(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の詳細な説明の全体にわたって、類似の参照文字は図面中の全ての図において類似の要素を意味する。
【0015】
本発明は、感光性要素から印刷版を作製する方法、特に、感光性要素凸版印刷版を形成する方法に関する。ほとんどの実施形態においては、印刷版は、フレキソ印刷版および活版印刷版としての使用などの凸版印刷に特に適したレリーフパターンを含む。凸版印刷は、印刷版による印刷が画像領域から行われ、印刷版の画像領域は隆起しており、非画像領域はへこんでいる印刷方法である。ある実施形態においては、印刷版はグラビア印刷またはグラビア用印刷に適している。グラビア印刷は、印刷版による印刷が画像領域から行われ、画像領域はへこんでおり、インクまたは印刷材料が収容される小さなくぼんだカップまたはウェルからなり、非画像領域は印刷版の表面である印刷方法である。画像領域がへこんでおり、印刷中に転写されるインクを保持するウェルを形成するくぼんだ領域からなる凸版印刷版が使用されることを除けば、グラビア様印刷はグラビア印刷と類似している。本発明の方法によって、ハーフトーン画像中の高精度微細ハイライトと、隆起した領域およびくぼんだ領域の間のきれいな開放領域と、きれいで微細なテキストおよび線図形とを有する基材上の印刷領域のパターンを形成するためのくぼんだ領域および隆起した領域で構成されるレリーフ構造を有する印刷版が作製される。また、本発明の方法によって、高濃度でベタインク領域を印刷するためにベタ領域中に微細な特徴のベタスクリーンパターニングを維持可能な凸版印刷版が作製される。凸版印刷版は、独立した中間製品の費用がかかり問題のある形成を解消するためにデジタル様ワークフローが利用され、印刷版を作製するためにウォッシュアウト現像が利用される、感光性原版要素から作製される。
【0016】
驚くべきことであり予期せぬことに、十分な構造の隆起した印刷面を有し、ベタ領域におけるスクリーンパターニングを失わない凸版印刷版は、感光性要素が、不活性ガスおよび大気中よりは低いが完全な不活性ガス環境よりは高い酸素濃度を有する環境中、すなわち特に不活性ガスおよび約30,000〜約7500ppmの間の酸素濃度を有する環境中で像様露光し、ウォッシュアウト現像が行われるデジタルワークフロー様プロセス(すなわち、改良デジタルワークフロー)によって実現することができることが分かった。本発明の方法によって、約5〜約30ミクロン(マイクロメートル)の範囲内の特徴を有する印刷版上のベタ印刷領域の最上面(すなわち、印刷面)にベタスクリーンパターニング、すなわちマイクロスクリーンパターンを形成可能となり;ある実施形態においては約15〜30ミクロンの十分に構造化された微細な隆起印刷特徴、別の実施形態においては約5〜30ミクロンの十分に構造化された微細な隆起印刷特徴、たとえばハイライトハーフトーンドットおよび線が形成される。本発明の方法によって、隆起した表面要素で構成される隆起した印刷面を有する印刷版が得られ、それぞれの隆起した表面要素は、その円錐形によって十分に特徴付けられ、平坦または実質的に平坦な上面領域を有し、その平坦な上面領域から側壁面領域まで急激または実質的に急激な変化を有することで、基材上に所望の画像が正確に再現される。もはや、光重合性層上の酸素阻害作用によって制限されたデジタルワークフローによって製造された凸版印刷版中のレリーフ構造ではない。本発明によって、本質的には特に隆起した表面要素(たとえば、ハーフトーンドット)のサイズに対してマスク中の開口部のサイズに関するin−situマスク画像の再現である、印刷版上に隆起した表面要素のレリーフ表面を形成可能となる。本発明によって、アナログワークフローに関連するコストおよび製造の欠点が回避され、デジタルワークフローの利点が利用され、同時に、完全に不活性の環境の確立および維持の問題が回避される。
【0017】
感光性要素から凸版印刷版を得る方法は、光重合性組成物の層に隣接するin−situマスクを形成するステップと、不活性ガスおよび30,000〜7500ppmの間の酸素濃度を有する環境中でin−situマスクを介して感光性要素の光重合性層を化学線に露光して、重合部分および未重合部分を形成するステップと、露光した要素のウォッシュアウト処理を行うステップとを含む。ある実施形態においては、未重合部分は除去されて、凸版印刷版にくぼんだ領域が形成され、印刷のための重合した材料の隆起部分のパターンが形成される。感光性要素は、少なくとも1種類のバインダー、エチレン性不飽和化合物、および光開始剤で構成される光重合性組成物の層を含む。ほとんどの実施形態においては、光重合性層は支持体上にあるか、または支持体に隣接する。感光性要素が、in−situマスクを光重合性層の上に配置できる、すなわちin−situマスクを光重合性層の上または隣接して配置できるのであれば、本発明において使用される感光性要素は限定されない。in−situマスクは、化学線に像様露光される感光性要素と一体または実質的に一体である不透明領域および透明領域の画像またはパターンであり、マスクと光重合性層との接触を確実にするための真空は不要である。in−situマスクによって、凸版印刷版を作製するときの独立したフォトツールの作製、およびフォトツールと感光性層との接触を確実にするための真空の使用に関連する欠点が回避される。
【0018】
本発明の方法は、光重合性層に隣接するin−situマスクを形成するステップを含む。ほとんどの実施形態においては、in−situマスク、または単純にマスクは、光重合性層の上に配置された化学線に対して不透明の領域を通過する複数の開口部を有する。支持体を有する光重合性層の側とは反対側の光重合性層の表面上または表面に隣接してマスクが形成される場合、in−situマスク画像は光重合性層の上に配置される。マスクは、印刷版によって印刷されるグラフィック情報である、不透明領域と透明領域または「クリア」領域の開口部とのパターンを含む。マスクの不透明領域は、下にある光重合性材料の放射線に対する露光を防止し(すなわち、化学線不透明領域)、したがって、暗い領域で覆われた光重合性層のこれらの領域は重合しない、すなわち未重合部分である。マスクの「クリア」領域では、光重合性層が化学線に露光し、光重合性層の下にある部分の重合または架橋が起こる。マスクの透明領域は、化学線に対して不透明の領域を通過する複数の開口部を形成する。感光性要素に関連するマスクは、最終的に光重合性層のレリーフ構造のパターンを形成し、そのレリーフ構造は、凸版印刷版の印刷面領域となる十分に構造化された微細な隆起表面要素の隆起構造を含む。
【0019】
さらに、ある実施形態においては、マスクは、クリア領域または開放領域中に複数の特徴のパターンを含み、それぞれの特徴は、化学線に対して不透明または実質的に不透明である約5〜約30ミクロンの間の寸法を有する。ある実施形態においては、化学線不透明特徴は、(中心間で)約5〜約30ミクロンの寸法で互いに間隔をあけている。この化学線不透明特徴のパターンは、マイクロセルパターンと呼ばれる場合もある。複数の化学線不透明特徴のパターンは限定されず、規則的または繰り返し可能なパターンである必要はない。マイクロセルパターニングは、in−situマスクを形成するレーザー画像化装置のソフトウェアに関連する。ほとんどの実施形態においては、マイクロセルパターンは、ベタインク領域を印刷する印刷版の印刷面領域中に含まれる。好都合には、本発明の方法は、所望のベタインク被覆率の所望の濃度を得るために、基材上のインクの連続または実質的に連続の領域、いわゆるベタ領域を印刷する、印刷版の印刷面領域上の複数のくぼんだ領域としての複数の特徴のマイクロセルパターンを複製することができる。
【0020】
化学線不透明材料を用いてin−situマスクを形成する方法は限定されない。in−situマスクは、レーザー放射線を使用するデジタルダイレクト製版(digital direct−to−plate)法(デジタル方法またはデジタルワークフローと呼ばれることも多い)、および感光性要素を化学線に像様露光する前に行われるインクジェット塗布などのあらゆる好適な方法によって形成することができる。化学線不透明層は、レーザー放射線、通常は赤外レーザー放射線が、(従来の画像の透明原稿またはフォトツールの代わりに)感光性要素の画像のマスクの形成に使用されるデジタルダイレクト製版画像技術において使用される。一般に、in−situマスク形成のデジタル方法では、レーザー放射線は、支持体とは反対側の感光性要素の表面からまたは表面への、放射線不透明材料の選択的除去または転写のいずれかのために使用される。マスク画像の形成のデジタル方法では、像様露光前に感光性要素を作製するために1つ以上のステップが必要となる。ほとんどの実施形態においては、この方法は、テキストの特徴、線の特徴、およびハーフトーン図版を含むことができるグラフィック情報または画像の印刷に使用される。ハーフトーン図版の場合、マスク中に形成された開口部は、通常、2〜99%の範囲となりうるドット領域を有する。隆起した印刷領域の隆起した表面要素のそれぞれのドット領域は、印刷されるグラフィック画像の要求に応じて変動する。ほとんどの実施形態においては、in−situマスク中の複数の開口部は、所望のハイライトドット解像度を有するグラフィック画像を印刷できるように、250線/インチ(lpi)未満の線スクリーン解像度を有する。凸版印刷版でハーフトーン画像を形成するために使用される典型的な線スクリーン解像度としては、120lpi、133lpi、150lpi、および171lpiが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
一実施形態においては、感光性要素は、最初は、支持体とは反対側の光重合性層の表面の上または上方に配置された化学線不透明層を含み、レーザー放射線によって放射線不透明層が像様に除去され、すなわち融除され、または蒸発して、in−situマスクが形成される。感光性要素から除去されなかった放射線不透明層の部分のみが、要素上に残存してマスクを形成する。
【0022】
別の一実施形態においては、感光性要素は、最初に化学線不透明層を含まない。支持体とは反対側の感光性要素の表面に放射線不透明層が隣接するように、放射線不透明層を有する別個の要素と感光性要素との集合体を作製する。この集合体にレーザー放射線を像様露光することによって、放射線不透明層の選択的転写、または放射線不透明層の接着バランスの選択的変化が起こり、光重合性層の上にあるかまたは上方に配置されたマスク画像が形成される。この実施形態においては、放射線不透明層の転写された部分のみが感光性要素上に存在することでin−situマスクが形成される。
