(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6220036
(24)【登録日】2017年10月6日
(45)【発行日】2017年10月25日
(54)【発明の名称】模型玩具
(51)【国際特許分類】
A63H 3/36 20060101AFI20171016BHJP
【FI】
A63H3/36 Q
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-232185(P2016-232185)
(22)【出願日】2016年11月30日
【審査請求日】2017年4月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000135748
【氏名又は名称】株式会社バンダイ
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 勇助
(72)【発明者】
【氏名】望月 時道
【審査官】
比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2014/0065927(US,A1)
【文献】
登録実用新案第3171440(JP,U)
【文献】
バンダイ1/144HGUCゲルググマリーネ製作編,模型の写真壱,2016年10月 7日,平成29年4月26日検索,URL,https://web.archive.org/web/20161007124938/http://www.geocities.jp/xnkgg033/gerugugu1.html
【文献】
[MGデスティニーガンダム製作記(製作依頼品)]#16モールド彫り込み中1,あやさんのクロスカブ日記,2008年 5月 2日,平成29年4月26日検索,URL,http://www.asayan.tk/?p=4191
【文献】
HGUC REVIEWグフ作戦会議用組立レビュー[上半身・体幹編],56DOC BLOG,2016年 4月18日,平成29年4月26日検索,URL,http://blog.56doc.net/Entry/815/
【文献】
第79回グッスマ合金シリーズ01「タチコマ」,三十路工廠の別の顔,2008年 6月24日,平成29年4月26日検索,URL,http://misojikousyou.cocolog-wbs.com/maniamisoji/2008/06/
【文献】
合わせ目を目立たなくさせる2つの方法,ガンプラ製作の手順・テクニック・お勧めの道具教えます,2016年10月15日,平成29年4月26日検索,URL,https://web.archive.org/web/20161015131953/http://howto-gunpla.com/assembly-5-3
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63H 1/00−37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に形成され、当該表面の一部に暗部を生じさせる溝部を備え、
前記溝部は、前記溝部の開口から前記溝部の深さ方向に延びる第1部分と、前記第1部分の先端から前記深さ方向に前記溝部の底まで延びる第2部分とからなり、
前記第2部分の溝幅は、前記深さ方向の全長に亘って前記第1部分の先端における溝幅以下であり、且つ前記第2部分の先端における溝幅は、前記第1部分の先端における溝幅よりも小さく、
前記溝部の深さは、前記溝部の前記開口における幅よりも大きい模型玩具。
【請求項2】
請求項1記載の模型玩具であって、
前記第2部分の溝幅は、前記第2部分の先端に向けて漸減している模型玩具。
【請求項3】
請求項2記載の模型玩具であって、
前記溝部の延在方向に直交する断面における前記第2部分の輪郭はV字状である模型玩具。
【請求項4】
請求項2記載の模型玩具であって、
前記溝部の延在方向に直交する断面における前記第2部分の輪郭はU字状である模型玩具。
【請求項5】
請求項1記載の模型玩具であって、
前記第2部分の溝幅は、前記深さ方向の全長に亘って前記第1部分の先端における溝幅よりも小さく且つ一定である模型玩具。
【請求項6】
請求項5記載の模型玩具であって、
前記第2部分の深さは、前記第1部分の深さ以上である模型玩具。
【請求項7】
請求項5記載の模型玩具であって、
前記第2部分の深さは、前記第1部分の深さ未満である模型玩具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、模型玩具に関する。
【背景技術】
【0002】
