【文献】
“Kevlar Technical Guide”,E. I. du Pont de Nemours and Company,2017年 1月13日,Section I 第I-1頁, Section II 第II-1頁,URL,http://www.dupont.com/products-and-services/fabrics-fibers-nonwovens/fibers/articles/kevlar-properties.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記高強度繊維のネットワークは、アラミド繊維を経糸及び緯糸として含む織物(aramid woven fabric)であることを特徴とする、請求項1に記載の防弾素材。
前記高強度繊維のネットワークは、フルオロカーボン、架橋剤及び硬度−強化樹脂(hardness−enhancing resin)を含む撥水剤でコーティングされており、
前記架橋剤はイソシアネート系化合物であり、
前記硬度−強化樹脂はポリビニルアセテートであることを特徴とする、請求項2に記載の防弾素材。
前記アラミド織物は、フルオロカーボン、架橋剤及び硬度−強化樹脂を含む撥水剤でコーティングされており、前記架橋剤はイソシアネート系化合物であり、前記硬度−強化樹脂はポリビニルアセテートであり、
前記超高分子量ポリエチレン繊維は、ポリウレタン樹脂を含む組成物でコーティングされていることを特徴とする、請求項11に記載の防弾素材。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、本発明の防弾素材の実施例を添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
以下に説明される本発明の実施例は、本発明の理解を助けるための例に過ぎないもので、本発明の権利範囲を制限せず、本発明の技術的思想及び範囲を逸脱しない範囲内で本発明の様々な変更及び変形が可能であるということは当業者にとって自明である。したがって、本発明は、特許請求の範囲に記載された発明、及びその均等物の範囲内に含まれる変更及び変形を全て含む。
【0018】
本明細書で使用される用語、「高強度繊維」は、11g/denier以上の強度(tenacity)、及び200g/denier以上の引張弾性率(tensile modulus)を有する繊維を意味する。
【0019】
図1は、本発明の第1の実施例に係る防弾素材の断面図である。
【0020】
図1に例示されたように、本発明の第1の実施例に係る防弾素材100は、弾丸が衝突する前面FS、及びその反対側の後面BSを有する。防弾素材100は、前面FS側に位置した複数の第1繊維層110、及び前記第1繊維層110に隣接する第2繊維層120を含む。
【0021】
防弾素材100は、防弾服の軽量化の要求を満足させる面密度、例えば、3〜6.8kg/m
2の面密度を有するために、適切な枚数の第1繊維層110及び第2繊維層120を含む。本発明の第1の実施例によると、防弾素材100は、10〜32枚(plies)の第1繊維層110及び1枚の第2繊維層120を含む。
【0022】
前面FS側に位置した第1繊維層110は、11g/denier以上の強度及び200g/denier以上の引張弾性率を有する高強度繊維のネットワークを含む。前記高強度繊維は、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)繊維またはアラミド(aramid)繊維であってもよい。
【0023】
本発明の第1の実施例によると、前記高強度繊維のネットワークは、アラミド繊維を経糸及び緯糸として含むアラミド織物(aramid woven fabric)である。前記織物のそれぞれは、150〜500g/m
2の面密度を有する。前記面密度が150g/m
2未満であると、織物に隙間が存在し得るため、防弾性能の低下を引き起こすことがある。一方、前記面密度が500g/m
2を超えるように製織することは、生産効率の低下を引き起こす。
【0024】