【0023】
感光性要素上にインクジェットインクの形態で放射線不透明材料を像様塗布することによって、デジタルマスク形成を行えることも考慮される。インクジェットインクの像様塗布は、光重合性層上に直接存在することも、感光性要素の別の層の上の光重合性層の上方に配置することもできる。
【0024】
in−situマスクの形成に関して考慮される別の一実施形態は、独立した担体上に放射線不透明層のマスク画像を形成することによるものである。ある実施形態においては、独立した担体は、放射線不透明層を含み、これがレーザー放射線に像様露光して、放射線不透明材料が選択的に除去されて画像を形成する。次に、担体上のマスク画像は、熱および/または圧力を加えることで、支持体とは反対側の光重合性層の表面に転写される。光重合性層は通常は粘着性であり、転写された画像が保持する。次に、像様露光の前に、独立した担体を要素から除去することができる。
【0025】
ある実施形態においては、マスクの形成に使用されるレーザー放射線は赤外レーザー放射線である。赤外レーザー露光は、750〜20,000nmの範囲内で発光するさまざまな種類の赤外レーザーを使用して行うことができる。780〜2,000nmの範囲内で発光するダイオードレーザーおよび1064nmで発光するNd−YAGレーザーなどの赤外レーザーが好ましい。化学線不透明層を感光性要素から像様除去するための赤外レーザー露光に好ましい装置および方法の1つは、Fanらにより米国特許第5,760,880号明細書および米国特許第5,654,125号明細書に開示されている。in situマスク画像は、化学線に全面露光される後のステップのために感光性要素上に残される。
【0026】
凸版印刷版の製造方法の次のステップは、in−situマスクを介した感光性要素の化学線への全面露光、すなわち要素の像様露光である。感光性要素の化学線への像様露光は、不活性ガスが存在し約30,000〜約7500ppmの酸素濃度を有する環境で行われる。不活性ガスは、感光性要素に対する反応速度がないまたは低い(すなわち、重合反応に対して不活性である)ガスであり、露光環境中の酸素を置換することができる。好適な不活性ガスとしては、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。一実施形態においては、不活性ガスは窒素である。
【0027】
感光性要素の化学線への像様露光は、不活性ガスと、30,000、25,000、20,000、15,000、14,000、13,000、12,000、11,000、10,000、9,500、9,000、8,500、8,000、および7,500ppmの任意の2つの値の間にあり、任意選択でそれら2つを含む酸素濃度との存在を含む環境中で行うことができる。ある実施形態においては、感光性要素の化学線への像様露光は、不活性ガスと、約30,000〜約7500ppm(約3%〜約0.75%)の酸素濃度との存在を含む環境中で行われる。ある実施形態においては、感光性要素の化学線への像様露光は、不活性ガスと、約30,000〜約10,000ppmの酸素濃度との存在を含む環境中で行われる。ある実施形態においては、感光性要素の化学線への像様露光は、不活性ガスと、約25,000〜約7500ppmの酸素濃度との存在を含む環境中で行われる。ある実施形態においては、感光性要素の化学線への像様露光は、不活性ガスと、約20,000〜約7500ppmの酸素濃度との存在を含む環境中で行われる。ある実施形態においては、感光性要素の化学線への像様露光は、不活性ガスと、約15,000〜約7500ppmの酸素濃度との存在を含む環境中で行われる。
【0028】
不活性ガスと、約30,000〜約7500ppm(約3%〜約0.75%)の間の酸素濃度との特定の環境における化学線への感光性要素の像様露光によって、(ウォッシュアウト処理後の)印刷版中に、アナログワークフローで製造可能な印刷版中に形成されるインク担持上面領域と構造的により類似したインク担持上面領域をそれぞれ有する複数の隆起表面要素のレリーフ構造が形成される。すなわち、本発明の方法により作製した凸版印刷版中の隆起表面要素の上面領域は、平坦または実質的に平坦であり、要素が大気酸素の存在下で露光される従来のデジタルワークフローにおいて典型的であるようには丸みを帯びていない。さらに、不活性ガスおよび約30,000〜7500ppmの間の酸素濃度の存在する環境中でのin−situマスクを介した感光性要素の像様露光によって、平坦な上部印刷面領域から側壁面領域までの変わり目が比較的急激である隆起表面印刷要素を形成可能となる。不活性ガスおよび約7500ppm未満の酸素濃度を有する環境中での感光性要素の像様露光では、実質的に円錐形であり平坦な上部または実質的に平坦な上部印刷面を有する好適な隆起表面要素を有する凸版印刷版を形成できるが、約15〜約30ミクロンのハイライトハーフトーンドットおよび線などの微細な隆起印刷特徴は、平坦な上部印刷面と側壁面との間で広がったショルダー領域を有する傾向にある。ある実施形態においては、ハイライトハーフトーンドットおよび線などの約5〜約30ミクロンの微細な隆起印刷特徴は、平坦な上部印刷面と側壁面との間で広がったショルダー領域を有する傾向にある。これらの広がったショルダー面領域は、印刷中にインクを転写するための上面領域の基材との接触に寄与しうる。場合によっては、上面領域を有するショルダー面領域の印刷は、特に回転印刷における印刷方向に対する、すなわち印刷シリンダーの長手方向軸に対する印刷版上の画像の方向によってさらに悪化しうる。すなわち、ある実施形態においては、不活性ガスおよび約7500ppm未満の酸素濃度を有する環境中で作製されたレリーフプレートによって印刷された画像は、印刷版の画像の微細な線要素が印刷シリンダーの軸と平行の方向である場合に、所望の(マスク画像からの)画像よりも過度に歪んだ、および/またはより大きなものとして現れる。ショルダーの形成は、たとえばレーザーイメージャーのドラム上にレーザー放射線を用いてin−situマスクを形成するための画像形成中の線の方向など、原版上に形成されるin−situマスクの品質にも影響を与えうる。ほとんどの実施形態においては、円周に沿って画像形成されるin−situマスクの線では、ドラムの軸に対して平行(すなわち、ドラムの円周に対して垂直)に画像形成されるin−situマスクの線の場合よりも高品質のショルダーが得られる。
【0029】
不活性ガスおよび約30,000ppmを超える酸素濃度を有する環境中での感光性要素の像様露光によって、くぼんだ領域から未重合材料が適切に除去された凸版印刷版が形成されるが、ベタ領域におけるマイクロセルパターニングによって形成されるくぼんだ領域などのたとえば約20ミクロン未満の小さな特徴は、十分に画定されなかったり形成されなかったりする場合がある。この場合、マイクロセルパターニングのくぼんだ領域は、元のマスク画像よりも大きくなり、それらが実質的に重なってくぼんだ領域同士の間の空間がなくなる程度まで増加することがあり、それによってマイクロセルパターニングの細部の特徴がなくなる、または不明瞭となる。これによる最も典型的に結果では、印刷されたベタ領域中のインクの濃度が低下する。不活性ガスおよび30,000〜7500ppmの間の酸素濃度の存在下でのin−situマスクを介した感光性要素の像様露光では、レリーフのベタ領域のスクリーンパターンの微細な特徴を忠実に再現または実質的に再現して、所望の高いインク濃度および/または他の望ましい印刷上の改善を実現することもできる。不活性ガスおよび30,000〜7500ppmの間の酸素濃度の存在下でのin−situマスクを介した感光性要素の像様露光によって、マスク形成のためにデジタルワークフローが使用可能となり、さらに酸素阻害によって生じるドット先鋭化効果に対処できる。従来のデジタルワークフロー方法では、78%の窒素、約21%の酸素、アルゴンおよび二酸化炭素のそれぞれが<1%、ならびに微量の他のガスである空気中で、感光性要素の化学線への像様露光が行われる。一実施形態においては、感光性要素は、in−situマスクの上面上に追加層を全く含まず、この追加層は像様露光される表面に対する環境の障壁として機能しうる。
【0030】
一実施形態においては、感光性要素は、化学線に対して透明であり、露光ユニットの床上への設置に適合した密閉容器またはチャンバー中に配置することができる。このような密閉容器の一実施形態は米国特許出願公開第2009/0191483号明細書に記載されている。一実施形態においては、密閉容器は外部環境(室内条件)から封止することができ、不活性ガスを密閉容器中に導入するための入口と、最初に密閉容器中に存在する空気をパージするための出口とを含む。密閉容器内の酸素濃度を測定するための計器を出口に設置することができる。
【0031】
ある実施形態においては、密閉容器中の酸素濃度が約30,000ppm以下に到達した後、像様露光を開始し、不活性ガスを密閉容器中に連続して導入することによって、像様露光中に密閉容器内の酸素濃度を連続して減少させる。ある実施形態においては、像様露光は、酸素濃度が約30,000ppm(3%)以下のときに開始することができ、酸素濃度を約7500ppm(0.75%)まで低下させながら続けることができる。別の実施形態においては、密閉容器中の酸素濃度が30,000ppm〜7500ppmの間に到達した後、像様露光が開始され、露光全体の間に所望の濃度の不活性ガスおよび酸素の組み合わせを連続的にパージすることによって、密閉容器内の環境中の酸素濃度が維持または実質的に維持される。ある実施形態においては、露光中の感光性要素の環境は、像様露光開始時の酸素濃度と像様露光終了時の酸素濃度との平均の酸素濃度を有し、その平均酸素濃度は約30,000ppm〜約7500ppmの間である。ある別の実施形態においては、像様露光中の感光性要素の環境は、全露光時間の時間のパーセント値に基づく酸素濃度の加重平均である酸素濃度を有し、その加重平均酸素濃度は約30,000ppm〜約7500ppmの間である。
【0032】
