特許第6220797号(P6220797)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6220797-流体力学システムの境界 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6220797
(24)【登録日】2017年10月6日
(45)【発行日】2017年10月25日
(54)【発明の名称】流体力学システムの境界
(51)【国際特許分類】
   G06F 17/50 20060101AFI20171016BHJP
   G06F 19/00 20110101ALI20171016BHJP
【FI】
   G06F17/50 612H
   G06F19/00 110
【請求項の数】13
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-561164(P2014-561164)
(86)(22)【出願日】2013年3月8日
(65)【公表番号】特表2015-511745(P2015-511745A)
(43)【公表日】2015年4月20日
(86)【国際出願番号】US2013029998
(87)【国際公開番号】WO2013134705
(87)【国際公開日】20130912
【審査請求日】2016年2月16日
(31)【優先権主張番号】61/608,529
(32)【優先日】2012年3月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514106443
【氏名又は名称】エンジン シミュレーション パートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】ロング リアング
(72)【発明者】
【氏名】チェング ワング
(72)【発明者】
【氏名】アンソニィ シェルバーン
【審査官】 松浦 功
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−026581(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/061723(WO,A1)
【文献】 特開2011−138210(JP,A)
【文献】 米国特許第06678642(US,B1)
【文献】 米国特許第06424923(US,B1)
【文献】 Liang, L. et al.,A New Automatic and Dynamic Mesh Generation Technique Based On Immersed Boundary Method,International Multidimensional Engine Modeling User's Group Meeting [online],2011年 4月11日,pp. 1 - 6,[検索日 2017.01.18],インターネット,URL,https://imem.cray.com/2011/Meeting-2011/4_Liang-Reaction_Design.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 17/50
G06F 19/00
Google Scholar
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータが流体システムをシミュレーションする方法であって:
前記コンピュータが
セルの計算メッシュを用いて流体システムを表すステップであって、該各セルが、面、頂点、及び体積を有し、該システムが、支配方程式によって特徴付けられ、かつ一連の境界を有し、該境界の少なくとも1つが移動境界である、該ステップ;
該流体システムをコンピュータベースのモデルで表すステップであって、該流体システムが、少なくとも1つの境界を有し、該モデルに基づいて、少なくとも複数のセルを用いて該流体システムをシミュレーションする、該ステップ;
解法プロセスを時間ステップに亘って適用するステップであって、該解法プロセスが:
該流体システムの内部にセルの中心を有するセルを内部セルとして特定するステップ;
内部セルとゴーストセルとを分離し、かつ時間ステップの最初に該流体システムの移動境界の近傍にあるセル面を移動セル面として特定するステップであって;対応する移動セル面の最初の位置に、該時間ステップの最初に位置する各セル頂点が、移動境界頂点であり、移動セル面に接触していない最初の位置に、該時間ステップの最初に位置する各内部セル頂点が、内部頂点であるステップ;を含む、該ステップ;
計算プロセスを適用して、該離散化支配方程式の変数の値を決定するステップであって、該計算プロセスが:
システム圧力値にアクセスするステップ;
該システムの少なくとも1つの代表的な熱力学特性の値を計算するステップ;
各内部頂点が、ラグランジュ方式で流体の流れと共に移動するときに、該時間ステップの最後に該各内部頂点のラグランジュ位置を決定するステップ;
各移動境界頂点が、対応する移動セル面と共に移動するときに、該時間ステップの最後に該各移動境界頂点のラグランジュ位置を決定するステップ;
該時間ステップの間の各内部セルの体積の変化を、その対応するセル頂点のそれらの対応するラグランジュ位置への変位に基づいて決定するステップ;
該システムの少なくとも1つの代表的な熱力学特性の値を、該内部セルの体積の変化に基づいて計算するステップ;を含む、該ステップ;及び
該対応する内部頂点をそれらのラグランジュ位置からそれらの対応する最初の位置に戻すことによって、1つ以上の内部セルの体積に対する少なくとも1つの代表的な流束値を計算するステップを含む、前記方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの流束値を計算する動作が、ゴーストセルプロセスを利用して対応する内部セルのセル体積を決定する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記計算プロセスが、前記システム圧力値を補正するステップを含み、該計算プロセスが、収束基準が満たされるまで反復的に繰り返される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記解法プロセスが、前記移動境界頂点を前記時間ステップの最後にそれぞれの対応する最初の位置に戻すステップ、及び該時間ステップの最後に前記少なくとも1つの移動境界の位置を更新するステップをさらに含み、該解法プロセスが、収束基準が満たされるまで反復的に繰り返される、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記各移動境界が速度を有し、移動セル面に位置する各境界頂点が速度を有し、該境界頂点の速度が、対応する移動境界の速度に基づいている、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記計算メッシュがデカルト格子である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
コンピュータが流体システムをシミュレーションする方法であって:
前記コンピュータが
一連の境界内の流体領域を含み、かつ少なくとも1つの流速値を有する過渡的な流体システムに関連したモデルのデータ表現にアクセスするステップであって、該流体システムが、その一連の熱物理特性間の関係を表す一連の支配方程式によって特徴付けられ、該各支配方程式が、熱物理特性に一致する少なくとも1つの変数を含み、該一連の熱物理特性が、少なくとも1つの圧力及び速度を含み、該流体システムが、少なくとも1つの移動境界をさらに有し、該各移動境界が、境界速度を有する、該ステップ;
該流体システムの計算メッシュ表現にアクセスするステップであって、該計算メッシュが、一連の計算セルを含み、該各計算セルが、セルの中心、体積、一連のセル面、及び一連の頂点を有する、該ステップ;
解法プロセスを時間ステップに亘って適用するステップであって、該解法プロセスが:
該時間ステップの最初にセルの中心が該流体領域内に位置する全ての計算セルを内部セルとして特定するステップ;
1つ以上の支配方程式を該計算メッシュのセルに対して離散化するステップ;
内部セルとゴーストセルを分離し、かつ時間ステップの最初に移動境界の近傍にある全てのセル面を移動セル面として特定するステップ;
該時間ステップの最初に移動セル面の最初の位置に位置する全てのセル頂点を移動境界頂点として特定するステップ;
該時間ステップの最初に移動セル面に接触していない最初の位置に位置する全てのセル頂点を内部頂点として特定するステップ;を含む、該ステップ;
計算プロセスを適用して、該離散化支配方程式の変数の値を決定するステップであって、該計算プロセスが:該流体システムの推定圧力値にアクセスするステップ;該圧力値に基づいて1つ以上の流速値を更新するステップ;該各内部頂点が、該時間ステップの間に流体の流れと共にラグランジュ位置に移動し、かつ該各移動境界頂点が、該時間ステップの間に対応する移動セル面と共にラグランジュ位置に移動するときに、各内部セルのセル体積を各セル頂点の位置に基づいて更新するステップ;1つ以上の流速値を更新するステップ、並びに該システムの少なくとも1つの他の代表的な熱物理特性の値を、該更新された圧力値及び該時間ステップの間の内部セルの体積の変化に基づいて計算するステップを含む、該ステップ;並びに
