特許第6218944号(P6218944)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6218944
(24)【登録日】2017年10月6日
(45)【発行日】2017年10月25日
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/02 20060101AFI20171016BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20171016BHJP
   F25B 6/04 20060101ALI20171016BHJP
   F25B 13/00 20060101ALI20171016BHJP
   F25B 5/02 20060101ALI20171016BHJP
   F25B 41/04 20060101ALI20171016BHJP
   F25B 43/00 20060101ALI20171016BHJP
   F28F 9/02 20060101ALI20171016BHJP
【FI】
   F24F11/02 102M
   F25B1/00 101G
   F25B6/04 Z
   F25B13/00 P
   F25B5/02 C
   F25B1/00 304A
   F25B41/04 Z
   F25B6/04 B
   F25B43/00 L
   F25B13/00 Q
   F28F9/02 301E
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-530684(P2016-530684)
(86)(22)【出願日】2014年6月30日
(86)【国際出願番号】JP2014067303
(87)【国際公開番号】WO2016001957
(87)【国際公開日】20160107
【審査請求日】2016年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】515294031
【氏名又は名称】ジョンソンコントロールズ ヒタチ エア コンディショニング テクノロジー(ホンコン)リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 重幸
(72)【発明者】
【氏名】関谷 禎夫
(72)【発明者】
【氏名】小谷 正直
(72)【発明者】
【氏名】久保田 淳
【審査官】 佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−274879(JP,A)
【文献】 特開2013−092339(JP,A)
【文献】 特開平06−207763(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/02
F25B 1/00
F25B 5/02
F25B 6/04
F25B 13/00
F25B 41/04
F25B 43/00
F28F 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、四方弁、室内熱交換器、冷媒流量制御機構、室外熱交換器を、順次接続して冷媒を循環させる冷凍サイクルを備え、
前記室内熱交換器又は前記室外熱交換器の少なくとも何れかが、直列に接続された第1熱交換器及び第2熱交換器を有し、
前記第1熱交換器と前記第2熱交換器との間で分離し、前記第2熱交換器と前記冷媒流量制御機構との間で合流するバイパス流路を有し、
前記第1熱交換器及び前記第2熱交換器が凝縮器として機能する場合は、前記冷媒が前記第1熱交換器通過後に前記第2熱交換器に流入するとともに、前記第1熱交換器で凝縮した液冷媒が前記バイパス流路を介して前記第2熱交換器をバイパスする
ことを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
圧縮機、四方弁、室内熱交換器、冷媒流量制御機構、室外熱交換器を、順次接続して冷媒を循環させる冷凍サイクルを備え、
前記室内熱交換器又は前記室外熱交換器の少なくとも何れかが、第1熱交換器及び第2熱交換器を有し、
前記第1熱交換器と前記第2熱交換器との間で分離し、前記第2熱交換器と前記冷媒流量制御機構との間で合流するバイパス流路を有し、
前記第1熱交換器及び前記第2熱交換器が蒸発器として機能する場合は、前記冷媒が前記第1熱交換器及び前記第2熱交換器に並列に流入するように前記第1熱交換器と前記第2熱交換器が並列に接続され、
前記第1熱交換器及び前記第2熱交換器が凝縮器として機能する場合は、前記冷媒が前記第1熱交換器通過後に前記第2熱交換器に流入するように前記第1熱交換器と前記第2熱交換器が直列に接続されるとともに、前記第1熱交換器で凝縮した液冷媒が前記バイパス流路を介して前記第2熱交換器をバイパスする
