(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
添付図面を参照して、本発明によるアンテナを実施するための形態を以下に説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1Aは、第1の実施形態によるアンテナの構成を示す、断面線A−Aによる断面図である。
図1Bは、第1の実施形態によるアンテナの構成を示す上面図である。
図1Cは、第1の実施形態によるアンテナの構成を示す下面図である。
図1A〜
図1Cに示した第1の実施形態によるアンテナの構成要素について説明する。
【0012】
第1の実施形態によるアンテナは、給電部11と、誘電体基板12と、第1の接地導体17と、第1のビア群41と、第2の接地導体18と、第1のアンテナ導体21と、第1のインピーダンス回路部31と、第2のアンテナ導体22と、第2のインピーダンス回路部32と、第3のアンテナ導体23と、第2のビア群42と、接続導体15と、第3のインピーダンス回路部33と、線路導体13とを含んでいる。
【0013】
第1の接地導体17と、第2の接地導体18と、第1のアンテナ導体21と、第2のアンテナ導体22と、第3のアンテナ導体23と、接続導体15と、線路導体13とは、銅(Cu)などの導体で構成されている。
【0014】
第1の実施形態によるアンテナの構成要素の接続関係について説明する。誘電体基板12の表面には、第1の接地導体17と、第1〜第3のアンテナ導体21〜23とが設けられている。誘電体基板12の裏面には、第2の接地導体18と、線路導体13と、接続導体15とが設けられている。第1および第2のビア群41および42は、誘電体基板12を貫通して設けられている。
【0015】
給電部11と、第1および第2のインピーダンス回路部31および32とは、誘電体基板12の表面に設けられていることが望ましいが、その他の場所に設けることも可能である。第3のインピーダンス回路部33は、誘電体基板12の裏面に設けられていることが望ましいが、その他の場所に設けることも可能である。
【0016】
給電部11の一方の給電点は、第1のアンテナ導体21の一方の端部に接続されている。第1のアンテナ導体21の他方の端部は、第1のインピーダンス回路部31の一方の端部に接続されている。第1のインピーダンス回路部31の他方の端部は、第2のアンテナ導体22の一方の端部に接続されている。第2のアンテナ導体22の他方の端部は、第2のインピーダンス回路部32の一方の端部に接続されている。第2のインピーダンス回路部32の他方の端部は、第3のアンテナ導体23の一方の端部に接続されている。第3のアンテナ導体23の所定位置には、第2のビア群42のそれぞれにおける一方の端部が接続されている。第2のビア群42のそれぞれにおける他方の端部は、接続導体15の所定位置に接続されている。接続導体15の一方の端部には、第3のインピーダンス回路部33の一方の端部が接続されている。第3のインピーダンス回路部33の他方の端部は、線路導体13の一方の端部が接続されている。線路導体13の他方の端部は、第2の接地導体18の一方の端部に接続されている。第2の接地導体18の所定位置には、第1のビア群41のそれぞれにおける一方の端部が接続されている。第1のビア群41のそれぞれにおける他方の端部は、第1の接地導体17の所定位置に接続されている。第1の接地導体17の一方の端部は、給電部11の他方の給電点に接続されている。
【0017】
図1Dは、第1の実施形態によるアンテナの等価回路を示す回路図である。
図1Dに示した回路図の構成要素について説明する。
図1Dに示した回路図は、第1の給電点11Aと、第2の給電点11Bと、第1のインピーダンス回路部31と、第2のインピーダンス回路部32と、第3のアンテナ導体23の等価回路と、第3のインピーダンス回路部33と、結合回路20とを含んでいる。なお、結合回路20は、アンテナおよび空間の結合を示す等価回路である。
【0018】
第1のインピーダンス回路部31は、バラクタC31と、インダクタL31とを含んでいる。第2のインピーダンス回路部32は、容量C32を含んでいる。第3のアンテナ導体23の等化回路は、容量C23と、第1のインダクタL23Aと、第2のインダクタL23Bとを含んでいる。第3のインピーダンス回路部33は、バラクタC33と、インダクタL33とを含んでいる。結合回路20は、容量C20と、インダクタL20と、抵抗R20とを含んでいる。
