(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6220897
(24)【登録日】2017年10月6日
(45)【発行日】2017年10月25日
(54)【発明の名称】温度依存スイッチ
(51)【国際特許分類】
H01H 37/54 20060101AFI20171016BHJP
【FI】
H01H37/54 D
【請求項の数】20
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-556529(P2015-556529)
(86)(22)【出願日】2014年2月11日
(65)【公表番号】特表2016-507141(P2016-507141A)
(43)【公表日】2016年3月7日
(86)【国際出願番号】EP2014052618
(87)【国際公開番号】WO2014124929
(87)【国際公開日】20140821
【審査請求日】2016年3月22日
(31)【優先権主張番号】102013101393.7
(32)【優先日】2013年2月13日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】202013101153.3
(32)【優先日】2013年3月18日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513318560
【氏名又は名称】サーミク ゲラーテバウ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】レ グエン,タン
【審査官】
高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−171841(JP,A)
【文献】
特開平03−201337(JP,A)
【文献】
実開昭61−049937(JP,U)
【文献】
特開昭54−007179(JP,A)
【文献】
米国特許第4470033(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 37/52−37/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動接点部(25)を有するスイッチング機構(11,11’)を備え、可動接点部(25)が固定対向接点(24)と対になって働き、可動接点部と電気的に接続されたばね部(26,28)が可動接点部を動かすことにより、スイッチング機構(11,11’)が固定対向接点(24)と第2の対向接点(14)との間を温度に依存して電気的に接続する温度依存スイッチであって、
スイッチング機構(11,11’)が、固定対向接点(24)に対向するばね部(26,28)上面(37)に配置された、ばね効果を一切発揮しないアーク遮蔽プレート(38,38’,38”)を備え、該アーク遮蔽プレートが前記上面を部分的に被覆する温度依存スイッチにおいて、
アーク遮蔽プレート(38,38’,38”)が第2の対向接点(14)と電気的に接続されていることを特徴とする、温度依存スイッチ。
【請求項2】
アーク遮蔽プレート(38,38’,38”)が可動接点部(25)と電気的に接続されている、請求項1に記載のスイッチ。
【請求項3】
アーク遮蔽プレート(38,38’,38”)が、ばね部(26,28)の上面(37)上で、可動接点部(25)の周囲に広がる環状部(41)を被覆する閉環状領域(44)を有する、請求項1または2に記載のスイッチ。
【請求項4】
環状領域(44)が可動接点部(25)の下まで広がっている、請求項3に記載のスイッチ。
【請求項5】
環状部(41)の幅(42)が可動接点部(25)の直径(43)の10〜40%である、請求項3または4に記載のスイッチ。
【請求項6】
アーク遮蔽プレート(38,38’,38”)が、環状領域(44)から放射状に延びる少なくとも1つの細長部(49,51,61,62,63)を有する、請求項3〜5のいずれか一項に記載のスイッチ。
【請求項7】
アーク遮蔽プレート(38,38’,38”)が、環状領域(44)から星形に延びる3つの細長部(61,62,63)を有する、請求項6に記載のスイッチ。
【請求項8】
少なくとも1つの細長部(61,62,63)が、少なくともばね部(26,28)の周縁(27)まで延びている、請求項6または7に記載のスイッチ。
【請求項9】
