特許第6220218号(P6220218)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6220218
(24)【登録日】2017年10月6日
(45)【発行日】2017年10月25日
(54)【発明の名称】半導体集積回路装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/822 20060101AFI20171016BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20171016BHJP
   H03K 17/00 20060101ALI20171016BHJP
【FI】
   H01L27/04 H
   H03K17/00 D
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-217504(P2013-217504)
(22)【出願日】2013年10月18日
(65)【公開番号】特開2015-79916(P2015-79916A)
(43)【公開日】2015年4月23日
【審査請求日】2016年10月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080001
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 大和
(74)【代理人】
【識別番号】100113642
【弁理士】
【氏名又は名称】菅田 篤志
(74)【代理人】
【識別番号】100117008
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 章子
(74)【代理人】
【識別番号】100147430
【弁理士】
【氏名又は名称】坂次 哲也
(72)【発明者】
【氏名】福尾 則学
(72)【発明者】
【氏名】青野 英樹
(72)【発明者】
【氏名】村上 英一
【審査官】 小堺 行彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−054499(JP,A)
【文献】 特開2011−171999(JP,A)
【文献】 特開2011−004196(JP,A)
【文献】 特開2009−296548(JP,A)
【文献】 特開2006−173217(JP,A)
【文献】 特開2003−317479(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0274384(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/822
H01L 27/04
H03K 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
MOSトランジスタのNBTIによる劣化を回復させるリセットパルスを生成し、前記リセットパルスを前記MOSトランジスタのゲートに入力した後、前記MOSトランジスタを動作させる動作制御信号を前記MOSトランジスタのゲートに入力するリセットパルス制御部を有し、
前記リセットパルス制御部は、
前記動作制御信号に基づいて、リセットパルスを生成するリセットパルス生成部と、
前記リセットパルス生成部が生成した前記リセットパルスに基づいて、前記動作制御信号または前記リセットパルスのいずれかを前記MOSトランジスタのゲートに出力する信号切り替え制御部と、
を有し、
前記信号切り替え制御部は、前記動作制御信号を前記MOSトランジスタのゲートに出力する前に、前記リセットパルスを前記MOSトランジスタのゲートに出力する、半導体集積回路装置。
【請求項2】
請求項記載の半導体集積回路装置において、
前記リセットパルス生成部が生成する前記リセットパルスは、前記MOSトランジスタのしきい値電圧の絶対値よりも高い電圧のパルス信号である、半導体集積回路装置。
【請求項3】
請求項記載の半導体集積回路装置において、
前記リセットパルス生成部が生成する前記リセットパルスは、前記MOSトランジスタの基準電位である、半導体集積回路装置。
【請求項4】
請求項記載の半導体集積回路装置において、
前記リセットパルス生成部が生成する前記リセットパルスは、前記動作制御信号の1/2周期以上の長さを有する、半導体集積回路装置。
【請求項5】
請求項記載の半導体集積回路装置において、
前記リセットパルス生成部が生成する前記リセットパルスは、前記MOSトランジスタのゲートに印加される負電圧と基準電位とを振幅とする矩形波である、半導体集積回路装置。
【請求項6】