前述の任意の2つの値の間の範囲であり任意選択でそれら2つの値を含む酸素濃度は、特定の範囲の任意の2つの値の前に用語「約」を使用して示されるように、近似的な酸素濃度を表している。範囲の高い値付近から範囲の低い値付近の酸素濃度範囲は、ある実施形態においては範囲の高い値および低い値のそれぞれのプラスマイナス(±)10%、別の実施形態においてはプラスマイナス(±)5%、さらに別の実施形態においてはプラスマイナス(±)2%である酸素濃度の実際の範囲を表すことができる。
【0033】
たとえば、「約30,000ppm〜約7500ppm」の酸素濃度範囲は、30,000〜7500ppmの酸素濃度または実質的に30,000〜7500ppmの酸素濃度である。「約30,000ppm〜約7500ppm」の酸素濃度範囲は、ある実施形態においては30,000ppmプラスマイナス(±)10%〜7500ppmプラスマイナス(±)10%の酸素濃度を表すことができる。別の実施形態においては、約30,000ppm〜約7500ppm」の酸素濃度範囲は、30,000ppmプラスマイナス(±)5%〜7500ppmプラスマイナス(±)5%の酸素濃度を表すことができる。さらに別の実施形態においては、「約30,000ppm〜約7500ppm」の酸素濃度範囲は、30,000ppmプラスマイナス(±)2%〜7500ppmプラスマイナス(±)2%酸素濃度を表すことができる。範囲の高い値付近から範囲の低い値付近、たとえば30,000ppm〜約7500ppmの酸素濃度範囲は、露光装置部品および測定装置の精度とともに、所望のドット形状、小さなまたは微細な特徴の形成、ならびに、未重合材料の除去を得るために本発明の方法から得られる印刷版に影響しうる個別のフォトポリマー組成などの他の要因が考慮される。
【0034】
本発明の感光性要素は、in−situマスクを介して好適な線源からの化学線に露光される。化学線露光時間は、放射線の強度およびスペクトルエネルギー分布、感光性要素からのその距離、所望の画像解像度、ならびに光重合性組成物性質および量によって、数秒〜数分で変動しうる。露光温度は、好ましくは周囲温度またはわずかにより高い温度でありすなわち、約20℃〜約35℃である。露光は、露光領域から支持体まで、または裏面の露光層、すなわちフロアまで架橋するのに十分な時間行われる。像様露光時間は、通常はバックフラッシュ露光時間よりもはるかに長く、数分〜数十分の範囲である。露光領域から支持体またはフロアまで架橋させるのに十分な像様露光、感光性要素に対して約5000〜約25000ミリジュール/cm
2のエネルギー密度が化学線源から得られることによって決定することもできる。
【0035】
化学線源は紫外波長領域および可視波長領域を含む。個別の化学線源の適性は、フレキソ印刷プレートの作製に使用される開始剤および少なくとも1種類のモノマーの感光性によって決定される。最も一般的なフレキソ印刷プレートの好ましい感光性は、より良い室内照明安定性が得られるという理由で、スペクトルのUVおよび深UV領域において存在する。好適な可視およびUV源の例としては、炭素アーク、水銀蒸気アーク、コンテント蛍光ランプ(content fluorescent lamp)、電子閃光装置、電子ビーム装置、レーザー、および写真用フラッドランプが挙げられる。業界標準の放射線源の例としては、Sylvania 350 Blacklight蛍光ランプ(FR48T12/350 VL/VHO/180、115w)、およびPhilips UV−A “TL”シリーズ低圧水銀蒸気蛍光ランプが挙げられる。ある実施形態においては、水銀蒸気アークまたは太陽灯を使用することができる。別の実施形態においては、高紫外線成分の蛍光ランプを感光性要素から約1〜約10インチ(約2.54〜約25.4cm)の距離で使用することができる。これらの放射線源は、一般に310〜400nmの間の長波UV放射線を発する。
【0036】
ある実施形態においては、凸版印刷版の製造方法は、バック露光またはバックフラッシュステップを含む。これは、支持体を透過する化学線へのブランケット露光である。光重合性層の支持体側の上に重合した材料層、すなわちフロアを形成し、光重合性層を増感させるために使用される。フロアによって、光重合性層と支持体との間の接着性が改善され、プレートレリーフの深さが確立される。バックフラッシュ露光は他の画像形成ステップの前、後、または最中に行うことができる。全面(像様)化学線露光ステップに関して前述したあらゆる従来の放射線源をバックフラッシュ露光ステップに使用することができる。露光時間は一般に数秒〜数分の範囲である。ある実施形態においては、感光性要素が形成されるときに感光性要素中にフロアを含めることができ、それによって別個のバックフラッシュ露光は不要となりうる。
【0037】
マスクを介したUV放射線への全面露光の後、露光した感光性要素は、光重合性層中の未重合領域を除去するために処理され、それによってレリーフ表面が形成される。処理ステップでは、少なくとも光重合性層の化学線に露光しなかった領域、すなわち、光重合性層の未露光領域または未硬化領域または未重合部分が除去される。エラストマーキャッピング層を除けば、ほとんどの実施形態においては光重合性層上に存在しうる追加層は、光重合性層の重合領域から除去または実質的に除去される。in−situマスクを有する感光性要素のある実施形態においては、処理ステップで、マスク画像(化学線に露光している)および下にある光重合性層の未露光領域も除去される。
【0038】
感光性要素の処理は、光重合性層を好適な現像溶液と接触させて未重合領域を洗い流す「湿式」現像を含む。湿式現像は現像溶液を用いて室温で行うことができるが、通常は約80〜100°Fで行われる。現像剤またはウォッシュアウト溶液は、有機溶媒、水溶液、または半水溶液、および水から選択される。現像剤の選択は、主として、除去される光重合性材料の化学的性質によって決まる。好適な有機溶媒現像剤としては、芳香族または脂肪族の炭化水素、ならびに脂肪族または芳香族のハロハイドロカーボン溶媒、あるいはこのような溶媒と好適なアルコールとの混合物が挙げられる。別の有機溶媒現像剤が独国特許出願公開第38 28 551号明細書に開示されている。好適な半水性現像剤は、通常、水および水混和性の有機溶媒およびアルカリ性材料を含有する。好適な水性現像剤は、通常、水およびアルカリ性材料を含有する。別の好適な水性現像剤の組み合わせが米国特許第3,796,602号明細書に記載されている。
【0039】
現像時間は、光重合性材料の厚さおよび種類、使用される溶媒、ならびに装置およびその運転温度に基づいて変動しうるが、好ましくは約2〜約25分の範囲内である。現像剤またはウォッシュアウト溶液は、浸漬、吹き付け、ならびに刷毛塗りまたはローラー塗布などのあらゆる従来方法で塗布することができる。要素の未重合部分を除去するためにブラッシング助剤を使用することができる。プレートの未硬化部分を除去し、露光下画像およびフロアで構成されるレリーフを残すために、現像剤および機械的ブラッシング作用を有する自動処理装置中でウォッシュアウトを行うことができる。
【0040】
溶液中の現像による処理の後、凸版印刷プレートは、一般に吸い取りまたは拭き取りによって乾燥され、次に強制空気オーブンまたは赤外オーブン中でより十分に乾燥される。乾燥の時間および温度は装置の設計、空気流、プレート材料に基づいて変化させることができるが、通常プレートは60℃で60〜120分間乾燥される。高温は、支持体が収縮することがあり、これによって位置合わせの問題が生じうるので、推奨されない。
【0041】
処理ステップの後、光重合プロセスを完了させ、形成されたフレキソ印刷プレートが印刷および保管中に安定なままとなるように、感光性要素を均一に後露光することができる。この後露光ステップは、像様主露光と同じ放射線源を使用することができる。さらに、フレキソ印刷プレートの表面が依然として粘着性であれば、非粘着化処理を行うことができる。このような方法は、「仕上げ」とも呼ばれ、当技術分野において周知である。たとえば、粘着性は、フレキソ印刷プレートを臭素または塩素溶液で処理することによってなくすことができる。好ましくは、非粘着化は、300nm以下の波長を有するUV放射線源に曝露することで達成される。このいわゆる「光仕上げ」(light−finishing)は、欧州特許出願公開第0 017927号明細書および米国特許第4,806,506号明細書に開示されている。種々の仕上げ方法を組み合わせることもできる。通常、後露光および仕上げ露光は、両方の放射線源を有する露光装置を使用して感光性要素に対して同時に行われる。
【0042】
本発明の方法では、不活性ガスおよび約30,000ppm〜約7500ppmの酸素濃度を有する環境中でin−situマスクを介して感光性要素を化学線に像様露光することによって修正されたデジタルワークフローを使用して凸版印刷版が作製され、未重合材料を除去するために溶液処理が使用される。凸版印刷版の作製における修正されたデジタルワークフローによって、in−situマスクを作製するための従来のデジタルワークフローの利点が得られ、それぞれの隆起要素が微細な円錐形であり、隆起表面要素の上面領域が平坦または実質的に平坦であり、従来のデジタルワークフローによって作製された隆起要素には典型的な丸みを帯びていない、十分に構造化された隆起表面要素を形成することもでき;隆起印刷要素のショルダー領域が、隆起印刷要素特徴の全印刷領域に寄与しない、または最小限でのみ寄与するように、それぞれの隆起要素が、平坦な上部印刷面量領域から側壁面領域まで急激または実質的な変わり目を有する、約5〜約30ミクロンの微細で十分に構造化された隆起表面要素も形成することができる。ある実施形態においては、ショルダー面領域によって基材に転写されるインクは、隆起印刷要素による全印刷領域の20%以下である。ある実施形態においては、ショルダー面領域によって基材に転写されるインクは、隆起印刷要素による全印刷領域の15%以下である。ある実施形態においては、ショルダー面領域によって基材に転写されるインクは、隆起印刷要素による全印刷領域の10%以下である。ある実施形態においては、ショルダー面領域によって基材に転写されるインクは、隆起印刷要素による全印刷領域の5%以下である。ある実施形態においては、ショルダー面領域によって基材に転写されるインクは、隆起印刷要素による全印刷領域の2%以下である。本発明の修正されたデジタルワークフロー方法では、アナログワークフローで形成されるものと類似した形状の隆起表面要素が得られる。特に、本発明の方法によって形成された隆起表面の形状は、従来のデジタルワークフロープロセスによって形成された隆起表面の形状とは異なり、従来の類似の方法ともある程度異なる。本発明の修正されたデジタルワークフロー方法によって、マイクロセルパターニングをベタ領域中に保持または維持するための十分または実質的に十分画定または形成された小さなまたは微細な特徴要素、すなわち、約30ミクロン未満の特徴を有する印刷版が得られ、したがって印刷ベタ領域中に高いインク濃度で印刷することができる。本発明によって、特に隆起要素(すなわち、ハーフトーンドット)のサイズに対するマスク中の開口部のサイズに関してin−situマスク画像を実質的に再現しているレリーフ画像を印刷版上に形成することができる。
