(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6220243
(24)【登録日】2017年10月6日
(45)【発行日】2017年10月25日
(54)【発明の名称】相互に連結された2本のシャフトの位置を検出する装置ならびに方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/27 20060101AFI20171016BHJP
【FI】
G01B11/27 H
【請求項の数】30
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-238379(P2013-238379)
(22)【出願日】2013年11月18日
(65)【公開番号】特開2014-102251(P2014-102251A)
(43)【公開日】2014年6月5日
【審査請求日】2016年10月12日
(31)【優先権主張番号】10 2012 022 487.7
(32)【優先日】2012年11月19日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】594144670
【氏名又は名称】プリューフテヒニーク ディーター ブッシュ アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100064012
【弁理士】
【氏名又は名称】浜田 治雄
(74)【代理人】
【識別番号】100173587
【弁理士】
【氏名又は名称】西口 克
(74)【代理人】
【識別番号】100183139
【弁理士】
【氏名又は名称】田辺 稜
(74)【代理人】
【識別番号】100191569
【弁理士】
【氏名又は名称】浅沼 聖子
(72)【発明者】
【氏名】ジャンルカ カヌー
(72)【発明者】
【氏名】ベルンハルト グラッサー
(72)【発明者】
【氏名】フォルカー コネトシュニー
(72)【発明者】
【氏名】マルティン ウェゲナー
【審査官】
眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】
特開平02−291908(JP,A)
【文献】
米国特許第05980094(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2001/0020335(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00−11/30
G01B 5/00− 5/30
G01B 21/00−21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のシャフト(10)ならびに継ぎ手(14)によってその第1のシャフトと相互結合された第2のシャフト(12)の位置を検出する装置であって前記第1のシャフトの周囲面上に取り付けるための第1の測定ユニットと前記第2のシャフトの周囲面上に取り付けるための第2の測定ユニットと分析ユニット(30)を備えてなり、
両方の測定ユニットのうちの少なくとも一方が少なくとも1本の光束(22)を発生させるための手段(20)を備えまた両方の測定ユニットのうちの少なくとも一方が少なくとも1つの検出面(24,25,26)上の光束の衝突位置に関するデータを検出するための検出手段(24,25,26)を備え、
両方の測定ユニットのうちの少なくとも一方がシャフトの回転角を検出するための少なくとも1個のセンサ(28)を備え、そのセンサは少なくとも1個の2軸式加速度センサあるいはジャイロスコープに係るものとし、
前記分析ユニットは複数の測定位置において前記センサのデータから該当するシャフトの回転角位置、角速度および角加速度を判定するとともに前記検出手段によって伝送されたデータから前記少なくとも1つの検出面上の該当する光束の衝突位置を判定しさらに判定された衝突位置の少なくとも一部から曲線当てはめによってシャフトの偏位を判定するよう構成され、
前記分析ユニットがさらに各個別測定位置に対して少なくとも以下の要件:
角速度および角加速度、
先行した測定位置までの時間的離間間隔に関してのこの先行した測定位置の衝突位置(群)の接線方向成分に対しての衝突位置(群)の接線方向成分の差、
判定された測定点の少なくとも一部に当てはめられた曲線からの衝突位置(群)の偏差の度合、
に従って該当するデータの品質評価を実行するとともに前記データの品質評価が所定の閾値より低い場合にその測定位置のデータをシャフト偏位の判定のための考慮から除外するかあるいは低減された重み付けのみによって考慮に入れるように構成される装置。
【請求項2】
