(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明のパテ組成物は、特定の多塩基酸成分を特定量含有する不飽和ポリエステル樹脂(A)及び重合性不飽和化合物(B)を含有するパテ組成物である。不飽和ポリエステル樹脂(A)及び重合性不飽和化合物(B)は、パテ組成物の主剤成分を構成する。まず、不飽和ポリエステル樹脂(A)について説明する。
【0027】
<不飽和ポリエステル樹脂(A)>
本発明のパテ組成物は、多塩基酸成分として、シス−3−メチル−4−シクロヘキセン−シス,シス−1,2−ジカルボン酸無水物(以下、β−PMAAと略記することがある)を、多塩基酸成分の合計モル数に基づいて、1〜80モル%含有する不飽和ポリエステル樹脂(A)を含有する。
【0028】
一般的に、不飽和ポリエステル樹脂は、多価アルコールを含む水酸基含有成分と多塩基酸を含む酸成分との脱水縮合反応によって製造することができる。
【0029】
前記酸成分と水酸基含有成分の配合比率は、酸成分1モルに対して、1.0〜1.25モルとなるように水酸基含有成分の含有量が調整されることが好ましい。
【0030】
多塩基酸を含む酸成分は、多塩基酸成分を必須とし、その他に脂肪酸を含むことができる。
【0031】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂(A)は、全多塩基酸成分中にβ−PMAAを特定量含有することにより、パテ組成物とした際に、表面乾燥性と塗装作業性に優れるパテ組成物を得ることができる。
【0032】
シス−3−メチル−4−シクロヘキセン−シス,シス−1,2−ジカルボン酸無水物(融点63℃)は、3−メチル−Δ
4−テトラヒドロ無水フタル酸(別名、前記Δデルタは二重結合を示す記号であり、右肩の数が該二重結合の位置番号を示す。)の4つの立体異性体の中の1つであり、その他の立体異性体としては、トランス−3−メチル−4−シクロヘキセン−シス,シス−1,2−ジカルボン酸無水物(融点41℃)、シス−3−メチル−4−シクロヘキセン−シス,トランス−1,2−ジカルボン酸無水物(融点133℃)及びトランス−3−メチル−4−シクロヘキセン−シス,トランス−1,2−ジカルボ
ン酸無水物(融点121℃)が知られている(例えば、Journal of the American Chemical Society Vol.72 p.1678-1681 1950.Apr.)。これら4つの立体異性体のうち、シス−
3−メチル−4−シクロヘキセン−シス,シス−1,2−ジカルボン酸無水物を含有するパテ組成物が最も優れた空気硬化性を有する。
【0033】
シス−3−メチル−4−シクロヘキセン−シス,シス−1,2−ジカルボン酸無水物(β−PMAA)は、下記の化学式で表される。
【0034】
【化2】
【0035】
従って、不飽和ポリエステル樹脂(A)は、シス−3−メチル−4−シクロヘキセン−シス,シス−1,2−ジカルボン酸無水物(β−PMAA)に由来する下記のテトラヒドロフタル酸単位を有する。なお、下記のテトラヒドロフタル酸単位は、重合性不飽和結合を有する。
【0036】
【化3】
【0037】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂(A)は、前記β−PMAAに由来するテトラヒドロフタル酸単位を樹脂骨格中に有するものである。表面乾燥性、塗膜硬度の点から、全構造単位の合計モル数に基づいて、前記β−PMAAに由来するテトラヒドロフタル酸単位を1〜37モル%の範囲内で含有することが好ましく、ポットライフと耐水性及び付着性のバランスの観点から、2〜28モル%、さらには4〜24モル%含有することがより好ましい。
【0038】
シス−3−メチル−4−シクロヘキセン−シス,シス−1,2−ジカルボン酸無水物は、トランス−ピペリレン(IUPAC名:トランス−1,3−ペンタジエン)と無水マレイン酸とをディールス・アルダー付加反応によって製造することができる。
【0039】
シス−3−メチル−4−シクロヘキセン−シス,シス−1,2−ジカルボン酸無水物は、市販品の例えばメチルシクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物を用いることができ、他の立体異性体や構造異性体を含んでいてもよいが、好ましくは、β−PMAA以外のその他の立体異性体や構造異性体の含有率が50%未満、さらに20%未満、特に15%未満のものを用いることが好ましい。
【0040】
水酸基含有成分としては、分子内に水酸基を1つ以上有する化合物である。具体的には
、分子内に水酸基を2個以上有する多価アルコール、アリルエーテル基を有するヒドロキシ化合物(a1)等があげられる。その他に、分子内に水酸基を1つ以上有する化合物として1価アルコールもあげられる。
【0041】
多価アルコールとしては、例えば、アルカンポリオール、オキシアルキレンポリオール、ポリオキシアルキレンポリオール、脂環式ポリオール等のポリオールが挙げられる。具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、水素化ビスフェノールA、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ビスフェノール化合物、ビスフェノールA等のビスフェノール化合物とプロピレンオキシド及びエチレンオキシド等のアルキレンオキシドとの付加物、1,2,3,4−テトラヒドロキシブタン、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,3−プロパンジオール、1,2−シクロヘキサングリコール、1,3−シクロヘキサングリコール、1,4−シクロヘキサングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、パラキシレングリコール、ビシクロヘキシル−4,4’−ジオール、2,6−デカリングリコール、2,7−デカリングリコール、ビスヒドロキシエチルテレフタレート等が挙げられ、これらは1種でまたは2種以上を組合せて使用できる。
