(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記基板上に窒化物半導体薄膜を形成する段階をさらに含み、前記窒化物半導体薄膜にかかる応力、前記窒化物半導体薄膜からの光抽出量及び放出パターンのうち少なくともいずれか一つを調節するために、前記空間の形状とサイズ、及び2次元的な配列のうち少なくともいずれか一つを調節することを特徴とする請求項1に記載の半導体薄膜構造の形成方法。
【背景技術】
【0002】
周期律表上のIII族ないしV族元素の窒化物半導体は、既に電子及び光電子素子分野で重要な位置を占めており、このような分野は今後さらに重要になるはずである。窒化物半導体の応用分野は、実際にレーザーダイオード(LD)から高周波数及び高温で作動できるトランジスタに至るまでの広い領域を担当する。そして、紫外線光検出器、弾性表面波素子及び発光ダイオード(LED)を含む。
【0003】
例えば、窒化ガリウムは、青色LEDまたは高温トランジスタの応用に好適な物質として知られているが、これに限定されないマイクロ電子素子向けに幅広く研究されている。また、ここで述べられたように、窒化ガリウムは、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)、窒化インジウムガリウム(InGaN)及び窒化アルミニウムインジウムガリウム(AlInGaN)のような窒化ガリウム合金を含むものとして広く使われることもある。
【0004】
窒化ガリウムなどの窒化物半導体を用いる素子で、窒化物半導体薄膜の成長のために最も頻繁に使われる基板は、サファイア、シリコンカーバイド(SiC)、シリコンのような“異種”基板である。ところが、これらの異種基板物質は窒化物との格子定数不一致及び熱膨脹係数の差があるため、異種基板に成長させた窒化物半導体薄膜は多くの転位(dislocation)を持ち、これによるクラックの発生及び反り(warpage)が問題になる。
【0005】
窒化ガリウム光素子及びマイクロ電子素子の製造に際して主な技術は、欠陥密度の低い窒化ガリウム薄膜を成長させることである。サファイア基板と窒化ガリウムとの格子定数不一致を乗り越え、良質の窒化ガリウム結晶を成長させるために低温で窒化ガリウムバッファ層を形成し、高温で窒化ガリウムエピ層を成長させる“2段階成長法”を主に使っている。この場合、低温バッファ層によって格子定数不一致で発生する貫通転位の数字を略10
9/cm
2に低めることができる。しかし、窒化ガリウムエピ層とサファイア基板との熱膨脹係数の差による応力及び、それによる基板の反り現象は依然として問題になる。
【0006】
最近、窒化ガリウムが最も活発に研究されている分野は、照明用白色LEDである。照明用白色LEDが本格的に市場に進入するためには、白色LEDチップのコストが急減せねばならず、全世界的なスケールアップ競争が始まった。大口径のサファイア基板を使ってLED生産の規模を増大させることもその方法のうち一つであるが、サファイア基板の口径が大きくなるほど、後続工程で可能な限り基板の反りを抑制するために、基板の厚さも大きくならねばならないという問題点がある。基板の反り現象は、前述したように窒化ガリウムと異種基板との熱膨脹係数の差によって起き、基板の厚さが大きいほど少なく反る。現在予想されるところでは、6インチのサファイア基板の場合に1〜1.3mmの厚さが検討されている。
【0007】
サファイア基板は、窒化ガリウムより熱膨脹係数が大きいため、窒化ガリウムを高温成長させた後で冷却させれば、窒化ガリウムエピ層に圧縮応力がかかる。シリコン基板は、窒化ガリウムより熱膨脹係数が小さいため、窒化ガリウムを高温成長させた後で冷却させれば、窒化ガリウムエピ層に引張り応力がかかる。これらの応力を適宜に低減させられれば、基板の反りも低減する。すなわち、窒化物薄膜にかかる応力を低減させる方案があれば、同サイズの基板を使う場合に基板の厚さを薄めることができる。例えば、6インチのサファイア基板の場合、1mm厚さの基板を使う代わりに500μm厚さの基板を使える。LED製作後にチップ分離のために、基板を略100μm残して取り除かねばならない現状をみれば、薄い基板の使用が可能になれば、LEDの生産的側面で大きい利得が得られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、窒化物半導体薄膜の成長時に窒化物半導体薄膜が受ける応力、かつ転位を低減させて高品質の窒化物半導体薄膜を形成できる半導体薄膜構造及びその形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するために本発明では、基板と窒化物半導体との間の格子定数及び熱膨脹係数差による応力発生と、それによる基板の反り現象を調節するために、犠牲層を基板上に形成して多様な方法でパターニングした後、その上に無機物薄膜を形成してから選択的に犠牲層を取り除き、基板上に基板及び無機物薄膜で定義される空間(cavity)を形成する半導体薄膜形成方法及び該方法で形成された半導体薄膜構造を提案する。
