(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記プラグフロー反応器の内壁と対向している前記流路制御翼の部分と、前記内壁との距離が5mm以下になっていることを特徴とする、請求項2に記載の修飾キシロポリサッカライドの製造方法。
前記板状部材の外縁部の周速が0.02m/秒以上0.3m/秒以下になるように、前記回転体を回転させることを特徴とする、請求項2又は3に記載の修飾キシロポリサッカライドの製造方法。
前記板状部材には、スラリーが前記回転体の周方向に通り抜け可能な貫通孔が形成されていることを特徴とする、請求項2〜4の何れか1項に記載の修飾キシロポリサッカライドの製造方法。
前記板状部材の外縁部を軸中心として回動可能な掻き部材が備えられ、前記回転体の回転に伴って、前記掻き部材が前記プラグフロー反応器の内壁に接触可能になっていることを特徴とする、請求項2〜5の何れか1項に記載の修飾キシロポリサッカライドの製造方法。
前記プラグフロー反応器において得られた修飾キシロポリサッカライドに対し、β−キシロシダーゼ及びキシラナーゼのうちの少なくとも一方を反応させることで、前記修飾キシロポリサッカライドの側鎖に有する修飾基が保存された修飾キシロオリゴ糖を得ることを特徴とする、請求項1〜6の何れか1項に記載の修飾キシロポリサッカライドの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
キシランを含有したバイオマスを低分子化し、単糖であるキシロースを製造する方法として、例えば酸を用いて分解処理を行う酸分解法を用いることが考えられる。しかし、酸分解法では反応性が高いため、キシランの分解が速やかに進んでしまい、分子量の大きいキシロポリサッカライド(単糖の重合度(糖重合度)が2〜12程度のキシロオリゴ糖を含む、以下同じ)のレベルで反応を停止させることが難しい。
【0013】
また、分解速度及び選択性の高さの観点から、バイオマスに対し、キシランを分解可能な酵素(例えばキシラナーゼ等)を作用させ、バイオマス中のキシランを分解することも考えられる。しかし、酵素反応の前処理としてバイオマスにアルカリ処理を施すと、キシラン中のキシロポリサッカライドの側鎖に存在する植物細胞壁由来のアセチル基やフェルロイルアラビノフラノシル基等の修飾基が加水分解される。従って、アルカリと酵素とを併用する方法では、側鎖を持たない非修飾のホモの低分子キシロオリゴ糖(糖重合度が2〜3)の生成が優位になり、修飾キシロポリサッカライドとしての回収が難しい。
【0014】
アルカリによるキシロポリサッカライドの修飾側鎖を保護する観点から、アルカリ処理を行わずに、バイオマスに対して直接キシラナーゼを作用させる方法がある。しかし、この場合には、分解速度が極端に遅くなり、修飾側鎖による反応阻害が生じて収率が低下する。そこで、分解速度を向上させる観点から、大量のキシラナーゼを作用させることも考えられる。
【0015】
しかし、市販のキシラナーゼ製剤には、その生産過程でエステラーゼが混在している。そのため、キシラナーゼを大量に用いると、不純物となるエステラーゼも大量に反応系に含まれてしまうことになる。これにより、キシランの側鎖に存在する修飾基が外れてしまい、アルカリと酵素とを併用する方法と同様に、側鎖を持たない非修飾のホモの低分子キシロオリゴ糖の生成が優位になる。そのため、修飾キシロポリサッカライドとしての回収が難しい。
【0016】
これらのことを考慮すると、分子量の大きい修飾キシロポリサッカライドを酵素法によって選択的に工業生産することは困難である。また、低分子の修飾キシロオリゴ糖を生産するためには、エステラーゼを除去した精製キシラナーゼを大量に必要とし、工業的に現実的ではない。そこで、工業的に量産可能な修飾キシロポリサッカライドの製造方法が望まれている。
【0017】
この点について、キシランを含むバイオマスに対して水熱反応を制御して作用させることができれば、修飾キシロポリサッカライドを優先的に製造できる可能性がある。水熱反応では、高温高圧の条件下、水分子が求核試薬としてキシランに作用する。その結果、主にキシランを構成する多糖類のキシロース間のβ−1,4−結合が優先的に加水分解され、修飾基が保護されることにより修飾キシロポリサッカライドが得られる。そのため、修飾キシロポリサッカライドを工業的に量産できる可能性がある。
【0018】
これまでバッチ式水熱反応器を用いた研究では、数〜数十mlの容量で反応器が用いられている。これを工業的なレベルにまでスケールアップしようとする場合、バッチ容量が1Lを超えてくると、試料に対して例えば温度200℃、10分程度の反応条件を与えようとする場合、設定温度に到達してかつ安定するまでに数十分〜1時間を超える時間が費やされる。ヒータの熱容量や温度制御機能、反応器内の撹拌機能等を改善しても、昇温工程と冷却工程とで発生する圧倒的な熱履歴の前に、わずか10分という水熱反応のエネルギをバッチ内で均一に制御することは困難である。過剰な熱履歴は修飾基の離脱を生じさせるばかりでなく、単糖キシロースの発生量が多くなり、今度はキシロースの過分解物であるフルフラールが生成される。フルフラールは、後段にとられる酵素反応工程や精製工程を大きく阻害するため、フルフラールを生ずる副反応を抑えなくてはならない。
【0019】
そこで開発されたチューブ型の反応管を持つ連続流通式の水熱反応装置は、温度制御された反応管にバイオマススラリーを一定の速度で流通させる原理であるため、昇温部と冷却部の構成装置を上手く設計すると、極めてシャープな反応温度と時間を設定できるメリットがある(例えば、特開2008−253861号公報や、「槇島聡,佐藤伸明:水熱反応を利用した各種糖質の生産技術,応用糖質科学,2(3),174頁〜179頁(2012)」)。
【0020】
しかしながら、このようなチューブ式反応器にも、前記のようなバッチ式反応器と同様の、スケール上の課題が発生する。例えば、チューブ式反応器の処理能力を上げるため、例えば1インチ径のチューブの断面積を増加させていくと、反応器内部の流体の挙動は徐々に変化する。具体的には、チューブの断面積の増加に伴って、原料に対する熱伝達効率が低下する。また、反応器の内部に乱流が生じて原料が想定より速く通過(異常通過)したり、沈降等による滞留を生じて遅延したりする現象が生じる。
【0021】
これらのように、チューブ式反応器において断面積を単に増加させれば、反応器に流入した原料が均一な反応エネルギを受けて遂次排出されていく、所謂「プラグフロー」といわれる状態が損なわれる。そして、このような現象は、修飾キシロポリサッカライドの収率を著しく低下させ、副生成物の発生につながる。
【0022】
このような課題を解決するために、チューブ式反応器を複数並列に接続するとともに、大型ポンプを接続し、それぞれ加温したチューブ式反応器に原料を通流させることも考えられる。しかし、通流量の合計は増加するものの、各チューブ式反応器の圧力損失の違いから、チューブ式反応器ごとに流速のばらつきが発生する。そして、その結果、反応履歴の偏差が生じる。そのため、これを回避する観点から、チューブ式反応器と大型ポンプとを独立して設計しなければならない。しかし、このようにすると、低容量のチューブ式反応器を何百台も並べるのと同じような仕様となり、膨大な装置コストがかかる。
【0023】
高温高圧流体の研究は、水等の媒体の物理化学的特性を応用することに他ならず、反応・プロセス工学、材料工学、原子力工学等様々な化学工学分野で検討がなされている。中でも、水熱反応を生じさせる反応器は、有機化合物の完全分解を目的とするケースやバイオマスの醗酵や酵素糖化の前処理装置として設計するケースがほとんどである(例えば特許4691214号公報)。