ことを特徴とする空気調和機。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記バイパス流路は前記バイパス流路を構成する配管よりも圧力損失が大きい絞り機構を有することを特徴とする空気調和機。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかにおいて、前記第1熱交換器及び前記第2熱交換器が蒸発器として機能する場合に前記バイパス流路に冷媒が流れることを抑制する逆止弁を前記バイパス流路に備えたことを特徴とする空気調和機。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかにおいて、前記第1熱交換器と前記第2熱交換器との間に、前記第1熱交換器で凝縮した液冷媒を分離する気液分離機構を有することを特徴とする空気調和機。
【請求項6】
請求項5において、前記気液分離機構は前記第2熱交換器に流入する冷媒を分配するヘッダ管であり、前記バイパス流路は前記ヘッダ管にて分離し前記第2熱交換器と前記冷媒流量制御機構との間で合流することを特徴とする空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクルを搭載した空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機は、圧縮機、凝縮器として作用する熱交換器、蒸発器として作用する熱交換器、及び、冷媒流量制御機構から構成される冷凍サイクルを備える。従来の一般的な空気調和機の熱交換器は決まった冷媒流路を用い、冷媒の蒸発作用時と凝縮作用時は逆向きに流動させる。しかしながら、冷媒の物性値である比容積の特性上、圧力損失は凝縮器側よりも蒸発器側が大きくなることや、蒸発器側の圧力損失の増加は圧縮機の圧縮仕事量の増加に結びつき易く、空調機の省エネ化を阻害することになる。
【0003】
そのため、熱交換器を蒸発器として用いる場合は、冷媒が並行に流れる流路本数は熱伝達率を確保した上で多めに確保することが望ましい。他方、熱交換器を凝縮器として用いる場合は、圧力損失が蒸発器ほど大きくならないため流路本数は少なめにして管内の冷媒質量速度を高めに設定する方が熱交換性能は高まる。このように、蒸発器として用いる場合と、凝縮器として用いる場合の各熱交換器内の伝熱管で構成される冷媒流路の適正な流路本数は異なる。
【0004】
これに対して、特許文献1は、室内熱交換器の冷媒流路を分割し、冷媒の流動の開閉を行う複数の弁体を備え、各弁体の開閉を行うことで、分割した熱交換器を並列接続/直列接続としてし、冷媒の流路本数を変えて性能を向上させる空気調和機を開示する。
【0005】
一方、特許文献1の空気調和機においては、冷媒の凝縮作用時に分割した熱交換器を直列接続して流動させた場合、上流の熱交換器で熱交換した後の冷媒は、その乾き度が0から1の間の状態で下流の熱交換器に流入することになる。この場合、冷媒には液冷媒とガス冷媒が存在し、液冷媒には重力がより大きく作用する。このため、液冷媒は熱交換器に上下に連通する配管内では下方に溜まり易くなり、各伝熱管に均等に液冷媒とガス冷媒を流動させることが難しい。液冷媒が多く流れる伝熱管は単相流の強制対流熱伝達率のみの作用となるため、相変化による熱伝達率よりも低くなる。その結果、液冷媒が多く流れる伝熱管の熱交換器部分は熱交換性能が低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許3884591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、凝縮器として複数の熱交換器を直列で用いた場合に、熱交換性能を向上できる空気調和機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の空気調和機は、圧縮機、四方弁、室内熱交換器、冷媒流量制御機構、室外熱交換器を、順次接続して冷媒を循環させる冷凍サイクルを備え、室内熱交換器又は室外熱交換器の少なくとも何れかが、直列に接続された第1熱交換器及び第2熱交換器を有し、第1熱交換器と第2熱交換器との間で分離し、第2熱交換器と冷媒流量制御機構との間で合流するバイパス流路を有し、第1熱交換器及び第2熱交換器が凝縮器として機能する場合は、冷媒が第1熱交換器通過後に第2熱交換器に流入するとともに、第1熱交換器で凝縮した液冷媒がバイパス流路を介して第2熱交換器をバイパスする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、凝縮器として複数の熱交換器を直列で用いた場合に、熱交換性能を向上できる空気調和機を提供するができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施例における熱交換器の冷媒の凝縮作用時の冷媒の流れを説明する図である。