【0043】
原版の処理後、結果として得られる凸版印刷版は、印刷のためのフロアから隆起した1つ以上の個別の表面要素と、非印刷領域である少なくとも1つのくぼんだ領域とを含むパターンを形成するレリーフ構造を有する。複数の開口部を有するマスクと、約30,000ppm〜約7500ppmの酸素を有する不活性雰囲気中での像様露光とによって微細で個別に形成された隆起表面要素が(印刷領域内に)形成される。複数の隆起表面要素が個別の形成されるので、それに対応して印刷領域は、それぞれの個別の隆起表面要素で囲まれた開放部分(その中の光重合性材料は処理によって除去される)も含む。複数の個別の隆起表面要素の各隆起表面要素は、基材上に印刷されるインクまたはコーティング材料などの画像形成材料を保持する上面領域を有する。すなわち、複数の隆起表面要素のそれぞれの特徴のサイズまたはドットサイズは、隆起要素の形成に使用されるマスク開口部わずかに小さいだけである。ある実施形態においては、複数の隆起表面要素のドットサイズは、対応するマスク開口部より4%未満小さい。別の実施形態においては、複数の隆起表面要素のドットサイズは、対応するマスク開口部より2%未満小さい。ほとんどの実施形態においては、本発明の方法によって作製されたそれぞれの隆起表面要素は、画像形成材料を転写し約10〜約90マイクロメートルの間の直径を有する上面、すなわち実質的に平坦な表面領域を有する。
【0044】
基材上に印刷されるインクなどの画像形成材料は、あらゆる好適な手段によって、印刷版、特に複数の隆起表面要素に塗布することができる。凸版印刷のほとんどの実施形態においては、通常、印刷版のレリーフ表面上にコーティング材料を計量供給するためにアニロックスローラーが使用される。しかし本発明の方法は、画像形成材料を印刷版に塗布する従来方法に限定されるものではない。
【0045】
本発明による方法による印刷に適した基材は限定されず、画像形成材料に塗布する前に存在する1つ以上の他の層または層の一部を有しても有さなくてもよい。基材の例としては、紙、厚紙、プラスチック、ガラス、ポリマーフィルムなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
感光性要素
凸版印刷版の作製に使用される本発明の感光性原版要素は、少なくとも1つの光重合性層を含む。凸版印刷版には、フレキソ印刷版および活版印刷版が含まれる。凸版印刷は、印刷版が画像領域から印刷する印刷方法の1つであり、印刷版の画像領域は隆起しており、非画像領域はへこんでいる。任意選択で、感光性要素は支持体を含む。任意選択で、感光性要素は、光重合性層に隣接して化学線不透明材料の層を含む。一実施形態においては、感光性要素は、バインダーと、少なくとも1種類のエチレン性不飽和化合物と、光開始剤とで少なくとも構成される光重合性組成物の層を含む。別の一実施形態においては、光重合性組成物の層は、エラストマーバインダー、少なくとも1種類のエチレン性不飽和化合物、および光開始剤を含む。ある実施形態においては、凸版印刷版は、接触印刷に必要な圧縮に適応するエラストマー印刷版である(すなわち、光重合性層がエラストマー層である)。
【0047】
他に記載がなければ、用語「凸版印刷プレートまたは要素」は、フレキソ印刷および活版印刷に好適なあらゆる形態のプレートまたは要素を含んでいる。他に記載がなければ、用語「感光性要素」および「印刷版」は、限定するものではないが平坦シート、板、継ぎ目のない連続形態、円筒形、プレート−オン−スリーブ、およびプレート−オン−キャリアなどの、印刷用の原版として好適なあらゆる形態の要素または構造を含んでいる。
【0048】
支持体は、凸版印刷プレートの作製に使用される感光性要素とともに従来使用されるあらゆる可撓性材料であってよい。ある実施形態においては、支持体を介した「バックフラッシュ」露光に適応するために、支持体は化学線に対して透明である。好適な支持体材料の例としては、付加ポリマーおよび直鎖縮合ポリマーによって形成されるものなどのポリマーフィルム、透明フォーム、および布が挙げられる。金属支持体は放射線に対して透明ではないが、特定の最終使用条件下では、アルミニウムなどの金属も支持体として使用することができる。好ましい支持体はポリエステルフィルムであり、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。支持体は、シート形態、またはスリーブなどの円筒形であってよい。スリーブは、単層または多層の可撓性材料から形成することができる。ポリマーフィルムでできた可撓性スリーブは、通常紫外線に対して透明であり、それによって円筒形印刷要素中にフロアを形成するためのバックフラッシュ露光に適応するので、好ましい。好ましいスリーブの1つは、米国特許第5,301,610号明細書に開示されるような多層スリーブである。スリーブは、ニッケルまたはガラスエポキシなどの不透明の化学線遮断材料でできていてもよい。支持体は、通常0.002〜0.250インチ(0.0051〜0.635cm)の厚さを有する。ある実施形態においては、シート形態の厚さは0.003〜0.016インチ(0.0076〜0.040cm)である。ある実施形態においては、スリーブは4〜80ミル(0.010〜0.203cm)またはそれを超える肉厚を有する。
【0049】
任意選択で、要素が支持体と光重合性層との間に接着層を含むか、または光重合性層に隣接する支持体の表面が接着促進表面を有する。支持体と光重合性層との間に好適な接着性を得るために、支持体の表面上の接着層は、接着材料またはプライマーの下塗り層、あるいは米国特許第2,760,863号明細書および米国特許第3,036,913号明細書に開示されるようなアンカー層であってよい。あるいは、光重合性層が上に存在する支持体表面は、支持体と光重合性層との間の接着性を促進するために、火炎処理または電子処理、たとえばコロナ処理で処理することができる。
【0050】
感光性要素は、光重合性組成物の少なくとも1つの層を含む。本明細書において使用される場合、用語「光重合性」は、光重合性、光架橋性、またはその両方である系を含むことを意図している。光重合性層は、バインダー、少なくとも1種類のエチレン性不飽和化合物、および光開始剤を含む組成物から形成される固体層である。光開始剤は化学線に対する感受性を有する。本明細書全体にわたって、化学光は紫外線および/または可視光を含む。光重合性組成物の固体層は、1種類以上の溶液で処理されて、印刷に好適なレリーフが形成される。本明細書において使用される場合、用語「固体」は、画定された体積および形状を有し、その体積または形状を変化させる傾向にある力に抵抗する層の物理的状態を意味する。光重合性組成物の固体層は、重合(光硬化)されていても、未重合であっても、その両方であってもよい。ある実施形態においては、光重合性組成物の層はエラストマー性である。
【0051】
バインダーは、1種類のポリマーまたは複数のポリマーの混合物であってよい。ある実施形態においては、バインダーはエラストマーバインダーである。別の実施形態においては、光重合性組成物の層はエラストマー性である。バインダーとしては、共役ジオレフィン炭化水素の天然または合成のポリマー、たとえばポリイソプレン、1,2−ポリブタジエン、1,4−ポリブタジエン、ブタジエン/アクリロニトリル、およびジエン/スチレン熱可塑性エラストマーブロックコポリマーが挙げられる。好ましくは、A−B−A型ブロックコポリマー(Aが非エラストマーブロック、好ましくはビニルポリマー、最も好ましくはポリスチレンを表し、Bがエラストマーブロック、好ましくはポリブタジエンまたはポリイソプレンを表す)エラストマーブロックコポリマーである。ある実施形態においては、エラストマーA−B−Aブロックコポリマーバインダーは、ポリ(スチレン/イソプレン/スチレン)ブロックコポリマー、ポリ(スチレン/ブタジエン/スチレン)ブロックコポリマー、およびそれらの組み合わせであってよい。バインダーは、感光性組成物の約10重量%〜90重量%の量で存在する。ある実施形態においては、バインダーは、感光性組成物の約40重量%〜85重量%の量で存在する。
【0052】
他の好適なバインダーとしては、アクリル類;ポリビニルアルコール;ポリケイ皮酸ビニル;ポリアミド類;エポキシ類;ポリイミド類;スチレン系ブロックコポリマー類;ニトリルゴム類;ニトリルエラストマー;非架橋ポリブタジエン;非架橋ポリイソプレン;ポリイソブチレンおよび他のブチルエラストマー類;ポリアルキレンオキシド類;ポリホスファゼン類;アクリレート類およびメタクリレートのエラストマーポリマー類およびコポリマー類;エラストマーポリウレタン類およびポリエステル類;オレフィン類のエラストマーポリマー類およびコポリマー類、たとえばエチレン−プロピレンコポリマー類および非架橋EPDM;酢酸ビニルのエラストマーコポリマー、およびその部分水素化誘導体類が挙げられる。
【0053】
光重合性組成物は、透明で濁っていない感光性層が得られる程度でバインダーと相溶性である付加重合可能な少なくとも1種類の化合物を含有する。付加重合可能な少なくとも1種類の化合物は、モノマーと呼ばれる場合もあり、1種類のモノマーまたは複数のモノマーの混合物であってよい。光重合性組成物中に使用可能なモノマーは、当技術分野において周知であり、そのようなものとしては、少なくとも1つの末端エチレン性基を有する付加重合エチレン性不飽和化合物が挙げられるが、これに限定されるものではない。モノマーは、光重合性組成物にエラストマー性を付与するために当業者が適切に選択することができる。付加重合可能な少なくとも1種類の化合物(すなわち、モノマー)は、光重合性組成物の少なくとも5重量%、典型的には10〜20重量%の量で存在する。