少なくとも1個のセンサ(28)は各測定位置に対して振動を検出し、データの品質評価の追加的な要件として該当する振動の強さを使用し、振動の強さがより高いほどより低い評価につながるよう構成されることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
分析装置(30)はデータの品質評価に際しての追加的な要件として回転動作の基準時点までの測定位置の時間的間隔を使用するよう構成されることを特徴とする請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
基準時点が回転動作の開始点に係り回転動作の開始点までの間隔が大きいほど高評価につながることを特徴とする請求項3記載の装置。
【請求項5】
分析装置(30)はデータの品質評価に際しての追加的な要件として角加速度の時間変化を使用するよう構成されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
角加速度の時間変化が高いほど低い評価につながることを特徴とする請求項5記載の装置。
【請求項7】
角速度が高いほど低い評価につながることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
角加速度の時間変化が高いほど低い評価につながることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
先行した測定位置までの時間的離間間隔に関してのこの先行した測定位置の衝突位置の接線方向成分に対しての衝突位置の接線方向成分の差が大きいほど低い評価につながることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
品質評価が低いほどその測定位置の曲線当てはめへの重み付けを小さくすることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の装置。
【請求項11】
分析ユニット(30)は所定の数の測定位置を走査した後そこまで走査した測定位置のデータの総合品質評価を個々の測定位置に基づいて実行し、またそこまで走査した測定位置に基づいて曲線当てはめを実行するとともに判定された総合品質評価についての報告を発信するよう構成されることを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載の装置。
【請求項12】
報告は判定された総合品質評価が既に所定の閾値に到達しているか否かに応じて測定の終了あるいは継続を内容として含むことを特徴とする請求項11記載の装置。
【請求項13】
分析装置(30)は総合品質評価の判定に各測定位置の回転角分布と測定位置の数を組み入れるよう構成されることを特徴とする請求項11または12記載の装置。
【請求項14】
当てはめられた曲線からの各衝突位置の平均偏差を総合品質評価の判定に組み入れることを特徴とする請求項11ないし13のいずれかに記載の装置。
【請求項15】
両方の測定ユニットの少なくとも一方が2個の加速度センサを備えることを特徴とする請求項1ないし14のいずれかに記載の装置。
【請求項16】
少なくとも1個のセンサ(28)はMEMS素子として形成された加速度センサに係ることを特徴とする請求項1ないし15のいずれかに記載の装置。
【請求項17】
両方の測定ユニット(16,18)がそれぞれセンサ(28,38)のうちの少なくとも1個を備えてなり、その際分析装置(30)は第1の測定ユニットの少なくとも1個のセンサのデータによって判定された回転角位置と第2の測定ユニットの少なくとも1個のセンサのデータによって判定された回転角位置の差から継ぎ手の遊びを判定するとともに個々の測定位置の品質評価および/または総合品質評価に際して考慮に入れるよう構成されることを特徴とする請求項1ないし16のいずれかに記載の装置。
【請求項18】
検出手段は少なくとも1個の2軸式光学検出器(24,25,26)によって形成されることを特徴とする請求項1ないし17のいずれかに記載の装置。
【請求項19】
検出面がスキャッタ面から形成され検出手段は前記スキャッタ面の光束入射側に向いた側を撮影するカメラから形成されることを特徴とする請求項1ないし17のいずれかに記載の装置。
【請求項20】
検出面が艶消しスクリーンから形成され検出手段は前記艶消しスクリーンの光束入射側と逆の側を撮影するカメラから形成されることを特徴とする請求項1ないし17のいずれかに記載の装置。
【請求項21】
