(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記補強板の縁部に、この縁部から前記補強板と直交する方向に延びる金属製の側板が設けられていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の糸加熱ローラの保温箱。
前記補強板と直交する方向に延びる側板を、前記補強板の縁部の全周にわたって連続的に設けて、前記補強板と前記側板からなる金属箱体を形成する、金属箱体形成工程をさらに備え、
前記組立工程において、複数の前記金属箱体を接合することを特徴とする請求項9に記載の糸加熱ローラの保温箱の製造方法。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、紡糸装置から紡出された複数の糸を、加熱して延伸する装置が開示されている。この装置は、糸を延伸するための2つのローラユニットを有する。各ローラユニットは、加熱ローラ(ゴデットローラ)とセパレートローラを有する。各ローラユニットにおいて、糸は加熱ローラとセパレートローラとの間で複数回巻回され、その間の加熱ローラとの接触によって糸は所定温度まで加熱される。また、糸走行方向下流側に位置するローラユニットの加熱ローラは、上流側に位置するローラユニットの加熱ローラよりも回転速度(糸送り速度)が速くなっている。これにより、上流側のローラユニットで予熱された糸が、2つのローラユニットの間の速度差によって延伸される。
【0003】
ところで、上記特許文献1において、加熱ローラを含むローラユニットは、保温箱に収容されている。保温箱の具体的な構成については、特許文献1には特に記載がないが、例えば、以下のような構成の保温箱が知られている。
図8は、従来の保温箱の斜視図である。
図8に示す保温箱100は、それぞれステンレス鋼等の金属板で形成された、箱体101と枠体101cとを有する。また、箱体101の内壁101aと外壁101bとの間には、ロックウール等の不定形の断熱材103が充填されている。
【0004】
上記の保温箱100は、以下のようにして作製する。まず、箱体101の内壁101aと外壁101bとを、複数枚の金属板を溶接にて互いに接合することによって組み立てる。また、内壁101aと外壁101bとの間には、複数の補強リブを設ける。次に、箱体101の内壁101aと外壁101bとの間に、ロックウール等の断熱材103を充填する。その後、箱体101に枠体101cを溶接にて取り付けて、内壁101aと外壁101bとの間の、断熱材103が充填された隙間を塞ぐ。尚、
図8には図示が省略されているが、この保温箱100には、前面を覆う扉が開閉自在に取り付けられる。この扉も、箱体101と同様、全周が金属板で囲われ、その内部にはロックウール等の、不定形の断熱材が充填された保温構造となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図8に示す従来の保温箱では、次のような問題が存在する。まず、大きな金属板を溶接によって複数枚接合して、外壁及び内壁を組み立てる作業は非常に手間がかかる。また、ロックウールの断熱性はそれほど高いものではないことから、保温箱としての断熱性能は低く、外部への放熱量、即ち、熱エネルギーの損失が大きくなっていた。また、箱体101の内壁101aと外壁101bの間にロックウール等の不定形の断熱材103を充填する際に、内壁101aの裏側や外壁101b内の隅部など、手が届きにくい部分に断熱材103を充填することが難しい。従って、作業者の熟練度によっては、断熱材103の充填密度が不均一になる虞がある。
【0007】
なお、従来から広く用いられているロックウール等の断熱材は、不定形で全く剛性がないため、内壁101a及び外壁101bを構成する金属板によって、保温箱の剛性を確保する必要がある。しかし、剛性を上げるために金属板の厚みを厚くすると、保温箱が重くなって保全等の作業性が低下する。また、金属板を厚くする代わりに、内壁101aと外壁101bとの間に補強リブを設けて保温箱の剛性を高める場合は、補強リブを介して、内部の熱が内壁101aから外壁101bへ伝わるため、保温性が低下する。
【0008】
本発明の目的は、組立が容易な保温箱を提供することである。また、本発明の別の目的は、断熱性が高く、且つ、断熱性が均一化された、保温箱を提供することである。
【0009】
第1の発明の糸加熱ローラの保温箱は、糸を加熱する糸加熱ローラを収容する保温箱であって、保温箱を構成する複数の箱壁部が、それぞれ、断熱板と、この断熱板に積層された金属製の補強板とを有することを特徴とするものである。