1つ以上の内部セルの対応する内部頂点を、それらのラグランジュ位置からそれらの対応する最初の位置に戻すことによって1つ以上の内部セル体積に対する少なくとも1つの流束値を計算するステップを含む、前記方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの流束値を計算するステップが、ゴーストセル法を利用して対応する内部セルのセル体積を決定することを含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記解法プロセスが、前記流体システムの前記圧力値を補正するステップを含み、該解法プロセスが、収束基準が満たされるまで反復的に繰り返される、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記計算プロセスが、前記移動境界頂点を、前記時間ステップの最後にそれらの対応する最初の位置に戻すステップ、及び該時間ステップの最後に少なくとも1つの移動境界の位置を更新するステップを含み、該計算プロセスが、収束基準が満たされるまで反復的に繰り返される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
移動セル面に位置する各境界頂点の速度が、対応する移動境界の速度に基づいている、請求項9記載の方法。
【請求項12】
前記計算メッシュがデカルト格子である、請求項7記載の方法。
【請求項13】
装置に以下のステップを実行させる命令を記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって:
セルの計算メッシュを用いて流体システムを表すステップであって、該各セルが、面、頂点、及び体積を有し、該システムが、支配方程式によって特徴付けられ、かつ一連の境界を有し、該境界の少なくとも1つが移動境界である、該ステップ;
該流体システムをコンピュータベースのモデルで表すステップであって、該流体システムが、少なくとも1つの境界を有し、該モデルに基づいて、少なくとも複数のセルを用いて該流体システムをシミュレーションする、該ステップ;
該流体システムの内部にセルの中心を有するセルを内部セルとして特定するステップ;
内部セルとゴーストセルとを分離し、かつ時間ステップの最初に該流体システムの移動境界の近傍にあるセル面を移動セル面として特定するステップであって;対応する移動セル面の最初の位置に、該時間ステップの最初に位置する各セル頂点が、移動境界頂点であり、移動セル面に接触していない最初の位置に、該時間ステップの最初に位置する各内部セル頂点が、内部頂点である、該ステップ;
システム圧力値にアクセスするステップ;
該システムの少なくとも1つの代表的な熱力学特性の値を計算するステップ;
各内部頂点が、ラグランジュ方式で流体の流れと共に移動するときに、該時間ステップの最後に該各内部頂点のラグランジュ位置を決定するステップ;
該各移動境界頂点が、対応する移動セル面と共に移動するときに、該時間ステップの最後に該各移動境界頂点のラグランジュ位置を決定するステップ;
該時間ステップの間の各内部セルの体積の変化を、その対応するセル頂点のそれらの対応するラグランジュ位置への変位に基づいて決定するステップ;
該システムの少なくとも1つの代表的な熱力学特性の値を、該内部セルの体積の変化に基づいて計算するステップ;及び
対応する内部頂点をそれらのラグランジュ位置からそれらの対応する最初の位置に戻すことによって、1つ以上の内部セルの体積に対する少なくとも1つの代表的な流束値を計算するステップを含む、前記命令を記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、米国特許法第119条(e)項の下で、あらゆる目的のために引用により本明細書中に組み込まれている2012年3月8日出願の米国仮特許出願第61/608,529号の優先権を主張するものである。
【0002】
(技術分野)
本出願は、一般に、流体システムの計算流体力学解析に関し、詳細には、任意ラグランジュ・オイラー(ALE:Arbitrary Lagrangian Eulerian)数値解法と組み合わせて、埋め込み境界計算メッシュを利用することによって流体流動システムにおける移動境界を処理する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
計算流体力学(「CFD」)は、流体の流れ、及び流体システムにおけるプロセス、例えば、熱伝導または化学反応に対する流体の流れの影響についての学問である。CFDは、静止流路及び管を通って、移動境界を有する複雑なシステムに至る比較的単純な流体の流れ、例えば、内燃機関又はジェットエンジン内の可燃性の流れからシステムの解析を容易にする。流体運動の物理特性は、保存関係、例えば、質量と運動量の関係を含む基礎支配方程式によって決定され、該基礎支配方程式は、部分微分方程式として表すことができる。CFDは、離散近似を用いてこれらの支配方程式の数値解法を提供することによって流体システムの特性の決定及び解析を容易にする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(概要)
第1の態様によると、流体システムを表すセルの計算メッシュを利用する計算流体力学プロセスにおいて境界セルを処理する方法が提供され、該各セルが、面、頂点、及び体積を有し、該システムが、支配方程式によって特徴付けられ、かつ一連の境界を有し、該境界の少なくとも1つが移動境界であり、該方法は:(a)解法プロセスを適用するステップであって:該プロセスが、該流体システムの内部にセルの中心を有するセルを内部セルとして特定すること;内部セルとゴーストセルとを分離し、かつ時間ステップの最初に移動境界の近傍にあるセル面を移動セル面として特定することを含み;対応する移動セル面の最初の位置に、該時間ステップの最初に位置する各セル頂点が、移動境界頂点であり、移動セル面に接触していない最初の位置に、該時間ステップの最初に位置する各内部セル頂点が、内部頂点である、該ステップ;(b)計算プロセスを適用するステップであって、計算プロセスが:システム圧力値にアクセスするステップ;該システムの少なくとも1つの代表的な熱力学特性の値を計算するステップ;各内部頂点が、ラグランジュ方式で流体の流れと共に移動するときに、該時間ステップの最後に該各内部頂点のラグランジュ位置を決定するステップ;該各移動境界頂点が、対応する移動セル面と共に移動するときに、該時間ステップの最後に該各移動境界頂点のラグランジュ位置を決定するステップ;該時間ステップの間の各内部セルの体積の変化を、その対応するセル頂点のそれらの対応するラグランジュ位置への変位に基づいて決定するステップ;及び該システムの少なくとも1つの代表的な熱力学特性の値を、該内部セルの体積の変化に基づいて計算するステップを含む、該ステップ;(c)対応する内部頂点をそれらのラグランジュ位置からそれらの対応する最初の位置に戻すことによって、1つ以上の内部セルの体積に対する少なくとも1つの代表的な流束値を計算するステップを含む。
【0005】
第2の態様によると、装置は、少なくとも1つのプロセッサ、及びコンピュータプログラムコードを含む少なくとも1つのメモリを備え、該少なくとも1つのメモリ及び該コンピュータプログラムコードが、該少なくとも1つのプロセッサを用いて、該装置に少なくとも以下を実行させるように構成されている:(a)解法プロセスを適用する:該プロセスが:該流体システムの内部にセルの中心を有するセルを内部セルとして特定すること;内部セルとゴーストセルとを分離し、かつ時間ステップの最初に移動境界の近傍にあるセル面を移動セル面として特定することを含み;対応する移動セル面の最初の位置に、該時間ステップの最初に位置する各セル頂点が、移動境界頂点であり、移動セル面に接触していない最初の位置に、該時間ステップの最初に位置する各内部セル頂点が、内部頂点であり;(b)以下のステップを含む計算プロセスを適用する:該計算プロセスが、システム圧力値にアクセスするステップ;該システムの少なくとも1つの代表的な熱力学特性の値を計算するステップ;各内部頂点が、ラグランジュ方式で流体の流れと共に移動するときに、該時間ステップの最後に該各内部頂点のラグランジュ位置を決定するステップ;該各移動境界頂点が、対応する移動セル面と共に移動するときに、該時間ステップの最後に該各移動境界頂点のラグランジュ位置を決定するステップ;該時間ステップの間の各内部セルの体積の変化を、その対応するセル頂点のそれらの対応するラグランジュ位置への変位に基づいて決定するステップ;及び該システムの少なくとも1つの代表的な熱力学特性の値を、該内部セルの体積の変化に基づいて計算するステップを含む;(c)対応する内部頂点をそれらのラグランジュ位置からそれらの対応する最初の位置に戻すことによって、1つ以上の内部セルの体積に対する少なくとも1つの代表的な流束値を計算する。
【0006】
第3の態様によると、コンピュータが実行可能な命令を含むコンピュータ可読媒体であって、該命令がプロセッサによって実行されると、装置が以下の少なくとも1つを実行する:(a)解法プロセスを適用する:該プロセスが:該流体システムの内部にセルの中心を有するセルを内部セルとして特定すること;内部セルとゴーストセルとを分離し、かつ時間ステップの最初に移動境界の近傍にあるセル面を移動セル面として特定することを含み;対応する移動セル面の最初の位置に、該時間ステップの最初に位置する各セル頂点が、移動境界頂点であり、移動セル面に接触していない最初の位置に、該時間ステップの最初に位置する各内部セル頂点が、内部頂点である;(b)計算プロセスを適用する:該計算プロセスが、システム圧力値にアクセスするステップ;該システムの少なくとも1つの熱力学特性の値を計算するステップ;各内部頂点が、ラグランジュ方式で流体の流れと共に移動するときに、該時間ステップの最後に該各内部頂点のラグランジュ位置を決定するステップ;該各移動境界頂点が、対応する移動セル面と共に移動するときに、該時間ステップの最後に該各移動境界頂点のラグランジュ位置を決定するステップ;該時間ステップの間の各内部セルの体積の変化を、その対応するセル頂点のそれらの対応するラグランジュ位置への変位に基づいて決定するステップ;及び該システムの少なくとも1つの代表的な熱力学特性の値を、該内部セルの体積の変化に基づいて計算するステップ;(c)対応する内部頂点をそれらのラグランジュ位置からそれらの対応する最初の位置に戻すことによって、1つ以上の内部セルの体積に対する少なくとも1つの代表的な流束値を計算する。
