特許第6220138号(P6220138)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6220138
(24)【登録日】2017年10月6日
(45)【発行日】2017年10月25日
(54)【発明の名称】積分装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/288 20060101AFI20171016BHJP
【FI】
   G01S7/288
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-67887(P2013-67887)
(22)【出願日】2013年3月28日
(65)【公開番号】特開2014-190897(P2014-190897A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2016年3月17日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願 (平成24年度、総務省、電波資源拡大のための研究開発における委託研究、産業技術力強化法第19条適用を受ける特許出願)
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】時枝 幸伸
(72)【発明者】
【氏名】富木 洋一
(72)【発明者】
【氏名】重田 誠
【審査官】 安井 英己
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−002797(JP,A)
【文献】 特開2006−071363(JP,A)
【文献】 特開平07−043453(JP,A)
【文献】 特開2011−203176(JP,A)
【文献】 米国特許第6811291(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00− 7/64,
G01S 13/00−13/95,
G01S 15/00−15/96,
G01S 17/00−17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既知の相関性があり、かつ送信周波数が異なる複数の送信波が反射された複数のレーダ反射波を前記送信周波数ごとの成分に分離する分離手段と、
前記複数のレーダ反射波の伝搬路に生じ得る特性の変動に基づいて、前記複数の送信波に含まれる送信周波数の成分の位相および振幅をスキャン、スイープ、レンジの全てまたは一部毎に揃える調整手段と、
前記調整手段によって前記位相および前記振幅が揃えられた複数の送信周波数の成分を積分し、レーダ信号処理の対象とする積分手段と
を備えたことを特徴とする積分装置。
【請求項2】
請求項1に記載の積分装置において、
前記調整手段は、前記送信周波数の成分の変動を示す二乗誤差が最小になるように、前記位相および前記振幅を揃える
ことを特徴とする積分装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の積分装置において、
前記複数のレーダ反射波の少なくとも一部は、
時間軸上の異なる時刻に到来する
ことを特徴とする積分装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の積分装置において、
前記複数のレーダ反射波のパルス幅は、
前記複数の送信波に含まれる送信周波数の成分の位相と振幅との双方もしくは何れか一方が定常と見なし得る値である
ことを特徴とする積分装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の積分装置において、
前記レーダ反射波の数は、
前記調整手段および前記積分手段の連係の下で前記レーダ信号処理の精度が所望の値を上回る程度に高い数である
ことを特徴とする積分装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信されるパルス波の占有帯域が複数の帯域に分散されることによって与干渉の低減が図られるレーダ装置において、目標から到来した反射波を積分する積分装置に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶の多くに搭載されつつある固体化レーダでは、送信波の先頭電力は、マグネトロンが適用されたレーダにおける数十キロワットより大幅に低い数百ワット程度に制限される。