図2】第1の実施例における熱交換器の冷媒の蒸発作用時の冷媒の流れを説明する図である。
図3】第2の実施例における熱交換器の冷媒の凝縮作用時の冷媒の流れを説明する図である。
図4】第3の実施例における熱交換器の冷媒の凝縮作用時の冷媒の流れを説明する図である。
図5】第4の実施例における熱交換器の冷媒の凝縮作用時の冷媒の流れを説明する図である。
図6】第1の実施例の他の構造における熱交換器の冷媒の凝縮作用時の冷媒の流れを説明する図である。
図7】冷媒の流れをモリエル線図上で説明した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の空気調和機は、圧縮機、四方弁、室内熱交換器、冷媒流量制御機構、室外熱交換器を、順次接続して冷媒を循環させる冷凍サイクルを備え、室内熱交換器又は室外熱交換器の少なくとも何れかが、直列に接続された第1熱交換器及び第2熱交換器を有し、第1熱交換器と第2熱交換器との間で分離し、第2熱交換器と冷媒流量制御機構との間で合流するバイパス流路を有し、第1熱交換器及び第2熱交換器が凝縮器として機能する場合は、冷媒が第1熱交換器通過後に第2熱交換器に流入するとともに、第1熱交換器で凝縮した液冷媒がバイパス流路を介して第2熱交換器をバイパスする。本発明の空気調和機によれば、第1熱交換器及び第2熱交換器が凝縮器として機能する場合は、第1熱交換器で凝縮した液冷媒がバイパス流路を介して第2熱交換器をバイパスするので、ガス冷媒を第2熱交換器の下流の伝熱管内に流入させ二相の飽和状態の冷媒の面積を広くすることで相変化による高い熱伝達率を得ることができ、凝縮器として複数の熱交換器を直列で用いた場合でも、熱交換性能を向上することができる。
【0012】
特に本発明の空気調和機は、圧縮機、四方弁、室内熱交換器、冷媒流量制御機構、室外熱交換器を、順次接続して冷媒を循環させる冷凍サイクルを備え、室内熱交換器又は室外熱交換器の少なくとも何れかが、第1熱交換器及び第2熱交換器を有し、第1熱交換器と第2熱交換器との間で分離し、第2熱交換器と冷媒流量制御機構との間で合流するバイパス流路を有し、第1熱交換器及び第2熱交換器が蒸発器として機能する場合は、冷媒が第1熱交換器及び第2熱交換器に並列に流入するように第1熱交換器と第2熱交換器が並列に接続され、第1熱交換器及び第2熱交換器が凝縮器として機能する場合は、冷媒が第1熱交換器通過後に第2熱交換器に流入するように第1熱交換器と第2熱交換器が直列に接続されるとともに、第1熱交換器で凝縮した液冷媒がバイパス流路を介して第2熱交換器をバイパスする。本発明の空気調和機によれば、第1熱交換器及び第2熱交換器が蒸発器として機能する場合は、冷媒が第1熱交換器及び第2熱交換器に並列に流入するように第1熱交換器と第2熱交換器が並列に接続され、第1熱交換器及び第2熱交換器が凝縮器として機能する場合は、冷媒が第1熱交換器通過後に第2熱交換器に流入するように第1熱交換器と第2熱交換器が直列に接続されるとともに、第1熱交換器で凝縮した液冷媒がバイパス流路を介して第2熱交換器をバイパスするので、暖房時及び冷房時で室内熱交換器又は室外熱交換器の少なくとも何れかを直列接続/並列接続に切り替えて熱交換器における冷媒の流路本数を変える空気調和機であっても、ガス冷媒を第2熱交換器の下流の伝熱管内に流入させ二相の飽和状態の冷媒の面積を広くすることで相変化による高い熱伝達率を得ることができ、凝縮器として複数の熱交換器を直列で用いた場合でも、熱交換性能を向上することができる。
【実施例1】
【0013】
本発明の第1の実施例について図1,2,6及び7を用いて説明する。まず、一般的な冷凍サイクル1を備えた空気調和機について図1を用いて説明する。冷凍サイクル1は、圧縮機2、凝縮器として作用する熱交換器3、蒸発器として作用する熱交換器4、冷媒流量制御機構5から構成される。
【0014】
空気調和機用として主流のフィンチューブ型熱交換器は、所定の間隙で平行に並べた短冊状のアルミ製のフィンに設けた穴部に、銅製の伝熱管を差込んだ後、伝熱管を拡管することで構成される。性能面から見た場合、相変化を伴う冷媒側の伝熱管内と冷媒との間の熱伝達率は高いが、空気とフィンとの間の熱伝達率は物性値上低い。そのため、伝熱管の内表面積よりもフィンの表面積を大きく設定(拡大伝熱面)することで熱通過上の損失(熱抵抗)の大小を軽減させる。
【0015】