【0042】
不飽和ポリエステル樹脂(A)は、前記多価アルコールに由来する構造単位を、全構造単位の合計モル数に基づいて、5〜60、好ましくは8〜47モル%の範囲内含有することができる。
【0043】
アリルエーテル基を有するヒドロキシ化合物(a1)は、1分子中にアリルエーテル基を少なくとも1つ有する化合物あり、例えば、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル、トリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル、ジプロピレングリコールモノアリルエーテル、トリプロピレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、1,2−ブチレングリコールモノアリルエーテル、1,3−ブチレングリコールモノアリルエーテル、ヘキシレングリコールモノアリルエーテル、オクチレングリコールモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル等を挙げることができる。
【0044】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂(A)は、表面乾燥性の向上の点から、アリルエーテル基を有するヒドロキシ化合物(a1)を用いることが好ましい。
【0045】
酸化硬化が進行するアリルエーテル基を有するヒドロキシ化合物(a1)を用いることにより、表面乾燥性並びに耐水性等の塗膜物性を向上させることができる。
【0046】
特に、表面乾燥性及び耐水性向上の点から、中でも、1分子中にアリルエーテル基を2個有するヒドロキシ化合物(a1’)を使用することが好ましい。
【0047】
不飽和ポリエステル樹脂(A)を製造する際、1分子中にアリルエーテル基を2個有するヒドロキシ化合物(a1’)を使用する場合には、表面乾燥性並びに耐水性向上の点からその含有量は、全水酸基含有成分中、1〜70モル%、さらに2〜50モル%、さらに特に3〜30モル%の範囲内が好適である。
【0048】
すなわち、不飽和ポリエステル樹脂(A)は、前記アリルエーテル基を有するヒドロキシ化合物(a1)に由来するアリルエーテル単位を、全構造単位の合計モル数に基づいて
、1〜50モル%、好ましくは2〜40モル%の範囲内含有することが好適である。
【0049】
また、上記多価アルコール以外のその他のアルコール成分を使用することもできる。かかるアルコール成分としては、特に限定されず、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、2−エチルブタノール、2−エチルヘキサノール、ステアリルアルコール、2−フェノキシエタノール等のモノアルコール;プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、「カージュラE10P」(商品名、Momentive Specialty Chemicals社製、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)等のモノエポキシ化合物と酸を反応させて得られたアルコール化合物等が挙げられる。
【0050】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂を構成する多塩基酸成分は、具体的には1分子中にカルボン酸などの酸基を2個以上有する化合物のことである。
【0051】
本発明に用いる不飽和ポリエステル樹脂(A)は、前記シス−3−メチル−4−シクロヘキセン−シス,シス−1,2−ジカルボン酸無水物以外にも、他の不飽和又は飽和多塩基酸を併用する。該他の不飽和多塩基酸としては、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、テトラクロロ無水フタル酸、無水ヘット酸、無水ハイミック酸、トランス−3−メチル−4−シクロヘキセン−シス,シス−1,2−ジカルボン酸無水物、シス−3−メチル−4−シクロヘキセン−シス,トランス−1,2−ジカルボン酸無水物、トランス−3−メチル−4−シクロヘキセン−シス,トランス−1,2−ジカルボン酸無水物、4−メチル−Δ
4−テトラヒドロ無水フタル酸(3−メチル−Δ
4−テトラヒドロ無水フタル酸の構造異性体)等が挙げられ、これらは1種でまたは2種以上を組合せて使用できる。
【0052】
また、分子内にラジカル重合性の炭素−炭素二重結合を有さない飽和多塩基酸を組合せてもよく、該飽和多塩基酸としては、例えば、フタル酸、無水フタル酸、ハロゲン化無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、1,12−ドデカン二酸,2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸無水物、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、並びにそれらのジアルキルエステル等を挙げることができ、これらは1種でまたは2種以上を組合せて使用することができる。
【0053】
特に、シス−3−メチル−4−シクロヘキセン−シス,シス−1,2−ジカルボン酸無水物以外の他の多塩基酸を併用する場合に、ラジカル重合性すなわち、塗膜内部の硬化性の点から、フマル酸やマレイン酸が好ましく、さらに特にフマル酸が好ましい。
【0054】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂(A)は、前記シス−3−メチル−4−シクロヘキセン−シス,シス−1,2−ジカルボン酸無水物以外の多塩基酸に由来する構造単位を、8〜45モル%の範囲内で含有することが好ましく、17〜44モル%、さらには21〜42モル%含有することがより好ましい。
【0055】