【0010】
本発明による半導体薄膜構造は、基板と、前記基板との間に互いに分離された複数の空間が制御された形状とサイズ、及び2次元的な配列を持つように定義されるように、前記基板上に形成された無機物薄膜と、を備える。
【0011】
かかる半導体薄膜構造は、前記基板上に窒化物半導体薄膜をさらに備える。このとき、前記窒化物半導体薄膜は、2層以上の膜になるが、前記2層以上の膜間にも前記のような空間が定義されるようにする。前記基板の熱膨脹係数が前記窒化物半導体薄膜に比べて大きければ、前記空間が前記窒化物半導体薄膜によって圧縮される。
【0012】
本発明による半導体薄膜構造の形成方法は、基板上に犠牲層パターンを形成する段階と、前記犠牲層パターン上に無機物薄膜を形成する段階と、前記基板及び無機物薄膜で定義される互いに分離された複数の空間が形成されるように、前記無機物薄膜が形成された基板から前記犠牲層パターンを取り除く段階と、を含む。
【0013】
そして、かかる半導体薄膜構造上に窒化物半導体薄膜をさらに形成する。このとき、前記窒化物半導体薄膜は、前記基板上の前記空間のない部分を土台にして前記窒化物半導体薄膜が形成されるように、ELO(epitaxial lateral overgrowth)方法で行う。前記無機物薄膜は前記基板と異なる物質である場合には、前記基板上の前記空間のない部分が露出するように前記無機物薄膜をパターニングする段階を、前記無機物薄膜を形成する段階と前記犠牲層パターンを取り除く段階との間、あるいは前記犠牲層パターンを取り除いた後で前記窒化物半導体薄膜を形成する段階との間にさらに行わねばならない。
【0014】
前記犠牲層パターンを形成する段階は、前記基板上に感光膜を塗布した後でフォトリソグラフィ法で形成するか、または、前記基板上にナノインプリント用樹脂を塗布した後でナノインプリント法で形成する。その代わりに、前記基板上に有機物ナノ粒子を付けて形成してもよい。
【0015】
前記無機物薄膜を形成する段階は、前記犠牲層パターンが変形されない温度限度内で行うことが望ましい。前記無機物薄膜は、シリカ(SiO
2)、アルミナ(Al
2O
3)、チタニア(TiO
2)、ジルコニア(ZrO
2)、イットリア(Y
2O
3)−ジルコニア、酸化銅(CuO、Cu
2O)及び酸化タンタル(Ta
2O
5)のうち少なくともいずれか一つである。
【0016】
前記空間は、前記犠牲層パターンが取り除かれてなくなったところである。よって、前記空間は、前記犠牲層パターンの形状とサイズ、及び2次元的な配列にそのまま従う。したがって、前記空間が制御された形状とサイズ、及び2次元的な配列を持たせるためには、前記犠牲層パターンの形状とサイズ、及び2次元的な配列を定めねばならない。
【0017】
前記空間の形状を調節するために、前記犠牲層パターンを形成した後でその形状を調節する段階をさらに行えてもよい。例えば、前記犠牲層パターンの形状を変形させるためのリフロー段階を行うことである。前記犠牲層パターンが感光膜、ナノインプリント用樹脂、有機物ナノ粒子のような有機物からなる場合に、リフロー段階は、このような犠牲層パターンの形状を変化させる。
【0018】
本発明による半導体薄膜構造を用いれば、紫外線光検出器、弾性表面波素子、LED、LD、マイクロ電子素子などを製造でき、その素子を用いたモジュール、システムなどに確張する。その他の実施形態の具体的事項は詳細な説明及び図面に含まれている。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、基板上に空間を定義して空間周辺に露出した基板表面から窒化物半導体薄膜を成長させるため、ELO効果を得られる。よって、欠陥密度の小さな高品質の窒化物半導体薄膜を形成でき、窒化物半導体結晶欠陷の密度減少で内部量子効率を高める。
【0020】