第1の測定ユニット(16)が少なくとも1本の光束(22)を生成するための手段(20)を備えるとともに第2の測定ユニット(18)は検出手段を備えてなり、その際前記検出手段が第1の検出面(24)と第2の検出面(26)を備え、前記第2の検出面は前記第1の検出面に対して光学的に軸方向にずらして配置されるとともに光束の少なくとも一部(22′,22″)によって両方の検出面が同時に照射されることを特徴とする請求項1ないし20のいずれかに記載の装置。
【請求項22】
第1の検出面(24)に対してビーム分割器(34)を前置し、光束(22)の一部(22″)を第2の検出面(26)に指向させることを特徴とする請求項21記載の装置。
【請求項23】
曲線当てはめに際して両方の検出面(24,26)のそれぞれの上の該当する衝突位置の半径方向の成分のみを使用することを特徴とする請求項21または22記載の装置。
【請求項24】
第1の検出面(24)上の衝突位置の半径方向成分と第1の検出面および第2の検出面(26)上の衝突位置の半径方向成分の差を曲線当てはめのために使用することを特徴とする請求項23記載の装置。
【請求項25】
第1の測定ユニット(16)が少なくとも1本の光束(22)を生成するための手段(20)と検出手段(25)を備え、第2の測定ユニット(18)は反射器構成(40)を備え、各測定ユニットがそれぞれ該当するシャフト(10,12)上に取り付けられた場合に光束を検出面に向かって反射するように前記反射器構成が前記第1の測定ユニットに向かって指向することを特徴とする請求項1ないし20のいずれかに記載の装置。
【請求項26】
検出面(25)上の衝突位置の半径方向成分および接線方向成分を曲線当てはめのために使用することを特徴とする請求項25記載の装置。
【請求項27】
反射器構成(40)がプリズムとして形成されることを特徴とする請求項25または26記載の装置。
【請求項28】
プリズムがポロプリズムあるいは三面プリズムであることを特徴とする請求項27記載の装置。
【請求項29】
曲線が楕円形に係ることを特徴とする請求項21ないし28のいずれかに記載の装置。
【請求項30】
第1のシャフト(10)ならびに継ぎ手(14)によってその第1のシャフトと相互結合された第2のシャフト(12)の位置を検出する方法であって、
前記第1のシャフトの周囲面上に第1の測定ユニット(16)が設置されまた前記第2のシャフトの周囲面上には第2の測定ユニット(18)が設置され、
両方の測定ユニットのうちの少なくとも一方で少なくとも1本の光束(22)を発生させるとともに両方の測定ユニットのうちの少なくとも一方の上の少なくとも1枚の検出面(24,25,26)上に指向させ、
それによって前記少なくとも1枚の検出面上の光束の衝突位置に関するデータを複数の測定位置において検出するとともに、両方の測定ユニットのうちの少なくとも一方の上の少なくとも1個の2軸式加速度センサあるいはジャイロスコープに係るものである少なくとも1個のセンサ(28)を使用してシャフトの回転角に関するデータを検出し、
前記センサのデータから該当するシャフトの回転角位置、角速度および角加速度を判定するとともに前記衝突位置のデータから前記少なくとも1つの検出面上の該当する光束の衝突位置を判定しさらに判定された衝突位置の少なくとも一部から曲線当てはめによってシャフトの偏位を判定し、
さらに各個別測定位置に対して少なくとも以下の要件:
角速度および角加速度、
先行した測定位置までの時間的離間間隔に関してのこの先行した測定位置の衝突位置に対しての衝突位置の接線方向成分の差、
判定された測定点の少なくとも一部に当てはめられた曲線からの衝突位置(群)の偏差の度合、
に従って該当するデータの品質評価を実行するとともに前記データの品質評価が所定の閾値より低い場合にその測定位置のデータをシャフト偏位の判定のための考慮から除外するかあるいは低減された重み付けのみによって考慮に入れる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、第1のシャフトならびに継ぎ手によってその第1のシャフトと相互結合された第2のシャフトの位置を検出する装置ならびに方法に係り、その際第1の測定ユニットが前記第1のシャフトの周囲面上に設置されまた第2の測定ユニットが前記第2のシャフトの周囲面上に設置される。その際両方の測定ユニットのうちの少なくとも一方が少なくとも1本の光束を発生させるための手段を備え、また両方の測定ユニットのうちの少なくとも一方が少なくとも1つの検出面上の光束の衝突位置に関するデータを検出するための検出手段を備える。さらに両方の測定ユニットのうちの少なくとも一方がシャフトの回転角を検出するための少なくとも1個のセンサを備える。分析ユニットによって複数の測定箇所、すなわち複数の回転角度位置で検出された光束の衝突位置から両方のシャフトの平行偏位(オフセット)、ならびに水平および垂直方向の角度偏位を判定することができ、それが通常曲線当てはめによって実施される。