【0024】
本発明はこれらの課題に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、バイオマスから修飾キシロポリサッカライドを工業的に量産可能な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明者らは前記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、以下のような知見を見出した。即ち、本発明の要旨は、アセチル基、フェルロイルアラビノフラノシル基及びクマロイルアラビノフラノシル基からなる群より選ばれる少なくとも一種の修飾基を側鎖に有するキシランであって、当該キシランを植物細胞壁に含有するバイオマスを原料として、160℃以上の温度及び当該温度における飽和水蒸気圧以上の圧力であって、かつ、以下の式(1)により計算される反応過酷度R
0が3000以上7000以下となる制御条件下、固形分として10質量%〜30質量%の割合で前記バイオマスを含むスラリーに対し、プラグフローを生成させる流路制御機構を内部に備えた円筒型のプラグフロー反応器を用いて連続的な水熱処理を行うことにより、前記キシランの側鎖に有する修飾基が保存された修飾キシロポリサッカライドを得ることを特徴とする、修飾キシロポリサッカライドの製造方法に関する。
【数1】
ただし、T(t)は温度(℃)の時間変化を表し、T
rは基準温度(100℃)を表し、tは時間(分)を表し、ωは定数(=14.75)である。
【0026】
これらによれば、キシロースとその過分解物であるフルフラールとの発生を抑制し、植物細胞壁由来の側鎖構造が保存された修飾キシロポリサッカライドを製造することができる。
【0027】
また、前記流路制御機構は、前記スラリーの流れ方向に平行な回転軸を軸中心として回転可能な柱状の回転体と、前記回転体の側面に備えられ、前記回転体の外側に向かうとともに前記スラリーの流れ方向に向かって延在する板状部材からなる複数の流路制御翼と、を有して構成されていることが好ましい。
【0028】
これによれば、反応器の内部に十分なプラグフローを形成することができ、原料が受ける反応過酷度が一定に保たれるため副反応が抑制され、生産スケールが向上しても収率が低下することなく、修飾キシロポリサッカライドを得ることができる。
【0029】
さらに、前記プラグフロー反応器の内壁と対向している前記流路制御翼の部分と、前記内壁との距離が5mm以下になっていることが好ましい。
【0030】
これによれば、スラリーの沈降や滞留が抑制され、また、異常通過を起こしにくくすることができる。
【0031】
また、前記板状部材の外縁部の周速が0.02m/秒以上0.3m/秒以下になるように、前記回転体を回転させることが好ましい。
【0032】
これによれば、スラリーの移動経路を長くすることができ、スラリーの異常通過及び沈降を抑制するとともに、過剰滞留が抑制される。さらには、熱伝達効率を向上させることができ、これにより、プラグフロー反応器をコンパクトに設計することができる。
【0033】
さらに、前記板状部材には、スラリーが前記回転体の周方向に通り抜け可能な貫通孔が形成されていることが好ましい。
【0034】
これによれば、反応器の内部に緩やかで複雑な流路が形成されるため、スラリーの流れを乱すことなくプラグフローが達成され、収率をより向上させることができる。
【0035】
また、前記板状部材の外縁部を軸中心として回動可能な掻き部材が備えられ、前記回転体の回転に伴って、前記掻き部材が前記プラグフロー反応器の内壁に接触可能になっていることが好ましい。
【0036】
これにより、反応器の内部において内壁近傍でのスラリーの滞留や異物付着(こげつき)が抑制され、原料スラリーの性状や装置スケールに影響されにくく、精度の高いプラグフローが達成される。
【0037】
さらに、前記プラグフロー反応器において可溶化した修飾キシロポリサッカライドに対し、精製されたβ−キシロシダーゼ及びキシラナーゼのうちの少なくとも一方を反応させることで、前記修飾キシロポリサッカライドの側鎖に有する修飾基が保存された、修飾キシロオリゴ糖を得ることができる。
【0038】
これにより、植物細胞壁由来のアセチル基等が側鎖に保存されたまま、例えば高アセチル化キシロオリゴ糖(モノ−、ジ−、トリ−、テトラ−又はペンタ−アセチル−キシロオリゴ糖)と、単糖であるキシロースとを短時間の反応で回収できる。併せて、例えば高アセチル化キシロオリゴ糖(モノ−、ジ−、トリ−、テトラ−又はペンタ−アセチル−キシロオリゴ糖)と、フェルロイル−α−L−アラビノフラノシル−キシロオリゴ糖(FA−XOS)やp−クマロイル−α−L−アラビノフラノシル−キシロオリゴ糖(CA−XOS)のほか、これらの修飾基を併せ持つ、モノ−、ジ−又はトリ−アセチル−FA−XOSや、モノ−、ジ−又はトリ−アセチル−CA−XOS等の修飾キシロオリゴ糖を回収することができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、バイオマスから修飾キシロポリサッカライドを工業的に量産可能な製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明を実施するための形態(本実施形態)について図面を適宜参照しながら説明する。なお、「修飾キシロポリサッカライド」は、キシロースがグリコシド結合した多糖(キシロポリサッカライド)であって、その多糖の側鎖に修飾基(アセチル基等)が存在するものを表すものとする。
【0042】
さらに、本実施形態において、プラグフローとは、反応器12において、スラリーが同じ速度分布で通流する、所謂押し出し流れのことである。即ち、プラグフロー反応器では、通流するスラリーの混合ができるだけ抑制された状態であり、スラリーの異常通過や滞留が防止されて、スラリーが一様の速さで通流している。そのため、反応器12に供給されたスラリーは、反応器12の内部で滞留することなく逐次押し出され、反応器12から排出されていくことになる。このようにすることで、反応器12においてスラリーの全体を満遍なく均一に加熱することができ、一様な反応条件で水熱反応を生じさせて、修飾キシロポリサッカライドが得られる。
【0043】
なお、本実施形態における「プラグフロー」は、反応器12の全体として実質的なプラグフロー(プラグフロー様、プラグフロー形態)を形成しており、修飾キシロポリサッカライドの収率曲線を損なわない程度であれば、部分的な乱流や滞留が生じていてもよい。従って、本実施形態において「プラグフロー」は、全く乱流や滞留が生じていない、理論的理想上の「プラグフロー」であってもよいことはもちろんであるが、この理論的理想上の「プラグフロー」に限定されるものではない。
【0044】
<反応システム100の設備構成>
図1は、本実施形態の反応システム100を示す系統図である。また、
図2は、本実施形態の反応システム100において、バイオマス粉砕物から修飾キシロポリサッカライドが得られるまでに用いられる各装置を示すブロック図である。
図2において示す符号は、
図1において示す符号と一致している。
【0045】
反応システム100では、アセチル基、フェルロイルアラビノフラノシル基及びクマロイルアラビノフラノシル基からなる群より選ばれる少なくとも一種の修飾基を側鎖に有するキシランであって、当該キシランを植物細胞壁に含有するバイオマスを原料として、当該キシランの分解物である、当該修飾基が保存された修飾キシロポリサッカライドが得られる。そして、修飾キシロポリサッカライドの生成は、反応器12において行われる。特に、反応器12によれば、キシロースとその過分解物であるフルフラールとの発生を抑制しつつ、修飾キシロポリサッカライドを製造することができる。
