(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6219962
(24)【登録日】2017年10月6日
(45)【発行日】2017年10月25日
(54)【発明の名称】機械的部品に裸眼で見ることにできる予め定めたグラフィック描写を表面マーキングする方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/00 20140101AFI20171016BHJP
B23K 26/066 20140101ALI20171016BHJP
F02C 7/00 20060101ALI20171016BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20171016BHJP
【FI】
B23K26/00 B
B23K26/066
B23K26/00 N
B23K26/00 G
F02C7/00 A
F02C7/00 D
F02C7/00 C
F02C7/00 F
F01D25/00 X
F01D25/00 V
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-536200(P2015-536200)
(86)(22)【出願日】2013年10月7日
(65)【公表番号】特表2016-500577(P2016-500577A)
(43)【公表日】2016年1月14日
(86)【国際出願番号】FR2013052374
(87)【国際公開番号】WO2014057195
(87)【国際公開日】20140417
【審査請求日】2016年9月27日
(31)【優先権主張番号】1259546
(32)【優先日】2012年10月8日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】315008740
【氏名又は名称】サフラン エアークラフト エンジンズ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153084
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 康史
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100157211
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 一夫
(72)【発明者】
【氏名】パスカル ビエー
(72)【発明者】
【氏名】ジョフレ ベーグ−デュチュ
(72)【発明者】
【氏名】バンサン ギポン
【審査官】
岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−84243(JP,A)
【文献】
特表2003−536266(JP,A)
【文献】
特表2010−516472(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0099809(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00
B23K 26/066
F02C 7/00
F01D 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械的部品に予め定めたグラフィック描写を表面マーキングする方法において、
該方法は、レーザー光源を用いてマーキング用部品の外表面に対して、前記レーザー光源と前記マーキング用部品の外表面との間に予め定めたグラフィック描写を有するマスクを挟んだ状態で、単一のレーザーパルスを当てることを含み、前記レーザーパルスは少なくとも20MW/cm2の電力束密度と100nm以下の継続期間を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記レーザー光源と前記マスクの間には合焦レンズが介装される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記レーザー光源はNd−YAGレーザーである請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記レーザーパルスは少なくとも0.5mmの衝撃径を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記マーキング用部品は金属からなり、前記レーザーパルスは0.04MW/cm2〜0.55MW/cm2の範囲内の電力束密度を有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記マーキング用部品はカーボン繊維とエポキシマトリックスを有する複合材料からなり、前記レーザーパルスは0.15GW/cm2〜2GW/cm2の範囲内の電力束密度を有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記マーキング用部品はセラミックからなり、前記レーザーパルスは0.10GW/cm2〜0.34GW/cm2の範囲内の電力束密度を有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
更に、前記レーザー光源と前記部品の外表面との間に不透明マスクを挟むことを含み、前記不透明マスクは、前記部品のマルチコントラストマーキングを達成するように複数のカラーグラデーションを有する請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
