(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内接式遊星歯車装置では、外歯歯車は偏心駆動部材の回転によって内歯歯車に対して偏心揺動しつつ内歯歯車に対して転動するから、外歯歯車を反力部材とする場合には、外歯歯車と固定部材との間に外歯歯車の偏心揺動を許容するオルダム継手のような部品点数が多い複雑な構造の滑り継手が必要になる。また、内歯歯車を反力部材として外歯歯車を出力側とする場合には、外歯歯車と出力部との間に外歯歯車の偏心揺動を許容する同様の滑り継手が必要になる。
【0005】
このように、内接式遊星歯車装置は、何れの場合もオルダム継手のような滑り継手が必要であるため、構造が複雑になると共に、小型化が難しいものになる。特に、内接式遊星歯車装置がロボットの各運動部の減速装置として用いられるような場合には、内接式遊星歯車装置の小型化が重要に課題になる。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、揺動成分を除去する簡素な構造の新しい揺動成分除去用軸継手を提供し、この新しい揺動成分除去用軸継手の使用のもとに、滑り継手を不要にして内接式遊星歯車装置の構造を簡素化すると共に小型化を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による揺動成分除去用軸継手は、揺動成分除去用軸継手(50)であって、内周部に内歯(60)を有する揺動成分除去用歯車(52)と、外周部に、前記内歯(60)と同じ歯数の外歯(16)を有し、かつ前記揺動成分除去用歯車(52)に対して偏心して噛合する外歯歯車(18)とを備え、前記外歯(16)及び前記内歯(60)の少なくとも一方が、歯車本体(54)に対して個々に周方向及び又は径方向に弾性変位可能に支持されている。
【0008】
この構成によれば、外歯(16)及び前記内歯(60)の少なくとも一方が、歯車本体(54)に対して個々に周方向及び又は径方向に弾性変位しつつかみ合うことにより、揺動成分を除去してトルク伝達あるいは反力の受け止めが行われる。
【0009】
本発明による揺動成分除去用軸継手は、好ましくは、少なくとも弾性変位可能に支持されている歯を備えた前記歯車(18、52)が、薄板材料を積層することにより形成されている。
【0010】
この構成によれば、歯車(18、52)を安価に製造することができる。
【0011】
本発明による内接式遊星歯車装置は、内周部に内歯(12)を有する内歯歯車(14)と、外周部に、前記内歯(12)より少ない歯数の外歯(16)を有して前記内歯歯車(14)に噛合する外歯歯車(18)と、前記内歯歯車(14)と同一の中心軸線周りに回転し、前記外歯歯車(18)を前記内歯歯車(14)に対して噛合状態で転動させるように前記外歯歯車(18)を回転自在に支持した偏心駆動部材(24)と、前記内歯歯車(14)に対して同軸的に設けられ、内周部に、前記外歯歯車(18)と同じ歯数の内歯(60)を有し、かつ前記外歯歯車(18)に対して噛合する揺動成分除去用歯車(52)とを有し、前記揺動成分除去用歯車(52)の内歯(60)が、歯車本体(54)に対して個々に周方向及び又は径方向に弾性変位可能に支持されている。
【0012】
この構成によれば、内歯(60)が歯車本体(54)に対して個々に周方向及び又は径方向に弾性変位することにより、偏心駆動部材(24)の回転による外歯歯車(18)の偏心揺動成分を除去してトルク伝達あるいは反力の受け止めが行われる。
【0013】
本発明による揺動成分除去用軸継手は、揺動成分除去用軸継手(70)であって、内輪(72)と、外輪(74)と、前記外輪(74)に対して前記内輪(72)を周方向及び又は径方向に弾性変位可能に連結する弾性変形部(76)と、前記外輪(74)に対する前記内輪(72)の偏心揺動を許容して前記内輪(72)と前記外輪(74)との回転方向の相対変位によって互いに当接するように前記内輪(72)と前記外輪と(74)に形成された凹凸部(82、88)とを有する。
【0014】
この構成によれば、弾性変形部(76)の弾性変形によって揺動成分を除去して凹凸部(82、88)の当接によってトルク伝達あるいは反力の受け止めが行われる。
【0015】