【0046】
反応システム100で用いられるバイオマスは、例えば、農業副産物として比較的まとまった量が得られるコーンコブ等の植物由来のバイオマスであり、その細胞壁にキシランを含むものである。キシランは、農産品加工残渣であるコーンコブやさとうきびバガス、ソルガムやエリアンサス等のソフトバイオマスの植物細胞壁をはじめ、広葉樹やパルプ材等の木質系の植物細胞壁にも多く含まれている。
【0047】
反応システム100は、修飾キシロポリサッカライドの原料となるバイオマス粉砕物を反応部2に供給するための材料供給部1と、材料供給部1において供給されたバイオマス粉砕物を含むスラリーから修飾キシロポリサッカライドを生成するための反応部2と、生成した修飾キシロポリサッカライドを排出する材料排出部3とを備えてなる。以下、材料供給部1に供給されたバイオマス粉砕物から、材料排出部3において排出される修飾キシロポリサッカライドが生成するまでの各装置の構成について、材料等の流れに沿って説明する。
【0048】
材料供給部1は、材料混合装置5と、材料供給タンク8と等を備えて構成されている。バイオマス粉砕物は、はじめに、材料混合装置5に供給される。材料混合装置5に供給されるバイオマス粉砕物の大きさは、平均粒径として5μm以上、好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上であり、その上限は、平均粒径として1000μm以下、好ましくは60μm以下、より好ましくは40μm以下である。平均粒径はレーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(日機装社製MT3300)を用いて測定することができる。材料混合装置5では、バイオマス粉砕物と、後記する冷却器14からの中温冷却水(概ね100℃以下)とが混合され、流動性のあるスラリーが形成される。冷却器14からの中温冷却水の供給は、弁143の開閉によって制御される。そして、形成されたスラリーは、材料供給タンク8に導入される。
【0049】
材料供給タンク8には、沈降防止用の撹拌翼及び保温装置が備えられている。これにより、スラリーは、適度な温度を保持した状態で撹拌されながら、材料供給タンク8に貯留されている。なお、撹拌翼は、インバータ制御されるモータ8aにより制御される。この材料供給タンク8には、詳細は後記するが、後記する冷却器14からの中温冷却水(概ね100℃以下)が供給される。冷却器14からの中温冷却水の供給は、弁142の開閉によって制御される。
【0050】
材料供給タンク8に貯蔵された材料は、材料押し出し用のブースタポンプ9Aと、昇圧ポンプ9Bとの二つのポンプによって流速を制御したうえで、反応部2に供給される。ブースタポンプ9Aは、インバータ制御されるモータ9Aaにより駆動される。また、昇圧ポンプ9Bも、インバータ制御されるモータ9Baにより駆動される。
【0051】
なお、材料供給タンク8に貯蔵された材料のうちの一部が、弁7の開閉によって外部に排出される。また、反応部2には、材料供給タンク8に貯蔵された材料のほか、詳細は後記するが、後記する冷却器13からの高温冷却水(概ね120℃〜180℃)が供給される。
【0052】
反応部2は、スラリーの温度を上昇させる管型の昇温器10と、スラリー中のキシラン(分子鎖中に修飾基を有している)から修飾キシロポリサッカライドを生成する円筒型の反応器12と、昇温器10及び反応器12の内部を加熱するヒータ17と、3段の冷却器(第一冷却器13、第二冷却器14及び第三冷却器15)と等を備えて構成されている。昇温器10にスラリーが供給される際、後記する冷却器13からの高温冷却水(概ね120℃〜180℃)を混合したスラリーが供給されるようになっている。これにより、反応システム100での熱効率の向上が図られている。
【0053】
なお、ヒータ17による発熱量、及び、高温冷却水の供給量は、昇温器10及び反応器12に設けられた図示しない温度センサにより測定された温度に基づいて、フィードバック制御される。
【0054】
昇温器10及び反応器12では、連続的にその内部を通流するスラリーにプラグフローを生じさせながら、水熱反応が行われる。この点についての詳細は、
図2等を参照しながら後記する。また、昇温器10と反応器12とは、同じ構造のものである。そこで、反応器12を例にその構造を説明すると、反応器12の内部には、シャフト19(
図3参照、
図1及び
図2では図示しない)が配置されている。このシャフト19には、インバータ制御されるモータ12bが接続されている。なお、本実施形態では昇温器10を反応器12と独立させて設けているが、昇温器10の機能を反応器12に分担させるようにして昇温器10の設置を省略してもよい。
【0055】
また、反応器12の端部には、内部を封止するための円板状の円板部材12aが取り付けられている。そして、この円板部材12aの中央近傍において、反応器12の内外を貫通するように、モータ12bと接続されるシャフト19が配置されている。円板部材12aでは、油圧ユニット(Oil Pressure Unit)21により、反応器12を貫通するシャフト19の摺動部分に設けた軸封12cの封止性能が確保されている。なお、油圧ユニット(Oil Pressure Unit)21には冷却水が供給され、油圧に伴って発生する熱が冷却されるようになっている。この冷却水の通流は、弁210,211の開閉によって制御される。昇温器10及び反応器12の内部構造については、
図2等を参照しながら後記する。
【0056】
昇温器10内では、スラリーは、水熱反応の設定温度である200℃程度まで速やかに加熱される。そして、このようして加熱されたスラリーは反応器12に供給され、反応器12において、所定時間、修飾キシロポリサッカライドの生成反応(プラグフロー状態での水熱反応)が行われる。
【0057】
昇温器10と反応器12とで処理されたスラリーは、第一冷却器13、第二冷却器14及び第三冷却器15をこの順で通流することで、40℃以下程度にまで冷却される。なお、以下の説明では、説明の簡略化のために、「第一冷却器13」を単に「冷却器13」といい、「第二冷却器14」を単に「冷却器14」といい、「第三冷却器15」を単に「冷却器15」というものとする。
【0058】
冷却器13,14,15において40℃以下程度に冷却されたスラリーは、材料排出部3に供給される。なお、冷却されたスラリーのうちの一部は、弁161を通じて外部に排出され、残部が材料排出部3に供給される。
【0059】
これらの冷却器13,14,15は、いずれも二重管(図示しない)により構成される熱交換器である。冷却器13,14,15には、それぞれ独立した系統により冷却水が供給され、これらのそれぞれに冷却水が通流するようになっている。具体的には、冷却器13には、弁130によって通流が制御される冷却水が供給される。また、冷却器14には、弁140によって通流が制御される冷却水が供給される。冷却器15には、弁150によって通流が制御される冷却水が供給される。
【0060】
また、スラリーと熱交換した結果、熱を帯びた水(使用済み冷却水)が発生するが、3段の冷却器13,14,15のそれぞれからは、温度の異なる冷却水が排出される。即ち、上段の冷却器13に供給されるスラリーは、温度が高くなっている。そのため、冷却器13から排出される使用済みの冷却水(高温冷却水)の温度も高くなる。そこで、前記のように、昇温器10に供給されるスラリーに対して、この高温冷却水が供給される。このとき、高温冷却水は、スラリーに供給する際には、弁132を閉じることで行われる。一方で、スラリーに高温冷却水を供給しないときには、弁132を開けることで、高温冷却水が外部に排水される。
