(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態について詳細に説明する。
【0008】
(歯付ベルトB)
図1は、実施形態に係る歯付ベルトBを示す。
【0009】
実施形態に係る歯付ベルトBは、内周側に複数の歯部10がベルト長さ方向に間隔をおいて一定ピッチで設けられたエンドレスの噛合伝動ベルトである。歯部10は、側面視形状が台形である台形歯であり、且つベルト幅方向に延びるように形成されている。なお、歯部10は、半円形である丸歯等のその他の形状であってもよく、また、ベルト幅方向に対して傾斜する方向に延びるように形成されたハス歯であってもよい。
【0010】
実施形態に係る歯付ベルトBは、自動車や各種機械の動力伝達部材として好適に用いられる。実施形態に係る歯付ベルトBは、例えば、ベルト長さが500〜3000mm、ベルト幅が10〜200mm、及びベルト厚さが3〜20mmである。また、歯部10は、例えば、歯幅が0.63〜16.46mm、歯高さが0.37〜9.6mm、及び歯ピッチが1.0〜31.75mmである。
【0011】
実施形態に係る歯付ベルトBは、ベルト本体11と心線12と補強布13とを備えている。ベルト本体11は、外周側の平帯状の背ゴム部11aと、内周側の複数の歯ゴム部11bとを有する。心線12は、ベルト本体11の背ゴム部11aの内周側に、ベルト幅方向にピッチを有する螺旋を形成するように埋設されている。補強布13は、ベルト本体11の歯部側表面に、その表面を被覆するように貼設されている。以上から、各歯部10は、ベルト本体11の歯ゴム部11bが補強布13で被覆されて構成されており、また、相互に隣接する歯部10間の歯底部において、心線12は補強布13の直ぐ内側に配置されている。
【0012】
ベルト本体11は、ゴム成分に各種のゴム配合剤が配合された未架橋ゴム組成物が加熱及び加圧されてゴム成分が架橋剤により架橋したゴム組成物で形成されている。
【0013】
ベルト本体11を形成するゴム組成物のゴム成分は、エチレン−α−オレフィンエラストマーを主体とする。ゴム成分に含まれたエチレン−α−オレフィンエラストマーとしては、例えば、エチレンプロピレンコポリマー(EPR)、エチレンプロピレンジエンターポリマー(以下「EPDM」という。)、エチレン・オクテンコポリマー、エチレン・ブテンコポリマー等が挙げられる。ゴム成分は、これらのうちの1種又は2種以上のエチレン−α−オレフィンエラストマーを含むことが好ましい。ゴム成分はEPDMを含むことが好ましい。ゴム成分におけるエチレン−α−オレフィンエラストマーの含有量は50質量よりも多く、優れた耐熱性及び耐寒性を得る観点から、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95%以上、最も好ましくは100質量%である。なお、ゴム成分は、エチレン−α−オレフィンエラストマー以外に、水素添加アクリロニトリルゴム(以下「H−NBR」という。)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(以下「CSM」という。)、クロロプレンゴム(以下「CR」という。)等を含んでいてもよい。
【0014】
ゴム成分に含まれたエチレン−α−オレフィンエラストマーのエチレン含量は44〜66質量%であるが、優れた耐熱性及び耐寒性を得る観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上、更に好ましくは58質量%以上であり、また、好ましくは61量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは59質量%以下である。
【0015】
ゴム成分がEPDMを含む場合、そのジエン成分としては、例えば、エチリデンノボルネン(ENB)、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン等が挙げられる。ジエン成分は、これらのうちエチリデンノボルネンが好ましい。ジエン成分がエチリデンノボルネンである場合、そのENB含量は、優れた耐熱性及び耐寒性を得る観点から、好ましくは4.0質量%以上、より好ましくは4.6質量%以上、更に好ましくは5.0質量%以上であり、また、好ましくは6.0質量%以下、より好ましくは5.7質量%以下、更に好ましくは5.2質量%以下である。
【0016】
ゴム成分に含まれたエチレン−α−オレフィンエラストマーの125℃におけるムーニー粘度は、優れた耐熱性及び耐寒性を得る観点から、好ましくは15ML
1+4(125℃)以上、より好ましくは59ML
1+4(125℃)以上、更に好ましくは62ML
1+4(125℃)以上であり、また、好ましくは90ML
1+4(125℃)以下、より好ましくは70ML
1+4(125℃)以下、更に好ましくは64ML