冷房と暖房を行う空気調和機では、伝熱管の中で冷媒が相変化する伝熱現象が生じる。冷媒は、空気温度が冷媒温度よりも高い場合は蒸発する。逆に、冷媒温度が空気温度よりも高い場合は凝縮する。そのため、決まった形の熱交換器で冷房と暖房の両方を切替えて行う場合は、空気の温度条件に合わせて、冷媒の流れ方向を逆向きにする。一般に、伝熱管内の冷媒の蒸発や凝縮の相変化に伴う熱伝達率は、単相流の強制対流による熱伝達率よりも高い。
【0016】
まず、熱交換器4を室内熱交換器とした場合の冷房運転を説明する。圧縮機2の動作で高温高圧となった冷媒は、四方弁6により熱交換器3の伝熱管内を流動する。熱交換器3の周囲は、冷媒温度よりも低い温度の空気があり図示しないファン(送風機)を作動し、隣り合うフィン間に空気を流動させることで、高温の冷媒の熱が周囲空気に放熱される。その後、電子式膨張弁等の冷媒流量制御機構5による等エンタルピ変化により低温低圧の冷媒に変化する。その後、冷媒は室内熱交換器となる熱交換器4内を流動する。熱交換器4内の冷媒と周囲の空気をファンの動作により熱交換させることで周囲の空気から冷媒は吸熱し、フィン間を流動する空気の温度を下げる。低温低圧となった冷媒は、四方弁6から再び圧縮機2に戻る。この一連のサイクルを繰り返すことで冷房運転が可能となる。
【0017】
次に、熱交換器4を室内熱交換器とした場合の暖房運転を説明する。圧縮機2から高温高圧となった冷媒は四方弁6により熱交換器4内に流動する。周囲の空気を送風することで高温の空気が排出(放熱)され暖房される。その後、冷媒流量制御機構5を通過することで低温低圧となった冷媒は、熱交換器3内を流動し、周囲の低温の空気との間で熱交換し吸熱する。その後、冷媒は四方弁6を介して再び圧縮機2に戻る。この運転を連続して行うことで、暖房運転が可能となる。
【0018】
ここで、本実施例の空気調和機においては、熱交換器4が上部熱交換器41(第1熱交換器)及び下部熱交換器42(第2熱交換器)を備える。また、上部熱交換器出口41の冷媒凝縮条件の下流に冷媒制御弁403を備える。上部熱交換器出口41、下部熱交換器42の下流にそれぞれ冷媒合流部401a、401bを有する。また、上部熱交換器出口41、下部熱交換器42の上流にそれぞれ冷媒分岐構造402a、402bを備える。冷媒分岐構造402a、402bとしては、鉛直方向に配置されたヘッダ管を用いることができる。
【0019】
上部冷媒分岐部401aと冷媒制御弁403の間から配管を分岐し下部熱交換器42と冷媒制御弁405との間が接続管406を介して接続される。接続管406の途中には冷媒制御弁407を設ける。
【0020】
下部熱交換器42の冷媒分岐構造402bから出口部配管に至るまでに冷媒配管450を設ける。冷媒配管450には、絞り機構451と逆止弁452を備える。尚、絞り機構451としては、冷媒配管450よりも圧力損失が大きい機構であればよく、例えば、オリフィスやキャピラリ等の固定圧力損失体を用いることができる。
【0021】
なお、凝縮器4の分割では模式的に熱交換器を完全に分割した図で示したが、冷媒流路のみが分割されていれば本発明の目的は達成できる。熱交換器4を蒸発器として作用させる場合、図示しない空気側フィン部は分割せず重力の上下方向に連通することで、フィン表面で結露した凝縮水を速やかに下方に導くことができる。
【0022】
次に、本実施例の空気調和機の動作を図1及び図2で説明する。図1は、熱交換器4内の冷媒が凝縮作用の運転時を示す(熱交換器4が室内機の場合は暖房運転)。冷媒制御弁404、407は「開」、冷媒制御弁403、405は「閉」に設定する。なお、図では冷媒制御弁を白抜きの場合は「開」、塗りつぶした場合を「閉」として記す。また、冷媒が高温高圧の冷媒の流れ方向を白抜きの矢印で、低温低圧の冷媒の流れ方向を塗りつぶした矢印で示す。
【0023】
圧縮機2で高温高圧となった冷媒は、凝縮器4内を流れ周囲空気に放熱する。
【0024】
ここで凝縮器4は、上部熱交換器41と下部熱交換器42に分割される。冷媒は、冷媒制御弁403、404、405、407の開閉により、上部熱交換器41及び下部熱交換器42が直列に接続され、上部熱交換器41内を流動した後に下部熱交換器42内を流動する。冷媒は、402aの部位ではガス状態で各伝熱管に分配される。単相流における冷媒の分配は、比較的容易に均等な分配量に設定できる。上部熱交換器41内を流動した後の冷媒は、乾き度が低くなり、乾き度0.5程度の冷媒状態となりガス冷媒と一部凝縮した液冷媒が存在する。その後、冷媒分岐部402b内に到達した冷媒の液冷媒には重力作用が生じるため、冷媒分岐部402bの下方に液冷媒が溜まり易い。
【0025】
このとき、冷媒分岐部402bの下方には、液冷媒バイパス流路450が接続されているため液冷媒が同流路内を流れる。一方、凝縮作用に寄与できるガス冷媒は下部熱交換器42内を流動し、フィン間を流れる空気と熱交換しながら流動する。尚、本実施例においては、液冷媒バイパス流路450は、冷媒分岐構造402bである鉛直方向に配置されたヘッダ管の下方に接続させる。このように接続することにより、上部熱交換器41で凝縮した液冷媒がヘッダ管の下方に溜まり、液冷媒バイパス流路450を介して下部熱交換器42をバイパスさせることができる。