【0007】
第4の態様によると、方法は:(a)一連の境界内の流体領域を含み、かつ少なくとも1つの流速値を有する過渡的な流体システムに関連したモデルのデータ表現にアクセスするステップであって、該流体システムが、その一連の熱物理特性間の関係を表す一連の支配方程式によって特徴付けられ、該各支配方程式が、熱物理特性に一致する少なくとも1つの変数を含み、該一連の熱物理特性が、少なくとも1つの圧力及び速度を含み、該流体システムが、少なくとも1つの移動境界をさらに有し、該各移動境界が、境界速度を有する、該ステップ;(b)該流体システムの計算メッシュ表現にアクセスするステップであって、該計算メッシュが、一連の計算セルを含み、該各計算セルが、セルの中心、体積、一連のセル面、及び一連の頂点を有する、該ステップ;(c)解法プロセスを時間ステップに亘って適用するステップであって、該解法プロセスが:該時間ステップの最初にセルの中心が該流体領域内に位置する全ての計算セルを内部セルとして特定する動作;1つ以上の支配方程式を該計算メッシュのセルに対して離散化する動作;内部セルとゴーストセルを分離し、かつ時間ステップの最初に移動境界の近傍にある全ての境界セル面を移動セル面として特定する動作;該時間ステップの最初に移動セル面の最初の位置に位置する全てのセル頂点を移動境界頂点として特定する動作;該時間ステップの最初に移動セル面に接触していない最初の位置に位置する全てのセル頂点を内部頂点として特定する動作;を含む、該ステップ;(d)計算プロセスを適用して、該離散化支配方程式の変数の値を決定するステップであって、該計算プロセスが:該流体システムの推定圧力値にアクセスするステップ;該圧力値に基づいて1つ以上の流速値を更新するステップ;該各内部頂点が、該時間ステップの間に流体の流れと共にラグランジュ位置に移動し、かつ該各移動境界頂点が、該時間ステップの間に対応する移動セル面と共にラグランジュ位置に移動するときに、各内部セルのセル体積を各セル頂点の位置に基づいて更新するステップ;1つ以上の流速値を更新するステップ、並びに該システムの少なくとも1つの他の熱物理特性の値を、該更新された圧力値及び該時間ステップの間の内部セルの体積の変化に基づいて計算するステップを含む、該ステップ;(e)1つ以上の内部セルの対応する内部頂点を、それらのラグランジュ位置からそれらの対応する最初の位置に戻すことによって1つ以上の内部セル体積に対する少なくとも1つの流束値を計算するステップを含む。
【0008】
第5の態様によると、装置は、少なくとも1つのプロセッサ、及びコンピュータプログラムコードを含む少なくとも1つのメモリを備え、該少なくとも1つのメモリ及び該コンピュータプログラムコードが、該少なくとも1つのプロセッサを用いて、該装置に少なくとも以下を実行させるように構成されている:(a)一連の境界内の流体領域を含み、かつ少なくとも1つの流速値を有する過渡的な流体システムに関連したモデルのデータ表現にアクセスする:該流体システムが、その一連の熱物理特性間の関係を表す一連の支配方程式によって特徴付けられ、該各支配方程式が、熱物理特性に一致する少なくとも1つの変数を含み、該一連の熱物理特性が、少なくとも1つの圧力及び速度を含み、該流体システムが、少なくとも1つの移動境界をさらに有し、該各移動境界が、境界速度を有する;(b)該流体システムの計算メッシュ表現にアクセスする:該計算メッシュが、一連の計算セルを含み、該各計算セルが、セルの中心、体積、一連のセル面、及び一連の頂点を有する;(c)解法プロセスを時間ステップに亘って適用する:該解法プロセスが:該時間ステップの最初にセルの中心が該流体領域内に位置する全ての計算セルを内部セルとして特定する動作;1つ以上の支配方程式を該計算メッシュのセルに対して離散化する動作;内部セルとゴーストセルを分離し、かつ時間ステップの最初に移動境界の近傍にある全ての境界セル面を移動セル面として特定する動作;該時間ステップの最初に移動セル面の最初の位置に位置する全てのセル頂点を移動境界頂点として特定する動作;該時間ステップの最初に移動セル面に接触していない最初の位置に位置する全てのセル頂点を内部頂点として特定する動作;を含む;(d)計算プロセスを適用して、該離散化支配方程式の変数の値を決定する:該計算プロセスが:該流体システムの推定圧力値にアクセスするステップ;該圧力値に基づいて1つ以上の流速値を更新するステップ;該各内部頂点が、該時間ステップの間に流体の流れと共にラグランジュ位置に移動し、かつ該各移動境界頂点が、該時間ステップの間に対応する移動セル面と共にラグランジュ位置に移動するときに、各内部セルのセル体積を各セル頂点の位置に基づいて更新するステップ;1つ以上の流速値を更新するステップ、並びに該システムの少なくとも1つの他の熱物理特性の値を、該更新された圧力値及び該時間ステップの間の内部セルの体積の変化に基づいて計算するステップを含む;(e)1つ以上の内部セルの対応する内部頂点を、それらのラグランジュ位置からそれらの対応する最初の位置に戻すことによって1つ以上の内部セル体積に対する少なくとも1つの流束値を計算する。
【0009】
第6の態様によると、コンピュータが実行可能な命令を含むコンピュータ可読媒体であって、該命令がプロセッサによって実行されると、装置が以下の少なくとも1つを実行する:(a)一連の境界内の流体領域を含み、かつ少なくとも1つの流速値を有する過渡的な流体システムに関連したモデルのデータ表現にアクセスする:該流体システムが、その一連の熱物理特性間の関係を表す一連の支配方程式によって特徴付けられ、該各支配方程式が、熱物理特性に一致する少なくとも1つの変数を含み、該一連の熱物理特性が、少なくとも1つの圧力及び速度を含み、該流体システムが、少なくとも1つの移動境界をさらに有し、該各移動境界が、境界速度を有する;(b)該流体システムの計算メッシュ表現にアクセスする:該計算メッシュが、一連の計算セルを含み、該各計算セルが、セルの中心、体積、一連のセル面、及び一連の頂点を有する;(c)解法プロセスを時間ステップに亘って適用する:該解法プロセスが:該時間ステップの最初にセルの中心が該流体領域内に位置する全ての計算セルを内部セルとして特定する動作;1つ以上の支配方程式を該計算メッシュのセルに対して離散化する動作;内部セルとゴーストセルを分離し、かつ時間ステップの最初に移動境界の近傍にある全ての境界セル面を移動セル面として特定する動作;該時間ステップの最初に移動セル面の最初の位置に位置する全てのセル頂点を移動境界頂点として特定する動作;該時間ステップの最初に移動セル面に接触していない最初の位置に位置する全てのセル頂点を内部頂点として特定する動作;を含む;(d)計算プロセスを適用して、該離散化支配方程式の変数の値を決定する:該計算プロセスが:該流体システムの推定圧力値にアクセスするステップ;該圧力値に基づいて1つ以上の流速値を更新するステップ;該各内部頂点が、該時間ステップの間に流体の流れと共にラグランジュ位置に移動し、かつ該各移動境界頂点が、該時間ステップの間に対応する移動セル面と共にラグランジュ位置に移動するときに、各内部セルのセル体積を各セル頂点の位置に基づいて更新するステップ;1つ以上の流速値を更新するステップ、並びに該システムの少なくとも1つの他の熱物理特性の値を、該更新された圧力値及び該時間ステップの間の内部セルの体積の変化に基づいて計算するステップを含む;(e)1つ以上の内部セルの対応する内部頂点を、それらのラグランジュ位置からそれらの対応する最初の位置に戻すことによって1つ以上の内部セル体積に対する少なくとも1つの流束値を計算する。
【0010】
(図面の簡単な説明)
様々な例のより完全な理解のために、ここで添付の図面に関連付けて以下の説明を行う。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、一実施態様によるプロセスを例示するフローチャートである。
【0012】
図2図2は、流体システム解析用の例示的な開示された方法の一部として利用することができるプロセスの詳細図を例示するフローチャートである。
【0013】
図3図3は、流体システム解析用の例示的な開示された方法に従った、流体システム境界の解析に使用される流体システム境界及びデカルトメッシュ計算セルの経時変化を示す概略図である。
【0014】
図4図4は、流体システム解析用の例示的な開示された方法に従った、境界セル頂点のそれらの最初の位置から対応するラグランジュ位置への変位を示す概略図である。
【0015】
図5図5は、流体システム解析用の例示的な開示された方法に従った、1つの境界セル頂点のラグランジュ位置からその最初の位置への変位を示す概略図である。
【0016】
図6図6は、流体システム解析用の例示的な開示された方法に従った、境界セルの境界頂点のラグランジュ位置からそれらの対応する最初の位置への変位を示す概略図である。
【0017】
図7図7は、様々な実施態様に従って利用することができる例示的な電子処理装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(図面の詳細な説明)
図1図7の図面を参照することにより、様々な例及びそれらの潜在的な利点を理解されよう。
【0019】