1+4(125℃)以下である。ムーニー粘度は、JISK6300に基づいて測定される(以下、同じ)。
【0017】
ゴム配合剤としては、補強材、軟化剤、加硫促進助剤、共架橋剤、架橋剤、加硫促進剤等が挙げられる。優れた耐熱性及び耐寒性を得る観点からは、ベルト本体11を形成するゴム組成物は共架橋剤を含むことが好ましい。
【0018】
補強材としては、カーボンブラックでは、例えば、チャネルブラック;SAF、ISAF、N−339、HAF、N−351、MAF、FEF、SRF、GPF、ECF、N−234などのファーネスブラック;FT、MTなどのサーマルブラック;アセチレンブラック等が挙げられる。補強材としてはシリカも挙げられる。補強材は、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましい。補強材はFEFカーボンブラックを含むことが好ましい。補強材の含有量は、ゴム組成物のゴム成分100質量部に対して例えば50〜80質量部である。
【0019】
軟化剤としては、例えば、パラフィン系、石油系、鉱物油系、植物油系のもの等が挙げられる。軟化剤は、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましい。軟化剤はパラフィン系のものを含むことが好ましい。軟化剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して例えば2〜30質量部である。
【0020】
加硫促進助剤としては、例えば、酸化亜鉛(亜鉛華)や酸化マグネシウムなどの金属酸化物、金属炭酸塩、脂肪酸及びその誘導体等が挙げられる。加硫促進助剤は、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましい。加硫促進助剤は酸化亜鉛を含むことが好ましい。加硫促進助剤の含有量は、ゴム組成物のゴム成分100質量部に対して例えば3〜7質量部である。
【0021】
共架橋剤としては、例えば、トリメチロールプロパントリメタクリレート、亜鉛ジメタクリレート、トリアリルイソシアヌレート、m−フェニレンジマレイミド等が挙げられる。共架橋剤は、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましい。共架橋剤は、トリメチロールプロパントリメタクリレート、亜鉛ジメタクリレート、又は、トリメチロールプロパントリメタクリレート及び亜鉛ジメタクリレートを含むことが好ましい。共架橋剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して例えば1〜20質量部である。トリメチロールプロパントリメタクリレートを含む場合、トリメチロールプロパントリメタクリレートの含有量はゴム成分100質量部に対して1〜3質量部であることが好ましい。亜鉛ジメタクリレートを含む場合、亜鉛ジメタクリレートの含有量がゴム成分100質量部に対して13〜17質量部であることが好ましい。
【0022】
架橋剤としては、有機
過酸化物及び硫黄が挙げられる。架橋剤として、有機
過酸化物が配合されていてもよく、また、硫黄が配合されていてもよく、更には、それらの両方が併用されていてもよい。架橋剤は有機
過酸化物を含むことが好ましい。架橋剤の配合量は、有機過酸化物の場合、ゴム成分100質量部に対して例えば1〜5質量部であり、硫黄の場合、ゴム成分100質量部に対して例えば0.5〜3質量部である。
【0023】
加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系、チウラム系、チアゾール系、ジチオカルバミン酸塩系のもの等が挙げられる。加硫促進剤は、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましい。加硫促進剤としては、スルフェンアミド系及びチウラム系のものを含むことが好ましい。加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して例えば1〜5質量部である。
【0024】
心線12は、ガラス繊維、アラミド繊維、カーボン繊維、金属繊維等で形成された撚り糸で構成されている。心線は、S撚り糸で構成されていても、また、Z撚り糸で構成されていても、更に、S撚り糸及びZ撚り糸が二重螺旋を形成するように設けられていてもよい。心線12の直径は例えば0.5〜2.5mmであり、ベルト断面における相互に隣接する心線中心間の寸法は例えば0.05〜0.20mmである。
【0025】
心線12は、
図2Aに示すように、RFL接着層14aで覆われていると共に、そのRFL接着層14aで覆われた心線12の外側を覆うように心線接着層15aが設けられており、それらのRFL接着層14a及び心線接着層15aを介してベルト本体11に埋設されている。
【0026】
