特許第6218450号(P6218450)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6218450シャドーイング判定装置および運行支援装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6218450
(24)【登録日】2017年10月6日
(45)【発行日】2017年10月25日
(54)【発明の名称】シャドーイング判定装置および運行支援装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/155 20060101AFI20171016BHJP
   H04W 88/02 20090101ALI20171016BHJP
【FI】
   H04B7/155
   H04W88/02 140
   H04W88/02 151
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-127072(P2013-127072)
(22)【出願日】2013年6月18日
(65)【公開番号】特開2015-2493(P2015-2493A)
(43)【公開日】2015年1月5日
【審査請求日】2016年6月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】三野 秀樹
【審査官】 金子 秀彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−344091(JP,A)
【文献】 特開2003−035544(JP,A)
【文献】 特開平08−181643(JP,A)
【文献】 特開2005−136936(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3151618(JP,U)
【文献】 特開2012−242962(JP,A)
【文献】 特表2005−502264(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/155
H04W 88/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載された空中線の主ローブの方向に応じて、前記主ローブを介して行われるべき無線信号の伝搬を妨げる遮蔽体の有無を、航路を区分してなる複数の部分航路毎に判別する遮蔽判別手段と、
前記無線信号の送信端または受信端となる無線装置の前記空中線に対する方向について前記遮蔽判別手段が判別した遮蔽体の有無に基づいて、前記移動体の航路の内、前記無線信号の伝搬が妨げられる部分航路を特定する被遮蔽領域特定手段と
を備えたことを特徴とするシャドーイング判定装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシャドーイング判定装置において、
前記移動体の移動のスケジュール、もしくは前記移動の進捗の実績ならびに予測に基づいて、前記移動体が前記領域に位置する時刻または期間を識別する被遮蔽期間識別手段を備えた
ことを特徴とするシャドーイング判定装置。
【請求項3】
請求項1に記載のシャドーイング判定装置において、
入力された前記移動体の運行計画において、前記移動体が前記領域に位置する時刻または期間を識別する被遮蔽期間識別手段を備えた
ことを特徴とするシャドーイング判定装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のシャドーイング判定装置において、
前記遮蔽体の一部または全ては、
前記移動体の何れの部位にも該当せず、かつ前記空中線と前記無線装置との間に介在する
ことを特徴とするシャドーイング判定装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のシャドーイング判定装置において、
前記移動体が前記領域に位置することを、侵入直前もしくはその期間において視覚もしくは音にて通知する
ことを特徴とするシャドーイング判定装置。
【請求項6】
移動体に搭載された空中線の主ローブの方向に応じて、前記主ローブを介する無線信号の伝搬を妨げる遮蔽体の有無を、航路を区分してなる複数の部分航路毎に与える遮蔽判別手段と、
前記移動体が在しまたは移動し得る部分航路と、前記移動体が在する部分航路との全てまたは一部において前記遮蔽判別手段によって前記遮蔽体が無いとの判別結果が与えられる前記主ローブの方向の範囲を部分航路毎に求める非遮蔽方向判別手段と、
前記主ローブの方向が前記範囲内に維持される姿勢に前記移動体の姿勢を部分航路毎に提案する姿勢提案手段と