空間は、薄膜構造内の屈折率を調節する効果もある。空間は基板との屈折率差を大きくし、生成された光子をさらに効率的に抜け出せる。また、光散乱による光抽出効果が上昇する。これによって、本発明の半導体薄膜構造をLEDのような発光素子で製作すれば、LED外部量子効率の増大効果がある。
【0021】
それだけではなく、基板の熱膨脹係数が窒化物半導体薄膜に比べてさらに大きい場合には、窒化物半導体薄膜内の空間が面方向に圧縮されることで窒化物半導体薄膜の全体応力が減少する。また基板の熱膨脹係数が窒化物半導体薄膜に比べてさらに小さな場合には、窒化物半導体薄膜内の空間が面方向に引張られることで窒化物半導体薄膜の全体応力が減少する。よって、窒化物半導体薄膜に応力が発生する場合、空間が潰れながら局所的な応力緩みになり、これによる基板の反り現象が減少する。これによって、大面積基板でも相対的に薄板を使えるようになる。
【0022】
特に、このような空間は、犠牲層パターンの形状、サイズ、2次元配列などを調節して制御できるため、このような薄膜構造から製造されるLEDの光学的特性、例えば、放出パターンを調節できる。そして、犠牲層パターンの形成時にフォトリソグラフィまたはナノインプリントなどの制御された方法で形成するため、空間が不規則的またはランダムに形成されるものではなく、制御された方法で形成されるため、再現性及び素子均一度に優れる。
【0023】
このような結果で、優秀な物性を持つ窒化物半導体エピ層を成長させられるため、高効率、高信頼性を持つ光電子素子を具現できる。また、光抽出効率の向上による高出力LD及びLEDが具現される。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付した図面を参照して本発明をさらに詳細に説明する。以下で説明される実施形態は様々な形態に変形され、本発明の範囲が後述する実施形態に限定されるものではない。本発明の実施形態は、当業者に本発明をさらに完全に説明するために提供されるものである。よって、図面での要素の形象などは、さらに明確な説明を強調するために誇張されたものであり、図面上で同じ符号で表示された要素は同じ要素を意味する。
【0026】
図1は、本発明の第1実施形態による半導体薄膜構造及びその形成方法を説明するために示す図面である。
図1の(a)を参照すれば、先ず、基板10上に犠牲層パターン20を形成する。犠牲層パターン20の厚さdは0.01〜10μmであり、犠牲層パターン20の幅wは0.01〜10μmでありうる。犠牲層パターン20の厚さd及び幅wは、最終的に形成しようとする空間を考慮して定める。
図1の(a)を参照すれば、犠牲層パターン20は、基板10全体に同じパターンで均一に形成されている。しかし、以後に
図6を参照して説明するように、犠牲層パターン20は基板10に局所的に異なるパターンで形成されてもよい。
【0027】
このような犠牲層パターン20は、多様な方法によって形成されるが、先ず、フォトリソグラフィ法による。
【0028】
例えば、
図2の(a)のように、基板10上に感光膜PRを塗布する。感光膜PRは、スピンコーティング、ディップコーティング、スプレイコーティング、溶液滴下、ディスペンシングの方法から選択して基板10に塗布され、コーティング膜の均一性のためにはスピンコーティングの方法が望ましい。次いで、
図2の(b)のように、適宜な遮光パターン11を持つフォトマスク12を用いて感光膜PRを露光Eする。遮光パターン11以外の領域を透過した光は感光膜PRの一部を露光し、露光された部分EAが生ずる。次いで、露光された部分EAを現像して取り除けば、
図2の(c)のように感光膜パターンPR’を残す。
【0029】
遮光パターン11は、半導体製造工程の設計技術通りに規則的な形状とサイズ、間隔などで制御して形成できるので、今後形成できる感光膜パターンPR’の形状、サイズ、2次元的な配列を調節でき、このような感光膜パターンPR’を犠牲層パターン20として用いる。必要ならば、
図2の(d)のような追加のリフロー段階をさらに行って感光膜パターンPR’の角部を丸く変形させた感光膜パターンPR”を形成し、これを犠牲層パターン20として用いてもよい。
【0030】
でなければ、犠牲層パターン20は、ナノインプリント法で形成できる。
図3の(a)を参照して基板10上にナノインプリント用樹脂Rを塗布する。ナノインプリント用樹脂Rも、スピンコーティング、ディップコーティング、スプレイコーティング、溶液滴下、ディスペンシングの方法から選択して基板10に塗布される。適宜な凹凸構造のパターン13を持つナノインプリントスタンプ14を用意する。ナノインプリントスタンプ14は、通常の製造方法で製造されたシリコンまたは石英材質のマスタモールドであり、このマスタモールドをコピーした有機物モールドであってもよい。