【0003】
このような固体化レーダでは、探知性能の確保を目的として、送信波の平均電力が大きく確保され、かつパルス圧縮処理が適用されている。
【0004】
しかし、固体化レーダによって送信される送信波は、パルス幅が大きいために、周辺に位置するレーダ装置だけではなく、各種の無線通信システムや放送系に対して混信や妨害を与え可能性が高い。
【0005】
したがって、固体化レーダには、これまでも、これらの混信や妨害を低減する処置が施されてきた。
図3は、干渉や妨害の低減が図られたパルス圧縮レーダの構成例を示す図である。
【0006】
図において、信号処理部41Tの第一ないし第N(≧2)のアナログポートは、D/A変換器(D/A)42-1〜42-Nの入力に接続され、これらのD/A変換器42-1〜42-Nの出力は、それそれ送信部43-1〜43-Nを介してサーキュレータ44の第一ないし第Nの開口に接続される。サーキュレータ44の第(N+1)の開口はサーキュレータ45の第一の開口に接続され、そのサーキュレータ45の第二の開口は抵抗器46を介して接地される。
【0007】
サーキュレータ45の第三の開口は受信部47の入力に接続され、そのサーキュレータ45の第四の開口は空中線系48の給電点に接続される。
【0008】
受信部47の出力は周波数変換器48-1〜48-Nの入力に接続され、これらの周波数変換器48-1〜48-Nの局発入力には、局部発振器49-1〜49-Nの出力が接続される。
【0009】
周波数変換器48-1の出力は、A/D変換器(A/D)50-1を介してメモリ51-1の書き込みポートに接続される。メモリ51-1の第一ないし第nの読み出しポートはドップラ処理部52-1の対応する入力ポートに接続され、そのドップラ処理部52-1の第一ないし第nの出力ポートは位相補正部53-1の対応する入力ポートに接続される。
【0010】
周波数変換器48-2〜48-Nの後段には、上記のように周波数変換器48-1の後段と同様に構成された(A/D変換器(A/D)50-2、メモリ51-2、ドップラ処理部52-2、位相補正部53-1)、…、(A/D変換器(A/D)50-N、メモリ51-N、ドップラ処理部52-N、位相補正部53-N)が配置される。
【0011】
位相補正部53-1〜53-Nの第一ないし第nの出力ポートは信号処理部41Rの対応する入力ポートに接続され、その位相補正部53-1の出力には後述するレーダ信号が得られる。
一方、制御部60の対応する入出力ポートには、下記の通りに、既述の要素の制御端子が接続される。
【0012】
(1) 信号処理部41T
(2) D/A変換器(D/A)42-1,42-2
(3) 送信部43-1,43-2
(4) 受信部47
(5) 局部発振器49-1〜49-N
【0013】
(6) A/D変換器50-1〜50-N
(7) ドップラ処理部52-1〜52-N
(8) メモリ51-1〜51-N
(9) 位相補正部53-1〜53-N
(10)信号処理部41R
【0014】
このような構成のパルス圧縮レーダでは、各部が以下の通りに連係する。
信号処理部41Tは、制御部60の配下でN(≧2)個のディジタル信号を生成する。
D/A変換器42-1、42-2は、これらのディジタル信号を個別にベースバンド信号のチャープ信号に変換する。送信部43は、このようなチャープ信号を異なる周波数f〜fNの送信波にそれぞれ変換し、サーキュレータ44、45および空中線系48を介して覆域に放射する。
【0015】
覆域に位置する船舶等の目標でこれらの送信波が反射することによって発生した反射波は、空中線系48に到来し、サーキュレータ45を介して受信部47に引き渡される。受信部47は、制御部60の配下で稼働し、これらの反射波を周波数変換器48-1〜48-Nに並行して引き渡す。
【0016】
なお、以下では、符号に付加された第一の添え番号「1」〜「N」が共通であって、これらの添え番号「1」〜「N」の何れにも該当し得ることについては、添え文字「C」を第一の添え番号に代えて付記することにより、記載の重複を回避する。