また、不飽和ポリエステル樹脂(A)は、脂肪酸、ロジン酸等により変性されていてもよい。かかる脂肪酸としては、乾性油脂肪酸および/または半乾性油脂肪酸が好適であり、例えば、魚油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ゴマ油脂肪酸、ケシ油脂肪酸、エノ油脂肪酸、麻実油脂肪酸、ブドウ核油脂肪酸、トウモロコシ油脂肪酸、トール油脂肪酸、ヒマワリ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、クル
ミ油脂肪酸、ゴム種油脂肪酸、ハイジエン脂肪酸等を挙げることができる。これらは1種でまたは2種以上を組合せて使用できる。不飽和ポリエステル樹脂(A)は、前記脂肪酸、ロジン酸等に由来する構造単位を、全構造単位の合計モル数に基づいて、0〜40モル%、好ましくは0〜20モル%の範囲内含有することができる。
【0056】
不飽和ポリエステル樹脂(A)は、常法によって製造することができ、例えば、前記多価アルコールを含む水酸基含有成分と多塩基酸を含む酸成分とを窒素雰囲気下に縮合反応させることにより得られる。また、水酸基含有成分として、アリルエーテル基を有するヒドロキシ化合物(a1)を使用する場合には、予め多価アルコールと混合しても、後から添加して縮合反応させてもよい。水酸基含有成分としてその他のアルコール成分を使用する場合には、予め多価アルコールと混合しても、後から添加して縮合反応させてもよい。酸成分として脂肪酸、ロジン酸等を使用する場合には、予め多塩基酸と混合しても、後から添加して縮合反応(すなわち、不飽和ポリエステル樹脂を変性)させてもよい。また、前記縮合反応を2回以上の多段階に分けて製造しても良い。縮合反応時の加熱温度は、140〜250℃、好ましくは160〜200℃の範囲内であることがゲル化防止の点から望ましい。
【0057】
不飽和ポリエステル樹脂の製造において、重縮合触媒、重金属酸化物及び重合禁止剤を使用してもよい。
【0058】
重縮合触媒として、強プロトン酸、重金属酸化物等を使用することができる。強プロトン酸としては、例えば、硫酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸等が挙げられる。また、重金属酸化物としては、例えばテトラブチルチタネート、モノブチル錫オキサイド、ジブチル錫オキサイド、三酸化アンチモン、二酸化マンガン等が挙げられる。
【0059】
重合禁止剤としては、例えば、トリハイドロベンゼン、メチルハイドロキノン、1,4−ナフトキノン、パラベンゾキノン、ハイドロキノン、ベンゾキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、p−tert−ブチルカテコール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール等を挙げることができる。
【0060】
不飽和ポリエステル樹脂(A)の全多塩基酸中、β−PMAAの含有率は1〜80モル%であり、表面乾燥性の点から、5〜60モル%、さらに10〜50モル%の範囲内が好適である。
【0061】
不飽和ポリエステル樹脂(A)の多塩基酸中、その他の多塩基酸の含有率は20〜99モル%であり、ラジカル重合性の点から、40〜95モル%、さらに50〜90モル%の範囲内が好適である。
【0062】
上記その他の多塩基酸のうち、不飽和多塩基酸と飽和多塩基酸との含有比率は、表面乾燥性と耐水性の点から、不飽和多塩基酸/飽和多塩基酸=100/0〜50/50、好ましくは100/0の範囲内が好適である。
【0063】
上記不飽和ポリエステル樹脂(A)は、酸基を有するものであることが好ましく、酸価としては、5〜50mgKOH/g、さらに10〜40mgKOH/gの範囲内であることが、耐水性の向上の観点から好適である。
【0064】
また、不飽和ポリエステル樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、1,000〜100,000、さらに2,000〜50,000の範囲内が好適である。
【0065】
本発明において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定
し、ポリスチレン換算した値である。ゲルパーミエーションクロマトグラフ装置としては「HLC8120GPC」(東ソー(株)社製、商品名)が使用でき、これに用いるカラムとしては、「TSKgelG−4000H×L」、「TSKgelG−3000H×L」、「TSKgelG−2500H×L」、「TSKgelG−2000H×L」(いずれも東ソー(株)社製、商品名)の4本を使用することができる。ここでは、移動相としてテトラヒドロフランを用い、測定温度40℃、流速1cc/分とし、検出器としてRI屈折計を用いた。
【0066】
<重合性不飽和化合物(B)>
本発明のパテ組成物は、重合性不飽和化合物(B)を含有する。
【0067】
重合性不飽和化合物(B)は、前記不飽和ポリエステル樹脂(A)以外の化合物であり、分子内に1個以上の重合性不飽和基を有する化合物である。重合性不飽和基とは、ラジカル重合しうる不飽和基を意味する。かかる重合性不飽和基としては、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アリル基等が挙げられる。
【0068】
重合性不飽和化合物(B)としては、特に、塗膜硬度の点から環状構造を有する多官能(メタ)アクリレート(b1)を含有することが好適である。
【0069】