請求項記載の半導体集積回路装置において、
前記リセットパルス生成部が生成する矩形波の前記リセットパルスは、前記動作制御信号の周波数よりも遅い周波数である、半導体集積回路装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路装置に関し、特に、PチャネルMOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタの誤動作の防止に有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路装置などに形成されているPチャネルMOSのトランジスタには、NBTI(Negative Bias Temperature Instability)という特性変動が発生することが知られている。
【0003】
このNBTIは、PチャネルMOSのトランジスタのゲートに負のゲートバイアスを印加していると、該トランジスタのしきい値電圧(ΔVth)の絶対値が次第に大きくなっていく現象である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、NBTIによって、トランジスタのしきい値電圧が大きくなってしまうと、トランジスタがオンしなかったり、あるいは該トランジスタのオンのタイミングが遅れたりなどの誤動作の可能性が大きくなってしまう。しかしながら、NBTIによるトランジスタの劣化については、何ら考慮されておらず、トランジスタの信頼性問題が生じている。
【0005】
このNBTIによる劣化モードは、以下の3種類が知られている。
【0006】
(1)回復しないゲート酸化膜中の固定電荷(ΔVot)
(2)回復の遅いゲート酸化膜/シリコン(Si)基板の界面準位
(3)時定数が小さく、〜10-6s(μs)程度にて回復する非常に回復し易い膜中ホールトラップ(ΔVh)
である。ここで、膜中ホールトラップは、例えば、〜10-6s(μs)程度にて回復する。
【0007】
連続的なAC動作を行う回路では、上記(3)の非常に回復しやすい成分(ΔVh)がAC動作で回復するため、劣化量の大幅な緩和が期待できる。
【0008】
但し、トランジスタがスタンバイ状態、すなわちDCストレス状態では、上記全ての劣化モードを考慮する必要があり、NBTIによる劣化量が大きくなると、トランジスタの高信頼性の確保が困難となる。
【0009】
特に、スタンバイ状態が長いフリップフロップ回路またはSRAM(Static Random Access Memory)メモリ回路などに使用されているPチャネルMOSのトランジスタの場合には、DCストレスにて大きくNBTIが劣化していることが考えられる。
【0010】
スタンバイ状態が長期間続いた直後に、フリップフロップ回路やSRAMメモリ回路などが動作、すなわちトランジスタがAC動作する場合、NBTIの信頼性確保がより困難となる。これにより、フリップフロップ回路やSRAMメモリ回路などの誤動作が発生し、半導体集積回路装置の信頼性を損なう恐れがある。
【0011】
本発明の目的は、NBTIによるPチャネルMOSトランジスタの誤動作を防止する技術を提供することにある。
【0012】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴については、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
一実施の形態による半導体集積回路装置は、リセットパルス制御部を有する。このリセットパルス制御部は、MOSトランジスタを動作させる動作制御信号が入力された際に、MOSトランジスタのNBTIによる劣化を回復させるリセットパルスを生成する。そして、MOSトランジスタのゲートにリセットパルスを入力する。
【0014】
一実施の形態による半導体集積回路装置は、リセットパルス制御部を有する。このリセットパルス制御部は、スタンバイ状態においてゲートに負電圧が印加されるMOSトランジスタのNBTIによる劣化を回復させるリセットパルスを生成する。
【0015】
そして、リセットパルスをMOSトランジスタのゲートに入力した後に、MOSトランジスタを動作させる動作制御信号をMOSトランジスタのゲートに入力する。
【発明の効果】
【0016】
上記一実施の形態によれば、半導体集積回路装置の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施の形態1によるリセットパルス制御部における構成の一例を示す説明図である。
図2図1のリセットパルス制御部が有するリセットパルス生成部における構成の一例を示す説明図である。