【0017】
局部発振器49-cは、制御部60の配下で上記周波数fcに対応した周波数fcの局発信号を生成する。
周波数変換器48-cは、これらの局発信号に基づいて上記反射波をホモダイン検波することによって第Cのベースバンド信号を生成する。
【0018】
A/D変換器50-cは、その第Cのベースバンド信号をディジタル信号(以下、「第Cのディジタル信号」という。)に変換し、ファーストイン・ファーストアウト方式によりメモリ51-cに蓄積する。
【0019】
ドップラ処理部52-cは、メモリ52-cに蓄積された第Cのディジタル信号をスイープ毎に分解し、個々のスイープにおける共通のレンジの集合毎にフーリエ変換することによってドップラバンクに分解する。
【0020】
位相補正部53-cは、これらの分解されたドップラーバンク毎に位相を揃える。
信号処理部41Rは、このようにして位相が揃えられたドンブラーバンクを合成し、かつCFAR(Constant False Alarm Rate)等のレーダ信号処理を施すことによって、指示装置に引き渡されるべき画像情報の生成に供されるレーダ信号を生成する。
【0021】
すなわち、上述したパルス圧縮レーダは、送信波のパルス幅が非固体化レーダに比べて大きいが、これらの送信波の電力が複数の周波数帯に分散されて放射され、しかも、個々の周波数帯に分布する反射波がドップラバンク毎に位相合成された後にレーダ信号処理が行われる。
【0022】
したがって、他のレーダ装置だけではなく、覆域またはその周辺に位置する無線通信系や放送系に対して干渉や混信を及ぼす可能性が低減される。
なお、本発明に関連性がある先行技術としては、以下に列記する特許文献1ないし特許文献5があった。
【0023】
(1) 「予め定められた周期で複数の搬送波周波数それぞれのパルス信号を順に送信する送信部と、前記送信部から送信されたパルス信号が検出対象となる目標物により反射された反射信号を受信する受信部と、前記受信部により受信された前記反射信号を前記複数の搬送波周波数それぞれに対応する信号に分割する周波数分割部と、前記周波数分割部により分割された反射信号からなる時系列の信号を前記複数の搬送波周波数ごとに位相合成し、更に、前記位相合成された前記複数の搬送波周波数の信号を合成する信号合成部とを具備する」ことにより、「レーダ装置に割り当てられている周波数帯域が、他の通信システムで利用される受信装置におけるイメージ周波数に該当する場合であっても、与える干渉を低減する」点に特徴があるレーダ装置…特許文献1
【0024】
(2) 「所定のパルス幅、及びパルス間隔でパルス変調された電磁波を繰返し送信するとともに、観測対象に反射された受信信号を位相検波する送受信機と、前記受信信号を所定のサンプリング間隔でディジタル信号に変換するA/D変換手段と、前記観測対象の距離に応じた遅延時間をおいて前記所定のパルス幅相当時間の受信信号を抽出するレンジゲート手段と、同一距離における観測対象からの受信信号を2組のデータに分割するデータ分割手段と、前記分割された2組のデータの一方を高速フーリエ変換する第1のドップラーFFT手段と、前記分割された2組のデータの他方を高速フーリエ変換する第2のドップラーFFT手段と、前記第2のドップラーFFT手段の出力の複素共役をとる複素共役手段と、前記第1のドップラーFFT手段の出力と前記複素共役手段の出力についてそれぞれ同一のドップラー周波数成分毎に複素乗算を行う複素乗算手段と、前記観測及び処理を複数回繰り返し、得られた複素乗算結果を繰り返し回数分、同一のドップラー周波数成分についてコヒーレント加算する複素加算手段とを備える」ことによって、「受信信号をパルス内およびパルス間の両方についてコヒーレントに積分でき、信号対雑音電力比を改善できる」点に特徴があるレーダ装置…特許文献2
【0025】
