(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6220009
(24)【登録日】2017年10月6日
(45)【発行日】2017年10月25日
(54)【発明の名称】銀がコーティングされたカーボンナノチューブを含有する電気接点材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
B22F 7/00 20060101AFI20171016BHJP
【FI】
B22F7/00 A
【請求項の数】14
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-85849(P2016-85849)
(22)【出願日】2016年4月22日
(65)【公開番号】特開2016-216820(P2016-216820A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2016年4月22日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0071929
(32)【優先日】2015年5月22日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】593121379
【氏名又は名称】エルエス産電株式会社
【氏名又は名称原語表記】LSIS CO.,LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】514293260
【氏名又は名称】リサーチ アンド ビジネス ファウンデーション ソンギュンクァン ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100165191
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 章
(74)【代理人】
【識別番号】100151459
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】チョ ウクトン
(72)【発明者】
【氏名】ムン チョルトン
(72)【発明者】
【氏名】チェ ヒョンチョン
(72)【発明者】
【氏名】キム ウォンヨン
(72)【発明者】
【氏名】ペク ソンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】イ トンモク
(72)【発明者】
【氏名】シム チョンヒョン
【審査官】
坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−105439(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 7/00
C01B 33/152
H01B 13/00
H01H 1/023
H01H 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)カーボンナノチューブを硝酸溶液中に入れて超音波分散及び酸処理する段階と、
(b)前記段階(a)で超音波分散及び酸処理されたカーボンナノチューブを洗浄する段階と、
(c)前記洗浄されたカーボンナノチューブを塩化スズと塩酸の混合溶液及び塩化パラジウムと塩酸の混合溶液と順次混合し、その後超音波を加えて前記カーボンナノチューブの表面にスズとパラジウムを結合させる段階と、
(d)硝酸銀水溶液とアンモニア水溶液を無色になるまで混合し、その後前記段階(c)で製造されたカーボンナノチューブを混合する段階と、
(e)前記段階(d)で製造された混合溶液にグリオキシル酸水溶液と水酸化ナトリウム水溶液を混合し、その後脱イオン水で洗浄して銀がコーティングされたカーボンナノチューブを製造する段階と、
(f)前記銀がコーティングされたカーボンナノチューブと、金属が混合された合金とを混合して粉末混合体を製造する段階と、を含むことを特徴とする銀がコーティングされたカーボンナノチューブを含有する電気接点材料の製造方法。
【請求項2】
前記段階(f)において、前記カーボンナノチューブと混合される合金を構成する金属は、伝導度が14.3MS/m以上である、請求項1に記載の銀がコーティングされたカーボンナノチューブを含有する電気接点材料の製造方法。
【請求項3】
前記合金は、銅、ニッケル及び金からなる群から選択される1種以上の金属が混合されたものである、請求項1又は2に記載の銀がコーティングされたカーボンナノチューブを含有する電気接点材料の製造方法。
【請求項4】
(g)前記粉末混合体を超音波分散し、真空乾燥する段階と、
(h)前記真空乾燥した粉末混合体を焼結する段階と、をさらに含む、請求項1に記載の銀がコーティングされたカーボンナノチューブを含有する電気接点材料の製造方法。
【請求項5】
前記段階(b)において、前記カーボンナノチューブをPH7になるまで洗浄する、請求項1に記載の銀がコーティングされたカーボンナノチューブを含有する電気接点材料の製造方法。
【請求項6】