図3図1のリセットパルス制御部が有する制御信号生成部における構成の一例を示す説明図である。
図4図1のリセットパルス制御部による動作の一例を示すフローチャートである。
図5】リセットパルス制御部の各部における信号のタイミングチャートである。
図6】実施の形態2によるリセットパルス制御部が有するリセットパルス生成部の構成の一例を示した説明図である。
図7】実施の形態2によるリセットパルス制御部が有する制御信号生成部の構成の一例を示した説明図である。
図8】リセットパルス制御部の各部における信号のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0019】
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0020】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0021】
同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0022】
また、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
【0023】
(実施の形態1)
〈概要〉
従来技術にて述べたNBTIによる3種類の劣化モードは、以下の式1にて示すことができる。
【0024】
NBTI(ΔVth)=固定電位(ΔVot)+界面電位(ΔVit)+Hole trap(ΔVh) (式1)
ここで、式1における膜中ホールトラップ(ΔVh)は、非常に回復し易い劣化モードであり、この回復性の劣化を利用することによって、トランジスタの誤動作を防止する技術である。
【0025】
この技術では、非動作状態、いわゆる待機状態であるスタンバイ状態からトランジスタがAC動作を開始する直前に、劣化モードを回復状態とするリセットパルス(例えばVgs=0V)を該トランジスタのゲートに入力する。
【0026】
これにより、上記した膜中ホールトラップΔVhを回復させて、NBTI劣化量を大幅に低減させた後、回路動作、すなわちトランジスタのAC動作を行うことによって、NBTIの信頼性耐性を向上させるものである。
【0027】
以下、上記した概要に基づいて、実施の形態を詳細に説明する。
【0028】
〈リセットパルス制御部の構成例〉
図1は、実施の形態1によるリセットパルス制御部における構成の一例を示す説明図である。
【0029】
リセットパルス制御部RPCは、半導体集積回路装置に設けられている。このリセットパルス制御部RPCは、同じく半導体集積回路装置に設けられている動作対象の機能ブロックに用いられる、例えばPチャネルMOSからなるトランジスタのゲートにリセットパルスRPを出力する。
【0030】
リセットパルスRPは、PチャネルMOSのトランジスタがスタンバイ状態からAC動作する直前に、該トランジスタのゲートに入力する。これにより、トランジスタの劣化モードを回復状態とさせる。
【0031】
リセットパルス制御部RPCは、図1に示すように、リセットパルス生成部RPG、動作信号切り替え部SSW、および制御信号生成部CSGを有する。また、動作信号切り替え部SSW、および制御信号生成部CSGによって、信号切り替え制御部が構成されている。
【0032】
リセットパルス生成部RPGは、動作制御信号ACCに基づいて、パルス信号PSを生成する。動作制御信号ACCは、対象のトランジスタをAC動作させる制御信号であり、半導体集積回路装置に設けられた制御ブロックなどからリセットパルス制御部RPCに対して出力される信号である。
【0033】
動作信号切り替え部SSWは、制御信号S1,S2に基づいて、パルス信号PSまたは動作制御信号ACCのいずれかを出力する。動作信号切り替え部SSWは、動作対象のトランジスタがAC動作する前に、パルス信号PSを該トランジスタのゲートに印加するリセットパルスRPとして出力する。
【0034】
続いて、対象のトランジスタをAC動作させる動作制御信号ACCを出力する。制御信号生成部CSGは、リセットパルス生成部RPGが生成するパルス信号PSに基づいて、制御信号S1,S2を生成する。
【0035】
〈リセットパルス生成部の構成例〉
図2は、図1のリセットパルス制御部RPCが有するリセットパルス生成部RPGにおける構成の一例を示す説明図である。
【0036】
リセットパルス生成部RPGは、図示するように、例えば4つのフリップフロップ回路FF1〜FF4からなる。これらフリップフロップ回路FF1〜FF4は、ポジティブエッジトリガのJK型フリップフロップからなる。
【0037】