本発明による内接式遊星歯車装置は、内周部に内歯(12)を有する内歯歯車(14)と、外周部に、前記内歯(12)より少ない歯数の外歯(16)を有して前記内歯歯車(14)に噛合する外歯歯車(18)と、前記内歯歯車(14)と同一の中心軸線周りに回転し、前記外歯歯車(18)を前記内歯歯車(14)に対して噛合状態で転動させるように前記外歯歯車(18)を回転自在に支持した偏心駆動部材(24)と、上述の発明による揺動成分除去用軸継手(70)の前記内輪(72)が前記外歯歯車(18)に固定され、且つ外輪(74)が固定部材(40)あるいは出力部材(34)に固定されている。
【0016】
この構成によれば、弾性変形部(76)の弾性変形によって偏心駆動部材(24)の回転による外歯歯車(18)の偏心揺動成分を除去して凹凸部(82、88)の当接によってトルク伝達あるいは反力の受け止めが行われる。
【発明の効果】
【0017】
本発明による揺動成分除去用軸継手によれば、簡素な構造をもって揺動成分を除去することができる。この新しい揺動成分除去用軸継手の使用のもとに、滑り継手を不要にして内接式遊星歯車装置の構造を簡素化すると共に小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明による揺動成分除去用軸継手を組み込まれた内接式遊星歯車装置の実施形態1を示す正面図。
【
図2】実施形態1による内接式遊星歯車装置の断面図。
【
図3】実施形態1による揺動成分除去用軸継手部分の正面図。
【
図4】実施形態1による揺動成分除去用軸継手の要部の拡大正面図。
【
図5】本発明による揺動成分除去用軸継手の他の実施形態を示す要部の拡大正面図。
【
図6】本発明による揺動成分除去用軸継手の変形例を示す要部の拡大正面図。
【
図7】本発明による揺動成分除去用軸継手の変形例を示す要部の拡大正面図。
【
図8】本発明による揺動成分除去用軸継手の変形例を示す要部の拡大正面図。
【
図9】本発明による揺動成分除去用軸継手の変形例を示す要部の拡大正面図。
【
図10】本発明による揺動成分除去用軸継手の変形例を示す要部の拡大正面図。
【
図11】本発明による揺動成分除去用軸継手の変形例を示す要部の拡大正面図。
【
図12】本発明による揺動成分除去用軸継手を組み込まれた内接式遊星歯車装置の実施形態2を示す断面図。
【
図13】実施形態2による揺動成分除去用軸継手部分の組み付け前の正面図。
【
図14】実施形態2による揺動成分除去用軸継手部分の組み付け後の正面図。
【
図15】本発明による揺動成分除去用軸継手の変形例の組み付け前の正面図。
【
図16】本発明による揺動成分除去用軸継手の変形例の組み付け後の正面図。
【
図17】本発明による揺動成分除去用軸継手の変形例の組み付け前の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明による揺動成分除去用軸継手および内接式遊星歯車装置(ハイポサイクロイド型減速機)の実施形態1を、
図1〜
図4を参照して説明する。
【0020】
内接式遊星歯車装置10は、
図1、
図2に示されているように、内周部に複数個の内歯12を形成された円環形状の内歯歯車(太陽歯車)14と、外周部に内歯12と噛合する複数個の外歯16を形成された円環形状の外歯歯車(遊星歯車)18とを有する。内歯12と外歯16とのピッチは同一であり、外歯16の歯数は内歯12の歯数より少なくとも1つ以上少ない。
【0021】
内接式遊星歯車装置10は、更に、自身の中心孔20に対して偏心した円筒形状の偏心部22を一体形成された偏心駆動部材24を有する。偏心駆動部材24は、中心孔20が内歯歯車14と同一の中心軸線に位置するように、軸線方向の両端部をボール軸受26、28によって後述する出力部材34及び固定部材40から回転自在に支持されている。これにより、偏心駆動部材24は内歯歯車14と同一の中心軸線周りに回転する。
【0022】
偏心駆動部材24は、中心孔20に入力軸32の端部を嵌挿され、偏心部22の外周にボール軸受等の軸受30によって外歯歯車18を回転自在に支持している。偏心部22の偏心量は内歯12及び外歯16の歯丈に応じて決まり、内歯12と外歯16との基準円の径が互いに異なることにより、内歯12と外歯16とは偏心側においてのみ噛合する。
【0023】
偏心駆動部材24は入力軸32によって内歯歯車14と同一の中心軸線周りに回転駆動される。偏心駆動部材24の回転により、外歯歯車18は、内歯歯車14に対して偏心側で噛合した状態を保って転動し、内歯歯車14に対して偏心揺動する。