【背景技術】
【0002】
この種のシャフトアラインメント測定装置の概要は例えば米国特許第6434849号B1明細書(特許文献1)に開示されており、その際楕円形上における曲線当てはめを使用したデータ分析も記載されている。
【0003】
独国特許出願公開第3320163号A1明細書(特許文献2)ならびに独国特許出願公開第3911307号A1明細書(特許文献3)には、第1の測定ユニットが光線を放射しその光線が第2の測定ユニットのミラープリズムから第1の測定ユニットの2軸式光学検出器に反射されるシャフトアラインメント測定装置が記載されている。
【0004】
独国特許出願公開第3814466号A1明細書(特許文献4)により、第1の測定ユニットが光線を放射しその光線が軸方向に光学的に連接して配置された第2の測定ユニットの2軸式の光学検出器上に当接するシャフトアラインメント測定装置が知られている。
【0005】
独国特許出願公開第3335336号A1明細書(特許文献5)には、第1および第2の測定ユニットのいずれもが光線を放射するとともに2軸式の光学検出器を備えその際光線がいずれも他方の測定ユニットの検出器上に指向する、シャフトアラインメント測定装置が記載されている。この原理によって動作するシャフトアラインメント測定装置は米国特許第6873931号B1明細書(特許文献6)にも記載されており、その際両方の測定ユニットがいずれもシャフトの回転角を自動検出するための2個の2軸式加速度センサを備える。
【0006】
欧州特許出願公開第2093537号A1明細書(特許文献7)には、第1の測定ユニットが開析された光線を放射しその光線が第2の測定ユニットの互いに側方に離間して平行に配置された2個の光学ストリップ検出器上に衝突しその際検出器の縦方向が光線の開析面に対して直角に配置される測定装置が記載されているが、それにおいてはシャフトの相互アラインメントの判定のみでなく連結の遊びの判定についても記載されている。
【0007】
国際公開第2010/042039号A1パンフレット(特許文献8)により、両方の測定ユニットのそれぞれがケーシング内に配置されたカメラを備えその際他方のユニットに指向するケーシング側面が光学パターンを有していてそれが対向するカメラによって撮影されるシャフトアラインメント測定装置が知られている。その際光学パターンを有するケーシング側面がいずれも開口部を備えていてその開口部を介して対向側のパターンが撮影される。代替的な実施形態によれば、両方の測定ユニットのうちの一方のみが1台のカメラを備えるがパターンを有しておらず、一方で他方のユニットはカメラを備えないが3次元のパターンを有している。
【0008】
欧州特許出願公開第1211480号A2明細書(特許文献9)には、第1の測定ユニットが光源を備えていてその光源が艶消しスクリーンを備えた第2の測定ユニット上に光線を照射し;前記艶消しスクリーンの前記第1の測定ユニットとは逆側の側面が適宜な光学要素によって同様に第2の測定ユニットの一部を形成する画像検出器上に投射される、シャフトアラインメント測定装置が記載されている。
【0009】
米国特許第6981333号B2明細書(特許文献10)には、ジャイロスコープセンサを使用するシャフトのアラインメント測定と同様に測定の間に発生する振動を判定しそれによってその種の振動によるアラインメント測定の歪曲を可能な限り防止することが記載されている。
【0010】
米国特許第5980094号明細書(特許文献11)には、独国特許出願公開第3335336号A1明細書(特許文献5)と同様に両方の測定ユニットがいずれも他方の測定ユニットの2軸式の光学検出器に光線を指向させるシャフトアラインメント測定装置が記載されており、その際両方の検出器のそれぞれに対するデータを分析するために光線の衝突点の半径方向の成分を回転角の関数として記録しいずれも正弦波曲線を測定データに当てはめる。その際検出および分析されたデータセットに対して測定点の数および測定点の角度分布に基づいて信頼係数が求められる。その際検出されたデータセットから懐疑的なデータ点を手動あるいは自動的に除外し、そのようにして削減されたデータセットに基づいて新たな曲線当てはめを実行するとともに前記のデータセットの削減によって信頼係数が上昇したかどうかを検査することがさらに提案されている。しかしながら、前記の懐疑的なデータ点の除外によって信頼係数が上昇するということを除いて前記の懐疑的なデータ点をどのようにして確認し得るかについては全く記載されていない。同様なシャフトアラインメント測定装置が米国特許第5263261号明細書(特許文献12)に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第6434849号B1明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第3320163号A1明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第3911307号A1明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第3814466号A1明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第3335336号A1明細書