フリップフロップ回路FF1〜FF4のセット端子Jおよびリセット端子Kには、1(=グランド電位GND)がそれぞれ固定入力されている。ここで、グランド電位GNDは、動作対象の機能ブロックの回路における基準電位である。
【0038】
また、フリップフロップ回路FF1のクロック端子CKは、リセットパルス制御部RPCの入力部Inputに接続されている。この入力部Inputには、対象のトランジスタをAC動作させる動作制御信号ACCが入力される。
【0039】
フリップフロップ回路FF1の出力端子Qには、フリップフロップ回路FF2のクロック端子CKが接続されており、フリップフロップ回路FF2の出力端子Qには、フリップフロップ回路FF3のクロック端子CKが接続されている。
【0040】
同様に、フリップフロップ回路FF3の出力端子Qには、フリップフロップ回路FF4のクロック端子CKが接続されている。フリップフロップ回路FF4の出力端子Qから出力される信号がパルス信号PSとして出力される。
【0041】
動作信号切り替え部SSWは、図1に示すように、2つのトランジスタT1,T2を有する。これらトランジスタT1,T2は、いずれもNチャネルMOSからなる。トランジスタT1のソース/ドレインの一端には、入力部Inputが接続されている。トランジスタT1のゲートには、制御信号生成部CSGが生成した制御信号S1が入力されるように接続されている。
【0042】
トランジスタT2のソース/ドレインの一端には、リセットパルス生成部RPGが生成したパルス信号PSが入力されるように接続されており、該トランジスタT2のゲートには、制御信号生成部CSGが生成した制御信号S2が入力されるように接続されている。
【0043】
トランジスタT1のソース/ドレインの他端とトランジスタT2のソース/ドレインの他端とは、共通接続されている。このトランジスタT1とトランジスタT2との接続部は、出力部Outputに接続されている。出力部Outputには、動作対象となるトランジスタのゲートが接続されている。
【0044】
動作信号切り替え部SSWは、制御信号S1,S2に基づいて、トランジスタT1,T2がオンまたはオフとなることによって、リセットパルス生成部RPGが生成するパルス信号PSをリセットパルスRPとして出力するか、あるいは動作制御信号ACCを出力するかを切り替える。
【0045】
〈制御信号生成部の構成例〉
図3は、図1のリセットパルス制御部RPCが有する制御信号生成部CSGにおける構成の一例を示す説明図である。
【0046】
制御信号生成部CSGは、図示するように、フリップフロップ回路FF5,FF6、論理積回路AND、および否定論理積回路NANDから構成されている。フリップフロップ回路FF5は、ポジティブエッジトリガのJK型フリップフロップからなる。フリップフロップ回路FF6は、ネガティブエッジトリガのJK型フリップフロップからなる。
【0047】
フリップフロップ回路FF5,FF6のセット端子Jには、1(=グランド電位GND)が固定入力されている。
【0048】
フリップフロップ回路FF5,FF6のリセット端子Kには、0(=電源電圧VDD)がそれぞれ固定入力されている。ここで、電源電圧VDDは、例えば−1.0V程度〜−1.5V程度の負電圧である。
【0049】
フリップフロップ回路FF5のクロック端子CKは、リセットパルス生成部RPGが生成したパルス信号PSが、フリップフロップ回路FF6のクロック端子CKは、リセットパルス生成部RPGが生成したパルス信号PSの反転信号が入力されようにそれぞれ接続されている。
【0050】
フリップフロップ回路FF5の出力端子Qには、論理積回路ANDおよび否定論理積回路NANDの一方の入力部が、それぞれ接続されている。フリップフロップ回路FF6の出力端子/Qには、論理積回路ANDおよび否定論理積回路NANDの他方の入力部が、それぞれ接続されている。ここで、出力端子/Qは、出力端子Qの反転信号が出力される。
【0051】
論理積回路ANDの出力部は、トランジスタT2のゲートに接続されており、否定論理積回路NANDの出力部は、トランジスタT1のゲートに接続されている。論理積回路ANDの出力部から出力される信号が制御信号S2であり、否定論理積回路NANDの出力部から出力される信号が制御信号S1である。
【0052】
〈リセットパルス制御部の動作例〉
次に、リセットパルス制御部の動作について、図1図5を用いて説明する。
【0053】
図4は、図1のリセットパルス制御部RPCによる動作の一例を示すフローチャートである。図5は、リセットパルス制御部RPCの各部における信号のタイミングチャートである。
【0054】