【0019】
ここで、バラクタとは、印加された直流電圧などに応じて容量値が変化する素子であって、以降、可変容量素子を総称してバラクタと記載する。詳しくは後述するが、このようなバラクタは、直列に接続されたダイオードおよびコンデンサを用いて実現することも可能である。
【0020】
図1Dに示した回路図の構成要素の接続関係について説明する。
第1の給電点11Aは、第1のインピーダンス回路部31の一方の端部に接続されている。
第1のインピーダンス回路部31の一方の端部は、バラクタC31の一方の端部と、インダクタL31の一方の端部とに共通接続されている。
バラクタC31の他方の端部と、インダクタL31の他方の端部とは、第1のインピーダンス回路部31の他方の端部に共通接続されている。
第1のインピーダンス回路部31の他方の端部は、第2のインピーダンス回路部32の一方の端部に接続されている。
第2のインピーダンス回路部32の一方の端部は、容量C32の一方の端部に接続されている。
容量C32の他方の端部は、第2のインピーダンス回路部32の他方の端部に接続されている。
第2のインピーダンス回路部32の他方の端部は、第3のアンテナ導体23の第1の端部に接続されている。
第3のアンテナ導体23の第1の端部は、第1のインダクタL23Aの一方の端部に接続されている。
第1のインダクタL23Aの他方の端部は、第2のインダクタL23Bの一方の端部と、容量C23の一方の端部とに共通接続されている。
第2のインダクタL23Bの他方の端部は、第3のアンテナ導体23の第2の端部に接続されている。容量C23の他方の端部は、第3のアンテナ導体23の第3の端部に接続されている。第3のアンテナ導体23の第2の端部は、第3のインピーダンス回路部33の一方の端部と、結合回路20の一方の端部とに共通接続されている。第3のインピーダンス回路部33の一方の端部は、バラクタC33の一方の端部と、インダクタL33の一方の端部とに共通接続されている。バラクタC33の他方の端部と、インダクタL33の他方の端部とは、第3のインピーダンス回路部33の他方の端部に共通接続されている。結合回路20の一方の端部は、容量C20の一方の端部に接続されている。容量C20の他方の端部は、インダクタL20の一方の端部と、抵抗R20の一方の端部とに共通接続されている。インダクタL20の他方の端部と、抵抗R20の他方の端部とは、結合回路20の他方の端部に共通接続されている。第3のアンテナ導体23の第3の端部と、第3のインピーダンス回路部33の他方の端部と、結合回路20の他方の端部とは、第2の給電点11Bに共通接続されている。
【0021】
図1Dに示した等価回路を用いて、第1の実施形態によるアンテナの動作について説明する。結合回路20は、動作中のアンテナにおける放射現象を、すなわちアンテナおよび空間の結合を、表している。結合回路20において、抵抗R20は、給電点11Aおよび11Bからアンテナに供給された電力が消費されることを表している。この、消費される電力は、アンテナから空間への放射によって無限遠方まで広がる、アンテナから失われる電力を表している。
【0022】
第1〜第3のアンテナ導体21〜23の中で最も大きい第3のアンテナ導体23は、分布定数線路として解釈することが可能であり、
図1Dに示した等価回路では2つのインダクタL23AおよびL23Bならびに1つのシャント容量C23の集合体として表現されている。なお、第1および第2のアンテナ導体21および22は、第3のアンテナ導体23と比べて面積が十分に小さいので、集中定数素子を接続する存在として解釈することが可能であり、
図1Dに示した等価回路では省略されている。
【0023】
アンテナが有効に動作するためには、給電点11Aおよび11Bに供給された電力の全てがアンテナに入って行けるように、給電点11Aおよび11Bにおけるインピーダンス整合が必要である。このインピーダンス整合は、給電点11Aおよび11Bにおけるインピーダンスと、給電点11Aおよび11Bからアンテナ側を見たインピーダンスとが複素共役の関係にあるときに実現される。ただし、給電点11Aおよび11Bにおけるインピーダンスは、通常、実数である。したがって、給電点11Aおよび11Bからアンテナ側を見たインピーダンスを、給電点11Aおよび11Bにおけるインピーダンスと同じ実数に調整することが必要となる。
【0024】