一方、アラミド繊維は水分に脆弱であるので、時間が経過するにつれて、その防弾性能が低下するという問題が発生し得る。このような問題点を解決するために、第1繊維層110のアラミド織物は、フルオロカーボン、架橋剤及び硬度−強化樹脂(hardness−enhancing resin)を含む撥水剤でコーティングされていてもよい。
【0025】
フルオロカーボンは、第1繊維層110に撥水性を付与する役割を果たす。フルオロカーボンとして、ヒドロキシル化ペルフルオロアルキルエチルアクリレートコポリマー(hydroxylated perfluoroalkylethyl acrylate copolymer)を使用することができる。
【0026】
一方、苛酷な環境下でまたは長期間使用後には、フルオロカーボンのような撥水剤成分が高強度繊維のネットワークから除去され、それにより、水分による高強度繊維の物性の脆化及び防弾性能の急激な低下がもたらされる。したがって、高強度繊維とフルオロカーボンとの結合を強化させるために、前記撥水剤は、フルオロカーボン以外に架橋剤、例えば、トルエンジイソシアネートまたはメチレンジフェニルジイソシアネートのようなイソシアネート系化合物をさらに含むことができる。
【0027】
また、防弾素材100の後面変形を抑制するために、前記撥水剤は、ポリビニルアセテートのような硬度−強化樹脂(hardness−enhancing resin)をさらに含むことができる。
【0028】
選択的に、前記撥水剤は、気泡除去のための消泡剤(例えば、ジプロピレングリコール)及びエマルジョン安定剤(例えば、リンゴ酸)をさらに含むことができる。この場合、前記撥水剤は、0.5〜10重量%のフルオロカーボン、0.5〜10重量%の硬度−強化樹脂、0.5〜5重量%の架橋剤、0.1〜2重量%の消泡剤、0.1〜2重量%のエマルジョン安定剤、及び73〜98.3重量%の水を含むことができる。
【0029】
フルオロカーボンの含量が0.5重量%未満の場合、所望の撥水性を期待しにくく、その含量が10重量%を超える場合、撥水性の増加は大きくなく、防弾素材100の柔軟性がむしろ低下することがある。
【0030】
硬度−強化樹脂の含量が0.5重量%未満の場合、防弾素材100の後面変形特性の向上がほとんどなく、その含量が10重量%を超える場合、防弾素材100の柔軟性が低下してしまい、それから製造された防弾服の着用感が大きく低下する。
【0031】
架橋剤の含量が0.5重量%未満の場合には、所望の水準の撥水性の維持が難しく、その含量が5重量%を超える場合には、それ以上の効果が得られず、製造コストのみ上昇するという問題がある。
【0032】
前記撥水剤を高強度繊維のネットワーク上に加えるための方法として、パディング、コーティング、浸漬、噴霧、ブラッシング、またはフィルム−コーティングなどの方法を用いることができる。撥水剤が前記ネットワーク上に加えられた後には、120〜200℃で15〜150秒間熱処理工程を行うことができる。
【0033】
選択的に、前記第1繊維層110の高強度繊維のネットワークは、一方向に配列された多数の超高分子量ポリエチレン繊維及び/又はアラミド繊維を含むことができ、前記高強度繊維のネットワークは、ポリウレタン樹脂を含む組成物でコーティングされ得る。それぞれの第1繊維層111,112,113内で高強度繊維は実質的に平行に一方向に配列(unidirectionally oriented)されている。ポリウレタン樹脂を含む組成物で前記第1繊維層111,112,113の高強度繊維がコーティングされることによって、高強度繊維の配列が維持され得る。前記組成物は、スプレー方式を用いて前記高強度繊維に噴射されたり、フィルムの形態で前記高強度繊維に加えられてもよい。互いに隣接する第1繊維層111,112の高強度繊維が約90°の角度をなすように、前記隣接する第1繊維層111,112が交差接合し(cross−plied)得る。交差接合された第1繊維層111,112は、1つの一方向性織物(unidirectional fabric)を形成する。
【0034】