より詳細には、CFD法は、流体領域を表す計算メッシュに対して微分形式の支配方程式の離散化を行う。部分微分方程式の代数連立方程式への変換により、数値法の適用によってそれぞれの解を計算することができる。代数方程式を、特定の初期条件及び境界条件の制約を考慮して解いて、システムの流体の流れをシミュレーションして、システムの特性及びパラメータの値を決定することができる。
【0020】
CFD解析の文脈において、J. Donea、A. Huerta、J.-Ph. Ponthot、及びA. Rodriguez-Ferranによる任意ラグランジュ・オイラー法に記載されているように、関連する数学的方程式を数値的に解くALE法は、ラグランジュ及びオイラーの解法の利点を含むが、これらの不利な点を最小限にしている。例えば、ALE技術は、ラグランジュ法の正確な界面の定義を行うが、頻繁な再メッシュ生成を必要とすることなく、純粋オイラーの方法と同様に時間と共に計算メッシュを変位させることができる。試験中の連続流体(fluid continuum)が固定計算メッシュに対して移動するオイラーの特性を利用することにより、流体運動における大きな変形の正確な解析が容易になる。結果として、メッシュのより大きな変形のより正確な処理が、純粋ラグランジュ解法で行う場合よりも可能となり、流れの細部の解像度及び界面の定義の精度が、純粋オイラーの方法よりも改善される(同文献)。
【0021】
ALE解法アルゴリズムは、メッシュの縁が試験される流体システムの境界に一致する物体適合メッシュ流体システムモデル(body- fitted mesh fluid system model)と組み合わせて使用することができる。例えば、KIVA-II計算流体力学プログラムは、過渡的な化学反応性流体の流れ(噴霧を用いる)の数値計算のために、物体適合メッシュと組み合わせられたALE解法アルゴリズムを利用する。しかしながら、計算領域におけるノードの有利な位置合わせを可能にするこのALE解法アルゴリズムの柔軟性にもかかわらず、物体適合メッシュを使用する不利な点には、メッシュの生成及びメッシュ生成プロセスの自動化における難点が含まれる。さらに、構造化物体適合メッシュは、複雑なジオメトリのシステム、例えば、曲面壁、入口、出口、または可動部を含むシステムでは容易に生成することができない。これらの難点を解消する従来の方法、例えば、セル密度の増加、システムの不規則なジオメトリに適合させるためのセルの形状の伸長及び変形、又は非構造化メッシュの利用は、解の精度及び安定性が低下し、しかも計算時間が長くなる傾向にある。
【0022】
「物体適合」法の代替として、「埋め込み境界」法又は「はめ込み境界」法をCFD解析に利用することができる。このような方法は、システム境界の近傍のセルの特殊な処理は行うが、座標軸に対する著しいセルの伸長や変形を行わない、流体システム全体のデカルト計算メッシュの使用を容易にする。「埋め込み」又は「はめ込み境界」メッシュ生成法の利用により、メッシュの不規則さが低減されると共に、自動メッシュ生成プロセスが相対的に単純になり、その速度が向上する。メッシュが完全なデカルト整合(Cartesian alignment)に近づくと解の誤差の源が減少するため、はめ込み境界法は、解の精度及び安定性を改善する。
【0023】
2種類の「埋め込み境界」法が存在する。1つの「埋め込み境界」法では、流体システム境界での不規則な形状のセル(いわゆる「カットセル」)を使用し、その計算アルゴリズムは、これらの不規則な形状のセルを考慮する方法を含む。このような手法では、セルは、システムの境界線又は該セルに交差する表面に沿って線形に「切断」される。「カットセル」法の利点は、移動する境界の正確な位置を追跡するため、計算領域が物理的ジオメトリに一致することである。従って、移動する境界の速度を直接適用して、内部流体に、境界の移動による圧縮及び膨張の効果を「感知させる」ことが容易である。しかしながら、「カットセル」法の不利な点は、流体輸送計算アルゴリズムを、境界における多種多様な不規則な形状のセルを考慮するために大幅に変更する必要があることである。システムのジオメトリに適合させるためのセルの切断又は再形成により、システム境界の近傍に多数の比較的小さいセルが生じることにもなり、解の精度及び安定性の低下が起こり得る。
【0024】
もう1つの種類の「埋め込み境界」法では、物理的境界の外部に延在する規則的な形状のセル、又はいわゆる「ゴーストセル」を使用する。「ゴーストセル」法は、外挿及び内挿を取り入れて背景メッシュの変数を定義し、そして規則的なセルに基づいて支配方程式の解を計算する。この方法は、特定の内挿及び外挿の細部に依存し、これらの細部は、物理的境界における正確な境界条件の実施を容易にするために使用される。「ゴーストセル」法の利点は、システム境界もしくはその近傍におけるセルの再成形、多面体又は四面体のセル形状の利用、又は非実際的なレベルのメッシュ密度の増加に依存することなく、境界領域を含む対象の流体システム全体のデカルトメッシュの使用を可能にすることである。「ゴーストセル」法の不利な点は、有限体積離散化の定式化(formulation)を利用する場合にシステムに対する境界移動の影響を正確にモデル化することが困難であることである。これは、ゴーストセル法では、システム境界又はその近傍に位置するデカルトメッシュにおけるセルが、立方形を維持してセルの変形を回避するためである。このように、セルの境界は、内部流体が、境界移動に一致する圧縮又は膨張の影響を正確に示さなければならないため、指定された移動境界の速度と同じ速度で単純に移動することができない。
【0025】
「ゴーストセル」埋め込み境界メッシュ解析法の恩恵とALE方程式の解法の柔軟性とを組み合わせた手法は、境界が移動する流体領域のシミュレーション及び解析に有利であろう。
【0026】
流体システムのシミュレーション及びモデル化に使用することができる様々な例を以下に説明する。様々な実施態様では、流体システムを解析するための解法プロセス10が図1に全体的に示されている。解法プロセス10は、例えば、流体システムのシミュレーション及びモデル化に使用することができる。ボックス12で、流体システムの近似ジオメトリ及び物理的境界を表すデータにアクセスする。一実施態様では、このようなデータは、流体システムのジオメトリ及び物理的境界の既存のコンピュータ支援設計(「CAD」)モデルであり得る。このようなデータには、「ワイヤフレーム」形態でアクセスすることができ、このワイヤフレーム形態は、表面を含み得る。このような既存のデータは、流体システムの解析で使用するために、計算装置によってメモリ又は記憶媒体からインポートする、該記憶媒体にアップロードする、該記憶媒体からダウンロードする、又は該記憶媒体にアクセスすることができる。一実施態様では、このようなデータは、ボックス12に示されているステップの一部として生成することもできる。システム境界、例えば、試験される流体システムを定義する壁、入口、出口、可動部、又は他の物理的表面を、コンピュータ支援設計(「CAD」)図面によって定義して詳細に示すことができるため、CADとメッシュ生成システムとの間の互換性が、様々な実施態様における計算メッシュのCAD定義システム境界との統合を容易にし得る。
【0027】
I. メッシュ生成
【0028】
ボックス16に例示されているように、一実施態様では、上述の幾何学的データ及びシステムの詳細と同じ方式で、既存の計算メッシュにアクセスする、該計算メッシュをインポートする、又は他の方法で取り出すことができる。あるいは、計算メッシュは、試験中のシステムに対して生成することができるが、実施態様は、メッシュ生成ステップを含む方法に限定されるものではない。計算メッシュ又は数値格子は、数値解析のために、試験中の流体システムの幾何学的領域(即ち、「計算領域」)を個々のセルに細分することができる。計算格子の選択、アクセス、又は生成は、該格子が物理的流動現象を捕捉するのに適するように、これらの現象の初期条件及び詳細を考慮することができる。これらの現象は、例えば、乱流、圧縮可能な流れ、システムの衝撃、燃焼、多層流、混合などを含み得る。ボックス14に例示されているように、これらの条件及び詳細に、流体モデルのデータ表現が上記説明されたようにアクセスされる方式と同じ方式で、流体システムの解析に使用するためにアクセスすることができる。当てはまる流動現象を表す変数を、試験中の流体システムの部分微分形式の支配方程式に含めることができ、これにより、これらの現象を、以下に説明されるように計算メッシュに対して離散化することができ、従って、方程式の解を最終的に決定することができる。
【0029】
再びボックス16を参照すると、様々な座標系を用いてメッシュを定義することができる。例えば、デカルトメッシュでは、メッシュ軸が、互いに完全に直交しているため、一般に、他の座標系、例えば、直線座標系又は曲線座標系と比較して関連する方程式の計算が単純である。非デカルト座標系は、その性質上、より複雑な計算を必要とする傾向にある(しかしながら、特定の非デカルト座標系の方が、特定のジオメトリに自然に適合し得;従って、該非デカルト座標系は、より複雑な計算を必要とし得るが、より複雑な座標系を使用する正味の効果により、このような座標系が特に適し得るジオメトリを表すための格子の生成において格子生成の時間が短縮され、複雑さが軽減され得る)。デカルトメッシュは、隣接するセル間の保存方程式を解くことにより、セルのサイズ及び形状が均一で、セル間の境界が整合した簡単で規則的な繰り返しシステムに単純化されるため、隣接するセルの中心と界面との間の関係の解析決定を容易にする傾向にある。他の座標系、例えば、直線座標系又は曲線座標系をCFDに利用してメッシュを定義することができるが、上記説明されたように、これらは、メッシュ生成及び解法プロセスをより複雑にする傾向にある。一実施態様では、デカルトメッシュを使用して計算領域を定義するが、他の実施態様では、他の座標系、例えば、直線座標系又は曲線座標系を利用することもできる。