【0031】
次いで、ナノインプリントスタンプ14を、
図3の(b)のようにナノインプリント用樹脂R上に加圧する。これにより、ナノインプリントスタンプ14のパターン13間にナノインプリント用樹脂Rが充填される。加圧と共に加熱するか、または紫外線を照射するか、または加熱と共に紫外線を照射すれば、ナノインプリント用樹脂Rが硬化する。次いで、ナノインプリントスタンプ14を分離すれば、
図3の(c)のように硬化したナノインプリント用樹脂R’が基板10上に残り、これを犠牲層パターン20として用いる。
【0032】
凹凸構造のパターン13は、ナノインプリント法の設計によって規則的な形状とサイズ、間隔などで制御して形成できるので、これより形成できる硬化したナノインプリント用樹脂R’の形状、サイズ、2次元的な配列も調節できる。必要ならば、追加の加熱または紫外線の照射などにより硬化したナノインプリント用樹脂R’の形状を変形させてもよい。
【0033】
その代りに犠牲層パターン20は、有機物ナノ粒子から形成してもよい。例えば、
図4の(a)のように、基板10上にポリスチレンまたはポリイミドのような有機物ナノ粒子Bを付け、これを犠牲層パターン20として用いることができる。この時、有機物ナノ粒子Bの形状及びサイズは均一なものを用い、基板10上で規則的な2次元的な配列を持つように、有機物ナノ粒子Bが付けられる部分に事前処理を施すことが望ましい。例えば、基板10が疎水性の場合(あるいは疎水性コーティングを行い)、有機物ナノ粒子Bが付けられる部分のみ親水性膜を形成するなどの処理を施す。予め用意した2次元的な配列パターンを持つスタンプに親水性物質をつけ、これを基板10にスタンピングするなどの方法でも実現できる。次いで、親水性の有機物ナノ粒子Bを用いるか、あるいは有機物ナノ粒子Bの表面に親水性コーティングを行い、または親水性溶媒に有機物ナノ粒子Bを混ぜて基板10上に適用する。すると、基板10上に親水性処理された部分のみに有機物ナノ粒子Bが付けられる。それ以外にも、基板10上で規則的な2次元的な配列を持つように有機物ナノ粒子Bを付ける方法は、静電気的な引力を用いるなどの多様な変形が可能である。
【0034】
この時、
図4の(b)のように追加の熱処理などにより有機物ナノ粒子B’の形状を変形させつつ基板10との接触面積をさらに大きくして有機物ナノ粒子B’の脱落を防止する段階をさらに行ってもよい。
【0035】
このように多様な犠牲層パターン20が形成される基板10は、サファイア、シリコン、SiC、GaAs基板など、半導体物質の異種エピ薄膜の成長に用いられるすべての異種基板が用いられる。シリコンの場合、その上にAlNバッファを成長させた後で使う。犠牲層パターン20を形成した後には、
図1の(b)を参照して犠牲層パターン20上に無機物薄膜30を形成する。無機物薄膜30は、後続的に基板10との空間を定義するものであり、無機物薄膜30の形成時には犠牲層パターン20が変形されない温度限度内で行うことが望ましい。無機物薄膜30を形成するための工程は、原子層蒸着(Atomic Layer Deposition:ALD)、ウェット合成、金属薄膜形成後の酸化工程などの多様な方法が可能である。構造的に安定した空間が基板10上に存在するためには、無機物薄膜30の形成時に無機物薄膜30の一部が基板10と直接接触することが有利である。無機物薄膜30は、シリカ(SiO
2)、アルミナ(Al
2O
3)、チタニア(TiO
2)、ジルコニア(ZrO
2)、イットリア(Y
2O
3)−ジルコニア、酸化銅(CuO、Cu
2O)及び酸化タンタル(Ta
2O
5)のうち少なくともいずれか一つである。このような無機物薄膜30の組成、強度及び厚さのうち少なくともいずれか一つを調節すれば、後続してこれを用いる半導体薄膜構造上に形成される窒化物半導体薄膜にかかる応力を調節する。無機物薄膜30は、図示されたように犠牲層パターン20を覆いつつ基板10上に全面的に形成されうるが、形成方法によっては犠牲層パターン20のみを覆うように形成され、これについては、後述する第4及び第5実施形態で詳細に説明する。
【0036】
無機物薄膜30の形成後には、
図1の(a)のように、基板10から犠牲層パターン20を選択的に取り除く。犠牲層パターン20は、
