(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6220443
(24)【登録日】2017年10月6日
(45)【発行日】2017年10月25日
(54)【発明の名称】燃料混合気を識別するための方法
(51)【国際特許分類】
F02D 41/02 20060101AFI20171016BHJP
F02D 19/06 20060101ALI20171016BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20171016BHJP
F02D 43/00 20060101ALI20171016BHJP
F02M 69/00 20060101ALI20171016BHJP
【FI】
F02D41/02 325K
F02D19/06 Z
F02D45/00 368G
F02D43/00 301B
F02D43/00 301G
F02M69/00 360G
F02D45/00 301M
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-506812(P2016-506812)
(86)(22)【出願日】2014年2月12日
(65)【公表番号】特表2016-515678(P2016-515678A)
(43)【公表日】2016年5月30日
(86)【国際出願番号】EP2014052707
(87)【国際公開番号】WO2014166653
(87)【国際公開日】20141016
【審査請求日】2015年10月8日
(31)【優先権主張番号】102013206552.3
(32)【優先日】2013年4月12日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501125231
【氏名又は名称】ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(72)【発明者】
【氏名】ハミドヴィッチ,ハリス
(72)【発明者】
【氏名】グートシェア,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】クルシュ,アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】ポッセルト,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ローレンツ,マルコ
【審査官】
▲高▼木 真顕
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2006/027853(WO,A1)
【文献】
特開2009−180171(JP,A)
【文献】
特開2007−154881(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第102009036530(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 41/00 − 45/00
F02M 69/00 − 69/54
F02D 13/00 − 28/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室(2)を有する内燃機関(1)の運転のために、ラムダ値変化を用いて、燃料の種類を識別するか、または複数の種類の燃料から構成される燃料混合気を識別するための方法であって、前記内燃機関(1)が様々な種類の燃料または様々な燃料混合気により運転可能であって、前記燃焼室が第1の吸入孔(10)を有していて、該第1の吸入孔(10)が第1の吸気管(11)に接続されていて、該第1の吸気管(11)内に第1の噴射弁(12)が配置されており、前記燃焼室(2)が第2の吸入孔(20)を有していて、該第2の吸入孔(20)が第2の吸気管(21)に接続されていて、該第2の吸気管(21)内に第2の噴射弁(22)が配置されており、通常運転中に所定の燃料量が噴射され、この際に、所定の燃料量が、前記第1の噴射弁(12)によって噴射しようとする第1の燃料量と、前記第2の噴射弁(22)によって噴射しようとする第2の燃料量とから構成されている方法において、
第1の方法ステップで、前記第1の噴射弁(12)を閉鎖状態に保ち、第2の方法ステップで前記第1の噴射弁(12)を再び開放し、この際に、前記第2の方法ステップで、第1のテスト燃料量(6)を前記第1の噴射弁(12)を介して噴射し、第2のテスト燃料量(6′)を前記第2の噴射弁(22)を介して噴射し、この際に、前記第1のテスト燃料量(6)と前記第2のテスト燃料量(6′)とを合算して所定の燃料量を構成し、
前記第1の方法ステップにおける、リッチ移行の時間および前記ラムダ値変化の大きさ、または、前記第2の方法ステップにおける、リーン移行の時間および前記ラムダ値変化の大きさにより、燃料混合気を識別し、
前記リーン移行の際には、時間の経過に伴って、燃料が前記第1の吸気管(11)の壁部に堆積し、前記リッチ移行の際には、時間の経過に伴って、前記第1の吸気管(11)に堆積した前記燃料が消失することを特徴とする、燃料混合気を識別するための方法。
