【実施例1】
【0069】
図1は、本実施例1に係るファスナーエレメントを有するスライドファスナーを示す平面図である。
図2及び
図3は、同ファスナーエレメントの斜視図及び平面図である。
図4は、同ファスナーエレメントを中央ランド部の噛合頭部側からテープ幅方向に見たときの模式図であり、
図5は、同ファスナーエレメントを中央ランド部の脚側からテープ幅方向に見たときの模式図である。
【0070】
なお、以下の説明では、ファスナーテープのテープ長さ方向を前後方向と規定し、特に、スライドファスナーを閉じるときにスライダーを摺動させる方向を前方とし、スライドファスナーを開くときにスライダーを摺動させる方向を後方とする。また、ファスナーテープのテープ幅方向を左右方向と規定する。更に、ファスナーテープのテープ表裏方向を上下方向と規定し、ファスナーテープに対してスライダーの引手が配される側を上方、その反対の側を下方とする。
【0071】
更に、ファスナーエレメントに関しては、本発明の特徴を判り易く説明するために、テープ長さ方向をエレメント幅方向と記載し、また、テープ幅方向をエレメント長さ方向と記載し、テープ表裏方向をエレメント厚さ方向と記載する。
【0072】
本実施例1におけるスライドファスナー1は、
図1に示したように、左右のファスナーテープ11の対向するテープ側縁部に沿ってエレメント列12が形成された左右一対のファスナーストリンガー10と、各ファスナーストリンガー10の前端部にエレメント列12に隣接して配された第1止具5(上止具とも言う)と、一対のファスナーストリンガー10の後端部に配された開離嵌挿具6と、エレメント列12に沿って摺動可能に配されたスライダー30とを有する。
【0073】
なお、本実施例1のスライドファスナー1は、エレメント列12を形成する各ファスナーエレメント20の形状に主要な特徴を有するものであり、ファスナーテープ11、第1止具5、開離嵌挿具6、及びスライダー30については、従来の合成樹脂製のファスナーエレメントを有する一般的なスライドファスナーと実質的に同様のものを使用している。
【0074】
例えば、本実施例1の開離嵌挿具6は、左側のファスナーストリンガー10の後端部に配される蝶棒7と、右側のファスナーストリンガー10の後端部に配される箱棒8と、箱棒8の後端部に一体成形された箱体9とを有しており、右挿し用の開離嵌挿具6として形成されている。
【0075】
なお、本発明では、例えば蝶棒7と箱棒8及び箱体9との位置関係を、本実施例1とは左右方向に反対にして、右側のファスナーストリンガー10に蝶棒7を取着するとともに、左側のファスナーストリンガー10に箱棒8及び箱体9を取着することによって、左挿し用の開離嵌挿具6を形成することも可能である。
【0076】
本実施例1のスライダー30は、スライダー胴体31と、一端部に取付軸部を備える引手32とを有しており、引手32は、スライダー胴体31に取付軸部を中心に回動可能に保持されている。スライダー胴体31は、上翼板33及び下翼板34と、上翼板33及び下翼板34の前端部間を連結する案内柱35と、上翼板33の左右側縁部に垂設された上フランジ部36と、上翼板33の左右側縁部に立設された下フランジ部37と、上翼板33の上面に設けられた引手取付柱38と有する。
【0077】
スライダー胴体31の前端には、案内柱35を間に挟んで左右の肩口が形成され、スライダー胴体31の後端には後口が形成されている。また、上翼板33及び下翼板34間には、左右の肩口と後口とを連通する略Y字形状のエレメント案内路が形成されている。
【0078】
更に、スライダー胴体31の左右側部に配された上フランジ部36と下フランジ部37との間には、ファスナーテープ11を挿通させることが可能なテープ挿通間隙が形成されている。この場合、上フランジ部36における内側面と外側面間の幅寸法t1と、下フランジ部37における内側面と外側面間の幅寸法t2とは、同じ大きさに設定されている。
【0079】
本実施例1の各ファスナーストリンガー10において、ファスナーテープ11はテープ長さ方向に長い細帯状に織製又は編成されている。各ファスナーテープ11は、ファスナー被着製品(衣類や鞄類など)に縫い付けられるテープ主体部と、エレメント列12が形成されるテープ側縁部(エレメント取付部とも言う)とを有している。
【0080】
また、左右のファスナーテープ11の互いに対向するテープ側縁には芯紐部11aが配されている。各エレメント列12は、ファスナーテープ11の芯紐部11aを含むテープ側縁部に、合成樹脂製の複数のファスナーエレメント20がテープ長さ方向に一定の間隔をもって固着されていることによって形成されている。
【0081】
この場合、ファスナーエレメント20、第1止具5、及び開離嵌挿具6は、例えばナイロン、ポリアセタール、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂、あるいは、このような熱可塑性樹脂にガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維などの強化繊維を含有させた複合材料をファスナーテープ11に射出成形することにより形成されている。
【0082】