環状構造を有する多官能(メタ)アクリレート(b1)としては、例えば、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、また、水素化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、水素化ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、水素化ヘキサフルオロビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシ)ヘキサヒドロフタル酸などの脂環構造を有する二官能(メタ)アクリレート、5−エチル−2−(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−5−(ヒドロキシメチル)−1,3−ジオキサンジ(メタ)アクリレート、1,4−ジ(メタ)アクリロイルピペラジン、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシアルキル)イソシアヌレートなどの複素環構造を有する多官能(メタ)アクリレート、ビスフェノール骨格、ナフタレン骨格又はビフェニル骨格を有するジエポキシ化合物若しくはジオール化合物から誘導される芳香環を有する二官能(メタ)アクリレート、さらにはこれら多官能(メタ)アクリレートのエチレンオキシド、プロピレンオキシド、カプロラクトンなどの変性物が挙げられる。
【0070】
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は「アクリレートまたはメタクリレート」、「(メタ)アクリル酸」は「アクリル酸又はメタクリル酸」を意味する。
【0071】
なかでも、塗膜硬度、耐水性及び表面乾燥性の点から、下記一般式(I)で表されるビスフェノール型(メタ)アクリレート化合物(b1’)
【0072】
【化4】
【0073】
(式中、R
1はそれぞれ同一又は異なって水素原子又はメチル基を示し、R
2およびR
3はそれぞれ同一又は異なって水素原子又はメチル基を示し、R
4及びR
5はそれぞれ同一又は異なってハロゲンで置換されていても良い炭素数1〜4の有機基を示し、n及びm
はそれぞれ同一又は異なって1〜10の平均値を示し、かつ、nとmの平均値の和が2〜15の範囲内である。)が好適である。
【0074】
R
1は水素原子又はメチル基を示し、塗膜硬度の点から、好ましくはメチル基である。
【0075】
R
2およびR
3はそれぞれ同一又は異なって水素原子又はメチル基を示し、好ましくはメチル基である。
【0076】
R
4およびR
5のハロゲンに置換されていても良い炭素数1〜4の有機基としては、炭素数1〜4の低級アルキル基が挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、好ましくはメチル基である。ハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
【0077】
n及びmはそれぞれ同一又は異なって1〜10の平均値を示し、前記不飽和ポリエステル樹脂(A)との相溶性と耐水性のバランスの観点から、nとmの平均値の和が2〜15モル、さらに2.1〜11.0モル、さらに特に2.2〜5.0モルとなる範囲内が好適である。
【0078】
環状構造を有する多官能(メタ)アクリレート(b1)としては、市販品を用いることができ、例えば、NKエステル、A−B1206PE、同ABE−300、同A−BPE−4、同A−BPE−6、同A−BPE−10、同A−BPE−20、同A−BPE−30、同A−9300、同A−9300−1CL、同A−BPP−3、同A−DCP、同BPE−80N、同BPE−100、同BPE−200、同BPE−500、同BPE−900、同BPE−1300N、同DCP、以上、新中村化学工業(株)製)、ファンクリルFA−324A、同FA−312A、同FA−731A、同FA−320M、同FA−321M(以上、日立化成(株)製)、KAYARAD(登録商標)R−712、同R−551、同R−684(以上、日本化薬(株)製)、アロニックスM−211B(A−BPE4)、M−315(以上、東亞合成(株)製)等を挙げることができる。
【0079】
本発明の含有する重合不飽和化合物(B)として、環状構造を有する多官能(メタ)アクリレート(b1)を含有させた場合、パテ組成物を塗布した後の塗膜硬度、耐水性及び表面乾燥性の全てを向上させることができる。これは、環状構造を有する化合物が、比較的剛直かつ疎水な骨格であることから、パテ組成物が硬化した際の塗膜を強靭にして、塗膜物性(特に塗膜硬度)を向上させるものと考えられる。また、多官能であることにより、他の成分、特に前記特定不飽和ポリエステル樹脂と重合することができることから、表面乾燥性を損なうことなく塗膜全体の架橋密度を向上させ、塗膜が緻密になることから、塗膜硬度および耐水性を向上させることができる。
【0080】
また、環状構造を有する多官能(メタ)アクリレート(b1)以外にも、その他の重合性不飽和化合物を含有することができる。重合性不飽和基としては、ラジカル重合しうる不飽和基を意味する。かかる重合性不飽和基としては、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アリル基等が挙げられる。
【0081】
上記その他の重合性不飽和化合物は、塗布時には組成物の粘度を低くし、塗布作業性を向上させつつ、かつ、膜形成成分ともなりうる反応性希釈剤として作用するものであり、重合性不飽和基を有する化合物である。
【0082】
その他の重合性不飽和化合物の具体例としては、例えば、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル化合物;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレー
ト、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレートなどの1価のアルコールの(メタ)アクリル酸エステル化合物;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(3−メタクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)−フェニル)プロパン、ジ(メタクリロキシエチル)トリメチルヘキサメチレンジウレタン、2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパンなどの多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル化合物;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシプロピルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシプロピルメタクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等のジシクロペンテニル基含有重合性不飽和化合物;エチレングリコールジマレエート、プロピレングリコールジイタコネートなど;4−(メタ)アクリロイルオキシメトキシカルボニルフタル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシカルボニルフタル酸などの4−(メタ)アクリロイルオキシ基含有芳香族ポリカルボン酸およびその酸無水物;ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、トリアリルフタレート等のアリル化合物;エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリジメチルシリコンジ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等のオリゴマーなどが挙げられ、これらは1種でまたは2種以上を組合せて使用できる。
【0083】
上記その他の重合性不飽和化合物のうち、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート(b2)及び/又はヒドロキシエチルメタクリレート(b3)を含有することが好ましい。
【0084】
上記重合性不飽和化合物(B)の含有量としては、不飽和ポリエステル樹脂(A)100質量部を基準として10〜200質量部、好ましくは40〜120質量部が適している。
【0085】
重合性不飽和化合物(B)のうち、(b1)を含有する場合その含有量は、塗膜硬度及び表面乾燥性並びに基材に対する耐水付着性を両立させることができる点から、不飽和ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して4〜80質量部、さらに12〜50質量部が好ましい。
【0086】
重合性不飽和化合物(B)のうち、(b2)を含有する場合その含有量は、表面乾燥性と基材に対する耐水付着性を両立させることができる点から、不飽和ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して10〜100質量部、さらに10〜50質量部が好ましい。
【0087】
重合性不飽和化合物(B)のうち、(b3)を含有する場合その含有量は、表面乾燥性と基材に対する耐水付着性を両立させることができる点から、不飽和ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して20〜100質量部、さらに30〜70質量部が好ましい。
【0088】
重合性不飽和化合物(B)のうち、成分(b1)とその他の重合性不飽和化合物とを併用する場合その含有比率は、成分(b1)/その他の重合性不飽和化合物の質量比で95/5〜5/95、好ましくは90/10〜10/90の範囲内が好適である。
【0089】
さらに、その他の重合性飽和化合物のうち、耐水性の点から前記成分(b2)/(b3)の含有比率は、質量比で95/5〜5/95、好ましくは90/10〜10/90の範囲内が好適である。
【0090】
<脱水剤(C)>
本発明のパテ組成物は、脱水剤(C)を含有することが好ましい。脱水剤(C)を含有することによりパテ層の表面乾燥性、耐水性、付着性の経時による低下を抑制し、安定した品質のパテ組成物を得ることができる。本発明を拘束することを望むものではないが、脱水剤(C)が組成物中の水分量を適度に調整し、パテ層の表面乾燥性、耐水性、付着性の経時による低下を抑制し、安定した品質のパテ組成物を得ることができると考えられる。
【0091】
上記脱水剤(C)としては、従来公知の無機系脱水剤及び有機系脱水剤を制限なく使用することができる。
【0092】
無機系脱水剤の具体例としては、水素化カルシウム、酸化カルシウム(生石灰)、塩化カルシウム、硫酸カルシウム(石膏)等のカルシウム化合物;酸化バリウム等のバリウム化合物;硫酸マグネシウムなどのマグネシウム化合物;硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウムなどのナトリウム化合物;硫酸銅などの銅化合物;シリカゲルなどの無機珪素化合物;酸化アルミニウム(水硬性アルミナ、水素化アルミニウムリチウム、非結晶性シリカアルミナ、結晶性アルミノ珪酸塩(モレキュラーシーブ)などのアルミニウム化合物等を挙げることができる。
【0093】
有機系脱水剤の具体例としては、オルソ蟻酸トリメチル、オルソ蟻酸トリエチル、オルソ蟻酸トリブチル等のオルソ蟻酸アルキル;オルソ酢酸トリメチル、オルソ酢酸トリエチル、オルソ酢酸トリブチル等のオルソ酢酸アルキル;またはオルソほう酸トリメチル、オルソほう酸トリエチル、オルソほう酸トリブチル等のオルソほう酸アルキル;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニルシラン;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン化合物;ベンゼンスルフォニルイソシアネート、トシルイソシアネート、フェニルイソシアネート、p−クロロフェニルイソシアネート等のモノイソシアネート化合物、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物;水素添加キシリレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート化合物;トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメ
チルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトカプロエート、3−イソシアナトメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、4−イソシアナトメチル−1,8−オクタメチレンジイソシアネート(通称、トリアミノノナントリイソシアネート)等の3価以上の有機ポリイソシアネート化合物;これらのポリイソシアネート化合物の2量体又は3量体;これらのポリイソシアネート化合物と多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂又は水とをイソシアネート基過剰の条件でウレタン化反応させてなるプレポリマー等;無水酢酸等の脂肪族酸無水物、無水安息香酸等の芳香族酸無水物;N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩等のカルボジイミド化合物等を挙げることができる。以上に述べた例示物は1種で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0094】
本発明においては、上記脱水剤(C)としては組成物から水を除去する原理として、脱水剤と水が反応することによって水を除去する水反応性脱水剤、脱水剤と水が水和物を形成して水を除去する水和物生成性の脱水剤、脱水剤が水を吸着することによって水を除去する水吸着型脱水剤のいずれであってもよいが、特に水反応性脱水剤及び/又は水吸着型脱水剤が好ましい。
【0095】
上記のうち水吸着型の脱水剤としては、例えば、シリカ、非結晶性シリカアルミナ、結晶性アルミノ珪酸塩を挙げることができる。
【0096】
上記のうち水反応性脱水剤としては、前述のモノイソシアネート化合物やポリイソシアネート化合物等のイソシアネート化合物を挙げることができる。
【0097】
上記脱水剤(C)は、不飽和ポリエステル樹脂(A)及び重合性不飽和化合物(B)の合計質量100質量部を基準にして0.1〜50質量部、好ましくは2〜30質量部の範囲内であることが好ましい。
【0098】
<多価金属化合物(D)>
本発明のパテ組成物は、多価金属化合物(D)を含有することが適している。多価金属化合物を含むことによって、耐水性、付着性に優れたパテ層を形成する効果がある。多価金属化合物とは、2価以上(1価以外)の多価金属を含有する化合物を意味する。
【0099】
多価金属化合物(D)としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の元素周期表2族元素;チタン、ジルコニウム等の元素周期表4族元素;クロム、モリブデン等の元素周期表6族元素;マンガン等の元素周期表7族元素;鉄、ルテニウム等の元素周期表8族元素;コバルト、ロジウム等の元素周期表9族元素;ニッケル、パラジウム等の元素周期表10族元素;銅、金等の元素周期表11族元素;亜鉛、カドミウム等の元素周期表12族元素、アルミニウム等の元素周期表13族元素;セレン等の元素周期表16族元素等の金属元素を含有する多価金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩等を挙げることができる。
【0100】
具体的には、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化銅等の金属酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛等の金属炭酸塩;水酸化カルシウム、水酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物等を挙げることができる。
【0101】
本発明では、多価金属化合物として、元素周期表2族元素、特にマグネシウムを含有する化合物が好適である。
【0102】
かかる多価金属化合物を含有する場合、その含有量は、不飽和ポリエステル樹脂(A)及び重合性不飽和化合物(B)の合計質量100質量部を基準として3〜50質量部、好ましくは5〜30質量部であることが適している。
【0103】
本発明のパテ組成物は、硬化速度を調整するために硬化促進剤や重合禁止剤を含有してもよい。
【0104】
<硬化促進剤>
硬化促進剤を含有することにより、さらに硬化性を向上させることができる場合がある。硬化促進剤としては、特に制限なく従来公知のものが使用できるが、特に、硬化性、乾燥性の観点から芳香族アミンが好ましい。具体的には、アニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、p−トルイジン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンズアルデヒド、4−[N,N−ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]ベンズ
アルデヒド、4−(N−メチル−N−ヒドロキシエチルアミノ)ベンズアルデヒド、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)−p−トルイジン、N−エチル−m−トルイジン、m−トルイジン、ピリジン、フェニルモルホリン、ピペリジン、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アニリン、ジエタノールアニリン等のN,N−置換アニリン、N,N−置換−