(3) 「波動からなるパルスを送信するとともに、計測対象からの反射信号を受信する送受信機と、送受信機により受信された信号中から計測不要な周波数帯域の信号を除去するフィルタと、前記フィルタの出力を予め決められたサンプリング周期によりA/D変換するA/D変換手段と、前記A/D変換手段の出力に時間軸上でゲートをかけ、ゲート内の受信信号を抽出するゲート手段と、前記ゲート内の受信信号をフーリエ変換するフーリエ変換手段と、前記フーリエ変換されたゲート内の前半のデータと後半のデータの同期をとる遅延手段と、前記フーリエ変換されたゲート内の後半のデータの複素共役を求める複素共役手段と、前記遅延手段の出力信号と前記複素共役手段の出力信号の複素乗算を行う複素乗算手段と、前記複素乗算手段の出力信号を加算する複素加算手段とを備える」ことによって、「システムノイズを抑圧して受信信号におけるSNRを向上する」点に特徴があるレーダ装置…特許文献3
【0026】
(4) 「波動からなるパルスを送信するとともに、計測対象からの反射信号を受信する送受信機と、前記送受信機の出力を予め決められたサンプリング周期によりA/D変換するA/D変換手段と、前記A/D変換手段の出力に時間軸上でゲートをかけ、ゲート内の受信信号を抽出するゲート手段と、前記ゲート手段により抽出された受信信号を複数のデータに分割するデータ分割手段と、ゲート内の分割された複数のデータをフーリエ変換するフーリエ変換手段と、前記フーリエ変換手段の出力信号の複素共役を求める複素共役手段と、分割された複数のデータの内の時間的に隣り合う2つのデータについて、前半のデータに関する前記フーリエ変換手段の出力と、後半のデータに関する前記複素共役手段の出力との複素乗算を行う複素乗算手段と、前記複素乗算手段の出力信号を加算する複素加算手段とを備える」ことにより、「システムノイズを抑圧して受信信号におけるSNRを向上できる」点に特徴があるレーダ装置…特許文献4
【0027】
(5) 「パルスドップラーレーダ信号を処理して物標を検出するための方法であって、レーダシステムからレーダ信号を送信し、該レーダ信号は所定の周波数技法に従って送信され、1つの周波数帯域内で、前記物標の速度を指示する周波数を有する物標エコー信号を含む信号を受信し、可変周波数スケールを有するフーリエ変換を用いて前記物標エコー信号を変換することを含む」ことにより、「信号ドップラー周波数を位置調整する(揃える)ためにレーダエコー信号の多大な事後処理を必要とすることなく、非コヒーレント積分による信号の検出可能性が高められる」点に特徴がある速度が曖昧な物標の非コヒーレント積分のための技法…特許文献5
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【特許文献1】特開2012−002797号公報
【特許文献2】特開2001−133544号公報
【特許文献3】特開2003−004841号公報
【特許文献4】特開2003−014841号公報
【特許文献5】特表2006−516736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
ところで、上述した従来のパルス圧縮レーダでは、周辺に位置するレーダ装置、無線通信系、放送系に及ぼし得る干渉の軽減のために、送信波の電力が周波数領域で分散され、これに伴うレーダ信号処理の精度や信頼性を確保するために、ドップラバンク毎の位相合成が行われている。
【0030】
しかし、レーダ信号処理の精度や信頼性は、到来する反射波の周波数毎に異なるドップラシフトが付帯し得るために、十分ではない場合が多かった。
【0031】
しかも、固体化レーダによって送信される送信波のパルス幅はさらに大きくなる傾向にあるため、特に、占有帯域が周波数軸上で密接な関係にある衛星放送の受信機については、干渉の確実な回避が強く要望されている。
【0032】
また、固体化レーダでは、一般に、送信波の周波数の設定や変更が数十メガヘルツ単位で柔軟に可能であるにもかかわらず、例えば、9GHz帯の広い周波数帯域が非固体化レーダと同様に割り付けられ、無線周波数の有効理由が必ずしも十分には図られていなかった。
【0033】
本発明は、パルス波および反射波の伝搬路の特性に柔軟に適応し、その反射波の信号処理を精度よく安定に実現する積分装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0034】
請求項1に記載の発明では、分離手段は、既知の相関性があり、かつ占有帯域が異なる複数のレーダ反射波を前記占有帯域毎の成分に分離する。調整手段は、前記複数の成分の位相および振幅を揃える。積分手段は、前記調整手段によって前記位相および前記振幅が揃えられた複数の成分をスキャン、スイープ、レンジの全てまたは一部毎に積分し、レーダ信号処理の対象とする。