上述のような熱可塑性樹脂を用いて形成されたファスナーエレメント20は、従来の片面金属エレメント(金属製の片面ファスナーエレメント)に比べて大幅に軽量化される。特に本実施例1のファスナーエレメント20は、ナイロンにガラス繊維が混練された材料をファスナーテープ11に射出成形することにより形成されており、それによって、ファスナーエレメント20の剛性が高められている。
【0083】
また、本実施例1では、ファスナーエレメント20の後述する膨出端面24(台形状のベース端面24a及び先細形状の突出端面24b)に、転写印刷等により、金属箔を転写することにより、ファスナーエレメント20における片面金属エレメントのような形状を有する膨出端面24に、金属光沢を与えることも可能である。
【0084】
本実施例1の各ファスナーエレメント20は、エレメント厚さ方向の中央部に配される中央ランド部21と、中央ランド部21から上側に膨出する第1膨出部(表面側膨出部)22と、中央ランド部21から下側に膨出する第2膨出部(裏面側膨出部)23とを有しており、第1膨出部22と第2膨出部23とは、ファスナーテープ11のテープ厚さ方向の中央に位置する基準面を中心にして、互いに表裏対称的に形成されている。
【0085】
この場合、ファスナーエレメント20の第1膨出部22が、スライドファスナー1において外部に露呈する露呈面側となる。また、ファスナーエレメント20における第1膨出部22の上面(後述する膨出端面24)から第2膨出部23の下面(後述する膨出端面24)までのテープ表裏方向におけるエレメント厚さ寸法は、スライダー30の上下翼板33,34間の間隔の大きさに対応して、所定の大きさに設定されている。
【0086】
本実施例1の中央ランド部21は、ファスナーテープ11のテープ側縁部に固着される胴部21aと、胴部21aからテープ外方に向けてテープ幅方向(エレメント長さ方向)に延出する首部21bと、首部21bから更にテープ幅方向に延出する噛合頭部21cと、首部21bからテープ長さ方向(エレメント幅方向)に突出する前後一対の肩部21dと、噛合頭部21cの先端部に凹設される凹溝部21eとを有する。
【0087】
中央ランド部21の胴部21aは、ファスナーテープ11のテープ表面とテープ裏面とに跨って固着されている。この場合、胴部21aがファスナーテープ11に固着している部分の面積は、ファスナーテープ11との固着強度を確保するために、例えば従来の一般的な合成樹脂製のファスナーエレメントがファスナーテープに固着している部分の面積と略同じ大きさを有する。
【0088】
なお、中央ランド部21の胴部21aにおいて、ファスナーテープ11との固着強度が十分に得られる場合には、例えば胴部21aにおけるエレメント幅寸法を、従来のエレメント幅寸法よりも小さく設定することも可能である。また、必要に応じて、胴部21aにおけるエレメントの幅寸法を、従来のエレメント幅寸法よりも大きく設定することも可能である。
【0089】
中央ランド部21の首部21bは、ファスナーテープ11のテープ側縁からテープ外方に延出するとともに、噛合相手方のファスナーエレメント20の噛合頭部21cを嵌着可能なように、エレメント幅方向の寸法が、噛合頭部21c及び胴部21aよりも小さくなるように括れた形状を有する。
【0090】
中央ランド部21の肩部21dは、首部21bにおけるエレメント厚さ方向の中央部から、エレメント幅方向に沿って前後に向けて延出している。これらの肩部21dは、当該中央ランド部21の首部21bに、噛合相手方のファスナーエレメント20の噛合頭部21cが嵌着した際に、その噛合相手方の噛合頭部21cに形成された凹溝部21eに嵌入可能に形成されている。
【0091】
中央ランド部21の噛合頭部21cは、首部21bから更にテープ外方に延出するとともに、エレメント幅方向に膨らむ楕円形状に形成されている。この噛合頭部21cの先端部には、凹溝部21eが、噛合相手方のファスナーエレメント20の肩部21dを嵌入することが可能な大きさをもって、エレメント幅方向(テープ長さ方向)に沿って形成されている。
【0092】
中央ランド部21が上述のような形態を有することにより、スライダー30を摺動させてスライドファスナー1を開閉する際に、左右のファスナーエレメント20を円滑に噛合・分離させることができ、また、左右のファスナーエレメント20を噛合させたときに、スライドファスナー1の使用に耐え得る十分な噛合強度が安定して得られる。
【0093】
また、このような中央ランド部21は、エレメント幅方向の中央に位置する基準面を中心に前後に対称的に形成されているため、見栄えが良く、外観品質に優れているとともに、スライダー30の摺動による左右のファスナーエレメント20の噛合動作や分離動作を滑らかに行うことができ、スライダー30の摺動性も良好である。
【0094】
更に例えば第1スライダー(正スライダー)と第2スライダー(逆スライダー)の2つのスライダーを、それぞれの後口が互いに対向するようにエレメント列12に取り付けてスライドファスナーを形成する場合においては、従来の片面金属エレメントを有するスライドファスナーで問題とされていた2つのスライダー間でスライダーの操作性に差異が生じるという不具合が発生することもない。
【0095】