選択的に、前記一方向性織物は、一方向に配列された超高密度ポリエチレン繊維またはアラミド繊維をそれぞれ含む4つの繊維層で構成され得る。この場合、4つの前記繊維層は、それらの高強度繊維の回転角度が0°/90°/0°/90°になるように交差接合し得る。
【0035】
防弾素材100の後面BS側に位置した第2繊維層120は炭素繊維のネットワークを含む。前記炭素繊維のネットワークは、炭素紡績糸(carbon spun yarn)を経糸及び緯糸として含む織物であってもよい。
【0036】
前記第2繊維層120は、110〜480g/m
2の面密度を有する。面密度が110g/m
2未満であると、第2繊維層120に空隙が存在し得るため、防弾性能の低下を引き起こすことがある。一方、前記面密度が480g/m
2を超えるように第2繊維層120が製造される場合、防弾素材100の軽量化を阻害したり、防弾性能の低下(防弾素材の面密度を適正な水準に合わせるために第1繊維層の数を減少させる場合)を招くことがある。
【0037】
防弾素材100が、その前面FSで弾丸による物理的衝撃を受ける場合、防弾素材100の前面FSが局部的に変形し、前記前面FSの変形が防弾素材100の後面BSまで拡散することで、許容安全離隔距離を超える後面変形が発生し得る。防弾素材100の後面変形が深刻な場合、着用者に致命的な損傷を与えることがある。
【0038】
本発明によれば、防弾素材100の後面BS側に位置した第2繊維層120の炭素繊維ネットワークは、衝撃吸収力がほぼゼロに近いため、弾丸の衝突による衝撃を受ける場合、壊れながら衝撃を周囲に分散させ、その結果、防弾素材100の後面変形特性を向上させることができる。また、前記炭素繊維のネットワークは、防弾素材100の後面変形特性の向上のために、従来提案されていたポリプロピレンフィルムなどのごわごわした素材に比べて相対的に柔らかい特性を有するので、ポリプロピレンフィルムに比べてより優れた着用感を防弾服に提供することができる。
【0039】
選択的に、前記炭素繊維のネットワークは、フェノール樹脂及びポリビニルブチラール樹脂を含む組成物でコーティングされ得る。具体的に、前記組成物は、20〜70重量%のフェノール樹脂、20〜70重量%のポリビニルブチラール樹脂、及び1〜10重量%の可塑剤を含むことができる。前記可塑剤は、フタル酸ジオクチル(dioctyl phthalate:DOP)、アジピン酸ジオクチル(dioctyl adipate:DOA)、リン酸トリクレジル(tricresyl phosphate:TCP)、またはフタル酸ジイソノニル(diisononyl phthalate:DINP)であってもよい。前記組成物のフェノール樹脂は、第2繊維層120の硬度をより一層向上させ、前記ポリビニルブチラール樹脂は、第1繊維層113と第2繊維層120との接着力を向上させる。
【0040】
前記炭素繊維のネットワークを前記組成物でコーティングする方法の例としては、前記ネットワークを前記組成物が含まれた溶液に浸漬する方法、及び前記組成物をフィルムの形態で前記炭素繊維のネットワークにラミネートする方法がある。
【0041】
まず、浸漬方法について説明すると、炭素繊維のネットワークを溶媒(例えば、メタノール)で希釈された組成物に10〜60分間ディッピングする。炭素繊維のネットワーク全体が前記組成物で均一に含浸され得るように、前記ディッピング工程を数回繰り返すことができる。次いで、乾燥工程を通じて、前記ディッピング工程による前記希釈溶媒を除去する。選択的に、前記乾燥工程の前に、前記組成物で含浸された炭素繊維のネットワークをスクイーズするステップをさらに行うことができる。前記スクイージング工程は、加圧ローラを用いて連続的に行われるか、または加圧板を用いて非連続的に行われてもよい。
【0042】
ラミネーティング方法について説明すると、前記組成物を用いてポリマーフィルムを形成する。本発明の一実施例によれば、前記炭素繊維のネットワークは、100〜400g/m