【0061】
また、中段の冷却器14から排出された使用済みの冷却水(中温冷却水)も、前記のように、材料混合装置5及び材料供給タンク8に供給される。このとき、中温冷却水は、材料混合装置5及び材料供給タンク8に供給する際には、弁141を開けた状態で弁142を閉じることで行われる。一方で、材料混合装置5及び材料供給タンク8に中温冷却水を供給しないときには、弁141を閉じた状態で弁142を開けることで、高温冷却水が外部に排水される。
【0062】
さらに、後段の冷却器15から排出された使用済みの冷却水(低温冷却水)は、弁151を解放することで、外部に排水される。
【0063】
なお、冷却器13,14,15からの高温冷却水及び中温冷却水の供給は、反応器12に供給されるスラリーの固形分濃度が10質量%〜30質量%になるように行われる。
【0064】
材料排出部3は、並列の減圧タンク22a,22bと、材料排出タンク23と等を備えて構成されている。減圧タンク22a,22bは、反応部2から排出されたスラリー(加圧されている)の圧力を解放し、大気圧下に排出するために用いられる。減圧タンク22a,22bには、それぞれ、材料切替弁24a,24b,27a,27bと、圧縮エア弁25a,25bと、脱気弁26a,26bと、封圧弁28と、材料排出弁29とが接続されている。そして、これらが協働して制御されることで、圧縮エアによって反応器12内の気圧を維持しながら、減圧タンク22a,22bにスラリーが貯留されるようになっている。
【0065】
具体的には、反応部2からのスラリーは、材料切替弁24aを通じて減圧タンク22aに供給され、脱気弁26aにより減圧タンク22aの気圧と反応器12の圧力とが同じになるように制御している。また、このとき、材料排出部3における他の弁は全て閉じられている。
【0066】
この状態で、減圧タンク22a内がスラリーで満たされると、材料切替弁24aが閉じられるとともに、材料切替弁24b及び脱気弁26bが開けられる。反応部2からのスラリーは、材料切替弁24bを通じて減圧タンク22bに供給され、脱気弁26bにより、減圧タンク22bの気圧と反応器12の圧力とが同じになるように制御している。
【0067】
一方で、スラリーで満たされた減圧タンク22aでは、スラリーを外部に排出するための制御がなされる。具体的には、まず、減圧タンク22aに接続された脱気弁26aが徐々に開放されることで、減圧タンク22aの内部の気体が外部に排出される。この結果、減圧タンク22a内の圧力は、スラリーを排出可能な程度の圧力まで低下される。そして、減圧タンク22aの内部の圧力が低下したら、材料排出弁27a及び流量調整弁28が開放され、その内部のスラリーは、材料排出タンク23に供給される。材料排出タンク23に供給されたスラリーは、材料排出タンク23に貯留されることになる。
【0068】
減圧タンク22a内のスラリーが全て材料排出タンク23に供給されたら、流量調整弁28及び材料排出弁27aが閉じられ、圧縮エア弁25aが開いて、減圧タンク22a内に圧縮空気を供給し、減圧タンク22a内と反応器12内が同じ圧力になると、圧縮エア弁25aが閉じて待機状態となる。次いで、減圧タンク22b内のスラリーについても、前記の減圧タンク22aと同様にして、材料排出タンク23にスラリーが供給される。これらのように、減圧タンク22aからのスラリーの排出と、減圧タンク22bからのスラリーの排出とが交互に行われ、反応器12の内圧が維持されたまま、材料排出タンク23へのスラリーの供給が行われる。そして、材料排出弁29が開けられることで、材料排出タンク23から、修飾キシロポリサッカライドとしてのスラリーが排出される。
【0069】
このように反応器12の内圧が維持されることで、反応器12においてより確実な水熱反応を生じさせて、修飾キシロポリサッカライドが得られる。また、フロー式の反応器12に加えて、材料排出部3もフロー式にすることができるため、反応システム100の全体を完全なフロー式にすることができる。
【0070】
<反応器12の構造>
図3は、本実施形態の反応システムに備えられた反応器12の内部構造を示す図であり、(a)はスラリーの流れ方向に垂直な方向視での断面図、(b)は(a)のA−A線断面図である。ただし、
図3に示す反応器12は、本実施形態の回収システム100を実施するための使用可能な装置の一例であり、プラグフローを生成させる流路制御機構を内部に備えた円筒型のプラグフロー反応器であれば、他にどのようなものを用いてもよい。なお、前記のように、昇温器10の内部構造も、
図3に示す構造と同じ構造になっているため、以下の説明では、説明の簡略化のために、反応器12の内部構造についてのみ説明する。
【0071】
図3(a)及び(b)に示すように、反応器12は、中空の円管(円筒)11と、その内部に配置され、スラリーの流れ方向に平行な方向の回転軸を軸中心として回転される円柱状のシャフト19と、シャフト19の外側面に配置された流路制御翼16とを備えて構成されている。そして、このシャフト19は、前記のように、モータ12bに接続されている。そのため、モータ12bの駆動に伴って、シャフト19及び流路制御翼16が回転するようになっている。回転方向は、
図3(b)において矢印Cで表す方向である。ただし、回転方向は、逆向きであってもよい。
【0072】
また、円管11の端部(紙面左方向の端部)は解放可能になっているが、反応器12の運転時には、前記のように円板部材12aによって、その内部が封止されている。円板部材12aは、円管11のフランジの部分に対して、ボルト12d及びナット12eを用いて締結されている。円板部材12aと当該フランジとの間には、Oリングが配置されている。また、円板部材12aの外部には、円板部材12aとシャフト19とを封止する軸封12cが配置されている。
【0073】
流路制御翼16は、反応器12の内部におけるスラリーの流路(スラリーの通流)を制御するものである。本実施形態では、流路制御翼16を備えたシャフト19が回転することでスラリーの均等な加熱な実現されていることから、これら(即ち、前記の流路制御機構)は「均等加熱手段」ということもできる。流路制御翼16は、シャフト19の外周面に複数備えられている。特に、反応器12では、
図3(b)に示す断面視で、90°ずつの間隔で四方に向かって備えられている。このような構成にすることで、反応器12の内部に十分なプラグフローが形成される。そして、原料が受ける反応過酷度が一定に保たれるため副反応が抑制され、生産スケールが向上しても収率が低下することなく、修飾キシロポリサッカライドが得られる。
【0074】
流路制御翼16は、シャフト19の外側に向かいつつ、かつ、スラリーの流れ方向に延在するような板状部材16aにより形成されている。板状部材16aの厚さとしては、例えば3mm〜15mm程度にすることができる。また、シャフト19の側面に備えられる流路制御翼16(板状部材16a)の幅(スラリーの通流方向の長さ)は、例えば50mm〜150mm程度にすることができる。
【0075】
反応器12の大きさとしては、円管11の内径として、例えば50mm〜300mm程度にすることができる。また、反応器12の長さ(スラリーの通流方向の長さ)としては、例えば500mm〜3000mm程度にすることができる。さらに、反応器12の内部に備えられるシャフト19の直径は、例えば30mm〜200mm程度にすることができる。