【0054】
光開始剤は、化学線に対して感受性であり、1つ以上のモノマーの重合を開始させるフリーラジカルを生成し、過度な停止反応を引き起こすことがない、あらゆる1種類の化合物または複数の化合物の組み合わせであってよい。あらゆる周知の種類の光開始剤、特にフリーラジカル光開始剤を使用することができる。あるいは、光開始剤は、化合物の1つが、放射線により活性化する増感剤によってフリーラジカルを発生する複数の化合物の混合物であってよい。ほとんどの実施形態においては、主露光(ならびに後露光およびバックフラッシュ)の光開始剤は、310〜400nmの間、好ましくは345〜365nmの間の可視光または紫外線に対して感受性である。光開始剤は、光重合性組成物の重量を基準として一般に0.001%〜10.0%の量で存在する。
【0055】
光重合性組成物は、所望の最終的性質により他の添加剤を含有することができる。光重合性組成物のさらなる添加剤としては、増感剤、可塑剤、レオロジー調整剤、熱重合阻害剤、着色剤、加工助剤、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤、染料、およびフィラーが挙げられる。
【0056】
光重合性層の厚さは、所望の印刷プレートの種類により広範囲で変動指させることができ、たとえば約0.005インチ〜約0.250インチ以上(約0.013cm〜約0.64cm以上)であってよい。ある実施形態においては、光重合性層は約0.005インチ〜0.0450インチ(0.013cm〜0.114cm)の厚さを有する。ある別の実施形態においては、光重合層は約0.020インチ〜約0.112インチ(約0.05cm〜約0.28cm)の厚さを有する。別の実施形態においては、光重合性層は約0.112インチ〜約0.250インチ以上(0.28cm〜約0.64cm以上)の厚さを有する。
【0057】
バインダー、モノマー、開始剤、およびその他の成分を混合することによって形成された光重合性組成物の層を含む感光性原版要素の作製は、当業者の技能の範囲内である。ほとんどの実施形態においては、光重合性混合物からホットメルトが形成され、次に任意選択で、所望の厚さおよび平面状または円筒形に押出成形、カレンダー加工が行われる。感光性要素は、2層または多層構成であってよい少なくとも1つの光重合性層を含む。さらに、感光性要素は、少なくとも1つの光重合性層の上にエラストマーキャッピング層を含むことができる。エラストマーキャッピング層として好適な多層カバー要素および組成物が、Gruetzmacherらの米国特許第4,427,759号明細書および米国特許第4,460,675号明細書に開示されている。
【0058】
感光性要素は、支持体とは反対側の光重合性層の表面上に配置された化学線不透明層を含むことができるし、あるいは化学線不透明層を含む別個のキャリアまたは要素とともに集合体を形成することもできる。フォトツールを形成する従来のハロゲン化銀系材料を除けば、放射線不透明層に像様露光して感光性要素の光重合性層の上またはそれに隣接するin−situマスクを形成できるのであれば、化学線不透明層および化学線不透明層を含む構造を構成する材料は特に限定されない。化学線不透明層は、光重合性層の表面を実質的に覆うことができるし、光重合性層の画像形成可能な部分のみを覆うこともできる。化学線不透明層は、光重合性材料の感受性に対応する化学線に対して実質的に不透明である。化学線不透明層は、バリア層とともに使用することもできるし、バリア層なしで使用することもできる。バリア層とともに使用される場合、光重合性層と放射線不透明層との間の材料の移動を最小限にするために、バリア層が光重合性層と放射線不透明層との間に配置される。モノマーおよび可塑剤は、隣接する層中の材料と相溶性であれば経時により移動する可能性があり、これによって、放射線不透明層のレーザー放射線感受性が変化することがあり、あるいは画像形成後の放射線不透明層が汚れたり粘着性となったりすることがある。化学線不透明層は、不透明層を選択的に除去または転写することができるレーザー放射線に対して感受性でもある。
【0059】
一実施形態においては、化学線不透明層は赤外レーザー放射線に対して感受性である。ある実施形態においては、化学線不透明層は、放射線不透明材料、赤外線吸収材料、および任意選択のバインダーを含む。カーボンブラックおよび黒鉛などの暗色無機顔料、顔料の混合物、金属、および金属合金は、一般に赤外線感受性材料と放射線不透明材料の両方として機能する。任意選択で使用されるバインダーは、限定するものではないが、自己酸化性ポリマー、非自己酸化性ポリマー、熱化学的に分解可能なポリマー、ブタジエンおよびイソプレンとスチレンおよび/またはオレフィンとのポリマーおよびコポリマー、熱分解性ポリマー、両性インターポリマー、ポリエチレンワックス、前述の剥離層として従来使用される材料、およびそれらの組み合わせなどのポリマー材料である。化学線不透明層の厚さは、感受性と不透明度との両方を最適化する範囲内となるべきであり、一般に約20オングストローム〜約50マイクロメートルである。化学線不透明層は、効率的に化学線を遮断し下にある光重合性層の重合を阻止するために2.0を超える透過光学濃度を有するべきである。
【0060】
感光性要素は、光重合性層の表面全体の上に配置され表面を覆うまたは実質的に覆う化学線不透明層を含むことができる。この場合、赤外レーザー放射線によって放射線不透明層を像様除去し、すなわち融除または蒸発させることで、in−situマスクが形成される。この化学線不透明層に好適な材料および材料は、Fanの米国特許第5,262,275号明細書、Fanの米国特許第5,719,009号明細書、Fanの米国特許第6,558,876号明細書、Fanの欧州特許出願公開第0 741 330 A1号明細書、ならびにVan Zoerenの米国特許第5,506,086号明細書および米国特許第5,705,310号明細書に開示されている。Van Zoerenの米国特許第5,705,310号明細書に開示されているように、感光性要素から除去するときに材料を捕捉する材料捕捉シートがレーザー露光中に放射線不透明層に隣接して存在することができる。感光性要素から除去されなかった放射線不透明層の部分のみが、要素上に残存してin−situマスクを形成する。
【0061】
別の一実施形態においては、感光性要素は最初に化学線不透明層を含まない。通常は光重合性層である、支持体とは反対側の感光性要素の表面に放射線不透明層が隣接するように、放射線不透明層を有する別個の要素と、感光性要素とで集合体を形成する(感光性要素と関連するカバーシートが存在する場合、通常はカバーシートは集合体の形成前に除去される)。この別個の要素は、デジタル露光プロセスを補助するための放出層または加熱層などの1つ以上の別の層を含むことができる。これに関して、放射線不透明層は赤外線に対して感受性でもある。集合体を、赤外レーザー放射線に像様露光することで、放射線不透明層を選択的に転写して、または放射線不透明層の接着バランスを選択的に変化させて、光重合性層の上にあるかまたは上方に配置された画像を形成する。この化学線不透明層に好適な材料および構造は、Fanらの米国特許第5,607,814号明細書、ならびにBlanchettの米国特許第5,766,819号明細書、米国特許第5,840,463号明細書、欧州特許出願公開第0 891 877 A号明細書に開示されている。像様転写プロセスの結果として、放射線不透明層の転写された部分のみが感光性要素上に残存してin−situマスクを形成する。
【0062】
本発明の感光性印刷要素は、要素の最上層の上面上に一時的なカバーシートをさらに含むことができる。カバーシートの目的の1つは、感光性印刷要素の最上層を保管中および取扱中に保護することである。カバーシートに好適な材料の例としては、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、フルオロポリマー、ポリアミド、またはポリエステルの薄いフィルムが挙げられ、これらには剥離層を下塗りすることができる。
【0063】
印刷方法
凸版印刷版を印刷プレス上に取り付けるステップ、印刷版の印刷領域(すなわちレリーフ表面の隆起部分)にインキングするステップ、およびインキングした印刷領域を基材に接触させてインクのパターンを基材上に転写するステップは限定されず、フレキソ印刷の当業者に周知のような、印刷のための取り付け、インキング、および接触の種々の従来的および非従来的な実施を含んでいる。Foundation of Flexographic Technical Association(Ronkonkoma,New York)より出版されたFlexography:Principles and Practiceの1992年に出版された第4版、および1999年に出版された第5版は、フレキソ印刷の多くの側面の知識分野を示す好適な情報源である。特に、取り付けおよび校正、印刷プレス、インク、フレキソ印刷プレート、および基材に関する章が、本発明に最も適切である。
【0064】
印刷シリンダー、または印刷プレス中の他の支持体の上への凸版印刷版の取り付けは、あらゆる方法で行うことができる。ある実施形態においては、印刷版は、接着剤を用いて印刷シリンダーまたは他のプレス支持体上に直接取り付けることができ、通常は両面接着テープである。別の実施形態においては、両面接着テープを用いて印刷版をキャリアシート上に取り付けることができる。キャリアシートの先端に、印刷シリンダー中のスロットとかみ合う取り付けバーが取り付けられ、それによって印刷版を有するキャリアが印刷シリンダーに固定される。別の実施形態においては、両面接着テープを用いて印刷版をスリーブ支持体上に取り付けることができる。次にスリーブ支持体が印刷シリンダーに取り付けられ、ほとんどの実施形態においては空気を用いて支持体を十分に膨張させ、それによって支持体がシリンダー上でスライドでき、空気を除去した後に締まりばめが形成されることによって取り付けられる。1つ以上の凸版印刷版を印刷シリンダーまたはキャリアの上に取り付けることができる。ある実施形態においては、凸版印刷版は原版感光性要素と同じ寸法である。別の実施形態においては、凸版印刷版は、原版感光性要素のセグメントであり、任意選択でスラグと呼ばれる。さらに別の実施形態においては、凸版印刷版は、キャリアまたはスリーブなどの中間製品の上に取り付けられた数個のセグメントまたはスラグの複合材料である。凸版印刷版を印刷シリンダー上に取り付ける方法の1つがFoxらの米国特許第5,562,039号明細書に記載されている。