【0010】
本発明によれば、保温箱の箱壁部が、金属製の補強板に、断熱板が積層された構造を有する。それ故、断熱板を補強板に積層することで各箱壁部を簡単に形成できる。補強板に断熱板を積層させて複数の箱壁部をそれぞれ先に形成してから接合してもよいし、予め複数の補強板を接合してからそれぞれの補強板に断熱板を積層させてもよいが、何れにしても、保温箱の組立が非常に容易である。また、例えば発泡樹脂等からなる断熱板の断熱性は、一般に、ロックウールなどと比べると数倍高い。従って、各箱壁部の断熱性が高くなり、ひいては、保温箱全体の断熱性能も向上する。さらに、断熱板の取付作業は、所定サイズの断熱板を補強板に積層するだけで完了し、不慣れな作業者が作業を行う場合でも、保温箱の断熱性が不均一になりにくい。
【0011】
第2の発明の糸加熱ローラの保温箱は、前記第1の発明において、各箱壁部において、前記金属製の補強板は、前記断熱板の、保温箱の内側を向く内面、又は、保温箱の外側を向く外面の、何れか一方の面にのみ積層されていることを特徴とするものである。
【0012】
上述した、
図8に示すような従来の保温箱では、箱体101の内壁101aと、外気に接する外壁101bとが、枠体101cや図示しない補強リブ等、熱伝導率が高い金属材料でつながっている。保温箱の扉についても同様である。このような構成であるが故に、熱伝導により内部の熱が外壁101bに伝わり、外気中に熱エネルギーが放出されている。また、外壁101bの温度が高くなるという問題もあった。
【0013】
この点、本発明では、熱伝導率が高い金属の補強板が、断熱板の内面または外面の何れか一方にしか積層されていないことから、補強板を伝わって内部の熱が外部へ逃げる熱量を抑制することができる。即ち、断熱板の外面にしか補強板がない場合は、保温箱内部の高温の空気が金属の補強板には直接触れず、断熱板を介してのみ外面の補強板に熱が伝わるので、外面の補強板が高温になることがなく、外面から放出される熱エネルギーの量が抑制される。また、断熱板の内面にしか補強板がない場合は、保温箱内部の高温の空気で内面の補強板は高温になるものの、断熱板で熱伝導が抑えられる。従って、保温箱の外面に伝わる熱エネルギーが抑えられ、外面から放出される熱エネルギーの量も抑制される。
【0014】
上記第1又は第2の発明において、前記断熱板は、発泡樹脂からなることが好ましい(第3の発明)。この場合は、保温箱の断熱性能が高いものとなる。
【0015】
第4の発明の糸加熱ローラの保温箱は、前記第1〜第3の何れかの発明において、前記補強板の縁部に、この縁部から前記補強板と直交する方向に延びる金属製の側板が設けられていることを特徴とするものである。
【0016】
補強板の縁部に、金属製の側板が設けられることにより、箱壁部の曲げ剛性が高くなり、保温箱全体の剛性も向上する。あるいは、補強板の厚みを薄くして、保温箱を軽量化することも可能となる。
【0017】
第5の発明の糸加熱ローラの保温箱は、前記第4の発明において、前記補強板と前記側板とが一体成形されていることを特徴とするものである。
【0018】
補強板と側板を溶接等で接合する作業が不要であることから、箱壁部の形成が簡単になる。
【0019】
第6の発明の糸加熱ローラの保温箱は、前記第4又は第5の発明において、前記側板は、前記補強板から前記断熱板の積層側に延びていることを特徴とするものである。
【0020】
本発明によれば、補強板に積層された断熱板の側面が側板で覆われることになり、断熱板の側面が側板によって保護される。
【0021】
第7の発明の糸加熱ローラの保温箱は、前記第6の発明において、前記補強板の縁部の、少なくとも、前記補強板の面方向に平行な方向において互いに反対側に位置する2つの部分に、前記側板が設けられ、前記断熱板は、前記側板に挟まれた空間に収納されて、前記補強板に積層されていることを特徴とするものである。
【0022】
補強板の縁部の、面方向と平行な方向において反対側に位置する2つの部分に側板がそれぞれ設けられているため、箱壁部の剛性がさらに高くなる。また、側板によって挟まれた空間に断熱板を嵌め込むように収納するだけでよく、断熱板の取付が簡単である。また、側板によって断熱板の補強板に対する位置ズレが規制される。
【0023】
第8の発明の糸加熱ローラの保温箱は、前記第7の発明において、前記補強板の前記縁部の全周にわたって、前記側板が連続して設けられて、前記補強板と前記側板により金属箱体が形成され、前記断熱板は、前記金属箱体内の空間に収納されて、前記補強板に積層されていることを特徴とするものである。