【0024】
内歯歯車14には取付ボルト33によって出力部材34が同心に固定されている。出力部材34には自身の中心孔36に嵌挿された出力軸38の端部が固定されている。かくして、入力軸32と内歯歯車14と出力部材34と出力軸38とは互いに同一軸線上に配置される。
【0025】
外歯歯車18は揺動成分除去用軸継手50によって偏心揺動を許容された状態で回転位相を固定されるべく固定部材40に連結されている。これにより、外歯歯車18は、内歯歯車14に対して回転位相を変化することがなく、内接式遊星歯車装置10における反力部材として作用する。
【0026】
揺動成分除去用軸継手50は、
図2、
図3に示されているように、外歯歯車をなす外歯歯車18の軸線方向延長部に噛合する内歯歯車をなす揺動成分除去用歯車52を備えている。揺動成分除去用歯車52は、取付孔57を有する円環形状の歯車本体54と、歯車本体54の内周部より互いに隣接するもの同士で周方向のギャップ56を設けて径方向内方に延出した片持ちの支持片58と、支持片58の各々の先端部に形成された内歯60とを有し、取付孔57に挿入された取付ボルト55によって固定部材40の一端部に内歯歯車14に対して同軸的(同心)に固定されている。なお、揺動成分除去用歯車52は、内歯歯車14とは非接触であり、内歯歯車14の回転を阻害することがない。
【0027】
内歯60は、外歯16の歯数と同一であり、支持片58の弾性変形のもとに歯車本体54に対して個々に周方向に変位可能に支持されて外歯歯車18の偏心側において外歯16と噛合している。内歯60の周方向の変位は、支持片58が隣接する支持片58に当接するまでは、つまり、ギャップ56を消滅する範囲内では比較的小さい荷重によって発生するが、支持片58が隣接する支持片58に当接することによってそれ以上の変位は実質的に発生しないようになっており、偏心駆動部材24の回転による外歯歯車18の偏心揺動の範囲内で支持片58の弾性変形による内歯60の周方向変位の許容する設定になっている。なお、支持片58の歯車本体54に対する付け根部は、
図4に示されているように、1/4円弧による隅Rによる接続でなく、応力緩和のために、ギャップ56の幅より大きい内径による拡張された円弧部59が形成されている。
【0028】
このように、外歯歯車18は、周方向に弾性変位可能な内歯60と外歯16とのスプライン的な噛合のもとに、偏心駆動部材24の回転による偏心揺動を許容された状態で、換言すると、偏心揺動成分を除去された状態で、回転位相を変化することなく固定部材40に連結される。
【0029】
なお、外歯16と内歯60とが同じ歯数であることにより、外歯16と内歯60との形状が同じであっても、外歯16と内歯60とのピッチが互いに相違することにより、外歯16と内歯60との噛合に干渉が生じるが、この干渉は内歯60の周方向の弾性変位によって解消される。
【0030】
入力軸32によって偏心駆動部材24が回転すると、揺動成分除去用軸継手50による固定部材40に対する連結によって外歯歯車18が回転位相を変化することがない反力部材として作用しつつ偏心揺動し、互いに噛合している外歯16と内歯12との歯数の違いにより、内歯歯車14が入力軸32と同方向に減速回転する。この回転は同軸配置の出力部材34を介して同じく同心配置の出力軸38に伝達される。
【0031】
偏心揺動する外歯歯車18の固定部材40に対する連結は揺動成分除去用軸継手50を介して行われているので、この連結部にオルダム継手のような複雑な滑り継手を設ける必要がなくなる。揺動成分除去用軸継手50は、外歯歯車18との組み合わせにおいて、可撓性を有する一種のスプライン結合のようなものであるから、滑り継手に比して簡素な構造のものであり、滑り継手に比して小型化が容易である。これにより、内接式遊星歯車装置10の簡素化のもとに、コスト低減および小型化が可能になる。
【0032】
本実施形態では、揺動成分除去用歯車52は、薄板材料を同一形状にプレス成形した複数枚の継手構成板53を積層した積層構造で、取付ボルト55によって一括して固定部材40に固定される構成になっている。これにより、揺動成分除去用軸継手50が切削加工品である場合に比べて生産性よく安価に製造することができる。
【0033】