【0065】
位置合わせされる基材上の印刷画像のために、印刷シリンダー上または中間製品上に取り付ける場合には、凸版印刷版またはフォームを正確に配置することが望ましい。凸版印刷版は、印刷が印刷シリンダーの軸と平行となるように、すなわち斜めにならないようにシリンダー上に配置すべきである。多色印刷においては、印刷される各色の凸版印刷版は、異なる色の印刷画像が互いに位置合わせされるように位置調整すべきである。位置合わせに誤りがあると、色の重なり合い、色のない空間、色ずれ、および/または画像の詳細の劣化が生じうる。凸版印刷版の取り付け、ならびに色の位置合わせおよび校正は、この目的のために設計された市販の取り付け校正機械によってプレスから離れて行うことができる。通常は光学またはビデオによる取り付けシステムを使用するこれらの機械によって、印刷版を印刷シリンダー上に取り付けて、あらゆるフレキソ印刷作業において品質および経済性の両方を維持するために重要な手順である色の位置合わせを行うことができる。
【0066】
印刷版の印刷領域へのインクの塗布は限定されない。凸版印刷のほとんどの従来の実施形態では、アニロックスロールを使用して、凸版印刷版の印刷領域上にインクが計量供給される。アニロックスロールは、ファウンテンローラーから印刷版のレリーフ表面に制御されたインク皮膜を計量供給するために使用される計量供給ロールである。アニロックスロールは、金属ロール、金属で被覆されたロール、またはセラミックで被覆されたロールであってよい。アニロックスロールは、ロール面に機械またはレーザーによって彫刻されたものであって、ある体積のインクを印刷版まで運ぶ複数のセルを含む。
【0067】
本発明において使用されるインクは限定されず、水性インクおよび溶剤インクなどの流体インク、染料系インク、顔料系インク、およびペーストインクなどを挙げることができる。通常、インクは、少なくとも着色剤およびビヒクルと、好適な印刷および乾燥のために粘度を調整する溶剤とを含む。ほとんどの実施形態においては、インクは溶剤インクである。
【0068】
凸版印刷版の印刷領域から基材にインクが接触することで、インクのパターンが基材上に転写される。転写は印刷とも呼ばれる場合がある。凸版印刷版の印刷領域は、レリーフ構造の隆起表面からなる。一実施形態においては、特定の量のインクを印刷版に計量供給する画定された容積の細孔を有するアニロックスローラーと一般に呼ばれる計量供給ローラーを介して、凸版印刷版にインクが塗布される。次に、印刷版を基材と接触させて配置し、インクの一部を印刷版から基材に転写させる。印刷領域上にあるインクを基材に接触させることで、インクが転写されて、凸版印刷版が基材から離れるときにインクのパターンが基材上に形成される。一般に、基材に転写されるインクの量は、印刷版上のインクの量、凸版印刷版と基材との間の圧力、ならびに凸版印刷版の画像パターン、およびパターンのレリーフ構造によって決定される。任意選択で、接触を確実にし、インクを基材に完全に転写するために、凸版印刷版に圧力を加えることができる。印刷において、印刷領域の基材への接触に好適な圧力は、通常は印圧設定と呼ばれ、これは個別の印刷プレスに適用可能である。印圧設定は、最小すなわち「キス」印圧設定と、印刷版および基材の一方または両方を互いに向かって移動させるさらなる距離に関して通常は定義される印刷版と基材との間でより高い圧力を加える印刷設定とを含むことができる。ほとんどの実施形態においては、最小印圧は、印刷された基材の幅全体にわたって均一な100%ベタインク被覆率が得られる印刷設定である。しかし、商業的印刷作業では通常は最小印圧設定では印刷されない。
【0069】
印刷方向に対する画像の方向は、ハーフトーンドット、線、およびテキスト画像などの隆起印刷特徴の上面領域を伴うショルダー面領域の印刷に影響することがあり、したがって本発明の方法により作製された印刷版の個別の結果に影響しうる。本発明の方法によって作製された印刷版では、隆起印刷特徴上で平坦な印刷面から側壁面に移行する急激なまたは実質的に急激なショルダー領域が形成される(すなわち、幅広のショルダーの形成が回避される、または最小限となる)。本発明によって作製された印刷版の場合、ポジの線を形成する隆起印刷特徴は、回転印刷の印刷方向に対してあらゆる方向であってよく、印刷画像におけるショルダー領域の影響はないか、最小限の影響のみとなる。明確にするために、印刷シリンダー(および基材)の回転方向にポジの線の長さ方向が移動するような印刷版(印刷版が印刷シリンダー上に取り付けられるときに)印刷版上に配置されたポジの線が、印刷方向に配向していると見なされる。ポジの線の長さ方向が印刷シリンダーの回転軸と平行になるようにポジ(印刷版が印刷シリンダー上に取り付けられるときに)印刷版上に配置されるポジの線の場合は、印刷方向に対して垂直に配向していると見なされる。レーザー放射線を用いたin−situマスクの画像形成中に形成される線の方向は、得られた印刷版による線幅およびショルダーの印刷の品質にも影響を与えうる。ほとんどの実施形態においては、印刷版原版は、赤外レーザー放射線画像形成装置のドラム上に取り付けられる。ドラムの円周に沿って画像形成された線を有するin−situマスクは、ドラム(軸)に対して平行に画像形成された線よりも品質が高い。
【0070】
パターンを転写するためのインクの基材への接触は、あらゆる方法で行うことができる。インクの接触は、凸版印刷版を基材まで移動させることによって、基材を凸版印刷版まで移動させて、または基材および凸版印刷版の両方を移動させて接触させることで行うことができる。一実施形態においては、機能材料が手作業で転写される。本発明の方法は、通常は室温、すなわち17〜30℃(63〜86°F)の間の温度で行われるが、これに限定されるものではない。
【0071】
基材は印刷に適した表面を有する。基材の種類は限定されず、ポリマーフィルム、紙、箔、および印刷用粘着シートを挙げることができる。ほとんどの実施形態においては、基材は単層であり、圧胴ロールによって均一に支持される。ほとんどの実施形態においては、印刷される基材はポリマーフィルムである。
【0072】
用語解説
「線/インチ」(LPI)は、ハーフトーンスクリーンを使用するシステムにおける印刷解像度の尺度である。ハーフトーングリッド中の線が互いにどの程度接近しているかの尺度である。一般にLPIがおおきいほど、画像がより詳細で鮮明であることを示す。
【0073】
「ハーフトーン」は、画像を種々のサイズで同じ中心間距離のドットに変換するスクリーニングプロセスによる連続階調画像の再現のために使用される。ハーフトーンスクリーンによって、インクなどの印刷媒体の転写(または非転写)によって印刷される画像中に陰影付き(または灰色)領域の形成が可能となる。
【0074】
「ドット/インチ」(DPI)は、階調画像中のドット構造の頻度であり、空間印刷ドット密度の尺度であり、特に1直線インチ(2.54cm)の範囲内に配置可能な個別のドットの数である。DPI値は、画像解像度と相関する傾向にある。典型的なDPIは、グラフィック用途の場合で75〜150の範囲であるが、200までの高さになることができる。
【0075】
「線スクリーン解像度」は、「スクリーン線数」とも呼ばれる場合があり、ハーフトーンスクリーン上の1インチ当たりの線またはドットの数である。
【0076】
「マスク開口部」は、下にある光重合性材料を化学線に露光可能な一体となったマスクの「クリア」領域である(ある実施形態においては、クリア領域は、化学線不透明材料を要素から除去することで形成される。別の実施形態においては、クリア領域は、化学線不透明材料が要素に転写されないことで形成される)。マスク開口部は、測定用顕微鏡によって測定される。有効マスク開口面積は、開口部の面積を測定し、線/インチ(LPI)の単位のスクリーン解像度によって定義される全ピクセル面積で割ることによって計算される。全ピクセル面積は、式(1/LPI)
2を用いて計算され、有効マスク開口部は、(開口面積)/(1/LPI)
2として定義される。マスク開口部は、通常、(全ピクセル面積の)パーセントとして表される。
【0077】
「フォトツール開口部」は、全ピクセル面積のパーセント値として表される化学線に対して透明なフォトツールの領域であり、前述のマスク開口領域と同様に計算される。
【0078】
「光学濃度」または単に「濃度」は、画像の暗さ(光吸収または不透明)の程度であり、以下の関係から求めることができる。
【0079】
濃度=log
10{1/反射率}、ここで
反射率は{反射光強度/入射光強度}である
【0080】
「プレート上のドットサイズ」は、較正された顕微鏡または専用の光学装置を用いて一般に評価されるドット直径の尺度である。この測定値は、通常、プレート上のドット構造の平坦部分を正確に表している。
【0081】
「プレート上のドット面積」または「プレートドット面積」は、一般にパーセント値として表され、ドットサイズを面積に変換し(面積=πr
2)、スクリーン解像度で定義される全ピクセル面積で割ることによって一般に計算される。
【0082】
「有効印刷ドット面積」は、チント面積(tint area)と呼ばれる均一な径の規則的な配列のドットで印刷された領域の密度測定値、および完全インク被覆率(100%被覆率またはベタ被覆率とも呼ばれる)で印刷された領域の密度測定値に基づいて計算される量である。使用される式は、Murray Daviesの式と呼ばれ、以下のように表される。
【0083】
有効印刷ドット面積=(1−10
-Dt)/(1−10
-Ds)
ここでDt=はチント密度(tint density)およびDs=ベタ密度である
【0084】
「圧力下の有効印刷面積(ドット面積)」は、プレートと基材が互いに密接に接触し、およびプレート/基材が互いの上に圧力を加えるときに、印刷される基材と接触する全面積のパーセントとして表されるプレート上のドット面積である。
【0085】
「プレート対印刷ドットゲイン」は、被覆面積のパーセント値として表される有効印刷ドット面積に対する、全ピクセル面積のパーセント値として表されるプレート上ドット面積からの印刷ドット面積の増加を表す。これは単に2つの間の差である。
【実施例】
【0086】
