特許第6218304号(P6218304)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6218304
(24)【登録日】2017年10月6日
(45)【発行日】2017年10月25日
(54)【発明の名称】可動式防波堤及び可動式防波施設
(51)【国際特許分類】
   E02B 3/06 20060101AFI20171016BHJP
【FI】
   E02B3/06 302
【請求項の数】5
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-55551(P2013-55551)
(22)【出願日】2013年3月18日
(65)【公開番号】特開2014-181465(P2014-181465A)
(43)【公開日】2014年9月29日
【審査請求日】2016年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】501204525
【氏名又は名称】国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】特許業務法人 インテクト国際特許事務所
(73)【特許権者】
【識別番号】506122246
【氏名又は名称】エム・エムブリッジ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(73)【特許権者】
【識別番号】000219406
【氏名又は名称】東亜建設工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】新日鉄住金エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】有川 太郎
(72)【発明者】
【氏名】木原 一禎
(72)【発明者】
【氏名】前川 勉
(72)【発明者】
【氏名】海老塚 裕明
(72)【発明者】
【氏名】井上 博士
(72)【発明者】
【氏名】木村 博英
(72)【発明者】
【氏名】城鼻 利紹
【審査官】 苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−122308(JP,A)
【文献】 特開2006−022885(JP,A)
【文献】 特開平07−083212(JP,A)
【文献】 実開平03−124007(JP,U)
【文献】 特開平09−043041(JP,A)
【文献】 特開平08−330009(JP,A)
【文献】 特開2002−222607(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/04〜 3/14
F16B 5/00〜 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に長尺に形成され、水底側に開口部を有して水底地盤内に挿入されて固定された外筒管と、
前記外筒管の開口部側に設けられる複数の貫通孔と、
前記外筒管の内部に挿入され、前記外筒管の長手方向に昇降移動可能に配置されるとともに、自身の内部に供給された気体により浮力を生じて上昇可能に設けられた浮上管と、
前記外筒管の開口部の内縁となる内壁の形状に沿った形状の曲面を有するとともに、前記内壁に設けられる外筒管開口部揺止部材と、
前記外筒管開口部揺止部材の前記曲面の外側に設けられて、前記貫通孔に嵌め込まれて前記外筒管開口部揺止部材を前記外筒管に固定する固定用突起部と、
前記外筒管の外側から前記貫通孔に嵌め込まれるキャップと、
前記固定用突起と前記キャップとを締結する締結部材と、
を含み、
前記締結部材は、前記外筒管開口部揺止部材の内側の表面から突出しない
ことを特徴とする可動式防波堤。
【請求項2】
前記外筒管開口部揺止部材は、前記曲面の外側に、前記曲面から突出する少なくとも3個の突起部を有する請求項1に記載の可動式防波堤。
【請求項3】
前記外筒管開口部揺止部材は、前記外筒管の前記開口部側における端面と係り合う外筒管上端揺止部材を有する請求項1又は2に記載の可動式防波堤。
【請求項4】
前記浮上管は、蓄電池を内装するとともに、当該蓄電池に電力を供給するための電力受信部を有し、前記外筒管は、前記浮上管の下降位置において前記電力受信部に電力を送信する電力送信部を有しており、
前記電力送信部は、前記外筒管の前記水底面から所定深さで埋設された範囲に配置され、
前記電力受信部は、前記浮上管の上端が前記水底面と一致された下降位置において、前記浮上管の上端よりも下方の範囲で前記電力送信部に対向して配置されている請求項1から3のいずれか1項に記載の可動式防波堤。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の可動式防波堤を水底に複数配列したことを特徴とする可動式防波施設。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、必要に応じて水底から水面上に突出する可動式防波堤及び可動式防波施設に関する。
【背景技術】
【0002】
水底に昇降可能な防波装置を設置して、津波が発生した場合や荒天時などには、防波装置を水面上まで突出させて、波の影響を低減する可動式防波堤が提案されている。例えば、特許文献1には、海底面に設けたコンクリートを貫通して水底地盤内に鉛直に挿入固定され、かつ密集状態で基礎コンクリートの表面に上端面を開口させて配列された複数の外筒管と、外筒管に昇降可能に挿入され、かつ下端面が開口し、上端面が閉塞された浮上管と、各浮上管内に空気を供給するための給気装置とを備えた可動式防波堤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−116131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したような可動式防波堤は、図18に示すように、浮上管52を上昇させた場合、当該浮上管52の下端と、外筒管51の上端との間の重なり部分において、浮上管52への波の衝突による水平方向の応力を受けることになる。このため、外筒管51の上端外壁に外筒管側上部補強部材51bが設けられ、外筒管側上部補強部材51bに対して水平方向で重なる浮上管52の内壁に浮上管側上部補強部材52cが設けられるとともに、浮上管52の下端内壁に浮上管側下部補強部材52dが設けられ、当該浮上管側下部補強部材52dに対して水平方向で重なる外筒管51の外壁に外筒管側下部補強部材51cが設けられる。特に、外筒管の上端外壁にあっては、剛性を高めるために枠形のダイヤフラムを外管側上部補強部材51bとする。なお、ダイヤフラムとしての外管側上部補強部材51bは、図18に示す断面矩形枠状に限らず、図には明示しないが、例えば、水底面GLに沿う板材と、当該鋼板から下側で鋼板と外筒管51の外壁面との間に設けられたリブとで構成されたものもある。