を備えたことを特徴とする運行支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の航路の内、その移動体に搭載された空中線に対向する無線装置との間に介在する遮蔽物により無線信号の伝搬が阻まれる領域を特定するシャドーイング判定装置と、上記伝搬の阻害が回避できる姿勢を提案する運行支援装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
船舶に搭載された衛星通信装置では、アンテナと通信衛星との間に遮蔽物が介在しない場合には、通信衛星の方位や仰角の如何にかかわらずシャドーイング(ブロッキング)は生じない。
【0003】
しかし、実際には、船舶の甲板上には、図8に示すように、煙突、マスト等の遮蔽物が存在するために、何らかのシャドーイングが生じる。
【0004】
なお、上記遮蔽物には、例えば、甲板上に設置された煙突、マスト、船室のような船舶の構造物が該当する。
【0005】
しかも、このような構造物は、金属等の導電体で構成されるために、アンテナと通信衛星との間における無線信号の伝搬を妨げ、通信路の確保を困難とする大きな要因となっていた。
【0006】
また、このような通信路の確保が妨げられることの予測や識別が事前に行われない場合には、通信装置が正常であるにもかかわらず故障していると誤認され、無用な保守が要請されてコストが増加したり可用性(信頼性)が下がる可能性があった。
【0007】
従来、このような可能性については、例えば、以下のように人手による作業が行われることによって、回避が図られていた。
(1) 船舶の構造を示す船体の平面図、側面図および正面図上で、アンテナが設置された位置から放射状に直線を引くことにより、ブロッキングチャートが作成される。
【0008】
(2) ユーザの要望に応じて営業担当者やサービスマンが以下の処理を行う。
(2-1) 船の行き先に応じて適用される航路上において船舶の位置を適当にサンプリングする。
【0009】
(2-2) 個々の船舶の位置における通信衛星の方位角および仰角を算出し、これらの方位角および仰角に基づいて上記ブロッキングチャートを参照することにより、ブロッキングエリアを算出する。なお、このような算出は、予め開発されたエクセル等のアプリケーションの実行により実現される。
(2-3) 上記算出の結果を航路情報上にプロットすることによってブロッキングエリアをマッピングし、ユーザに提供する。
【0010】
なお、本発明に関連性がある先行技術としては、以下に列記する特許文献1〜特許文献4があった。
(1) 「移動体に搭載され、常時、衛星を指向するように駆動される複数のアンテナと、このアンテナのそれぞれに対応して設けられ該アンテナの指向角度を検出する複数の角度検出器と、前記アンテナによる受信信号の搬送波対雑音レベルを検出する受信機と、前記検出された指向角度と予め設定記憶されたブロッキング領域との対比によるアンテナ切替判定とこの判定結果により切替えられたアンテナによる受信信号の搬送波対雑音レベルと予め設定記憶された搬送波対雑音レベルとの対比によるアンテナ切替判定を併用してアンテナの切替制御信号を出力する切替制御器と、このアンテナ切替制御信号に基づいてアンテナを切替える切替器とを備える」ことによって、「ブロッキング領域のエッジ周辺においても、移動体の姿勢や位置変動に対して安定した切替動作を行う」点に特徴があるアンテナ選択装置…特許文献1
【0011】
(2) 「人工衛星等の目標から送信される無線信号を受信すべく車両等の移動体に搭載され、そのビーム方向を方位軸回り及び仰角軸回りで制御可能な指向性アンテナと、方位軸制御角及び仰角軸制御角に従い上記指向性アンテナのビーム方向を方位軸回り及び仰角軸回りで制御する方位軸仰角軸制御手段と、上記目標の位置を示す目標位置データ、上記移動体の位置を示す移動体位置データ、上記移動体の傾斜角を示す移動体傾斜角データ、及び慣性測定装置の出力をもとに得られ上記移動体の進行方位を示す移動体方位データに基づき、方位軸制御角及び仰角軸制御角を決定する制御角決定手段と、上記目標を上記指向性アンテナが捕捉していないと見なせるときに、上記移動体方位データをその初期値から徐々に変化させつつ上記制御角決定手段を動作させ、同時に上記目標からの無線信号受信状態を監視することにより、当該無線信号受信状態が良好になるビーム方向をサーチする仮想移動体方位法目標サーチ手段と、上記移動体方位データを試行錯誤的に微小角度変化させつつ上記制御角決定手段を動作させ、この試行錯誤的な変化の前後の無線信号受信状態を比較した結果に基づき無線信号受信状態がより良好になるように上記移動体方位データを変化させるという処理の繰返しを、上記仮想移動体方位法目標サーチ手段によるサーチに成功した後そのときの移動体方位データを初期値として開始する移動体方位ステップトラック手段とを備え、上記移動体方位データにより上記目標のサーチ及びステップトラックを実行する」ことによって、「従来に比べ高精度で信頼性が高く、かつ走行中の移動体のようにその傾斜が時々刻々変動する場合でも優れた追尾性能を有する」点に特徴がある追尾型アンテナ装置…特許文献2