【請求項2】
通常運転中に、前記第1の噴射弁(12)から噴射された前記第1の燃料量と前記第2の噴射弁(22)から噴射された第2の燃料量とが同じになるようにし、かつ/または第2の方法ステップで前記第1の噴射弁(12)から噴射された前記第1のテスト燃料量と前記第2の噴射弁(22)から噴射された前記第2のテスト燃料量とを同じにすることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ラムダ値変化を、前記第1および/または第2の方法ステップの開始時、および/または前記第1および第2の方法ステップ中に監視することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
燃料混合気または燃料の種類を識別し、この際に、第3の方法ステップで、燃料混合気または燃料の種類に適合した燃料量で通常運転を実施し、かつ/または通常運転中の点火時点を燃料混合気または燃料の種類に適合させることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
内燃機関がフレックス燃料内燃機関であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
内燃機関の運転のために燃料混合気または燃料の種類を変更した後で、燃料混合気または燃料の種類を識別することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
内燃機関の運転のために使用された燃料混合気または燃料の種類が未知であり、測定されたラムダ値変化を前記燃料混合気または前記燃料の種類に割り当てることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
内燃機関(1)の運転のために使用された燃料混合気または燃料の種類が既知であり、内燃機関(1)の排気ガス特性の、所定の値を越える変化が検出されると直ちに、通常運転中に発生したラムダ値変化が燃料量の新たな適合を指示することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
噴射された燃料量のコントロールをコンピュータ制御により行う、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に記載の内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
このような内燃機関は一般的に公知であり、吸気行程中に燃焼室に空気燃料混合気を供給することによって運転される。空気燃料混合気を生ぜしめるために、噴射弁が、吸入孔を介して燃焼室に接続された吸気管内に所定量の燃料を噴射し、かつ噴霧する。この際に、吸気管内に配置されたスロットルバルブは、燃焼室に向かって吸入される新鮮空気量を決定する。スロットルバルブの開放によって、吸気管内の圧力が上昇し、それによって、噴射された燃料の気化傾向が弱められる。例えば噴射弁から吸気管壁に噴射される燃料と共に、燃料は、スロットルバルブの開放時に弱められた気化傾向に基づいて吸気管壁にも堆積する。スロットルバルブの閉鎖時に、吸気管内の圧力は低下され、気化傾向は強まり、壁部に堆積した燃料は吸気管内で気化し、それによって空気燃料混合気がリッチになる。2つのケースにおいて、燃焼室に供給された燃料量若しくは実際燃料量は、予め設定された燃料量若しくは目標燃料量とは異なっている。
【0003】
従って、吸気管内に噴射される予め設定された燃料量は、例えば壁部における燃料の堆積若しくは蓄積に基づく燃料の損失若しくは補助量が補正されるように、調整されなければならない。適合が行われないか、または間違った適合が行われると、燃焼室内の空気燃料混合気がリーン若しくはリッチになる危険がある。このような状況下において、エンジン停止にまで至る出力低下が発生することがある。これに対して、燃料噴射時に、燃料の損失若しくは補助量が考慮され、噴射された燃料量が適合されると、排気ガスの少ない、かつ安定した内燃機関の運転を確実に行う可能性が得られる。
【0004】
さらに、燃料混合気で運転される内燃機関が公知であり、この場合、燃料混合気は複数の種類の燃料を含有しているか、または可能な複数の種類の燃料のうちの1つで運転される。特に、このような内燃機関は、この内燃機関のために、ガソリンとアルコール、特にエタノールおよびメタノールから様々な混合比で構成されている燃料混合気が設けられているものが公知である。この内燃機関は、特にフレックス燃料内燃機関として公知であって、アルコールによる内燃機関の好適な運転が不可能である場合に、燃料として特にガソリンを用いることができる。このような状況は、例えばアルコールの提供可能性が時間的または場所的に限定されている場合に生じる。しかしながら、様々な燃料混合気で運転できるという能力は、他方では、特に燃料混合気の組成が変わったときに、空気燃料混合気の組成および点火時点を、使用された燃料混合気(特にその組成)に適合させることも要求する。このために、燃料混合気若しくは燃料の種類を識別する必要がある。従来技術によれば、アルコール含有量をアルコールセンサによって算出するようになっている。この場合、燃料組成を算出するためには高価な費用がかかるという欠点がある。何故ならば補助的な検出手段、例えばエタノールセンサを組み込まなければならないからである。