【0024】
補強板の縁部の全周にわたって側板が連続して設けられていることから、金属箱体の剛性は高く、それゆえ、箱壁部の剛性もかなり高くなる。また、断熱板の側面全周が側板によって覆われるため、断熱板の側面が確実に保護される。また、側板によって断熱板の補強板に対する位置ズレが確実に規制される。
【0025】
第
9の発明の糸加熱ローラの保温箱は、前記第1〜第
8の何れかの発明において、前記複数の箱壁部のうちの少なくとも1つにおいて、その補強板の前記断熱板とは反対側の面が保温箱の内側を向き、前記保温箱の内面を構成していることを特徴とするものである。
【0026】
金属製の補強板は、断熱板と比べて表面硬度が高い。従って、補強板の断熱板とは反対側の面が保温箱の内面を構成していると、糸切れによって加熱ローラに巻き付いた糸が保温箱の内面を叩いたり、糸掛けの際に作業者がサクションガンを保温箱の内面にぶつけたりしても、内面が傷つきにくい。また、金属製の補強板の表面は平滑であるため、油剤や糸屑等の塵、あるいは、汚れが保温箱の内面に付着しても、清掃が容易である。
【0027】
第
10の発明の糸加熱ローラの保温箱は、前記第1〜第
9の何れかの発明において、前記断熱板の前記補強板とは反対側の面に、断熱補強板が積層されていることを特徴とするものである。
【0028】
この構成では、断熱板の補強板と反対側の面が断熱補強板によって保護される。また、断熱補強板が設けられることによって、剛性の高い補強板と断熱補強板で比較的剛性の低い断熱板を挟み込む、いわゆるサンドイッチ構造となるため、全体の剛性を上げることができる。尚、断熱補強板は、板状の部材によって構成されてもよいし、液状樹脂が塗布された後に硬化した、剛性を有する層であってもよく、その形態は特に限定されない。
【0029】
第1
1の発明の糸加熱ローラの保温箱の製造方法は、糸を加熱する糸加熱ローラを収容する保温箱の製造方法であって、複数の補強板を接合する組立工程と、前記複数の補強板に断熱板をそれぞれ積層させて、保温箱を構成する複数の箱壁部をそれぞれ形成する箱壁部形成工程と、を備えていることを特徴とするものである。
【0030】
本発明では、複数の金属製の補強板を接合して箱体を組み立てる。また、箱壁部の形成工程では、複数の補強板に断熱板をそれぞれ積層して複数の箱壁部を形成することにより、高い断熱性能の箱壁部を形成することができる。また、断熱板を補強板に積層するだけで、作業が完了する。そのため、不慣れな作業者が作業を行った場合でも、保温箱の断熱性が不均一になりにくい。尚、組立工程と箱壁部形成工程(断熱板の積層)の順番は特に限定されず、何れの工程を先に行ってもよい。
【0031】
第1
2の発明の糸加熱ローラの保温箱の製造方法は、前記第1
1の発明において、前記補強板と直交する方向に延びる側板を、前記補強板の縁部の全周にわたって連続的に設けて、前記補強板と前記側板からなる金属箱体を形成する、金属箱体形成工程をさらに備え、前記組立工程において、複数の前記金属箱体を接合することを特徴とするものである。
【0032】
補強板の縁部の全周にわたって側板が連続して設けられていることから、金属箱体の剛性は高く、それゆえ、箱壁部の剛性もかなり高くなる。
【0033】
第1
3の発明の糸加熱ローラの保温箱の製造方法は、前記第1
2の発明において、前記箱壁部形成工程において、前記断熱板を、前記金属箱体内の空間に収納して前記補強板に積層することを特徴とするものである。
【0034】
補強板と側板により形成された金属箱体内に、断熱板を嵌め込むように収納するだけで断熱板の取付が完了するため、作業が非常に簡単となる。また、補強板の縁部の全周にわたって側板が連続して設けられていることから、この側板によって断熱板の補強板に対する位置ズレが確実に規制される。さらに、断熱板の側面全周が側板によって覆われるため、断熱板の側面が確実に保護される。
【発明を実施するための形態】
【0038】
次に、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る紡糸巻取機の概略構成を示す正面図である。
図1に示すように、紡糸巻取機1は、紡糸延伸装置3と糸巻取装置4とを備えている。
【0039】
紡糸延伸装置3は、上方にある紡糸装置2から、ポリエステル等の溶融繊維材料を連続的に紡出することによって生成された、複数の糸Yを延伸するものである。紡糸延伸装置3は、油剤ガイド10と、5つのゴデットローラ11〜15(本発明における糸加熱ローラ)等を備えている。油剤ガイド10は、紡糸装置2から紡出された複数の糸Yにそれぞれ油剤を付与するものである。