なお、内接式遊星歯車装置10及び揺動成分除去用軸継手50の回転部分は、固定部材40に取り付けられたアウタカバー42によって非干渉状態で被覆されている。また、アウタカバー42は軸受44によって出力部材34に相対的に回転可能に連結されている。
【0034】
本実施形態では、内歯歯車14、外歯歯車18も、それぞれ薄板材料をプレス成形した複数枚の歯車構成板15、21を積層した積層構造で、取付ボルト33やピン19によって一体化したもので構成されているので、更なるコストダウンを図ることができる。なお、複数枚の歯車構成板15、21の積層・一体化は、かしめや接着等によって行うこともできる。
【0035】
図5は揺動成分除去用歯車52の他の実施形態を示している。この実施形態の揺動成分除去用歯車52は、歯車本体54の内周部より支持片58と同様に、径方向内方に延出した幅広の取付片62を有し、取付片62に取付孔57を形成されている。
【0036】
この実施形態では、偏心揺動している外歯歯車18の外歯16との噛合において、隣接する内歯60同士が順次に当接し、取付片62に隣接する内歯60が取付片62に当接することにより、固定部材40に対する反力の受け止め(トルク伝達)が、より確実に行われるようになる。併せて支持片58の過剰な弾性変形が制限され、支持片58の付け根部の応力集中を緩和することができる。
【0037】
また、必ずしも、外歯歯車18の外歯16の全てが、対応する位置にて揺動成分除去用歯車52の内歯60と噛合する必要がなく、モジュールが変わらなければ、幾つかの内歯60が間欠的に差し引かれてもよい。
【0038】
また、取付片62の部分においては、噛み合い干渉を避けるために、内歯60が省略され、周方向に弾性変位しなくても、外歯16と噛み合い干渉を生じない形状の歯部61が形成されてもよい。
【0039】
支持片58の形状は、種々の変形例が考えられる。例えば、
図6に示されているように、付け根側は高いばね定数を示す幅広部58Aで、先端側が低いばね定数を示す幅狭部58Bになっていてもよい。この場合には、専ら幅狭部58Bによって偏心揺動の変位を受け持ち、幅広部58Aで反力(トルク)を受け持つことができる。
【0040】
また、
図7に示されているように、支持片58の先端近傍から付け根部の手前にまでスリット63を形成し、支持片58の先端側では付け根側に比して周方向に弾性変形し易くし、支持片58の付け根部の応力集中を緩和することができる。
【0041】
また、
図8に示されているように、スリット65によって支持片58及び内歯60を周方向に2分割した形状にすることもできる。この場合には、偏心変位をばね定数が小さい側で受け持って支持片58の付け根部の応力集中を緩和し、ばね定数が高い部分で反力(トルク)を受け持ち、ばね定数を変位によって変化させる特性を持たせることができる。
【0042】
また、
図9に示されているように、支持片58がN形に折り曲がった形状をしていても、
図10に示されているように、径方向に長いメアンダ状に折り曲がった形状をしていてもよい。これらの場合には、支持片58が周方向に加えて径方向にも弾性変形するので、内歯60は、周方向にも径方向にも弾性変位できるようになり、外歯歯車18の揺動成分の除去がより一層良好に行われるようになる。
【0043】
更に、
図11に示されているように、より的確な反力受け止め(トルク伝達)のために内歯60より周方向に延出したトルク伝達片67が追加されてもよい。
【0044】
内接式遊星歯車装置10の他の実施形態として、内歯歯車14が固定で、内歯歯車14を反力部材とし、外歯歯車18に出力部材が連結されてもよい。この場合には、外歯歯車18と噛合する揺動成分除去用歯車52が出力部材に同心的に取り付けられればよい。
【0045】
つぎに、本発明による揺動成分除去用軸継手および内接式遊星歯車装置(ハイポサイクロイド型減速機)の実施形態2を、
図12〜
図14を参照して説明する。なお、
図12〜
図14において、
図1、
図2に対応する部分は、
図1、
図2に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。
【0046】
外歯歯車18は、内接式遊星歯車装置10における反力部材をなすべく、
図12に示されているように、揺動成分除去用軸継手70によって偏心揺動を許容された状態で回転位相を固定されるべく固定部材40に連結されている。