RFL接着層14aは、レゾルシンとホルムアルデヒドとの縮合物(RF)とラテックスに由来するゴム成分(L)との混合物で形成されている。
【0027】
RFL接着層14aにおけるR/F(モル比)は例えば1/1〜1/2である。RF/L(質量比)は例えば1/5〜1/20である。Lとしては、例えば、CSM、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエンポリマー(以下「2,3−DCB」という。)、ビニルピリジンスチレンブタジエンコポリマー(以下「Vp−SBR」という。)、CR等が挙げられる。Lは、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましい。Lは、ベルト本体11との優れた接着性を得る観点から、CSM又は2,3−DCBを含むことが好ましい。
【0028】
心線接着層15aは、ゴム成分に各種のゴム配合剤が配合された未架橋ゴム組成物が加熱及び加圧されてゴム成分が架橋剤により架橋したゴム組成物で形成されている。
【0029】
心線接着層15aを形成するゴム組成物のゴム成分はCSMを主体とすることが好ましい。この場合、ゴム成分におけるCSMの含有量は50質量よりも多く、ベルト本体11との優れた接着性を得る観点から、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95%以上、最も好ましくは100質量%である。なお、ゴム成分は、CSMを含む以外に、エチレン−α−オレフィンエラストマー、H−NBR、CR等を含んでいてもよい。また、ゴム成分は、CSM以外のCR等であってもよい。
【0030】
ゴム成分がCSMを含む場合、ゴム成分に含まれたCSMの塩素含有量は、ベルト本体11との優れた接着性を得る観点から、好ましくは20質量%以上、より好ましくは24質量%以上、更に好ましくは25質量%以上であり、また、好ましくは45質量%以下、より好ましくは29質量%以下、更に好ましくは27質量%以下である。
【0031】
ゴム成分に含まれたCSMの硫黄含有量は、ベルト本体11との優れた接着性を得る観点から、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは0.6質量%以上であり、また、好ましくは1.5質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下、更に好ましくは0.8質量%以下である。
【0032】
ゴム成分に含まれたCSMの100℃におけるムーニー粘度は、ベルト本体11との優れた接着性を得る観点から、好ましくは30ML
1+4(100℃)以上、より好ましくは35ML
1+4(100℃)以上、更に好ましくは38ML
1+4(100℃)以上であり、また、好ましくは100ML
1+4(100℃)以下、より好ましくは50ML
1+4(125℃)以下、更に好ましくは45ML
1+4(125℃)以下である。
【0033】
ゴム配合剤としては、補強材、可塑剤、加工助剤、加硫促進助剤、共架橋剤、架橋剤、老化防止剤等が挙げられる。
【0034】
補強材としては、カーボンブラックでは、例えば、チャネルブラック;SAF、ISAF、N−339、HAF、N−351、MAF、FEF、SRF、GPF、ECF、N−234などのファーネスブラック;FT、MTなどのサーマルブラック;アセチレンブラック等が挙げられる。補強材としてはシリカも挙げられる。補強材は、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましい。補強材はFEFカーボンブラック及びシリカを含むことが好ましい。補強材の含有量は、ゴム組成物のゴム成分100質量部に対して例えば40〜60質量部である。
【0035】
可塑剤としては、例えば、ポリエーテルエステル、ジオクチルセバケート(DOS)などのジアルキルセバケート、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)などのジアルキルフタレート、ジオクチルアジペート(DOA)などのジアルキルアジペート等が挙げられる。可塑剤は、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましい。可塑剤は、ポリエーテルエステル及びジオクチルセバケート(DOS)を含むことが好ましい。可塑剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して例えば5〜20質量部である。
【0036】
加工助剤としては、例えば、ステアリン酸、ポリエチレンワックス、脂肪酸の金属塩等が挙げられる。加工助剤は、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましい。加工助剤はステアリン酸を含むことが好ましい。加工助剤の含有量は、ゴム組成物のゴム成分100質量部に対して例えば0.5〜2質量部である。