【0040】
5つのゴデットローラ11〜15は、図示しないモータによってそれぞれ回転駆動される。また、5つのゴデットローラ11〜15は、それぞれ、内部にヒータを有する加熱ローラであり、直方体形状の保温箱16内に収容されている。保温箱16の右側壁部には、複数の糸Yを保温箱16内に導入するための糸導入口16aと、複数の糸Yを保温箱16内から外部へ導出するための糸導出口16bとが形成されている。尚、保温箱16の詳細構成については後で説明する。
【0041】
油剤ガイド10において油剤が付与された複数の糸Yは、案内ローラ17を経て、糸導入口16aから保温箱16内へ案内される。保温箱16内に導入された複数の糸Yは、5つのゴデットローラ11〜15に対して、下側のゴデットローラ11から順に巻掛けられている。
【0042】
下側3つのゴデットローラ11〜13は、複数の糸Yを延伸する前に予熱するための加熱ローラであり、それらの加熱温度(ローラ表面温度)は、糸Yのガラス転移点以上の温度(例えば、80℃)に設定されている。一方、上側2つのゴデットローラ14,15は、延伸された複数の糸Yを熱セットするための加熱ローラであり、それらの加熱温度は、下側3つのゴデットローラ11〜13の加熱温度よりも高い温度(例えば、120℃)に設定されている。また、上側2つのゴデットローラ14,15の糸Y送り速度は、下側3つのゴデットローラ11〜13よりも速くなっている。
【0043】
保温箱16内に導入された複数の糸Yは、まず、下側3つのゴデットローラ11〜13によって送られる間に延伸可能な温度まで予熱される、次に、予熱された複数の糸Yは、2つのゴデットローラ13,14の間の糸送り速度差によって延伸される。さらに、複数の糸Yは、上側2つのゴデットローラ14,15によって送られる間により高温に加熱されて、延伸された状態が熱セットされる。上記のようにして延伸された複数の糸Yは、糸導出口16bから保温箱16外に導出され、さらに、案内ローラ18によって糸巻取装置4に送られる。
【0044】
糸巻取装置4は、紡糸延伸装置3の下方に配置されている。この糸巻取装置4は、ボビンホルダ20と、コンタクトローラ21等を備えている。ボビンホルダ20は、
図1の紙面垂直方向に延びる長尺な形状を有し、図示しないモータによって回転駆動される。このボビンホルダ20には、その軸方向に沿って複数のボビン22が並べて装着される。糸巻取装置4は、ボビンホルダ20を回転させることによって、複数のボビン22に複数の糸Yを同時に巻取り、複数の巻取パッケージ23を形成する。コンタクトローラ21は、複数の巻取パッケージ23の表面に接触して所定の接圧を付与し、巻取パッケージ23の形状を整える。
【0045】
次に、5つのゴデットローラ11〜15を収容する保温箱16について詳細に説明する。
図2は、保温箱の斜視図である。
図3は、保温箱の1つの箱壁部の分解斜視図である。
図4は、扉部を閉じた状態における保温箱の縦断面図である。尚、
図2に示すように、保温箱16の前後、左右、及び、上下の各方向を定義し、以下、適宜これらの方向語を用いて説明する。
【0046】
図2〜
図4に示すように、保温箱16は、6つの箱壁部30が連結されることによって、直方体形状に形成されている。6つの箱壁部30は、上壁部30a、下壁部30b、左側壁部30c、右側壁部30d、後壁部30eと、左側壁部30cの前端部にヒンジ等によって回動自在に取り付けられた扉部30fである。右側壁部30dの下端部及び上端部には、それぞれ糸導入口16a及び糸導出口16bとなる、2つの切り欠きが形成されている。
【0047】
図3に示すように、6つの箱壁部30は、それぞれ、金属箱体31と、断熱板32と、断熱補強板33とを有するパネルである。金属箱体31は、ステンレス鋼等の金属板から形成された、内部に断熱板32を収容可能な矩形箱状の構造体である。金属箱体31は、プレス加工によって一体成形された補強板34と側板35とを有する。より詳細には、金属箱体31の底部となる、矩形状の補強板34の縁部に、その面方向と直交する方向で、且つ、断熱板32が積層される側(
図3の上側)に延びる側板35が設けられている。この側板35は、補強板34の縁部の全周にわたって連続的に形成されている。
【0048】
断熱板32は、金属よりも熱伝導率の低い材料で形成されている。本実施形態では、具体的には、発泡樹脂(合成樹脂発泡体)で形成されている。保温箱16内に収容されるゴデットローラ11〜15の加熱温度が、例えば、80〜120℃の温度に設定されることから、保温箱16を構成する断熱板32には、その設定温度以上の耐熱性が要求されるが、耐熱性が満たない場合は補強板34と側板35の、断熱板32と接触する面に断熱塗料が塗布されてもよい。また、保温箱16から外部への放熱を抑えるために、当然ながら、断熱板32の断熱性もできるだけ高いことが好ましい。