【0030】
一般に、構造化メッシュは、論理「ブロック」又はメッシュ領域から構成され、それぞれの領域は、均一なセルを含み、セルは、座標系に従っている。利用される座標系の規則的なインデックス(例えば、デカルト座標系における規則的な繰り返しi、j座標)による参照の容易さ及びセル間の容易な接続性を含む構造化メッシュの明らかな利点は、完全で正確なCFD解析を容易にする。対照的に、複雑で不規則な座標系のジオメトリは、このような簡単なメッシュ生成に適さない。このような場合、システム境界は、境界の形状に一致するようにセルの変形及び伸長を必要とし得る。このような場合の構造化メッシュの不利な点には、メッシュの生成における困難さ、及び複雑で不規則な境界のジオメトリの周りにブロック構造を維持するために必要な高度の変形が含まれ得る。均一な構造化メッシュ、特にデカルトメッシュは、隣接するセル間の保存方程式の解を単純にし得るが、複雑な流体系のジオメトリは、このようなメッシュによって正確に表すことができない場合が多い。
【0031】
例えば、湾曲した壁、入口、出口、又は可動部を含む管又は他のシステムのジオメトリを解析する場合、システム境界は、デカルトメッシュのセルの縁及び面に完全には一致し得ない。このため、システム境界とデカルトメッシュとの間に間隙又は干渉不整合(interference mismatch)が生じることがある。例えば、試験中の流路が、円筒状であるか、又は内部機構、例えば、バタフライ弁もしくはボルト通路などを含む場合は、このような問題を引き起こすシステムのジオメトリを想像することは容易である。このようなシステムでは、生じる干渉又は間隙は、該システムの数理解析に不正確な結果、不安定性、及び誤差が生じ得る。セルの大きさを縮小することによってメッシュ密度を増加させて、完全なメッシュセルとシステム境界との間の一致を改善することができ、従って精度が向上する。しかしながら、不規則な境界を有する流体システムのセルの数が増加すると、より多くの処理時間が必要となって解析全体が遅くなり、解析がある時点で禁止となり得る。
【0032】
計算の精度を改善し、計算時間を短縮するために、不規則なジオメトリのメッシュ、例えば、「物体適合」メッシュを構築するために他の手法が開発され、この手法では、システム境界のメッシュセルが、境界面に一致させるために、「構造化」デカルトメッシュの理想的な立方形(又は使用される任意の他の座標系の理想的なセル形状)に対して変形させらされる。これにより、システム境界を除き、流体連続領域又は体積の殆どを、規則的な「構造化」メッシュにモデル化することが可能となる。しかしながら、このような「構造化」システムの変形セルは、特殊な処理を必要とし、不正確さを生じさせ得る。「物体適合」メッシュを生成する別の一般的に使用される方法では、不規則な形状を不規則なジオメトリの境界領域に使用できるようにする、いわゆる「非構造化メッシュ」を利用する。非構造化メッシュでは、セルは、計算領域内に自由に配置することができる。しかしながら、不規則な形状を利用する手法は、構造化メッシュ、特にデカルトメッシュの計算効率を活用することができない。従って、「物体適合」法を利用して不規則な領域のジオメトリに対してメッシュを定義すると、問題、例えば、システム境界におけるセルの生成及び数学的処理における困難さ、伸長されて変形されたセルによる精度の低下、並びに不規則な形状のセル又は非実際的なメッシュ密度による計算資源の使用の増加が生じる。
【0033】
上記説明されたように、「物体適合」法ではなく「埋め込み境界」法を利用すると、複雑な流体力学の問題における計算を単純にするという利点が得られ得る。しかしながら、計算メッシュに一致しないシステム境界の処理では、「埋め込み境界」法は、境界がセルと交差する線又は表面に沿ってセルが線形に「切断」されるカットセル法などの技術と共に利用することができる。上述のように、この手法のために開発された特殊な計算アルゴリズム及び近似を利用して、計算資源のバランスをとり、精度を最適化し、そして計算資源の使用を管理する。
【0034】
代わりに、「埋め込み境界」法を、システム境界の「ゴーストセル」法と共に使用することができる。「ゴーストセル」を利用する流体システムの「埋め込み境界」計算メッシュ表現内では、内部セルは、システム境界と交差するセルを含め、流体システム内に中心が位置する計算メッシュ上のセルである。他方、「ゴーストセル」は、流体システムの境界外に中心を有し、かつ少なくとも1つの内部セルに隣接する又は該内部セルとセル面を共有する、計算メッシュ上の規則的な形状のセルである。「ゴーストセル」法は、特定の内挿及び外挿の細部に依存し、物理的システム境界に対する正確な境界条件の実施を容易にする。一実施態様では、「ゴーストセル」法は、「埋め込み境界」法によって定義されたメッシュと共にボックス16で適用して、流体システムが境界における「ゴーストセル」の層の中に含まれるように、デカルトメッシュに関して流体システムの計算領域を定義する。本明細書で説明される実施態様の方法及び装置は、引用により全開示内容が本明細書中に組み込まれている2011年10月26日出願の米国特許出願第61/551,590号に開示されている流体システムのモデル化及び解析に、「ゴーストセル」を利用する方法と共に使用することができる。上記説明されたように代わりに、一実施態様に従ってシステムを解析するために、「埋め込み境界」法を「ゴーストセル」法と組み合わせて利用することによって生成されるメッシュにアクセスする、又は該メッシュを取り出すことができる。
【0035】
埋め込み境界法及びゴーストセル法のより詳細な議論は、本開示の範囲を超えており、本明細書で説明される様々な例を理解する上で必要ではない。しかしながら、本明細書で説明又は参照された以外の「埋め込み境界」法及び「ゴーストセル」法を様々な実施態様に利用できることを理解されたい。
【0036】
II. 離散化
【0037】
様々な実施態様では、計算メッシュが定義される、生成される、又はアクセスされたら、支配方程式を、図1のボックス18に例示されているようにメッシュに対して「離散化」することができる。簡単に述べると、離散化は、対象の流体システムの微分形式又は積分形式の流体支配方程式を、該システムの離散要素に関連した代数方程式に変換するプロセスである。これらの離散システム要素又はノードは、上記説明されたシステムの計算メッシュ表現の一部であるセル又はセルの一部であり得る(これらは、本明細書では「計算セル」とも呼ばれる)。支配方程式は、システムの熱物理特性間の関係を表すため、メッシュに対する代表的な方程式の離散化は、メッシュの個々の離散計算セルにおけるシステム特性の計算を容易にする。従って、一実施態様では、ボックス18に例示されている離散化ステップは、以下にさらに詳細に説明され、かつ図2に示されている多段階計算プロセスの一部であり得る。さらに、熱物理特性は、特定の時点での試験中の流体システムの離散領域及び要素の状態又は条件を特徴付けることができる。流体システムの試験では、様々な熱物理特性、例えば、温度、圧力、並びに質量、熱、及び運動量流束などは、特に関心のある場合が多く、従って、試験中のシステムの「表現」であり得る。様々な実施態様は、どの特定の熱物理システム特性の決定にも限定されないが、このようなどの関心のある特性の決定にも利用できることを理解されたい。
【0038】
一実施態様では、支配方程式は、システム境界に適用される「ゴーストセル」法を用いるデカルト「埋め込み境界」メッシュに対して、様々な有限体積法(以下により詳細に説明される)に従って離散化することができる。デカルトメッシュに対する離散化に有限体積法を利用すると、解の精度が高くなる。ボックス18に示されているように、離散化プロセスから得られる代数方程式を解いて、流体システム全体の離散計算位置又はノードにおける様々な方程式の変数(熱物理システム特性を表す)の値を計算することができる。
【0039】
いくつかの数値解法を、CFD解析において計算格子に対する離散化代数方程式を解く際に使用することができる。従来、任意ラグランジュ・オイラー(ALE)解法は、物体適合メッシュに対して離散化された方程式の数値解法に適用されている。一例として、ALE解法アルゴリズムの、流体システム解析用の物体適合メッシュとの使用が、文書に記録されている(1989年5月に発行された、A. A. Amsden、P.J. O'Rourke、T.D. Butlerの文献、KIVA-II:噴霧を用いた化学反応性の流れについてのコンピュータプログラム(KIVA-II: A Computer Program for Chemically Reactive Flows with Sprays)を参照されたい)。
【0040】
ALE解法アルゴリズムは、それぞれの数学的形式の流体システムの支配方程式を解く際の高い効率によって特徴付けられる。この効率により、さらなるシステムの複雑性、例えば、スタガードメッシュの利用についての考慮が容易になる。スタガードメッシュは、それぞれの検査体積の面における点(即ち、座標メッシュの個々のセル)が流体システムの速度成分の計算に使用されると共に、他のシステム変数がそれぞれの検査体積の中心で計算される計算メッシュである。対照的に、非スタガードメッシュを利用する場合、システム特性(速度を含む)を表す全ての方程式及び変数は、それぞれの検査体積/セルの中心に対して離散化される。非スタガードメッシュにおける計算セルの中心に対する速度の方程式と圧力の方程式とのコロケーション(collocation)により、このようなメッシュの使用は、圧力が速度の導関数に依存するため、解の不安定性をもたらし得る。スタガード座標メッシュは、高度な複雑さによって特徴付けることができるが、該スタガード座標メッシュは、方程式の解に対する不安定性の影響を受けにくいため、非スタガードメッシュの利用から生じ得る関連した「チェッカー盤」圧力パターンの解を回避することができる。ALE法の固有の効率は、より複雑なスタガードメッシュの利用の欠点を最小限にすることができ、従って、非スタガードメッシュの定義の使用から生じ得る安定性の問題が解消される。