図2ないし
図4を参照して説明したように、感光膜、ナノ口プリント用樹脂あるいは有機物ナノ粒子のようなポリマーであるので、これを容易に取り除く方法は、加熱である。そして酸化方式でさらに簡単に焼けて取り除くためには、酸素を含むガスとの化学反応を加えられる。場合によっては、特定溶媒との化学反応を用いてもよい。犠牲層パターン20を取り除いてからは、
図1の(c)に示したように、基板10及び無機物薄膜30に定義される互いに分離された複数の空間Cが形成された半導体薄膜構造100が得られる。
【0037】
無機物薄膜30は、非晶質または非常に小さな粒子からなる多結晶を持つことが普通である。先ず、犠牲層パターン20が分解される温度T
1で酸化雰囲気下で熱処理を行って犠牲層パターン20を取り除いた後、高温T
2に温度を高めて非晶質無機物薄膜30を緻密化する2段階で進めてもよい。
【0038】
このような方法で形成した本発明による半導体薄膜構造100は、
図1の(c)に示したように、基板10及び無機物薄膜30を備える。基板10と無機物薄膜30との間は、互いに分離された複数の空間Cが制御された形状とサイズ、及び2次元的な配列を持つように定義されている。空間Cは、形成方法のうち犠牲層パターン20が除去されてなくなったところである。よって、空間Cは、犠牲層パターン20の形状とサイズ、及び2次元的な配列にそのまま従う。したがって、空間Cを制御された形状とサイズ、及び2次元的な配列を持つようにするためには、犠牲層パターン20の形状とサイズ、及び2次元的な配列を定めねばならない。本実施形態で、空間Cは、犠牲層パターン20の設計によって基板10全体に同じパターンで均一に定義されている。しかし、他の実施形態で空間は、犠牲層パターンの設計によって基板に局所的に異なるパターンに定義されていてもよい。
【0039】
このような半導体薄膜構造100は、所望の素子デザインによってその上に多様な方法で窒化物半導体薄膜を形成するのに用いられる。窒化物半導体薄膜は、GaN、InN、AlNまたはこれらの組み合わせであるGa
xAl
yIn
zN(0<x,y,z<1)などのすべての窒化物半導体物質を含む。空間Cが存在するため、基板10とその上に形成する窒化物半導体薄膜(図示せず)との熱膨脹係数差があれば、空間Cが増えるか、または圧縮される形態で局所的な変形を起こし、応力エネルギーを消耗させる。これによって、窒化物半導体薄膜にかかる熱応力を低減させ、したがって、基板の反り現象を低減させる。これについては、次の実施形態により詳細に説明する。
【0040】
図5は、本発明の第2実施形態による半導体薄膜構造及びその形成方法を説明するために示す図面である。
【0041】
図1を参照して説明した実施形態で、もし無機物薄膜30が基板10と同じ組成の物質ならば(例えば、基板はサファイア、無機物薄膜はAl
2O
3)、高温(T
2)熱処理中に基板10と直接接触し、無機物薄膜30部分は固相エピタキシー成長が起き、基板10の結晶方向に沿って結晶化が起きる。この部分は、追って窒化物半導体エピ層の成長時に土台として作用する。
【0042】
図1の(a)及び(b)を参照して説明したように、
図5の(a)では基板10a上に犠牲層パターン20aを形成し、その上に無機物薄膜30aを形成する。この時、基板10aはサファイア基板とし、犠牲層パターン20aは感光膜を用いるフォトリソグラフィ法で形成し、無機物薄膜30aはアルミナとする。
【0043】
アルミナは、ALDのような蒸着方法で基板10a及び犠牲層パターン20aの形状に沿って均一な厚さに形成できる。蒸着方法の代りに、ウェット溶液を用いるウェット合成方法もできる。ウェット溶液を基板10a及び犠牲層パターン20aの形状に沿って均一にコーティングした後、加熱、乾燥あるいは化学反応によりアルミナを合成する。例えば、塩化アルミニウム(AlCl
3)のようなアルミニウム前駆体粉末をテトラクロロエチレン(C
2Cl
4)のような溶媒に混合した後、犠牲層パターン20aが形成された基板10に適用してコーティングし、酸素雰囲気で加熱して反応させれば、アルミナ薄膜を被覆できる。あるいは、金属Al薄膜をスパッタリングなどの方法で蒸着した後、酸化工程を行ってアルミナを形成してもよい。このようなアルミナは、非晶質または微細な粒子の多結晶からなる状態に形成される。
【0044】
次いで、
図1の(c)を参照して説明したように、