【0005】
また、浮上管52が浮上したとき、浮上管52が外筒管51から抜けることを回避するため、浮上管52の外周部にはストッパ52bが設けられる。そして、外筒管51の水底面GL側に開口する部分には、外筒管開口部揺止部材51dが設けられる。外筒管側上部補強部材11bは、フランジ51gを介して外筒管51に取り付けられる。浮上管52の浮上時には、ストッパ52bと外筒管開口部揺止部材51dとが当接して、浮上管52が外筒管51から抜けることが回避される。
【0006】
しかしながら、上述したように、外筒管51は、上端外壁に外筒管側上部補強部材(ダイヤフラム)51bが設けられることから、外筒管を打設する際において、施工上、外筒管側上部補強部材51bよりも上側に、バイブロハンマーの掴み代として、掴み代51fを設けなければならない。このため、掴み代51fが水底面GLから突出してしまうので、外筒管51を水底地盤内に打設した後に、掴み代51fを除去する作業が必要となる。この結果、施工作業に手間を要することになる。また、外筒管開口部揺止部材51dを取り付けるためにはフランジ51gが必要になる。
【0007】
本発明は、施工作業を容易に行うことができ、かつ浮上管が外筒管から抜けることを回避するための部材を簡易な構造で確実に外筒管に取り付けることのできる可動式防波堤及び可動式防波施設を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上下に長尺に形成され、水底側に開口部を有して水底地盤内に挿入されて固定された外筒管と、前記外筒管の開口部側に設けられる複数の貫通孔と、前記外筒管の内部に挿入され、前記外筒管の長手方向に昇降移動可能に配置されるとともに、自身の内部に供給された気体により浮力を生じて上昇可能に設けられた浮上管と、前記外筒管の開口部の内縁となる内壁の形状に沿った形状の曲面を有するとともに、前記内壁に設けられる外筒管開口部揺止部材と、前記外筒管開口部揺止部材の前記曲面の外側に設けられて、前記貫通孔に嵌め込まれて前記外筒管開口部揺止部材を前記外筒管に固定する固定用突起部と、前記外筒管の外側から前記貫通孔に嵌め込まれるキャップと、前記固定用突起と前記キャップとを締結する締結部材と、を含むことを特徴とする可動式防波堤である。
【0009】
この可動式防波堤は、外筒管が水底に打ち込まれた後に、外筒管開口部揺止部材が外筒管に取り付けられる。このため、打ち込みの時点では、外筒管開口部揺止部材が取り付けられるべき部分は何も取り付けられていないので、この部分をヤットコのチャック部で掴む掴み代として利用できる。このため、掴み代を除去する作業が不要となることから、施工作業を容易にすることができる。また、外筒管の貫通孔に外筒管開口部揺止部材の固定用突起部を嵌め込み、キャップにボルトで締結することで外筒管開口部揺止部材を外筒管に取り付けることができる。そして、浮上管の浮力に起因する荷重は、外筒管開口部揺止部材の固定用突起部が貫通孔に係り合って受けるが、外筒管開口部揺止部材の寸法は大きくすることができるので、前記浮力を確実に受けることができる。このように、この稼働式防波堤は、施工作業を容易に行うことができ、かつ浮上管が外筒管から抜けることを回避するための部材を簡易な構造で確実に外筒管に取り付けることができる。
【0010】
本発明において、前記外筒管開口部揺止部材は、前記曲面の外側に、前記曲面から突出する少なくとも3個の突起部を有することが好ましい。このようにすることで、外筒管開口部揺止部材を外筒管に取り付ける際の位置決め作業が容易になる。
【0011】
本発明において、前記外筒管開口部揺止部材は、前記外筒管の前記開口部側における端面と係り合う外筒管上端揺止部材を有することが好ましい。このようにすれば、外筒管上端揺止部材が外筒管の開口部側における端部と係り合うので、外筒管開口部揺止部材を外筒管に取り付ける際に、外筒管開口部揺止部材が外筒管の下方に落下するおそれを低減できる。
【0012】
本発明において、前記浮上管は、蓄電池を内装するとともに、当該蓄電池に電力を供給するための電力受信部を有し、前記外筒管は、前記浮上管の下降位置において前記電力受信部に電力を送信する電力送信部を有しており、前記電力送信部は、前記外筒管の前記水底面から所定深さで埋設された範囲に配置され、前記電力受信部は、前記浮上管の上端が前記水底面と一致された下降位置において、前記浮上管の上端よりも下方の範囲で前記電力送信部に対向して配置されていることが好ましい。このようにすれば、浮上管の下降位置において、電力受信部及び電力送信部が水底面よりも下方に配置されることから、当該電力受信部及び電力送信部が投錨等に接触するおそれ及び損傷するおそれを低減できる。
【0013】
本発明は、上述の可動式防波堤を水底に複数配列したことを特徴とする可動式防波施設である。この可動式防波施設は、上述の可動式防波堤を有しているので、上述の可動式防波堤における作用、効果と同様の作用、効果を奏する。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、施工作業を容易に行うことができ、かつ浮上管が外筒管から抜けることを回避するための部材を簡易な構造で確実に外筒管に取り付けることのできる可動式防波堤及び可動式防波施設を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の実施形態に係る可動式防波施設の平面図である。
図2図2は、図1のA−A矢視一部断面図である。
図3図3は、図1のB−B断面図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る可動式防波堤を備える可動式防波施設の全体構成図である。
図5-1】図5−1は、本発明の実施形態に係る可動式防波堤の浮上管が浮上する様子を示す模式図である。
図5-2】図5−2は、本発明の実施形態に係る可動式防波堤の浮上管が浮上する様子を示す模式図である。
図5-3】図5−3は、本発明の実施形態に係る可動式防波堤の浮上管が浮上する様子を示す模式図である。
図6図6は、図1のB−B拡大断面図である。
図7図7は、本実施形態に係る可動式防波堤が有する外筒管開口部揺止部材の取付構造を示す拡大図である。
図8図8は、図7の矢印Cで示す方向から見た外筒管開口部揺止部材を示す図である。
図9図9は、図7の矢印Dで示す方向から見た外筒管開口部揺止部材を示す図である。
図10図10は、本実施形態の変形例に係る可動式防波堤が有する外筒管開口部揺止部材の取付構造を示す拡大図である。