2の面密度を有し、前記炭素繊維のネットワークに対する前記組成物の重量比が10〜20%になるようにするための面密度及び厚さを有するように前記ポリマーフィルムが形成される。次いで、炭素繊維のネットワークの一面上に前記ポリマーフィルムをラミネートする。すなわち、前記炭素繊維のネットワークの一面上に前記ポリマーフィルムを載せるステップ、前記ポリマーフィルムが載せられた炭素繊維のネットワークを20〜60°Cで1〜7分間乾燥させるステップ、及び100〜130°Cで前記炭素繊維のネットワーク及び高分子フィルムに圧力を加えるステップを順次行う。前記乾燥工程は、チャンバーなどを用いて連続的に行うことができる。この場合、前記ポリマーフィルムが載せられた炭素繊維のネットワークが、20〜60°Cに維持されるチャンバーを4〜20m/分の速度で通過するようにすることができる。乾燥温度が20°C未満である場合、乾燥が円滑に行われず、一方、前記乾燥温度が60°Cを超える場合、前記ポリマーフィルムの組成物が硬化することによって第1繊維層113との接着力が低下することがある。前記加圧工程は、加熱した加圧ローラを用いて連続的に行われるか、または加圧板を用いて非連続的に行われてもよい。
【0043】
まず、前記組成物がコーティングされた炭素繊維のネットワーク、すなわち、第2繊維層120を1つの第1繊維層113と共に高温及び高圧のプレスを通過させることによって、1つの複合シートを形成する。次いで、この複合シートを残りの第1繊維層111,112と、例えば、ダイヤモンドステッチング方法により互いに結合させる。
【0044】
選択的に、前記コーティング工程及び前記複合シート形成工程が同時に行われてもよい。すなわち、前記ポリマーフィルムを前記炭素繊維のネットワークと第1繊維層113との間に挿入し、これらを、約50°Cに維持されるチャンバーを通過させた後、約160°Cで加熱されたローラを用いて加圧することによって、第1繊維層113と第2繊維層120との複合シートを形成することができる。
【0045】
以下では、
図2を参照して、本発明の第2の実施例に係る防弾素材を説明する。
【0046】
図2に例示されたように、本発明の第2の実施例による防弾素材200は、前面FS側に位置した複数の第1繊維層210、前記第1繊維層210に隣接する第2繊維層220、及び後面BS側に位置した第3繊維層230を含む。すなわち、前記第2繊維層220は、前記第1繊維層210と第3繊維層230との間に位置する。
【0047】
本発明の第2の実施例によれば、前記第1及び第3繊維層210,230は、高強度繊維のネットワークとしてアラミド織物を含む。前記アラミド織物は、フルオロカーボン、架橋剤、及び硬度−強化樹脂を含む撥水剤でコーティングされていてもよく、前記架橋剤はイソシアネート系化合物であり、前記硬度−強化樹脂はポリビニルアセテートである。
【0048】
一方、前記第2繊維層220は炭素繊維のネットワークを含む。前記炭素繊維のネットワークは、炭素紡績糸を経糸及び緯糸として含む織物であり得、フェノール樹脂及びポリビニルブチラール樹脂を含む組成物でコーティングされていてもよい。
【0049】
前記防弾素材200は、防弾服の軽量化の要求を満足させる面密度、例えば、3〜6.8kg/m
2の面密度を有するために、第1〜第3繊維層210,220,230を適切な枚数の組み合わせで含む。
【0050】
前記組成物がコーティングされた炭素繊維のネットワーク、すなわち、第2繊維層220を第3繊維層230と共に高温及び高圧のプレスを通過させることによって、1つの複合シートを形成した後、この複合シートを第1繊維層210と、例えば、ダイヤモンドステッチング方法によって
図2に示された積層順に結合させることができる。
【0051】
選択的に、前記コーティング工程及び前記複合シート形成工程が同時に行われてもよい。すなわち、前記組成物のポリマーフィルムを前記炭素繊維のネットワークと第3繊維層230との間に挿入し、これらを、約50°Cに維持されたチャンバーを通過させた後、約160°Cで加熱されたローラを用いて加圧することによって、第2繊維層220と第3繊維層230との複合シートを形成することができる。
【0052】
以下では、