【0049】
このような断熱板32に好適に使用できる発泡樹脂としては、耐熱性の面から熱硬化性樹脂の発泡材料が望ましく、例えば、発泡フェノール樹脂(フェノールフォーム)を挙げることができる。従来の保温箱で使用されているロックウールの熱伝達率が0.05W/(m・K)に対し、上記発泡フェノール樹脂(JIS A 9511フェノールフォーム)の熱伝達率は0.022W/(m・K)である。また、コスト面から、上記フェノールフォームに替えて、これよりも断熱性能に劣る材料を使用してもよい。その他に使用可能な材料としては、繊維系断熱材である、密度16kg/m
3以上のグラスウールボード(熱伝達率0.045W/(m・K))、炭化コルクボード(同0.041W/(m・K))、樹脂断熱材である、エポキシ樹脂(同0.19W/(m・K))、ベークライト(同0.21W/(m・K))、真空断熱材(同0.0052W/(m・K))等を挙げることができる。断熱板32は、予め、金属箱体31の補強板34とほぼ同じ大きさにカットされた上で、金属箱体31内に嵌め込まれるように収納され、補強板34に積層されている。また、補強板34の縁部全周に設けられた側板35によって、断熱板32の補強板34に対する位置ズレが規制される。尚、位置ズレを確実に防止するために、断熱板32が、金属箱体31に収容された状態で、金属箱体31に接着剤等で固定されてもよい。
【0050】
断熱補強板33は、断熱板32の表面(補強板34と反対側の面)に、断熱板32の表面全域を覆うように積層されている。断熱補強板33は、断熱板32を保護する目的から、断熱板32に比べ断熱性は多少劣っても、剛性や強度が高い材料で形成される。一方で、保温性の目的から、金属箱体31の補強板34よりは断熱性に優れた材料で形成される。例えば、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂で形成される。
図3に示すように、断熱板32と断熱補強板33の間には、さらに、シリコン等の液状のコーティング剤を塗布することにより、被覆層36が形成されてもよい。被覆層36のコーティング剤が、金属箱体31、断熱板32、及び、断熱補強板33の間に存在する隙間に染み渡ることで、それらの隙間が塞がれ、外部からの油剤や異物の浸入を防ぎ、断熱板32の変質を防ぐことができる。
【0051】
図2、
図4に示すように、扉部30fを除く5つの箱壁部30a〜30eは、金属箱体31の補強板34の、断熱板32と反対側の面が、保温箱16の内側に向くように連結されている。これにより、5つの箱壁部30a〜30eにおいては、補強板34の断熱板32と反対側の面が、保温箱16の内面をそれぞれ構成しており、断熱板32が補強板34よりも外側に位置している。この構成により、5つの箱壁部30a〜30eの外面の温度はそれほど高くならない。
【0052】
一方、扉部30fについては、金属箱体31の補強板34は断熱板32よりも外側に位置しており、補強板34の断熱板32と反対側の面は、保温箱16の内側に向いていない。扉部30fのみ上記の配置となっている理由は、次の通りである。扉部30fの外面には、取っ手37等の構造物が取り付けられるが、このような構造物を支えることのできるのに十分な剛性を、扉部30fの外面側に確保するためである。即ち、
図4に示すように、取っ手37を、断熱板32よりも外側に配置された、剛性の高い補強板34にボルト等で簡単に取り付けることができるようになる。
【0053】
尚、取っ手37は扉部30fの側面に取り付けられてもよい。その場合は、
図4において、金属箱体31の補強板34が保温箱16の内側を向いた構成であっても構わない。しかし、特に、以下のような構成では、取っ手37を扉部30fの前面に取り付ける場合でも側面に取り付ける場合でも、金属箱体31の補強板34は、保温箱16の外側を向いている必要がある。
図5は、別形状の扉部を有する保温箱の縦断面図である。
図5の構成では、糸掛けの作業性を向上させる目的で、ゴデットローラ11〜15(
図5には、3つのローラ11,13,15のみ図示)の先端部が、上壁部30a、下壁部30b、左側壁部30c、右側壁部30dの前面から突出している。この場合、扉部30fの内側に、ゴデットローラ11〜15の先端部との干渉を避けるための空間を確保する必要がある。そこで、扉部30fは、U字状の断面形状を有するものとなっている。このような扉部30fでは、その前面又は側面に取っ手37を取り付けるためには、金属箱体31の補強板34は断熱板32よりも外側に位置している必要がある。