本実施例1のファスナーエレメント20における第1膨出部22と第2膨出部23とは、上述したように、ファスナーテープ11のテープ厚さ方向の中央に位置する基準面を中心にして、互いに表裏対称的に形成されている。従って、ここでは、第1膨出部22について詳細に説明し、第2膨出部23についての詳細な説明は省略することとする。
【0096】
本実施例1の第1膨出部22は、ファスナーエレメント20の第1意匠部として、中央ランド部21に一体的に形成されているとともに、中央ランド部21から上方に向けて膨出する立体的な形状を有する。また、この第1膨出部22は、上方に向いた上面となる膨出端面24と、エレメント幅方向に向いた前方側壁面25及び後方側壁面26と、噛合相手側に向いた先端面27と、ファスナーテープ11のテープ内方側に向いた基端面28とを有する。また、これらの各面24〜28は稜線部を介して区画されている。
【0097】
ここで、第1膨出部22の膨出端面24とは、ファスナーテープ11のテープ表面に対する傾斜角度(内角側の傾斜角度)が45°以下となる端面を言う。このようにテープ表面に対して45°以下の傾斜角度で膨出端面24が形成されることにより、ファスナーエレメント20を上面側から見たときに(
図3を参照)、膨出端面24の形状や輪郭をよりはっきりと見せることができる。また、例えば上述したようにファスナーエレメント20の膨出端面24に転写印刷によって金属箔を転写する際に、箔転写をきれいに安定して行うことができる。
【0098】
第1膨出部22の膨出端面24は、ファスナーエレメント20を上面側から見たときに、エレメント長さ方向に長い台形を呈するベース端面24aと、そのベース端面24aの噛合頭部21c側の端部から前方に向けて先細の三角形状に突出する突出端面24bとを備える。このような形状を膨出端面24が備えることにより、合成樹脂製のファスナーエレメント20をファスナーテープ11のテープ表裏方向側から見たときに、第1膨出部22及び第2膨出部23が片面金属エレメントに近い外観を表すことができる。
【0099】
特に本実施例1において、台形状のベース端面24aは、噛合頭部21c側の先端縁を上底41とし、脚部側の基端縁を下底42とし、前後一対の側縁を一対の側辺(脚)43とするとともに、下底42が上底41より長く形成された等脚台形の形状を有する。
【0100】
なお本発明のファスナーエレメント20において、膨出端面24のベース端面24aは、テープ表裏方向から見たときに、直線又は曲線からなる四つの辺が4つの頂点で結ばれた四辺形の形状を呈していればよく、上述のようなエレメント長さ方向に長い台形の形状の代わりに、例えばエレメント長さ方向に長い長方形の形状を呈するものでも良い。
【0101】
この場合、ベース端面24aにおける下底42の長さは、上底41よりも長く設定される。更に、同じファスナーテープ11上にてテープ長さ方向で互いに隣接するファスナーエレメント20のベース端面24aにおける基端部(下底側端部)間の間隔dは、スライダー30の上述した上フランジ部36の幅寸法t1よりも大きくなるように設定されている。なお、第2膨出部23の場合においても、ファスナーエレメント20における間隔dは、スライダー30の下フランジ部37の幅寸法t2よりも大きくなるように設定されている。
【0102】
このようにベース端面24aにおける下底42の長さを長くして、ファスナーエレメント20間の上記間隔dを小さくすることにより、例えばスライドファスナー1に強い横引き力が加えられた状態でスライダー30を前方(閉鎖方向)に摺動させても、スライダー30の上下フランジ部36,37がファスナーエレメント20間に入り込んで停止することを防止できる。
【0103】
更にこの場合、本実施例1におけるベース端面24aは、下底42が、上底41の長さの1.2倍以下の長さに設定されているとともに、前後一対の側辺43が、内側に向けて凹状に湾曲する曲線状に形成されている。
【0104】
これにより、上述したようにスライダー30がファスナーエレメント20間に入り込むことを防止するためにベース端面24aを台形状に形成しても、そのベース端面24aの形状を長方形に近付けるとともに、より細長く見せることができる。また実際に、本実施例1のベース端面24aは、エレメント幅方向において、中央ランド部21の首部21bよりも内側の領域のみに配されるように細長く形成されている。
【0105】
それによって、テープ表裏方向側から見るファスナーエレメント20の外観を、より片面金属エレメントの外観に近付けることができる。またこの場合、ベース端面24aにおける上底41の長さもある適度長く形成されるため、第1及び第2膨出部22,23の上底41側の端部の強度も適切に確保される。なお本発明では、ベース端面24aにおける前後一対の側辺43は、上述のような曲線ではなく、直線に形成されていても良い。
【0106】
また、上述したように、台形状のベース端面24aが中央ランド部21の首部21bよりも内側の領域のみに配されおり、ベース端面24aにおけるエレメント幅方向の寸法の最大値が、中央ランド部21の首部21bにおけるエレメント幅方向の寸法の最小値よりも小さく設定されている。
【0107】
これにより、ファスナーエレメント20を上方から見た上面視において(