以下の実施例において、他の記載のない限り全てのパーセント値は重量を基準としている。CYREL(登録商標)光重合性印刷プレート、CYREL(登録商標)デジタルイメージャー、CYREL(登録商標)露光ユニット、およびCYREL(登録商標)処理装置は、すべて本件特許出願人より入手可能である。
【0087】
装置
顕微鏡または光学装置などの一般的な撮像技術を使用して、印刷プレートおよび印刷サンプルに観察されるドット領域を調べることができる。好適な光学装置の一例は、Beta Industries(Carlstadt,NJ)のBetaflexフレキソ分析装置(Betaflex flexo analyzer unit)であり、これによって、ドット面積、スクリーン線数、およびドット品質などのレリーフ特性の測定および分析のために、凸版印刷版の隆起構造が画像として取り込まれる。
【0088】
測定用顕微鏡(NIKON(USA)(Melville,NY)のNikon Measurescope、モデルMM−11)をプレート上の特徴の画像を取り込んだ。
【0089】
Hirox 3D Digital Microscopeを使用して、ドットの形状およびサイズ、ならびにくぼんだ領域の深さ、ならびにプレートの隆起領域中に示される他の特徴の測定をした。
【0090】
実施例1
使用した感光性要素は、CYREL(登録商標)フレキソ印刷原版のタイプDPR(45ミル)であり、これらは、支持体;支持体に隣接し、エラストマーバインダー、エチレン性不飽和化合物、光開始剤、および他の添加剤で構成された光重合性組成物の層を含み;赤外レーザー放射線によって原版から融除可能な化学線不透明材料およびバインダーを有する組成物の層が、支持体とは反対側の光重合性層に隣接して存在し;融除可能な層に隣接してカバーシートを含んだ。
【0091】
カバーシートを原版から除去した。原版をCYREL(登録商標)デジタルイメージャーAdvance Cantilever 1450上に取り付け、赤外レーザー放射線で融除可能な層を融除することによって要素上にin−situマスクを形成することで、原版上にin−situマスクを形成した。このin−situマスクは、線画、および少なくとも1つの1〜99%のハーフトーンドットを有するスクリーン領域、線画を種々の方向で含む種々の特徴を有するテストターゲットを含んだ。さらに、in−situマスクは複数の開放領域含んでおり、それらはその結果得られる印刷プレートによる印刷ためのベタ印刷面領域を形成する。複数の開放領域の一部は、得られるプレートの印刷面領域上にマイクロセルを形成するスクリーンパターンを含み、それらによってベタインク濃度領域が印刷される。数種類のマイクロセルパターンが使用され、それぞれが異なる開放領域を有した。使用したマイクロセルパターンは、CYREL(登録商標)デジタルイメージャーのソフトウェアパッケージに搭載されたものであった。複数の開放領域の一部はマイクロセルパターンを含まなかった。像様露光に使用したマスク画像は全ての原版で同じであったが、しかし各原版は異なる環境条件で像様露光した。要素は、CYREL(登録商標)3000 ETL−n露光ユニット上で、365nmにおいて18.5mW/cm
2のエネルギー密度の紫外線に露光し、全面露光の場合は支持体を通して60秒間行い、像様露光の場合はin−situマスクを介して不活性ガスとしての窒素と以下に表に示される酸素濃度とを有する露光環境中で12分間行った。窒素および1%の酸素濃度の環境における一部の露光の場合、1%酸素濃度を有するように窒素および酸素を予備混合した供給元からガスタンクを購入し、これを「プレミックス」と呼ぶ。
【0092】
すべての感光性原版の向きは、in−situマスクが露光台上で上向きとなり、露光チャンバーの開放空間に向かうようにした。CYREL(登録商標)露光ユニットETL−nは、後述の条件における環境中でのin−situマスク(すなわち、光重合性層の像様露光)を介した感光性要素の紫外線への全面露光のために、米国特許出願公開第2009/0191483号明細書に記載されるような露光チャンバーを含んだ。露光チャンバーは、露光ユニットの台の得得に存在し、台のガラスは、露光チャンバーの一方の側に形成され、平面形状の感光性印刷要素に適応するのに十分な大きさであった。紫外線源はチャンバーの外部に配置した。露光チャンバーは、上側(すなわち、最高部)と、上側の周囲に取り付けられた壁側とを含み、それらすべては、測定可能な散乱および吸収を示すことなく放射線が感光性要素を透過するように、化学線、たとえば紫外線に対して透明または実質的に透明であった。不活性ガスおよび制御された酸素濃度の環境のブランケットが感光性要素のin−situマスク付近に形成されるように、壁は、感光性要素の上方のチャンバー中に開放空間を形成するのに十分な高さであった。露光チャンバーは、窒素である不活性ガス、および任意選択で酸素をチャンバー中に導入するための入口を含んだ。露光チャンバーは、チャンバーから空気および他の気体をパージするために出口を含み、それによってチャンバー内部の環境を所望の条件に制御できた。1つの酸素メーターでは、想定される酸素濃度範囲の一部のみしか測定できないので、露光チャンバー中で想定される広い酸素濃度にわたって酸素濃度を監視するために2つ以上の計器を使用した。酸素濃度メーターは入口に配置し、入口における酸素濃度測定が、露光チャンバーの内部環境中の酸素濃度を代表するものとした。チャンバー内の環境は、窒素および酸素のあらかじめ決定された混合物を50リットル/分で5分間パージすることで達成され、露光開始後はチャンバー中への20リットル/分の混合物の連続流によって維持した。
【0093】
CYREL(登録商標)溶剤処理装置SMART 2000P中、厚さ45ミルのプレートの場合に推奨される条件において、Flexosol溶剤を30℃の温度で使用して感光性原版を処理して、フレキソ印刷に適したレリーフ表面を形成した。このプレートを2.5時間乾燥させ、4分間のUV−Aおよび5分間のUV−Cへの後露光および仕上げ露光を行った。
【0094】
印刷プレートのレリーフ画像について、マイクロセル品質、エッジシャープネスおよび寸法、ハイライト品質、および安定性について評価すると、結果は、高い酸素濃度では、マイクロセルパターンの鮮明度の低下が大きくなり、最も微細なハイライトドットがより不安定となった。
【0095】
この印刷プレートをFischer&Krecke Flexpress 6S印刷プレス上に取り付け、これを使用して、白色ポリエチレン基材に溶剤インク(Siegwerk、NC 402)を使用し、100ミクロンのインプレッション(420線/cmおよび3.4cm
3/m
2容積のアニロックス)および400メートル/分の速度で印刷した。印刷された画像について、以下の表に示されるようにベタ印刷領域におけるインク濃度および粒状性を評価した。粒状性は、1つのタイル中の濃度のばらつきの量である。
【0096】
【表1】
【0097】
これらの結果は、プレートによって基材上に印刷されたベタ領域中の全体のインク濃度(すなわち、ベタインク濃度)は、像様露光中の環境中に存在する酸素含有量の増加とともに減少したことを示している。それでも、露光環境の3%酸素濃度におけるベタインク濃度は、マイクロセルパターンによっては、マイクロセルパターンを有さないベタ領域と実質的に同じ、または幾分良好となった。
【0098】
また、プレートによって基材上に印刷されたベタインク領域中のインク濃度の粒状性は、像様露光中の環境中の酸素含有量の増加とともに増加し、インクのレイダウンが不十分となることを示している。マイクロセルパターンを有するベタ領域のインク濃度の粒状性は、使用されるマイクロパターンの種類に依存して、マイクロセルパターンを有さないベタ領域のインク濃度の粒状性と同等またはより良好であった。ベタインク濃度および粒状性の良好を考慮すると、ウォッシュアウトが行われるレリーフプレートの像様露光中の酸素濃度は約3%であることが示された。不活性ガスと約3%を超える酸素濃度とを有する環境中でレリーフプレートを作製すると、ベタインク濃度および/または粒状性に関する印刷品質が低下すると予想される。
【0099】
以下の表に示されるように、印刷された画像の70線/cmにおけるハイライト性能も評価した。
【0100】
【表2】
【0101】
酸素濃度が増加すると、非常に微細なドット印刷に十分な安定性が失われ、より強く押し付ける必要が生じ、そのため段階の差が失われることを示しているので、ドット先鋭化効果がより明確となる。
【0102】
実施例2
CYREL(登録商標)フレキソ印刷原版のタイプ45DPNが、タイプ45DPRも含み、像様露光中の環境が以下の表に示す通りであったことを除けば、前述のように実施例1を繰り返した。45DPRは、支持体;支持体に隣接し、エラストマーバインダー、エチレン性不飽和化合物、光開始剤、および他の添加剤で構成された光重合性組成物の層を含み;赤外レーザー放射線によって原版から融除可能な化学線不透明材料およびバインダーを有する組成物の層が、支持体とは反対側の光重合性層に隣接して存在し;融除可能な層に隣接してカバーシートを含んだ。原版を赤外レーザー放射線で融除してin−situマスクを形成し、不活性ガスとしての窒素と記載の酸素濃度とを有する環境中でUV線に像様露光し、背面露光し、溶剤ウォッシュアウト溶液で処理し、乾燥させ、仕上げを行って凸版印刷プレートを形成し、次に実施例1で前述したように印刷を行った。
【0103】
印刷プレートを印刷プレス上に取り付け、実施例1に示す条件で印刷を行った。以下の表に示すように、印刷された画像についてベタ印刷領域中のインク濃度および粒状性の評価を行った。
【0104】
【表3】
【0105】
図1から
図4に示されるように、印刷サンプルから、不活性ガスとしての窒素とおよび酸素濃度0.5%とを含有する環境中での露光によって作製したプレートでショルダーの形成が発生し、シリンダーの回転方向に対する画像の方向によってショルダーの印刷が悪化することが観察された。
図1および
図2は、45DPR凸版印刷プレートによって基材上に印刷されたポジの線の画像の複写であり、
図3および
図4は、実施例2に記載にように作製した45DPN凸版印刷プレートプレートによって基材上に印刷されたポジの線の画像の複写である。
図2に示されるようにポジの線が印刷方向に対して垂直に印刷された場合は、
図1に示されるように印刷方向で印刷された同じサイズのポジの線と比較すると、印刷されたポジの線がより幅広になったことが明らかに観察できる。