【0035】
すなわち、レーダ反射波は、占有帯域が異なる周波数帯に分散されているにもかかわらず、一括してコヒーレント積分された後にレーダ信号処理が施される。
【0036】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の積分装置において、前記調整手段は、前記複数のレーダ反射波の伝搬路に生じ得る特性の変動を示す統計モデルの推定、または前記特性の変動に追従する自動制御もしくは適応制御に基づいて、前記位相および前記振幅を揃える。
【0037】
すなわち、周波数帯毎にレーダ反射波に生じるドップラシフトが広範にあるいは多様に変動しても、これらのレーダ反射波のコヒーレント積分が精度よく安定に実現される。
【0038】
請求項3に記載の発明では、請求項1または請求項2に記載の積分装置において、前記複数のレーダ反射波の少なくとも一部は、時間軸上の異なる時刻に到来する。
【0039】
すなわち、レーダ反射波の発生源に照射される送信波が、周波数軸上だけではなく、時間軸上に分散された場合であっても、レーダ反射波のコヒーレント積分が精度よく安定に実現される。
【0040】
請求項4に記載の発明では、請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の積分装置において、前記複数のレーダ反射波のパルス幅は、前記複数の成分の位相と振幅との双方もしくは何れか一方が定常と見なし得る値である。
【0041】
すなわち、レーダ反射波のパルス幅は、本発明の適用の下で他のレーダ装置や装置に及ぼし得る干渉の増加と、レーダ信号処理のためにこれらのレーダ反射波に施されるべきコヒーレント積分の精度の低下とが許容される限度内に設定される。
【0042】
請求項5に記載の発明では、請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の積分装置において、前記レーダ反射波の数は、前記調整手段および前記積分手段の連係の下で前記レーダ信号処理の精度が所望の値を上回る程度に高い数である。
【0043】
すなわち、複数の周波数帯に分散されるレーダ反射波の数は、レーダ信号処理のためにこれらのレーダ反射波に施されるべきコヒーレント積分の精度の低下とが許容される限度内に設定される。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、周波数帯毎にレーダ反射波に生じるドップラシフトの値が異なっても、レーダ信号処理の精度および信頼性が高く確保され、しかも、他のレーダ装置や通信装置に干渉や妨害を与える可能性が低く抑えられる。
【0045】
また、本発明では、地形、地物、分布目標の分布および変動に対する柔軟な適応が可能となり、探知性能が高められる。
【0046】
さらに、本発明では、地形、地物、分布目標の分布および変動だけではなく、これらの地形、地物、分布目標の属性に対しても柔軟な適応が可能となり、探知性能が高められる。
【0047】
したがって、本発明が適用されたレーダ装置は、他のレーダ装置や装置に対する干渉や妨害だけではなく、探知性能の低下に関する歯止めが適切に設定される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】本発明の一実施形態を示す図である。
図2】本実施形態の動作を説明する図である。
図3】干渉や妨害の低減が図られたパルス圧縮レーダの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態を示す図である。
図において、図3に示す従来例と機能および構成が同じものについては、同じ符号を付与し、ここでは、その説明を省略する。
【0050】
本実施形態と、図3に示す従来例との構成の相違点は、以下の点にある。
(1) 位相補正部53-1〜53-Nに代えて、信号加算部11-1〜11-Nが備えられる。
(2) ドップラ処理部52-c(C=1〜N)と上記信号加算部11-c(C=1〜N)と段間に、次の要件(2-1)〜(2-3)を満たす振幅位相補正部12-c(C=1〜N)が配置される。
【0051】
(2-1) 第一ないし第Nの入力を有する。