【0037】
加硫促進助剤としては、例えば、酸化亜鉛(亜鉛華)や酸化マグネシウムなどの金属酸化物、金属炭酸塩、脂肪酸及びその誘導体等が挙げられる。加硫促進助剤は、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましい。加硫促進助剤は酸化亜鉛を含むことが好ましい。加硫促進助剤の含有量は、ゴム組成物のゴム成分100質量部に対して例えば3〜7質量部である。
【0038】
共架橋剤としては、例えば、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリアリルイソシアヌレート、亜鉛ジメタクリレート、m−フェニレンジマレイミド等が挙げられる。共架橋剤は、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましい。共架橋剤はトリメチロールプロパントリメタクリレートを含むことが好ましい。共架橋剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して例えば1〜3質量部である。
【0039】
架橋剤としては、有機
過酸化物及び硫黄が挙げられる。架橋剤として、有機
過酸化物が配合されていてもよく、また、硫黄が配合されていてもよく、更には、それらの両方が併用されていてもよい。架橋剤は有機
過酸化物を含むことが好ましい。架橋剤の配合量は、有機過酸化物の場合、ゴム成分100質量部に対して例えば1〜5質量部であり、硫黄の場合、ゴム成分100質量部に対して例えば0.5〜3質量部である。
【0040】
老化防止剤としては、例えば、ベンズイミダゾール系、アミン−ケトン系、ジアミン系、フェノール系のもの等が挙げられる。老化防止剤は、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましい。老化防止剤はベンズイミダゾール系のものを含むことが好ましい。老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して例えば0.5〜1.5質量部である。
【0041】
心線12は、
図2Bに示すように、心線12とRFL接着層14aとの間に下地接着層16aが設けられ、心線12全体を覆う下地接着層16a及びRFL接着層14aとその外側を覆う心線接着層15aとを介してベルト本体11に埋設されていてもよい。下地接着層16aを形成する材料としては、例えば、エポキシ樹脂やイソシアネート樹脂が挙げられる。
【0042】
補強布13は、例えば、ナイロン繊維(ポリアミド繊維)、ポリエステル繊維、アラミド繊維、綿等の糸で形成された織布、編物、不織布等の布材で構成されている。補強布13は、これらのうちのナイロン繊維で形成されていることが好ましい。補強布13は伸性を有することが好ましい。補強布13の厚さは例えば0.3〜2.0mmである。
【0043】
補強布13は、
図3Aに示すように、RFL接着層14bで覆われていると共に、RFL接着層14bで覆われた補強布13のベルト本体11側を覆うように補強布接着層15bが設けられており、それらのRFL接着層14b及び補強布接着層15bを介してベルト本体11に貼設されている。
【0044】
RFL接着層14bは、レゾルシンとホルムアルデヒドとの縮合物(RF)とラテックスに由来するゴム成分(L)との混合物で形成されている。
【0045】
RFL接着層14bにおけるR/F(モル比)は例えば1/1〜1/2である。RF/L(質量比)は例えば1/5〜1/20である。Lとしては、例えば、CSM、2,3−DCB、Vp−SBR、CR等が挙げられる。Lは、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましい。Lは、ベルト本体11との優れた接着性を得る観点から、CSM又は2,3−DCBを含むことが好ましい。この補強布13を覆うRFL接着層14bは、心線12を覆うRFL接着層14aと同一材料で形成されていてもよい。
【0046】
補強布接着層14bは、ゴム成分に各種のゴム配合剤が配合された未架橋ゴム組成物が加熱及び加圧されてゴム成分が架橋剤により架橋したゴム組成物で形成されている。
【0047】
補強布接着層14bを形成するゴム組成物のゴム成分はH−NBRを主体とする。ゴム成分におけるH−NBRの含有量は50質量よりも多く、ベルト本体11との優れた接着性を得る観点から、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95%以上、最も好ましくは100質量%である。なお、ゴム成分は、H−NBRを含む以外に、エチレン−α−オレフィンエラストマー、CSM、CR等を含んでいてもよい。
【0048】