【0047】
揺動成分除去用軸継手70は、
図13、
図14に示されているように、円環形状の内輪72及び外輪74を有する。内輪72と外輪74とは、
図13に示されている初期状態(取付前の状態)では、互いに同心をなしており、周方向に長いメアンダ状に折曲した弾性変形部76によって互いに連結されている。
【0048】
内輪72は弾性変形部76の弾性変形によって外輪74に対して周方向及び又は径方向に弾性変位可能になっている。
【0049】
内輪72には複数個の貫通孔78が周方向に等ピッチで形成されている。内輪72は貫通孔78にピン19もしくはボルト等を嵌挿されることにより外歯歯車18の一端部に同心配置で固定される(
図12参照)。内輪72には外周部より径方向外方に延出した突出部80が周方向に等ピッチで設けられている。突出部80には半円形状の凹部82が形成されている。
【0050】
外輪74には内周部より径方向内方に延出した突出部84が周方向に等ピッチで設けられている。突出部84には取付孔86が貫通形成されている。外輪74は取付孔86に挿入される取付ボルト68によって固定部材40の一端部に内歯歯車14に対して同軸的(同心)に固定されている(
図12参照)。
【0051】
突出部84は各々凹部82に対応して設けられており、突出部84の先端側は凹部82の内径より小さい外径による半円形状の凸部88になっている。凹部82と凸部88とは、初期状態では、
図13に示されているように、互いに同心で、半円形のギャップ90を画成する。ギャップ90は、偏心駆動部材24の回転による外歯歯車18の偏心揺動を許容する値に設定され、この値を最小値にすることによってロストモーションを最小にすることができる。
【0052】
突出部80の付け根部は1/4円弧によるR部92になっている。R部92は、初期状態では、
図13に示されているように、弾性変形部76の半円状の折曲部94との間にギャップ96を画成している。
【0053】
揺動成分除去用軸継手70は、内輪72を外歯歯車18に固定され、外輪74を固定部材40に固定された組み付け状態では、外歯歯車18が内歯歯車14に対して偏心していることにより、
図14に示されているように、外輪74に対して内輪72が偏心し、偏心に応じて凹部82の内周面が凸部88の外周面に当接する。この当接によって外歯歯車18が固定部材40に対して回転変位できなくなり、外歯歯車18が反力部材として作用する。この凹部82と凸部88との当接は、外歯歯車18の偏心揺動に応じて、凹部82及び凸部88の円弧面に沿って当接位置を変化しながらも常に生じる。これにより、外歯歯車18の偏心揺動を許容して外歯歯車18が固定部材40に対して回転変位できなくなる。かくして、偏心駆動部材24の回転による外歯歯車18の偏心揺動成分を除去して反力の受け止めが行われる。
【0054】
また、組み付け状態では、同様に、折曲部94がR部92に当接し、当接位置(当たり部)が外歯歯車18の偏心揺動に応じて、R部92に沿って変化する。この当接によって弾性変形部76のばね定数の上昇が図られ、ロストモーション時のばね定数が上昇する。
【0055】
入力軸32によって偏心駆動部材24が回転すると、揺動成分除去用軸継手70による固定部材40に対する連結によって外歯歯車18が回転位相を変化することがない反力部材として作用しつつ偏心揺動し、互いに噛合している外歯16と内歯12との歯数の違いにより、内歯歯車14が入力軸32と同方向に減速回転する。この回転は同軸配置の出力部材34を介して同じく同心配置の出力軸38に伝達される。
【0056】
偏心揺動する外歯歯車18の固定部材40に対する連結は揺動成分除去用軸継手70を介して行われているので、この連結部にオルダム継手のような複雑な滑り継手を設ける必要がなくなる。揺動成分除去用軸継手70は、リミッタを有する撓み継手のようなものであるから、滑り継手に比して簡素な構造のものであり、滑り継手に比して小型化が容易である。これにより、内接式遊星歯車装置10の簡素化のもとに、コスト低減および小型化が可能になる。
【0057】
本実施形態では、揺動成分除去用軸継手70は、薄板材料を同一形状にプレス成形した複数枚の継手構成板53を積層した積層構造で、取付ボルトによって一括して固定部材40に固定される構成になっている。これにより、揺動成分除去用軸継手50が切削加工品