【発明の概要】
【発明の効果】
【0005】
独立請求項に記載した、内燃機関のための、複数の種類の燃料から構成された燃料混合気または燃料の種類を識別するための本発明の方法は、従来技術に対して、安価に、かつ多大な追加費用を必要とすることなしに、燃料混合気または燃料の種類を推測できる、という利点を有している。
【0006】
本発明によれば、第1の方法ステップで、燃焼室に通じる吸気管のうちの1つ(つまり第1の吸気管)に燃料が噴射されることが阻止され、この場合、燃料は、複数の可能な(つまり内燃機関のために設けられた)燃料の種類の1つまたはこれらの燃料の種類からなる混合気より成っている。それと同時に、第1の方法ステップ中に、燃焼室に、第2の吸気管若しくは複数の別の吸気管を介して、通常運転中に2つの若しくはすべての吸気管内に噴射される燃料量に相当する補充燃料量が供給される。第1の方法ステップ中に気化された燃料は、第1の吸気管の壁部に堆積し、燃焼室内にガイドされる空気燃料混合気をリッチにし、この場合、リッチの程度は、使用された燃料混合気または燃料の種類に依存している。第1の方法ステップ中に発生した、空気燃料混合気のリッチは、ラムダ値の変化を用いて、つまりラムダ値変化を用いて検出することができる。この場合、好適な形式で燃焼室の出口若しくは内燃機関に設けられた複数の燃焼室の出口または排ガス管路内に配置されたラムダセンサは、燃焼室から発生した排気ガス中の残留酸素量を定めるラムダ値を算出する。特に、第1の方法ステップ中に、リッチ移行、つまりラムダ値の低下が観察される。
【0007】
第2の方法ステップで、第1のテスト燃料量は第1の噴射弁を介して第1の吸気管内に噴射され、第2のテスト燃料量は第2の噴射弁を介して第2の吸気管内に噴射される。この場合、第1の燃料量と第2の燃料量との合計は、通常運転中の所定の燃料量若しくは補充燃料量に相当する。これによって、第1の吸気管の壁部に燃料が堆積し、燃焼室に供給された空気燃料混合気はリーンになり、この際に、リーンの程度は、使用された燃料混合気または燃料の種類に依存している。ラムダ値変化は、第2の方法ステップ中にリーン移行の形をとる、つまりラムダ値は上昇する。
【0008】
リッチ移行および/またはリーン移行の大きさおよび時間は、燃焼室内の実際燃料量と目標燃料量との間の量的な差の値であり、どの燃料混合気でまたはどの種類の燃料で内燃機関が運転されるかに依存している。これによって、本発明によれば、燃料の種類若しくは燃料混合気の識別のために、リッチ移行および/またはリーン移行の大きさおよび/または時間を考慮することができる。特に、様々な混合比の同じ種類の燃料から構成された燃料混合気は、本発明の方法を用いて識別するために設けられている。この場合、特に好適には、燃料の種類または燃料混合気を識別するために、内燃機関に既に設けられているラムダセンサが使用され、それによって、余計な費用がかかる追加的な検出手段、例えばエタノールセンサ等は省かれる。それにもかかわらず内燃機関が追加的なエタノールセンサを備えている場合は、独立請求項に記載した方法による識別は、好適な形式でエタノールセンサのコントロールおよび診断のために考慮されるか、または欠陥のあるエタノールセンサ(例えばエタノールセンサが故障したことによる)のための代用として考慮される。
【0009】
本発明の好適な実施例によれば、一般的な条件下で第1および第2の燃料量、および/または第2の方法ステップで第1および第2のテスト燃料量が同じ量だけ吸気管内に噴射される。この場合、好適には、噴射弁は構造的に同じであってよく、それにより、別の種類の噴射弁を製造することによって生じる追加的な費用が避けられる。
【0010】
本発明の別の好適な実施例によれば、ラムダ値変化は第1の方法ステップ中に、および/または第2の方法ステップ中に算出される。ラムダ値変化が、第1の方法ステップ中においてのみ、または第2の方法ステップ中においてのみ検出されるようにすれば、好適な形式でラムダセンサの評価費用が低減される。ラムダ値変化が、第1の方法ステップ中においてもまた第2の方法ステップ中においても検出されれば、測定精度を高めることができる。同様に、ラムダ移行の程度(費用を低減する)のみ、または時間的なラムダ変化(精度の最適化)のみを評価することもできる。
【0011】
本発明の特に好適な実施例によれば、ラムダ値変化を用いて、燃料の種類または燃料混合気、特にその組成が識別され、次いで得られた情報に基づいて第3の方法ステップで、例えば噴射時間が変えられることによって、通常運転のために、噴射された燃料量が使用された燃料の種類または燃料混合気に適合される。これによって、内燃機関の排気ガスの少ない若しくは出力の最適化された運転が行われる。何故ならば、燃焼のために不必要な燃料量若しくは少なすぎる燃料量が燃焼室内に噴射されることはないからである(特に、それぞれの燃料の種類またはそれぞれの燃料混合気に適合が行われない場合と比較して)。