ゴム成分に含まれたH−NBRの結合アクリロニトリル量は、ベルト本体11との優れた接着性を得る観点から、好ましくは30質量%以上、より好ましくは33質量%以上、更に好ましくは35質量%以上であり、また、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。
【0049】
ゴム成分に含まれたH−NBRのヨウ素価は、ベルト本体11との優れた接着性を得る観点から、好ましくは2mg/100mg以上、より好ましくは4mg/100mg以上、更に好ましくは6mg/100mg以上であり、また、好ましくは30mg/100mg以下、より好ましくは10mg/100mg以下、更に好ましくは8mg/100mg以下である。
【0050】
ゴム成分に含まれたH−NBRの100℃におけるムーニー粘度は、ベルト本体11との優れた接着性を得る観点から、好ましくは50ML
1+4(100℃)以上、より好ましくは60ML
1+4(100℃)以上、更に好ましくは70ML
1+4(100℃)以上であり、また、好ましくは100ML
1+4(100℃)以下、より好ましくは90ML
1+4(125℃)以下、更に好ましくは85ML
1+4(125℃)以下である。
【0051】
ゴム成分は、不飽和カルボン酸金属塩で強化されたH−NBRを含んでいてもよい。不飽和カルボン酸としては、例えば、メタクリル酸、アクリル酸等が挙げられ、また、金属としては、例えば、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム等が挙げられる。
【0052】
ゴム配合剤としては、補強材、可塑剤、加工助剤、加硫促進助剤、共架橋剤、架橋剤、老化防止剤等が挙げられる。
【0053】
補強材としては、カーボンブラックでは、例えば、チャネルブラック;SAF、ISAF、N−339、HAF、N−351、MAF、FEF、SRF、GPF、ECF、N−234などのファーネスブラック;FT、MTなどのサーマルブラック;アセチレンブラック等が挙げられる。補強材としてはシリカも挙げられる。補強材は、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましい。補強材はGPFカーボンブラック及びシリカを含むことが好ましい。補強材の含有量は、ゴム組成物のゴム成分100質量部に対して例えば40〜60質量部である。
【0054】
可塑剤としては、例えば、ポリエーテルエステル、ジオクチルセバケート(DOS)などのジアルキルセバケート、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)などのジアルキルフタレート、ジオクチルアジペート(DOA)などのジアルキルアジペート等が挙げられる。可塑剤は、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましい。可塑剤は、ポリエーテルエステルを含むことが好ましい。可塑剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して例えば5〜15質量部である。
【0055】
加工助剤としては、例えば、ステアリン酸、ポリエチレンワックス、脂肪酸の金属塩等が挙げられる。加工助剤は、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましい。加工助剤はステアリン酸を含むことが好ましい。加工助剤の含有量は、ゴム組成物のゴム成分100質量部に対して例えば0.5〜2質量部である。
【0056】
加硫促進助剤としては、例えば、酸化亜鉛(亜鉛華)や酸化マグネシウムなどの金属酸化物、金属炭酸塩、脂肪酸及びその誘導体等が挙げられる。加硫促進助剤は、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましい。加硫促進助剤は酸化亜鉛を含むことが好ましい。加硫促進助剤の含有量は、ゴム組成物のゴム成分100質量部に対して例えば3〜7質量部である。
【0057】
共架橋剤としては、例えば、トリメチロールプロパントリメタクリレート、亜鉛ジメタクリレート、トリアリルイソシアヌレート、m−フェニレンジマレイミド等が挙げられる。共架橋剤は、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましい。共架橋剤はトリメチロールプロパントリメタクリレートを含むことが好ましい。共架橋剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して例えば1〜3質量部である。
【0058】
架橋剤としては、有機
過酸化物及び硫黄が挙げられる。架橋剤として、有機
過酸化物が配合されていてもよく、また、硫黄が配合されていてもよく、更には、それらの両方が併用されていてもよい。架橋剤は有機