この調整を、アンテナが動作する所望の周波数で実現するために、本実施形態のアンテナに第1〜第3のインピーダンス回路部31〜33を設けた。しかし、集中定数素子であるインダクタL31およびL33並びに容量またはバラクタC31〜C33は、そのインピーダンスが周波数に応じて変化する。したがって、インピーダンス整合は特定の周波数でしか取れない。インピーダンス整合が取れたこの特定の周波数は、アンテナが有効に動作する周波数という意味で、動作周波数と呼ばれる。
【0025】
実際には、通信に使用可能な周波数は法令などで決められているので、決められた周波数に合わせて各集中定数素子のインピーダンス値を調整する必要がある。このことを逆に言い換えれば、集中定数素子のインピーダンス値を可変にすることで、使用周波数を可変にすることが可能である。第1の実施形態によるアンテナでは、第1のインピーダンス回路部31に設けたバラクタC31と、第3のインピーダンス回路部33に設けたバラクタC33とは、印加される直流電圧に応じて変化する容量を有している。
【0026】
図1Dに示したバラクタC31およびC33は、直流電圧を適宜に印加することでその容量値を調整可能であるが、ダイオードも印加される直流電圧に応じて変化する容量を有している。バラクタC31およびC33としてダイオードを使用する場合には、ダイオードと直列に接続されたコンデンサを設けることが望ましい。これは、バラクタC31およびC33にはインダクタL31およびL33がそれぞれ並列に接続されており、もしダイオードに直列接続されたコンデンサが無ければ、ダイオードに直流電圧を印加してもインダクタL31およびL33を介して短絡されてしまうからである。言い換えれば、バラクタC31およびC33において、ダイオードおよびコンデンサを直列に接続し、その両端に直流電圧を印加すると、コンデンサは開放状態となって、ダイオードにバイアス電圧を印加することが可能となる。このとき、バラクタC31およびC33の容量値は、コンデンサの容量と、ダイオードの容量との総量であって、その値は直列に配置したコンデンサの容量を適切に選ぶことで適宜に制御可能となることは明らかである。
【0027】
本発明によるアンテナでは、各バラクタに印加する直流電圧を適宜に調整することで、インピーダンス整合から大きくずらすことなく使用周波数を可変とするアンテナの構造を提供する。
【0028】
第1の実施形態によるアンテナは、集中定数素子、すなわち第1〜第3のインピーダンス回路部31〜33を、
図1Dに示した等価回路のように配置することで、2周波で整合が取れる構成となっている。以下、この構成を用いてアンテナの使用周波数を可変とすることの有効性について説明する。ここでは、具体的な使用周波数として、2.5GHz(ギガヘルツ)と、5GHzとを用いた場合の例を挙げて説明する。
【0029】
図2Aは、第1の実施形態によるアンテナの寸法例を示す上面図である。
図2Aでは、
図1Bに示した第1〜第3のアンテナ導体21〜23の長さおよび幅を示している。すなわち、第1のアンテナ導体21において、その長さをX1と置き、その幅をY1と置く。第2のアンテナ導体22において、その長さをX2と置き、その幅をY2と置く。第3のアンテナ導体23において、その長さをX3と置き、その幅をY3と置く。
【0030】
図2Bは、第1の実施形態によるアンテナの寸法例を示す下面図である。
図2Bでは、
図1Cに示した線路導体13および接続導体15の長さおよび幅を示している。すなわち、線路導体13において、その長さをX4と置き、その幅をY4と置く。接続導体15において、その長さをX5と置き、その幅をY5と置く。
【0031】
図2Aおよび
図2Bに示した寸法X1〜X5およびY1〜Y5の各数値は、以下のとおりである。
X1=1.3mm(ミリメートル)
Y1=1.0mm
X2=0.9mm
Y2=0.6mm
X3=7.9mm
Y3=3.3mm
X4=2.8mm
Y4=0.2mm
X5=0.9mm
Y5=0.9mm
【0032】
誘電体基板12において、その比誘電率は4.6であり、その誘電正接は0.01であり、厚みは1mmである。
【0033】
図3Aは、第1の実施形態によるアンテナの第1の特性例を示すグラフである。
図3Aは、第1〜第5のグラフ(a)〜(e)を含んでいる。これら第1〜第5のグラフ(a)〜(e)に共通して、横軸はアンテナに供給される電力の周波数を示し、縦軸はアンテナのS11パラメータ、すなわち反射損失、を示している。
【0034】