図11図11は、キャップの斜視図である。
図12図12は、キャップの変形例を示す斜視図である。
図13図13は、本実施形態の変形例に係る可動式防波堤が有する外筒管開口部揺止部材の取付構造を示す拡大図である。
図14図14は、図1のB−B拡大断面図である。
図15図15は、図1のB−B拡大断面図である。
図16図16は、図15のC−C矢視図である。
図17図17は、本実施形態に係る可動式防波堤の施工過程の説明図である。
図18図18は、従来の可動式防波堤の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、均等の範囲のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0017】
本実施形態に係る可動式防波堤は、海底、川底などの水底に設置されて、例えば、津波や高潮などが発生した場合には、水底から水面上に浮上して、津波や高潮の通過を阻害し、港湾設備又は人家などの防波堤の背後地を保護する。
【0018】
図1は、本実施形態に係る可動式防波施設の平面図である。図2は、図1のA−A矢視一部断面図である。この図2は、本実施形態に係る可動式防波堤が浮上した状態を示している。図3は、図1のB−B断面図である。この図3は、本実施形態に係る可動式防波堤が水底にある状態、すなわち浮上前の状態を示している。図4は、本実施形態に係る可動式防波堤を備える可動式防波施設の全体構成図である。図5−1〜図5−3は、本実施形態に係る可動式防波堤の浮上管が浮上する様子を示す模式図である。
【0019】
図1図3に示すように、可動式防波施設1は、複数の可動式防波堤10と、監視・制御システム施設100とを含んで構成される。本実施形態において、複数の可動式防波堤10は、岸壁K1、K2の間に一列に配置されて、港の内側(港内BI)と港の外側(港外BO)とを仕切っている。可動式防波堤10は、外筒管11の内側に浮上管12が配置されるとともに、浮上管12の内部に気体(本実施形態では空気)を供給することによって浮上管12を浮上(上昇)させる構造である。なお、可動式防波堤10は、岸壁K1、K2の間に限らず、防波堤(固定式、杭式、浮体式を含む)での間にも設置可能である。
【0020】
それぞれの可動式防波堤10は、各送気管3から空気が送られる。複数の送気管3は、水底に配置される送気管ダクト2にまとめられて、一方の岸壁K2上の監視・制御システム施設100内に備えられる気体供給装置に接続される。そして、有事の際、例えば、津波や高潮などの発生時には、前記気体供給装置から送気管3を介して、それぞれの可動式防波堤10の浮上管12内へ気体が供給されて、前記浮上管12が水底から浮上し、一部が水面から突出する。
【0021】
図2図3に示すように、可動式防波堤10は、外筒管11(可動式防波堤10の固定部分)と、浮上管12(可動式防波堤10の可動部分)とを有する。外筒管11及び浮上管12は、円筒形状の部材であり、鋼管で構成されている。外筒管11及び浮上管12は、いずれも防食が施されている。なお、外筒管11及び浮上管12は、円筒形状に限られるものではない。なお、外筒管11及び浮上管12は、鋼管に限らず、炭素繊維で構成されていてもよく、あるいは、外筒管11又は浮上管12の一方が鋼管で、他方が炭素繊維で構成されるような異種材料による構造であってもよい。
【0022】
外筒管11は、上下に長尺に形成され、水底地盤E内に打ち込まれている。外筒管11は、下層部が水底地盤E内に挿入固定され、上層部の周囲に捨石5が敷設されている。この捨石5の上面が水底面GLとなる。外筒管11は、水底側である上端に開口部11aを有する。また、外筒管11は、水底地盤Eに挿入された底部から上記送気管3が差し込まれて、内部に気体出口3aが配置される。
【0023】
浮上管12は、外筒管11の内部に、外筒管11の開口部11aから、外筒管11の長手方向(管軸方向)に沿って差し込まれ、外筒管11の長手方向に対して昇降可能に配置されている。この浮上管12は、その内部に供給される気体によって浮力を発生して、外筒管11から浮上可能に構成される。具体的に、図3に示すように、浮上管12は、内部に複数の仕切部材(本実施形態では板状の部材)15,16が設けられている。(以下、仕切部材15を第1仕切部材といい、仕切部材16を第2仕切部材という)。第1仕切部材15は、浮上管12の上方に配置され、第2仕切部材16は、第1仕切部材15の下方に配置される。また、浮上管12は、上端が蓋17によって閉塞されている。そして、浮上管12は、第1仕切部材15、第2仕切部材16、及び蓋17によって、内部が複数の部屋に仕切られる。
【0024】
第1仕切部材15と第2仕切部材16と浮上管12の側壁とで仕切られる空間13は、送気管3から浮上管12の内部に供給された気体を溜めて、浮上管12に浮力を発生させるための空間である。以下、空間13を気室13という。蓋17と第1仕切部材15と浮上管12の側壁とで仕切られる空間CRは、可動式防波堤10の状態を監視したり、送気管3から気体が供給されなかった場合に浮上管12を浮上させたり、浮上した浮上管12を下降させて外筒管11の内部に戻す動作をさせたりするための制御機器20が配置されている。以下、空間CRを機械室CRという。第2仕切部材16は、孔16aを備える。孔16aは、送気管3から浮上管12の内部に供給される気体を気室13へ導く。
【0025】
浮上管12は、その側壁内面に浮力発生手段14が取り付けられる。浮力発生手段14は、例えば、気泡を有する樹脂、例えば、発泡スチロールなどである。また、浮力発生手段14は、単なる空間に空気や窒素などの気体を充填した構造としてもよい。可動式防波堤10は、有事の際には浮上管12の気室13に気体を供給し、この気体によって浮上管12に浮力を発生させ、浮上管12を外筒管11から浮上させる。浮力発生手段14を浮上管12に取り付けることにより、浮上管12を浮上させる際には、浮上管12を浮上させるために必要な浮力のうち、浮力発生手段14が発生する浮力で不足する分を気体によってまかなえばよい。これによって、浮上管12の内部に供給する気体の量を低減できるので、浮上管12を迅速に浮上させることができる。
【0026】
浮上管12は、その下端に開口部12aが設けられている。そして、開口部12aの下方に、送気管3の気体出口3aが配置される。なお、送気管3の気体入口は、上述した気体供給装置に接続されている。
【0027】