【0076】
前記のような寸法の反応器12を用いることで、スラリーの通流条件が同じである場合には、従来では400L程度/日のスラリーしかできなかったのものが、本実施形態の反応器12によれば、40000L程度/日(28L/分)のスラリーが大型プラントを用いて処理可能になる。そして、40000L程度/日のスラリーを処理することで、例えば1800kg程度/日の修飾キシロポリサッカライド(従来では18kg程度/日))が得られる。
【0077】
また、この板状部材16aには、スラリーがシャフト19の周方向に通り抜けることができるように、くり抜き部16b(貫通孔)が形成されている。そして、くり抜き部16bが形成されていることで、反応器12の内部に緩やかで複雑な流路が形成されることになり、スラリーの流れを乱すことなくプラグフローが達成され、収率がより向上する。
【0078】
板状部材16aに形成されるくり抜き部16bの形状や大きさは特に制限されないが、くり抜き部16bが例えば矩形状である場合、くり抜き部16bの長さ(スラリーの通流方向の長さ)は、例えば20mm〜130mm程度にすることができる。また、くり抜き部16bの高さ(シャフト19から外側に向かう方向の長さ)は、例えば30mm〜200mm程度にすることができる。
【0079】
流路制御翼16の大きさに関して、円管11の内壁と、流路制御翼16の外縁部16cとの間の距離d(
図3(a)参照)は、本実施形態では5mm以下になっている。これにより、スラリーの沈降や滞留が抑制され、より良好なプラグフローが得られるようになっている。
【0080】
本実施形態では、反応器12の内部でプラグフローを生じさせるため、反応過酷度という指標により、反応器12における反応が制御されている。具体的には、160℃以上の温度及び当該温度における飽和水蒸気圧以上の圧力であって、かつ、以下の式(1)により計算される反応過酷度R
0が3000以上7000以下となるように、温度及び時間が制御されている。
【数2】
ただし、T(t)は温度(℃)の時間変化を表し、T
rは基準温度(100℃)を表し、tは時間(分)を表し、ωは定数(=14.75)である。
【0081】
水の飽和蒸気圧以上の圧力及び160℃以上の温度にすることで、反応器12の内部に水熱反応が生じることになる。また、反応過酷度は、100℃以上の水熱反応条件において、スラリーが受けた熱及び時間の履歴をエネルギ値に換算したパラメータである。そのため、反応過酷度R
0によって反応を制御することで精密な反応条件で水熱反応を生じさせることができ、修飾キシロポリサッカライドが得られる。
【0082】
反応器12の内部に備えられるシャフト19の回転速度は、流路制御翼16の外縁部16cの周速度として0.02m/秒以上0.3m/秒以下になるように、設定されている。特に、外縁部16cの回転速度を0.02m/秒以上にすることで、反応器12の内部において、スラリー中の固形分が沈降することを抑制及び滞留することを抑制でき、副反応を十分に抑制することができる。
【0083】
また、外縁部16cの回転速度を0.3m/秒以下にすることで、プラグフロー状態を十分に維持することができ、異常通過による過少反応及び滞留による過剰反応が抑制され、十分に高い収率を得ることができる。さらには、シャフト19の回転速度をこの範囲にすることで、スラリーの移動経路を長くすることができ、スラリーの異常通過及び沈降を抑制するとともに、過剰滞留が抑制される。これに加えて、熱伝達面積を増大させることができるため、熱伝達効率を向上させることができ、これにより、反応器12をコンパクトに設計することができる。
【0084】
図4は、本実施形態の反応システム100に備えられた反応器12Aの内部構造を示す図であって、
図3に示した反応器12の変形例であり、(a)はスラリーの流れ方向に垂直な方向視での断面図、(b)は(a)のB−B線断面図である。
図4に示す反応器12Aでは、板状部材16aの一部であって、掻き部材20aを支持する支持台18と、板状部材16aの外縁(即ち一対の支持台18の間)であって、支持台18に対して回動可能にボルト20cによって取り付けられた掻き部材20aと、一対の支持台18の間であって、掻き部材20aが重力に従ってシャフト19側に倒れることを防止する押さえ部材20bと、を備えている。なお、この押さえ部材20bは、板状部材16aの一部を構成している。また、押さえ部材20bとシャフト19との間には、くり抜き部16bが形成されている。
【0085】
反応器12Aでは、シャフト19の回転に伴って、掻き部材20aが駆動するようになっている。即ち、
図4(b)に示すように、シャフト19の下側にある掻き部材20aは鉛直下方向に倒れ、円管11の内壁に接触する。この状態でシャフト19が矢印Dの方向に回転すると、円管11の内壁であって下部のような滞留が生じやすいところについて、掻き部材20aが接触しながらシャフト19が回転することになる。これにより、反応器12の内部において内壁近傍でのスラリーの滞留が抑制され、原料スラリーの性状や装置スケールに影響されにくく、精度の高いプラグフローが達成される。
【0086】
<バッチ式反応器と本実施形態の反応器12とにおける収率の検討>
(バッチ式反応器における収率の検討)
次に、プラグフローを生じさせることができる反応器12,12Aの効果を検証するため、水熱反応を精密に制御できるバッチ式の反応器(図示しない)、及び、
図3に示す反応器12によって、修飾キシロポリサッカライドを製造した。
【0087】
まず、コーンコブミール粉砕物(タイ産)を、固形分濃度として13.0質量%になるように、スラリーを調製した。そして、そのスラリー30mLを、SUS316製バッチ式水熱反応器(容量50mL、耐圧硝子工業社製)に入れた。次いで、180℃、190℃及び200℃の三温度水準のソルトバスを用い、反応時間を0分〜24分の範囲での任意の時間、前記式(1)に基づく反応過酷度R
0換算で0〜20000に相当する水熱反応を与えた。ここで、180℃、190℃及び200℃のうちの何れかの温度を選択し、その温度において反応時間を任意に変更することで、様々な反応過酷度R
0を与えた。水熱反応中、水熱反応器内部の温度履歴は熱電対で実測し、スラリーの受けた実際の反応過酷度を算出した。
【0088】
水熱反応後、水熱反応器ごと冷水で急速冷却し、HPLCを用いて生成物を分析した。具体的には、水熱反応後のスラリーにおける可溶化画分について、修飾キシロポリサッカライド(糖重合度が2以上であって、糖重合度が2〜12程度のオリゴ糖領域を含む)、キシロース、及び、フルフラールの含有量を測定した。また、反応後のスラリーにおける不溶化画分については、硫酸分解により生成したキシロース量から未反応のキシランの量を算出した。また、理論値として、予め酸分解法により取得したコーンコブの糖組成分析結果を行って、修飾キシロポリサッカライド、キシロース、及び、フルフラールの理論収率(キシランが完全に分解された場合の各成分の生成量)を算出した。
【0089】
図5は、コーンコブ原料を用い、反応条件を精密に制御できる低容量バッチ式反応器で精密に水熱反応させたときの反応過酷度に対する生成物の収率曲線を示すグラフである。●はキシランの収率を、▲は修飾キシロポリサッカライドの収率を、▼はキシロースの収率を、■はフルフラールの収率を表している。そして、それぞれの成分の各プロットに基づいて近似曲線を描いた。各成分の近似曲線の実験式は以下の通りである。
【0090】
キシラン:
y=2.77×10
−23x
6−2.05×10
−18x
5+6.16×10