図5において、上方から下方にかけては、動作対象の回路が有するトランジスタをAC動作させる動作制御信号ACC、リセットパルス生成部RPGから出力されるリセットパルスRP、制御信号生成部CSGが生成する制御信号S1,S2、および動作信号切り替え部SSWから出力されるリセットパルスRPまたは動作制御信号ACCの信号タイミングをそれぞれ示している。
【0055】
まず、動作制御信号ACCは、0(=電源電圧VDD)となっており、対象となる機能ブロックがスタンバイ状態となっている(ステップS101)。ここで、対象となる機能ブロックは、例えばフリップフロップなどである。
【0056】
フリップフロップは、スタンバイ状態となっている時間が、回路動作している時間、すなわちAC動作している時間よりも長い回路である。スタンバイ状態の時間が長くなると、フリップフロップに用いられるPチャネルMOSトランジスタのしきい値電圧が、NBTIによって大きく上昇することが考えられる。
【0057】
対象となる機能ブロックがスタンバイ状態の時、制御信号生成部CSGから出力される制御信号S1は1(=電源電圧VDD)であり、制御信号S2は0(=グランド電位GND)である。この状態の場合、動作信号切り替え部SSWのNチャネルMOSのトランジスタT1はオンしており、同じくNチャネルMOSのトランジスタT2はオフとなっている。よって、対象となる機能ブロックのPチャネルMOSのトランジスタのゲートには、0(=電源電圧VDD)が印加されている(図5の期間T1)。
【0058】
スタンバイ状態では、トランジスタのゲートに0、すなわち−1.0V程度〜−1.5V程度の負電圧が印加されているので、先に述べたNBTIによるトランジスタの劣化が発生してしまう。
【0059】
続いて、対象となる機能ブロックを動作させるために、リセットパルス制御部RPCに動作制御信号ACCが入力されると(ステップS102)、該動作制御信号ACCに基づいて、リセットパルス生成部RPGが、パルス信号PSを生成する(ステップS103)。
【0060】
生成されたパルス信号PSは、リセットパルスRPとしてリセットパルス制御部RPCから出力され(図5の期間T2)、トランジスタのゲートに印加される(ステップS104)。
【0061】
ここで、リセットパルス生成部RPGにおけるフリップフロップ回路FF1〜FF4は、出力端子Qの初期状態がそれぞれ0であり、先述したように、ポジティブエッジトリガのJK型フリップフロップである。
【0062】
JK型フリップフロップは、セット端子Jおよびリセット端子Kの入力がいずれも1の時に、クロック端子CKにクロックパルスが入力される度に0と1との状態が入れ替わる動作、いわゆるトグル動作を行う。
【0063】
よって、フリップフロップ回路FF1のクロック端子CKに動作制御信号ACCが入力されると、フリップフロップ回路FF1の出力端子Qからは、動作制御信号ACCの1周期の期間、1が出力される。
【0064】
また、フリップフロップ回路FF2の出力端子Qからは、フリップフロップ回路FF1の出力端子Qから出力される信号の1周期の期間、1が出力され、フリップフロップ回路FF3の出力端子Qからは、フリップフロップ回路FF2の出力端子Qから出力される信号の1周期の期間、1が出力される。同様に、フリップフロップ回路FF4の出力端子Qからは、フリップフロップ回路FF3の出力端子Qから出力される信号の1周期の期間、1が出力される。
【0065】
これにより、リセットパルス生成部RPGからは、動作制御信号ACCにおける8周期の期間、1となるパルス信号PSが出力される。なお、パルス信号PSの長さは、リセットパルス生成部RPGのフリップフロップ回路の数を増減させることによって調整することができる。
【0066】
また、制御信号生成部CSGにおけるフリップフロップ回路FF5は、出力端子Qの初期状態が0であり、フリップフロップ回路FF6は、出力端子/Qの初期状態が1である。
【0067】
先述の通り、フリップフロップ回路FF5は、ポジティブエッジトリガのJK型フリップフロップであり、フリップフロップ回路FF6は、ネガティブエッジトリガのJK型フリップフロップである。
【0068】
よって、パルス信号PSが1となると、フリップフロップ回路FF5の出力端子Q、およびフリップフロップ回路FF6の出力端子/Qからは、それぞれ1が出力される。否定論理積回路NANDから出力される制御信号S1は、0となり、論理積回路ANDから出力される制御信号S2は、1となる。
【0069】
これによって、動作信号切り替え部SSWのトランジスタT1がオフとなり、トランジスタT2がオンとなり、該動作信号切り替え部SSWから、リセットパルス生成部RPGが生成した1のパルス信号PSがリセットパルスRPとして出力される。
