【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、エレクトロルミネセンス装置を提供することであり、当該エレクトロルミネセンス装置は、容量を持つ発光素子、発光素子に駆動電流を供給するための切替可能な電流源、及び、発光素子中の短絡を検出するための短絡検出回路を有し、短絡検出は、製造許容範囲などに対して影響を受けにくい。本発明の他の目的は、発光素子中の短絡を検出するための、対応する短絡検出回路及び対応する短絡検出方法を提供することである。
【0007】
本発明の第1の態様では、エレクトロルミネセンス装置が示されて、当該エレクトロルミネセンス装置は、
- 容量を持つ発光素子、
- 発光素子に駆動電流を供給するための、発光素子に接続された切替可能な電流源、及び
- 発光素子中の短絡を検出すためのる短絡検出回路、
を有し、短絡検出回路は、
- トリガーされると、発光素子を通した電圧を測定するためのトリガー可能な電圧測定ユニット、
- 駆動電流が発光素子に供給されない期間の後に発光素子を通した電圧を測定するためにトリガー可能な電圧測定ユニットをトリガーするためのトリガリング・ユニット、
- 発光素子を通した測定された電圧に基づいて発光素子中の短絡を検出するための短絡検出ユニット、
を有する。
【0008】
本発明は、容量もつ欠陥のない発光素子では、発光素子を通した電圧は、接続されている電流源がオフにされた後で、すなわち、発光素子がもはや駆動電流を供給されなくなった後で、非常にゆっくりとのみ、その順方向電圧から低下するという、本発明の発明者の洞察に基づく。これは容量に起因し、この容量は発光素子の通常の動作の間に充電され、駆動電流がオフにされると、リーク効果によって非常にゆっくりとのみ放電される。対照的に、発光素子の挙動は、その中に短絡が発生した場合には、非常に異なる。一旦、接続されている電流源がオフにされると、容量が短絡の存在に起因して急速に放電されるので、発光素子を通した電圧は0Vへと非常に高速に低下する。短絡検出回路が、トリガーされると発光素子を通した電圧を測定するためのトリガー可能電圧測定ユニット、及び、駆動電流が発光素子に供給されない期間の後に発光素子を通した電圧を測定するようにトリガー可能電圧測定ユニットをトリガーするためのトリガリング・ユニットを含むので、非常に異なる時定数を伴う、欠陥のない発光素子と欠陥がある発光素子との間の放電挙動におけるこの差異は、発光素子中の短絡を検出するために用いられることができる。これは、検出が、環境温度と同様に製造許容範囲(ビニング)に関してかなり影響されやすい特性絶対電圧閾値から独立しているという利点を有する。さらに、それは、より容易にパルス幅変調(PWM)調光及び振幅変調(AM)調光と組み合わせられることができる。
【0009】
当業者によって理解されるように、「短絡」という用語は発光素子が特定の位置で異常に低いインピーダンスを有する状態を意味する。そのような短絡は、例えば、基板の汚染によって引き起こされる欠陥ならびに/またはクリーニングおよび処理が不完全な製造から生じた発光素子の層に起因して、動作の間に発生する場合がある。OLEDでは、短絡は、欠陥の位置における温度の重大な増加(ホットスポット」効果として知られる)につながる可能性が有る。今日、自動車のようなさまざまなアプリケーションに使用されているLEDでは、例えば、自動車バックライトの個々のLEDのステータスをモニタリングして、短絡の場合には、欠陥を指摘することが望ましい。
【0010】
発光素子は有機発光ダイオード(OLED)を含み、容量はOLEDの内部容量を含むか、または、発光素子は発光ダイオード(LED)を含み、容量はLEDに並列に接続されている外部容量を含むことが好ましい。もちろん、更なる外部容量がOLEDに追加されることが可能である。この場合には、容量は、OLEDの内部容量及びOLEDに追加される外部容量の組み合わせによって実現されることができる。そのうえ、典型的なLEDは、容量を実現するために接続されている外部容量に追加する小さい内部容量を少なくとも有する。
【0011】
さらに、前記期間は、発光素子中に短絡が存在しない場合に駆動電流が発光素子に供給されないときに容量が放電されるために要する放電時間より短いことが好ましい。
【0012】
その間駆動電流が発光素子に供給されない期間であって、その後に、上記の態様で、トリガリング・ユニットによってトリガーされると電圧測定ユニットによって発光素子を通した電圧が測定される期間を選択することによって、欠陥のない発光素子と欠陥がある発光素子との間の放電挙動におけるこの差異(参照上記)は、短絡検出のために、確実に実現されることができる。
【0013】
欠陥のない発光素子に含まれる容量の放電時間は、発光素子の端子間の実効容量Cd(追加される場合がある任意の更なる外部容量を含む)と(一定の)駆動電流IdにおけるIV曲線(