【0054】
また、金属製の補強板34は断熱板32があることで、火傷を負うほどの高温にはならないが、扉部30fにおいてこの補強板34が外側に露出していると、オペレータが扉部30fを開閉操作する際に、常温よりも高い温度の補強板34に直接手が触れてしまう虞がある。そこで、
図4、
図5に示すように、扉部30fにおいては、金属箱体31の外面にも、断熱層38が積層されている。尚、この断熱層38は、断熱板32に積層される断熱補強板33と材質等が同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。また、扉部30fについては、保温箱16の内側に断熱板32が露出する。そこで、糸屑や切れた走行糸による断熱板32の破損を防ぐために、図示しない保護板が、断熱板32の、保温箱16の内側の面に積層されていてもよい。
【0055】
図4に示すように、保温箱16は、後壁部30eにおいて、紡糸延伸装置3の各構成部を支持する機台40に取り付けられている。具体的には、後壁部30eの補強板34と機台40との間に樹脂製のスペーサ42を介在させ、複数のボルト41を通すことによって、保温箱16が機台に固定されている。尚、保温箱16からボルト41を介しての外部放熱を極力抑えるために、ボルト41は、金属製のものではなく、樹脂製のものであることが好ましい。
【0056】
次に、上記の保温箱16の製造方法について説明する。保温箱16の製造工程は、大別すると、6つの金属箱体31をそれぞれ形成する工程(金属箱体形成工程)と、6つの金属箱体31を接合する工程(組立工程)と、6つの金属箱体31へ断熱板32等を積層させて箱壁部30を形成する工程(箱壁部形成工程)とを備える。
【0057】
尚、これらの工程の順番としては、以下の2通りが考えられるが、何れの方法も実施可能である。作業性等を考慮して適宜選択すればよい。
(1)金属箱体形成工程→組立工程(6つの金属箱体31を接合)→箱壁部形成工程(金属箱体31に断熱板32等を積層)
(2)金属箱体形成工程→箱壁部形成工程→組立工程
【0058】
(金属箱体形成工程)
まず、1枚の金属板にプレス加工を施して、補強板34と側板35とを一体成形し、金属箱体31を作製する。この要領で6つの金属箱体31をそれぞれ形成する。
【0059】
(組立工程)
組立工程では6つの金属箱体31を接合する。接合方法は、6つの金属箱体31同士を溶接によって接合してもよいが、ボルト等の連結具によって接合してもよい。ここで、
図4に示すように、6つの箱壁部30のうちの扉部30fを除く5つの箱壁部30a〜30eに対応する金属箱体31については、それらの補強板34の断熱板32と反対側の面が、保温箱16の内側を向くような姿勢にして連結する。一方、扉部30fについては、閉じた状態で、補強板34が断熱板32よりも外側に位置するような姿勢で、左側壁部30cに対応する金属箱体31にヒンジ等で回転自在に接合する。
【0060】
(箱壁部形成工程)
予め、補強板34とほぼ同じ平面積となる大きさにカットされた断熱板32を、金属箱体31内に嵌め込むようにして収納し、補強板34に積層接着させる。次に、断熱板32の上にシリコン等のコーティング剤を塗布して被覆層36を形成する。最後に、被覆層36の表面(補強板34と反対側の面)にフェノール樹脂等からなる断熱補強板33を積層する。断熱補強板33の形成は、樹脂プレートを被覆層36に積層させてもよいし、液状の硬化性樹脂を被覆層36の表面に塗布してから硬化させてもよい。以上の作業を繰り返して6つの箱壁部30をそれぞれ形成する。但し、扉部30fについては、補強板34の、断熱板32の積層側と反対側の面に断熱補強板33を積層させるという作業を、特別に行う。
【0061】
以上説明した本実施形態の保温箱16によれば、次のような効果が得られる。
(1)6つの箱壁部30のそれぞれが、発泡樹脂からなる断熱板32と金属製の補強板34とが積層されてなるパネル構造を有する。それ故、断熱板32を補強板34に積層することで箱壁部30となる1つのパネルを簡単に形成できる。さらに、保温箱16の骨格形状が、6つの金属箱体31を接合するだけで完成することから、保温箱16の組立が非常に容易である。また、発泡樹脂からなる断熱板32の断熱性は、従来使用されていたロックウールなどと比べると数倍高い。従って、各箱壁部30の断熱性が高くなり、ひいては、保温箱16全体の断熱性能も向上する。さらに、所定サイズの断熱板32を補強板34に積層するだけで断熱板32の取付が完了するので、不慣れな作業者が作業を行う場合でも、保温箱16の断熱性が不均一になりにくい。