前記段階(e)において、前記グリオキシル酸水溶液と前記水酸化ナトリウム水溶液をPH9になるまで混合する、請求項1に記載の銀がコーティングされたカーボンナノチューブを含有する電気接点材料の製造方法。
【請求項7】
前記グリオキシル酸水溶液と前記水酸化ナトリウム水溶液が混合された混合溶液を脱イオン水でPH7になるまで洗浄する、請求項6に記載の銀がコーティングされたカーボンナノチューブを含有する電気接点材料の製造方法。
【請求項8】
前記段階(a)において、前記カーボンナノチューブの超音波分散を5分間行い、酸処理を2時間行う、請求項1に記載の銀がコーティングされたカーボンナノチューブを含有する電気接点材料の製造方法。
【請求項9】
前記段階(e)において、前記グリオキシル酸水溶液と前記水酸化ナトリウム水溶液を混合する際に、90℃で1時間反応させる、請求項1に記載の銀がコーティングされたカーボンナノチューブを含有する電気接点材料の製造方法。
【請求項10】
前記段階(h)は、放電プラズマ焼結法により行う、請求項4に記載の銀がコーティングされたカーボンナノチューブを含有する電気接点材料の製造方法。
【請求項11】
(a)カーボンナノチューブに超音波分散及び酸処理を行い、その後前記カーボンナノチューブの表面にスズとパラジウムを結合させる段階と、
(b)硝酸銀水溶液とアンモニア水溶液を混合し、その後前記段階(a)で製造されたカーボンナノチューブを混合する段階と、
(c)前記段階(b)で製造された混合溶液にグリオキシル酸水溶液と水酸化ナトリウム水溶液を混合して銀がコーティングされたカーボンナノチューブを製造し、その後、前記銀がコーティングされたカーボンナノチューブと、金属が混合された合金とを混合して粉末混合体を製造する段階と、を含むことを特徴とする銀がコーティングされたカーボンナノチューブを含有する電気接点材料の製造方法。
【請求項12】
前記段階(c)において、前記カーボンナノチューブと混合される合金を構成する金属は、伝導度が14.3MS/m以上である、請求項11に記載の銀がコーティングされたカーボンナノチューブを含有する電気接点材料の製造方法。
【請求項13】
前記合金は、銅、ニッケル及び金からなる群から選択される1種以上の金属が混合されたものである、請求項11又は12に記載の銀がコーティングされたカーボンナノチューブを含有する電気接点材料の製造方法。
【請求項14】
(d)前記粉末混合体を超音波分散し、真空乾燥する段階と、
(e)前記真空乾燥した粉末混合体を焼結する段階と、をさらに含む、請求項11に記載の銀がコーティングされたカーボンナノチューブを含有する電気接点材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀がコーティングされたカーボンナノチューブを含有する電気接点材料の製造方法に関し、特に、銀の含有量を低減しながらも優れた特性を有する、銀がコーティングされたカーボンナノチューブを含有する電気接点材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電気接点材料は、遮断器や開閉器などの電気機器において電気回路を開放又は閉成するときに接触する部分に用いられる通電用接触素子であり、モータスイッチ、スイッチギヤ、MCB、小型モータ及びランプ、自動車、家電製品などに適用される。
【0003】
また、電気接点材料には、融点が高いこと、電気伝導度及び熱伝導度に優れること、接触抵抗が低いことだけでなく、耐溶着性に優れること、開閉が容易であること、耐摩耗性に関連する硬度が高いこと、接触面の変化が少ないことなど、様々な性質が求められる。
【0004】
このような電気接点材料は、電流領域によって、小電流用電気接点材料(1A以下)、中電流用電気接点材料(1A〜600A)、大電流用電気接点材料(600A以上)に分けられる。
【0005】
一般に、小電流用接点材料としては電気伝導度に優れた接点材料が用いられ、中電流用接点材料としては電気伝導度、耐摩耗性、融点などに優れた接点材料が用いられ、大電流用接点材料としては高融点の電気接点材料が用いられる。
【0006】
また、電気接点材料は、材質によって、タングステン系電気接点材料、銀・酸化物系電気接点材料、貴金属系電気接点材料にも分けられる。
【0007】
図9に示すように銀・ニッケル合金を用いて電気接点材料を製造する際に、銀・ニッケル系電気接点材料が小電流や中電流に用いられる場合は、約80重量%以上の銀が用いられる。
【0008】
近年、電気接点材料の耐摩耗性や電気的特性などを向上させるために、金属に炭素系化合物を添加した電気接点材料が提案されており、特許文献1、特許文献2及び特許文献3には銀(Ag)粉末とカーボンナノチューブとを含む電気接点材料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】中国特許出願公開第102324335号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第001624175号明細書