図5の(b)でも犠牲層パターン20aを取り除いて空間Cを形成する。本実施形態で犠牲層パターン20aは、感光膜からなっているので、酸素雰囲気で高温に加熱すれば、いわば、アッシングと呼ばれる熱分解工程によって取り除ける。例えば、T
1の温度に加熱して取り除く。
【0045】
次いで、さらに高温のT
2に加熱する。例えば、1000℃近く加熱すれば、基板10aの結晶方向に沿う固相エピタキシーが基板10a及びアルミナからなる無機物薄膜30aの間の界面から始まり、非晶質からなるアルミナは多結晶になるか、または微細な多結晶はそのサイズがさらに大きくなるが、最も望ましい場合には基板10aのような単結晶に変わる。
【0046】
これによって、
図5の(c)のように、無機物薄膜30bと基板10aとの界面(図面では点線で表示)はなくなる。次いで、
図5の(d)ように、このような半導体薄膜構造上に窒化物半導体薄膜50をさらに形成する。先ず、アルミニウム窒化ガリウム(Al
xGa
1−xN)のような低温バッファ41を形成する。図面には、低温バッファ41が空間Cの間の基板10a上に成長することを図示したが、低温バッファ41は、空間C上の無機物薄膜30b上に成長してもよい。次いで、高温にして非ドープの窒化ガリウム(GaN)あるいは非ドープのアルミニウム窒化ガリウム(AlxGa1−xN)のような非ドープのエピ層42を含む窒化物半導体エピ層46を形成する。LEDのような発光素子を製造するためには、窒化物半導体エピ層46は、n型窒化物半導体薄膜43、MQWなどの構造を持つ活性層44及びp型窒化物半導体薄膜45を含んでなるように形成する。窒化物半導体薄膜50は、基板10上の空間Cのない部分を土台にしてELO方法に成長し、空間C周りの基板10上から成長して空間Cの上方で合体して膜をなすため、高品質に形成される。このような構造を用いて窒化物半導体素子を製造できるが、窒化物半導体薄膜50の物質種類によってバンドギャップが調節され、紫外線、可視光線、赤外線領域の光を放出可能にする。
【0047】
例えば、GaNのような低温バッファ41の場合、格子の緩みが完壁に起きるのに十分な厚さ、すなわち、10nm〜100nmの広い範囲で定める。一般的な化学気象蒸着法(CVD)で、表面反応支配(surface reaction controlled)区間の温度範囲が低温バッファ41の形成に用いられるが、サファイア基板上にGaN層を成長させる場合ならば、400℃〜700℃の温度範囲が用いられ、AlNからなる低温バッファ41は、それより高温の温度範囲で形成される。低温バッファ41を成長させるための方法には、各種蒸着法(e−beam evaporators、sublimation sources、Knudsen cell)と、イオンビーム蒸着法、気相エピタキシー法(ALE、CVD、APCVD、PECVD、RTCVD、UHVCVD、LPCVD、MOCVD、GSMBEなど)を用いる。
【0048】
本実施形態で低温バッファ41を成長させるために、先ず、基板10aを反応器に装入する。次いで、反応器の圧力、温度及び5族前駆体:3族前駆体の割合を一定にする。反応器の圧力は10〜1000torr、温度は300〜1200℃、5族前駆体:3族前駆体の割合は1〜1000000の範囲にする。反応器が安定化すれば、5族前駆体及び3族前駆体を一定の速度で注入し、基板10a上に窒化物層を成長させて低温バッファ41を得る。所定厚さの低温バッファ41が得られるまで5族前駆体及び3族前駆体の注入を維持する。
【0049】
次いで、低温バッファ41上に窒化物半導体薄膜50を成長させる。GaN高温エピ層のような窒化物半導体薄膜の成長温度は、物質移動支配(mass transfer controlled)区間の温度範囲が使われるが、サファイア基板上のGaN層の成長時に700℃〜1200℃の温度範囲が使われ、低温バッファ41の成長温度と同一または高温にする。
【0050】
前記の低温バッファ41を形成する段階及び窒化物半導体薄膜50を形成する段階は、真空を維持したまま(あるいは、インサイチュで)一つのチャンバ内で、またはトランスファチャンバで連結された2つのプロセスチャンバ内で進める。
【0051】
サファイア基板である基板10aの熱膨脹係数が窒化物半導体薄膜50に比べて大きいため、窒化物半導体薄膜50を形成する段階以後に冷却させる過程で空間Cが面方向に圧縮され、これによって、窒化物半導体薄膜50にかかる圧縮応力は緩む。それにより、基板10aの反りを低減させる。
【0052】