−14x
4−9.64×10
−10x
3+8.42×10
−6x
2−4.05×10
−2x+1.00×10
2
修飾キシロポリサッカライド:
y=−1.95×10
−23x
6+1.58×10
−18x
5−5.16×10
−14x
4+8.95×10
−10x
3−8.80×10
−6x
2+4.08×10
−2x+6.25×10
−1
キシロース:
y=1.23×10
−19x
5−5.99×10
−15x
4+8.68×10
−11x
3−3.29×10
−7x
2+1.11×10
−3x−1.01×10
−2
フルフラール:
y=−3.10×10
−16x
4+9.39×10
−12x
3−1.24×10
−8x
2+2.18×10
−4x−5.53×10
−2
※注 前記各式中、xは反応過酷度を表し、yは収率を表す。
【0091】
反応過酷度の増加によってキシランは徐々に分解して、修飾キシロポリサッカライド及びキシロース、さらにはキシロースの過分解物であるフルフラールが生成する。そして、反応過酷度が2600を超えると、修飾キシロポリサッカライドの理論収率は60%を超え、反応過酷度が4700付近で収率は68.3%の極大値を示した。この後、さらに反応過酷度が大きくなると、修飾キシロポリサッカライドの分解が進行する結果、収率が低下する。そして、反応過酷度が7500を超えると、収率は再び60%を下回り、それと同時に、キシロース及びフルフラールの濃度が上昇していた。
【0092】
図5に示すように、水熱反応によって受けた反応過酷度と、コーンコブ由来の各成分の収率とは、設定した反応温度に関わらず、極めて相関性の高いことがわかった。即ち、反応過酷度R
0を制御するにあたって温度及び時間を任意に設定したが、温度や時間ではなく反応過酷度に基づいてプロットすることで、高い相関性が示された。そして、グラフ中太実線で示される範囲である反応過酷度が3000〜7000において、キシロース及びフルフラールの生成が十分に抑えられ、かつ、修飾キシロポリサッカライドが高収率に回収できた。また、図示はしていないが、チューブ式反応器(前記した特開2008−253861号公報に記載の反応器;反応管内径:φ25mm、昇温器長:8m、昇温器容量:4000mL、反応器長:4m、容量:2000mL、標準処理速度:300mL/分(可変))を用いて同様のプロットを行うと、反応過酷度3000〜7000において、
図5に示す収率曲線と一致した。
【0093】
(本実施形態の反応器12における収率の検討)
次に、
図3に示した反応器12を備える反応システム100を用いて、コーンコブミール(タイ産)の水熱反応を試みた。反応器12において、円管11の内径はφ140mm、長さ(スラリーの通流方向の長さ)は2200mm、シャフト19の直径はφ62mmとした。さらに、流路制御翼16の厚さ(スラリーの流れに垂直な方向の厚さ)は10mmとした。また、流路制御翼16には、
図3に示すような矩形状のくり抜き部16bが設けられている。くり抜き部16bの大きさとしては、幅(スラリーの流れ方向の長さ)が200mm、高さ(シャフト19から外側に向かう方向の長さ)は40mm、厚さは10mmとした。また、流路制御翼16の外縁部16cから円管11の内壁までの距離は、2mmとした。これらの寸法により、反応器12の有効容量は24Lである。
【0094】
コーンコブは、前記の測定装置を用いて測定した平均粒径が30μm〜60μmになるようにボールミルで粉砕し、温水を加え、スラリー状にしたものを原料とした。反応器12のヒータ17の温度及びポンプ流量を調整し、反応温度が180℃〜200℃、反応器12内部の滞留時間が9分〜17分になるようにした。そして、供給するスラリーとして、固形分濃度で15.7質量%〜18.6質量%のコーンコブスラリーを流通させて、反応経過を観察した。スラリーは、1日あたり2.4トン〜4.5トンの流量(流速として2L/分)で通流させた。
【0095】
反応器12において、シャフト19の回転速度を10rpm(流路制御翼16の外縁部16cの周速度として0.07m/s)に制御したところ、160℃以上の水熱反応を利用する温度領域では、反応器12の内部の実測温度は、反応器12に設定した温度に対して±2℃以内に精密に制御されていた。また、反応器12の内部の圧力は、蒸気圧曲線以上である2.0MPaで安定していた。
【0096】
反応器12の下流側に備えられた材料排出タンク23から排出されたスラリーについて、反応中の反応器12の内部の温度及び流速(時間)に基づいて反応過酷度を計算し、
図5の収率曲線と同様にして、反応過酷度に対する収率をプロットした。
【0097】
図6は、コーンコブ原料を本実施形態の反応器で水熱反応させたときの収率と、バッチ式反応器により精密に得られた収率曲線とを比較するグラフである。○はキシランの収率を、△は修飾キシロポリサッカライドの収率を、▽はキシロースの収率を、□はフルフラールの収率を表している。また、
図6において破線で示すグラフは、
図5において実線で示した収率曲線と同じものである。
【0098】
図6に示すように、本実施形態の反応器12を備える回収システム100を用いて得られたキシラン、修飾キシロポリサッカライド、キシロース及びフルフラールの各収率は、
図5に示したバッチ式の反応器で精密に得られた収率曲線に一致した。特に、反応過酷度が3000程度〜7500程度の領域において、とりわけ精度よく一致した。
【0099】
図6の結果は、水熱反応を精密に制御できる30mLのバッチ式反応器と同様に、パイロットスケールである2000mL/分のスケールの連続式の反応器12でも、水熱反応条件が十分に制御されていることを示している。即ち、修飾キシロポリサッカライドとキシロースとの合計収率が確保されていることから、キシランを分解するために用いられる熱の伝達が良好に行われたといえる。即ち、本実施形態の反応器12においても、精密に温度を制御できるバッチ式反応器と同様の均一な熱伝達が行われているといえ、反応器12の内部には、プラグフローが生じていると考えられる。
【0100】
また、修飾キシロポリサッカライドの収率は、破線で示すバッチ式反応器の収率曲線と同様の傾向を示している。これにより、反応器12を未反応のまま通過するスラリーが少なく、かつフルフラールへの変換率が抑制され、反応器12内に長時間滞留するスラリーも少ないと考えられる。これらのことから、プラグフローを生じさせている本実施形態の反応器12でも、従来は困難であった大きなスケールでの修飾キシロポリサッカライドを製造できることがわかった。
【0101】
<反応器12により得られた修飾キシロポリサッカライドの構造の検討>
次に、本実施形態の反応器12を備える回収システム100を用いて得られた濾液(可溶性画分)に含まれる修飾キシロポリサッカライドの構造について、HPLC及びMALDI−TOF MSによって解析した。
【0102】
まず、
図3に示した反応器12を用いて、反応過酷度が4600となる条件で、キシランを含むバイオマスのスラリーに対して水熱反応を行った。そして、反応器12の下流側の材料排出タンク23から排出されたスラリー(水熱反応後のスラリー)に対して、遠心分離及びフィルタ濾過を行い、不溶性の固形分を除去し、濾液(可溶性画分)を得た。次いで、得られた濾液について、1Mの硫酸酸性下で3時間煮沸した後、飽和水酸化バリウム水溶液で中和した。不溶性の硫酸バリウムを除去した後、単糖及びウロン酸の含有量のそれぞれについて、RI検出器を用いてHPLCにより分析した。
【0103】