【0012】
(3) 「船舶用通信装置と通信相手先装置との間で伝送した通信信号の減衰度を取得する減衰度取得部と、所定の座標系における、通信相手先装置の位置、自船の位置および方向に基づいて、該船舶用通信装置のアンテナが該通信相手先装置に正対するようその指向方向を制御するアンテナ指向方向決定部と、アンテナの指向方向を該通信相手装置に正対させつつ船舶を種々の位置および姿勢に移動させて前記減衰度取得部により取得した減衰度が所定レベルより大きくなる前記アンテナ指向方向を船舶構造物により生じたシャドーイング発生方向として取得するシャドーイング発生方向取得部とを備える」ことによって、「容易にかつより精度良くシャドーイング発生方向を検出することができ、シャドーイング発生時に速やかに警報出力を行ったり、シャドーイングの生じない方向に船舶を誘導することもできるようになる」点に特徴があるシャドーイング発生方向検出装置…特許文献3
【0013】
(4) 「地上との通信機能を有する非静止衛星と、該非静止衛星との通信を行うことが可能な送受信装置を有する地球局と、地上の通信網と接続され該地球局との通信を該非静止衛星を介して行うことが可能な陸上地球局とから構成される衛星通信システムにおいて、該非静止衛星から伝送される送信信号が該地球局において受信可能である可視空間領域、すなわち該地球局におけるスカイラインを該地球局自身が検出することにより、該可視空間領域に関する情報と、該地球局の位置情報と該非静止衛星の軌道情報を用いて導出される該地球局から観測可能な非静止衛星の仰角、方位角等の衛星情報とを用いて、該地球局において該非静止衛星からの送信信号が受信可能な非静止衛星の通過時刻を前記通信の開始前に把握し、該地球局と該非静止衛星との間の通信が可能となる時間帯に関する情報を検出し、該地球局の利用者に対して該地球局を用いた衛星通信が可能となる時刻、時間帯、利用可能な時間率などの情報を提供することが可能なるように構成される」ことによって、「通信開始前及び通信中に通信可能な時間についての情報を知ることができる」点に特徴がある衛星通信用通信可能時間通知方式…特許文献4
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平10−163940号公報
【特許文献2】特開平11−14729号公報
【特許文献3】特許第3730589号公報
【特許文献4】特開平8−181643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、上述した人手による作業には、以下のような点で改善の余地があった。
【0016】
(1) 煩雑ではないが作業量が多い。
(2) ユーザの要望に応じたブロッキングエリアの提供に輸送手段や通信手段が介在し、実時間性が容易には確保されない。
(3) 航路の変更等、航行の過程で生じる多様な事象や事態に対する柔軟な適応が困難である。
【0017】
しかし、実際には、以下に列記する事項の何れにも対処がなされていなかった。
【0018】
(1) 通信路の確保が妨げられることの事前の識別
(2) 無線通信の阻害要因が機器の故障によるものとの誤認
(3) その誤認に応じた無用な保守の要請によるコストの増加、可用性(信頼性)の不評
【0019】
本発明は、航路やその航路の変更に柔軟に適応し、かつシャドーイングに起因して生じる無線信号の伝搬阻害の識別や予測を確度高く実現できるシャドーイング判定装置および運行支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
請求項1に記載の発明では、遮蔽判別手段は、移動体に搭載された空中線の主ローブの方向に応じて、前記主ローブを介する無線信号の伝搬を妨げる遮蔽体の有無を、航路を区分してなる複数の部分航路毎に判別する。被遮蔽領域特定手段は、前記無線信号の送信端または受信端となる無線装置の前記空中線に対する方向について前記遮蔽判別手段が判別する遮蔽体の有無に基づいて、前記移動体の航路の内、前記無線信号の伝搬が妨げられる部分航路を特定する。
【0021】
すなわち、本発明に係るシャドーイング判定装置が搭載された移動体では、所在、あるいは移動の有無や方向の如何にかかわらず、所望の航路の内、無線伝送路の形成や維持が妨げられる領域である部分航路を識別可能となる。