【0070】
1(=グランド電位GND)のリセットパルスRPがトランジスタのゲートに入力されることによって、該トランジスタの膜中ホールトラップΔVhを回復させる。これによって、上昇したトランジスタのしきい値電圧を低下させることができる。
【0071】
ここで、トランジスタのゲートに印加するリセットパルスRPの時間は、例えば動作制御信号ACCの1/2周期以上であればよい。また、動作制御信号ACCの周期に変動がある場合には、最も速い周期の1/2周期以上をリセットパルスRPの印加時間とする。
【0072】
ここでは、リセットパルスRPを1(=グランド電位GND)としたが、該リセットパルスRPの電圧は、トランジスタのしきい値電圧よりも高い電圧値であれば、NBTIによって上昇したしきい値電圧を低下させることができる。
【0073】
そして、リセットパルス生成部RPGから出力されるはパルス信号PSが、1から0に遷移すると、否定論理積回路NANDから出力される制御信号S1は、1となり、論理積回路ANDから出力される制御信号S2は、0となる。
【0074】
これによって、動作信号切り替え部SSWのトランジスタT1がオン、トランジスタT2がオフとなり、該動作信号切り替え部SSWからは、動作制御信号ACCが出力される(図5の期間T3)。動作対象の機能ブロックにおけるトランジスタは、動作制御信号ACCに基づいて、動作を開始する(ステップS105)。以上により、リセットパルス制御部RPCの処理が終了となる。
【0075】
以上により、対象のトランジスタのゲートにリセットパルスRPを印加して、該トランジスタのしきい値電圧を低下させた後、動作制御信号ACCを印加してトランジスタを動作させるので、該トランジスタの誤動作を低減することができる。
【0076】
また、トランジスタの誤動作を低減させることにより、半導体集積回路装置の信頼性を向上させることができる。
【0077】
(実施の形態2)
〈概要〉
前記実施の形態1では、1(=グランド電位GND)のリセットパルスRPをトランジスタのゲートに印加する構成であったが、本実施の形態2においては、リセットパルスRPを矩形波状のパルスとする。
【0078】
リセットパルスRPは、1(=グランド電位GND)と0(=電源電圧VDD)との振幅を有する矩形波となっている。リセットパルスRPは、動作制御信号ACCの周波数よりも遅い周波数となっている。そして、任意の期間、リセットパルスRPを出力した後に、動作制御信号ACCが出力される。
【0079】
リセットパルス制御部RPCの構成は、前記実施の形態1の図1と同様に、リセットパルス生成部RPG、動作信号切り替え部SSW、および制御信号生成部CSGを有する。
【0080】
〈リセットパルス生成部の構成例〉
図6は、実施の形態2によるリセットパルス制御部RPCが有するリセットパルス生成部RPGの構成の一例を示した説明図である。
【0081】
リセットパルス生成部RPGは、図示するように、1つのフリップフロップ回路FF7からなる。このフリップフロップ回路FF7は、ポジティブエッジトリガのJK型フリップフロップからなる。
【0082】
フリップフロップ回路FF7のセット端子Jおよびリセット端子Kには、0(=電源電圧VDD)がそれぞれ固定入力されている。また、フリップフロップ回路FF7のクロック端子CKは、リセットパルス制御部RPCの入力部Inputに接続されている。
【0083】
フリップフロップ回路FF7のクロック端子CKに動作制御信号ACCが入力されると、フリップフロップ回路FF7の出力端子Qからは、動作制御信号ACCの1周期の期間、1が出力される。このフリップフロップ回路FF7の出力端子Qから出力される信号がパルス信号PSとして出力される。
【0084】
〈制御信号生成部の構成例〉
図7は、実施の形態2によるリセットパルス制御部RPCが有する制御信号生成部CSGの構成の一例を示した説明図である。
【0085】
制御信号生成部CSGは、図示するように、タイマTMR、パルス発生部PG、およびインバータIVを有する。タイマTMRの入力部には、リセットパルス生成部RPGが生成したパルス信号PSが入力されるように接続されている。
【0086】
タイマTMRの出力部には、パルス発生部PGの入力部が接続されている。タイマTMRは、リセットパルス生成部RPGが生成したパルス信号PSが入力された際に、ある一定期間の間、タイマ信号を出力する。
【0087】