図3Aに示した例の条件は以下のとおりである。給電点11Aおよび11Bにおけるインピーダンスは25Ω(オーム)である。第1のインピーダンス回路部31において、バラクタC31の容量値はゼロに固定されており、同じくインダクタL31のインダクタンス値は1.4nH(ナノヘンリー)である。第2のインピーダンス回路部32において、容量C32の容量値は0.15pF(ピコファラッド)である。第3のインピーダンス回路部33において、インダクタL33のインダクタンス値は3.4nHである。
【0035】
図3Aに示した第1〜第5のグラフ(a)〜(e)は、これらの条件に加えて、第3のインピーダンス回路部33に設けられたバラクタC33の容量値を0〜0.4pFの範囲で変化させた場合の、アンテナの特性を表している。第1のグラフ(a)は、バラクタC33の容量値が0pFである場合のアンテナ特性を示している。第2のグラフ(b)は、バラクタC33の容量値が0.1pFである場合のアンテナ特性を示している。第3のグラフ(c)は、バラクタC33の容量値が0.2pFである場合のアンテナ特性を示している。第4のグラフ(d)は、バラクタC33の容量値が0.3pFである場合のアンテナ特性を示している。第5のグラフ(e)は、バラクタC33の容量値が0.4pFである場合のアンテナ特性を示している。
【0036】
図3Aから読み取れるように、2.5GHzの帯域では、バラクタC33の容量が増大すればするほど、反射損失の変化量が減少し、また、使用可能な帯域が低い方向に移動する。なお、アンテナの反射損失の観点からは、S11パラメータが−10dB以下であれば十分使用可能であるので、
図3Aに示された反射損失のわずかな変化は大きな問題ではない。
【0037】
図3Bは、第1の実施形態によるアンテナの第2の特性例を示すグラフである。
図3Bも、
図3Aの場合と同様に、第1〜第5のグラフ(a)〜(e)を含み、横軸はアンテナに供給される電力の周波数を示し、縦軸はアンテナのS11パラメータ、すなわち反射損失、を示している。
【0038】
図3Bに示した例の条件は、
図3Aの場合と同様であるが、使用周波数として5GHzの帯域を用いている。
図3Bに示したグラフ群から読み取れるように、第1の実施形態によるアンテナが5GHz帯でも使用可能である。ただし、5GHz帯で使用可能な周波数は概ね一定である。なお、5GHz帯での反射損失は、バラクタC33の容量値が増大すればするほど悪化しているので、このアンテナを5GHz帯で使用する場合にはバラクタC33の容量値を0pFに固定することが望ましい。
【0039】
なお、
図3Aおよび
図3Bに示した例では、給電点11Aおよび11Bのインピーダンスを25Ωに設定したが、このインピーダンス値はあくまでも一例である。各集中定数素子のインピーダンス値を適宜に変更することによって給電点11Aおよび11Bのインピーダンスを所望値に設定した上でアンテナの共振周波数を可変とすることが出来る。
【0040】
次に、
図3Aおよび
図3Bで用いた条件を一部変更して、バラクタC33の容量値を0に固定し、バラクタC31の容量値を0〜0.4pFの範囲で変化させた際の、2.5GHz帯における第3の特性例と、5GHz帯における第4の特性例について説明する。
【0041】
図3Cは、第1の実施形態によるアンテナの第3の特性例を示すグラフである。
図3Dは、第1の実施形態によるアンテナの第4の特性例を示すグラフである。
図3Cおよび
図3Dは、いずれも、
図3Aの場合と同様に、第1〜第5のグラフ(a)〜(e)を含み、横軸はアンテナに供給される電力の周波数を示し、縦軸はアンテナのS11パラメータ、すなわち反射損失、を示している。また、やはり
図3Aの場合と同様に、
図3Cおよび
図3Dの各々における第1〜第5のグラフ(a)〜(e)は、バラクタC31の容量値がそれぞれ0pF、0.1pF、0.2pF、0.3pFおよび0.4pFである場合に対応している。
【0042】
図3Cは、2.5GHz帯におけるアンテナの特性例を示している。
図3Cから読み取れるように、バラクタC31の容量値が変化しても、アンテナの反射損失はほとんど変化しない。
【0043】
図3Dは、5GHz帯におけるアンテナの特性例を示している。
図3Dから読み取れるように、バラクタC31の容量値が増大すればするほど、アンテナを使用可能な周波数帯域はより低い方向に移動する。
【0044】
図3Cおよび
図3Dは、バラクタC31の容量値を制御することで、2.5GHz帯における特性はそのままに、5GHz帯における使用周波数を調整することが出来ることを示している。