気体供給装置は、図4に示すように、気体ボトル104と、気体ボトル104と送気管3との間に設けられる開閉弁110と、電動機103で駆動される圧縮機102とを含んで構成される。これらは、監視・制御システム施設100に備えられる。送気管3の気体入口は、気体供給装置を構成する開閉弁110に接続されている。気体ボトル104は、圧縮機102によって高圧(20MPa程度)の気体が充填される。そして、浮上管12を浮上させる際には、開閉弁110が開かれて、気体ボトル104内の気体が送気管3を通って浮上管12の内部に供給される。気体ボトル104は、それぞれの可動式防波堤10に対して設けられており、本実施形態では、1台の可動式防波堤10に対して2台の気体ボトル104が用意される。なお、それぞれの気体ボトル104に対して個別に送気管3を設け、2本の送気管3を浮上管12の開口部12aの下方に配置してもよい。
【0028】
1台の気体ボトル104によって、1台の可動式防波堤10の浮上管12を浮上させることができるが、1台の可動式防波堤10に対して2台の気体ボトル104を用意することで、一方の気体供給系統に何らかの不具合が発生した場合には、もう一方をバックアップとして用いることにより、より確実に浮上管12を浮上させることができる。また、2台の気体ボトル104から1台の可動式防波堤10へ気体を供給することにより、気体ボトル104を単独で用いるよりも迅速に浮上管12を浮上させることができる。なお、1台の気体ボトル104によって、3台の可動式防波堤10の浮上管12を浮上させるように構成する例として、中央の可動式防波堤10の浮上管12にのみ送気間3で送気し、その両側の可動式防波堤10では、中央の可動式防波堤10よりも浮力発生手段14の体積を大きくして略中性浮力とし、両側の可動式防波堤10の浮上管12を、中央の浮上管12によって吊り上げるように浮上させる構成にすることが好ましい。このように構成することで、送気管3の数を減少させることが可能になる。また、同様の構成により、1台の気体ボトル104によって、5台の可動式防波堤10の浮上管12を浮上させるように構成することも可能である。このように、1台の気体ボトル104で複数の可動式防波堤10の浮上管12を浮上させるように構成してもよい。
【0029】
電動機103及び圧縮機102は、監視・制御装置101によって制御される。監視・制御装置101は、例えば、気体ボトル104内に充填されている気体の圧力を気体圧力センサ111によって取得し、規定の圧力よりも低い場合には電動機103を駆動して圧縮機102を作動させ、規定の圧力になるまで圧縮機102から気体ボトル104内へ気体を充填する。また、監視・制御装置101は、送気管3に設けられた送気管3内の圧力を検出する送気管圧力検出センサ(送気管内圧力検出手段)105から送気管3内の圧力を取得して、送気管3に漏洩箇所があるか否かを監視する。
【0030】
さらに、監視・制御装置101は、可動式防波堤10の機械室CR内の制御機器20と通信して、可動式防波堤10の状態を監視したり、浮上管12の動きを制御したりする。例えば、浮上した浮上管12を外筒管11内に戻す場合、監視・制御装置101は、制御機器20を介して、気室13と気室13の外部とを接続する配管の途中に設けられた排気弁18を開く。これによって、気室13内の気体が気室13の外部に放出されるとともに、気室13内の気体が水に置換されて浮上管12の浮力が低下するので、浮上管12は沈降して外筒管11内に収まる。
【0031】
有事の際、例えば、監視・制御装置101が津波や高潮などの警報を受信した場合、監視・制御装置101は、開閉弁110を開き、図5−1に示すように、送気管3を介して気体ボトル104内の気体を浮上管12の内部に供給する。送気管3から浮上管12内へ供給された気体は、図5−1に示すように、第2仕切部材16の孔16aを通って気室13へ入る。気室13の内部の気体によって発生する浮力と、浮力発生手段14によって発生する浮力との和が水中における浮上管12全体の重量を超えると、図5−2に示すように、浮上管12は、水面WLに向かって外筒管11から浮上を開始する。そして、図5−3に示すように、浮上管12の一部が水面WL上に突出する。このとき、気室13内の余分な気体は、気室13に設けられた孔D1から排出される。また、機械室CR内の水は、機械室CRに設けられた孔D2から排水される。このようにして、有事の際には、図2に示すように複数の浮上管12が一列に水面WLから突出して防波堤の機能を発揮し、津波や高潮などから港湾設備などを保護する。次に、上述した可動式防波施設1に設けられた可動式防波堤10の詳細について図を参照して説明する。
【0032】
図6は、図1のB−B拡大断面図である。この図6は、可動式防波堤10が浮上した状態を示している。図6に示すように、可動式防波堤10の外筒管11は、上述のように水底側である上端に開口部11aを有する。外筒管11は、開口部11aが、捨石5の上面である水底面GLと一致して配置されている。また、外筒管11は、水底面GLから下方に所定深さH1(例えば、70[cm])で捨石5により埋設された外壁に対し、外筒管側上部補強部材(外筒管側補強部材)11bが設けられている。さらに、外筒管11は、外筒管側上部補強部材11bから下方に所定深さH2で水底地盤E内に埋設された外壁に対し、外筒管側下部補強部材(外筒管側補強部材)11cが設けられている。
【0033】
外筒管側上部補強部材11b及び外筒管側下部補強部材11cは、鋼板をリング状に形成したもので、外筒管11の外壁に固定され、好ましくは周方向で均一に配置された状態で固定されている。また、外筒管11は、開口部11aの内縁となる内壁に、外筒管開口部揺止部材11dが設けられている。外筒管開口部揺止部材11dは、鋼板をリング状に形成したもので、外筒管11の内壁に固定され、好ましくは周方向で均一に配置された状態で固定されている。また、外筒管11は、開口部11aの外縁となる上端に、外筒管上端揺止部材11eが設けられている。外筒管上端揺止部材11eは、鋼板をリング状に形成したもので、外筒管開口部揺止部材11dと一体に接合され、外筒管11の上端に固定され、好ましくは周方向で均一に配置された状態で固定されている。なお、必要とされる断面強度を確保できれば、外筒管側補強部材としての外筒管側上部補強部材11b及び外筒管側下部補強部材11cを設けなくてもよい。
【0034】
図6に示すように、可動式防波堤10の浮上管12は、外筒管11の開口部11aから、外筒管11の長手方向に沿って差し込まれている。浮上管12は、下降して外筒管11の内部に収まった状態では、その上端が水底面GLと一致する下降位置を呈する。この浮上管12は、ストッパ12bが設けられている。ストッパ12bは、浮上管12の外壁に固定され、浮上管12が浮上した上昇位置において、外筒管開口部揺止部材11dに当接することにより、浮上管12のさらなる浮上を止めるものである。すなわち、ストッパ12bは、浮上管12の浮上高さを位置決めするものである。また、浮上管12は、ストッパ12bが外筒管開口部揺止部材11dに当接した状態で、外筒管11の外筒管側上部補強部材11bに水平方向で対向する位置となる内壁に、浮上管側上部補強部材(浮上管側補強部材)12cが設けられている。さらに、浮上管12は、ストッパ12bが外筒管開口部揺止部材11dに当接した状態で、外筒管11の外筒管側下部補強部材11cに水平方向で対向する位置となる内壁に、浮上管側下部補強部材(浮上管側補強部材)12dが設けられている。