【0041】
ALE法は、様々な純粋ラグランジュ法及びオイラー法の態様を組み合わせると共に、それぞれの欠点を最小限にするハイブリッド法である。ALE法の柔軟性により、計算メッシュのノード(即ち、システム特性が計算のために参照される特定のセルの特徴;ノードは、セルの中心、頂点、面などであり得、そして支配方程式が、ノードとして識別された特定のセルの特徴に対して離散化される)を、(i)ラグランジュ法と同様に連続流体と共に移動させる;(ii)オイラー法と同様に、連続流体がメッシュに対して移動するときに固定したままにする;又は(iii)連続的な再区分け能力を実現するために任意に指定される方式で移動させることができる。計算メッシュを移動させるこの自由により、純粋ラグランジュ法に必要とされるように頻繁にメッシュを再生成しなくても、計算領域の大きな変形に従うことができる。加えて、連続流体の移動中の大きな変形に対応しながら、正確な界面の定義及び流れの細部の解像度をALE法を用いて維持することができ、従って、純粋オイラー法を特徴付ける界面の定義及び流れの細部の解像度の悪化が解消される(通常は、J. Donea、A. Huerta、J. -Ph. Ponthot、及びA. Rodriguez-Ferranによる任意ラグランジュ・オイラー法を参照されたい)。
【0042】
様々な実施態様では、計算「埋め込み境界」メッシュに対する支配方程式の離散化は、一連の時間ステップに対するALE法による空間的離散化を伴い得る。一般に、上述のように、支配方程式は、様々な「有限体積」(「FV」)法に従って離散化することができる。1992年8月1日発行のMichael J. HolstによるKIVA-IIソフトウェア及び化学反応性流体力学についての注記(Notes on the KIVA-II Software and Chemically Reactive Fluid Mechanics)を参照されたい。
【0043】
FV法の詳細な説明は、様々な態様を理解する上で必須ではないが、ある程度関連した説明を例示目的で行う。FV法は、積分形式の支配方程式を流体システムのメッシュの定義に対する直接の離散化を容易にする。このプロセスの一部として、支配方程式の関数値(即ち、システム特性間の関係を表す数学的形式の支配方程式の解)を、各計算セルの中心で、又は計算セル表面の中心で計算することができる(各計算セル、「検査体積」)。次に、内挿を行ってセルの中心の値に関する検査体積表面の変数値を式で表す。次に、求積公式を適用して表面(即ち、面の中心の関数値に面の面積を乗じた値)及び体積積分(即ち、セルの中心の関数値にセルの体積を乗じた値)を近似する。通常は、1992年8月1日発行のMichael J. HolstによるKIVA-IIソフトウェア及び化学反応性流体力学についての注記(Notes on the KIVA-II Software and Chemically Reactive Fluid Mechanics)を参照されたい。従って、各検査体積についての代数方程式を得ることができ、この方程式は、多数の隣接するノード値も考慮している。有限体積法の有利な特徴は、格子の交差点ではなく検査体積を用いるこのような方法の実施による、デカルトメッシュを含む任意のタイプのメッシュに対応する能力である。しかしながら、上述のように、デカルトメッシュの利用により、セル境界に亘る保存則を含む支配方程式に対して数値精度が向上し、解く時間が短縮されるが、実施態様は、他のタイプの座標系も利用することができる。
【0044】
III. ALEプロセス
【0045】
一実施態様では、試験中の連続流体の関数(即ち、数学的形式の支配方程式で表される変数間の関係)は、各時間ステップの間の中間関数値の計算により1つ以上の「時間ステップ」に対して空間的に離散化することができる。従って、実施態様は、流体の流れが過渡的であるシステム、又は移動が過渡的であり得る境界を含むシステムの解析を容易にすることができる。図2は、図1のボックス18に例示されている離散化ステップの一部として利用することができる一実施態様による例示的なプロセス30を例示している。ここで図2を参照すると、プロセス30は、ALE法を「ゴーストセル」法と共にシステム境界に適用して、流体システム全体の状態変数の値を決定し、そして該流体システムの支配方程式で表される、該流体システムの熱力学特性についての解又は特定の値を最終的に決定することを含み得る。支配方程式は、例えば、輸送方程式及び保存方程式を含み得、熱力学特性は、特に圧力及び速度を含み得る。
【0046】
一実施態様では、関連するシステムの輸送方程式のソース項は、ボックス100に例示されている任意のステップで計算することができる。ソース項は、図1に例示されているように、解法プロセス10のボックス14でアクセス又は入力することができる初期条件に基づいたものを含め、最初のシステム特性、例えば、化学的性質、粒子の運動及び相互作用、壁面熱伝導などの影響を考慮して計算することができる。しかしながら、離散化ステップは、ソース項の計算に依存せず、一実施態様では、図2に例示されているプロセスの他のステップは、ボックス100に示されている計算ステップなしで進むことができる。
【0047】
一実施態様では、質量拡散項及び熱拡散項を解いて、他の熱力学特性の値を、110に全体的に示されている計算プロセスで決定することができる。計算セルの特定の頂点が、ラグランジュ方式で移動するため、計算プロセス110は、セルの体積及び位置で異なり得る熱力学システム特性、例えば、システム全体の流体の圧力及び速度の値を決定するために連結された方程式の解を容易にし得る。圧力項及び速度項に対するどの移動システム境界の影響も、計算プロセス110の一部として計算することができる。ボックス112に例示されているように、計算プロセス110中に予測圧力にアクセスする、又は該予測圧力を入力することができる。予測圧力値のこの初期化は、流体速度、並びにセルの体積値の変化及びシステム全体の状態変数値の対応する解の最初の計算を容易にし得る。初期化圧力は、この時点でプロセス中に入力される仮推定値であり得る。別の実施態様では、初期化圧力には、上記説明されたように、流体システムモデルのデータ表現にアクセスするのと同じ方式で、ボックス112でアクセスすることができる。一実施態様では、推定圧力は、以下にさらに詳細に説明されるように、計算プロセス110の間中、改良及び調整される。
【0048】
流体領域又は連続流体が移動するときに、流体領域内に完全に位置する計算セルの頂点が、ラグランジュ経路に従って、それぞれの流体速度で流体と共に移動し得る。これは、上記説明されたように1つの時間ステップの間、又は連続時間ステップの間に起こり得る。上記説明され、かつボックス112に示されているように、1つの時間ステップの最初での推定システム圧力の初期化は、圧力勾配、従ってシステム全体の流体速度に影響を与え得る。さらに、流体システムの速度は、システムのジオメトリ及びパラメータに基づいて、あるいは試験される流体システムが過渡的な流れによって特徴付けられる場合は圧力勾配に基づいてシステム全体の領域によって、及びセルによって異なり得る。従って、ボックス114に例示されているように、システムの流体速度は、該システム内の圧力勾配及び圧力加速の影響を反映するように更新することができる。
【0049】
従って、流体領域内に完全に位置する計算セルの体積は、一実施態様では、それらの対応する頂点が流体の流れによって変位するときに変化し得る。従って、移動内部頂点(及び対応するセル)は、時間ステップの期間中に、最初の位置(即ち、時間ステップの最初のそれらの対応する位置)からラグランジュ位置にラグランジュ方式で流体と共に「浮動」し得る。移動セル頂点の位置及び対応するセルの体積は、ボックス114に例示されているように更新することもできる。しかしながら、ラグランジュ流の原理の詳細な説明は、本開示の範囲を超えており、本明細書に説明される様々な実施態様を理解する上で必要ではない。
【0050】
システム境界における計算セルの移動及び挙動は、さらなる力、及び流体の流れの影響の及ばない事項、例えば、境界移動及び境界からの熱伝導などを受ける。システム境界が、計算メッシュの座標系に整合しない場合は、該境界は、計算メッシュと交差している可能性があり、従って、上記説明されたようにシステム境界で不規則な形状のセルとなる。しかしながら、同様に上記説明されたように、これらのセルにおけるシステム特性の解析のために技術を利用することができる。例えば、一実施態様では、「ゴーストセル」法を、システム境界における計算メッシュの有効なモデル化及び解析に適用することができる。既に説明したように、システム境界内、即ち、流体領域又は連続流体内にセルの中心が位置する全ての計算セルが、内部セル(システム境界に交差するセル、又はシステム境界によって「切断」されたセルを含む)である。対照的に、「ゴーストセル」は、システム境界の外部に中心が位置し、かつ少なくとも1つの内部セルに隣接している(即ち、少なくとも1つの内部セルと面を共有している)計算メッシュ上のセルである。「境界セル」は、1つ以上のゴーストセルに隣接し、かつシステム境界に交差していても交差していなくても良い内部セルである。「ゴーストセル」法は、隣接する境界セルの解析を容易にするために、「ゴーストセル」から隣接する内部セルへの体積及び他のシステム特性に寄与することができる。