【0022】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載のシャドーイング判定装置において、被遮蔽期間識別手段は、前記移動体の移動のスケジュール、もしくは前記移動の進捗の実績ならびに予測に基づいて、前記移動体が前記領域に位置する時刻または期間を識別する。また、請求項3に記載の発明では、請求項1に記載のシャドーイング判定装置において、被遮蔽期間識別手段は、入力された前記移動体の運行計画において、前記移動体が前記領域に位置する時刻または期間を識別する。
【0023】
すなわち、本発明に係るシャドーイング判定装置が搭載された移動体では、所望の航路上で無線伝送路の形成や維持が妨げられる領域を地理的にではなく、航行のスケジュールや、運行計画に則した時間として識別可能となる。
【0024】
請求項4に記載の発明では、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のシャドーイング判定装置において、前記遮蔽体の一部または全ては、前記移動体の何れの部位にも該当せず、かつ前記空中線と前記無線装置との間に介在する。
【0025】
すなわち、無線装置と空中線との間における無線信号の伝搬を阻害し得る遮蔽体は、本発明が適用された移動体の部位だけではなく、その移動体以外の物体にも拡大される。また、請求項5に記載の発明では、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のシャドーイング判定装置において、前記移動体が前記領域に位置することを、侵入直前もしくはその期間において視覚もしくは音にて通知する。
【0026】
請求項6に記載の発明では、遮蔽判別手段は、移動体に搭載された空中線の主ローブの方向に応じて、前記主ローブを介する無線信号の伝搬を妨げる遮蔽体の有無を、航路を区分してなる複数の部分航路毎に与える。非遮蔽方向判別手段は、前記移動体が在しまたは移動し得る部分航路と、前記移動体が在する位置との全てまたは一部において前記遮蔽判別手段によって前記遮蔽体が無いとの判別結果が与えられる前記主ローブの方向の範囲を部分航路毎に求める。姿勢提案手段は、前記主ローブの方向が前記範囲内に維持される姿勢に前記移動体の姿勢を部分航路毎に指定する。
【0027】
すなわち、本発明に係る運行支援装置が搭載された移動体では、遮蔽体の内、その移動体の部位の位置、形状、寸法が変更されなくても、姿勢が変更されることによって、無線伝送路の形成および維持が妨げられる可能性が低減される。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、無線伝送路の形成や維持が予測されることなく突発的に妨げられることに起因する混乱や航行の障害が確度高く緩和される。
【0029】
また、本発明では、無線伝送路の形成や維持が突発的に妨げられることに起因する混乱や航法の障害に併せて、地理的な情報の参照に伴う煩雑さが緩和される。
【0030】
さらに、本発明では、移動体の周辺に位置する物体によって無線伝送路の形成や維持が予測されることなく突発的に妨げられることに起因する混乱や航行の障害が確度高く緩和される。
【0031】
また、本発明では、移動体の形状や寸法の制約の下で無線伝送路の形成および維持が安価に、簡便に実現可能となる。
【0032】
したがって、本発明が適用された移動体では、その移動体の外形、寸法、位置、航路および速度に柔軟に適応して、所望の無線装置との間に無線伝送路を安定に確度高く形成し、かつ維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の第一および第二の実施形態を示す図である。
図2】本発明の第一および第二の実施形態の動作フローチャート(1/3)である。
図3】本発明の第一および第二の実施形態の動作フローチャート(2/3)である。
図4】本発明の第一および第二の実施形態の動作フローチャート(3/3)である。
図5】ブロッキングチャートの構成を示す図である。
図6】本発明の第一の実施形態によって表示される海図の具体例である。
図7】本発明の第二の実施形態の動作を細くする図である。
図8】シャドーイングが発生するメカニズムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の第一および第二の実施形態を示す図である。
本実施形態に係る電子海図表示情報装置は、以下の要素から構成される。
(1) 自船に備えられた各部から以下の情報がそれぞれ入力されるプロセッサ11
【0035】