アーク遮蔽プレート(38,38’,38”)が銅板から一体に製造されており、その厚さが好ましくは0.1mm未満である、請求項1〜8のいずれか一項に記載のスイッチ。
【請求項10】
銅板が銀メッキされている、請求項9に記載のスイッチ。
【請求項11】
ばね部(26,28)がディスク型であり、少なくともスイッチ(10,10’)が閉じているときに、ばね部(26,28)がその周縁(27)を介して第2の対向接点(14)と電気的に接続されている、請求項1〜10のいずれか一項に記載のスイッチ。
【請求項12】
ばね部(26,28)が、可動接点部(25)を固定対向接点(24)から離した状態にある第1の温度依存幾何学的位置と、可動接点部(25)を固定対向接点(24)に押しつけた状態にある第2の温度依存幾何学的位置とを有する温度依存双安定スナップディスク(28)である、請求項1〜11のいずれか一項に記載のスイッチ。
【請求項13】
ばね部(26,28)が、可動接点部(25)を固定対向接点(24)に押しつけるばねディスク(26)であり、スイッチング機構(11,11’)が、1つの温度依存幾何学的位置において可動接点部(25)を固定対向接点(24)から離す温度依存スナップディスク(28)をさらに備える、請求項1〜11のいずれか一項に記載のスイッチ。
【請求項14】
可動接点部(25)がスナップディスク(28)の中央に配置されている、請求項12または13に記載のスイッチ。
【請求項15】
可動接点部(25)がばねディスク(26)の中央に配置されている、請求項13に記載のスイッチ。
【請求項16】
ハウジング(12)を有し、ハウジング上に2つの対向接点(24,14)が備えられ、ハウジング内にスイッチング機構(11,11’)が配置されている、請求項1〜15のいずれか一項に記載のスイッチ。
【請求項17】
ばねディスク(26)がその周縁(27)でハウジング(12)に固定されている、請求項13および16に記載のスイッチ。
【請求項18】
ハウジング(12)が上部(15)によって閉じられる下部(14)を有し、上部(15)の内面(23)に固定対向接点(24)が配置されている、請求項16または17に記載のスイッチ。
【請求項19】
双安定スナップディスク(28)がバイメタルスナップディスクまたはトリメタルスナップディスクである、請求項12に記載のスイッチ。
【請求項20】
アーク遮蔽プレート(38,38’,38”)が上面(37)の最大50%を被覆している、請求項1〜19のいずれか一項に記載のスイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動接点部を有するスイッチング機構を備えた温度依存スイッチであって、可動接点部が固定対向接点と対になって働き、可動接点部に電気的に接続されたばね部が可動接点部を動かすことにより、スイッチング機構が固定対向接点と第2の対向接点との間を温度依存方式で電気的に接続する温度依存スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のスイッチは公知であり、例えばDE 196 23 570 A1に記載されている。
【0003】
この公知のスイッチは、平らな上部によって閉じられているカップ形状の下部を有する。スイッチの内部には温度依存スイッチング機構が配置されている。このスイッチング機構は可動接点部を有し、可動接点部は固定対向接点と対になって働く。
【0004】
このスイッチング機構はスナップアクションばねディスクを備え、スナップアクションばねディスクが接点部を支持し、固定対向接点に接点部を押しつける。ここで、スナップアクションばねディスクは、その端部を下部の内側底部に支持されており、内側底部は第2の対向接点を形成している。
【0005】
この位置では、2つの対向接点は可動接点部とスナップアクションばねディスクとを介して、電気的に相互に接続されている。
【0006】
外部との接続は、固定対向接点と電気的に接続された導電性の蓋部を介して、また内側底部でスナップアクションばねディスクを支持している導電性の下部を介して行われる。
【0007】
スナップアクションばねディスクの上には、バイメタルスナップアクションディスクが配置されている。このスイッチング機構におけるバイメタルスナップアクションディスクは、低温位置では解放状態にあり、高温位置では中央部が可動接点部を押し下げて固定対向接点から離す。このために、バイメタルスナップアクションディスクの端部は、下部と上部との間に備えられた絶縁フィルム上で支持されている。
【0008】