【0045】
なお、
図3Cおよび
図3Dに示した例でも、給電点11Aおよび11Bのインピーダンスを25Ωに設定したが、このインピーダンス値はあくまでも一例である。各集中定数素子のインピーダンス値を適宜に変更することによって給電点11Aおよび11Bのインピーダンスを所望値に設定した上でアンテナの共振周波数を可変とすることが出来る。
【0046】
本実施形態によるアンテナの変形例について説明する。
図1Eは、第1の実施形態による別のアンテナの等価回路を示す回路図である。
【0047】
図1Eに示したアンテナの構成について説明する。
図1Eに示したアンテナは、
図1Dに示したアンテナに、以下の変更を加えることで得られる。すなわち、第1のインピーダンス回路部31と、第3のインピーダンス回路部33とのそれぞれにおいて、
図1Dに示した構成では並列に接続されているバラクタおよびインダクタを、
図1Eに示した構成では直列に接続する。
【0048】
より具体的には、まず、第1のインピーダンス回路部31において、第1の給電点11Aと、容量C32との間に、インダクタL31およびバラクタC31を直列に接続する。
【0049】
次に、第3のインピーダンス回路部33において、インダクタL23Bおよび容量C20の接続点と、第2の給電点11Bとの間に、インダクタL33およびバラクタC33を直列に接続する。
【0050】
なお、
図1Eに示した別のアンテナにおいて、第1のインピーダンス回路部31および第3のインピーダンス回路部33のうち、一方を直列接続構成とし、他方を並列接続構成としても良い。
図1Eに示した第1の実施形態における別のアンテナの他の構成は、
図1A〜
図1Dの場合と同様であるので、さらなる詳細な説明を省略する。
【0051】
図1Eに示した構成による第1の実施形態による別のアンテナの動作について説明する。
図1Eに示したアンテナも、
図1Dの場合と同様に、第1のインピーダンス回路部31および第3のインピーダンス回路部33のインピーダンス値、そのうち特に各インダクタのリアクタンス値、を適宜に調整することで、共振周波数を所望の値に設定することが可能である。
【0052】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、第3のインピーダンス回路部33に設けられたバラクタC33の容量値を0.4pFまで増大させた結果、反射損失を表すS11パラメータが−10dB以下である使用可能な周波数は最も低くなった。このとき、バラクタC33の容量値がより小さい場合と比較すると、S11パラメータは次第に悪化している。
【0053】
そこで、第2の実施形態では、バラクタC33の容量値をさらに増大させて使用可能周波数をさらに低い範囲に広げると同時に、反射損失を表すS11パラメータを良好な値に保持するアンテナの構造を提供する。
【0054】
図4Aは、第2の実施形態によるアンテナの等価回路を示す回路図である。
図4Aに示した第2の実施形態によるアンテナの構成は、
図1A〜
図1Dに示した第1の実施形態によるアンテナのうち、第2のインピーダンス回路部32の容量C32をバラクタC32に置き換えたものに等しい。なお、第2の実施形態によるアンテナの断面図、上面図および下面図は、
図1A〜
図1Cに示した第1の実施形態の場合と同様であるので、図示およびさらなる詳細な説明を省略する。
【0055】
第2の実施形態によるアンテナでは、第3のインピーダンス回路部33に設けられたバラクタC33の容量値を1pFまたは2pFまで増大させて、使用可能な周波数帯域を1.6GHz近傍または1.95GHz近傍に移動させている。これらの周波数帯域のうち、前者の場合に得られる特性例を
図5Aに示し、後者の場合に得られる特性例を
図5Bに示す。
【0056】
図5Aおよび
図5Bは、第1および第2の実施形態によるアンテナの特性例を比較するグラフである。
図5Aおよび
図5Bの各々は、第1〜第3のグラフ(a)〜(c)を含んでいる。
図5Aおよび
図5Bの各々に示される第1〜第3のグラフ(a)〜(c)に共通して、横軸は周波数を示し、縦軸は反射損失を表すS11パラメータを示している。
【0057】
図5Aおよび