図5の(d)のような構造に電極(図示せず)をさらに構成すれば、本発明による半導体素子及びこれを含むモジュールあるいはシステムを製造する。例えば、メサエッチングでn型窒化物半導体薄膜43を露出させた表面にn型電極を形成し、p型窒化物半導体薄膜45上にp型電極を形成する。このように、半導体素子は本発明による半導体薄膜構造を用い、もちろんこれに適宜なパターニングが伴う。多様な素子及びその素子を用いたモジューとシステム製作がいくらでも可能である。
【0053】
特に、犠牲層パターン20aを通じて空間Cの形状とサイズ、及び2次元的な配列のうち少なくともいずれか一つを調節すれば、窒化物半導体薄膜50にかかる応力、窒化物半導体薄膜50からの光抽出量を調節できる。また規則的な屈折率の変化による光結晶効果によってLED放出パターンを調節可能になる。
【0054】
図6は、犠牲層パターン20aの2次元的な配列を示す平面図であり、一つのチップを構成する基板の一部を示す。
【0055】
先ず、
図6の(a)または(b)のように基板10aに形成する犠牲層パターン20aは、ラインアンドスペースタイプとしてy軸方向あるいはx軸方向に延びる形状を持つ。500nmのラインアンドスペースを仮定する場合、横×縦1mm×1mmサイズのチップには、略1000個の犠牲層パターン20aが入る。犠牲層パターン20aをこのように一方向に延びる形状で形成する場合、これより形成するLEDはいずれか一方向への光特性が制御され、例えば、偏光方向性を調節可能になる。
【0056】
図6の(c)及び(d)は、犠牲層パターン20aがそれぞれ同心方形や同心円型であることを示す。このような犠牲層パターン20aは、これより形成するLEDで放射角による光出力特性を制御可能にする。
【0057】
犠牲層パターン20aの例は、これ以外にも多様な変形ができ、多様なパターンによって光特性制御が可能になる。前記で挙げたラインアンドスペース形状のパターンではなく、例えば、
図6の(e)のようなアイランド型パターンも可能である。そして基板10aを全体として均一なパターンにしてもよいが、
図6の(f)のように局所的に異なるパターンの繰り返しで構成してもよい。このように、全体を同じパターンで均一にせず、局所的に異なるパターンにすれば、局所的に応力緩みの程度を異ならせる。
【0058】
図7は、本発明の第3実施形態による半導体薄膜構造及びその形成方法を説明するために示す図面である。
【0059】
図5を参照して説明したように、基板10a上に無機物薄膜30bが空間Cを定義できるように、ある半導体薄膜構造に窒化物半導体薄膜50aを形成した後、その上に他の無機物薄膜30cをさらに形成して他の空間C’をさらに定義する。そして、その上に他の窒化物半導体薄膜50bを形成することである。このように本発明による半導体薄膜構造は、基板10a上に2層以上の窒化物半導体薄膜50a、50bを含み、窒化物半導体薄膜50a、50bの間にも空間C’を定義させる。
【0060】
図8は、本発明の第4実施形態による半導体薄膜構造及びその形成方法を説明するために示す図面である。
【0061】
図5を参照した実施形態は、基板10a及び無機物薄膜30aがサファイアとアルミナで互いに同じ物質である場合である。無機物薄膜が基板と異なる物質である場合(例えば、基板はサファイア、無機物薄膜はSiO
2)には、高温(T
2)の熱処理中に緻密化するが、土台の役割を行えなくなるため、基板上の空間のない部分が露出するように無機物薄膜をパターニングする段階をさらに行わねばならない。
【0062】
図1の(a)及び(b)を参照して説明したように、
図8の(a)では、基板10a上に犠牲層パターン20aを形成し、その上に無機物薄膜30a’を形成する。この時、基板10aはサファイア基板とし、犠牲層パターン20aは感光膜を用いるフォトリソグラフィ法で形成し、無機物薄膜30a’は、サファイアとは異なる物質、例えば、シリカにする。
【0063】
次いで、
図1の(c)を参照して説明したように、
図8の(b)で犠牲層パターン20aを取り除いて空間Cを形成する。犠牲層パターン20aは、感光膜からなっているので、高温で加熱して取り除くことができる。
【0064】
次いで、
図8の(c)を参照して、フォトリソグラフィ法を用いて基板10a上の空間Cのない部分が露出するように無機物薄膜30a’をパターニングし、パターニングされた無機物薄膜30a”をして基板10aの上面を露出させる。
【0065】
次いで、