過酸化物及び硫黄の両方を含むことが好ましい。架橋剤の配合量は、有機過酸化物の場合、ゴム成分100質量部に対して例えば1〜5質量部であり、硫黄の場合、ゴム成分100質量部に対して例えば0.5〜3質量部である。
【0059】
老化防止剤としては、例えば、ベンズイミダゾール系、アミン−ケトン系、ジアミン系、フェノール系のもの等が挙げられる。老化防止剤は、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましい。老化防止剤はベンズイミダゾール系のものを含むことが好ましい。老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して例えば0.5〜1.5質量部である。
【0060】
補強布13は、
図3Bに示すように、補強布13とRFL接着層14bとの間に下地接着層16bが設けられ、補強布13全体を覆う下地接着層16b及びRFL接着層14bとそのベルト本体11側を覆う補強布接着層15bとを介してベルト本体11に貼設されていてもよい。下地接着層16bを形成する材料としては、例えば、エポキシ樹脂やイソシアネート樹脂が挙げられる。
【0061】
補強布13は、
図3Cに示すように、RFL接着層14bの外側を覆うように含浸ゴム接着層17が設けられ、補強布13全体を覆うRFL接着層14b及び含浸ゴム接着層17とそのベルト本体11側を覆う補強布接着層15bとを介してベルト本体11に貼設されていてもよい。含浸ゴム接着層17を形成するゴム組成物は、補強布接着層15bと同様、H−NBRをゴム成分の主体とするゴム組成物で形成されていることが好ましく、補強布接着層15bと同一のゴム組成物で形成されていてもよい。また、この場合も補強布13とRFL接着層14bとの間に下地接着層16bが設けられていてもよい。
【0062】
以上の構成の実施形態に係る歯付ベルトBによれば、ベルト本体11が、エチレン含量が44〜66質量%であるエチレン−α−オレフィンエラストマーをゴム成分の主体とするゴム組成物で形成されていると共に、補強布接着層15bがH−NBRをゴム成分の主体とするゴム組成物で形成されていることにより、優れた耐熱性及び耐寒性を得ることができる。
【0063】
(歯付ベルトBの製造方法)
実施形態に係る歯付ベルトBの製造方法について、
図4〜7に基づいて説明する。
【0064】
図4は、実施形態に係る歯付ベルトBの製造に用いるベルト成形型20を示す。
【0065】
このベルト成形型20は、円筒状であって、その外周面に、軸方向に延びる歯部形成溝21が周方向に間隔をおいて一定ピッチで形成されている。
【0066】
実施形態に係る歯付ベルトの製造方法は、材料準備工程、成形工程、架橋工程、及び仕上げ工程を有する。
【0067】
<材料準備工程>
―背ゴム部及び歯ゴム部用の未架橋ゴムシート11’―
エチレン−α−オレフィンエラストマーを主体とするゴム成分を素練りし、そこに各種のゴム配合剤を投入して混練することにより未架橋ゴム組成物を得る。
【0068】
そして、得られた未架橋ゴム組成物をカレンダー成形等によってシート状に成形して背ゴム部及び歯ゴム部用の未架橋ゴムシート11’を作製する。
【0069】
−心線12’−
レゾルシン(R)とホルムアルデヒド(F)との初期縮合物(RF)とラテックス(L)とを混合してRFL接着処理用のRFL水溶液を調製する。
【0070】
心線12’をこのRFL水溶液に浸漬した後に加熱炉で加熱する。このとき、心線12’にRFL水溶液が含浸し、心線12’の内部を含む全体を覆うようにRFL接着層14aが付着する。このRFL接着処理は複数回繰り返してもよい。なお、ガラス繊維製の心線12の場合には、繊維束に対してこのRFL接着処理を施した後に撚糸を行う。
【0071】
次に、好ましくはCSMを主体とするゴム成分を素練りし、そこに各種のゴム配合剤を投入して混練することにより未架橋ゴム組成物を得る。この得られた未架橋ゴム組成物を例えばメチルエチルケトン(以下「MEK」という。)等の有機溶剤に溶解させてゴム糊を調製する。
【0072】
RFL接着処理を施した心線12’をこのゴム糊に浸漬した後に乾燥炉で乾燥させる。このとき、RFL接着層14aで覆われた心線12’の外側を覆うように心線接着層15aが付着する。このゴム糊処理は複数回繰り返してもよい。
【0073】
なお、下地接着層16aを設ける場合には、RFL接着処理の前に、エポキシ樹脂溶液やイソシアネート樹脂溶液等の下地接着剤に心線12’を浸漬して加熱する下地接着処理を行えばよい。
【0074】
―補強布13’―
レゾルシン(R)とホルムアルデヒド(F)との初期縮合物(RF)とラテックス(L)とを混合してRFL接着処理用のRFL水溶液を調製する。
【0075】
補強布13’をこのRFL水溶液に浸漬してロールで絞った後に加熱炉で加熱する。このとき、補強布13’にRFL水溶液が含浸し、補強布13’の内部を含む全体を覆うようにRFL接着層14bが付着する。このRFL接着処理は複数回繰り返してもよい。