図3を参照して、本発明の第3の実施例に係る防弾素材を説明する。
【0053】
図3に例示されたように、本発明の第3の実施例による防弾素材300は、前面FS側に位置した複数の第1繊維層310、前記第1繊維層310に隣接する第2繊維層320、後面BS側に位置した第3繊維層330、及び前記第2繊維層320と前記第3繊維層330との間の第4繊維層340を含む。
【0054】
本発明の第3の実施例によれば、前記第1及び第4繊維層310,340は、高強度繊維のネットワークとしてアラミド織物を含む。前記アラミド織物は、フルオロカーボン、架橋剤、及び硬度−強化樹脂を含む撥水剤でコーティングされていてもよく、前記架橋剤はイソシアネート系化合物であり、前記硬度−強化樹脂はポリビニルアセテートである。
【0055】
一方、前記第2及び第3繊維層320,330は炭素繊維のネットワークを含む。前記炭素繊維のネットワークは、炭素紡績糸を経糸及び緯糸として含む織物であり得、フェノール樹脂及びポリビニルブチラール樹脂を含む組成物でコーティングされていてもよい。
【0056】
前記防弾素材300は、防弾服の軽量化の要求を満足させる面密度、例えば、3〜6.8kg/m
2の面密度を有するために、第1〜第4繊維層310,320,330,340を適切な枚数の組み合わせで含む。第1〜第4繊維層310,320,330,340は、ダイヤモンドステッチングなどのような方法によって互いに結合される。
【0057】
第1〜第4繊維層310,320,330,340の積層/結合方法は、上述した第1及び第2の実施例とほぼ同一である。すなわち、1つの第1繊維層313と第2繊維層320との複合シート、及び第3繊維層330と第4繊維層340との複合シートをそれぞれ形成した後、この複合シートを残りの第1繊維層311,312と共に
図3に示された方式で積層した後、ダイヤモンドステッチング方法を用いて互いに結合させることができる。
【0058】
また、前記第2及び第3繊維層320,330をそれぞれ構成する前記炭素繊維ネットワークに対する前記組成物のコーティング工程が、前記複合シートのそれぞれの形成工程と同時に行われてもよい。
【0059】
以下では、
図4を参照して、本発明の第4の実施例に係る防弾素材を説明する。
【0060】
図4に例示されたように、本発明の第4の実施例による防弾素材400は、前面FS側に位置した複数の第1繊維層410、後面BS側に位置した第2繊維層420、前記第1繊維層410と前記第2繊維層420との間に位置した第3及び第4繊維層431,432を含む。
【0061】
本発明の第4の実施例によれば、前記第1繊維層410は、高強度繊維のネットワークとしてアラミド織物を含む。前記アラミド織物は、フルオロカーボン、架橋剤、及び硬度−強化樹脂を含む撥水剤でコーティングされていてもよく、前記架橋剤はイソシアネート系化合物であり、前記硬度−強化樹脂はポリビニルアセテートである。
【0062】
防弾素材400の後面BS側の前記第2繊維層420は炭素繊維のネットワークを含む。前記炭素繊維のネットワークは、炭素紡績糸を経糸及び緯糸として含む織物であり得、フェノール樹脂及びポリビニルブチラール樹脂を含む組成物でコーティングされていてもよい。
【0063】
前記第3及び第4繊維層431,432のそれぞれは、一方向に配列された多数の高強度繊維、例えば、超高分子量ポリエチレン繊維またはアラミド繊維を含む。前記第3及び第4繊維層431,432の高強度繊維は、ポリウレタン樹脂を含む組成物でコーティングされることによって高強度繊維の配列が維持され得る。前記組成物は、スプレー方式を用いて前記高強度繊維に噴射されたり、フィルムの形態で前記高強度繊維に加えられてもよい。互いに隣接する第3及び第4繊維層431,432は、約90°の角度をなすように交差接合されることによって、1つの一方向性織物430を形成する。
【0064】
まず、前記組成物がコーティングされた炭素繊維のネットワーク、すなわち、第2繊維層420を前記一方向性織物430と共に高温及び高圧のプレスを通過させることによって、1つの複合シートを形成する。この複合シートを第1繊維層410と、