(1-1) GPS受信機によって与えられる自船の位置(以下、「位置情報」という。)
(1-2) ジャイロによって与えられる自船(船首)の方位(以下、「船首方位」という。)
(1-3) SDME(Speed and
Distance Measuring Equipment) によって与えられる船速
(1-4) AIS(Automatic Identification System)によって他の船舶の個々の識別符号、船名、位置、針路、速力、目的地等
【0036】
(1-5) 音響測深器によって与えられる深度
(1-6) 各種センサによって与えられる「エンジンの稼働状況」、「水温計によって与えられる海水温」、「潮流計によって与えられる潮流の流向、流速」等の観測値
【0037】
(2) プロセッサ11に周辺装置として接続されたキーボード12、ディスプレイ13、外部記憶14、プリンタ15
図2は、本発明の第一および第二の実施形態の動作フローチャート(1/3)である。
図3は、本発明の第一および第二の実施形態の動作フローチャート(2/3)である。
図4は、本発明の第一および第二の実施形態の動作フローチャート(3/3)である。
【0038】
〔第一の実施形態〕
以下、図1図4を参照して本実施形態の動作を説明する。
外部記憶14には、図5に示すように、衛星通信装置のアンテナの主ローブの方位角および仰角の組み合わせに応じて、自船の甲板上に所望の通信衛星との間に形成される無線信号の伝搬路を遮る部位が位置するか否かを示す二値情報が予め登録されたブロッキングチャート14BCが配置される。
【0039】
なお、このような二値情報の論理値については、以下では、上記部位が存在するときに「1」であり、反対に存在しないときに「0」であると仮定する。
【0040】
また、上記ブロッキングチャート14BCは、例えば、以下の全てまたは一部が反映されたレコードの集合として構成されてもよい。
(1) 甲板上に位置する自船の部位の形状、寸法、姿勢
(2) 無線信号の周波数、変調方式、波形(パルス幅、周期)、電力
(3) アンテナの指向性、利得
【0041】
また、外部記憶14には、通信衛星毎に、自船の位置における方位角や仰角の算出の基準となる位置(例えば、緯度および経度で与えられる。)が予め登録される。
〔各部の標準的な連係〕
プロセッサ11は、各部と連係して以下の処理を行うことにより、電子海図表示情報装置としての通常の機能を実現する。
【0042】
(1) 自船の位置を適宜取り込み、その位置に対応して外部記憶14に予め登録された海図データに基づいて海図画像(電子海図表示情報装置の稼働状況を含む。)を生成する(図2ステップS1)。
【0043】
(2) その海図画像に航路を示す画像を重畳することによって、航路付き海図画像を生成する(図2ステップS2)。
【0044】
(3) 上記位置情報および船首方位に基づいて自船の位置Pを適宜特定する(図2ステップS3)。
【0045】
(4) 他船にかかわる情報(AIS等を介して取得される。)、自船の深度および速度に併せて、既述の観測値(稼働状況、海水温、流向、流速)を適宜取り込む(図2ステップS4)。
【0046】
(5) 自船の位置Pに併せて、上記他船にかかわる情報、深度、速度、稼働状況、海水温、流向、流速を上記「航路付き海図画像」上に所定の形式で付加する(図2ステップS5)。
【0047】
(6) このような編集が施された航路付き海図画像(「海図画像A」という。)に、以下の処理を施してディスプレイ13の表示画面上に表示する(図2ステップS6)。
(6-1) 既述の他船毎に、上記海図画像A上の位置を目標として対応付けることによって、オブジェクトを生成する(図2ステップS7)。
【0048】
なお、上記航路は、以下の如何なる形態で与えられてもよい。
(1) 通信ポートを介して与えられる。
(2) 主記憶や外部記憶14に予め格納される。
(3) キーボード12やポインティングデバイスを介するGUI(Graphic User
Interface)に基づいて指示される。
【0049】
また、プロセッサ11は、上記オブジェクト毎に、ディスプレイ13の表示画面上でGUIに基づいて行われた操作に応じて、その表示画面上に表示される情報を更新する。
【0050】
本発明の特徴は、本実施形態では、以下に示す処理がプロセッサ11によって行われ、その処理の下で生成された「海図画像B」が上記「海図画像A」に代えて表示される点にある。
【0051】
(1) ブロッキングチャート14BCのレコードの内、既述の項目の組み合わせに好適な特定のレコードを選択する(図3ステップS8)。
(2) 予め与えられた航路上において衛星通信に供される通信衛星を識別する(図3ステップS9)。