【0062】
(2)6つの箱壁部30のうち、箱壁部30a〜30eでは、熱伝導率が高い金属の補強板34が、断熱板32の内面にしか積層されていない。また、扉部30fでは、金属の補強板34が、断熱板32の外面にしか積層されていない。従って、6つの箱壁部30のそれぞれにおいて、補強板34を伝わって内部の熱が外部へ逃げる熱量を抑制することができる。即ち、断熱板32の外面にしか補強板34がない場合は、保温箱16の内部の高温の空気が金属の補強板34には直接触れず、断熱板32を介してのみ外面の補強板34に熱が伝わるので、外面の補強板34が高温になることがなく、外面から放出される熱エネルギーの量が抑制される。また、断熱板32の内面にしか補強板34がない場合は、保温箱16の内部の高温の空気で内面の補強板34は高温になるものの、断熱板32で熱伝導が抑えられる。従って、保温箱16の外面に伝わる熱エネルギーが抑えられ、外面から放出される熱エネルギーの量も抑制される。
【0063】
(3)補強板34の縁部に側板35が設けられているため、箱壁部30の曲げ剛性が高くなる。特に、本実施形態では、側板35が、補強板34の縁部全周にわたって連続的に設けられていることから、金属箱体31の剛性は高く、それゆえ箱壁部30の剛性もかなり高くなる。このように箱壁部30の剛性が高くなることで、保温箱16全体の剛性も向上する。あるいは、金属製の補強板34(金属箱体31)の厚みを薄くして、保温箱16を軽量化することも可能となる。また、側板35は、補強板34から断熱板32の積層側に延びているために、断熱板32の側面が側板35に覆われる。特に、補強板34の縁部全周に側板35が設けられていることで、断熱板32の側面全周が側板35で覆われるため、断熱板32の側面が確実に保護される。
【0064】
また、断熱板32を、金属箱体31の側板35内に断熱板32を嵌め込むように収納するだけで、断熱板32を簡単に取り付けることができる。また、側板35によって断熱板32の補強板34に対する位置ズレが確実に規制される。
【0065】
さらに、補強板34と側板35とが、プレス加工により一体成形されているため、補強板34と側板35を溶接等で接合する作業が不要であり、箱壁部30の形成がさらに簡単になる。
【0066】
(4)断熱板32の、補強板34とは反対側の面に、断熱補強板33が積層されているため、断熱板32の補強板34と反対側の面が断熱補強板33によって保護される。また、断熱補強板33が設けられることによって、剛性の高い補強板34と断熱補強板33で比較的剛性の低い断熱板32を挟み込む、いわゆるサンドイッチ構造となるため、全体の剛性を上げることができる。尚、断熱補強板33は、板状の部材によって構成されてもよいし、液状樹脂が塗布された後に硬化した、剛性を有する層であってもよく、その形態は特に限定されない。
【0067】
(5)本実施形態では、扉部30fを除く5つの箱壁部30a〜30eのそれぞれにおいて、その補強板34の断熱板32とは反対側の面が保温箱16の内側を向いて、保温箱16の内面を構成している。金属製の補強板34は、発泡樹脂の断熱板32や断熱補強板33と比べて表面硬度が高い。糸切れによってゴデットローラ11〜15に巻き付いた糸Yが保温箱16の内面を叩いたり、糸掛けの際に作業者がサクションガンを保温箱16の内面にぶつけたりしても、内面が傷つきにくい。また、金属製の補強板34の表面は平滑であるため、糸Yから分離した油剤や糸屑等の塵、あるいは、汚れが保温箱16の内面に付着しても、清掃が容易である。尚、ゴデットローラ11〜15の汚れが激しい場合は、アルカリ性の洗浄液や大量の水で清掃されることがある。そのため、保温箱16の内面は清掃し易くかつ腐食し難いステンレス鋼板で構成されることが望ましい。
【0068】
次に、前記実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0069】
1]箱壁部30の構成は、例えば、以下のように変更可能である。
前記実施形態では、各箱壁部30の補強板34の縁部全周にわたって連続的に側板35が設けられていたが、
図6(a)に示すように、補強板34の縁部に沿って、複数の側板35が互いに間隔を空けて設けられていてもよい。
【0070】
また、補強板34の縁部全周に側板35が設けられていなくてもよい。この場合でも、箱壁部30の曲げ剛性を確保するためには、補強体34の縁部の、補強板34の面方向と平行な方向において互いに反対側に位置する2つの部分に、側板35がそれぞれ設けられていることが好ましい。例えば、