この場合、ばね部はスナップアクションばねディスクであり、これに抗してバイメタルスナップアクションディスクが働くが、電流を直接バイメタル部に流すことができるのであれば、ばね部としてバイメタル部のみを使用することも公知である。
【0009】
この公知の温度依存スイッチは、極端な温度上昇から電気機器を保護するために使用される。このために、温度依存スイッチを経由して保護対象の機器への電流供給を行うと共に、このスイッチを保護対象の機器と熱的に連結する。バイメタルスナップアクションディスクの転移温度によって既定される応答温度において、スイッチング機構は、可動接点部を固定対向接点から離すことによって電気回路を開く。
【0010】
機器が冷却されてもスイッチが再度閉じることのないように、温度依存スイッチング機構と、自己保持抵抗器、好ましくはPTC抵抗器を併用することもまた知られており、温度依存スイッチング機構が閉じると抵抗器は電気的に短絡する。スイッチング機構が開くと、自己保持抵抗器はすでに流れている電流の一部を利用して、バイメタルスナップアクションディスクの温度を応答温度より高く保つために十分な熱を発生するまで発熱する。このプロセスは自己保持と呼ばれ、保護対象の機器の温度が再度低下した際に温度依存スイッチが非制御条件下で再度閉じることを防止する。
【0011】
この種の温度依存スイッチの場合、電流が流れることによってばね部自体が熱を持つことは好ましくないことが多く、保護対象の機器を流れる電流によって定められた通りに発熱する直列抵抗をさらに備えるスイッチも知られている。流れる電流が大きくなり過ぎると、この直列抵抗はバイメタルスナップアクションディスクの転移温度に達する程度に発熱する。保護対象の機器の温度だけでなく、流れる電流をも観測することが可能であり、このスイッチは定めた通りの電流依存性を有するものとなる。
【0012】
DE198 16 807 A1に記載されているように、ばね部はバイメタルばね舌片であってもよい。このバイメタルばね舌片はその自由端に可動接点部を有し、この可動接点部は固定対向接点と対になって働く。固定対向接点は第1の外部接続部と電気的に接続されており、第2の対向接点として機能するバイメタルばね舌片の固定端と第2の外部接続部とが電気的に接続されている。
【0013】
バイメタルばね舌片は、その応答温度よりも低い温度では、可動接点部を固定対向接点に押しつけることによって2つの外部接続部間の電気回路を閉じている。この状態において、バイメタルばね舌片は保護対象の電気機器に供給電流を流している。
【0014】
温度依存スイッチに特に高い電流を流す場合には、接点ブリッジまたは接点板の形態にある電流伝達部材を使用することが多い。この電流伝達部材はばね部によって動かされるものであり、2つの固定対向接点と対になって働く2つの接点部を有する。
【0015】
したがって、保護対象の機器への供給電流は第1の対向接点から第1の接点部を通って接点板へと流れ、接点板を通って第2の接点部へ、さらに第2の対向接点へと流れる。よってばね部には電流は流れない。またばね部自体を使用することも知られており、接点ブリッジとして、例えばバイメタルスナップアクションディスクやバイメタル部に対して働くスナップアクションばねディスクが用いられる。
【0016】
この種のスイッチは日常的な使用に十分有用であることが明らかになっている。AC電源電圧のゼロクロスにおいてスイッチが開かない場合、可動接点部が固定対向接点から離れる際にアークが形成され、スイッチにおける電圧降下はアーク電圧までとなる。AC電源電圧の極性が変わるまで、すなわち次のゼロクロスに到達するまで電圧降下はこのレベルにとどまる。よってアークは消去され、スイッチは確実に開く。
【0017】
形成されるアークによって接点が消耗し、長期的には可動接点部および固定対向接点のスイッチ部分の形状が変化し、スイッチの応答性が徐々に低下する。
【0018】
スイッチ内部で非制御のフラッシュオーバーが起こると、アークによりばね部までもが損傷する。またアークのためにスイッチ部分がいわゆるくっついた状態となり、スイッチが開かなくなったり、十分な速さでは開かなくなったりすることもある。
【0019】
これらの問題はスイッチの開閉回数が増えるにつれて増加し、公知のスイッチの応答性は時間の経過と共に低下する。このような背景から、公知のスイッチの寿命すなわち許容開閉回数には限度があり、また寿命はスイッチング電力、すなわち切り替えられる電流の電流強度に依存している。
【0020】