【0052】
(3) 上記航路を所望の間隔で区分してなる複数pの部分航路毎に、通信衛星を捕捉するために適用されるべきアンテナの主ローブの方位角θaおよび仰角θeの対(θa1,θe1)〜(θap,θep)を求める(図3ステップS10)。なお、これらの対(θa1,θe1)〜(θap,θep)は、部分航路における船首方向に対する通信衛星の相対的な方向として求められる。
【0053】
(4) ブロッキングチャート14BCのレコードの内、上記対(θa1,θe1)〜(θap,θep)毎に対応した特定のレコードに格納されている二値情報の論理値B1〜Bpを参照する(図3ステップS11)。
【0054】
(5) これらの部分航路の内、上記求められた二値情報の論理値が「1」である部分航路については、通信衛星とアンテナとの間における無線信号の伝搬路が遮られるので、図6に太い破線で示すように、「航路付き海図画像」で示される航路の内、該当する部分航路の色その他の表示属性を既定の表示属性に変更することによって、海図画像Bを生成する(図3ステップS12)。
【0055】
一方、自船の航行中には、プロセッサ11は、以下の処理を行う。
(1) 位置情報や船首方位に基づいて航路上における自船の位置を所定の頻度で識別する(図4ステップS13)。
(2) 自船の位置が非遮蔽部分航路、遮蔽部分航路の何れに該当するか判別し、その判別の結果に基づいて以下の処理を行う。
【0056】
(2-1) 自船の位置が非遮蔽部分航路に該当する状態には、自船の位置が反映された「海図画像A」を生成し、ディスプレイ13の表示画面上に表示する(図4ステップS14)。
(2-2) 自船の位置が遮蔽部分航路に該当する状態には、自船の位置が反映された「海図画像B」を生成し、ディスプレイ13の表示画面上に表示する(図4ステップS15)。
【0057】
すなわち、本実施形態によれば、航路を所望の間隔で区分してなる複数の部分航路毎に、無線信号の伝搬路が遮られるかを求めることにより、既定の航路の内、アンテナと所望の通信衛星との間における無線信号の伝搬が遮られる区間に自船が移動する前に、ユーザがその区間を確度高く安定に識別可能となる。
【0058】
〔第二の実施形態〕
以下、図1図5を参照して、本発明の第二の実施形態の動作を説明する。
本実施形態の特徴は、プロセッサ11が行う下記の処理の手順にある。
プロセッサ11は、第一の実施形態と同様に、複数pの部分航路毎に、通信衛星を捕捉するために適用されるべきアンテナの主ローブの方位角θaおよび仰角θeとの対(θa1,θe1)〜(θap,θep)を求め(図3ステップS10)、かつブロッキングチャート14BCのレコードの内、これらの対(θa1,θe1)〜(θap,θep)毎に対応する特定のレコードに格納されている二値情報の論理値B1〜Bpを参照する(図3ステップS11)。
【0059】
さらに、プロセッサ11は、これらの部分航路の内、上記求められた二値情報の論理値が「0」である部分航路(以下、「非遮蔽部分航路」という。)については、特別な処理を行わない。
【0060】
しかし、上記部分航路の内、「非遮蔽部分航路」に該当しない部分航路(以下、「遮蔽部分航路」という。)については、プロセッサ11は、以下の処理を行う。
【0061】
(1) 該当する遮蔽部分航路における船首方向の偏差(以下、「偏差方位角」という。)θbの内、下記の要件を満たす最少偏差方位角θb′(図7(a))を求める(図3ステップS21)。
(1-1) ブロッキングチャート14BCに含まれるレコードの内、既述の方位角θaに代えて、下式および図7(b)
に示す方位角Θaを含む対(Θa,θe)に対応する特定のレコードに格納されている二値情報の論理値が「0」である。
【0062】
Θa=θa+θb (Θa>θaの場合)
(1-2) 絶対値が最小である。
(1-3) 該当する遮蔽部分航路に「先行する部分航路」からの進入と、「後続する部分航路」への脱出に際して行われる操船の過程で、所望の確度による設定や変更が可能である。
【0063】
(2) 遮蔽部分航路の内、上記方位角Θaを求めることができなかった部分航路(以下、「通常遮蔽部分航路」という。)については、以下の処理を行う。
(2-1) 第一の実施形態と同様に、方位角θaと仰角θeとを対応づけて、データベースに蓄積する(図3ステップS22)。
【0064】
(2-2) 既述の第一の実施形態と同様にして「航路付き海図画像」に重畳された航路の内、該当する部分航路の色その他の表示属性(以下、「表示属性b」という。)を既定の表示属性に変更することによって、海図画像Cを生成する(図3ステップS23)。
【0065】