図1参照)の勾配に対応するその等価動作抵抗Rdとの積及びである時定数τ1として大体決定されることができる:τ1 = Cd・Rd。対照的に、発光素子中に短絡が発生した場合、時定数τ1は、τ2 = Cd・Rshとして大体決定されることができる時定数τ2に変化する。ここで、Rshは、短絡の場合の発光素子の等価動作抵抗である。(時定数τ2を決定するためのより複雑なモデルでは、短絡の場合には、発光素子の実効容量Cdが、ある程度変化する場合があるという事実も考慮されることができる)。短絡による放電時間を決定するこの後者の時定数τ2は、常に時定数τ1より小さい。前記期間は、したがって、τ1(参照上記)より小さく、τ2より大きいように、適切に選択されることができ、その場合、短絡検出ユニットは、発光素子を通した測定された電圧が0Vまたはほぼ0Vである場合に発光素子中の短絡を検出するように適応されることができる。もちろん、前記期間の間の発光素子を通した電圧の低下が、確実に検出されるほどに十分大きく、特に、製造許容範囲、環境温度の変化などの結果である電圧変化から区別される限り、前記期間は、時定数τ2に等しいか、あるいは、時定数τ2より小さいように選択されることができる。例えば、前記期間は、欠陥のある発光素子に対して、電圧が、当該期間の間に、所与の駆動電流において通常生じる電圧の半分または1/3に低下するように、選択されることができる。
【0014】
トリガリング・ユニットが、切替可能な電流源に接続され、前記期間の間、切替可能な電流源をオフに切り替えるように適応されることがさらに好ましい。
【0015】
それによって、切替可能な電流源と電圧測定ユニットの両方の完全な制御が、トリガリング・ユニットによって可能である。これは、電圧測定ユニットによる発光素子を通した電圧の測定と、切替可能な電流源による発光素子への駆動電流の供給とを、容易に同期させることを可能にする。
【0016】
トリガリング・ユニットが、トリガー可能な電圧測定ユニットを周期的にトリガーするように適応されていることが好ましい。
【0017】
こうすることによって、エレクトロルミネセンス装置は、発光素子中の短絡の存在について、繰り返し確認されることができる。これは、エレクトロルミネセンス装置の動作の間のある時点でのみ発生する発光素子中の短絡を安全に検出するために役に立つ。
【0018】
切替可能な電流源がパルス幅変調信号によってオンに切り替えられているパルス幅変調時間間隔の範囲に前記期間が入るように、トリガリング・ユニットは、切替可能な電流源のオンとオフを切り替えるためのパルス幅変調信号と同期されるように適応されることが、さらに好ましい。
【0019】
これは、PWM調光と容易に組み合わせられる短絡検出を可能にする。トリガリング・ユニットが、エレクトロルミネセンス装置をオンにするおよび/またはオフにするプロセスの間にトリガー可能な電圧測定ユニットをトリガーするように適応されることも好ましい。
【0020】
それによって、エレクトロルミネセンス装置は、エレクトロルミネセンス装置の動作の開始および/または終了の時点で、発光ダイオード中の短絡の存在について確認されることができる。
【0021】
電圧測定ユニットがサンプルホールド素子であることが好ましい。
【0022】
これは、短絡検出ユニットが、発光素子を通した測定された電圧に基づいて、発光素子中の短絡を検出するために、発光素子を通した測定された電圧を保持することを可能にする。
【0023】
エレクトロルミネセンス装置が、容量を持つ更なる発光素子を有し、更なる発光素子は、発光素子と直列に接続され、切替可能な電流源は、発光素子及び更なる発光素子の直列接続に駆動電流を供給するように適応され、短絡検出回路は、トリガーされると、更なる発光素子を通した電圧を測定するための更なるトリガー可能な電圧測定ユニットを更に備え、トリガリング・ユニットは、駆動電流が更なる発光素子に供給されない期間の後、更なる発光素子を通した電圧を測定するために更なるトリガー可能な電圧測定ユニットをトリガーするように適応され、短絡検出ユニットは、更なる発光素子を通した測定された電圧に基づいて更なる発光素子中の短絡を検出するように適応されていることが好ましい。
【0024】
この構成によって、発光素子の「ストリング」中の、すなわち、発光素子が直列に接続されている配置における、短絡を有する発光素子を一意的に特定することが可能である。ここで、更なる発光素子は有機発光ダイオード(OLED)であることができ、または、更なる発光素子は発光ダイオード(LED)を有することができ、容量はLEDに並列に接続される。
【0025】
エレクトロルミネセンス装置が、容量を持つ更なる発光素子を更に有し、更なる発光素子は、発光素子に並列に接続され、切替可能な電流源は、発光素子及び更なる発光素子の並列接続に駆動電流を供給するように適応され、短絡検出回路は、トリガーされると、更なる発光素子を通した電圧を測定するための更なるトリガー可能な電圧測定ユニットを更に備え、トリガリング・ユニットは、更なる発光素子に駆動電流が供給されない期間の後、更なる発光素子を通した電圧を測定するために更なるトリガー可能な電圧測定ユニットをトリガーするように適応され、短絡検出ユニットは、更なる発光素子を通した測定された電圧に基づいて、更なる発光素子中の短絡を検出するように適応されることも好ましい。