特に温度依存スイッチの寿命の終盤に近づくと、アークはばね部に特に重大な損傷を与え、スイッチは不可逆的な損傷を受ける。
【0021】
固定対向接点や可動接点部における接点消耗に加え、可動接点部を支持し、周縁を介して第2の対向接点に電気的に接続されるばねディスクの周縁でも損傷は起こる。スイッチが開閉を繰り返すことでばねディスクの周縁が損傷し、これもまた寿命を限定する要因となる。
【0022】
したがって全体として、公知の温度依存スイッチの場合、スイッチング電力と寿命との間には相関がある。スイッチの寿命の終盤にはアークが徐々に強まることが常であり、接点の消耗やスパークの飛散により、この種のスイッチの内部にあるばね部品が損傷する。
【0023】
DE977 187 Aでは、ばね部としてバイメタルスナップアクションディスクのみを備える温度依存スイッチング機構の場合に、スイッチ内部で支持されている太陽歯車形状の金属スパイダーを介して可動接点部をスイッチのハウジングに接続することによりこのばね部に電流を流さないことが提案されている。この場合、電流はバイメタルスナップアクションディスクを通らず、主に金属スパイダーを通って流れる。
【0024】
AT256 225 Aでも類似の方法が選択されている。ここでは、固定対向接点から離れたバイメタルスナップアクションディスクの表面に銅分岐が設けられ、この銅分岐により可動接点部がハウジングに接続されている。
【0025】
これら2つの文献の概念を発展させて、DE21 21 802 Aでは、スイッチング機構の閉鎖圧力を生み出すと共に電流を通すことも可能なスナップアクションばねディスクを、バイメタルスナップアクションディスクと平行に配置することが提案されている。これにより、バイメタルスナップアクションディスクは力学的にも電気的にも解放されることになり、寿命は大幅に延長される。
【0026】
しかしながら、これらのスイッチを用いても、最初に述べた問題、すなわちスイッチ電流が高ければ高いほど不可避的に形成されるアークがスイッチの寿命を短くする度合いが高まるという問題は解決されない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
上記に鑑み、本発明の目的は、簡単な構造により、公知の温度依存スイッチの寿命および/またはスイッチング電力を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0028】
この目的は、固定対向接点に対向するばね部の上面に配置され、この上面を部分的に覆う、力学的機能のないアーク遮蔽プレートを備える、本発明によるスイッチング機構によって達成される。
【0029】
これにより本発明の目的は完全に達成される。
【0030】
本出願の発明者らは、特に温度依存スイッチング機構の寿命の終盤に、アーク根が可動接点部からばね部に移動し、ばね部が非常に薄いために腐食による穴が開いたり、比較的多量の金属酸化物が沈積したりすることを突き止めた。
【0031】
意外にも、ばね部の上面を部分的に覆うだけでも、飛散するスパークや金属酸化物、またアーク根との直接の接触からの保護がなされる。
【0032】
驚くべきことに、この極めて簡単な手段により、他の構造や電流強度はすべて同一のまま本発明の新たなスイッチの寿命を延長することができ、電流強度を増しつつ同時に寿命を長くできることも明らかとなった。
【0033】
文献US4,551,701Aには、バイメタルばね舌片の自由端に配置された可動接点部と固定対向接点との間で生成するアークの放射熱に、電流が流れるバイメタルばね舌片が直接さらされないようにするための、耐熱材製のアーク遮蔽体を有する温度依存スイッチが開示されている。
【0034】
文献US5,107,241Aにも類似のスイッチが開示されている。
【0035】
ここでは、アーク遮蔽プレートがばね部の上面のうち最大50%を被覆していれば十分である。
【0036】
実験では、例えばスイッチ開閉寿命が50Aにおいて2,500回である既存のスイッチの場合、
図3に示すようなアーク遮蔽プレートを用いると、同一電流強度におけるスイッチ開閉寿命を6,000回を超えるまでに延長できることが明らかになった。初期試験により、このスイッチ電流強度を75Aまで上げられることが示された。
【0037】
これに関連して、ここで述べる温度依存スイッチの直径は10〜20mmの範囲にあり、高さは3〜6mmの範囲にあることを考慮すべきである。可動接点部の直径は2〜4mmであり、用いられるスナップディスクの厚さは1mmを大幅に下回る。