図4に示したように積層した後、例えば、ダイヤモンドステッチング方法によって互いに結合させる。
【0065】
選択的に、前記コーティング工程及び前記複合シート形成工程が同時に行われてもよい。すなわち、前記組成物を含むポリマーフィルムを前記炭素繊維のネットワークと一方向性織物430との間に挿入し、これらを、約50°Cに維持されるチャンバーを通過させた後、約160°Cで加熱されたローラを用いて加圧することによって、一方向性織物430と第2繊維層420との複合シートを形成することができる。
【0066】
選択的に、前記複合シートと前記第1繊維層410との間に1つ以上の一方向性織物が含まれてもよい。
【0067】
図示していないが、前記一方向性織物430と第2繊維層420との間に1つの第1繊維層、すなわち、アラミド織物がさらに含まれてもよい。この場合、前記第2繊維層420と前記アラミド織物の複合シートが、上述した方法を用いて先に製造された後、前記第1繊維層410及び一方向性織物430と共にダイヤモンドステッチング方法を用いて互いに結合され得る。
【0068】
第4の実施例による防弾素材400は、前面FS側に位置した複数の第1繊維層410、後面BS側に位置した第2繊維層420、前記第1繊維層410と前記第2繊維層420との間に位置した第3及び第4繊維層431,432を含む。
【0069】
以上で説明したように、本発明の防弾素材100,200,300,400は、後面BS側または後面BSの付近に、炭素繊維のネットワークを含む繊維層を含むことによって、弾丸の衝突による衝撃を周囲に分散させることができ、その結果、防弾素材100,200,300,400の後面変形特性を向上させることができる。
【0070】
また、前記炭素繊維のネットワークは、後面変形特性の向上のために従来提案されていたポリプロピレンフィルムなどのごわごわした素材に比べて相対的に柔らかいので、ポリプロピレンフィルムに比べてより優れた着用感を防弾服に提供することができる。
【0071】
以下、実施例及び比較例を通じて本発明を具体的に説明する。ただし、下記の実施例は、本発明の理解を助けるためのものに過ぎず、本発明の権利範囲が制限されてはならない。
【0074】
840denierの繊度を有するアラミド繊維(コーロンインダストリー株式会社、ヘラクロン(登録商標) HF 100)を経糸及び緯糸として用いて平織を行うことによって、アラミド織物を製造した。前記アラミド織物の経糸密度及び緯糸密度は、それぞれ105本/cmであった。前記織物を、約60°Cで、Na
2CO
3を含む精練剤で処理し、水洗及び乾燥させた。
【0075】
次いで、精練処理された前記織物を撥水剤に浸漬させた。前記撥水剤は、3重量%のヒドロキシル化ペルフルオロアルキルエチルアクリレートコポリマー、3重量%のポリビニルアセテート、3重量%のトルエンジイソシアネート、0.3重量%のジプロピレングリコール、0.3重量%のリンゴ酸、及び90.4重量%の水を含む。撥水剤が含浸された織物を約160°Cで60秒間熱処理することによって、アラミド織物を完成した。前記アラミド織物は200g/m
2の面密度を有する。
【0076】
<炭素紡績糸織物を含む複合シートの製造>
【0078】
400denierの繊度を有する炭素紡績糸を経糸及び緯糸として用いて平織を行うことによって、炭素紡績糸織物を製造した。前記炭素紡績糸織物の経糸密度及び緯糸密度は、それぞれ173本/cmであった。
【0079】
次いで、48重量%のフェノール樹脂、48重量%のポリビニルブチラール樹脂、及び4重量%のフタル酸ジオクチル(dioctyl phthalate:DOP)を含むポリマーフィルムを、前記炭素紡績糸織物と、製造例1で製造したアラミド織物との間に入れた状態で、約50°Cに維持されるチャンバーを通過させた後、約160°Cで加熱されたローラを用いて加圧することによって、炭素紡績糸織物を含む複合シートを完成した。前記炭素紡績糸織物を含む複合シートは、380g/m
2の面密度を有する。
【0081】
前述した製造例2に例示されたものと同様の方法で、160g/m