模型玩具では、陰影を表現するための溝部が表面に形成されることによって立体感が高められている。例えば、特許文献1に記載された模型玩具では、凹形状にて形成される凹空間と、凹空間に備えられて上方からの照射光の挿し込みを制限する狭小開口部と、凹空間の底部で照射光の差し込みに曝される位置に配置された強調範囲と、凹空間の底部で強調範囲より深く形成されて光の到達を抑制された暗部範囲とを備え、強調範囲と暗部範囲とのコントラストによって立体感が高められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3171440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
陰影を強調して立体感をさらに高める目的で、黒色のマーカー等によって溝部が着色される所謂「墨入れ」が模型玩具に施される場合がある。しかし、例えば開口部が狭小な凹空間の底部など、溝部が形成されている箇所によっては墨入れが困難となる。
【0005】
本発明は、墨入れによらず模型玩具の立体感を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る模型玩具は、表面に形成された溝部を備え、前記溝部は、前記溝部の開口から前記溝部の深さ方向に延びる第1部分と、前記第1部分の先端から前記深さ方向に前記溝部の底まで延びる第2部分とからなり、前記第2部分の溝幅は、前記深さ方向の全長に亘って前記第1部分の先端における溝幅以下であり、且つ前記第2部分の先端における溝幅は、前記第1部分の先端における溝幅よりも小さいことを特徴とする。
また、本発明に係る模型玩具は、表面に形成され、当該表面の一部に暗部を生じさせる溝部を備え、前記溝部は、前記溝部の開口から前記溝部の深さ方向に延びる第1部分と、前記第1部分の先端から前記深さ方向に前記溝部の底まで延びる第2部分とからなり、前記第2部分の溝幅は、前記深さ方向の全長に亘って前記第1部分の先端における溝幅以下であり、且つ前記第2部分の先端における溝幅は、前記第1部分の先端における溝幅よりも小さく、前記溝部の深さは、前記溝部の前記開口における幅よりも大きいことを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る模型玩具においては、前記第2部分の溝幅が、前記第2部分の先端に向けて漸減していてもよい。
【0008】
また、本発明に係る模型玩具においては、前記溝部の延在方向に直交する断面における前記第2部分の輪郭がV字状であってもよい。
【0009】
また、本発明に係る模型玩具においては、前記溝部の延在方向に直交する断面における前記第2部分の輪郭がU字状であってもよい。
【0010】
また、本発明に係る模型玩具においては、前記第2部分の溝幅が、前記深さ方向の全長に亘って前記第1部分の先端における溝幅よりも小さく且つ一定であってもよい。
【0011】
また、本発明に係る模型玩具においては、前記第2部分の深さが、前記第1部分の深さ以上であってもよい。
【0012】
また、本発明に係る模型玩具においては、前記第2部分の深さが、前記第1部分の深さ未満であってもよい。
【0013】
また、本発明に係る模型玩具においては、前記溝部の深さが、前記溝部の前記開口における幅よりも大きくてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、墨入れによらず模型玩具の立体感を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態を説明するための、模型玩具の一例の正面図である。
【
図2】
図1の模型玩具の表面に形成された溝部のII−II線断面図である。
【
図6】(A)は表面に溝部が形成されたサンプルの斜視図であり、(B)は同図(A)のサンプルの断面図である。
【
図7】(A)は表面に溝部が形成された他のサンプルの斜視図であり、(B)は同図(A)のサンプルの断面図である。
【
図8】
図6のサンプルの溝部の見え方を示す写真である。
【
図9】
図7のサンプルの溝部の見え方を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の実施形態を説明するための、模型玩具の一例を示し、
図2は、
図1の模型玩具の表面に形成された溝部の断面を示す。
【0017】
図1のように、模型玩具1の顔部の表面中央には、模型玩具1のキャラクタを特徴付ける溝部2が形成されている。溝部2は、顔部の表面の一部に暗部を生じさせることにより、模型玩具1に立体感を付与する。
【0018】
図2のように、溝部2は、溝部2の開口から溝部2の深さ方向に延びる第1部分2Aと、第1部分2Aの先端(下端)から深さ方向に沿って溝部2の底まで延びる第2部分2Bとからなる。
【0019】