【0035】
浮上管側上部補強部材12c及び浮上管側下部補強部材12dは、形鋼をリング状に形成したもので、浮上管12の内壁に固定され、好ましくは周方向で均一に配置された状態で固定されている。これら浮上管側上部補強部材12c及び浮上管側下部補強部材12dをなす形鋼は、図6では、T形鋼として示している。その他、浮上管側上部補強部材12c及び浮上管側下部補強部材12dとすることができる形鋼には、I形鋼、H形鋼、L形鋼、Z形鋼、山形鋼、溝形鋼、平形鋼又は球平形鋼などがある。また、浮上管12は、その下端の外壁に浮上管下端揺止部材12eが設けられている。浮上管下端揺止部材12eは、鋼板をリング状に形成したもので、浮上管12の下端に固定されている。
【0036】
このような可動式防波堤10は、浮上管12が浮上した上昇位置において、ストッパ12bが外筒管開口部揺止部材11dに当接し、浮上管12の浮上高さが位置決めされる。そして、外筒管開口部揺止部材11d、外筒管上端揺止部材11e、及び浮上管下端揺止部材12eが外筒管11と浮上管12との間のスペーサとなって、波や風の衝突による浮上管12の揺れが抑えられる。また、波や風の衝突による浮上管12への水平方向の応力を、外筒管側補強部材11b、11c及び浮上管側補強部材12c、12dにより受ける。なお、外筒管開口部揺止部材11dや外筒管上端揺止部材11eも、波や風の衝突による浮上管12への水平方向の応力を受ける補強部材として機能する。次に、外筒管開口部揺止部材10dの取付構造について詳細に説明する。
【0037】
図7は、本実施形態に係る可動式防波堤が有する外筒管開口部揺止部材の取付構造を示す拡大図である。図8は、図7の矢印Cで示す方向から見た外筒管開口部揺止部材を示す図である。図8において、外筒管11は二点鎖線で示してある。図9は、図7の矢印Dで示す方向から見た外筒管開口部揺止部材を示す図である。外筒管11の開口部11a側には、複数の貫通孔11Hが設けられる。図9に示すように、外筒管開口部揺止部材11dは、外筒管11の開口部11aの内縁となる内壁11Iの形状に沿った形状の曲面BPを有する。本実施形態において、外筒管開口部揺止部材11dは、内壁11Iの形状に沿って曲げられた板状の部材であり、曲面BPの曲率半径が外筒管11の内壁11Iの曲率半径と略同一になる。すなわち、外筒管開口部揺止部材11dは、円管の一部を切り取ったような形状を有する部材である。そして、外筒管開口部揺止部材11dは、外筒管11の開口部11a側から見た形状が円弧形状である。外筒管開口部揺止部材11dは、外筒管11の周方向に向かって、外筒管11の内壁11Iに複数設けられる。
【0038】
外筒管開口部揺止部材11dは、外筒管11の開口部11a側における端部に、外筒管上端揺止部材11eを有する。外筒管上端揺止部材11eは、外筒管開口部揺止部材11dを外筒管11へ取り付ける際に外筒管11の開口部11a側における端部(開口側端部)11Tに係り合って、外筒管開口部揺止部材11dの位置決めをすることができる。外筒管開口部揺止部材11dを外筒管11に取り付ける作業は水中で行われるが、外筒管上端揺止部材11eが開口側端部11Tに係り合うことにより、外筒管開口部揺止部材11dが外筒管11内に落下するおそれを低減して作業効率を向上させることができる。なお、外筒管開口部揺止部材11dは、外筒管上端揺止部材11eを有していなくてもよい。
【0039】
外筒管開口部揺止部材11dは、外筒管11の開口部11a側における端部に、外筒管開口部揺止部材11dを吊り下げるためのアイボルトを取り付けるボルト穴11dfを有している。外筒管開口部揺止部材11dを外筒管11に取り付ける場合、前記アイボルトをボルト穴11dfにねじ込んで取り付けて、前記アイボルトを介して外筒管開口部揺止部材11dを吊り下げる。このようにすることで、水中での作業効率が向上する。
【0040】
図7から図9に示すように、外筒管開口部揺止部材11dは、固定用突起部32を有する。本実施形態において、固定用突起部32は複数であるが、少なくとも1個あればよい。固定用突起部32は、外筒管開口部揺止部材11dの曲面BPの外側に設けられており、外筒管開口部揺止部材11dの曲面BPの外側から突出している。本実施形態において、固定用突起32は、外筒管開口部揺止部材11dと一体かつ同一の材料で作られているが、このような形態に限定されるものではない。なお、本実施形態において、固定用突起32及び外筒管開口部揺止部材11dは、鋳造で製造される。両者の材料は、鋳鉄であるがこれに限定されるものではない。
【0041】
固定用突起部32は、外筒管開口部揺止部材11dを外筒管11へ取り付ける際に、外筒管11の貫通孔11Hに嵌め込まれる。そして、固定用突起部32は、外筒管開口部揺止部材11dを外筒管11に固定する。固定用突起部32は、座繰り部11dzを有するボルト取付孔11dhを有する。ボルト取付孔11dhは、固定用突起部32及び外筒管開口部揺止部材11dの両方を貫通する。ボルト取付孔11dhには、後述する締結部材であるボルト34が貫通する。ボルト34の頭は、座繰り部11dzに隠れて外筒管開口部揺止部材11dの表面から突出しないので、図6に示す浮上管12と外筒管開口部揺止部材11dとの間に必要な所定量のクリアランスを確実に確保できる。また、ボルト34の頭が外筒管開口部揺止部材11dの表面から突出しないことにより、浮上した浮上管12の側面はボルト34の頭に接触せず、外筒管開口部揺止部材11dの表面全体に接触する。ボルト34の頭が浮上管12に接触するとその部分には局所的に大きな力が作用するが、座繰り部11dzにより浮上管12に対して局所的に大きな力が作用することを回避できる。
【0042】
固定用突起部32は、平面視が円形である。後述するように、固定用突起部32は、傾斜部32Sを有するので、円錐台形状となっている。貫通孔11Hの固定用突起部32が嵌め込まれる部分の形状は、少なくとも円形である。なお、固定用突起部32は、平面視が円形のものに限定されず、例えば、平面視が四角形、六角形等の多角形又は平面視が楕円形等であってもよい。この場合、貫通孔11Hの固定用突起部32が嵌め込まれる部分も、固定用突起部32に合わせた形状とする。
【0043】