図3を参照)、台形状に形成されたベース端面24aの前後一対の側辺43が、中央ランド部21の前後側面の位置からエレメント幅方向の内側に入り込んだ位置に配される。つまり、ベース端面24aの前後側辺43の位置と中央ランド部21の前後側面(特に、中央ランド部21の脚部及び噛合頭部21cにおける前後側面)の位置とが互いに離れた状態となる。
【0108】
このように上面視にてベース端面24aの前後側辺43と中央ランド部21の前後側面とが離れて設けられることにより、第1膨出部22における前方及び後方側壁面25,26を、膨出端面24から中央ランド部21の側面に向けて、斜めに下り傾斜させることができる。それにより、これらの前後一対の側壁面25,26に、ファスナーエレメント20の射出成形における抜き勾配を安定して設けることができ、成形時の離型を円滑に行うことが可能となる。
【0109】
また、台形状のベース端面24aは、
図7に示すように、その下底42(基端縁)からテープ幅方向の上底41(先端縁)側に向けて上り傾斜するように凸状に湾曲する基端側湾曲面45と、その湾曲面45から連続して形成され、ファスナーテープ11のテープ表面に略平行な又は僅かに凸状に湾曲する主ベース端面46と、その主ベース端面46から連続して形成され、テープ幅方向の上底41(先端縁)に向けてエレメント厚さ寸法を漸減させるように平面状に下り傾斜する下り傾斜面47とを有する。
【0110】
この場合、ベース端面24aにおける基端側湾曲面45、主ベース端面46、及び下り傾斜面47は、それぞれ、ファスナーテープ11のテープ長さ方向に対しては平行に形成されている。また、ベース端面24aの下り傾斜面47におけるファスナーテープ11のテープ面に対する傾斜角度は、5°以上30°以下に設定される。
【0111】
本実施例1のベース端面24aが上述のような下り傾斜面47を有することにより、後述するように、スライドファスナー1が突き上げ力等を受けてスライドファスナー1の一部がテープ表裏方向に局部的に強く折り曲げられても、当該ベース端面24aを有するファスナーエレメント20と、その噛合相手方のファスナーエレメント20とをぶつかり難くすることができ、また、ファスナーエレメント20同士がぶつかったとしても、ファスナーエレメント20の噛合状態が外れる方向の力を働きに難くすることができる。このため、チェーン割れの発生を効果的に防止することができる。
【0112】
また、ベース端面24aにおける噛合頭部21c側の先端部が上述のように下り傾斜していることにより、例えばスライダー30を閉鎖方向に摺動させるときにスライドファスナー1が横引き力等受けた場合でも、ファスナーエレメント20がスライダー30に引っ掛かってスライダー30の摺動を阻害することを防止できる。それにより、スライダー30の良好な摺動性を安定して維持することができる。
【0113】
第1膨出部22における突出端面24bは、ベース端面24aの前後一対の側縁のうち、前方側の側縁の一部のみから前方に向けて突出し、噛合頭部21c上の領域に形成されている。また、突出端面24bは、前方に向けてエレメント長さ方向の寸法が徐々に減少するような先細りとなる形状をもって突出している。すなわち、突出端面24bは、テープ表裏方向側から当該突出端面24bを見たときに、噛合頭部21cから首部21bにかけての側縁形状に対応するような略三角形の形状を呈する。なお、本発明において、第1膨出部22は、例えば突出端面24bをベース端面24aの後方側の側縁の一部のみから後方に向けて突出させて形成されていても良い。
【0114】
この場合、三角形状の突出端面24bにおいて、当該突出端面24bにおけるテープ幅方向に延びる一番長い辺は、台形状のベース端面24aの側辺43と重なる。また、当該突出端面24bにおいてベース端面24aから前方へ斜めに延びる2つの辺のうちのエレメント先端側の辺は、台形状のベース端面24aの上底41に連続するように形成されている。
【0115】
この突出端面24bは、
図6に示したように、テープ長さ方向に平行な台形状のベース端面24aに対して、ベース端面24aから稜線部を介して、前方に向けてエレメント厚さ寸法を漸減させるように下り傾斜する平坦な傾斜面に形成されている。この場合、突出端面24bは、ベース端面24a又はファスナーテープ11のテープ表面に対して傾斜している。その突出端面24bにおけるファスナーテープ11のテープ表面に対する傾斜角度(内角側の傾斜角度)は、45°以下に、特に20°以上45°以下に設定されていることが好ましい。特に本実施例1において、突出端面24bは、ファスナーテープ11のテープ表面に対する傾斜角度が40°となるようにベース端面24aからテープ長さ方向の前方に向けて下り傾斜している。
【0116】
本実施例1の突出端面24bが、上述のようにベース端面24a又はファスナーテープ11のテープ表面に対して傾斜していることにより、後述するようにスライドファスナー1の一部がテープ表裏方向に局部的に強く折り曲げられても、後述するように、ファスナーエレメントが傾いた異常な姿勢のまま保持されることやチェーン割れの発生をより効果的に防止することができる。
【0117】