【0051】
一実施態様では、内部セルとゴーストセルを分離し、かつ時間ステップの最初にシステム移動境界の近傍にある全てのセルの面は移動セル面である。時間ステップの最初に各移動セル面に位置する頂点は、対応する頂点が実際に流体領域内にある又はシステム境界の外部にあるにかかわらず、移動境界頂点と呼ばれる。内部セルのセル面に位置し、かつ時間ステップの最初に移動セル面に接触していない頂点は内部頂点である。境界セルの「内部」頂点は、上記説明され、かつ以下に詳細に説明されるように、時間ステップの期間に亘ってラグランジュ方式で流体の流れと共に移動することができる。
【0052】
対照的に、移動境界頂点は、移動境界と共に(即ち、同じ方向に)、移動境界の速度に基づいた指定速度で時間ステップの期間に亘って移動し得る。移動システム境界と共に移動する移動境界頂点の移動は、必ずしもラグランジュ経路に従う必要がなく、時間ステップの最後のこのような移動境界頂点の位置は、本明細書では「ラグランジュ」位置と呼ばれる。従って、ボックス114に例示されているように、境界セルの移動境界頂点及び内部頂点(即ち、境界セルの内部頂点、及び完全に流体領域内にある各計算セルの頂点)は、時間ステップの間に最初の位置から「ラグランジュ」位置に移動する。内部頂点及び移動境界頂点の「ラグランジュ」位置への移動により、対応する計算セルの体積が変化し得る。一実施態様では、移動境界と非移動境界との交点に位置する頂点は、移動境界頂点として処理することができる。別の実施態様では、静止境界に位置する頂点は、時間ステップの間、静止状態を維持することができるが、このような頂点の処理の理解は、様々な例の理解又は実施に必要ない。システム境界近傍の計算セルにおけるシステム特性、状態変数、及び流束の値、並びにシステム全体の他の計算セルにおけるこれらの事項の値に対するそれらの寄与を、ゴーストセル法に従って解析及び計算することができる。例えば、上記参照した2011年10月26日出願の米国特許出願第61/551,590号に開示されている方法は、「ゴーストセル」からの寄与を含む、このようなセルの特性を解析する方法を示している。
【0053】
移動境界の移動及び境界セルに対する対応する影響、ならびに内部セルのラグランジュ移動により、計算セルの体積の変化が起こり、システム境界の近傍ではない内部流体領域の圧縮又は膨張が起こり得る。従って、ボックス114に例示されているように、システム全の計算セルの頂点の位置及び体積の変化は、以下にさらに詳細に説明される計算プロセス110の他の計算に使用するために更新される。例えば、連続流体全体の圧力値及び状態変数の値は、ボックス116に例示されているように、計算セルの体積の変化により変動しやすい。要するに、計算プロセス110を利用して、時間ステップの期間の間に、計算セル頂点の位置の変化及び対応するセル体積の変化、並びにシステム全体の状態変数を決定し、これにより移動境界の影響を説明することができる。
【0054】
一実施態様では、計算プロセス100は、反復式に繰り返すことができる。決定の菱形118に例示されているように、選択された代表的な熱力学特性、例えば、圧力値及び計算セルの状態変数などが、時間ステップの最後で所与の基準に収束しない場合は、予測圧力をボックス120に例示されているように調整することができ、かつ計算プロセス110を、指定の反復数、又は所望の収束基準が満たされるまで、繰り返すことができる。全ての状態変数の収束は、様々な実施態様では必要ない。むしろ、システム圧力を、任意の1つ以上の状態変数に沿った収束、又は1つの状態変数にも沿わない収束についてチェックすることができる。さらに、実施態様は、解の収束をチェックする特定の方法に限定されるものではなく、様々な方法を使用することができる。一実施態様では、計算プロセス110は、指定数の反復を繰り返すことができる。
【0055】
計算プロセス110の完了時に(即ち、圧力値及び状態変数が十分に収束する場合、又は計算プロセス110が指定数の反復を繰り返した場合に)、流体の流れ又は境界移動によって移動する頂点は、そのラグランジュ位置に位置しままであり、システム熱力学特性、例えば、流速が、ボックス122に示されているように更新される。さらに、図3に例示されているように、移動セル面は、計算プロセス110中に境界と共に移動することができ、これにより、対応する境界セルの体積が変化し、システムが、以下にさらに詳細に説明されるように、移動する境界によってもたらされる圧縮又は膨張の影響を「感知する」ことができる。
【0056】
次に、一実施態様では、システムパラメータの流束を、ボックス124に示されているように、内部頂点を任意の位置に変位させる、又は「引っ張る」ことによって対応する質量及び運動量検査体積(即ち、それぞれの計算セル)の面に亘って計算することができる。これらは、特に質量流束又は運動量流束を含み得る。内部セル頂点のこの任意の位置は、その最初の位置、即ち、時間ステップの最初の位置であるとすることができる。他方、このステップ中に、境界セルの境界頂点は、そのラグランジュ位置のままである。加えて、壁境界面に亘る流束を0と設定することができる。これは、典型的には、従来のALEプロセスの最終ステップである。この時点で、移動境界にある計算セル、及びそれらの直近の内部隣接セルの一部が、元の立方形からやや変形している。この影響は、以下に詳細に説明される。
【0057】
一実施態様では、所望の質量流束値及び運動量流束値が計算されたら、境界セルの移動境界頂点を、その最初の位置(即ち、時間ステップの最初のそれらの対応する位置)に「引っ張って」戻すことができ、これにより、ボックス126に示されているように、境界セルが、デカルトメッシュ上でその立方形に戻る。境界セル面の位置が、各時間ステップの最後で元に戻るため、内部セルが正確な圧縮又は膨張の影響を「感知する」ように、移動境界の速度の大きさがALE解法で変更される。従って、境界移動及び生じるシステム特性の変化の後に、次の時間ステップでの計算が、直近のセルの変形にもかかわらず、再び直交デカルトメッシュに基づくことになる。
【0058】
図3図6は、図2に例示されているプロセスで起こり得るセルの移動及び変形の例示図を示している。図3図6は、デカルト計算メッシュの文脈内でこのセルの移動及び変形を例示しているが、実施態様は、デカルト座標系を利用することに限定されるものではなく、より詳細に上記説明された他のタイプの座標系も包含し得る。ここで図3を参照すると、時間ステップの間の物理的移動境界300、302及びデカルト移動境界304、306の両方の最初の位置及びラグランジュ位置がそれぞれ示され、太い実線が最初の位置を示し、破線が最終位置を示している。一実施態様では、デカルト移動境界は、移動セル面から構成することができる。物理的境界は、ベクトル308で例示されているように、指定移動速度Uphysicalで移動する。デカルト移動境界は、ベクトル310で例示されているように、調整速度UCartesianで移動する。再び図3を参照すると、丸で囲まれた領域314内の境界セル312は、移動境界頂点、内部頂点、及びデカルト境界の位置が、図2に例示されているプロセス30中にどのように変化し得るかを示す例として示されている。
【0059】
図4図6に示されているように、例示的な位置及び体積の変化も、丸で囲まれた領域314の詳細図に例示されている。境界セル312の面316、318は境界面であり、他の2つの面320、322は、流体面又は内面である。ここで図4を参照すると、頂点330、332、334、336のそれぞれは、図2に示されているプロセス30の時間ステップの開始時に最初の位置338、340、342、344に位置している。図2のステップ114で、移動境界頂点330、332、334が、ベクトル346、348、350で例示されているUCartesianで、それらの対応するラグランジュ位置338’、340’、及び342’に移動し;そして内部頂点336が、ベクトル352で例示されている速度UFlowで、その最初の位置344からその対応するラグランジュ位置344’に流体と共に「浮動する」。ここで図5を参照すると、図2に示されているプロセスのステップ124で、移動境界頂点330、332、334は、対応するラグランジュ位置338’、340’、342’のままであるが、内部頂点336は、ベクトル354で例示されているようにそのラグランジュ位置344’から最初の位置344に「引っ張られて」戻る。最後に、図6を参照すると、移動境界頂点330、332、334は、ベクトル356、358、360によって例示されているように、それらのラグランジュ位置338’、340’、342’からそれらの最初の位置338、340、342に戻り、これにより、図2のステップ126で、次の時間ステップの開始の前に、セル312及び全ての計算セルがそれらの立方形に戻る。
【0060】
上述のように、デカルト移動境界は、実際の物理的移動境界速度から異なる速度で移動することができる。システムの固有の性質及びシステム内のこの速度差の影響が、内部流体に対して正確な物理的圧縮又は膨張の影響を与える。特に、デカルトメッシュの流体領域の全体積に対する体積の変化率は、物理的寸法に基づいた比に一致しなければならない。これは、以下の式に変換される:
【数1】
式中、ACartesianは、移動方向に対して垂直な平面に投影された移動境界面の面積の合計であり;UCartesianは、移動方向に沿った移動境界頂点の速度の大きさであり;VCartesianは、デカルト計算メッシュにおける内部セルの総体積であり;Aphysicalは、移動方向に対して垂直な平面に投影された物理的移動表面の総面積であり;Uphysicalは、移動方向に沿った物理的移動速読の大きさであり;そしてVphysicalは、物理的ジオメトリの総体積であり;Δtは、時間ステップである。投影されたデカルト移動面積ACartesianは、次の通り計算される:
【数2】
式中、nfacesは、移動境界面(即ち、境界セル)の数であり;Aiは、移動境界面iの面積であり;θiは、セル面iの法線ベクトルと移動方向の単位法線ベクトルとの間の角度である。従って、調整移動速度UCartesianは、以下のように式(1)から得ることができる
【数3】
物理的移動表面の投影された面積Aphysical及び計算領域又は流体領域の物理的総体積Vphysicalは、物理的表面メッシュに基づいて計算できることに留意されたい。これらの計算の詳細は、本開示の範囲を超えており、様々な実施態様を理解する上で必要ではない。
【0061】
再び図1を参照すると、様々な例では、プロセス10は、一連の時間ステップ(その数は予め指定することができる)に亘る反復プロセスとすることもできるし、又は収束基準が特定の解の値に一致するまで繰り返すこともできる。様々な実施態様では、プロセス30は、指定数の反復を繰り返して終了する。決定の菱形20に例示されているように、指定数の繰り返し又は時間ステップに達していない場合は、ボックス21で更新された計算メッシュにアクセスすることができ、これにより、解析を次の反復又は時間ステップに進めることができる。代わりに、一実施態様では、解法プロセス30は、解が収束したら終了することができる。様々な例は、解の収束をチェックする特定の方法に限定されるものではなく、様々な方法は、様々な実施態様に関連して使用することができる。解の収束をチェックする方法のさらなる説明は、様々な態様を理解する上で必要ではない。
【0062】
プロセス30が終了したら、ボックス22に例示されているように解の後処理を行うことができ、ボックス24に示されているように解を検証し、認証することができる。解の収束のチェックと同様に、CFD解析結果の後処理並びにCFD結果の検証及び認証の様々な方法を、様々な実施態様に使用することができる。後処理、検証、及び認証の方法の詳細な説明は、本開示の範囲を超えており、様々な態様を理解する上で必要ではない。
【0063】
IV. 計算装置及びシステム
【0064】
様々な実施態様は、様々なハードウェア及び/又はソフトウェアモジュール並びにコンポーネントからなる装置において、個別に又はまとめて実施できることを理解されたい。例えば、このような装置は、互いに通信可能に接続されたプロセッサ、記憶装置、及びインターフェイスを備えることができ、デスクトップコンピュータ、サーバコンピュータ、及び/又はラップトップコンピュータから消費者の電子装置、例えば、携帯機器などまで幅がある。このような装置は、様々な媒体、入力装置、ネットワーク、又は様々な実施態様による他の入力手段からのデータ及び命令の該装置による読み取り及び受信を可能にする入力装置、周辺機器、及び他のコンポーネントを含み得る。しかしながら、本開示の範囲は、1つの特定の種類の装置に限定されるものではないことを理解されたい。
【0065】
一例として、図7は、様々な実施態様を実施することができる装置700のブロック図を例示している。装置700は、少なくとも1つのプロセッサ704及び/又は制御装置、該プロセッサと通信する少なくとも1つの記憶装置702、及び少なくとも1つの通信ユニット706を備え、該通信ユニット706は、通信媒体、例えば、インターネット、又は他のネットワーク、エンティティ、及び装置とのデータ及び情報の直接的又は間接的な交換を可能にする。プロセッサ704は、例えば、記憶装置702に保存されたプログラムコードを実行することができる。通信ユニット706は、1つ以上の通信プロトコル及びインターフェイスに従って有線通信機能及び/又は無線通信機能を実現することができ、従って、適切な送受信アンテナ、回路、及びポート、並びにデータ及び他の情報の適切な送受信に必要であり得る符号化/暗号解読機能を備えることができる。
【0066】
同様に、各モジュール内の様々なコンポーネント又はサブコンポーネントは、ソフトウェア、ハードウェア、及び/又はファームウェアで実施することができる。モジュール間及びモジュール内のコンポーネント間の接続は、限定されるものではないが、インターネット、適切なプロトコルを使用する有線ネットワーク、又は無線ネットワークを介した通信を含む、様々な接続方法及び媒体の何れかを用いて実現することができる。
【0067】
本明細書に記載される様々な実施態様は、方法のステップ及びプロセスの一般的な文脈で説明され、該ステップ及び該プロセスは、一実施態様では、コンピュータプログラム製品又はモジュールによって実施することができ、該コンピュータプログラム製品又は該モジュールは、コンピュータ実行命令、例えば、プログラムコードを含むコンピュータ可読メモリで具現され、そしてネットワーク環境にある装置、例えば、コンピュータ又はコンピュータシステムによって実行される。コンピュータ可読メモリは、限定されるものではないが、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、コンパクトディスク(CD)、デジタル多用途ディスク(DVD)などを含む、取り外し可能な記憶装置及び取り外しができない記憶装置を含み得る。従って、様々な開示される実施態様は、非一時的コンピュータ可読媒体で具現されるコンピュータコードによって実施することができる。他の実施態様では、プロセスを利用して、データに対する操作を行うことができ、プロセス操作及びデータの命令又はその要素は、1つ以上の計算装置もしくは計算システムに存在しても良いし、又は該1つ以上の計算装置もしくは該計算システムによって転送しても良い。
【0068】
一般に、プログラム製品又はモジュールは、特定のタスクを実行する、又は特定の抽象データ型を実施するルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造などを含み得る。データ構造に関連したコンピュータが実行可能な命令、及びプログラムモジュールは、本明細書に開示される方法のステップを実行するためのプログラムコードの例である。このような実行可能な命令又は関連データ構造の特定のシーケンスは、このようなステップ又はプロセスで説明される関数を実施するための対応する動作の例である。様々な実施態様は、コンピュータが実行可能な命令を含むコンピュータ可読媒体を含み得、該命令がプロセッサによって実行されると、装置が、本明細書に開示される方法及びプロセスを実行する。様々な例に関連して利用される装置又はシステムは、汎用文字としても良いし、又は要求される目的のために特別に構築、デザイン、もしくはプログラムしても良い。様々な実施態様では、このような装置及びシステムは、該装置もしくは該システムに保存された、又は該装置もしくは該システムに転送されるコンピュータプログラム、命令、及び/又はデータによって構成する、又は作動させることができる。
【0069】
様々な実施態様は、ソフトウェア、ハードウェア、アプリケーション論理、又はソフトウェア、ハードウェア、及びアプリケーション論理の組み合わせで実施することができる。ソフトウェア、アプリケーション論理、及び/又はハードウェアは、クライアント装置、サーバ、又はネットワークコンポーネントに存在し得る。所望に応じて、ソフトウェア、アプリケーション論理、及び/又はハードウェアの一部はクライアント装置に存在し得る、ソフトウェア、アプリケーション論理、及び/又はハードウェアの一部はサーバに存在し得る、かつソフトウェア、アプリケーション論理、及び/又はハードウェアの一部はネットワークコンポーネントに存在し得る。実施態様の一例では、アプリケーション論理、ソフトウェア、又は命令セットは、様々な従来のコンピュータ可読媒体の何れか1つに維持される。この文書の文脈において、「コンピュータ可読媒体」は、命令実行システム、機器、又は装置、例えば、コンピュータによって使用される、又はこれらに関連する命令を含む、保存する、通信する、伝播する、又は移送することができる任意の媒体又は手段とすることができ、このような装置の一例が、図7に説明され、示されている。コンピュータ可読媒体は、命令実行システム、機器、又は装置、例えば、コンピュータによって使用される、又はこれらに関連する命令を含む、又は保存することができる任意の媒体又は手段とすることができるコンピュータ可読記憶媒体を含み得る。一実施態様では、コンピュータ可読記憶媒体は、非一時的記憶媒体である。
【0070】
所望に応じて、本明細書で述べられる様々な機能を、互いに異なる順序で、かつ/又は同時に果たすことができる。さらに、所望に応じて、1つ以上の上記の機能は、任意であっても良いし、又は組み合わせても良い。
【0071】
様々な態様が、独立請求項に明示されるが、他の態様は、説明された実施態様及び/又は独立請求項の特徴を有する従属請求項の特徴の他の組み合わせを含み、請求項に明示されている組み合わせだけではない。
【0072】
実施態様の前述の記載は、例示及び説明のために示されている。前述の記載は、完全なものでも、開示される正確な形態に様々な実施態様を限定することを意図するものでもなく、変更形態及び変形形態は、上記の教示から可能である、又は様々な実施態様の実施から得ることができる。本明細書で述べられる実施態様は、当業者が様々な実施態様を利用できるよう、様々な実施態様の原理及び性質並びにその実際の適用例を説明するために選択されて述べられ、様々な変更形態は、考えられる特定の用途に適する。本明細書で説明される実施態様の特徴は、方法、装置、モジュール、システム、及びコンピュータプログラム製品の全ての可能な組み合わせで組み合わせることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7