【0076】
次に、H−NBRを主体とするゴム成分を素練りし、そこに各種のゴム配合剤を投入して混練することにより未架橋ゴム組成物を得る。この得られた未架橋ゴム組成物を例えばMEK等の有機溶剤に溶解させてコーティング接着処理用のゴム糊を調製する。
【0077】
RFL接着処理を施した補強布13’の一方の表面にこのコーティング接着処理用のゴム糊をナイフコーター等によりコーティングした後に乾燥炉で乾燥させる。このとき、RFL接着層14bで覆われた補強布13’の一方の表面を覆うように補強布接着層15bが付着する。このコーティング接着処理は複数回繰り返してもよい。
【0078】
そして、以上の接着処理を施した補強布13’の両端を接合して筒状に形成する。
【0079】
なお、下地接着層16bを設ける場合には、RFL接着処理の前に、エポキシ樹脂溶液やイソシアネート樹脂溶液等の下地接着剤に補強布13’を浸漬して加熱する下地接着処理を行えばよい。また、含浸ゴム接着層17を設ける場合には、RFL接着処理とコーティング接着処理との間に、ソーキング接着処理用のゴム糊に補強布13’を浸漬して乾燥させるソーキング接着処理を行えばよい。
【0080】
<成形工程>
図5に示すように、ベルト成形型20の外周に筒状の補強布13’を被せ、その上から心線12’を螺旋状に巻き付け、更にその上から未架橋ゴムシート11’を巻き付ける。このとき、ベルト成形型20上には積層成形体B’が形成される。なお、未架橋ゴムシート11’は、列理方向がベルト長さ方向に対応するように使用することが好ましい。
【0081】
<架橋工程>
図6に示すように、積層成形体B’の外周に離型紙22を巻き付けた後、その上からゴムスリーブ23を被せ、それを加硫缶内に配置して密閉すると共に、加硫缶内に高温及び高圧の蒸気を充填して所定の成型時間だけ保持する。このとき、積層成形体B’における未架橋ゴムシート11’が補強布13’を押圧しながら流動してベルト成形型20の歯部形成溝21に流入し、また、加熱及び加圧によりその架橋が進行し、且つそれと心線12’及び補強布13’とが心線接着層15a及び補強布接着層15bを介して複合一体化し、最終的に、
図7に示すように、円筒状のベルトスラブSが成型される。
【0082】
<仕上げ工程>
加硫缶の内部を減圧して密閉を解き、ベルト成形型20とゴムスリーブ23との間に成型されたベルトスラブSを取り出して脱型し、その背面側を研磨して厚さ調整を行った後、所定幅に輪切りすることにより歯付ベルトBが製造される。
【実施例】
【0083】
[ゴム組成物]
以下のベルト本体用のゴム1-1〜1-5、心線接着層用のゴム2、及び補強布接着層用のゴム3-1〜3-4を調製した。それぞれの構成は表1にも示す。
【0084】
(ベルト本体用ゴム)
<ゴム1-1>
密閉式のバンバリーミキサーのチャンバーにゴム成分としてのEPDM1(JSR社製 商品名:EP25 エチレン含量58.5質量%、ENB含量5.1質量%、ムーニー粘度63ML
1+4(125℃))を投入して素練りし、次いで、このゴム成分100質量部に対して、補強材1のFEFカーボンブラック(キャボットジャパン社製)60質量部、軟化剤(日本サン石油社製 商品名:サンパー2280)8質量部、加硫促進助剤の酸化亜鉛(ハクスイテック社製)5質量部、共架橋剤1のトリメチロールプロパントリメタクリレート(精工化学社製 商品名:ハイクロスM)2質量部、及び架橋剤1の有機
過酸化物(日油社製 商品名:パークミルD、ジクミルパーオキサイド)3質量部を投入配合して混練して未架橋ゴム組成物を作製した。この未架橋ゴム組成物をゴム1-1とした。
【0085】
<ゴム1-2>
ゴム成分としてEPDM2(JSR社製 商品名:EP21 エチレン含量61質量%、ENB含量5.8質量%、ムーニー粘度26ML
1+4(125℃))を用いたことを除いてゴム1-1と同一組成の未架橋ゴム組成物を作製した。この未架橋ゴム組成物をゴム1-2とした。
【0086】
<ゴム1-3>
密閉式のバンバリーミキサーのチャンバーにゴム成分としてのEPDM1(JSR社製 商品名:EP25)を投入して素練りし、次いで、このゴム成分100質量部に対して、補強材1のFEFカーボンブラック60質量部、軟化剤8質量部、加硫促進助剤の酸化亜鉛5質量部、架橋剤4の硫黄(細井化学工業社製)1.5質量部、スルフェンアミド系加硫促進剤1(大内新興化学工業社製 商品名:ノクセラーMSA)2質量部、及びチウラム加硫促進剤2(大内新興化学工業社製 商品名:ノクセラーTET−G)0.7質量部を投入配合して混練して未架橋ゴム組成物を作製した。この未架橋ゴム組成物をゴム1-3とした。
【0087】
<ゴム1-4>