2の面密度を有する炭素紡績糸織物を製造した。
【0082】
<超高分子量ポリエチレン一方向性織物の製造>
【0084】
1500denierの繊度を有する超高分子量ポリエチレン繊維[ディー・エス・エム(DSM)社、Dyneema(登録商標)]の束を、共通平面上で実質的に一方向に整列した後、接着剤をスプレー方式でコーティングすることによって、第1及び第2繊維層をそれぞれ製造した。次いで、前記第1及び第2繊維層を約90°の角度で交差接合することによって、超高分子量ポリエチレン一方向性織物を完成した。前記超高分子量ポリエチレン一方向性織物は140g/m
2の面密度を有する。
【0087】
製造例1を通じて製造されたアラミド織物30枚、及び製造例2を通じて製造された炭素紡績糸織物を含む複合シート1枚を、
図1に示したように順次積層した後、ダイヤモンドステッチング方法を用いて互いに結合させることによって、防弾素材を完成した。防弾素材全体の面密度は6.38kg/m
2であった。
【0089】
製造例1を通じて製造されたアラミド織物28枚、製造例2を通じて製造された炭素紡績糸織物を含む複合シート2枚を、
図3に示したように順次積層した後、ダイヤモンドステッチング方法を用いて互いに結合させることによって、防弾素材を完成した。防弾素材全体の面密度は6.36kg/m
2であった。
【0091】
製造例1を通じて製造されたアラミド織物26枚、製造例2を通じて製造された炭素紡績糸織物を含む複合シート3枚を順次積層した後、ダイヤモンドステッチング方法を用いて互いに結合させることによって、防弾素材を完成した。防弾素材全体の面密度は6.34kg/m
2であった。
【0093】
製造例1を通じて製造されたアラミド織物23枚、製造例4を通じて製造された超高分子量ポリエチレン一方向性織物10枚、及び製造例2を通じて製造された炭素紡績糸織物を含む複合シート1枚を順次積層した後、ダイヤモンドステッチング方法を用いて互いに結合させることによって、防弾素材を完成した。防弾素材全体の面密度は6.38kg/m
2であった。
【0095】
製造例1を通じて製造されたアラミド織物31枚、及び製造例3を通じて製造された炭素紡績糸織物1枚を順次積層した後、ダイヤモンドステッチング方法を用いて互いに結合させることによって、防弾素材を完成した。防弾素材全体の面密度は6.36kg/m
2であった。
【0098】
製造例1を通じて製造されたアラミド織物32枚のみを積層した後、ダイヤモンドステッチング方法を用いて互いに結合させることによって、防弾素材を完成した。防弾素材全体の面密度は6.4kg/m
2であった。
【0100】
製造例4を通じて製造された超高分子量エチレン一方向性織物36枚のみを積層した後、ダイヤモンドステッチング方法を用いて互いに結合させることによって、防弾素材を完成した。防弾素材全体の面密度は5.04kg/m
2であった。
【0102】
上記の比較例1によって得られた防弾素材の一面上に、100g/m
2の面密度を有するポリプロピレンフィルムを接着させた。
【0103】
前記実施例及び比較例によって製造された防弾素材のそれぞれの防弾性能及び後面変形特性、そして、前記製造例を通じてそれぞれ製造された防弾材の着用感を、次の方法でそれぞれ測定し、その結果を下記の表1及び表2に示す。
【0104】
防弾性能(V50)及び後面変形の測定
【0105】
防弾素材の破片に対する防弾性能の程度を間接的に示す平均速度(V
50)(m/s)は、MIL−P−46593Aで規定された模擬破片弾(fragment simulated projectiles:FSP)を用いて、MIL−STD−662Fで規定されたテスト方法によって測定された。後面変形は、NIJ0101.06バージョンLevel IIIAに適用されている44 MAG.弾丸を用いて測定した。
【0107】
着用感の尺度として、個別防弾材のごわごわした程度(stiffness)を意味する剛軟度を測定した。「Circular bend test」という測定方法がASTM D4032−94に基づいて行われた。