パルス発生部PGは、パルスを発生する回路である。パルス発生部PGは、タイマ信号が入力されている間、該パルス発生部PGの出力部から0のパルスを出力する。このパルス発生部PGの出力部には、動作信号切り替え部SSWにおけるトランジスタT1のゲートが接続されている。パルス発生部PGの出力部から出力されるパルス信号は、制御信号S1となる。
【0088】
また、パルス発生部PGの出力部には、インバータIVの入力部が接続されており、該インバータIVの出力部には、動作信号切り替え部SSWにおけるトランジスタT2のゲートが接続されている。インバータIVは、パルス発生部PGの出力部から出力されるパルス信号を反転して出力し、制御信号S2として出力する。
【0089】
〈リセットパルス制御部の動作例〉
次に、リセットパルス制御部RPCの動作について説明する。
【0090】
図8は、リセットパルス制御部RPCの各部における信号のタイミングチャートである。
【0091】
図8において、上方から下方にかけては、動作対象の回路が有するトランジスタをAC動作させる動作制御信号ACC、リセットパルス生成部RPGから出力されるリセットパルスRP、制御信号生成部CSGが生成する制御信号S1,S2、および動作信号切り替え部SSWから出力されるリセットパルスRPまたは動作制御信号ACCの信号タイミングをそれぞれ示している。
【0092】
まず、動作制御信号ACCは、0(=電源電圧VDD)となっており、対象となる機能ブロックがスタンバイ状態となっている(図8の期間T4)。続いて、対象となる機能ブロックを動作させるために、リセットパルス制御部RPCに動作制御信号ACCが入力されると、リセットパルス生成部RPGは、矩形波のパルス信号PSを生成する。
【0093】
生成されたパルス信号PSは、リセットパルスRPとしてリセットパルス制御部RPCから出力され(図8の期間T5)、トランジスタのゲートに印加される。
【0094】
ここで、リセットパルス生成部RPGのフリップフロップ回路FF7は、出力端子Qの初期状態がそれぞれ0であり、先述したように、ポジティブエッジトリガのJK型フリップフロップであるので、フリップフロップ回路FF7のクロック端子CKに動作制御信号ACCが入力されると、出力端子Qからは、動作制御信号ACCの1周期毎に、1と0とを繰り返す矩形波のパルス信号PSが出力される。パルス信号PSの周波数は、リセットパルス生成部RPGのフリップフロップ回路の数を増減させることによって調整することができる。
【0095】
このパルス信号PSは、タイマTMRに入力される。タイマTMRは、1のパルス信号PSが入力された際に、ある一定期間、タイマ信号を出力する。パルス発生部PGは、タイマ信号が入力されている間、0のパルスを出力する。
【0096】
このパルスは、制御信号S1として出力され、インバータIVによって反転されたパルスは、制御信号S2として出力される。よって、トランジスタT1がオフし、トランジスタT2がオンとなり、リセットパルス生成部RPGが生成したパルス信号PSがリセットパルスRPとして出力される。
【0097】
そして、タイマTMRに設定された期間が終了すると、タイマ信号がインアクティブとなり、パルス発生部PGから出力されるパルスが1となる。これによって、トランジスタT1がオンし、トランジスタT2がオフとなるので、動作制御信号ACCが出力される(図8の期間T6)。
【0098】
ここで、リセットパルスRPは、例えば動作制御信号ACCの周波数よりも遅い周波数であればよい。また、動作制御信号ACCの周波数に変動がある場合には、最も速い周波数よりも遅い周期となるようにリセットパルスRPの周波数を設定する。
【0099】
以上によっても、トランジスタの誤動作を低減することができる。また、トランジスタの誤動作を低減させることにより、半導体集積回路装置の信頼性を向上させることができる。
【0100】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0101】
なお、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0102】
また、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0103】
RPC リセットパルス制御部
RPG リセットパルス生成部
SSW 動作信号切り替え部
CSG 制御信号生成部
FF1〜FF7 フリップフロップ回路
Input 入力部
Output 出力部
T1 トランジスタ
T2 トランジスタ
AND 論理積回路
NAND 否定論理積回路
TMR タイマ
PG パルス発生部
IV インバータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8