そして、第2部分2Bの溝幅は、溝部2の深さ方向の全長に亘って第1部分2Aの先端における溝幅以下であり、且つ第2部分2Bの先端(下端)における溝幅は、第1部分2Aの先端における溝幅よりも小さい。
図2の例では、溝部2の第2部分2Bの溝幅は、第2部分2Bの先端に向けて漸減しており、溝部2の延在方向に直交する断面における第2部分2Bの輪郭はV字状となっている。
【0020】
溝部内に射し込んだ照明光は溝部の底面で反射され、この反射光は再び溝部の開口を経て外に漏出するが、以上の構成を備える溝部2によれば、第1部分2Aのみからなる断面矩形状の単純な溝に比べ、溝部2内での反射が繰り返され、反射が繰り返されることによって反射光が減衰され、反射光の漏出が抑制される。これにより、暗部としての溝部2と溝部以外の領域とのコントラストを強調して模型玩具の立体感を高めることができる。
【0021】
好ましくは、溝部2の開口から溝部2の底までの深さ(D)は、溝部2の開口における幅(W)よりも大きく、このようにすることにより、溝部2の内面で反射して溝部2の外に漏出する反射光をより減少させることができる。
【0022】
なお、
図2の例では、溝部2の第2部分2Bの輪郭はV字状であるが、溝部2の第2部分2Bの溝幅が第2部分2Bの先端に向けて漸減するものとして、
図3のように、溝部2の延在方向に直交する断面における第2部分2Bの輪郭はU字状であってもよい。
【0023】
また、
図4及び
図5のように、溝部2の第2部分2Bの溝幅は、溝部2の深さ方向の全長に亘って溝部2の第1部分2Aの先端における溝幅よりも小さく且つ一定であってもよい。この場合に、第2部分2Bの深さ(Db)は、
図4のように、第1部分2Aの深さ(Da)以上であってもよく(Db≧Da)、
図5のように、第1部分2Aの深さ(Da)未満であってもよい(Db<Da)。この場合にも、
図2及び
図3の例と同様、溝部2の開口から溝部2の底までの深さ(D)は、溝部2の開口における幅(W)よりも大きいことが好ましい。
【0024】
次に、本発明の効果を確認するために行った実験例について説明する。
【0025】
図6のサンプルは、平坦な表面を有する樹脂製の板材に10本の溝部A〜Jを形成したものであり、
図7のサンプルは、円弧上の表面を有する樹脂製の板材に10本の溝部A〜Jを形成したものである。
図6及び
図7の各サンプルにおいて、溝部の形状は、溝部C、Hが
図2、溝部B、Gが
図3、溝部D、Iが
図4、溝部E、Jが
図5の溝部2にそれぞれ対応している。
【0026】
図6及び
図7の左側に配置された幅の狭い溝部B、C、D、Eは、開口における幅(W)が0.2mm、開口から底までの深さ(D)が0.4mm、第1部分2Aの深さ(Da)が0.3mmである。
図6及び
図7の右側に配置された幅の広い溝部G、H、I、Jは、開口における幅(W)が0.4mm、開口から底までの深さ(D)が0.8mm、第1部分2Aの深さ(Da)が0.6mmである。また、
図2の溝部2に対応する溝部C、Hは、延在方向に直交する断面における第2部分2BのV字状の輪郭がなす角(θ)を90°とした。このように、第1部分2Aの深さDaは、開口における幅Wの1.5倍以上とすることが望ましい。
【0027】
溝部A、Fは、開口における幅(W)と開口から底までの深さ(D)とが同一であり、且つ溝幅は、開口から底までの全長に亘って一定となっている。溝部Aの幅(W)及び深さ(D)はそれぞれ0.2mmであり、溝部Fの幅(W)及び深さ(D)はそれぞれ0.4mmである。
【0028】
図8は
図6のサンプルの溝部A〜Jの見え方を示す写真であり、
図9は
図7のサンプルの溝部A〜Jの見え方を示す写真である。
【0029】
これらの写真から、
図6のサンプル及び
図7のサンプルのいずれにおいても、
図2〜
図5に対応する形状を備えた溝部B〜E、G〜Jは、溝部A、Fと比較したとき、溝部以外の領域との明暗のコントラストが強くなっており、サンプルの立体感がより一層高められていることが分かる。また、実施形態の
図2に対応する形状を備えた溝部C、Hにおいて特にコントラストが強くなることも判明した。
【0030】
以上のように、本発明によれば、墨入れ等の付加的な処理を施すことなく模型玩具の立体感を高めることができる。
【符号の説明】
【0031】
1 模型玩具
2 溝部
2A 第1部分
2B 第2部分
【要約】
【課題】墨入れによらず模型玩具の立体感を高める。
【解決手段】模型玩具1は、表面に形成された溝部2を備え、溝部2は、溝部2の開口から溝部2の深さ方向に延びる第1部分2Aと、第1部分2Aの先端から深さ方向に溝部2の底まで延びる第2部分2Bとからなり、第2部分2Bの溝幅は、深さ方向の全長に亘って第1部分2Aの先端における溝幅以下であり、且つ第2部分2Bの先端における溝幅は、第1部分2Aの先端における溝幅よりも小さい。
【選択図】
図2