図8の(d)のように、半導体薄膜構造上に窒化物半導体薄膜50をさらに形成できる。窒化物半導体薄膜50は、基板10a上の空間Cのない部分、すなわち、基板10aの上面が露出している部分を土台にしてELO方法で成長されるので、結晶欠陷の少ない高品質の薄膜に成長する。
【0066】
一方、本実施形態では、空間Cを先ず形成した後で無機物薄膜30a’をパターニングすると説明したが、無機物薄膜30a’をパターニングした後で空間Cを形成してもよい。
【0067】
図9は、本発明の第5実施形態による半導体薄膜構造及びその形成方法を説明するために示す図面である。
【0068】
図1の(a)及び(b)を参照して説明したように、
図9の(a)では、基板10a上に犠牲層パターン20aを形成し、その上に無機物薄膜30a’を形成する。この時、基板10aはサファイア基板にし、犠牲層パターン20aはポリスチレンビーズのような有機物ナノ粒子をつけて形成し、無機物薄膜30a’はシリカにする。
【0069】
ウェット合成方法による場合、
図9の(a)に示したように、無機物薄膜30a’が犠牲層パターン20aのみを覆うように形成できる。すなわち、犠牲層パターン20aの間の基板10aの上面は覆われていない状態で無機物薄膜30a’を形成できる。例えば、塩化アルミニウム(AlCl
3)のようなアルミニウム前駆体粉末をテトラクロロエチレン(C
2Cl
4)のような溶媒に混合した後、ポリスチレンビーズのような有機物ナノ粒子からなる犠牲層パターン20aが形成された基板10に適用してコーティングすれば、アルミニウム前駆体粉末溶液は、基板10aよりも犠牲層パターン20aに優勢に塗布されるからである。
【0070】
次いで、
図1の(c)を参照して説明したように、
図9の(b)でも犠牲層パターン20aを取り除いて空間Cを形成する。例えば、T
1の温度に加熱して取り除く。
【0071】
次いで、さらに高温のT
2に加熱する。例えば、1000℃近くに加熱すれば、基板10aの結晶方向に沿う固相エピタキシーが基板10aと無機物薄膜30a’との間の界面から始まって、非晶質からなるシリカは多結晶になり、微細な多結晶はそのサイズがさらに大きくなって無機物薄膜30b’になる。
【0072】
次いで、
図9の(d)のように、このような半導体薄膜構造上に窒化物半導体薄膜50をさらに形成できる。窒化物半導体薄膜50は、基板10a上の空間Cのない部分を土台にしてELO方法で成長するため、結晶欠陷の少ない高品質の薄膜に成長する。
【0073】
図10は、本発明の第6実施形態による半導体薄膜構造及びその形成方法を説明するために示す図面である。
【0074】
先ず、
図10の(a)を参照して、基板10b上にAlNのようなバッファ層15を形成する。この時、基板10bはシリコン基板にし、例えば、100Å以下の厚さにAlNをスパッタリングしてバッファ層15に形成する。
【0075】
次いで、
図1の(a)及び(b)を参照して説明したように、
図10の(b)では基板10b上に犠牲層パターン20aを形成し、その上に無機物薄膜30aを形成する。無機物薄膜30aは、アルミナまたはAlNで形成する。
【0076】
次いで、
図1の(c)を参照して説明したように、
図10の(c)でも犠牲層パターン20aを取り除いて空間Cを形成する。以後の段階は、第2実施形態の通りである。犠牲層パターン20aは感光膜からなっていて、高温に加熱すれば、熱分解によって取り除くことができる。例えば、T
1の温度に加熱して取り除く。
【0077】
次いで、さらに高温のT
2に加熱する。例えば、1000℃近くに加熱すれば、基板10bの結晶方向に沿う固相エピタキシーが起きて、無機物薄膜30bとバッファ層15、そして基板10bの間の界面(図面では点線で表示)はなくなり、後続段階で空間Cの間の基板10bを土台にしてELO法で高品質の窒化物半導体薄膜を成長させる。
【0078】
シリコン基板である基板10bの熱膨脹係数が窒化物半導体薄膜に比べて大きいため、
図10の(c)に示したような、半導体薄膜構造上に窒化物半導体薄膜を形成する段階以後に冷却させる過程で、面方向に空間Cが引張られ、これによって窒化物半導体薄膜にかかる引張り応力は緩む。よって、基板10bの反りを低減させる。
【0079】
以上、本発明の望ましい実施形態について図示して説明したが、本発明は前述した特定の望ましい実施形態に限定されず、特許請求の範囲で請求する本発明の趣旨を逸脱せずに当業者ならば多様な変形実施が可能であるということはいうまでもなく、かかる変更は特許請求の範囲に記載の範囲内にある。