図5Bの各々において、第1のグラフ(a)は、第1の実施形態によるアンテナの、第2のインピーダンス回路部32に設けられた容量C32の容量値を0.15pFに設定した場合に得られる特性例を示している。同様に、第2のグラフ(b)は、第1の実施形態によるアンテナの、第2のインピーダンス回路部32に設けられたバラクタC32の容量値を0.10pFに設定した場合に得られる特性例を示している。同様に、第3のグラフ(c)は、第2のグラフ(b)の条件から、バラクタC33の容量値を0.1pFだけさらに増大させた場合に得られる特性例を示している。
【0058】
図5Aおよび
図5Bから読み取れるように、いずれの場合も、第1の実施形態によるアンテナでは、反射損失を表すS11パラメータが−10dBの近傍となっている。その一方で、第2の実施形態の、第2のグラフ(b)の場合は、帯域がわずかに高いもののS11パラメータが大幅に小さくなっている。なお、第2の実施形態の、第3のグラフ(c)から読み取れるように、バラクタC33の容量値をさらに増大させることで、高くなった帯域を下げることが可能である。また、帯域を第1の実施形態の場合と同様の値まで下げても、S11パラメータを大幅に小さく出来ることに変わりは無い。
【0059】
本実施形態によるアンテナの変形例について説明する。
図4Bは、第2の実施形態による別のアンテナの等価回路を示す回路図である。
【0060】
図4Bに示したアンテナの構成について説明する。
図4Bに示したアンテナは、
図4Aに示したアンテナに、第1の実施形態における
図1Dから
図1Eへの場合と同じ変更を加えることで得られる。すなわち、第1のインピーダンス回路部31と、第3のインピーダンス回路部33とのそれぞれにおいて、
図4Aに示した構成では並列に接続されているバラクタおよびインダクタを、
図4Bに示した構成では直列に接続する。
【0061】
図4Bに示した第2の実施形態における別のアンテナの他の構成は、
図1A〜
図1C、
図1Eおよび
図4Aの場合と同様であるので、さらなる詳細な説明を省略する。
【0062】
図4Bに示した構成による第2の実施形態による別のアンテナの動作についても、
図1A〜
図1C、
図1Eおよび
図4Aの場合と同様であるので、さらなる詳細な説明を省略する。
【0063】
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、第1の実施形態の場合と同様の条件で、2.5GHz近傍および5GHz近傍の帯域で有効なアンテナの構造を提供する。
【0064】
図6Aは、第3の実施形態によるアンテナの構成を示す上面図である。
図6Bは、第3の実施形態によるアンテナの等価回路を示す回路図である。
図6Aおよび
図6Bに示した第3の実施形態によるアンテナの構成は、
図1A〜
図1Dに示した第1の実施形態によるアンテナのうち、第2のインピーダンス回路部32の容量C32をバラクタC32に置き換え、さらに、給電部11に並列に接続された第4のインピーダンス回路部34を追加したものに等しい。なお、第3の実施形態によるアンテナの断面図および下面図は、
図1Aおよび
図1Cに示した第1の実施形態の場合と同様であるので、図示およびさらなる詳細な説明を省略する。
【0065】
図7は、第3の実施形態によるアンテナの特性例を示すグラフである。
図7は、第1〜第3のグラフ(a)〜(c)を含んでいる。第1〜第3のグラフ(a)〜(c)に共通して、横軸は周波数を示し、縦軸は反射係数を表すS11パラメータを示している。
【0066】
図7に示した第1〜第3のグラフ(a)〜(c)は、第4のインピーダンス回路部34に設けられたバラクタC34の容量値を、0pF、0.2pFおよび0.4pFに設定した場合をそれぞれ示している。なお、その他の条件は第1の実施形態の場合と同様である。すなわち、給電点11Aおよび11Bのインピーダンスは25Ωである。第3のインピーダンス回路部33において、インダクタL33のインダクタンスは3.4nHに固定され、バラクタC33の容量値は0に固定されている。第2のインピーダンス回路部32に設けられた容量またはバラクタC32の容量値は0.15pFに固定されている。第1のインピーダンス回路部31において、インダクタL31のインダクタンス値は1.4nHに固定され、バラクタC31の容量値は0pFに固定されている。
【0067】
第3の実施形態によるアンテナでは、
図7に示したグラフから読み取れるように、バラクタC34の容量値を増大させることで、使用可能な周波数帯域が高い方向に移動する。
【0068】
この移動方向は、
図3Aや