【特許文献6】米国特許第6873931号B1明細書
【特許文献7】欧州特許出願公開第2093537号A1明細書
【特許文献8】国際公開第2010/042039号A1パンフレット
【特許文献9】欧州特許出願公開第1211480号A2明細書
【特許文献10】米国特許第6981333号B2明細書
【特許文献11】米国特許第5980094号明細書
【特許文献12】米国特許第5263261号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、極めて簡便かつ信頼性の高い測定を可能にするシャフトアラインメント測定装置ならびにシャフトアラインメント測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の課題は、本発明に従って請求項1の装置ならびに請求項29の方法によって解決される。
【0014】
本発明に係る解決方式によれば、各測定位置に対して角速度および角加速度と衝突位置の接線方向成分を先行した測定位置に対する時間的な離間に相関してその先行した測定位置と比べた差と検出された衝突位置の少なくとも一部に当てはめられた曲線からの衝突位置の偏差の度合とに基づいて該当するデータの品質評価を実行し、あるデータの品質評価が所定の閾値を下回った場合にシャフトの偏位の検出に際してその測定位置のデータを考査から除外することによって、簡便な方式で確実に測定データを検出あるいは場合によって消去することができ、それによって検出されるシャフト偏位の信頼性が高められる。
【0015】
従属請求項によって本発明の好適な構成形態が明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係るシャフトアラインメント測定装置の第1の実施例を示した概略側面図である。
【
図2】
図1の装置に適用可能な2個の光学検出器を備えた測定ユニットの実施例を概略的に示した立体図である。
【
図3A】
図1の装置において両方のシャフトの平行偏位(オフセット)あるいは垂直角度偏位に際しての光線の衝突位置を概略的に示した説明図である。
【
図3B】
図1の装置において両方のシャフトの平行偏位あるいは垂直角度偏位に際しての光線の衝突位置を概略的に示した説明図である。
【
図4】
図1の装置において比較的信頼性の有る測定の場合に測定中にシャフトを完全回転させた際の光線の衝突位置を示した説明図である。
【
図5】より信頼性の低い測定の場合において示した
図4と同様の説明図である。
【
図6】シャフトの部分回転のみにわたって測定を実行した場合の
図4と同様の説明図である。
【
図7】
図4ないし
図6に従って検出された曲線に従った測定における分析を示した説明図である。
【
図8A】
図4ないし
図7の方式における測定点の具体的な例を示した説明図であり、測定点が当てはめられた曲線と共に示される。
【
図8B】
図8Aの当てはめられた曲線からの測定点の百分率偏差を回転角に対する関数として示した説明図である。
【
図9A】別の実施例に関して示した
図8Aと同様の説明図である。
【
図9B】別の実施例に関して示した
図8Bと同様の説明図である。
【
図10】代替的な測定方法を概略的に示した
図1と同様の説明図である。
【
図11】別の代替的な測定方法を概略的に示した
図1と同様の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施例につき添付図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0018】