(2-2) これらの第一ないし第Nの入力に、ドップラ処理部52-1〜52-Nが個別に有するN個の出力の内、第Cの出力が接続される。
(2-3) 信号加算部11-cが有するn個の入力にそれぞれ接続されたn個の出力を有する。
【0052】
(3) 制御部60に代えて制御部20が備えられる。
(4) 制御部20は、信号加算部11-1〜11-Nおよび振幅位相補正部12-1〜12-Nの制御端子に個別に接続された入出力ポートを有する。
【0053】
図2は、本実施形態の動作を説明する図である。
以下、図1および図2を参照して本実施形態の動作を説明する。
【0054】
本発明の特徴は、本実施形態では、振幅位相補正部12-1〜12-Nおよび信号加算部11-1〜11-Nが連係して行う処理の手順にある。
【0055】
なお、以下では、これらの振幅位相補正部12-1〜12-Nの何れにも当てはまる事項と、信号加算部11-1〜11-Nの何れにも当てはまる事項とについては、添え番号「1」〜「N」の何れにも該当し得ることを意味する添え文字「C」を用いて記述する。
【0056】
ドップラ処理部52-1〜52-cは、従来例と同様に、既述の異なる周波数f〜fNの送信波の反射波からスイープ毎に並行して抽出されたドップラバンクの列を生成する(図2(1))。
【0057】
振幅位相補正部12-cは、このようなドップラバンク毎の成分の瞬時値列を示す時間関数YSW1c〜YSWNcに対して下式で示される2乗誤差ΔSW2c〜ΔSWNcを最小化する最小2乗法に基づいて、これらの時間関数YSW1c〜YSWNcの間における位相および振幅の偏差を圧縮する。
【0058】
【数1】



【0059】
ただし、上式の各項に付加された添え文字「SW」は、コヒーレント積分が後述するように「スイープ方向」に行われることを意味する。
また、係数(kSWxc)(x=2〜N)は、下式に示すように、時間関数YSW1cに対する時間関数YSWxcの振幅の偏差ASWxcおよび位相の偏差θSWxcを意味する。
kSWxc=ASWxc・exp(θSWxc)=αSWxc+βSWxc・i
【0060】
信号加算部11-cは、スイープ方向に位相および振幅の偏差が振幅位相補正部12-cによって圧縮された時間関数YSW1c,YSW1c′〜YSWNc′の和をとることにより、これらの時間関数YSW1c,YSW1c′〜YSWNc′をコヒーレント積分する(図2(2))。
【0061】
信号処理部41Rは、このようにして位相だけではなく振幅が揃えられたドッブラーバンクを合成し、かつ所望のレーダ信号処理を施すことによって、指示装置に引き渡されるべき画像情報の生成に供されるレーダ信号を生成する。
【0062】
すなわち、送信波のパルス幅が大きい場合であっても、その送信波の電力が複数の周波数帯に分散されて放射されることによって、従来例と同様に、覆域またはその周辺に位置する無線通信系や放送系に対して干渉や混信を及ぼす可能性が低減される。
【0063】
しかも、本実施形態によれば、空中線系48に到来した反射波のパルス幅が上記位相および振幅の偏差の圧縮が所望の精度で実現される程度(例えば、10マイクロ秒)に短いならば、その反射波の周波数(帯)が異なり、これらの周波数帯毎に付帯するドップラシフトが異なる場合であっても、レーダ装置に割り付けられた周波数帯が有効に活用されることによって、レーダ信号処理が精度よく安定に実現され、かつ探知性能が高く確保される。
【0064】
例えば、周波数f〜fNの数Nが「4」であり、これらの周波数の送信波のパルス幅が4マイクロ秒である場合には、これらの送信波の実効的なパルス幅が16(=4マイクロ秒×4)マイクロ秒である場合と同等の探知性能が得られる。さらに、送信波が同一の周波数帯を占有する時間軸上の割合が減少することによって、レーダ信号処理の精度・信頼性および安定性が従来例より低下することなく、他のレーダ装置や通信装置に対して干渉や妨害を及ぼす可能性が低減される。
【0065】
なお、本実施形態では、コヒーレント積分が異なる帯域に分布する反射波が共通のベースバンド帯の時間関数として与えられるドップラバンク毎に行われている。
しかし、このようなコヒーレント積分の対象は、異なるスキャンの過程で到来した複数の反射波(周波数帯が同じであっても異なってもよい)であってもよい。