【0026】
この動作を、図7のモリエル線図上で説明する。圧縮機2から流出した冷媒は、上部熱交換器41を通過後、一部を分岐して下部熱交換器42の出口部で下部熱交換器を流れた冷媒と合流する。この結果、従来構造では液冷媒が多い下部熱交換器内の液冷媒の量を減らすことができ、下部熱交換器42内を大半が飽和(二相)状態の冷媒の状態にすることができるので、管内熱伝達率を高く維持できる。
【0027】
次に、本実施例の構造において熱交換器4を蒸発器として作用させる場合(熱交換器4が室内機の場合は冷房運転)について、図2を用いて説明する。冷媒制御弁403、404、405は「開」、407は「閉」に設定する。圧縮機2の動作で高温高圧となった冷媒は、凝縮器3内を流動し膨張弁5により等エンタルピ膨張し、気液二相の冷媒となって上部熱交換器41と下部熱交換器42内を並行に流動する。このとき、逆止弁452により冷媒バイパス配管450内には冷媒が流れることはなく冷媒を効果的に用いることができる。
【0028】
尚、本実施例においては、熱交換器4の蒸発作用時と凝縮作用時で冷媒流動を切替える構造で説明したが、図6に示すように、上部熱交換器41及び下部熱交換器42を直列又は並列に切替えずに、冷媒の流通方向に分割した上部熱交換器41及び下部熱交換器42を直列に固定して接続した空気調和機であっても、本発明を適用することができる。図6に示す構造においても、分割し直列に接続した上流と下流の部熱交換器41及び下部熱交換器42の間から液冷媒を分離して下流の下部熱交換器42をバイパスさせることで、飽和状態の冷媒を下流の下部熱交換器42に流動させることができ、熱交換性能を高めることができる。
【実施例2】
【0029】
次に、第2の実施例について図3を用いて説明する。本実施例の空気調和機においては、冷媒配管450に配置された絞り機構453として電子式子膨張弁等の可変圧力損失体を用いる。流路を完全密閉できる電子式膨張弁を用いることにより、第1の実施例で用いた逆止弁452が不要となる。また、絞り機構453は絞り量を自由に可変できるため、必要能力に応じて変化する冷媒循環量に対応して、適切な液冷媒量をバイパスして流動させることができる。例えば、下流熱交換器42出口の冷媒配管温度を検知し、下部の伝熱管から流出する冷媒の過冷却度が大きければ、絞り機構453の開度を開けて液冷媒のバイパス量を増やすことで、熱交換性能を高めることができる。
【実施例3】
【0030】
次に、第3の実施例について図4を用いて説明する。本実施例の空気調和機においては、上部熱交換器41の出口から下部熱交換器42の入口の間に気液分離器454を備える。このような気液分離器45を備えることにより一定量の液冷媒を保持しながら液冷媒をバイパスさせることが可能となる。気液分離容器454としては、液面高さを保てるような定量容器やサイフォン型容器を用いることができる。
【実施例4】
【0031】
次に、第4の実施例について図5を用いて説明する。本実施例の空気調和機においては、熱交換器4の出口側に過冷却熱交換器480を備える。このような過冷却熱交換器480を備えることにより、下部熱交換器に流動する液冷媒の絶対量を低減できるためさらに性能を向上させることができる。なお、過冷却熱交換器480は別体である必要はなく、上部熱交換器41や下部熱交換器42と一体の一部の伝熱管を用いてもよい。
【0032】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明で分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0033】
1:空気調和機
2:圧縮機
3:熱交換器
301:冷媒分岐部(凝縮入口)
302:冷媒合流部(凝縮出口)
4:熱交換器
41:上部熱交換器
42:下部熱交換器
401:冷媒分岐部(蒸発入口)
402:冷媒合流部(蒸発出口)
403、404、405、407:冷媒制御弁
406:冷媒配管
420:液冷媒
450:冷媒バイパス流路
451:冷媒圧力損失機構
452:逆止弁
453:電子式膨張弁
454:定量型気液分離器
480:過冷却熱交換器(サブクーラ)
5:冷媒流量制御機構(絞り機構)
6:四方弁
71:冷媒の流れ(高温高圧)
72:冷媒の流れ(低温低圧)
8:ファン(送風機)
910:空気の流れ(高風速)
920:空気の流れ(低風速)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7