図1には、第1のシャフト10と継ぎ手14を介してその第1のシャフトと結合された第2のシャフトとのアラインメントを判定することができる装置が概略的に示されている。両方のシャフト10,12は整列して連接配置されている。この装置は、第1のシャフト10の周囲面上に固定的に取り付け可能な第1の測定ユニット16と第2のシャフト12の周囲面上に固定的に取り付け可能な第2の測定ユニット18を備えている。第1の測定ユニット16は、第2の測定ユニット18を指向する光線あるいは光束22を生成するための光源20を備えている。第2の測定ユニット18は軸方向に光学的にずらして前後に配置された2枚の検出面24および26を備えており、通常それらはいずれも2軸式の光学検出器によって形成される。両方のシャフト10および12の相互間の偏位を検出するためにそれらのシャフトを軸周りで連動的に回転させ(その際通常両シャフトのうちの一方のみを駆動する);その際それぞれ特定の角度位置に相当する複数の測定位置において両方のセンサ面24および26上の光線22の衝突位置を検出する。図示された実施例において半径方向の成分をYあるいはY′として示し接線方向の成分はXあるいはX′として示す。
【0019】
さらに、第2の測定ユニット18がこの第2の測定ユニットの回転角すなわちシャフト10および12の回転角と角速度および角加速度を検出するために適した少なくとも1個のセンサ28を備える。これは少なくとも1個の2軸式加速度センサあるいは少なくとも1個のジャイロスコープに係るものとすることが好適であり、いずれの場合でもセンサはMEMS素子として形成することが好適である。2個の2軸式加速度センサを使用した回転角測定の詳細は例えば米国特許第6873931号B1明細書に記載されている。さらに、第2の測定ユニット18は分析ユニット30を備え、その分析ユニットにセンサ28のデータならびに光学センサ24および26のデータを伝送してそれらのデータを分析しその結果シャフト偏位を判定する。
【0020】
前後に配置された光学式の検出面を具現化する例が
図2に示されているが、その原理は独国特許出願公開第3814466号A1明細書に詳細に記載されている。その際第2の測定ユニット18はレンズ32とビーム分割器34と反射鏡36を備え、そこで光線22がレンズ32を介して入射してビーム分割器34に到達し、その際に光線の一部が部分光線22′として伝送されて第1の検出器24上に到達し他方光線22の別の部分光線22″はビーム分割器34から反射鏡36に伝送されてそこから第2の検出器26に対して反射される。図示された実施例において両方のセンサ面24および26が空間的に軸方向ではなく互いに半径方向(あるいは接線方向)にずらして配置され、一方第2のセンサ面26はビーム分割器34と反射鏡36の作用のため光学的(あるいは仮想的に)には軸方向にずらしてセンサ面24の後方に配置される(すなわち部分光線22′,22″の衝突点があたかも両方のセンサ面24および26が軸方向に前後して配置されているかのようになる)。
【0021】
第1のセンサ面24あるいは第2のセンサ面26上の光線22の衝突位置を検出するため、光斑が複数のセンサピクセルにわたって延在している場合に重心計算を実施することができる。その種の衝突位置の検出は既にセンサ内自体で実施するかあるいは分析ユニット30内で実施することができる。
【0022】
図3Aおよび
図3Bには、シャフト10および12の相互間の垂直平衡偏位あるいは垂直角度偏位の作用が第1のセンサ24および第2のセンサ26上の衝突位置に関して概略的に示されており、その際いずれもシャフト10,12の回転の間の衝突位置の移動が図示されている。
【0023】
図4には一般的な場合、すなわち平行偏位ならびに垂直および水平の角度偏位のいずれもが存在する場合におけるシャフト回転の間の衝突位置の移動が示されている。その際両方のセンサ面上にいずれも円が形成される。シャフト偏位を検出するために、通常1つの方向により光源近くに位置するセンサ面24上の衝突位置の半径方向成分(例においてY1として示される)を記録し他方別の方向には第1のセンサ面24と第2のセンサ面26上の衝突位置の半径方向成分の差(例においては“Y1−Y2”として示される)を記録するような方式で衝突位置に関するデータを記録する。一般的かつ理想的な場合においてそのように記録された測定点はシャフト回転角によってパラメータ化された楕円形上に延在する。
図4に示された実施例において楕円の頂点がシャフトの回転内における0時、6時、3時、あるいは9時の測定点の位置に相当する(しかしながら一般的な場合においてこれらの位置は楕円の頂点と一致しない)。求められる楕円のパラメータは通常測定点への曲線当てはめによって判定される。
図7に示されているように、判定された楕円の形状からシャフトの平行偏位、垂直角度偏位および水平角度偏位が判定される。この点に関しては例えば独国特許出願公開第3911307号A1明細書を参照することができる。
【0024】