外筒管11の貫通孔11Hには、外筒管11の外側からキャップ30が嵌め込まれる。キャップ30は、貫通孔11Hに嵌め込まれる嵌め込み部30Aと、嵌め込み部30Aに連結されるとともに、嵌め込み部30Aよりも寸法が大きい係止部30Bとを含む。係止部30Bは、キャップ30の嵌め込み部30Aを貫通孔11Hに嵌め込んだときに、貫通孔11Hの径方向外側に向かって張り出して、外筒管11の外壁11Oと係り合う部分である。キャップ30は、ボルト穴31を有する。ボルト穴31は、ボルト34がねじ込まれる。このため、ボルト穴31は、ボルト34の雄ねじと噛み合う雌ねじが形成されている。本実施形態において、ボルト穴31は、キャップ30を貫通していないが、キャップ30を貫通していてもよい。
【0044】
締結部材としてのボルト34は、外筒管開口部揺止部材11dの固定用突起部32とキャップ30の嵌め込み部30Aとが貫通孔11Hに嵌め込まれた状態で、固定用突起32とキャップ30とを締結する。すなわち、ボルト34は、外筒管開口部揺止部材11dのボルト取付孔11dhから差し込まれて、キャップ30のボルト穴31にねじ込まれる。ボルト34が絞め込まれることによって、固定用突起部32とキャップ30とが締結される。固定用突起部32は、外筒管開口部揺止部材11dに設けられているので、固定用突起部32とキャップ30とが締結されることにより、外筒管開口部揺止部材11dは外筒管11に取り付けられる。
【0045】
上述したように、図6に示す浮上管12が浮上すると、ストッパ12bが外筒管開口部揺止部材11dに当接して、浮上管12のさらなる浮上を停止する。このとき、外筒管開口部揺止部材11dは、浮上管12の浮力を受ける必要がある。このため、浮上管12の浮力に起因する大きな荷重が外筒管開口部揺止部材11dに作用する。本実施形態では、外筒管開口部揺止部材11dが有する固定用突起部32が貫通孔11Hに嵌め込まれて固定されるので、固定用突起部32が浮上管12の浮力に起因する荷重を受ける。固定用突起部32は、外筒管開口部揺止部材11dを外筒管11にボルトで固定する構造と比較して、ボルトよりも大きな断面積とすることができるとともに、ボルトよりも大きな面積で貫通孔11Hと係り合うので、大きな荷重を受けることができる。その結果、固定用突起部32は、確実に浮上管12の浮上を停止させることができるとともに、自身の変形及び耐久性低下のおそれも低減させることができる。
【0046】
また、固定用突起部32を用いることにより、強度の高いボルトを使用しなくてもよいので、可動式防波堤10の製造コストを低減することができる。さらに、外筒管開口部揺止部材11dを外筒管11にボルトで固定する構造は、浮上管12の浮上時に、過剰な力がボルトに作用することによりボルトの緩みが発生するおそれがある。しかし、本実施形態は、浮上管12の浮上に起因する荷重は固定用突起部32が受けるので、ボルト34に作用する力は締結力のみである。このため、ボルト34の緩みが抑制されて、信頼性が向上する。
【0047】
本実施形態において、外筒管開口部揺止部材11dは、固定用突起部32とキャップ30とを介して外筒管11の貫通孔11Hに取り付けられる。このため、外筒管開口部揺止部材11dを外筒管11に取り付けるための部材(図17に示すフランジ51g及びダイヤフラムとしての外管側上部補強部材51b)は不要になる。このため、外筒管11の質量の増加を抑制できるとともに、可動式防波堤10の製造コストを低減できる。また、本実施形態は、貫通孔11Hに固定用突起部32を嵌め込むとともに、ボルト34でキャップに固定用部材32を締結するので、簡易な構造で、確実に外筒管開口部揺止部材11dを外筒管11に取り付けることができる。また、上述したように、浮上管12の浮力は、固定用突起部32が受けるので、簡易な構造で確実に前記浮力を受けることができる。
【0048】
図7図8に示すように、本実施形態において、外筒管開口部揺止部材11dは、曲面BPの外側に、曲面BPから突出する突起部33を有する。外筒管開口部揺止部材11dは、少なくとも3個の突起部33を有する。外筒管開口部揺止部材11dが外筒管11の内壁11Iに取り付けられると、複数の突起部33が内壁11Iに当接する。この複数の突起部33により、外筒管開口部揺止部材11dを外筒管11の内壁11Iへ取り付ける際に、外筒管開口部揺止部材11dと外筒管11の内壁11Iとの位置決めが容易になる。特に、外筒管開口部揺止部材11dの取付作業は水中で行われるので、前述した位置決めが容易になる効果は有効である。
【0049】
図7に示すように、固定用突起部32及びキャップ30の嵌め込み部30Aは、先端に向かって寸法が小さくなるテーパー形状をしている。このため、固定用突起部32とキャップ30の嵌め込み部30Aとは、それぞれ傾斜部32S、30Sを有している。固定用突起部32及びキャップ30の嵌め込み部30Aをこのような形状にすることにより、貫通孔11Hにこれらを嵌め込みやすくなる。また、固定用突起部32とキャップ30とを締結すると、傾斜部32S、30Sがくさびの作用を発揮することにより、外筒管開口部揺止部材11dを強固に貫通孔11Hへ固定することができる。なお、固定用突起部32とキャップ30の嵌め込み部30Aとは、傾斜部32S、30Sを有していなくてもよい。また、固定用突起部32とキャップ30の嵌め込み部30Aとの、いずれか一方が傾斜部を有していてもよい。
【0050】
図10は、本実施形態の変形例に係る可動式防波堤が有する外筒管開口部揺止部材の取付構造を示す拡大図である。本変形例において、貫通孔11Haは、固定用突起部32の傾斜部32Sと、キャップ30の嵌め込み部30Aの傾斜部30Sとに対応して、第1傾斜部11SAと第2傾斜部11SBとを有する。固定用突起部32と、キャップ30の嵌め込み部30Aとのいずれか一方が傾斜部を有する場合、貫通孔11Haは、第1傾斜部11SAと第2傾斜部11SBとのいずれか一方を有していればよい。
【0051】
本変形例に係る外筒管開口部揺止部材の取付構造は、固定用突起部32の傾斜部32Sと第1傾斜部11SAとの間及びキャップ30の嵌め込み部30Aの傾斜部30Sと第2傾斜部11SBとの間におけるくさびの作用がより強くなる。その結果、本変形例に係る外筒管開口部揺止部材の取付構造は、外筒管開口部揺止部材11dをより強固に貫通孔11Hへ固定することができる。
【0052】