図3Dに示した第1の実施形態によるアンテナの場合とは逆方向であるので、使用周波数の移動を相殺することが可能となる。したがって、第3の実施形態によるアンテナに設けられた複数のバラクタC31、C33およびC34の容量値を適宜に変更することで、本発明によるアンテナの特性をより自由に調整することが可能となる。
【0069】
本実施形態によるアンテナの変形例について説明する。
図6Cは、第3の実施形態による別のアンテナの等価回路を示す回路図である。
【0070】
図6Cに示したアンテナの構成について説明する。
図6Cに示したアンテナは、
図6Bに示したアンテナに、第1の実施形態における
図1Dから
図1Eへの場合と同じ変更を加えることで得られる。すなわち、第1のインピーダンス回路部31と、第3のインピーダンス回路部33とのそれぞれにおいて、
図6Bに示した構成では並列に接続されているバラクタおよびインダクタを、
図6Cに示した構成では直列に接続する。
【0071】
図6Cに示した第2の実施形態における別のアンテナの他の構成は、
図1A〜
図1C、
図1Eおよび
図6Bの場合と同様であるので、さらなる詳細な説明を省略する。
【0072】
図6Cに示した構成による第2の実施形態による別のアンテナの動作についても、
図1A〜
図1C、
図1Eおよび
図6Bの場合と同様であるので、さらなる詳細な説明を省略する。
【0073】
(第4の実施形態)
第1〜第3の実施形態では、アンテナを構成する導体が給電部11から一方に配置された、いわゆるモノポール型のアンテナの構造を提供した。第4の実施形態では、第1の実施形態によるアンテナの構成要素の一部を2組、給電部11を挟んで対称的に配置した、いわゆるダイポール型のアンテナの構造を提供する。
【0074】
図8Aは、第4の実施形態によるアンテナの構成を示す上面図である。
図8Bは、第4の実施形態によるアンテナの構成を示す下面図である。
図8Aおよび
図8Bに示した第4の実施形態によるアンテナの構成要素について説明する。
【0075】
第4の実施形態によるアンテナは、誘電体基板12と、給電部11と、第1〜第6のアンテナ導体21〜26と、第1〜第6のインピーダンス回路部31〜33および35〜37と、第1および第2の接続導体15および16と、線路導体14と、図示しない第1および第2のビア群とを含んでいる。
【0076】
第4の実施形態によるアンテナの構成要素のうち、第1〜第3のアンテナ導体21〜23は誘電体基板12の表面に配置されており、第1および第2の接続導体15および16と、線路導体14とは、誘電体基板12の裏面に配置されている。第1および第2のビア群は、誘電体基板12を貫通して設けられている。
【0077】
給電部11と、第1、第2、第4および第5のインピーダンス回路部31、32、35および36とは、誘電体基板12の表面に設けられていることが望ましいが、その他の場所に設けることも可能である。第3および第6のインピーダンス回路部33および37は、誘電体基板12の裏面に設けられていることが望ましいが、その他の場所に設けることも可能である。
【0078】
第4の実施形態によるアンテナの構成要素の接続関係について説明する。給電部11の一方の端部は、第1のアンテナ導体21の一方の端部に接続されている。第1のアンテナ導体21の他方の端部は、第1のインピーダンス回路部31の一方の端部に接続されている。第1のインピーダンス回路部31の他方の端部は、第2のアンテナ導体22の一方の端部に接続されている。第2のアンテナ導体22の他方の端部は、第2のインピーダンス回路部32の一方の端部に接続されている。第2のインピーダンス回路部32の他方の端部は、第3のアンテナ導体23の一方の端部に接続されている。第3のアンテナ導体23の所定位置には、第1のビア群のそれぞれにおける一方の端部が接続されている。第1のビア群のそれぞれにおける他方の端部は、第1の接続導体15の所定位置に接続されている。第1の接続導体15の一方の端部は、第3のインピーダンス回路部33の一方の端部に接続されている。第3のインピーダンス回路部33の他方の端部は、線路導体14の一方の端部に接続されている。
【0079】