しかしながら実用上において多様な測定誤差が逸脱につながり得るため測定点は正確に楕円曲線上には延在しない。この点に関して生じる問題は例えば常に多少大きなレベルで存在する継ぎ手14の遊びによって原則的に理由付けされ、その遊びは両方のシャフト10,12が回転に際して強固に連結されないことにつながり、従って例えばシャフト10が駆動される場合シャフト12は回転動作の開始に際して未だ全く動かないかあるいはシャフト10よりも低速で回転する。そのことが接線方向における測定ユニット16,18の相互間の位置ずれにつながり、それがさらにセンサ面24,26上の光線22の衝突位置の半径方向成分にも影響を及ぼす。さらに、例えば測定ユニット16,18の弾力性あるいは慣性のため強力な角加速度がシャフトおよび付属する測定ユニットの間の接線方向の位置ずれならびに両方のシャフト間の相対的な回転ずれにつながることもあり得る。また測定ユニットとシャフトの間の不適正、すなわち完全に強固ではない結合も衝突位置の逸脱につながり得る。
【0025】
図5には、非理想的な測定の例が示されており、それによれば個々の測定点が一部は測定点に当てはめられた楕円形から大きく逸脱している。
【0026】
通常当てはめられた曲線に対する測定点の標準偏差が大きいほど曲線当てはめの結果(すなわちシャフト偏位の判定)が信頼性の低いものとなる。
【0027】
所定の要件に基づいて個々の測定点の品質評価を実行するとともに分析、すなわち曲線当てはめに際して低い品質評価の測定点は全く考慮しないかあるいはごく低い加重で考慮することによって曲線当てはめの信頼性を高めることができる。(それぞれ特定の測定位置に相当する)個々の測定点の品質評価に際して以下の要件を使用することができる:角速度および角加速度、先行した測定位置までの時間的離間間隔に関してのこの先行した測定位置の衝突位置あるいは衝突位置群の接線方向成分に対しての衝突位置あるいは衝突位置群の接線方向成分の差;判定された測定点の少なくとも一部に当てはめられた曲線からの衝突位置あるいは測定点の偏差の度合、測定中の振動の強さ、角加速度の変動;回転動作の基準時点までの測定位置の時間的離間間隔、その際前記基準時点は例えば回転動作の開始点とすることができる;前記の振動の強さを検出するために好適には回転角検出用に設けられたセンサ28を適宜に構成する;その際特に加速度センサが極めて好適である。ある測定点の振動の強さが高いほどその測定点が低く評価される。
【0028】
さらに、シャフト10,12の動作開始に際して例えば継ぎ手の遊びが極めて大きな意味を有しそれが測定結果に相当の影響を及ぼすため、ある測定点が回転動作の開始点の近くに位置するほどその測定点は低く評価される。
【0029】
高い加速度あるいは大きく変化する加速度に際して慣性作用によって極めて高い測定誤差の危険が生じるため、角加速度あるいは角加速度の変化が大きいほど測定点が低く評価される。
【0030】
また、高い角速度も測定点の低い評価につながる。
【0031】
先行した測定位置までの時間的離間間隔に関してのこの先行した測定位置の衝突位置の接線方向成分に対しての衝突位置の接線方向成分の差が大きいほどその測定を低く評価することが好適であり、その理由はそのことがその測定時点における両方のシャフトの角速度の差を示唆し、それによって測定結果に大きな影響を及ぼすためである。
【0032】
一般的にシャフト偏位測定の信頼性を高めるものであるものの、測定位置群をシャフト10,12の完全回転にわたって延在させることは原則的に不要である。それに代えてシャフト10,12のごく部分回転にわたって測定を実施すれば充分であり、その理由は曲線当てはめによっていわば残りの角度領域を推定することができるためである。その例が
図6に示されており、それによれば100°の角度範囲のみが走査される。
【0033】
その際所定の数の測定位置を走査した後、すなわち所定の角度範囲を走査した後、そこまで走査した測定位置のデータの総合品質評価を個々の測定位置に基づいて実行することもできる。それによってそこまで走査した測定位置に基づいて曲線当てはめを実行することもでき、判定された総合品質評価についての報告を発信することができる。
【0034】
例えば総合品質評価は個別品質評価の適宜な平均計算によって実施することができる。その際測定の総合品質の閾値を設定することもでき、従って判定された総合品質がその閾値に到達したか否かによって充分な品質を達成するために測定を既に終了することができるかあるいはさらに測定を継続すべきかについての報告を発信することができる。すなわち例えば90°にわたった測定において(例えば過度に大きな継ぎ手の遊びおよび/または過度にぎくしゃくした回転動作のため)比較的低質な測定位置のみが存在する場合、分析ユニット30によって測定をさらに継続すべきことが決定される。逆に既に多くの良好な測定点が存在する場合測定を終了することができる。
【0035】