図4に示されるようにポジの線が印刷方向に対して垂直に印刷された場合は、
図3に示されるように印刷方向で印刷された同じサイズのポジの線と比較すると、印刷されたポジの線がより幅広になったことが明らかに観察できる。両方のレリーフプレートでの印刷された線幅の差は、レーザー放射線イメージャーのドラム上でのマスクの画像形成中の方向の影響も受けた。
【0106】
したがって、不活性ガスおよび約0.5%(または約0.75%未満)の酸素濃度を有する環境で露光することによる印刷版の作製は、微細な隆起特徴上にショルダーが形成され、それらは幅広で容認できない印刷品質となる。ポジの線の許容できる印刷品質は、印刷方向と適切に合わせた場合に実現可能であったが、種々の画像および凸版印刷に使用される印刷基材の方向全体にわたってこの条件を維持することは非現実的である。
【0107】
実施例3
使用した感光性要素は、CYREL(登録商標)フレキソ印刷原版のタイプDPR(67ミル)であり、これらは、支持体;支持体に隣接し、エラストマーバインダー、エチレン性不飽和化合物、光開始剤、および他の添加剤で構成された光重合性組成物の層を含み;赤外レーザー放射線によって原版から融除可能な化学線不透明材料およびバインダーを有する組成物の層が、支持体とは反対側の光重合性層に隣接して存在し;融除可能な層に隣接してカバーシートを含んだ。
【0108】
以下のようにして感光性要素原版から数枚のプレートから作製した。カバーシートを原版から除去した。原版をCYREL(登録商標)デジタルイメージャーSpark上に取り付け、3.4ジュールの赤外レーザー放射線で融除可能な層を融除することによって原版上にin−situマスクを形成することで、要素上にin−situマスクを形成した。in−situマスク画像は、0.25ポイントストロークの十字線と、1〜99%のハーフトーンドットを有するスクリーン領域と、グレーレベル1、グレーレベル2、およびグレーレベル3で開始する階調スケールとを含む種々の特徴を含んだ。像様露光において使用したマスク画像はすべての原版で同じであったが、各原版は異なる環境条件で像様露光した。原版は、CYREL(登録商標)露光ユニット上で16.8mW/cm
2において365nmの紫外線に露光し、バックフラッシュ露光の場合は支持体を通して85秒間行い、像様露光の場合はin−situマスクを介して不活性ガスとしての窒素と以下に表に示される酸素濃度とを有する露光環境中で10分間行った。
【0109】
【表4】
【0110】
所望の窒素/酸素混合物が得られるまで、混合弁を使用して99.995%の窒素を空気と混合し、Advanced Micro Instruments Model 111P Oxygen Analyzerで酸素レベルを測定して、窒素/酸素混合物を制御した。露光ユニットは、米国特許出願公開第2009/0191483号明細書に記載のものと実質的に同じ露光チャンバーを含んだ。窒素/酸素混合物が安定となるように、露光チャンバーに50リットル/分の流量で300秒間パージした。主露光の10分間は、流量を20リットル/分まで減少させた。紫外線源は、チャンバーの外部に配置した。露光チャンバーは、上側(すなわち、最高部)と、上側の周囲に取り付けられた壁側とを含み、それらすべては、測定可能な散乱および吸収を示すことなく放射線が感光性要素を透過するように、化学線、たとえば紫外線に対して透明または実質的に透明であった。すべての感光性原版の向きは、in−situマスクが露光台上で上向きとなり、露光チャンバーの開放空間に向かうようにした。
【0111】
CYREL(登録商標)1000P溶剤処理装置中、撹拌およびスクラビング下で、厚さ67ミルのプレートの場合に推奨される条件において、CYLOSOL(登録商標)溶剤を92〜94°Fの温度で使用して感光性原版を処理して、フレキソ印刷に適したレリーフ表面を形成した。このプレートを2時間乾燥させ、UV−Aへの3分間の後露光を行い、UV−Cへの5分間の仕上げ露光を行った。
【0112】
印刷プレートのレリーフ画像のショルダー角度およびプレート上に維持された最小ドットを評価した。ショルダー角度は、0.25ポイントの十字線を横断し光学顕微鏡下で検査することによって測定した。プレート上に維持された最小ドットの検査は、プレート上の最小ハイライトドットの単純な視覚分析である。
【0113】
【表5】
【0114】
これらの結果から、不活性ガスおよび0.75%〜3%の間の酸素濃度を有する環境中で像様露光され、溶媒溶液中のウォッシュアウトによって処理された感光性原版から作製された凸版印刷プレートの場合、像様露光環境の許容範囲は、ハイライトハーフトーンドットおよび線などの十分に構造化された微細な隆起印刷特注の形成における特徴のバランスとなることが示された。すなわち、本発明の方法によって、過酷な溶剤処理に耐えるのに十分強い非常に微細なハイライトドットが、急激な変わり目のショルダーとともに得られる。
【0115】
像様露光環境の酸素濃度が低下すると、微細な隆起要素上のショルダー角度が減少し、上部印刷面から側壁面までのより幅広のショルダーの変わり目が形成される。より幅広のショルダーは、印刷に非常に影響が生じやすく、忠実な印刷の再現はもはや不可能になると予想される。
【0116】
像様露光環境の酸素濃度が増加すると、ショルダー角度はより急激になったが、しかし2%以上の酸素濃度において顕著な変化は見られなかった。しかし、像様露光環境の酸素濃度の増加によって、さらには、微細なハイライトドットがマスクの対応する開口部よりも小さくなり(すなわち、いわゆるドット先鋭化効果)、ある場合では最小ドットは洗い流されるまで先鋭化された。4%酸素濃度で形成された最小ドット(すなわち、1%のハイライトドット)は、十分に重合せず、溶剤処理中に洗い流された。
【0117】
グレースケールレベルは、特定のドットパーセント値を意味し、グレースケールレベル1は0.39%のドットを有し、グレースケールレベル2は0.78%のドットを有し、グレースケールレベル3は1.18%のドットを有した。露光環境のすべての酸素濃度において、グレースケールレベル1および2は、溶剤処理後に失われた(すなわち、洗い流された)。3%以下の酸素濃度を有する環境中で像様露光したプレート(プレート3A、3B、3C、3D、3E)の場合、グレースケールレベル3のドットの美が維持され、すなわち溶剤処理後に維持された。4%の酸素濃度を有する環境中で露光したプレート(プレート3F)は、グレースケールレベル3が溶剤処理後に失われ、これは非常に大きなデジタル先鋭化が起こったことを示している。
以下に、本発明の好ましい態様を示す。
[1] 感光性要素から凸版印刷版を製造する方法であって、
(a)前記感光性要素中の光重合性組成物の層の上方に配置されるin−situマスクを形成するステップであって、前記光重合性組成物がバインダー、エチレン性不飽和化合物、および光開始剤を含むステップと;
(b)不活性ガスおよび30,000ppm〜7500ppmの間の酸素濃度を有する環境中で前記マスクを介して前記光重合性層を化学線に露光して、少なくとも1つの重合部分および少なくとも1つの未重合部分を形成するステップと;
(c)有機溶媒溶液、水溶液、半水溶液、または水から選択される少なくとも1種類のウォッシュアウト溶液でステップii)の前記要素を処理することによって処理するステップと
を含む方法。
[2] 前記ウォッシュアウト溶液が有機溶媒溶液である、[1]に記載の方法。
[3] 前記不活性ガスが、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、[1]に記載の方法。
[4] 化学線不透明材料の層が前記光重合性層の上方に配置され、ステップa)が、前記化学線不透明層をレーザー放射線に像様露光して、前記in−situマスクを形成するステップを含む、[1]に記載の方法。
[5] レーザー放射線による前記像様露光のステップが、(a)前記化学線不透明層を前記光重合性層から選択的に融除するステップ、および(b)前記化学線不透明層の一部を前記光重合性層に選択的に転写するステップからなる群から選択される、[4]に記載の方法。
[6] 前記in−situマスクが、複数の特徴のパターンを含む開放領域を含み、各特徴が5〜30ミクロンの間の寸法を有し、化学線に対して不透明である、[4]に記載の方法。
[7] ステップb)の前に、前記感光性要素を前記環境のためのチャンバー内に配置するステップをさらに含む、[1]に記載の方法。
[8] 前記光重合性層を露光する前記ステップが、前記チャンバー内の酸素濃度が30,000ppm〜7500ppmの間のときに開始される、[7]に記載の方法。
[9] 前記光重合性層を露光する前記ステップが、前記チャンバー内の酸素濃度が30,000ppm以下のときに開始され、密閉容器中に前記不活性ガスを導入することによって、前記露光中に酸素濃度を低下させる、[7]に記載の方法。
[10] 前記光重合性層を露光する前記ステップが、前記密閉容器内の酸素濃度が30,000ppm〜7500ppmの間のときに開始され、前記不活性ガスおよび酸素を前記チャンバー内に導入することによって、前記露光ステップの間に前記酸素濃度が維持される、[7]に記載の方法。
[11] 前記光重合性層の前記露光ステップが合計時間にわたって行われ、前記酸素濃度が、前記合計時間に対する、特定の酸素濃度における時間のパーセント値に基づいた酸素濃度の加重平均である、[7]に記載の方法。
[12] 前記環境が前記不活性ガスとして窒素を含み、前記酸素濃度が30,000ppm〜7500ppmである、[1]に記載の方法。
[13] 前記環境が前記不活性ガスとして窒素を含み、前記酸素濃度が25,000ppm〜7500ppmである、[1]に記載の方法
[14] 前記環境が前記不活性ガスとして窒素を含み、前記酸素濃度が20,000ppm〜7500ppmである、[1]に記載の方法。
[15] ステップc)の後に、前記要素が印刷領域のパターンを有する凸版印刷版となり、前記方法が、
d)印刷シリンダーの上または印刷シリンダーに隣接して前記印刷版を固定するステップと;
e)前記印刷版の前記印刷領域にインクを塗布するステップと;
f)前記印刷領域の前記インクを前記基材に接触させ、それによってインクの前記パターンを前記基材上に転写するステップと
をさらに含む、[1]に記載の方法。
[16] 前記インクが溶剤インクであり、前記基材がポリマーフィルムである、[15]に記載の方法。