図11は、キャップの斜視図である。図11に示すように、キャップ30は、直径の異なる二つの円柱をそれぞれの端面同士で連結した形状である。すなわち、直径の小さい円柱が嵌め込み部30Aとなり、直径のより大きい円柱が係止部30Bとなる。この場合、少なくともキャップ30側における外筒管11の貫通孔11Hの形状は円形である。なお、嵌め込み部30Aの形状は、円柱形状に限定されるものではない。例えば、四角柱、六角柱等の多角柱の形状又は楕円柱の形状等、円柱以外の形状であってもよい。この場合、外筒管11の貫通孔11Hも嵌め込み部30Aの形状に合わせた形状とする。このようにすれば、嵌め込み部30Aは、貫通孔11H内の回転が規制されるので、ボルト34による締結作業が容易になるので、作業効率が向上する。また、嵌め込み部30Aを円柱以外の形状、例えば、多角柱の形状とすれば、作業者がキャップ30を手で持ったときに、嵌め込み部30Aが滑り止めの機能を発揮するので、キャップ30の落下を抑制できる。その結果、作業効率が向上する。
【0053】
図12は、キャップの変形例を示す斜視図である。キャップ30aは、係止部30Baが六角柱形状となっている。嵌め込み部30Aは円柱形状である。このように、係止部30Baを六角柱形状とすることにより、キャップ30aを作業者が手で持ったときに、係止部30Baが滑り止めの機能を発揮して、キャップ30aを落としにくくなるという利点がある。この利点は、水中における作業において有利である。なお、係止部30aの形状は六角柱形状に限定されるものではなく、四角柱、五角柱等の多角柱の形状であっても、六角柱形状としたときと同様の作用、効果が得られる。
【0054】
図13は、本実施形態の変形例に係る可動式防波堤が有する外筒管開口部揺止部材の取付構造を示す拡大図である。この取付構造において、キャップ30bは、嵌め込み部30Abが略円柱形状であるとともに、嵌め込み部30bの径方向外側に向かって側面から突出する突起35を有する。また、貫通孔11Hbは、突起35が嵌り合う溝部11HUを有する。このような構造により、貫通孔11Hbにキャップ30bの嵌め込み部30Abを嵌め込むと、突起35と溝部11HUとが嵌り合う。その結果、嵌め込み部30Abは、貫通孔11Hb内の回転が規制されるので、ボルト34の締結作業が容易になり、作業効率が向上する。
【0055】
図14は、図1のB−B拡大断面図である。この図14は、本実施形態に係る可動式防波堤が浮上した状態を示している。図14に示すように、可動式防波堤10の浮上管12は、少なくとも浮上管側上部補強部材12cに対し、さらなる補強のために、長手方向(上下方向)に延在する補強リブ12fを設けてもよい。
【0056】
図15は、図1のB−B拡大断面図である。この図15は、本実施形態に係る可動式防波堤が水底にある状態、すなわち浮上前の状態を示している。図16は、図15のC−C矢視図である。可動式防波堤10は、浮上管12に充電装置及び蓄電池が内蔵されている。充電装置及び蓄電池は、図には明示しないが、上述した制御機器20に設けられている。また、図15及び図16に示すように、可動式防波堤10は、電力受信部21及び電力送信部22を有している。
【0057】
電力受信部21は、浮上管12に設けられており、蓄電池に電力を供給したり、水中通信における送受信をしたりするためのものである。また、電力送信部22は、浮上管12の下降時において電力受信部21に電力を送信したり、水中通信における送受信をしたりするためのものである。これら、電力受信部21及び電力送信部22は、互いに対向することで、電磁誘導を利用して電力や通信信号を非接触(例えば0mmを超え30mm程度の隙間を隔て)で伝送する。
【0058】
電力送信部22は、陸上の監視・制御システム施設100が備える電源(図示せず)と電気的に接続されている。電源は、交流をそのまま、あるいは直流電源をインバータによって交流に変換して、電力送信部22へ送る。電力送信部22は、給電側コイルと給電回路とからなり、電力受信部21は、受電側コイルと受電回路とからなる。すなわち、電力送信部22の給電側コイルへ交流が流れることにより発生する磁界の変化によって、電力受信部21の受電側コイルへ誘導起電力を発生させ、非接触で電源から送られる電力を制御機器20の充電装置へ伝送する。このように、電力送信部22で電気エネルギを磁気エネルギに変換して伝送し、電力受信部21でその磁気エネルギを電気エネルギに変換して、非接触で電力を伝送する。なお、充電装置は、電力受信部21から交流で伝送されてきた電力を直流に変換し、蓄電池へ充電するものである。
【0059】
電力送信部22は、外筒管11において、水底面GLから所定深さH1で捨石5により埋設された範囲で、外筒管11の側壁が切り欠かれた箇所に設けられている。具体的に、電力送信部22は、外筒管11の側壁が切り欠かれた箇所で、リブなどで補強されたブラケット22aを介して外筒管11に固定されている。このため、電力送信部22は、水底面GLよりも下方に配置されることになる。
【0060】
電力受信部21は、浮上管12の下降位置(下降により浮上管12の上端が水底面GLと一致する位置)において、浮上管12の上端よりも下方の範囲で浮上管12の側壁が切り欠かれた箇所で電力送信部22に対向して設けられている。具体的に、電力受信部21は、浮上管12の側壁が切り欠かれた箇所で、リブなどで補強されたブラケット21aを介して浮上管12に固定されている。このため、電力受信部21は、水底面GLよりも下方に配置されることになる。また、電力受信部21は、浮上管12の上端に設けられた蓋17により上方が覆われている。
【0061】
また、図16において符号23で示す部分は、浮上管12の外壁に長手方向に沿って設けられ、外筒管11の内壁に設けられた外筒管開口部揺止部材11dの溝部に嵌合することで、浮上管12が外筒管11に対して回転する事態を防止する回転防止部材である。かかる回転防止部材23により、電力受信部21と電力送信部22とは、互いに対向する位置が決められることになる。
【0062】
図17は、本実施形態に係る可動式防波堤の施工過程の説明図である。上述した可動式防波堤10を施工するには、図17に示すように、外筒管11は、外筒管側補強部材11b、11cが固定された状態で、クレーン120で吊り下げられた電動バイブロ121によって水底地盤E内に打ち込まれる。この際、電動バイブロ121は、水面WLよりも下方に下げること、すなわち水に浸すことができない。このため、電動バイブロ121にヤットコ122を取り付け、このヤットコ122のチャック部122aで外筒管11を掴んで打設する。この打設において、ヤットコ122のチャック部122aで掴む部分は、外筒管11の上端であって、施工後に水底面GLから所定深さH1の範囲とする。なお、外筒管11を打設する際、台船123に導入部材(図示せず)を取り付け、この導入部材により外筒管11を鉛直に打ち込めるように導く。
【0063】