【特許文献3】中国特許出願公告第001256450号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、これらの従来の電気接点材料においては、カーボンナノチューブを含むので電気的特性は向上するが、依然として銀(Ag)の含有量が高いことから製造コストが高く、製造工程が複雑であるという問題があった。
【0011】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、銀の含有量を低減しながらも優れた特性を有する、銀がコーティングされたカーボンナノチューブを含有する電気接点材料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記目的は、(a)カーボンナノチューブを
硝酸溶液中に入れて超音波分散及び酸処理する段階と、(b)前記段階(a)で超音波分散及び酸処理されたカーボンナノチューブを洗浄する段階と、(c)前記洗浄されたカーボンナノチューブを塩化スズと塩酸の混合溶液及び塩化パラジウムと塩酸の混合溶液と順次混合し、その後超音波を加えて前記カーボンナノチューブの表面にスズとパラジウムを結合させる段階と、(d)硝酸銀水溶液とアンモニア水溶液を無色になるまで混合し、その後前記段階(c)で製造されたカーボンナノチューブを混合する段階と、(e)前記段階(d)で製造された混合溶液にグリオキシル酸水溶液と水酸化ナトリウム水溶液を混合し、その後脱イオン水で洗浄して銀がコーティングされたカーボンナノチューブを製造する段階と、(f)前記銀がコーティングされたカーボンナノチューブと金属が混合された合金を混合して粉末混合体を製造する段階とを含む、本発明による銀がコーティングされたカーボンナノチューブを含有する電気接点材料の製造方法を提供することにより達成することができる。
【0013】
また、前記段階(f)において、前記カーボンナノチューブと混合される合金を構成する金属は、伝導度を14.3MS/m以上にしてもよい。
【0014】
さらに、前記合金は、銅、ニッケル及び金からなる群から選択される1種以上の金属が混合されたものであってもよい。
【0015】
さらに、前記段階(f)の後に、(g)前記粉末混合体を超音波分散し、真空乾燥する段階と、(h)前記真空乾燥した粉末混合体を焼結する段階とをさらに含んでもよい。
【0016】
さらに、前記段階(b)においては、前記カーボンナノチューブをPH7になるまで洗浄するようにしてもよい。
【0017】
さらに、前記段階(e)においては、前記グリオキシル酸水溶液と前記水酸化ナトリウム水溶液をPH9になるまで混合するようにしてもよい。
【0018】
さらに、前記グリオキシル酸水溶液と前記水酸化ナトリウム水溶液が混合された混合溶液を脱イオン水でPH7になるまで洗浄するようにしてもよい。
【0019】
さらに、前記段階(a)において、前記カーボンナノチューブの超音波分散を5分間行い、酸処理を2時間行うようにしてもよい。
【0020】
さらに、前記段階(e)においては、前記グリオキシル酸水溶液と前記水酸化ナトリウム水溶液を混合する際に、90℃で1時間反応させるようにしてもよい。
【0021】
さらに、前記段階(h)は、放電プラズマ焼結法(Spark Plasma Sintering, SPS)により行うようにしてもよい。
【0022】
本発明の他の目的は、(a)カーボンナノチューブに超音波分散及び酸処理を行い、その後前記カーボンナノチューブの表面にスズとパラジウムを結合させる段階と、(b)硝酸銀水溶液とアンモニア水溶液を混合し、その後前記段階(a)で製造されたカーボンナノチューブを混合する段階と、(c)前記段階(b)で製造された混合溶液にグリオキシル酸水溶液と水酸化ナトリウム水溶液を混合して銀がコーティングされたカーボンナノチューブを製造し、その後金属が混合された合金を混合して粉末混合体を製造する段階とを含む、本発明による銀がコーティングされたカーボンナノチューブを含有する電気接点材料の製造方法を提供することにより達成することができる。
【0023】
また、前記段階(c)において、前記カーボンナノチューブと混合される合金を構成する金属は、伝導度を14.3MS/m以上にしてもよい。
【0024】
さらに、前記合金は、銅、ニッケル及び金からなる群から選択される1種以上の金属が混合されたものであってもよい。
【0025】
さらに、前記段階(c)の後に、(d)前記粉末混合体を超音波分散し、真空乾燥する段階と、(e)前記真空乾燥した粉末混合体を焼結する段階とをさらに含んでもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明による銀がコーティングされたカーボンナノチューブを含有する電気接点材料の製造方法においては、電気接点材料の製造時にカーボンナノチューブに銀を含有させることにより、カーボンナノチューブ同士の凝集を抑制してカーボンナノチューブを電気接点材料中に均一に分散させるという効果がある。
【0027】
また、電気接点材料に用いられる銀の含有量を低減することにより、電気接点材料全体の製造コストを低減するという効果がある。