給電部11の他方の端部は、第4のアンテナ導体24の一方の端部に接続されている。第4のアンテナ導体24の他方の端部は、第4のインピーダンス回路部35の一方の端部に接続されている。第4のインピーダンス回路部35の他方の端部は、第5のアンテナ導体25の一方の端部に接続されている。第5のアンテナ導体25の他方の端部は、第5のインピーダンス回路部36の一方の端部に接続されている。第5のインピーダンス回路部36の他方の端部は、第6のアンテナ導体26の一方の端部に接続されている。第6のアンテナ導体26の所定位置には、第2のビア群のそれぞれにおける一方の端部が接続されている。第2のビア群のそれぞれにおける他方の端部は、第2の接続導体16の所定位置に接続されている。第2の接続導体16の一方の端部は、第6のインピーダンス回路部37の一方の端部に接続されている。第6のインピーダンス回路部37の他方の端部は、線路導体14の他方の端部に接続されている。
【0080】
第1のインピーダンス回路部31において、一方の端部と、他方の端部との間には、バラクタC31と、インダクタL31とが並列に接続されている。第2のインピーダンス回路部32において、一方の端部と、他方の端部との間には、容量C32が接続されている。第3のインピーダンス回路部33において、一方の端部と、他方の端部との間には、バラクタC33と、インダクタL33とが並列に接続されている。第4のインピーダンス回路部35において、一方の端部と、他方の端部との間には、バラクタC35と、インダクタL35とが並列に接続されている。第5のインピーダンス回路部36において、一方の端部と、他方の端部との間には、容量C36が接続されている。第6のインピーダンス回路部37において、一方の端部と、他方の端部との間には、バラクタC37と、インダクタL37とが並列に接続されている。
【0081】
言い換えれば、
図8Aおよび
図8Bに示した第4の実施形態によるアンテナは、
図1Bおよび
図1Cに示した第1の実施形態によるアンテナのうち、接地導体17および18以外の部分を、折り返して対称に配置したものに等しい。すなわち、第4の実施形態による第1〜第3のアンテナ導体21〜23と、第1〜第3のインピーダンス回路部31〜33と、接続導体15とは、第1の実施形態の場合と同様に構成されている。また、第4の実施形態による第4〜第6のアンテナ導体24〜26、第4〜第6のインピーダンス回路部35〜37および接続導体16は、第1の実施形態による第1〜第3のアンテナ導体21〜23、第1〜第3のインピーダンス回路部31〜33および接続導体15と同様に構成され、給電部11に対して対称的に配置されている。ただし、給電部11の2つの給電点は、第1および第4のアンテナ導体21および24にそれぞれ接続されており、線路導体14は一体化されている。
【0082】
図8Aおよび
図8Bに示した第4の実施形態による差動型のアンテナでも、第1の実施形態によるアンテナと同様の特性が得られる。同様に、第4の実施形態によるアンテナの一部を変更し、第2および第5のインピーダンス回路部32および36に設けられた容量C32およびC36をバラクタに置き換えれば第2の実施形態によるアンテナと同様の特性が得られる。同様に、第4の実施形態によるアンテナの一部を変更し、給電部11に並列に接続されたバラクタC34を追加すれば、第3の実施形態によるアンテナと同様の特性が得られる。
【0083】
さらに、
図8Aおよび
図8Bに示した第4の実施形態による差動型のアンテナでも、第1のインピーダンス回路部31、第3のインピーダンス回路部33、第4のインピーダンス回路部35および第6のインピーダンス回路部37において、
図1E、
図4Bまたは
図6Cに示したようにインダクタおよびバラクタの接続関係を並列から直列に変更しても良い。こうすることで、第1〜第3の実施形態のそれぞれにおける別のアンテナと同様の特性が得られる。さらに、第1のインピーダンス回路部31、第3のインピーダンス回路部33、第4のインピーダンス回路部35および第6のインピーダンス回路部37のうち、一部を直列接続構成とし、残りを並列接続構成としても良い。
【0084】
このように、本発明によるアンテナを用いることで、反射損失を大きく変化させることなく、2つの使用周波数を切り替えることが可能となり、単一のアンテナで多様な通信システムに対応することが可能となる。特に、近接した帯域に対応するにあたって、近接したモードの周波数を制御することから、本質的に変化させなければならない共振周波数の差は小さい。このため、本発明によるアンテナは近接した帯域にも容易に対応出来る。
【0085】
以上、発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。また、前記実施の形態に説明したそれぞれの特徴は、技術的に矛盾しない範囲で自由に組み合わせることが可能である。