個々の測定位置の品質評価に加えて回転角に対する測定位置の分布と測定位置の数を総合品質評価に付加することができる。その際回転角に対する測定位置の均等な分布と大きな数がより高い品質評価につながる。
【0036】
また当てはめられた曲線からの個々の測定点の平均的な乖離、すなわち当てはめの標準偏差も総合品質の判定に際して考慮することができる。
【0037】
図8Aおよび
図8Bには誤差を有する測定点を含んだ測定値評価の別の例が示されており、その際実線の楕円形において全ての測定点に当てはめられた楕円からの乖離が最大で5%(黒丸)である測定値のみが曲線当てはめに考慮されており、他方でより大きな乖離を有する測定値(白丸)は当てはめにおいて考慮されていない(全ての測定点への当てはめから得られた楕円形は
図8Aにおいて点線で示されている)。
【0039】
前述したように、回転角のためのセンサ28は少なくとも1個の2軸式加速度センサとすることができる。しかしながら、角度検出の精度を高めるためにその種の加速度センサを2個設けることもできる。
【0040】
ここまで記述した実施例において第2の測定ユニットのみが回転角測定のためのセンサを備えるが、別の実施例によれば両方の測定ユニットがそれぞれ少なくとも1個の回転角センサを備えることもできる(
図1においてその種の第1の測定ユニット16の追加的な回転角センサが参照符号38として示されている)。この場合第1と第2の測定ユニット16,18の間のデータ接続を設ける必要があり、それによって分析ユニット30が存在するすべての回転角センサのデータを考慮するようになる。その際第1の測定ユニット16によって検出された回転角位置と第2の測定ユニット18のデータによって検出された回転角位置との間の差が判定され、それから継ぎ手の遊びを検出するとともにそれを個々の測定位置の品質評価および/または総合品質評価に際して考慮する。
【0041】
前述したように、光線22の衝突位置の検出はいずれも2軸式の光学検出器によって実施することができる。しかしながら、代替的に検出面、すなわち光束が衝突する面をスキャッタ面あるいは艶消しスクリーンとして形成することも原則的に可能であり、その際前記検出面をカメラで撮影し、そのカメラがスキャッタ面の場合に光束の入射方向に向かって指向するスキャッタ面の側に対して指向し艶消しスクリーンの場合は光束の入射方向に対して逆の艶消しスクリーンの側に向かって指向する。その際衝突位置の判定は画像処理によって行う。
【0042】
原則的に前述した種類の個々の測定位置の品質評価による測定データ予備処理はその他の光学式シャフトアラインメント測定方法にも適用可能である。
【0043】
従って
図10には、第1の測定ユニット16が光源20と2軸式の光学検出器25の両方を備え第2の測定ユニット18は前記第1の測定ユニットの光源20から放射された光線22をセンサ面25に反射させるための反射器構成40を備える。この場合、反射された光束22′のセンサ面25上の衝突位置の半径方向成分Yと接線方向成分Xが曲線当てはめのために使用され、その際にも楕円形が形成される。
【0044】
通常反射器構成40は互いに直角に配置された2枚の反射面42および44を備え、それが入射した光線22を前後して反射してセンサ面25上に照射し;その際両方の面42,44は垂直に対して45°の角度で配置されるとともに接線方向に延在する。その際反射器構成40は、
図10に示されているように、一種の反射鏡として構成するか、あるいは特にポロプリズムあるいは三面プリズム等のプリズムとして形成することができる。その種のシステムは例えば独国特許出願公開第3911307号A1明細書に記載されている。
【0045】
別の代替的な測定方法が
図11に示されており、それによれば両方の測定ユニット16,18のそれぞれがいずれも光源20と2軸式の光学検出器25を備えている。その際第1の測定ユニット16の光源20が第2の測定ユニット18の検出器25に対して指向しており、第2の測定ユニット18の光源20は第1の測定ユニット16の検出器25に対して指向している。測定点の評価は
図1ないし
図7の測定原理と同様な方式で実施され、すなわち両方の検出器のうちの一方の上の衝突点の半径方向成分が両方の検出器上の衝突点の半径方向成分の差に関して記録され;そのようにして記録された点が楕円形によって当てはめられる。
【符号の説明】
【0046】
10,12 シャフト
14 継ぎ手
16 第1の測定ユニット
18 第2の測定ユニット
20 光源
22 光線(光束)
22′,22″ 部分光線
24,26 検出面
25 光学検出器
28 センサ
30 分析ユニット
32 レンズ
34 ビーム分割器
36 反射鏡
38 回転角センサ
40 反射器構成
42,44 反射面