外筒管11が打ち込まれる水底は、ある程度の深さ、例えば、外筒管開口部揺止部材11dを取り付ける作業が可能である程度の深さまで掘り込んでおく。この部分に外筒管11を打ち込む。外筒管11の打ち込みが終了したら、外筒管開口部揺止部材11dを外筒管11に取り付ける。その後、掘り込んだ部分を捨石等によって埋めることにより、外筒管11の設置が終了する。
【0064】
その後、浮上管12に係る全ての構成が取り付けられた浮上管12をクレーン120で吊り下げて外筒管11内に挿入する。その後、外筒管11に係る残りの全ての構成を外筒管11に取り付ける。その後、外筒管11の周りに捨石5を引き詰めて外筒管11を埋設し、可動式防波堤10の施工を終了する。なお、図には明示しないが、台船123に代えて導材を設置し、当該導材を使用して外筒管11を打ち込むようにしてもよい。
【0065】
このように、本実施形態の可動式防波堤10は、上下に長尺に形成され、水底側に開口部11aを有して水底地盤E内に挿入固定された外筒管11と、外筒管11の内部に挿入され、外筒管11の長手方向に昇降移動可能に配置されるとともに、自身の内部に供給された気体により浮力を生じて上昇可能に設けられた浮上管12とを備える可動式防波堤10である。そして、この可動式防波堤10において、外筒管11は、水底面GLに対して開口部11aが一致され、浮上管12は、外筒管11が水底面GLから下方に所定深さH1で埋設された部分に対し、上昇位置の浮上管12への水平方向の応力を受ける浮上管側上部補強部材12cが設けられている。
【0066】
この可動式防波堤10によれば、外筒管11は、外筒管側上部補強部材11bよりも上側が開口部11aまで所定深さH1で埋設されるため、この部分をヤットコ122のチャック部122aで掴む掴み代として利用できる。また、上述したように、外筒管開口部揺止部材11dは、水中で外筒管11に取り付けられる。このため、外筒管11は、水底地盤E内に打ち込まれる際に、開口側端部11T側には何も取り付けられていない。したがって、外筒管11は、外筒管開口部揺止部材11dが取り付けられる部分をヤットコ122のチャック部122aで掴む掴み代として利用できる。
【0067】
その結果、掴み代を除去する作業が不要となることから、施工作業を容易にすることが可能になる。しかも、浮上管12において、上昇位置で水平方向の応力を受ける浮上管側上部補強部材12cが、水底面GLから所定深さH1の位置に設けられていることから、上端よりも下がった位置で補強するため、断面強度が高くなる。このため、浮上管12への水平方向の応力を十分に受けることが可能になる。また、外筒管11の断面強度が高くなることから、外筒管側上部補強部材11bを簡素化し、従前のようなダイヤフラムを用いる必要がなくなるため、製造コスト及び現地での施工コストが低減できる。このように、本実施形態の可動式防波堤10によれば、施工作業を容易に行うことができ、かつ浮上管12への水平方向の応力を十分に受け得る補強部材を設けることが可能になる。
【0068】
ところで、可動式防波施設1として可動式防波堤10を複数配列する場合、防波性能を得るために可動式防波堤10間の隙間を極力小さくすることが好ましい。しかし、外筒管側上部補強部材11bとして径外方向に広がるダイヤフラムを用いると、可動式防波堤10間の隙間が大きくなるため、可動式防波堤10間にあるダイヤフラムを切り欠くことになる。これでは、補強の強度が低下し、また、施工時に外筒管11を吊り下げた状態でバランスが悪く傾いてしまい手間のかかる重心調整が必要になる。この点、本実施形態の可動式防波堤10によれば、外筒管11の断面強度が高くなることから、外筒管側上部補強部材11bを小型化し、上述したように鋼板をリング状にして外筒管11の周方向で均一に配置できるので、可動式防波堤10間の隙間を極力小さくでき、かつ施工時に外筒管11を吊り下げた状態でバランスよく鉛直になるので施工作業を容易にすることが可能になる。
【0069】
また、本実施形態の可動式防波堤10は、浮上管12は、蓄電池を内装するとともに、当該蓄電池に電力を供給するための電力受信部21を有し、外筒管11は、浮上管12の下降位置において電力受信部21に電力を送信する電力送信部22を有している。そして、電力送信部22は、外筒管11の水底面GLから所定深さH1で埋設された範囲に配置され、電力受信部21は、浮上管12の上端が水底面GLと一致された下降位置において、浮上管12の上端よりも下方の範囲で電力送信部22に対向して配置されている。
【0070】
この可動式防波堤10によれば、浮上管12の下降位置において、電力受信部21及び電力送信部22が水底面GLよりも下方に配置されることから、当該電力受信部21及び電力送信部22が投錨などに接触することがなく、損傷するおそれがない。
【0071】
また、本実施形態の可動式防波施設1は、上述した可動式防波堤10を水底に複数配列したものである。
【0072】
この可動式防波施設1によれば、施工作業を容易に行うことができ、かつ浮上管12への水平方向の応力を十分に受け得る補強部材を設けることが可能になる。特に、可動式防波堤10を複数配列した可動式防波施設1は、可動式防波堤10間の隙間を極力小さくすることが好ましい。この点では、可動式防波堤10において外筒管11の断面強度が高くなることから、外筒管側上部補強部材11bを小型化し、上述したように鋼板をリング状にして外筒管11の周方向で均一に配置できるので、可動式防波堤10間の隙間を極力小さくすることが可能になる。
【符号の説明】
【0073】
1 可動式防波施設
5 捨石
10 可動式防波堤
11 外筒管
11H、11Ha、11Hb 貫通孔
11I 内壁
11O 外壁
11SA 第1傾斜部
11SB 第2傾斜部
11a 開口部
11b 外筒管側上部補強部材(外筒管側補強部材)
11c 外筒管側下部補強部材(外筒管側補強部材)
11d 外筒管開口部揺止部材
11e 外筒管上端揺止部材
12 浮上管
12a 開口部
12b ストッパ
12c 浮上管側上部補強部材(浮上管側補強部材)
12d 浮上管側下部補強部材(浮上管側補強部材)
12e 浮上管下端揺止部材
12f 補強リブ
21 電力受信部
21a ブラケット
22 電力送信部
22a ブラケット
23 回転防止部材
30、30a、30b キャップ
30A 嵌め込み部
30B、30Ba 係止部
31 ボルト穴
32 固定用突起部
33 突起部
34 ボルト
35 突起
120 クレーン
121 電動バイブロ
122 ヤットコ
122a チャック部
H1 水底面からの所定深さ
E 水底地盤
GL 水底面
WL 水面
図1
図2
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図6
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