また、アセチル基及びメチル基からそれぞれ誘導される酢酸及びメタノールの含有量についてもそれぞれ同様に分析した。そして、測定された酢酸及びメタノールの含有量に基づいて、アセチル基及びメチル基の含有量を算出した。
【0104】
さらに、エステル化されたフェルラ酸及びp−クマル酸の含有量について、1Mの水酸化ナトリウム水溶液のアルカリ条件下、65℃で2時間の脱エステル化反応後、塩酸で中和してから、UV検出器を用い、HPLCにより決定した。そして、測定された、エステル化されたフェルラ酸及びp−クマル酸の含有量に基づいて、フェルロイル基及びp−クマロイル基の含有量を算出した。
【0105】
以上の分析結果を表1に示す。
【表1】
【0106】
表1に示すように、キシロースが主成分として検出された。これは、キシランが水熱反応により可溶化して修飾キシロポリサッカライドが生成するとともに、この修飾キシロポリサッカライドが酸分解された結果、これを構成する単糖であるキシロースとして検出されたものである。また、検出された単糖には、グルコースやアラビノース、マンノース、ガラクトースも含まれていた。
【0107】
また、アセチル基やフェルロイル基、p−クマロイル基が検出された。これらのことから、小スケールでの水熱反応でしか見られなかったこれらの修飾基が、反応器12を用いたパイロットスケールの水熱反応においても、よく保存されていることが見出された。
【0108】
また、キシロースの含有量に対するアセチル基の含有量をモル比で表した置換度を算出すると、置換度は0.18と計算された。この結果は、1個のキシロース(キシロピラノース)に対して0.18個(約0.2個)のアセチル基が置換されていることを示している。従って、この結果から、5直鎖のキシロピラノースに対して1つのアセチル基が存在していることが明らかになった。
【0109】
同様に、キシロースの含有量に対する、アラビノース、フェルロイル基及びp−クマロイル基のそれぞれの含有量をモル比で表した置換度を算出すると、置換度はそれぞれ0.043、0.02、0.0072と計算された。この結果から、植物細胞壁由来のキシランにしか存在しない修飾基であるフェルロイルアラビノフラノシル基及びクマロイルアラビノフラノシル基も、反応器12を用いて得られた修飾キシロポリサッカライドにも保存されていることが明らかになった。
【0110】
<反応器12により得られた修飾キシロポリサッカライドに対して酵素反応させたときの生成物の検討>
表1の結果を得るために用いた濾液(可溶性画分)を130mL採取し、採取した濾液に対し、エタノール濃度が80体積%になるまで、ゆっくり撹拌しながらエタノールを加えた。4℃で一晩静置した後、沈殿物をガラスフィルタで沈殿物を回収した。そして、回収された沈殿物をエタノール及びアセトンでそれぞれ2回ずつ洗浄した後、4日間真空乾燥した。
【0111】
真空乾燥後の固体から、約3gの修飾キシロポリサッカライドが得られた。この修飾キシロポリサッカライドは、本実施形態の反応器12において得られたものである。そして、pHが5〜6のイオン交換水にこの修飾キシロポリサッカライドを溶解し、1質量%の修飾キシロポリサッカライド水溶液を調製した。得られた水溶液について、酵素反応試験及びMALDI−TOF MS分析を行った。
【0112】
酵素反応試験に用いた酵素は、Streptomyces olivaceoviridis由来のものである。そして、用いた酵素は、糖質関連酵素(CAZ)のデータベースにおける糖質加水分解酵素(GH)ファミリのGH43に分類される精製β−キシロシダーゼ、及び、GH10及びGH11に分類される2種類の精製エンド−β−1,4−キシラナーゼの3種類である。これらの酵素は精製されており、エステラーゼの含有量が極めて抑えられたものである。
【0113】
調製した1質量%修飾キシロポリサッカライド溶液40に対して、各酵素を1の比率(体積比)になるよう添加し、37℃で15時間、反応させた。反応後は100℃で5.0分の熱失活処理を施し、酵素反応後の試験液についてMALDI−TOF MS分析を行った。
【0114】
MSスペクトルの解析によると、酵素反応前の基質である修飾キシロポリサッカライド(FAXyl3)では、糖重合度(DP)4〜12以上のモノ−、ジ−、トリ−、テトラ−のアセチル基(即ち、Ac1〜Ac4)によって修飾された修飾キシロポリサッカライドに対応するピークが検出された。
【0115】
図7は、本実施形態の反応器12を用いて得られた修飾キシロポリサッカライドの糖重合度とアセチル化度との関係についてのMALDI−TOF MSによる解析結果である。修飾キシロポリサッカライドの糖重合度とアセチル化度との関係は、y=0.17x(xが糖重合度であり、yがアセチル化度、後記する
図8〜
図10において同じ)の実験式で近似された。実験式で示される係数0.17は、キシロースに対するアセチル基の置換度を表し、表1のHPLC糖分析で得られた置換度0.18とほぼ一致していた。これは、全く異なる方法でアセチル基の置換度を評価しても、同じ結果が得られたことを表している。そのため、この結果から、本実施形態の反応器12を用いて水熱反応を生じさせた場合には、植物細胞壁由来のキシランに存在する修飾基であるアセチル基がよく保存されているといえる。
【0116】
図8は、本実施形態の反応器12を用いて得られた修飾キシロポリサッカライドにβ−キシロシダーゼ(GH43)を作用させて得られる修飾キシロオリゴ糖の糖重合度とアセチル化度との関係についてのMALDI−TOF MSによる解析結果である。修飾キシロオリゴ糖の糖重合度とアセチル化度との関係は、y=0.38xの実験式で近似された。
【0117】
β−キシロシダーゼは、キシランの非還元末端側からアセチル基を持たないキシロ糖鎖を切断していくため、非アセチル化キシロオリゴ糖鎖はほぼ完全に資化されたといえる。一方で、残った修飾キシロオリゴ糖のアセチル基の置換度は、近似された実験式の傾きである0.38と考えられ、
図7に示した元の修飾キシロポリサッカライドのアセチル化度(0.18)よりも大きかった。ここで、β−キシロシダーゼは、アセチル基等の修飾により反応阻害を起こすため、グリコシド結合を切断することができない。そこで、この反応阻害を利用してグリコシド結合の切断を抑制し、高アセチル化キシロオリゴ糖として回収することができた。
【0118】
また、元の修飾キシロポリサッカライドよりも糖重合度が大きい修飾キシロオリゴ糖が増加しているのは、MSによって検出されていない、糖重合度が12以上の高分子のアセチル化修飾キシロポリサッカライドが基質(酵素反応前の修飾キシロポリサッカライド)内に存在したためであると考えられる。即ち、このような高分子のアセチル化修飾キシロポリサッカライドは、酵素反応によって低分子化されるため、検出されるアセチル化キシロオリゴ糖の濃度が上がってきたものと考えられる。
【0119】
図9は、本実施形態の反応器12を用いて得られた修飾キシロポリサッカライドにβ−キシロシダーゼ(GH10)を作用させて得られた修飾キシロオリゴ糖の糖重合度とアセチル化度との関係についてのMALDI−TOF MSによる解析結果である。また、
図10は、修飾キシロポリサッカライドにβ-キシロシダーゼ(GH11)を作用させて得られた修飾キシロオリゴ糖の重合度とアセチル化度との関係についてのMALDI−TOF MSによる解析結果である。
【0120】
図9及び
図10に示すように、いずれの酵素を用いた場合でも、修飾キシロオリゴ糖のアセチル化度は上昇していた。具体的には、β−キシロシダーゼ(GH10)を作用させた場合(
図9)には、アセチル化度(近似式の傾き)は0.72であり、β−キシロシダーゼ(GH11)を作用させた場合(