【0038】
保護機能を妨げなければ、アーク遮蔽プレートの厚さは約0.05mmであってもよいことが明らかとなった。
【0039】
本明細書において、「力学的機能のない」アーク遮蔽プレートとは、力学的なスイッチ応答に寄与しないシート状金属部分を意味する。これは、スイッチの開閉時に可動接点部の動きに影響を与えるようなばね効果を一切発揮せず、すなわち最も単純な場合には単なる受動部品でありながら、前述の保護効果を顕著に発揮するものである。
【0040】
さらに、ばね部の上面全体をアーク遮蔽プレートで覆う必要がないことも明らかとなった。アーク遮蔽プレートは薄く、その面積はばね部の面積より小さいので、スイッチ自体のスイッチ応答性、特に応答速度を妨げることはない。
【0041】
これらはすべて、簡単な構造で安価に、既存の様式のスイッチにおいても達成できるが、従来技術からは予期し得ない結果であった。
【0042】
ここで、アーク遮蔽プレートは可動接点部と電気的に接続されていることが好ましい。
【0043】
本発明者らは、説明の最初の試みとして、アーク遮蔽プレートと可動接点部の間が電気的に接続されていることにより、アーク根が可動接点部から移動する際にばね部にではなくアーク遮蔽プレート(ばね部上面の一部しか被覆していないが)に移動すると仮定しているが、この説明に拘束されるものではない。
【0044】
また予想外であったが、アーク遮蔽プレートを設計上容易に既存のスイッチに収容可能な幾何学形状にすることができ、それでいてスイッチ応答性を損なうことなく寿命とスイッチ開閉電流の強度とを向上させる。
【0045】
アーク遮蔽プレートが閉環状領域を有し、この閉環状領域がばね部の上面上で、可動接点部の周囲に広がる環状部を被覆することがさらに好ましい。
【0046】
本発明者らは、このように可動接点部全体の周囲を保護し、アーク根のばね部自体への移動を確実に防止することにより、寿命をさらに延長できることを確認した。
【0047】
ここで、環状領域が可動部の下まで広がっていることがより好ましい。
【0048】
アーク遮蔽プレートと可動接点部との間の電気的接続が確実なものとなるため、この構造は設計上有利である。
【0049】
ここで、環状部の幅は可動接点部の直径の10〜40%であることが好ましい。
【0050】
試験により、環状部がこの幅であれば、アーク遮蔽プレートからばね部へのアーク根のさらなる移動を確実に防止できることが明らかとなった。
【0051】
アーク遮蔽プレートが、環状領域から放射状に延びる少なくとも1つの細長部を有することがさらに好ましく、環状領域から星形に延びる3つの細長部を有することが好ましく、そのうち少なくとも1つがばね部の縁まで延びていることがさらに好ましい。
【0052】
このように、被覆領域はいくつかの部分に分かれて、ばね部の縁までさらに延びている。
【0053】
試験により、アーク根はこれらの細長部上にとどまり、ばね部上面の、被覆領域に挟まれた非被覆領域を損傷しないことが示された。
【0054】
アーク遮蔽プレートが第2の対向接点に電気的に接続されていることがさらに好ましい。
【0055】
この構造には、アーク遮蔽プレートが、スイッチを通る電流の少なくとも一部を通すことにより、特にスイッチが開くときに生じるアークをばね部に移動させることなく確実にアーク遮蔽プレートに移動させることができるという利点がある。
【0056】
ここで、アーク遮蔽プレートが銅板から一体に製造されていることが概して好ましく、その厚さは好ましくは0.1mm未満であり、銅板が銀メッキされていることがさらに好ましい。
【0057】
この場合、容易かつ安価に製造できるような、技術的に極めて単純なアーク遮蔽プレートを用いることができるため、新たなスイッチのコストは公知のスイッチの場合とほとんど変わらないという利点がある。
【0058】
この極めて薄い銅板がばね効果を発揮せず、そのため本発明の新たなスイッチの力学的スイッチ応答性を全く損なわないこともまた利点である。
【0059】
特に多数回のスイッチ開閉の後、すなわち寿命の終盤近くで、スイッチが開いたときに発生するアークによる損傷をこのような薄い銅板が効果的に防ぐことは予想外であった。
【0060】
驚くべきことに、出願人によって行われた先の試験で、新たなスイッチを多数回開閉した後に分解しても、アーク遮蔽プレートに顕著な損傷は認められなかった。すなわち、アーク遮蔽プレートがなければばね部に生じたであろう損傷を受けていなかった。
【0061】