【0066】
さらに、コヒーレント積分は、スイープ方向だけではなく、スキャン方向、レンジ方向の全てまたは一部毎に行われてもよい。
なお、このようなスキャン方向やレンジ方向に行われるコヒーレント積分の過程でそれぞれ最少化されるべき2乗誤差ΔSC2c〜ΔSCNc、ΔRG2c〜ΔRGNcは、既述の数式1に準じた下記の数式2、3で与えられる。
【数2】




【数3】




【0067】
また、本実施形態では、上記コヒーレント積分の対象となる反射波のパルス幅は、パルス圧縮レーダ方式が適用されることによって長く設定された場合であっても、これらの反射波の位相および振幅が所望の精度で同じである(望ましくは定常と見なし得る)と見なし得る程度に短いならば、如何なる値であってもよい。
【0068】
さらに、このようなコヒーレント積分の対象となるべき反射波のパルス幅は、既述の作用効果が成立するならば、必ずしも同じでなくてもよい。
【0069】
また、本実施形態では、最小2乗法に基づいてコヒーレント積分の前提となる位相および振幅が揃えられている。
しかし、このような位相および振幅を揃えるためのアルゴリズムは、最小2乗法に限定されず、適応制御や自動制御(目標値制御)で代替されてもよい。
【0070】
さらに、本実施形態では、コヒーレント積分の対象となる反射者の数および周波数帯が一定となっている。
しかし、これらの数および周波数帯の双方もしくは何れか一方は、実現されるべきレーダ信号処理の精度(探知性能の確度や信頼性)等に応じて適宜変更されてもよい。
【0071】
また、本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の範囲において多様な実施形態の構成が可能であり、構成要素の全てまたは一部に如何なる改良が施されてもよい。
【0072】
以下、本願に開示された発明の内、「特許請求の範囲」に記載しなかった発明の構成、作用および効果を「特許請求の範囲」、「課題を解決するための手段」、「発明の効果」の各欄の記載に準じた様式により列記する。
【0073】
〔請求項6〕
請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載の積分装置において、
前記レーダ反射波の送信源から放射されるレーダ送信波の数の増減により、前記調整手段および前記積分手段の連係の下で達成される前記レーダ信号処理の精度の過不足を補正する制御手段を備えた
ことを特徴とする積分装置。
【0074】
このような構成の積分装置では、制御手段は、前記レーダ反射波の送信源から放射されるレーダ送信波の数の増減により、前記調整手段および前記積分手段の連係の下で達成される前記レーダ信号処理の精度の過不足を補正する。
【0075】
すなわち、レーダ信号処理の精度および探知性能は、レーダ送信波の数の増減に応じて所望の値に維持される。
したがって、広範な探知性能に対する柔軟な適応が簡便な構成により実現される。
【0076】
〔請求項7〕
請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載の積分装置において、
前記調整手段および前記積分手段の連係の下で前記レーダ信号処理の精度が所望の値を上回る程度に高い数に、前記レーダ反射波の送信源から放射されるレーダ送信波の数を設定する制御手段を備えた
ことを特徴とする積分装置。
【0077】
このような構成の積分装置では、制御手段は、前記調整手段および前記積分手段の連係の下で前記レーダ信号処理の精度が所望の値を上回る程度に高い数に、前記レーダ反射波の送信源から放射されるレーダ送信波の数を設定する。
【0078】
すなわち、レーダ信号処理の精度および探知性能は、レーダ送信波の数の増減に応じて所望の値に維持される。
したがって、広範な探知性能に対する柔軟な適応が簡便な構成により実現される。
【符号の説明】
【0079】
11 信号加算部
12 振幅位相補正部
20,60 制御部
41R,41T 信号処理部
42 D/A変換部(D/A)
43 送信部
44,45 サーキュレータ
46 抵抗器
47 受信部
48 周波数変換器
49 局部発振器
50 A/D変換部(A/D)
51 メモリ
52 ドップラ処理部
53 位相補正部
図1
図2
図3