航空タービンエンジンのファンブレード、タービンブレード又はコンプレッサブレードを作るにあたり、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械的部品にマーキングする一般的分野に関する。
【0002】
本発明の適用分野は航空部品、特に航空タービンエンジン用部品をマーキングし、それらを識別かつ認証可能にする分野である。
【背景技術】
【0003】
航空分野においては、あるエンジン部品にシリアルナンバー(16進ベースコード又はデータ行列コードの形態)を付けることで、それら部品を認識可能にすること(それらは“マーク付き”と言われる)が既に知られている。そのようなナンバーを使用することで、部品が本物であることを正確に知り、その素性を知ることができる。
【0004】
航空タービンエンジンのタービン及びコンプレッサのブレードにとってマーキングすることは特に望ましい。ブレードは重大な交換部品であるため、問題となっているタービンやコンプレッサの寿命に対する、そのような部品を交換することの影響を考慮するためにはそれらの正確な素性を知ることは重要なことである。
【0005】
部品、特に航空タービンエンジンのためのタービンブレード又はコンプレッサブレードは様々な方法でマーキングすることができる。即ち、材料を除去するパスを複数回行うことでマーキング部品にインプリントを作るレーザー光を用いてマーキングを行うことが既に知られている。又、連続して衝撃を与えることで部品上にシリアルナンバーのマーキングを可能にするハンマーや油圧ピストンを使って機械的マーキングを行うことも知られている。又、手動又は自動フライス盤によってマーキングをすることも公知である。
【0006】
その上に所望のシリアルナンバーが付くように材料を除去したりマーキング用部品を変形したりする方式に頼るマーキング技術には、マーキングされるべき部品の材料の安定性という点で明白な欠点がある。具体的には、単結晶金属合金として作られた部品に対しては、その部品を変形したり、材料を除去することは、そのミクロ組織において局部的再結晶や不可逆的欠陥を導く可能性がある。
【0007】
更に、タービンやコンプレッサのブレードでは、これら従来技術によるマーキングが通常、ブレードの根元に対して行われる。ガスに晒されるブレードの一部分(例えば、その翼)にマーキングを施すことは想定され得ない。つまり、そのような領域の表面上を吹き抜けるガスは、浸食/酸化や材料剥離の作用によってシリアルナンバーを消してしまうリスクがある。更に、振動性疲労の結果として、マーキング部位に亀裂の起点となるものが現れる可能性がある。
【0008】
不幸にも、ブレードの根元にマーキングすることは、一旦ブレードが組み立てられるとそこが隠れてしまう領域であるために、エンジンに取り付けられるとブレードを認識できなくなってしまうという問題を生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、上述した様な欠点がなく、かつ簡単かつ迅速にマーキングを実施可能にする方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、この目的は、機械的部品に予め定めたグラフィック描写を表面マーキングする方法であって、その方法は、レーザー光源を用いてマーキング用部品の外表面に対して、前記レーザー光源と前記部品の外表面との間に予め定めたグラフィック描写を有するマスクを挟んだ状態で、単一のレーザーパルスを当てることを含み、前記レーザーパルスは少なくとも20メガワット/平方センチメートル(MW/cm
2)の電力束密度と100ナノセコンド(nm)以下の継続期間を有するような上記方法によって達成される。
【0012】
出願人は、マスクを通して上記特定条件下でレーザーパルスを当てると、機械的部品上に(レーザーパルスの衝撃径に応じて、場合より裸眼でも見ることのできる)マークであって、特にガスタービンエンジン部品の場合、材料の摩耗が非常に少なく、高温の酸化条件にも耐える優れた能力を持ったマークを作ることができることを見いだした。特に、単一のレーザーパルスによりマーキング用部品の表面に残されるインプリントは深さが非常に表面的なもの(1μ以下)であることが判明した。又、高温(約1100℃)の高い酸化性雰囲気中に晒されても、そのレーザーパルスによって作られたインプリントは長持ちすることも確認されている。
【0013】
結果として、コンプレッサやタービンのブレードにマーキングする応用においては、本発明方法をガスに晒されるブレード部分に適用することで、ブレードの隠される領域にマーキングをすることの全ての欠点を回避しても良い。特に、ブレードがエンジンに取り付けられてもそれらのマーキングによりブレードを識別することが可能である。
【0014】
更に、マーキング用部品が金属製(特に、ニッケル、アルミ、チタン、鉄等)であったり、複合材料製(特に、カーボン繊維+エポキシマトリクス)であったり、セラミック製(特に、ジルコニア)である場合に関係なく、本発明方法は(摩耗がほとんど無く、かつ長寿命という点で)唯々効果的であることが判明している。
【0015】
最後に、本発明方法は実施が迅速(必要とされるのは単一のレーザーパルスだけ)かつ簡単(材料に塗布処理を必要としない)であり、更に選択されたマスクに応じて複雑な形状のマーク(例えば、会社のロゴ)作成を可能にする。
【0016】
レーザー光源とマスクの間に合焦レンズを挟むことで、レーザー光源から放たれるビームのサイズを変えるようにしても良い。その光源はNd−YAGレーザー光であっても良い。更にレーザーパルスの衝撃径を少なくとも0.5ミリメートル(mm)とすることで、結果として生じるマークが裸眼で見れることを確実にしても良い。