通常、ばね部はディスク型であることが好ましく、少なくともスイッチが閉じたときに、その周縁を介して第2の対向接点と電気的に接続されていることが好ましい。
【0062】
本発明の新たなアーク遮蔽プレートは、ばね部の幾何学形状や配列にかかわらず効果的に用いることができるが、市場に特に広く浸透しているスイッチに用いられるディスク型ばね部品と共に用いることが特に有利である。
【0063】
本発明による構造は、ばね部としてバイメタル部を有し、そのバイメタル部上に2つの固定対向接点と対になって働く2つの可動接点部を有するスイッチにおいて使用することもできる。このスイッチはスイッチ接点を2か所に有し、そこでアークが形成され得る。ディスクまたは細長部として形成し得るバイメタル部上の、2か所の接点部それぞれを、上記のようにそれぞれのアーク遮蔽プレートによって取り囲むことができる。2枚のアーク遮蔽プレートは相互に接続されていてもよい。
【0064】
ここで、ばね部は、可動接点部を固定対向接点から離した状態にある第1の温度依存幾何学的位置と、可動接点部を固定対向接点に対して押しつけた状態にある第2の温度依存幾何学的位置とを有する温度依存双安定スナップアクションディスクであることが好ましい。
【0065】
双安定スナップアクションディスクは、バイメタルまたはトリメタルのスナップアクションディスクであることが好ましい。この双安定スナップアクションディスクは、スイッチが閉じているとき、固定対向接点と可動接点部との間の接触圧と、2つの対向接点間の電気的接続とをいずれも提供する。
【0066】
この構造は簡単な構成のスイッチに関し、バイメタル部を電流が流れることから、それ自体は好ましくない。しかしアーク遮蔽プレートを使用しているため、このような簡単な構造の温度依存スイッチであっても寿命と許容スイッチング電流強度とを向上させることができる。
【0067】
他方で、ばね部は可動接点部を固定対向接点に押しつけるばねディスクであることが好ましく、スイッチング機構が、1つの温度依存幾何学的位置において可動接点部を固定対向接点から離す温度依存スナップアクションディスクをさらに備えることが好ましい。
【0068】
この実施形態は、スナップディスクに電流が流れず、スナップディスクが閉鎖圧力をかけない点で有利である。この種の基本構造は公知であり、例えば最初に述べた文献DE196 23 570 A1に記載されている。
【0069】
ここで、可動接点部がスナップディスクおよび/またはばねディスク上の中心に配置されること、また2つの対向接点を備え、前記スイッチング機構が内部に配置されるハウジングがスイッチに含まれることが、一般的に好ましい。
【0070】
ここで、ばねディスクはその周縁でハウジングに固定されていることが好ましい。このハウジングは上部によって閉じられる下部を有し、前記固定対向接点がこの上部の内面に配置されていることが好ましい。
【0071】
これらの改良は、極めて信頼性の高いスイッチ応答性を有し、安価に製造でき、構成が容易でありかつ力学的に安定した温度依存スイッチにつながるため、設計上有利である。
【0072】
さらなる利点が明細書および添付の図面から明らかになるであろう。
【0073】
本発明の範囲を逸脱しない限り、上記の特徴や下記の特徴を、特定した組合せだけでなく、他の組合せまたは単独で利用できることは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
本発明の実施形態を添付図面に示し、以下でさらに詳細に説明する。
【
図1】アーク遮蔽プレートを備える、閉じた状態の温度依存スイッチを示す模式側面図。
【
図3】
図1のスイッチのスイッチング機構を示す平面図。
【
図4】別の実施形態のアーク遮蔽プレートを備えるスイッチング機構を示す、
図3と同様の図。
【
図5】アーク遮蔽プレートがハウジングの下部に接続されている温度依存スイッチの部分拡大図。
【
図6】
図5のスイッチのスイッチング機構を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0075】
図1は温度依存スイッチ10を示す模式側面図である。温度依存スイッチ10は平面図では円形であり、ハウジング12内に配置された温度依存スイッチング機構11を有する。
【0076】
ハウジング12はカップ形状の下部14を含み、下部14は上部15によって閉じられている。下部14は周囲ショルダー16を備え、その上にスペーサーリング17が配置され、その上に絶縁フィルム18を挟んで上部15が載置される。