p−トルイジン、4−(N,N−置換アミノ)ベンズアルデヒドや、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル、3−ジメチルアミノ安息香酸、3−ジメチルアミノ安息香酸エチル、3−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、3−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、3−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル、2−ジメチルアミノ安息香酸、2−ジメチルアミノ安息香酸エチル、2−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、2−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、2−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル等のジメチルアミノ基含有安息香酸等が挙げられ、これらは1種でまたは2種以上を組合せて使用できる。
【0105】
さらにパテ組成物上に塗装した上塗り塗膜の黄変が少ないことから、かかる芳香族アミンの中でも、ジメチルアミノ基を有する化合物が好適である。これらの中でも4−ジメチルアミノ安息香酸、3−ジメチルアミノ安息香酸が特に適している。
【0106】
芳香族アミンを含有する場合、その含有量は、前記不飽和ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して0.01〜2.0質量部、好ましくは0.05〜1.5質量部の範囲内であることが、ポットライフ(ゲル化時間)、形成塗膜の空気乾燥性や研磨性、上塗り塗膜の耐熱黄変性などの観点から望ましい。
【0107】
上記芳香族アミン以外の他の硬化促進剤としては、例えば、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸銅、ナフテン酸バリウム、オクチル酸コバルト、オクチル酸マンガン、オクチル酸亜鉛、オクチル酸バナジウム等の金属ドライヤー;上記に例示した芳香族アミン以外のトリエタノールアミン、ジエチレントリアミンなどの脂肪族アミン、3級アミン類、4級アンモニウム塩が挙げられ、これらは1種でまたは2種以上を組合せて使用できる。上記芳香族アミン以外の他の硬化促進剤を使用する場合、その量は不飽和ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して0.01〜5質量部の範囲が適している。
【0108】
重合禁止剤としては、例えば、前記不飽和ポリエステル樹脂(A)の重合禁止剤の項で述べたものを好適に使用することができる。
【0109】
<着色顔料>
本発明のパテ組成物は、着色顔料を含有してもよい。着色顔料としては、例えば、チタン白、ベンガラ、カーボンブラック、鉄黒、亜鉛華等の無機顔料;モリブデンレッド、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサジン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料等の有機顔料が挙げられる。これら着色顔料成分は、1種で又は2種以上組合せて使用できる。
【0110】
上記着色顔料は、比較的少量の使用で着色できかつ、パテ用途での研磨作業性や仕上り性の面から、無機顔料が好ましく、チタン白を含むことが好ましい。
【0111】
上記着色顔料を使用する場合、その含有量は、所望の意匠を得られる範囲であれば特に限定されないが、不飽和ポリエステル樹脂(A)及び重合性不飽和化合物(B)の合計質量100質量部に対して、例えば1〜100質量部、好ましくは1〜50質量部の範囲内が適している。
【0112】
<体質顔料>
本発明のパテ組成物は、体質顔料を含有してもよい。
【0113】
前記体質顔料としては、例えば、タルク、マイカ、硫酸バリウム、カオリン、炭酸カルシウム、クレー、シリカ、石英、ガラスなどが挙げられる。さらにガラスバルーン、プラスチックバルーンなどの中空粒子も含むことができる。これら体質顔料成分は、1種で又は2種以上組合せて使用できる。上記体質顔料は、パテ用途での研磨作業性や仕上り性やコストの点から、タルク、硫酸バリウム、カオリン、クレー、シリカ、炭酸カルシウムから選ばれる少なくとも1種が好ましく、特にタルクが含まれることが好ましい。
上記体質顔料を使用する場合その含有量は、パテ用途での研磨作業性や仕上り性の面から、不飽和ポリエステル樹脂(A)及び重合性不飽和化合物(B)の合計質量100質量部に対して1〜300質量部、さらに70〜250質量部の範囲内が好適である。
【0114】
<防錆剤>
本発明のパテ組成物は、防錆剤を含有してもよい。
【0115】
防錆剤としては、例えば、リン酸亜鉛、リン酸カルシウム、亜リン酸亜鉛、亜リン酸カリウム、亜リン酸カルシウム等のリン酸塩系;トリポリリン酸二水素アルミニウム等のポリリン酸塩系;モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム等のモリブデン酸塩系、リンモリブデン酸アルミニウム等のリンモリブデン酸塩系;ホウ酸塩系;メタホウ酸バリウム等のメタホウ酸塩系;シアナミド亜鉛カルシウム系;カルシウム、亜鉛、コバルト、鉛、ストロンチウム、バリウム等のカチオンを多孔質シリカ粒子に結合させた変性シリカ、カチオンをイオン交換によって結合させたイオン交換シリカ;ピロリン酸アルミニウム系;酸化亜鉛などの防錆顔料や、さらに1−(ベンゾチアゾール−2−イルチオ)コハク酸、(2−ベンゾチアゾール−2−イルチオ)コハク酸ジ−(C12〜14アルキル)アンモニウム塩などのベンゾチアゾール系化合物;4−メチル−γオキソ−ベンゼンブタン酸とN−エチルモルホリンとの付加反応物、4−メチル−γオキソ−ベンゼンブタン酸とジルコニウムとの付加反応物などのケトカルボン酸系などの有機防錆剤が挙げられ、これらは1種でまたは2種以上を組合せて使用できる。
【0116】