【0026】
この構成によって、発光素子が並列に接続される配置において、短絡を有する発光素子を一意的に特定することが可能である。ここで、更なる発光素子は有機発光ダイオード(OLED)であることができ、または、更なる発光素子は発光ダイオード(LED)を有することができ、容量はLEDに並列に接続される。
【0027】
上記の直列及び並列の構成を組み合わせることによって、2x2アレイ配置において短絡を有する発光素子を一意的に特定することが可能であるエレクトロルミネセンス装置が実現されることができる。そのうえ、このコンセプトは、2つより多い発光素子が直列に接続される配置、及び/又は、2つより多い発光素子が並列に接続される配置に拡張されることができる。例えば、このコンセプトは、4x4アレイ配置にて16個の発光素子を有するエレクトロルミネセンス装置において用いられることができる。
【0028】
上記の並列の構成に関して、エレクトロルミネセンス装置が、切替可能な電流源と発光素子との間に直列に接続されているデカップリング素子、及び、切替可能な電流源と更なる発光素子との間に直列に接続されている更なるデカップリング素子を更に備えることが好ましい。
【0029】
デカップリング素子によって、発光素子のキャパシタの放電は、欠陥のないエレクトロルミネセンス装置において防止されることができ、「誤警報」、すなわち、短絡のない発光素子中に誤って短絡が検出されるケースをより適切に回避することができる、より堅牢な短絡検出をもたらす。
【0030】
デカップリング素子および/または更なるデカップリング素子はダイオードであることが更に好ましい。別の態様では、デカップリング素子および/または更なるデカップリング素子は、スイッチング素子、例えば、ダイオードに相当する機能を実行するように制御されるMOSFETであることができる。もちろん、ダイオードとスイッチング素子との組み合わせが利用されることができる。
【0031】
エレクトロルミネセンス装置が、容量を持つ更なる発光素子を更に有し、更なる発光素子が、発光素子に並列に接続され、更なる切替可能な電流源が、更なる発光素子に駆動電流を供給するための更なる発光素子に接続され、短絡検出回路は、トリガーされると、更なる発光素子を通した電圧を測定するための更なるトリガー可能な電圧測定ユニットを更に有し、トリガリング・ユニットは、更なる発光素子に駆動電流が供給されない期間の後、更なる発光素子を通した電圧を測定するために更なるトリガー可能な電圧測定ユニットをトリガーするように適応され、短絡検出ユニットは、更なる発光素子を通した測定された電圧に基づいて更なる発光素子中の短絡を検出するように適応され、短絡検出回路は、発光素子中に短絡が検出される場合に、エレクトロルミネセンス装置をオフにするための短絡保護ユニットをさらに有することが好ましい。
【0032】
発光素子中に短絡が検出される場合に、エレクトロルミネセンス装置をオフにすることによって、例えば、OLEDでは、摂氏100度を優に上回る値に容易に達する可能性がある、短絡の位置における高い局所的な温度に起因する(すなわち、ホットスポット効果に起因する)危険を人に与えるリスクが、低減されることができる。短絡保護ユニットは、切替可能な電流源に接続されることができ、短絡が発光素子中に検出される場合に、切替可能な電流源をオフにするように適応されることができる。
【0033】
本発明の第2の態様において、容量を持つ発光素子中の短絡を検出するための短絡検出方法が示されて、当該短絡検出方法は、発光素子及び発光素子に駆動電流を供給するために発光素子に接続されている切替可能な電流源を有するエレクトロルミネセンス装置において用いられるように適応され、当該短絡検出方法は、
- トリガリング・ユニットにより、駆動電流が発光素子に供給されない期間の後、発光素子を通した電圧を測定するためにトリガー可能な電圧測定ユニットをトリガーし、
- トリガーされると、トリガー可能な電圧測定ユニットにより、発光素子を通した電圧を測定し、
- 短絡検出ユニットにより、発光素子を通した測定された電圧に基づいて発光素子中の短絡を検出する。
【0034】
第1の態様のエレクトロルミネセンス装置及び第2の態様の短絡検出方法は、特に、従属請求項中に定められるように、同様のおよび/または同一の好ましい実施の形態を有することが理解される。
【0035】
本発明の好ましい実施の形態は、従属請求項または上記実施例とそれぞれの独立請求項との任意の組み合わせであることもできることが理解される。
【0036】
本発明のこれらの及び他の態様は、以下に記載される実施の形態から明らかであり、それらを参照して説明される。