【0077】
下部14は、上方へ突出した縁部19が内側に曲げられていることを利用して、周縁16上に上部15を保持している。
【0078】
本実施形態では下部14と上部15は導電性材料から製造されているため、絶縁フィルム18を用いて下部14と上部15とを互いに電気的に絶縁している。
【0079】
上部15の外面21に別の絶縁カバー22を設け、上部15の内面23に固定対向接点24を配置する。
【0080】
スイッチング機構11の可動接点部25がこの固定対向接点24と対になって働く。
【0081】
スイッチング機構11はスナップアクションばねディスク26を含む。スナップアクションばねディスク26はその周縁27でリング16と下部14の間に固定され、ここで電気的な接続がなされる。
【0082】
スナップアクションばねディスク26の下にバイメタルスナップアクションディスク28を配置する。バイメタルスナップアクションディスク28は2つの温度依存幾何学的位置を有し、その低温位置を
図1に、高温位置を
図2に示す。
【0083】
バイメタルスナップアクションディスク28の周縁29は、下部14の内側底部32上に形成される、くさび形の周囲ショルダー31の上方で自由な状態にある。
【0084】
下部14はまた外側底部33を有し、上部15の外面21と共に、
図1のスイッチ10の外部接続部としての役割を果たす。
【0085】
バイメタルスナップアクションディスク28はその中央部35で、接点部25の周囲ショルダー34上に支持されている。
【0086】
図1に示すスイッチ10の閉じた位置では、可動接点部25はスナップアクションばねディスク26によって固定対向接点24に押しつけられている。導電性のスナップアクションばねディスク26がその周縁27で、スイッチング機構11の第2の対向接点としての役割を果たす下部16に接続されているため、2つの外部接続部21、33の間が電気的に接続される。
【0087】
スイッチ10の内部の温度がバイメタルスナップアクションディスク28の応答温度を超えて上昇すると、
図1に示した凸形状から凹形状へと反転する。すなわち、
図1のバイメタルスナップアクションディスク28の周縁29が上方に動き、スナップアクションばねディスク26の周縁27に下から接触する。
【0088】
ここで、
図2に示すようにバイメタルスナップアクションディスク28はその中央部35でショルダー34を押さえることで、可動接点部25を固定対向接点24から離す。
【0089】
スナップアクションばねディスク26は双安定のばねディスクであってよく、
図2の位置においても形状的に安定であるため、バイメタルスナップアクションディスク28の周縁29がスナップアクションばねディスク26の周縁27を押さなければ、可動接点部25が固定対向接点24に再度接触することはない。
【0090】
スイッチ10の内部の温度が再び下がると、
図2のバイメタルスナップアクションディスク26の周縁29が下方に動き、くさび形のショルダー31に接触する。バイメタルスナップアクションディスク26はその中央部35でスナップアクションばねディスク26を下から押し、もう1つの幾何学的に安定な位置、すなわち
図1のように可動接点部25を固定対向接点24に押しつける位置まで押し戻す。
【0091】
図1に示すスイッチが閉じた位置から
図2に示すスイッチが開いた位置に移行する過程で、固定対向接点24と可動接点部25との間でアークが発生し、接点消耗が起こる。スイッチの開閉と、それに伴う接点部24および対向接点25の表面損傷が繰り返されると、アークは可動接点部24を支持するばね部へと移動する。このばね部は、本実施形態においてはスナップアクションばねディスク26であるが、スナップアクションばねディスク26の代わりに、バイメタルスナップアクションディスク28のみを用いてもよく、この場合、必須ではないが、例えば周囲リング16の下に位置する周縁29においてバイメタルスナップアクションディスク28を固定してもよい。
【0092】
発生するアークによる損傷を防止または少なくとも相当に抑止するために、アーク遮蔽プレート38は、スナップアクションばねディスク26の上、より具体的には固定対向接点24に対向する上面37の上に配置する。アーク遮蔽プレート38は可動接点部25と電気的に接続されているが、力学的機能は有さない。
【0093】
アーク遮蔽プレート38は、厚さ0.05mmの銅板を打ち抜いた部品であり、ばね機能を全く有さず、スイッチング機構11のスイッチング運動に力学的負荷や損傷を与えることのないように作られている。