である場合に比べて生産性よく安価に製造することができる。
【0058】
この実施形態でも、内歯歯車14が固定で、内歯歯車14を反力部材とし、外歯歯車18に出力部材が連結されてもよい。この場合には、内輪72が外歯歯車18に固定され、外輪74が出力部材に同心的に固定されればよい。
【0059】
図15、
図16は揺動成分除去用軸継手70の変形例を示している。この変形例では、内輪72と外輪74との間に中間輪98が配置されている。内輪72と外輪74と中間輪98とは、
図15に示されている初期状態(取付前の状態)では、互いに同心をなしている。
【0060】
内輪72と中間輪98とは弾性変形部100によって互いに連結され、中間輪98と外輪74は弾性変形部102によって互いに連結されている。弾性変形部100と102とは、ともに周方向に長いメアンダ状のものであるが、弾性変形部100と102とで周方向で見て互い反転した接続形状になっている。
【0061】
内輪72には外周部より径方向外方に延出した突出部104が周方向に等ピッチで設けられている。突出部104には貫通孔106が形成されている。内輪72は貫通孔106にピン19を嵌挿されることにより外歯歯車18の一端部に同心配置で固定される(
図12参照)。突出部104の先端側は半円形状の凸部108になっている。中間輪98の内周部にはギャップ110をおいて凸部108が係合する半円形状の凹部112が形成されている。
【0062】
外輪74には内周部より径方向内方に延出した突出部114が周方向に等ピッチで設けられている。突出部114には貫通孔116が形成されている。外輪74は貫通孔116に挿入される取付ボルト68によって固定部材40の一端部に内歯歯車14に対して同軸的(同心)に固定される(
図12参照)。突出部114の先端側は半円形状の凸部118になっている。中間輪98の外周部にはギャップ120をおいて凸部118が係合する半円形状の凹部124が形成されている。また、弾性変形部102と外輪74と間には当たり部126(
図16参照)が設けられている。
【0063】
揺動成分除去用軸継手70は、内輪72を外歯歯車18に固定され、外輪74を固定部材40に固定された組み付け状態では、外歯歯車18が内歯歯車14に対して偏心していることにより、
図16に示されているように、外輪74に対して内輪72が偏心し、偏心に応じて凸部108の外周面が凹部112の内周面に当接すると共に、凹部124の内周面が凸部118の外周面に当接する。
【0064】
これら当接によって外歯歯車18が固定部材40に対して回転変位できなくなり、外歯歯車18が反力部材として作用する。凸部108と凹部112との当接及び凹部124と凸部118との当接は、各々、外歯歯車18の偏心揺動に応じて、これら当接部の円弧面に沿って当接位置を変化しながらも常に生じる。これにより、外歯歯車18の偏心揺動を許容して外歯歯車18が固定部材40に対して回転変位できなくなる。かくして、偏心駆動部材24の回転による外歯歯車18の偏心揺動成分を除去して反力の受け止めが入力軸32の正逆両回転において同等の特性を行われる。
【0065】
揺動成分除去用軸継手70の変形例として、
図17に示されているように、内輪72と外輪74とはぜんまいばね130によって連結されていてもよい。
【0066】
以上、本発明を、その好適な実施形態について説明したが、当業者であれば容易に理解できるように、本発明はこのような実施形態により限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、
図2に示されている実施形態では、揺動成分除去用軸継手50の外歯歯車は、内接式遊星歯車装置10の外歯歯車18の軸線延長部を兼用しているが、揺動成分除去用軸継手50の外歯歯車は、外歯歯車18との別体の外歯歯車で構成されていてもよく、揺動成分除去用軸継手50の外歯歯車と外歯歯車18とは、互いに異なる歯数であっても、互いに異なる外径であってもよい。揺動成分除去用歯車52の内歯60に代えて外歯歯車18の外歯16が歯車本体部(ハブ部)に対して個々に周方向及び又は径方向に弾性変位可能に支持されていてもよい。
【0067】
また、上記実施形態に示した構成要素は必ずしも全てが必須なものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。