図10)には、アセチル化度(近似式の傾き)は0.50であった。これらのうち、β−キシロシダーゼ(GH10)を用いた場合、β−キシロシダーゼ(GH10)は非アセチル化領域での活性が高く、また、アセチル残基による反応阻害も大きいと考えられる。そのため、後者(β−キシロシダーゼ(GH11))と比較して、低い糖重合度かつ高アセチル化度の修飾キシロオリゴ糖を回収することができる。
【0121】
一方、本実施形態の反応器12を用いて得られた修飾キシロポリサッカライドについて、β−キシロシダーゼ(GH10)及びβ−キシロシダーゼ(GH11)による酵素分解を行い、得られた溶液についてMAlDI−TOF MS分析を行った。その結果を表2に示す。表2には、酵素反応により得られた修飾キシロオリゴ糖の種類、及び、そのm/zの値を示している。
【0123】
表2中、「FA」は、官能基「フェルロイル−α−L−アラビノフラノシル」を表す。また、「CA」は、「p−クマロイル−α−L−アラビノフラノシル」を表す。さらに、「Xyl」の後の数字は、キシロースの数を表す。よって、例えば「FAXyl3」は、「フェルロイル−α−L−アラビノフラノシル−キシロ−トリオース」を表している。また、「Ac」はアセチル基を表し、その後の数字はアセチル基の数を表す。よって、「FAXyl3Ac1」は、「フェルロイル−α−L−アラビノフラノシル−モノアセチル−キシロ−トリオース」を表している。また、FAXyl1、FAXyl2、FAXyl3、FAXyl4、FAXyl5、CAXyl1、FAXyl2、FAXyl3及びFAXyl4は、いずれも修飾キシロポリサッカライドの一種である。他の糖質についても同様である。
【0124】
MALDI−TOF MS分析の結果、フェルロイル−α−L−アラビノフラノシル−キシロオリゴ糖(FA−キシロオリゴ糖)と、FA−キシロオリゴ糖にアセチル基が1〜3つ結合したモノアセチル−FA−キシロオリゴ糖、ジアセチル−FA−キシロオリゴ糖、トリアセチル−FA−キシロオリゴ糖が検出された。このように、酵素反応によって、糖重合度が2〜7のFA−キシロポリサッカライドに対して1〜3のアセチル基が配位した様々なオリゴ糖成分が回収された。具体的には、FAXyl2Ac1、FAXyl2Ac2、FAXyl2Ac3、FAXyl3Ac1、FAXyl3Ac2、FAXyl3Ac3、FAXyl4Ac1、FAXyl4Ac2、FAXyl4Ac3、FAXyl5Ac1、FAXyl5Ac2、FAXyl5Ac3、FAXyl6Ac1、FAXyl6Ac2、FAXyl6Ac3、FAXyl7Ac1、FAXyl7Ac2及びFAXyl7Ac3が回収された。
【0125】
また、同じくMALDI−TOF MS分析の結果、p−クマロイル−α−L−アラビノフラノシル−キシロオリゴ糖(CA−キシロオリゴ糖)及びモノアセチル−CA−キシロオリゴ糖のピークも検出された。具体的には、CAXyl2、CAXyl3、CAXyl4、CAXyl2Ac1、CAXyl3Ac1及びCAXyl4Ac1が検出された。従って、本実施形態の反応器12を用いて得られた修飾キシロポリサッカライドに対して酵素反応(β−キシロシダーゼ及びキシラナーゼ)を行うと、植物細胞壁由来キシランの側鎖に有する修飾基が保存され、しかも修飾度の高い修飾キシロオリゴ糖を生産することが可能となることがわかった。また、図示はしていないが、酵素反応の進行に伴って、これらとともに、単糖のキシロースも生産されると考えられる。
【0126】
具体的には、例えば高アセチル化キシロオリゴ糖(モノ−、ジ−、トリ−、テトラ−又はペンタ−アセチル−キシロオリゴ糖)と、単糖であるキシロースとを短時間の反応で回収できる。併せて、例えば前記の高アセチル化キシロオリゴ糖と、FA−キシロオリゴ糖やCA−キシロオリゴ糖のほか、モノ−、ジ−又はトリ−アセチル−FA−XOSや、モノ−、ジ−又はトリ−アセチル−CA−XOS等の修飾キシロオリゴ糖を回収することができる。
【0127】
以上のように、プラグフローを生じさせる反応器12を用いるとともに、反応過酷度を制御することで、修飾基が側鎖に保存された修飾キシロポリサッカライドを得ることができる。そして、得られた修飾キシロポリサッカライドは、既に可溶化しているため酵素の作用を受けやすい状態にあり、この修飾キシロポリサッカライドに対して少量の精製酵素を作用させることで速やかに反応が進み、例えばFAXyl2Ac1等の修飾度が高く有用な修飾キシロオリゴ糖を低コストで大量に生産することができる。
【0128】
<まとめ>
以上のように、反応器12を用いて得られた修飾キシロポリサッカライドは、糖重合度が2〜12程度のオリゴ糖の領域から、糖重合度が20以上の高分子の領域を含む多糖である。しかも、得られた修飾キシロポリサッカライドは、植物細胞壁が本来大量に持っていた、アセチル基やフェルロイル−α−L−アラビノフラノシル基(FA)、p−クマロイル−α−L−アラビノフラノシル基(CA)等の修飾基が保存されたまま、大量に回収されることができた。
【0129】
また、説明は省略したが、水熱反応によって生成した修飾キシロポリサッカライドにβ−キシロシダーゼやエンド−β−1,4−キシラナーゼを反応させると、キシラン含有バイオマスにアルカリ処理又は蒸煮処理の前処理を施してから直接酵素反応させるよりも、反応速度に換算して約24倍〜48倍程度、反応速度が速くなる。さらには、アルカリ処理を施したバイオマスに対してだったり、エステラーゼを含んだ酵素処理を行ったりするような従来の場合には、アセチル基等の修飾基が全て外れてしまう。そのため、従来の方法では、低分子のホモの非修飾キシロオリゴ糖まで分解が進行してしまい、ヘテロ糖質である修飾キシロオリゴ糖の生成は困難である。
【0130】
また、反応過酷度が低いと、分解が進行しにくくなり、修飾キシロポリサッカライドの収率自体が低下する。一方で、反応過酷度が高くなると、収率の低下にとどまらず側鎖が外れ易くなり、修飾キシロポリサッカライドの修飾基自体が減少する。即ち、キシラン含有のバイオマス原料が水熱反応中に受けた反応過酷度と、残存する修飾基の量との間には、相関関係がある。そこで、均一かつ良好な反応過酷度を全ての原料に与えるために、本実施形態では、プラグフローを生じさせる反応器12が使用されている。そこで、修飾キシロポリサッカライドの修飾基の保存性を解析すれば、どのような水熱反応が行われていたのかその反応履歴を正確に見積もることができる。
【0131】
そして、本実施形態の反応器12を用いて得られたスラリーについて、膜分離や活性炭処理、イオン交換処理等によって精製し、濃縮後、噴霧乾燥や凍結乾燥を施すと、修飾キシロポリサッカライドを含む白色の粉末が得られる。この修飾キシロポリサッカライドの側鎖には修飾基が保存されているため、修飾キシロポリサッカライドは高分子であるにも関わらず、水への溶解性が高くなる。また、この修飾キシロポリサッカライドは、低分子の修飾キシロポリサッカライド由来のほのかな甘味を有しながら、砂糖のような舌触りの良い食感を持つ安定な糖質となる。
【0132】
修飾キシロポリサッカライドの基本骨格は、ヘミセルロースの構造であるβ−1,4結合で構成されている。そのため、水溶性を有する食物繊維と評することができ、現代の食生活で摂取しにくい食物繊維としての機能が得られる。また、側鎖が保存されている水溶性の修飾キシロポリサッカライドは、消化器官内のpH環境でも分解されにくく、その多くが未変化のまま腸内に到達する。それゆえ、到達した修飾キシロポリサッカライドの一部は腸内細菌により資化されて酢酸やフェルラ酸、クマル酸等の有用な有機酸を生じるため、修飾キシロポリサッカライドは優れたプレバイオティクス素材としての利用が期待される。