【0028】
さらに、カーボンナノチューブに少量の銀を用いながらも電気接点材料が優れた特性を有するようにし、電気接点材料が用いられる遮断器などの機能を大幅に向上させるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明による銀がコーティングされたカーボンナノチューブを含有する電気接点材料を示す構成図である。
【
図2】本発明による電気接点に含有されるカーボンナノチューブを示すSEM画像である。
【
図3】本発明による電気接点に含有される銀がコーティングされたカーボンナノチューブを示すSEM画像である。
【
図4】本発明による電気接点に含有される銀がコーティングされたカーボンナノチューブを示す他のSEM画像である。
【
図5】本発明による電気接点に含有される銀がコーティングされたカーボンナノチューブを示すTEM画像である。
【
図6】本発明による電気接点に含有される銀がコーティングされたカーボンナノチューブのEDS分析を示すグラフである。
【
図7】本発明による電気接点材料の製造過程を示すフローチャートである。
【
図8】本発明による銀がコーティングされたカーボンナノチューブの製造過程を示すフローチャートである。
【
図9】従来の銀・ニッケル系電気接点材料を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付図面を参照して本発明の一実施形態による銀がコーティングされたカーボンナノチューブを含有する電気接点材料の製造方法について詳細に説明する。
【0031】
図1は本発明による銀がコーティングされたカーボンナノチューブを含有する電気接点材料を示す構成図であり、
図2は本発明による電気接点に含有されるカーボンナノチューブを示すSEM画像であり、
図3は本発明による電気接点に含有される銀がコーティングされたカーボンナノチューブを示すSEM画像であり、
図4は本発明による電気接点に含有される銀がコーティングされたカーボンナノチューブを示す他のSEM画像である。
【0032】
また、
図5は本発明による電気接点に含有される銀がコーティングされたカーボンナノチューブを示すTEM画像であり、
図6は本発明による電気接点に含有される銀がコーティングされたカーボンナノチューブのEDS分析を示すグラフであり、
図7は本発明による電気接点材料の製造過程を示すフローチャートであり、
図8は本発明による銀がコーティングされたカーボンナノチューブの製造過程を示すフローチャートである。
【0033】
図1に示すように、本発明の製造方法により製造される電気接点材料は、銀がコーティングされたカーボンナノチューブ(CNT)10を含有する。
【0034】
ここで、電気接点材料は、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)及び金(Au)からなる群から選択される1種以上の金属を含むように構成され、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、金(Au)としては、それぞれ伝導度が63MS/m、59.6MS/m、14.3MS/m、45.2MS/m以上のものを用いることにより、後述する電気接点材料の密度、電気伝導度、硬度、熱伝導度、延伸率及び電気的寿命を向上させることができる。
【0035】
銀(Ag)は、電気伝導度及び熱伝導度に優れ、低接触抵抗性であるので、電気接点の基本材料として多く用いられ、ニッケル(Ni)は、電気伝導度及び熱伝導度が銀(Ag)より低いが、機械的強度が高いので、銀(Ag)と共に電気接点材料として用いられる。
【0036】
ここで、金属の粒径は、1μm〜10μmにすることが好ましい。
【0037】
また、銀・ニッケル系合金における銀(Ag)の含有量は、特に限定されるものではないが、55重量%〜65重量%であることが好ましい。銀(Ag)の含有量が55重量%未満では、電気伝導度が低いので電気接点材料として用いることができず、65重量%を超えると、耐摩耗性及び耐消耗性が劣るので製造コストが大幅に上昇する。
【0038】
よって、ニッケル(Ni)の含有量は、35重量%〜45重量%であることが好ましい。
【0039】
カーボンナノチューブは、炭素原子同士がSP2結合により連結されてハニカム構造を形成してチューブ状をなす新素材であって、直径は炭素壁の層数に応じて数〜数十ナノメートル(nm)程度となる。
【0040】
カーボンナノチューブは、電気的、機械的、熱的特性に非常に優れていて複合材料の強化材として用いることができ、電気的ブリッジ(electrical bridge)の役割を果たして電気接点材料の電気的、機械的特性を向上させることができる。
【0041】
しかし、このような利点を有するカーボンナノチューブには、金属との結合時に分散が困難であるなどの問題がある。
【0042】
すなわち、電気接点材料にカーボンナノチューブを用いた場合、カーボンナノチューブ同士の凝集により電気接点材料中での均一な分散が得られにくいという問題があり、その不均一な分散により素材特性に影響を与えるという問題がある。