【0012】
同様に、通常運転中の燃焼室内の点火時点に適合させるために、燃料の種類または燃料混合気の識別が利用され、この場合、内燃機関の排気ガスの少ないかつ出力の最適化された運転のために最適な時点は、燃料混合気または燃料の種類に依存している。本発明の方法によれば、燃料の種類または燃料混合気の識別後に点火時点を、使用された燃料の種類または使用された燃料混合気に適合させ、それによって内燃機関の排気ガスの少ない若しくは出力の最適化された運転が実現されるようになっている。この場合、前記理由により(つまり、排気ガスの少ない、かつ出力の最適化された運転を可能にするために)、本発明の特に好適な変化実施例に従って、噴射された燃料量も、また点火時点も、識別された燃料の種類若しくは識別された燃料混合気に適合されるようになっていれば、有利である。
【0013】
好適な1実施例によれば、内燃機関がフレックス燃料内燃機関であって、燃料混合気の識別は、混合気形成、つまり燃焼室のために設けられた、酸素と燃料量とから成る組成を調節するために、また、できるだけ排気ガスの少ない、燃費が最適化された有効運転のための空気燃料混合気の点火時点を調節するために利用される。この場合、好適な形式で、アルコールセンサ、特にエタノールセンサは省かれる。このようなアルコールセンサは、一般的にフレックス燃料内燃機関の運転のために設けられているので、内燃機関の製造時に超過費用の原因となる。
【0014】
本発明の好適な実施例によれば、燃料混合気または燃料の種類を識別するための方法は、燃料混合気または燃料の種類が変更された後で行われる。これによって、噴射のために想定された燃料量が新たな種類の燃料若しくは新たな燃料混合気に適合されなくなることを懸念することなしに、燃料の種類または燃料混合気を内燃機関の運転のために変更することができる、という利点が得られる。むしろ、新たな種類の燃料または新たな燃料混合気が識別され、次いでパラメータつまり噴射された燃料量および/または点火時点が適合され、これによって好適な形式で、燃料の種類または燃料混合気が変更され、若しくは燃料の種類が燃料混合気に変更されまたは燃料混合気が燃料の種類に変更された場合でも、排気ガスの少ない、かつ出力の最適化された内燃機関の運転を確実に行うことができる。
【0015】
別の好適な実施例によれば、内燃機関の運転のために採用された燃料の種類または燃料混合気が未知である。この場合、本発明によれば、測定されたラムダ値変化が燃料の種類または燃料混合気に割り当てられるようになっている。特に、新たに得られた情報(つまり未知の燃料に、測定されたラムダ値変化が属する)が記憶され、次の本発明の方法において、燃料の種類または燃料混合気を識別するために考慮されるようになっている。これによって好適には、燃料噴射および点火時点を適合させることができる、使用可能な燃料の種類の数または燃料混合気の数を、内燃機関の耐用年数と共に高めることができる。
【0016】
別の実施例によれば、燃料量または燃料混合気が、既知であって、噴射された燃料量が適合されているにもかかわらず、ラムダ値変化が、例えば内燃機関の通常運転中に検出される。このような状況は、例えば吸気管に汚れが堆積した場合に発生する。この状況が発生すると、噴射された燃料量が燃料の種類若しくは燃料混合気に適合されているにもかかわらず、多すぎるかまたは少なすぎる燃料量が燃焼室内に噴射される。このようなケースのために、本発明の変化実施例によれば、それぞれの燃料混合気若しくはそれぞれの燃料の種類のために、噴射しようとする燃料量が新たに適合される。本発明のこの変化実施例の利点は、内燃機関の出力の最適化された運転若しくは排気ガスの少ない運転が、内燃機関の耐用年数全体に亘って保証されるという点にある。
【0017】
本発明の別の好適な実施例によれば、燃料の噴射がコンピュータ制御により行われる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2a】本発明の1実施例による方法の第1の方法ステップを実施する内燃機関の部分の概略図である。
【
図2b】堆積した燃料量の経時変化を示す図である。
【
図2c】堆積した燃料量の経時変化を示す図である。
【
図3a】本発明の1実施例による方法の第2の方法ステップを実施する内燃機関の部分の概略図である。
【
図3b】堆積した燃料量の経時変化を示す図である。
【
図3c】堆積した燃料量の経時変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面に示した本発明の実施例を以下に具体的に説明する。
【0020】
図1は、内燃機関1の部分図を示していて、この内燃機関1は、燃焼室2、噴射弁12、吸入バルブ10′、点火手段13、噴射弁孔14、吸入孔10および第1の吸気管11を有しており、一方、燃料3は、燃焼室に向かって第1の吸気管11内に噴射され、この場合、第2の吸気管も設けられている(