また、突出端面24bが、凹面ではなく、平面に形成されていることにより、ファスナーエレメント20を上方側から見たときに、第1膨出部22における三角形状の突出端面24bを、台形状のベース端面24aと同様に見え易く形成でき、また、突出端面24bで光をテープ表裏方向側に反射させ易くなる。このため、ベース端面24aと突出端面24bとからなる膨出端面24の形状を、片面金属エレメントのようにきれいに見せることができる。
【0118】
第1膨出部22における前方側壁面25及び後方側壁面26は、テープ長さ方向に面するように、膨出端面24から中央ランド部21の側面にかけて配されており、膨出端面24の境界部と中央ランド部21の境界部とにはそれぞれ稜線部が形成されている。
【0119】
特にこの場合、前方側壁面25は、三角形状の突出端面24bの側縁と、台形状のベース端面24aの前方側辺43のうちの突出端面24bが接続する先端部を除く部分とから中央ランド部21に向けて、前方へ下り傾斜するように形成されている。
【0120】
後方側壁面26は、台形状のベース端面24aの後方側辺43から中央ランド部21に向けて、後方へ下り傾斜するように形成されている。このような前方及び後方側壁面25,26の下り傾斜面(テーパー面)は、ファスナーテープ11のテープ表面に対する傾斜角度を45°よりも大きくして形成されており、上述のようにファスナーエレメント20の射出成形時の抜き勾配として機能する。
【0121】
また、第1膨出部22の前方側壁面25及び後方側壁面26は、ファスナーエレメント20の内方へ窪むように凹状に湾曲した湾曲面(凹面)を有する。このように第1膨出部22の前方側壁面25及び後方側壁面26が凹面状に形成されていることにより、第1膨出部22を上面側から見たときに、前方側壁面25及び後方側壁面26が見え難くなる。
【0122】
その上、前方側壁面25及び後方側壁面26に配された凹面により光の反射向きが変えられて、第1膨出部22の前方側壁面25及び後方側壁面26にて光がエレメント上方側に向けて散乱し難くなる。その結果、第1膨出部22の前方側壁面25及び後方側壁面26が影のようになって膨出端面24よりも暗く見えるようになる。
【0123】
このため、本実施例1のファスナーエレメント20では、第1膨出部22の膨出端面24における台形状のベース端面24aが、前方側壁面25及び後方側壁面26とのコントラストによって、明るく、且つ細長く見えるようになる。また、突出端面24bの傾斜角度を、ベース端面24aの先端部において突出端面24bとは反対側の後方側壁面26の傾斜角度よりも小さくすることで、突出端面24bを見え易くすることができる。更に、前述の突出端面24bとは反対側の後方側壁面26を凹面状にして暗く見せることによって、突出端面24bの存在をよりはっきりと視認させて際立たせることが可能となる。それにより、第1膨出部22の膨出端面24を、より効果的に片面金属エレメントのように見せることができる。
【0124】
なお、本実施例1では、中央ランド部21の首部21bがエレメント幅方向に細く括れた形状を有しており、上面視におけるベース端面24aの前後側辺43の位置と首部21bの前方及び後方側面の位置とが近づいて配されている。また、三角形状の突出端面24bが、ベース端面24aから噛合頭部21cの前方側面の近くまで前方に突出し、上面視における突出端面24bの突出先端縁の位置と噛合頭部21cの前方側面の位置とが近づいて配されている。このため、そのような狭い前方側壁部、後方側壁部、及び、突出端面24bの側壁部の各壁面は、曲率の小さい凹状湾曲面若しくは平面に近い凹状湾曲面に、又は、ファスナーテープ11のテープ表面に対する傾斜角度が90°に近い平面に形成されることもある。
【0125】
本実施例1のファスナーエレメント20における第2膨出部23は、上述したように、第1膨出部22に対して、ファスナーテープ11のテープ厚さ方向の中央に位置する基準面を中心にして、表裏対称的な形態を有する。このように第1膨出部22と第2膨出部23とがファスナーテープ11を基準にして面対称に形成されることにより、ファスナーエレメント20の第2膨出部23が、外部に露呈する露呈面側となるようにスライドファスナー1を構成することも可能となる。
【0126】
本実施例1のスライドファスナー1では、合成樹脂製のファスナーエレメント20が、上述のように、台形状のベース端面24aと三角形状の突出端面24bとから形成される膨出端面24を有するため、ファスナーエレメント20をテープ表裏方向側から見たときに、従来の片面金属エレメントに近い外観を呈するようになる。
【0127】
従って、本実施例1のスライドファスナー1は、各ファスナーエレメント20がテープ幅方向に細長い片面金属エレメントのようなスタイリッシュな印象やお洒落な印象を与えることができるため、外観品質や意匠性に優れているとともに、片面金属エレメントを有する従来のスライドファスナーよりも軽量化されている。
【0128】
また、各ファスナーエレメント20が片面金属エレメントのようなテープ幅方向に細長い外観を有していても、各ベース端面24aが台形状に形成されていることにより、テープ長さ方向に隣接するファスナーエレメント20のベース端面24aにおける基端部間の間隔dの大きさを小さくすることができる(
