を行った後、金属容器等に充填してからレトルト殺菌するか、或いはUHT殺菌してからPET容器等に充填することで製造できる。本発明の効果は加熱殺菌強度が強い方が顕著であり、レトルト殺菌を行う缶入り飲料が好適な態様の一つである。
【実施例】
【0025】
以下、実験例及び実施例を示して本発明の詳細を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、本実施例中における分析条件は以下のとおりである。
【0026】
(水不溶性固形分量の測定)
25℃に恒温したサンプルを良く攪拌し均一な状態にし、10gを遠沈管に定量し、卓上多本架遠心機(KOKVSAN H-28F)を用いて、処理温度20℃、回転数3000rpmで10分間遠心した。保留粒子径が5μm(ADVANTEC No.3 直径150mm)の濾紙の乾燥質量を測定した後、遠沈管内の遠心後の上清固形分を減圧濾過により集めた。次に遠沈管中にイオン交換水を加えて攪拌し、再び同条件で10分間遠心した。遠沈管内の遠心後の上清固形分を該濾紙上に減圧濾過により集めた。さらに遠沈管中にイオン交換水を加えて攪拌し、同条件で10分間遠心した。遠沈管内の遠心後の上清固形分を該濾紙上に減圧濾過により集めた。残った固形分も該濾紙上に集めて水洗し、減圧濾過した。水洗に用いたイオン交換水は全量で100mLとした。該濾紙を乾燥後に質量を測定した。(水不溶性固形分量(質量%))=((乾燥後の濾紙質
量(g))−(濾紙の初期乾燥質量(g)))/10(g)×100とした。
【0027】
(粘度の測定)
粘度は、サンプルの品温を20℃にした後、株式会社A&D社製 SV-10型粘度計を使用して測定した。
【0028】
実施例1
緑茶葉と炒り米を抽出して、緑茶葉及び穀類抽出物を得た。さらに抹茶(碾茶の粉砕物と焙じ茶葉の粉砕物の混合物)を一定の量の湯に予備懸濁させた後、表1の不溶性固形分になるよう緑茶葉及び穀類抽出物(以下、茶葉抽出液)と混合(No.1〜7,10〜13)して、緑茶葉及び穀類抽出物の抹茶懸濁液を調製した。比較のため、茶葉抽出液と混合しないサンプル(サンプルNo.8,9)も調製した。これらの抹茶懸濁液(全量)に、甘味成分(砂糖、黒糖)、増粘多糖類、L−アスコルビン酸、炭酸水素ナトリウムを添加してpHを6.3に調整し、全量を1Lとした(飲料の糖度(Brix)はいずれも8程度)。この飲料中味液(調合液)に均質化処理を行い、190mLずつを金属缶に充填し、レトルト殺菌して容器詰めの抹茶入り飲料を得た。得られた飲料について、専門パネラー(3名)により、飲料の風味及び色調を評価した。風味の評価は、抹茶の香りの強さ、抹茶の味(コク)の強さ、ざらつき(異物感)の強さについて、パネラーそれぞれが4点法(◎:とても感じる、○:感じる、△:やや感じる、×:感じない)で評価した。また、飲み易さの程度について、4段階(◎:とても飲み易い、○:飲み易い、△:やや飲みにくい、×:飲みにくい)についても評価した。さらに、総合評価(抹茶と飲み易さの両立の度合い)について、パネラーの合意により○(好ましい)と×(好ましくない)で判定した。
【0029】
表1に、分析値及び風味に関する官能評価の結果を示す。なお、4点法による官能評価は、◎=4点、○=3点、△=2点、×=1点として平均値を算出し、四捨五入した値を再度◎○△×の4段階に換算して記載している。加熱殺菌処理して得られる常温流通可能な容器詰め飲料であって、実質的に乳成分を含まずに、十分な量の抹茶を含有する飲料(すなわち、水不溶性固形分として飲料100mLあたり0.3〜0.9gとなるような抹茶を含有する飲料)では、茶葉抽出液に抹茶を懸濁させることによって抹茶本来の深いコク(味わい)と飲み易さを実現した抹茶入り飲料となることが判明した(No.1〜7、No.8〜9)。特に、不溶性固形分が0.5%(飲料100mLあたり0.5g)以上となる抹茶入り飲料では、飲料の粘度を1.55〜6.5mPa・sの範囲となるように調整することにより、抹茶のざらつきを低減でき、加熱殺菌処理して得られる抹茶入り飲料特有の飲用後の残り香や後味を改善でき、飲み易さが向上した(No.3,6,9)。
【0030】
【表1】