図1には示されていない)。使用された燃料は、例えば多くの使用可能な燃料の種類のうちの1つまたは、内燃機関を運転することができる複数の種類の燃料より成る燃料混合気であってよい。燃料は、噴射時に、
図1に破線で示されているように、円錐形噴霧形状で噴霧される。
【0021】
図2aおよび
図2bには、内燃機関1の部分の概略図が示されており、この内燃機関1は、本発明の1実施例に基づく第1の方法ステップを実施する。内燃機関は、燃焼室2、第1および第2の吸気管11および21を有していて、吸気管毎に少なくとも1つの噴射弁、つまり少なくとも2つの噴射弁12,22を有している。燃焼室2は、ピストン(図示せず)が燃焼室2内で移動することができるように構成されていて、燃焼室の壁部は、2つの吸入孔10,20と、2つの吐出孔30,31とを有しており、前記吸入孔10,20を通って空気燃料混合気が吸入され、前記吐出孔30,31から、未燃焼排ガスが空気燃料混合気の燃焼プロセス後に燃焼室2から吐出管32,33に吐出される。燃焼室2の出口に、一般的な形式で排ガスの残留酸素量を測定することができるラムダセンサが設けられている。通常運転中に、2つの噴射弁12,22から、所定の燃料量が各吸入孔10,20に向かって吸気管11,12内に噴射され、それによって、吸入された空気と共に各吸気管内に空気燃料混合気が形成される。吸入された空気の量は、スロットルバルブによって調整される。内燃機関1が例えば高められたトルクを提供しようとする場合、スロットルバルブは開放される。この場合、吸気管11,21内の圧力は高められ、燃料の気化傾向は弱められ、燃料の一部が壁部に堆積する。この場合、堆積した燃料量は、燃料の種類若しくは燃料混合気に依存している。空気燃料混合気が燃焼室2に供給される際に、噴射時に壁部に噴射された燃料と、壁部に堆積した燃料とを足した分の空気燃料混合気が不足する。スロットルバルブの閉鎖時に吸気管圧力が低下し、燃料の気化傾向が強まり、吸気管壁部に堆積した燃料が吸気管の容積内に気化し、次いで燃焼室2に追加的に供給され、この際に、気化された燃料量は燃料の種類若しくは燃料混合気に依存している。
【0022】
図2は、第1の方法ステップを示しており、この第1の方法ステップにおいて、第1の噴射弁12が少なくとも1回の全サイクルに亘って閉鎖されるので、燃料が第1の吸気管11内に噴射されることはなく、吸気管11の壁部の壁膜が消失する。同時に、第2の噴射弁22が補充燃料量4を第2の吸気管21内に噴射する。この補充燃料量4の量は、通常運転中に2つの噴射弁から一緒に噴射される燃料量(図面中に太く印刷された“2x”によって示されている)に正確に相当する。
図2bは、第1の方法ステップ中に、第1の吸気管の壁部における燃料堆積310が時間300の経過に伴って減少することを示す。これに対して、第2の吸込み管の壁部の燃料堆積320は、
図2cに示されているように、時間300に亘って一定に維持されている。
【0023】
ラムダセンサによって、壁膜の消失中に、測定されたラムダ値330が時間300の経過につれて減少することが検出される。ラムダ値変化はリッチ移行と呼ばれ、
図2dに示されている。
【0024】
図3には、本発明の1実施例による方法の第2の方法ステップが概略的に図示されている。第2の方法ステップで、第1の噴射弁12は再び開放され、第1のテスト燃料量6が第1の吸気管11内に噴射される。第1のテスト燃料量6は、第2の噴射弁22から第2の吸気管21内に噴射される第2のテスト燃料量6′と共に、通常運転による所定の燃料量若しくは補充燃料量に相当する燃料量を形成する。第1の吸気管11内で、第2の方法ステップ中に新たな燃料が壁部に堆積する。つまり第1の吸気管の壁部における燃料堆積310は、時間300の経過に伴って増大する。これは
図3bに示されている。
図3cは、第2の吸気管の壁部における燃料堆積320が一定に維持されることを示す。同様に、第2の方法ステップ中に、ラムダ値330が時間300の経過に伴って増大することが分かる。ラムダ値のこのような増大はリーン移行と呼ばれ、
図3dに示されている。
【0025】
図2に示された第1の方法ステップにより算出されるリッチ移行の時間および大きさも、
図3に示された第2の方法ステップにより算出されるリーン移行の大きさおよび時間も、内燃機関により使用された燃料の種類または使用された燃料混合気に依存している。本発明によれば、この依存性は、燃料の種類または燃料混合気の識別のために利用される。
【符号の説明】
【0026】
1 内燃機関
2 燃焼室
3 燃料
4 補充燃料量
6 第1のテスト燃料量
6′ 第2のテスト燃料量
10 第1の吸入孔
10′ 吸入バルブ
11 第1の吸気管
12 第1の噴射弁
13 点火手段
14 噴射弁孔
20 第2の吸入孔
21 第2の吸気管
22 第2の噴射弁
30,31 吐出孔
32,33 吐出管
300 時間
310 第1の吸気管の壁部における燃料堆積
320 第2の吸気管の壁部における燃料堆積
330 ラムダ値