図9を参照)。このため、例えばスライドファスナー1に強い横引き力が加えられた状態でスライダー30を閉鎖方向に摺動させても、スライダー30のフランジ部がファスナーエレメント20間に入り込むことを防止し、スライダー30の円滑な摺動を安定して確保することができる。
【0129】
更に、本実施例1のスライドファスナー1では、上述のように、各ファスナーエレメント20の第1膨出部22及び第2膨出部23におけるベース端面24aのうちの少なくとも噛合頭部21c上には、上底41に向けて下り傾斜する下り傾斜面47を有するとともに、第1膨出部22及び第2膨出部23における突出端面24bが、ベース端面24aから前方に向けて下り傾斜して形成されている。
【0130】
これにより、例えば
図10に示したように、左右のファスナーテープ11に固着された各ファスナーエレメント20が互いに噛合した状態において、各ファスナーエレメント20の第1及び第2膨出部22,23における先端部のファスナーテープ11からの高さ位置を、噛合相手側のファスナーエレメント20’の第1及び第2膨出部22,23における首部21bに対応する部分の高さ位置よりも低くできる。なお、
図10及び
図11においては、ファスナーエレメント20の噛み合わせについて、判り易くする説明するために、左右のファスナーエレメント20のうちの一方のファスナーエレメントを符号「20」で表し、他方の噛合相手となるファスナーエレメントを符号「20’」で表すこととする。
【0131】
また、ファスナーエレメント20の第1及び第2膨出部22,23における突出端面24bと、噛合相手側のファスナーエレメント20’の第1及び第2膨出部22,23における対向する後方側壁面26との間の間隔を、ファスナーテープ11から離れるにつれて広くすることができる。またこの場合、第1及び第2膨出部22,23における突出端面24bと、第1及び第2膨出部22,23における前方側壁面25とが形成する角度θを大きく確保することができる。
【0132】
その結果、本実施例1のスライドファスナー1が、例えば
図10に示したように、左右のファスナーエレメント20,20’が噛合している状態で突き上げ力等を受けてファスナーエレメント20,20’の第2膨出部23同士を接近する方向に小さな曲率半径まで局部的に折り曲げられたときに、チェーン割れ等の不具合を生じ難くすることができる。このような効果について、以下に具体的に説明する。
【0133】
ここで、例えば第1膨出部22及び第2膨出部23におけるベース端面24aの先端部に下り傾斜面47が設けられてなく、且つ、突出端面24bがベース端面24aからベース端面24aと平行に突出している場合について想定してみる(このとき、第1及び第2膨出部22,23における突出端面24bと、第1及び第2膨出部22,23における前方側壁面25とが形成する角度θは、本実施例1の場合よりも小さくなる)。
【0134】
この場合、スライドファスナー1が突き上げ力等を受けて左右のファスナーエレメント20,20’の第2膨出部23同士を接近する方向に局部的に折り曲げられるときに、スライドファスナー1が
図11に示したような小さな曲率半径まで折り曲げられる前に、ファスナーエレメント20の第2膨出部23と噛合相手側のファスナーエレメント20’の第2膨出部23とがぶつかって互いに干渉する。その後、スライドファスナー1が
図11に示したような小さな曲率半径まで折り曲げられる際に、ファスナーエレメント20,20’同士の干渉した部分が支点となって、左右のファスナーエレメント20,20’(特に中央ランド部21)が互いに離れる方向に回動し、ファスナーエレメント20,20’の姿勢がテープ表裏方向やテープ長さ方向に傾くことがある。その結果、例えばファスナーエレメント20’が傾いた異常な姿勢のまま噛合相手方のファスナーエレメント20間に挟まって元の正常な姿勢に戻らなくなり、スライダー30の摺動を阻害するという問題や、最悪の場合には、左右のファスナーエレメント20,20’の中央ランド部21の噛合が外れてしまい、チェーン割れが生じるという問題があった。
【0135】
これに対して、本実施例1のスライドファスナー1では、ベース端面24aの先端部の下り傾斜と突出端面24bの下り傾斜とが設けられていることにより、ファスナーエレメント20の第2膨出部23の先端部におけるファスナーテープ11からの高さ位置を低くできるとともに、第2膨出部23における突出端面24bと噛合相手側のファスナーエレメント20’との間の間隔を上述したように広く確保できる。また同時に、第1及び第2膨出部22,23における突出端面24bと、第1及び第2膨出部22,23における前方側壁面25とが形成する角度θを大きくすることができる。
【0136】
それにより、スライドファスナー1が局部的に小さな曲率半径まで折り曲げられるときに、ファスナーエレメント20の第2膨出部23と噛合相手側のファスナーエレメント20’の第2膨出部23とをぶつかり難くすることができる。更に、
図11に示したように、ファスナーエレメント20の第2膨出部23と噛合相手側のファスナーエレメント20’の第2膨出部23とがぶつかったとしても、ファスナーエレメント20の第2膨出部23が噛合相手側のファスナーエレメント20’を噛合状態が外れる方向に押圧する力を働きに難くして、ファスナーエレメント20’の姿勢が大きく傾くことを抑制できる。