【0094】
それでいて、このアーク遮蔽プレート38は、同一構造であるがアーク遮蔽プレート38を備えないスイッチと比較すると、スイッチ10のスイッチ電流強度と寿命とをいずれも大幅に向上させる。
【0095】
図1からわかるように、可動接点部25はピン部39を有し、その上にリング40が押しつけられているため、スナップアクションばねディスク26とアーク遮蔽プレート38とがいずれもリング40と接点部25との間に固定されている。このリング40には、バイメタルスナップアクションディスク28の中央部35を載置するためのショルダー34が形成されている。
【0096】
図3は、
図1および
図2に示したスイッチ10の温度依存スイッチング機構11の平面図である。
【0097】
図3から、アーク遮蔽プレート38が、上面37の上に存在する可動接点部25の周囲の環状部41を覆っていること、またこの環状部の幅42が可動接点部25の直径43の約30%であることが理解されるであろう。
【0098】
アーク遮蔽プレート38は、可動接点部25の下に広がる環状領域44(
図3では点を打って示す)を有し、さらに可動接点部25の下に開口45を有し、この開口45の直径46は可動接点部25のピン部39の直径に一致するため、閉環状部41は可動接点部25と直に接している。
【0099】
点を打って示した環状領域44の幅は47で示されるが、これは接点部25の直径46よりも小さい。
【0100】
アーク遮蔽プレート38の細長部49は、環状領域44から周縁48まで、スナップアクションばねディスク26の縁27の方向に延びている。
【0101】
この配置は、
図1に示すように、アーク遮蔽プレートがスペーサーリング17に到達しないよう、周縁27よりも周縁48が後方にあるように設定される。
【0102】
上面37の約30%を覆うこの遮蔽プレート38はすでに、先に述べた効果をもたらし、それによってスイッチの寿命と遮断容量とが大幅に向上している。
【0103】
図3と同様の
図4は、別の実施形態のアーク遮蔽プレート38’を備えるスイッチング機構11を示している。環状領域44はここでも可動接点部25の周囲に見られ、第1の細長部49はこの環状領域から右へ周縁38まで延び、細長部51はこの環状領域から左へ周縁52へ延びているが、周縁52は周縁48と同様に、スナップアクションばねディスク26の周縁27には到達しない。
【0104】
図3の実施形態と比較して、アーク遮蔽プレート38’による上面37の被覆面積は約40%まで拡大されているため、保護はさらに強化されている。
【0105】
図1〜
図4の実施形態によれば、アーク遮蔽プレート38、38’は可動接点部25と電気的に接続されているものの、スナップアクションばねディスク26を超えてはいない。一方、
図5に示す実施形態では、アーク遮蔽プレート38”は第2の対向接点すなわち下部14にも電気的に接続されている。
【0106】
温度依存スイッチ10’の右下部分を
図5に示す。残りの部分は
図1および
図2のスイッチ10と同様に構成される。相違点を以下に説明する。
【0107】
スペーサーリング17に凹部54を設け、アーク遮蔽プレート38”の端部55をこの凹部に突出させ、スペーサーリング17と下部14との間に固定する。
【0108】
スナップアクションばねディスク26はその中央部56で、リング40のショルダー57に載置されているが、可動接点部25とリング40との間にしっかりと固定されているわけではない。
【0109】
一方、アーク遮蔽プレート38”はその中央部58で、可動接点部25とリング40との間に固定されている。
【0110】
したがって、アーク遮蔽プレート38”は、可動接点部25と下部14すなわちスイッチ10’の第2の対向接点部のいずれにも電気的に接続されている。
【0111】
図5に示すスイッチ10’のスイッチング機構11’の平面図を
図6に示す。
【0112】
このアーク遮蔽プレート38”も、可動接点部25の下に広がる環状領域44を有する。3つの細長部61、62、63がこの環状領域44から星形に延び、これらの細長部の周縁64、65、66はスナップアクションばねディスク26の周縁27を超えて突出し、スペーサーリング17の凹部54に到達している。
【0113】
このアーク遮蔽プレート38”を用いても、スナップアクションばねディスク26の上面37の50%を超える部分はアーク遮蔽プレート38”に被覆されていないことが、
図6から明らかである。