防錆剤を含有する場合、その含有量は、パテ層の研磨作業性や仕上り性、硬化性や乾燥性、ヘラ付け性、耐熱黄変性等の観点から、不飽和ポリエステル樹脂(A)及び重合性不飽和化合物(B)の合計質量100質量部に対して、3〜50質量部、好ましくは5〜45質量部の範囲であるのがよい。
【0117】
<その他>
本発明のパテ組成物には、例えば、有機溶剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、低収縮剤、酸化防止剤、皮張り防止剤、可塑剤、骨材、難燃剤、安定剤、強化材、減粘剤等の粘度調節剤、顔料分散剤、改質用樹脂、チキソ剤、チキソ助剤、消泡剤、レベリング剤、シランカップリング剤、アルデヒド捕捉剤等を含有していてもよい。
【0118】
本発明のパテ組成物は、有機溶剤を実質的に配合しなくても、ヘラ付け作業性が良好で、諸物性に優れるパテ層を与えることができるが、粘度調整の点から、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、トルエン、キシレン等の有機溶剤を含有してもよい。
【0119】
以上の述べた主剤の粘度は、パテ組成物の使用目的に応じて適宜調整できるが、厚塗り性、ヘラ付け性、表面仕上がり性の点から一般に、100〜2,000Pa・sec、好ましくは200〜1,300Pa・secの範囲内にあることが適している。
【0120】
本明細書において上記パテ組成物の粘度は、B型粘度計「VISCOMETERTV−22」(商品名、東機産業社製)にて試料の温度を25℃に調整し、No.7ロータ、回転速度2rpmで測定したものである。
【0121】
本発明のパテ組成物は、上記不飽和ポリエステル樹脂(A)及び重合性不飽和化合物(B)を必須として含む成分を主剤成分とし、有機過酸化物を含む成分を硬化剤成分とする多成分系である。
【0122】
本発明のパテ組成物は、主剤成分及び硬化剤成分からなる2成分系であってもよい。この場合、パテ組成物が必要に応じて脱水剤(C)、多価金属化合物(D)、硬化促進剤、着色顔料、体質顔料、重合禁止剤等を含有する場合には、それらを主剤成分に含ませることができる。
【0123】
本発明のパテ組成物は、主剤成分、硬化剤成分、並びに、脱水剤(C)、多価金属化合物(D)、硬化促進剤、着色顔料、体質顔料、重合禁止剤等を別成分として含有する、3成分以上からなる多成分系であってもよい。例えば、脱水剤(C)として、水反応性脱水剤を含有する場合には、前記主剤、架橋剤のどちらに配合しても良いが、貯蔵安定性及び塗装作業性の観点から、使用直前に前記主剤、硬化剤及び脱水剤を混合して使用する三成分系であることが好適である。
【0124】
上記有機過酸化物としては、具体的には、ジアシルパーオキサイド系、パーオキシエステル系、ハイドロパーオキサイド系、ジアルキルパーオキサイド系、ケトンパーオキサイド系、パーオキシケタール系、アルキルパーエステル系、パーカーボネート系等の従来公知のものを使用することができ、これらは1種で又は2種以上を用いてもよい。
【0125】
上記有機過酸化物の含有量は、特に制限されるものではなく、塗装環境や塗膜物性に応じて適宜調整可能であるが、不飽和ポリエステル樹脂(A)及び重合性不飽和化合物(B)の合計質量100質量部に対して、0.1〜6質量部の範囲内が好適である。
【0126】
以上の通り得られるパテ組成物はスチレンを含まなくても表面乾燥性、内部硬化性に優れたパテ層が得られ、ノンスチレン型として供することができる。
【0127】
<補修塗装方法>
本発明のパテ組成物が適用される基材面としては、特に制限なく、鉄、亜鉛、アルミニウム、真鍮、銅、ブリキ、ステンレス鋼、亜鉛メッキ鋼、亜鉛合金(Zn−Al、Zn−Ni、Zn−Fe等)メッキ鋼等の金属素材面やその化学処理面、各種プラスチック素材など、また、これらに塗装された塗装体等が挙げられる。
【0128】
本発明のパテ組成物は自動車等の車両等の塗装体の補修塗装に有用である。
【0129】
補修塗装方法としては、該塗装体の(1)該損傷部にパテ組成物を充填する工程、(2)充填されたパテ組成物を乾燥する工程、(3)乾燥して形成したパテ層を研磨する工程、(4)研磨されたパテ層上に補修用塗料組成物を塗装する工程、を順次行う方法を好適に使用できる。
【0130】
工程(1)において、該組成物を充填する方法としては、例えばヘラ等を用いることができる。
【0131】
工程(1)のパテ組成物を充填する前に、前記塗装体の損傷部を中心にその周囲までを予めサンディングを行ってもよい。
【0132】
工程(2)において、乾燥する方法としては、例えば、常温乾燥または強制乾燥が挙げられ、本乾燥工程により塗膜内部まで硬化することができる。常温乾燥の場合は、具体的
には、常温で5時間以上静置するか、強制乾燥の場合は、40℃〜120℃で5〜60分間加熱することができる。前記強制乾燥の場合、仕上り性の点から、加熱硬化前に予め2〜30分間常温でセッティング(静置)することができる。
【0133】
工程(3)において、研磨する方法としては、例えば、耐水ペーパーやサンドペーパーなどを用いることができる。
【0134】
工程(4)において、前記工程(3)の後の研磨面に、さらに補修用塗料組成物を塗装することができる。
【0135】
補修用塗料組成物としては、アクリルラッカー、アクリルメラミン樹脂系塗料、水酸基含有樹脂とポリイソシアネート化合物を含む2液型のウレタン硬化型塗料、酸−エポキシ硬化型塗料、フッ素樹脂系塗料、アルキド樹脂系塗料、アルキドメラミン樹脂系塗料、ポリエステルメラミン樹脂系塗料などの通常使用されている有機溶剤系、水系、粉体等の下塗り塗料、着色ベース塗料、トップクリヤー塗料等特に制限なく使用できる。
(A)不飽和ポリエステル樹脂及び(B)重合性不飽和化合物を含有し、かつ、スチレンを含まないパテ組成物であって、該不飽和ポリエステル樹脂(A)の多塩基酸成分として、シス−3−メチル−4−シクロヘキセン−シス,シス−1,2−ジカルボン酸無水物を、多塩基酸成分の合計モル数に基づいて、1〜80モル%含有することを特徴とするパテ組成物及びこれを用いた補修塗装方法。