【0137】
これによって、ファスナーエレメント20’が上述のように異常な姿勢で保持されることを防いで左右のファスナーエレメント20,20’の噛合状態を安定して維持できるとともに、チェーン割れが発生することも効果的に防止することができる。従って、本実施例1のスライドファスナー1は、チェーン割れが生じ難く、ファスナー機能を安定して維持することが可能な高品質のスライドファスナー1となる。
【0138】
なお、本実施例1のファスナーエレメント20における第1膨出部22と第2膨出部23とは、上述したように、ファスナーテープ11のテープ厚さ方向の中央に位置する基準面を中心にして、互いに表裏対称的に形成されている。しかし、本発明のファスナーエレメントはこれに限定されず、例えば
図12に実施例1の変形例に係るファスナーエレメント20aを示すように、第1及び第2膨出部22,23aにおける各膨出端面24が、四辺形状のベース端面24aと三角形状の突出端面24bとをそれぞれ備えていれば、第1膨出部22と第2膨出部23aとがテープ表裏方向で非対称的に形成されていても良い。
【0139】
この変形例に係るファスナーエレメント20aでは、第2膨出部23aが、前述の実施例1に係るファスナーエレメント20の第2膨出部23に対し、エレメント幅方向(テープ長さ方向)の中央に位置するエレメント幅方向に沿った基準面を中心に、前後に反対向きの形態を有して形成されている。この場合、変形例に係るファスナーエレメント20aの中央ランド部21及び第1膨出部22は、前述の実施例1に係るファスナーエレメント20の中央ランド部21及び第1膨出部22と同様に形成されている。
【0140】
すなわち、変形例における第2膨出部23aは、第1膨出部22に対して、ファスナーテープ11のテープ厚さ方向の中央に位置する基準面を中心にして、上下方向(テープ表裏方向)に対称的に形成されていると同時に、テープ長さ方向の中央に位置する基準面を中心にして、前後方向(テープ長さ方向)に対称的に形成されている。
【0141】
このような変形例に係る形態を有する複数のファスナーエレメント20aがファスナーテープ11のテープ側縁部に固着されたスライドファスナーであっても、前述の実施例1に係るスライドファスナー1と同様の効果を得ることができる。
【実施例2】
【0142】
図13は、本実施例2に係るファスナーエレメントを示す斜視図であり、
図14は、同ファスナーエレメントの底面図である。
図15は、同ファスナーエレメントを中央ランド部の噛合頭部側からテープ幅方向に見たときの模式図であり、
図16は、同ファスナーエレメントを中央ランド部の脚側からテープ幅方向に見たときの模式図である。
【0143】
なお、以下に説明する本実施例2に係るスライドファスナーは、ファスナーエレメント50に主要な特徴を有するものであり、ファスナーエレメント50以外の部品又は部材は、前述の実施例1に係るスライドファスナー1と実質的に同じ構成を有する。従って、本実施例2では、ファスナーエレメント50の構成について主に説明することとし、ファスナーエレメント50以外の部品又は部材についての詳しい説明については省略することとする。
【0144】
本実施例2におけるスライドファスナーは、左右のファスナーテープ11の対向するテープ側縁部に沿ってエレメント列が形成された左右一対のファスナーストリンガーと、各ファスナーストリンガーの前端部にエレメント列に隣接して配された第1止具と、一対のファスナーストリンガーの後端部に配された開離嵌挿具と、エレメント列に沿って摺動可能に配されたスライダーとを有する。
【0145】
本実施例2の各ファスナーエレメント50は、エレメント厚さ方向の中央部に配される中央ランド部51と、中央ランド部51から上側に膨出する第1膨出部(表面側膨出部)52と、中央ランド部51から下側に膨出する第2膨出部(裏面側膨出部)53とを有する。
【0146】
本実施例2の第1膨出部52及び第2膨出部53自体は、前述の実施例1における第1膨出部22及び第2膨出部23とそれぞれ同じ形態を有しており、膨出端面54における先細形状(三角形状)の突出端面54bが台形状のベース端面54aから前方に向けて突出している。
【0147】
しかし、本実施例2の中央ランド部51では、後述する第1半部61と第2半部62とが、互いにテープ長さ方向(エレメント幅方向)に位置をずらして形成されているため、その中央ランド部51の第1半部61から膨出する第1膨出部52と、中央ランド部51の第2半部62から膨出する第2膨出部53とも、互いにテープ長さ方向(エレメント幅方向)にずらされた位置に配されている。
【0148】
本実施例2の中央ランド部51は、ファスナーテープ11のテープ厚さ方向の中央に位置する基準面よりもテープ表面側に配される第1半部61と、その基準面よりもテープ裏面側に配される第2半部62とを有する。この場合、中央ランド部51は、ファスナーテープ11のテープ表面とテープ裏面とに跨って固着されているものの、第1半部61と第2半部62とは、互いにテープ長さ方向(エレメント幅方向)に位置をずらして配されている。
【0149】