図6(b)には、補強板34の縁部のうちの短辺方向において互いに反対側に位置する2つの部分、即ち、補強板34の2つの長辺部分に、2つの側板35がそれぞれ設けられている。この形態においても、断熱板32を、2つの側板35によって区切られた空間に断熱板32を嵌め込むように収納するだけでその取付が完了するため、断熱板32の取付が簡単である。また、2つの側板35によって断熱板32の補強板34に対する、補強板34の短辺方向における位置ズレが規制される。
【0071】
また、
図2では、6つの箱壁部30のうち、左側壁部30c、右側壁部30d、及び、後壁部30eの3つの箱壁部30では、それぞれの一部の側部が、上壁部30a及び下壁部30bに当接している。このような側部においては、断熱板32が側板35によって覆われている必要はあまりない。つまり、
図2のような保温箱16であれば、特に、左側壁部30c、右側壁部30d、及び、後壁部30eの3つの箱壁部30に、
図6(b)の構成を好適に採用できる。
【0072】
また、
図6(c)に示すように、側板35が、補強板34から、断熱板32の積層側とは反対側に延びていてもよい。また、
図6(d)に示すように、補強板34(金属箱体31)のねじれ剛性を高めるために、補強板34の対角を結ぶようにリブ39が設けられてもよい。尚、
図6(d)では、金属箱体31内の、2本のリブ39によって仕切られた4つの空間に、4つの断熱板32がそれぞれ収容されている。
【0073】
また、前記実施形態では、1枚の金属板にプレス加工を施すことによって、補強板34と側板35とが一体形成される例が開示されているが、1枚の金属板を折り曲げ、必要に応じて四隅に溶接を施すことで補強板34と側板35を形成してもよい。または、補強板34に、この補強板34とは別の板である、側板35をボルトや溶接等で接合してもよい。
【0074】
また、
図6(e)に示すように、補強板34の縁部に側板35が設けられておらず、補強板34に断熱板32が積層されているだけでもよい。尚、この場合は、断熱板32が補強板34に対して位置ズレしないように、接着剤やボルト等によって断熱板32を補強板34に固定しておくことが好ましい。
【0075】
2]前記実施形態では、
図3、
図4に示すように、断熱板32の補強板34と反対側の面に断熱補強板33が積層されていたが、この断熱補強板33が省略されてもよい。
【0076】
3]前記実施形態では、扉部30fを除く5つの箱壁部30a〜30eについては、補強板34の断熱板32とは反対側の面が保温箱16の内側を向き、一方、扉部30fについては補強板34が断熱板32よりも外側に配置されている。これについて、各箱壁部30の姿勢(向き)をどのようにするかについては特に限定されない。例えば、扉部30fも含めた全ての箱壁部30において、補強板34が内側を向くようにしてもよい。
【0077】
あるいは、扉部30f以外の箱壁部30においても、補強板34が断熱板32よりも外側に配置されてもよい。特に、ある箱壁部30において、何らかの構造体が取り付けられる場合は、この箱壁部30については
、断熱板32の外側に付帯部品の取り付け強度を保つため、また、選定によっては、柔らかい発泡樹脂製の断熱板32が外側に露出しないように、補強板34が断熱板32よりも外側に位置していることが好ましい。
【0078】
4]保温箱16内に収容される、加熱ローラの構成については特に限定されるものではない。例えば、前記特許文献1に開示されているような加熱ローラの構成であってもよい。即ち、
図7に示すように、保温箱46内には、内部ヒータ42を有する加熱ローラであるゴデットローラ43と、非加熱ローラであるセパレートローラ44が収容されている。保温箱46の糸導入口46aから導入された複数の糸Yは、ゴデットローラ43とセパレートローラ44の間に複数回巻き付けられる。ゴデットローラ43との接触によって加熱された複数の糸Yは、保温箱46の糸導出口46bから下流側へ送られる。
【0079】
5]前記実施形態では、保温箱16を構成する6つの箱壁部30の全てが、金属製の補強板34と側板35からなる金属箱体31と、発泡樹脂からなる断熱板32とを有する構造であった。これに対して、6つの箱壁部30のうちの一部が、上記とは異なる構造を有するものであってもよい。例えば、6つの箱壁部30のうち、扉部30fを除く5つの箱壁部30a〜30fは、補強板34と断熱板32の積層構造とし、一方、保温機能以外の異なる機能(例えば、オペレータの操作性)も要求される扉部30fについては、軽量化等を重視して異なる構造を採用してもよい。