【0043】
よって、本発明においては、銀(Ag)がコーティングされたカーボンナノチューブを用いて電気接点材料を製造することにより、カーボンナノチューブを電気接点材料中に均一に分散させる。
【0044】
すなわち、
図1に示すように銀(Ag)がコーティングされたカーボンナノチューブを用いた場合、材料間の界面に均一に分散し、電気接点に求められる熱伝導度及び耐摩耗性を向上させる。
【0045】
図2〜
図5に示すように、カーボンナノチューブ(CNT)、又は銀(Ag)を含有するカーボンナノチューブ(CNT)は、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope, TEM)や走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope, SEM)を用いてその状態が確認され、
図6のEDS分析結果を参照すると、各成分が検知されたときに強度が高くなる。
【0046】
以下、
図7及び
図8を参照して、銀がコーティングされたカーボンナノチューブの製造過程について詳細に説明する。
【0047】
まず、銀及びニッケルを含有する合金と銀がコーティングされたカーボンナノチューブとを混合して粉末混合体を製造する(S101)。
【0048】
ここで、銀がコーティングされたカーボンナノチューブを製造する過程は次の通りである。
【0049】
まず、カーボンナノチューブ0.04gを7Mの
硝酸(HNO
3)溶液中に入れ、超音波分散を5分間行い、酸処理を2時間行う(S201)。
【0050】
次に、ステップS201で超音波分散及び酸処理されたカーボンナノチューブを、真空濾過法(Vacuum filtration)を用いて脱イオン水でPH7になるまで洗浄する(S203)。
【0051】
次に、ステップS203で洗浄されたカーボンナノチューブを塩化スズ(SnCl
2)と塩酸(HCl)の混合溶液及び塩化パラジウム(PdCl
2)と塩酸(HCl)の混合溶液と順次混合し、超音波を加えることにより、カーボンナノチューブの表面にスズ(Sn
2+)とパラジウム(Pd
2+)を結合させる(S205)。
【0052】
次に、0.3Mの硝酸銀(AgNO
3)水溶液とアンモニア水溶液を溶液が無色になるまで混合し、その後ステップS205で製造されたカーボンナノチューブを混合する(S207)。
【0053】
次に、0.1Mのグリオキシル酸水溶液と0.5Mの水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液をPH9になるまで混合し、混合溶液を90℃で1時間反応させ、その後真空濾過法を用いて脱イオン水でPH7になるまで洗浄して銀がコーティングされたカーボンナノチューブを製造する(S209)。
【0054】
次に、銀がコーティングされたカーボンナノチューブと合金を混合して粉末混合体を製造する(S211)。
【0055】
次に、ステップS211で製造された粉末混合体を超音波分散し、真空乾燥し(S103)、その後真空乾燥した粉末混合体を焼結する(S105)。
【0056】
ここで、粉末混合体の焼結は、摂氏750℃〜830℃の温度を1分間維持して行うが、焼結方法としては、放電プラズマ焼結法を用いる。
【0057】
放電プラズマ焼結法は、黒鉛モールド内で加圧中の原料粒子にパルス電流を直接通電させることにより粒子間の空間から発生する放電プラズマを主熱源として用いる焼結法である。
【0058】
この方法により、放電プラズマの高エネルギーを熱拡散、電場の作用などに効果的に応用することができる。
【0059】
また、放電プラズマ焼結法は、比較的低い温度から短時間で急速な昇温が可能であるので、粒子の成長を制御することができ、短時間で緻密な複合体を得ることができ、焼結しにくい材料(難焼結材料)でも容易に焼結することができる。
<実験例>
【表1】
【0060】
上記表1に示すように、本発明の製造方法により製造された銀がコーティングされたカーボンナノチューブを含有する電気接点材料は、密度、電気伝導度、電気的寿命などが大幅に向上している。
【0061】
すなわち、本発明においては、電気接点材料の製造時にカーボンナノチューブに銀を含有させることにより、カーボンナノチューブ同士の凝集を抑制してカーボンナノチューブを電気接点材料中に均一に分散させる。
【0062】
また、電気接点材料に用いられる銀の含有量を低減することにより、電気接点材料全体の製造コストを低減する。
【0063】
さらに、カーボンナノチューブに少量の銀を用いながらも電気接点材料が優れた特性を有するようにし、電気接点材料が用いられる遮断器などの機能を大幅に向上させる。
【0064】
以上、本発明の好ましい一実施形態について説明したが、本発明は、様々な変化、変更及び均等物を用いることができ、上記実施形態を適切に変形して同様に応用することができることは明らかである。よって、上記記載内容は特許請求の範囲により定義される本発明の範囲を限定するものではない。
【符号の説明】
【0065】
10 銀がコーティングされたカーボンナノチューブ