(3) しかし、反対に、方位角Θaを求めることができた部分航路(以下、「特定遮蔽部分航路」という。)については、以下の処理を行う。
(3-1) 上記方位角θaを上式で示す方位角Θaで置換し、その方位角Θaおよび既述の仰角θeに併せて、上記最少偏差方位角θb′をデータベースに蓄積する(図3ステップS24)。
【0066】
(3-2) 「航路付き海図画像」に重畳された航路の内、該当する部分航路の色その他の表示属性を上記表示属性bと異なる「表示属性c」に変更することによって、海図画像Dを生成する(図3ステップS25)。
【0067】
一方、自船の航行中には、プロセッサ11は、以下の処理を行う。
(1) 既述の位置情報や船首方位に基づいて航路上における自船の位置と方位を所定の頻度で識別する(図4ステップS13)。
(2) 自船の位置が既述の非遮蔽部分航路、通常遮蔽部分航路、特定遮蔽部分航路の何れに該当するか判別する(図4ステップS26)。
(2-1) 自船の位置が非遮蔽部分航路に該当する状態には、自船の位置が反映された「海図画像A」を生成し、ディスプレイ13の表示画面上に表示する(図4ステップS14)。
【0068】
(2-2) 自船の位置が通常遮蔽部分航路に該当する状態には、自船の位置が反映された「海図画像」を生成し、ディスプレイ13の表示画面上に表示する(図4ステップS15)。
(2-3) 自船の位置が特定遮蔽部分航路に該当する状態、または特定遮蔽部分航路に進入する過程には、以下の処理を行う。
【0069】
(2-3-1) 自船の位置が反映された既述の「海図画像」を生成し、ディスプレイ13の表示画面上に表示する(図4ステップS30)。
(2-3-2) 該当する部分航路に対応してデータベースに蓄積された方位角Θa、仰角θeおよび最少偏差方位角θb′を取得する(図4ステップS31)。
【0070】
(2-3-3) 必要であれば、衛星通信装置に、アンテナの主ローブの方向の目標値を上記方位角Θaおよび仰角θeの対として通知し、かつ自船の操舵系(者)に対して船首方向を該当する部分航路の方向に対して最少偏差方位角θb′シフトさせることを提案する(図4ステップS32)。
【0071】
なお、このような方位角Θa、仰角θeおよび最少偏差方位角θb′の値については、自船が特定遮蔽部分航路に進入し、反対に脱却する過程における微少な船首方向の変化に適宜追従して変更されることが望ましい。
【0072】
したがって、本実施形態によれば、予め設定された航路が変更されることなく船首方向が適宜調整されるならば、アンテナと通信衛星との間における無線信号の伝搬路が確度高く確保され、通信品質や信頼性が高められ、かつ安定に維持される。
【0073】
なお、本実施形態においては、船舶の操舵装置と、その船舶に搭載された衛星通信装置のアンテナとの連係の下で無線伝送路の形成および維持を実現する処理は、如何なる形態で負荷分散や機能分散が図られてもよい。
【0074】
また、上述した第一および第二の実施形態では、ブロッキングチャート14BCのレコードの内、特定の1つの通信衛星に対応したレコードのみが適用されている。
【0075】
しかし、本発明はこのような構成に限定されず、何れの遮蔽部分航路についても、その遮蔽部分航路における無線伝送路の形成や維持が可能な他の通信衛星がある場合には、ブロッキングチャート14BCにその通信衛星に対応したレコードが予め含まれ、適宜参照されることによって、衛星通信装置のアンテナの主ローブの方向と、航路に対する自船の船首方向の偏差との双方または何れか一方が適宜切り替えられてもよい。
【0076】
さらに、上述した第一および第二の実施形態では、航路のどこでブロッキングが発生するかを航路の計画時に算出し、電子海図上に航路のどこでブロッキングが発生するかを視覚的に表示することによりユーザ自身で情報を得ることができるようになる。
【0077】
また、上述した第一および第二の実施形態では、運行計画(出発日時と予定船速)を入力することにより、場所だけでなく何時ブロッキングが起こるかをユーザにあらかじめ知らせることができる。
【0078】
さらに、上述した第一および第二の実施形態では、航行中も現在の緯度経度におけるブロッキング状況を監視してブロッキングエリアに入りそうなタイミング、あるいは入ったことが視覚情報や音として通知されることによって、シャドウイングが発生し、かつ装置が故障していないことをユーザに認識してもらうことができる
【0079】
また、本発明は、電子海図表示情報装置に限定されず、航空機その他の移動体の航路の内、無線伝送路の確保や形成が阻まれる区間の識別のために適用可能である。
【0080】