中央ランド部51の第1半部61は、ファスナーテープ11のテープ側縁部に固着される胴部61aと、胴部61aからテープ外方に向けてテープ幅方向に延出する首部61bと、首部61bから更にテープ幅方向に延出する噛合頭部61cとを有しており、例えば前述の実施例1における首部21bから突出する肩部21dや噛合頭部21cの先端部に凹設される凹溝部21eは設けられていない。
【0150】
また、中央ランド部51の第2半部62も、第1半部61と同様に、ファスナーテープ11のテープ側縁部に固着される胴部62aと、胴部62aからテープ外方に向けてテープ幅方向に延出する首部62bと、首部62bから更にテープ幅方向に延出する噛合頭部62cとを有するものの、前述の実施例1における肩部21dや凹溝部21eは設けられていない。
【0151】
このような形態の第1及び第2半部61,62を有する中央ランド部51は、第1及び第2半部61,62に噛合頭部61c,62cと首部61b,62bとがそれぞれ設けられているため、スライダーを摺動させてスライドファスナーを開閉する際に、左右のファスナーエレメント50を円滑に噛合・分離させることができ、また、テープ幅方向に加えられる横引き力に対して、使用に耐え得る十分な強度(横引き強度)を安定して確保することができる。
【0152】
更に、本実施例2の中央ランド部51には,前述の実施例1のような肩部21dや凹溝部21eが形成されていないものの、第1半部61の位置と第2半部62の位置とテープ長さ方向にずらされていることにより、左右のファスナーエレメント50を噛み合わせたときに、各ファスナーエレメント50の第1半部61(又は第2半部62)の一部と、噛合相手方のファスナーエレメント50の第2半部62(又は第1半部61)の一部とがテープ表裏方向で重なり合う。このため、テープ表裏方向に加えられる突き上げ力に対しても、使用に耐え得る十分な強度(突き上げ強度)を安定して確保することができる。
【0153】
更に、本実施例2のファスナーエレメント50は、例えば前述の実施例1のファスナーエレメント20のようにテープ表面側とテープ裏面側とで対称的に形成されていないため、前述の実施例1のスライドファスナー1に比べて、ファスナーエレメント50の見栄えやスライダーの摺動性の点で劣る。
【0154】
しかし、本実施例2の中央ランド部51には、上述したように肩部21dや凹溝部21eが形成されていないため、本実施例2のファスナーエレメント50は、射出成形用金型をテープ表裏方向に開く場合にアンダーカットのない形状となる。このため、ファスナーエレメント50の射出成形を行う際には、中子(スライドコア)が不要となるため、例えば前述の実施例1のファスナーエレメント20に比べて、射出成形をより簡単に、より効率的に行うことができる。
【0155】
また、本実施例2において、例えば第1スライダーと第2スライダーの2つのスライダーを互いに反対向きでエレメント列に取り付けてスライドファスナーを形成する場合においては、2つのスライダー間でスライダーの操作性に差異が生じるという不具合が起こるもない。
【0156】
上述のような形態を有する複数のファスナーエレメント50がファスナーテープ11のテープ側縁部に固着された本実施例2のスライドファスナーであっても、前述の実施例1に係るスライドファスナー1と同様の効果を得ることができる。
【0157】
なお、本実施例2のファスナーエレメント50における第1膨出部52と第2膨出部53とは、上述したように、前述の実施例1における第1膨出部22及び第2膨出部23と同じように、先細形状の突出端面54bを備える。この先細の突出端面54bは、ベース端面54aから突出方向である前方に向けて徐々に先細りとなる三角形の形状を備えており、本実施例2では、突出端面54bが台形状のベース端面54aから前方に向けてのみ突出するように形成されている。
【0158】
しかし、本発明のファスナーエレメントはこれに限定されず、例えば
図18に示した実施例2の変形例に係るファスナーエレメント50aをファスナーテープ11に固着して、スライドファスナーを形成しても良い。
【0159】
具体的説明すると、この実施例2の変形例に係るファスナーエレメント50aでは、テープ表面側の第1膨出部52は、膨出端面54における三角形状の突出端面54bが台形状のベース端面54aから前方に向けてのみ突出するように形成されており、
図13〜
図17に示す上述した実施例2の第1膨出部52と同様に形成されている。
【0160】
一方、テープ裏面側の第2膨出部53aは、膨出端面54における三角形状の突出端面54bが台形状のベース端面54aから後方に向けてのみ突出するように形成されており、第1膨出部52に対してテープ長さ方向の反対側を向いている。
【0161】
このようにテープ表面側の第1膨出部52とテープ裏面側の第2膨出部53aとが互いにテープ長さ方向(エレメント幅方向)にずらされるとともに、第1膨出部52の向きと第2膨出部53aの向きが、互いにテープ長さ方向(エレメント幅方向)に反対を向くようにして形成された変形例に係るファスナーエレメント50aを有するスライドファスナーであっても、前述の実施例1に係るスライドファスナー1や、実施例2に係るスライドファスナーと同様の効果を得ることができる。