【0017】
マーキング用部品が金属からなる場合、レーザーパルスは0.04MW/cm
2〜0.55MW/cm
2の範囲内の電力束密度を有することが好ましい。
【0018】
マーキング用部品がカーボン繊維とエポキシマトリックスを有する複合材料からなる場合、レーザーパルスは0.15GW/cm
2〜2GW/cm
2の範囲内の電力束密度を有することが好ましい。
【0019】
マーキング用部品がセラミックからなる場合、レーザーパルスは0.10GW/cm
2〜0.34GW/cm
2の範囲内の電力束密度を有することが好ましい。
【0020】
有益な提供として、本方法は更に、レーザー光源と前記部品の外表面との間に不透明マスクを挟むことを含み、その不透明マスクは、前記部品のマルチコントラストマーキングを達成するように複数のカラーグラデーションを有する。そのような不透明マスクに頼ることで、作られるマークをより複雑なものとして、それらの複製を非常に困難なものにすることができる。
【0021】
本発明は又、航空タービンエンジンのファンブレードやタービンブレードやコンプレッサブレードを製造するにあたり、以上定義した方法の使用を提供する。
【0022】
本発明のその他の特徴と利点は添付図面を参照する以下の説明により明らかとなるが、それらの図面は制限的特徴を有さない実施態様を示している。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2】本発明方法によってなされた様々なマーキング例を示す写真である。
【
図3】本発明方法によってなされた様々なマーキング例を示す写真である。
【
図4】本発明方法によってなされた様々なマーキング例を示す写真である。
【
図5】本発明の変形実施態様を達成する不透明マスク例の図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は任意の機械的部品への予め定めたグラフィック描写の表面マーキングに適用するものであって、特に航空機用部品、さらに特にガスタービンエンジンの部品へのマーキングに適用するものである。
【0025】
用語“予め定めたグラフィック描写”は、例えばロゴ、シリアルナンバー、データ行列コードなど、任意の予め定めたデザイン又は幾何学形状を意味するものとして使用される。
【0026】
本発明の非限定的実例応用は、航空タービンエンジンのためのブレードやタービンブレードやコンプレッサブレードの表面にマーキングを施すことにある。
【0027】
本発明方法は、レーザー光源とマーキング用部品の外表面との間に、その部品にマーキングされるべき予め定めたグラフィック描写を持ったマスクを挟み、その外表面に単一のレーザーパルスを当てることを含んでいる。
【0028】
発明では、部品の外表面に当てられるレーザーパルスは少なくとも20MW/cm
2の電力束密度でかつ100ns以下の継続時間を持っている。
【0029】
図1は本発明のマーキング方法を実行するにあたって使用に適する装備例を示す図である。
【0030】
マーキングが施されることになる外表面10aを有するマーキング用部品10(例:タービンブレード)はサポートスタンド12によって支持される。部品の外表面10aは上向きである。
【0031】
レーザー光源14、例えば波長1.064マイクロメートル(μm)、2倍周波数で放射するNd−YAG型レーザー光は、100ns以下の期間に20MW/cm
2以下ではない電力束密度を持つパルスを送るように構成されている。
【0032】
更に、予め定めたグラフィック描写を有するマスク16がレーザー光源とマーキング用部品10の外表面10aとの間に介装される。同様に、レーザーから発せられた光線のサイズをマスクの寸法にマッチングさせるため、合焦レンズ18(収束又は分散型)がレーザー光源14とマスク16の間に位置決めされる。
【0033】
その結果、レーザー光源14は放射線を生成し、その放射線は合焦レンズ18によって、部品の外表面の選択域を照射する前にマスク16を通過する光線へと集束される。レーザー光源14によって生成されたレーザーパルスはこの領域においてプラズマを生成し、プラズマの拡大は大量の(熱機械及び音響の)エネルギ放出を引き起こし、それによりマーキング用部品の表面に局所変化を起こさせる。レーザー光によって生じたレーザーパルスが指定された上記条件(即ち、100ns以下の期間内で、少なくとも20MW/cm
2の電力束密度)にセットされた時、部品表面上へのこの局部変化は、部品の表面に残されるインプリントを生じさせる。
【0034】
結果として、本発明方法によって得られるマーキングは部品の表面に残されたインプリントの形態をとり、そのインプリントは使用されたマスク(ここではマスクはネガとして作用する)のそれに相当にするデザインを有する。
【0035】
このインプリントは寸法、具体的にはレーザー光によって生じたレーザーパルスの衝撃の径に対応する直径を持つ。このようにして、レーザーパルスにつき少なくとも0.5mmの直径の衝撃を以て、得られるマーキングは少なくとも(裸眼で見ることが可能な)0.5mmの直径を有する。この直径は、必要なら分散型の合焦レンズ18を行使することで)最大150mmまでとしてもよい。
【0036】
そのような条件下でレーザーパルスを当てた場合、部品にマーキングを施すために唯1つのパルスしか必要とされないことが判明している。特に、そのような結果を得るために同一領域に複数のレーザーパルスを当てる必要はない。