さらに、本発明は、静止軌道上に位置する通信衛星を介する無線伝送に限定されず、例えば、低軌道を周回する通信衛星や放送衛星、あるいは既定のサイトに設置された無線設備を介する無線伝送にも同様に適用可能である。
【0081】
また、本発明は、既定の航路の内、無線伝送路の確保や形成が阻まれる区間のユーザに対する通知は、視覚情報に限定されず、音声、データ伝送その他の如何なる媒体や信号として提供されてもよい。
【0082】
さらに、このような視覚情報は、文字、記号、図形、あるいはこれらの全てまたは一部の組み合わせであってもよい。
また、本発明は、衛星通信装置と連係する装置に限定されず、レーダ装置その他の多様な航法機器に組み込まれ、あるいはこのような航法機器と連係する装置として実現されてもよい。
【0083】
さらに、このような連係には、操船を行う人員、またはレーダ装置もしくは衛星通信装置を運用する人員の連係や手作業が適宜介在してもよい。
また、本実施形態では、ブロッキングチャート14BCには、自船の甲板上にあり、アンテナと所望の通信衛星との間における無線伝送路の形成や維持を阻害し得る遮蔽物が二値情報として盛り込まれている。
【0084】
しかし、このようなブロッキングチャート14BCには、例えば、自船の位置に基づく地理データベースの参照によって識別され、同様に無線伝送路の形成や維持を阻害し得る地形や地物が反映されてもよい。
【0085】
さらに、本発明では、ブロッキングチャート14BCのレコード(対応する通信衛星に関する諸元が含まれてもよい。)の全てまたは一部は、自船に備えられた他の装置、あるいは何らかのネットワークを介して適宜与えられてもよい。
【0086】
また、本発明では、アンテナの主ローブの方向(方位角Θaおよび仰角θe)が衛星通信装置によって自立的に所望の通信衛星の方向に設定され、かつ維持されているとの前提に限定されず、例えば、このような主ローブの方向の維持(既述の通りに船首方向が変更された場合を含む。)が図られるために必要な機能や負荷は、衛星通信装置との連係の下が如何なる形態で図られてもよい。
【0087】
さらに、本発明では、ブロッキングチャート14BCに予め登録された二値情報が更新されていない。
しかし、このような二値情報は、航路が地理的に広範であったり複雑である場合であっても、通信衛星との間における無線伝送路の確実な形成や維持が図られるためには、例えば、その航路上において自船が位置する区間(レグ)毎に下記の処理(1)、(2)が適宜施されてもよい。
【0088】
(1)
ブロッキングチャート14BC上で船首方向の偏差(偏差方位角)θbが補正(圧縮)される方向に対する回転に相当するマッピング
(2) 垂直方向における自船の姿勢の傾きが仰角θeの軸上で補正(圧縮)されるマッピング
また、このような二値情報の更新は、船首方位や船速が所定の頻度で観測されることによって、航路上における所望のサイズの区間毎に精度よく、かつ遅滞なく実現されてもよい。
【0089】
なお、ブロッキングチャート14BCの構成は、既述の構成に限定されず、例えば、以下の何れであってもよい。
(1) 航路情報の全ての区間(レグ)において、垂直方向における自船の姿勢の傾きと、船首方向との双方もしくは何れか一方(以下、「自船姿勢」という。)がとり得る態様毎に予め求められた複数のレコードを有し、これらのレコードの内、個々の時点における自船姿勢に対応したレコードが適宜参照可能に構成される。
(2) 上記自船姿勢の偏差に起因する二値情報の値の誤判定が許容される有効桁数や語長で、方位角と仰角との双方もしくは何れか一方が表される。
【0090】
さらに、既述の通りに更新されるブロッキングチャート14BCは、例えば、プロセッサ11が自立的にあるいは操作者によって与えられる要求に応じて行う処理の下で、ディスプレイ13の表示画面上に、所望の通信衛星の方位角および仰角に対等したマークと共に表示されることによって、操船や航行の支援に供されてもよい。
【0091】
また、本発明では、ディスプレイ13の表示画面には、例えば、図1に点線で示すようにレーダ装置によって与えられる指示画像(レーダ画像)が海図に代えて表示され、あるいはその海図と共に重畳されて表示されてもよい。
【0092】
さらに、本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の範囲において多様な実施形態の構成が可能であり、構成要素の全てまたは一部に如何なる改良が施されてもよい。
【符号の説明】
【0093】
11 プロセッサ
12 キーボード
13 ディスプレイ
14 外部記憶
14BC ブロッキングチャート
15 プリンタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8