【0037】
また、プロフィル計を使用することで部品10の外表面10aに残ったインプリントは、衝撃径や部品の材料(金属、セラミック又は複合材)にかかわらず深さが非常に表面的(1μ以下)であることも分かっている。
【0038】
また、非常に表面的な深さであっても、得られたマーキングはかなりの酸化性かつ高温の環境に耐えることも分かっている。特に、1100℃の空気中に1時間晒すという試験を700回実施した後においても、そのようなマーキング(ニッケル部品上)が残留したことが実験によって示されている。
【0039】
注目すべきは、レーザー光によって生じるプラズマを良く広がらせるために、使用されるレーザー光の波長を透過させる閉じ込め媒体(例えば、Nd−YAG型レーザー光に対する水やガラスのようなもの)を持つ必要なくマーキングができるということである。
【0040】
同様に、レーザー光によって生じるレーザーパルスの電力束密度が10GW/cm
2(空気の破壊閾値に相当)に制限されるという条件付きなら、雰囲気中でマーキングを実施すことができる場合もある。
【0041】
本発明によるマーキング法は如何なる種類の材料にも適用可能である。特に、それはマーキング部品が金属やセラミックや複合材料からなる場合に良好に適応する。また、それは部品のための如何なる表面コーティング材にも適用する。
【0042】
マーキング用部品が金属製の場合、適用されるべき電力束密度は、完全明瞭なインプリントを成すために0.04GW/cm
2〜0.55GW/cm
2の範囲内に収まることが好ましい。
【0043】
更に詳しく言えば、ニッケルからなる部品の場合、有効適用電力束密度は0.10GW/cm
2〜0.52GW/cm
2の範囲に含まれる。アルミニウムからなる部品の場合、適用されるべき電力束密度は0.20GW/cm
2〜0.55GW/cm
2の範囲内であり、スチールからなる部品の場合、適用されるべき電力束密度は0.10GW/cm
2〜0.50GW/cm
2の範囲内に収まることが好ましい。
【0044】
更に、カーボン繊維とエポキシマトリックスを有する複合材料からなるマーキング用部品の場合、レーザーパルスは完全明瞭なインプリントを得るために0.15GW/cm
2〜2GW/cm
2の範囲内に収まる電力束密度を有することが好ましい。
【0045】
最後に、セラミックからなるマーキング用部品の場合、レーザーパルスは完全明瞭なインプリントを得るために0.10GW/cm
2〜0.34GW/cm
2の範囲内に収まる電力束密度を有することが好ましい。
【0046】
図2〜
図4を参照し、本発明方法を用いてなされる様々なマーキング例を以下説明する。
【0047】
図2は炭素/炭素系の複合材料からなる基板に本発明方法によるレーザーパルスを当てた結果を示した写真(縮尺4:1)である。
【0048】
裸眼で見ることができかつ形状が丸い本図のマーキング20は衝撃径8.7mm、電力束密度99MW/cm
2、継続期間5.2nsの単一レーザーパルスにより得られた。使用マスクは如何なるグラフィック描写をも有さなかった。
【0049】
同様に、
図3は酸化ジルコニウムからなる基板に本発明方法によるレーザーパルスを当てた結果を示した写真(縮尺4:1)である。
【0050】
裸眼で見ることができかつ形状が丸い本図のマーキング20’は衝撃径9.1mm、電力束密度135MW/cm
2、継続期間5.2nsの単一レーザーパルスにより得られた。使用マスクは如何なるグラフィック描写をも有さなかった。
【0051】
最後に、
図4はアルミニウムからなる基板に本発明方法によるレーザーパルスを当てた結果を示した写真(縮尺4:1)である。
【0052】
裸眼で見ることができかつ形状が丸い本図のマーキング20”は衝撃径13mm、電力束密度41MW/cm
2、継続期間5.2nsの単一レーザーパルスにより得られた。使用マスクは如何なるグラフィック描写をも有さなかった。
【0053】
同時にこれらの写真は、上記特定した電力束密度と継続期間の条件下で単一レーザーパルスを当てることで、マーキング対象となる部品(又はその被覆表面)の材料にかかわらず完全明瞭なマーキングであって、部品材料に無害かつ高温かつ酸化環境に耐えることができるマーキングを得ることができることを表わしている。
【0054】
有益な提供として、レーザー光源とマーキング部品の外表面との間に“不透明”マスクと呼ばれる別マスクを挟むことが可能である。この不透明マスクは、上述した予め定めたグラフィック描写を有するマスク16に追加されるものである(不透明マスクはレーザー光線の進行方向でマスク16より上流側又は下流側に同様に良好に位置決めされる場合もある)。
【0055】
不透明マスクは、部品にマルチコントラストなマーキングを施すために複数のカラーグラデーションを伴った媒体(例えば液体やガラス)を有するマスクの形態をとる。
【0056】
特に、不透明マスクは、部品上に再生するためのマスクパターンに応じてレーザー光源の強度の減衰を調整するような形で選択されるべきである。減衰度が少ししかない不透明マスクの領域ではより大きなレーザー光量をパスする一方、かなりの減衰度を有する領域は非常に小さなレーザー光量しかパスしない。
【0057】
図5はマーキングのコントラストにグラデーションを付けるに当たって使用に適する不透明マスク22の例を示している。本例では、不透明マスク22の中央域22aの減衰度はほんの少ししかなく、周辺域22bの減衰度はより大きくなっている。即ち、そのような不透明マスクを使用することで、描写の中央域と周辺域との間でコントラストにグラデーションの付いたグラフィック描写を得ることが可能になる。