ゴム成分100質量部に対して共架橋剤2として亜鉛ジメタクリレート(川口化学工業社製 商品名:アクターZMA)15質量部を更に投入配合したことを除いてゴム1-1と同一組成の未架橋ゴム組成物を作製した。この未架橋ゴム組成物をゴム1-4とした。
【0088】
<ゴム1-5>
密閉式のバンバリーミキサーのチャンバーにゴム成分としてのH−NBR1(日本ゼオン社製 商品名:Zetpol2000 結合アクリロニトリル量36.2質量%、ヨウ素価7mg/100mg以下、ムーニー粘度85ML
1+4(100℃))を投入して素練りし、次いで、このゴム成分100質量部に対して、補強材2のGPFカーボンブラック(キャボットジャパン社製)45質量部、可塑剤1のポリエーテルエステル(ADEKA社製 商品名:アデカサイザーRS700)8質量部、加工助剤のステアリン酸(日油社製)1質量部、加硫促進助剤の酸化亜鉛5質量部、共架橋剤1のトリメチロールプロパントリメタクリレート2質量部、架橋剤2の有機
過酸化物(日油社製 商品名:ペロキシモンF40(純度40質量%)、α,α’−ジ(トリt−ブチルペロキシ)ジイソプロピルベンゼン)8質量部(3.2質量部)、架橋剤4の硫黄1質量部、及びベンズイミダゾール系老化防止剤(大内新興化学工業社製 商品名:ノクラックMB)1質量部を投入配合して混練して未架橋ゴム組成物を作製した。この未架橋ゴム組成物をゴム1-5とした。
【0089】
(心線接着層用ゴム)
<ゴム2>
密閉式のバンバリーミキサーのチャンバーにゴム成分としてのCSM(東ソー社製 商品名:ET−8010 塩素含有量26質量%、硫黄含有量0.7質量%、ムーニー粘度40ML
1+4(100℃))を投入して素練りし、次いで、このゴム成分100質量部に対して、補強材1のFEFカーボンブラック30質量部、補強材3のシリカ(エボニックジャパン社製 商品名:ウルトラジルVN3)20質量部、可塑剤1のポリエーテルエステル5質量部、可塑剤2のDOS(三建化工社製)5質量部、加工助剤のステアリン酸1質量部、加硫促進助剤の酸化亜鉛5質量部、共架橋剤1のトリメチロールプロパントリメタクリレート2質量部、架橋剤2の有機
過酸化物(日油社製 商品名:ペロキシモンF40)8質量部(3.2質量部)、及びベンズイミダゾール系老化防止剤1質量部を投入配合して混練して未架橋ゴム組成物を作製した。この未架橋ゴム組成物をゴム2とした。
【0090】
(補強布接着層用ゴム)
<ゴム3-1>
密閉式のバンバリーミキサーのチャンバーにゴム成分としてのH−NBR1(日本ゼオン社製 商品名:Zetpol2000)を投入して素練りし、次いで、このゴム成分100質量部に対して、補強材2のGPFカーボンブラック45質量部、補強材3のシリカ10質量部、可塑剤1のポリエーテルエステル8質量部、加工助剤のステアリン酸1質量部、加硫促進助剤の酸化亜鉛5質量部、共架橋剤1のトリメチロールプロパントリメタクリレート2質量部、架橋剤3の有機
過酸化物(日油社製 商品名:パーブチルP、α,α’−ジ(トリt−ブチルペロキシ)ジイソプロピルベンゼン)3.2質量部、架橋剤4の硫黄1質量部、及びベンズイミダゾール系老化防止剤1質量部を投入配合して混練して未架橋ゴム組成物を作製した。この未架橋ゴム組成物をゴム3-1とした。
【0091】
<ゴム3-2>
ゴム成分として不飽和カルボン酸金属塩で強化されたH−NBR2(日本ゼオン社製 商品名:ZeoforteZSC2295 ベースポリマー:Zetpol2020、ムーニー粘度85ML
1+4(100℃))を用いたことを除いてゴム3-1と同一組成の未架橋ゴム組成物を作製した。この未架橋ゴム組成物をゴム3-2とした。
【0092】
<ゴム3-3>
密閉式のバンバリーミキサーのチャンバーにゴム成分としてのH−NBR3(日本ゼオン社製 商品名:Zetpol2020 結合アクリロニトリル量36.2質量%、ヨウ素価28mg/100mg、ムーニー粘度78ML
1+4(100℃))を投入して素練りし、次いで、このゴム成分100質量部に対して、補強材2のGPFカーボンブラック45質量部、補強材3のシリカ10質量部、可塑剤1のポリエーテルエステル8質量部、加工助剤のステアリン酸1質量部、加硫促進助剤の酸化亜鉛5質量部、架橋剤3の有機
過酸化物(日油社製 商品名:パーブチルP)3.2質量部、架橋剤4の硫黄1質量部、及びベンズイミダゾール系老化防止剤1質量部を投入配合して混練して未架橋ゴム組成物を作製した。この未架橋ゴム組成物をゴム3-3とした。
【0093】
<ゴム3-4>
密閉式のバンバリーミキサーのチャンバーにゴム成分としてのEPDM3(JSR社製 商品名:EP33 エチレン含量52質量%、ENB含量8.1質量%、ムーニー粘度28ML
1+4(125℃))を投入して素練りし、次いで、このゴム成分100質量部に対して、補強材1のFEFカーボンブラック65質量部、補強材3のシリカ10質量部、軟化剤8質量部、加工助剤のステアリン酸1質量部、加硫促進助剤の酸化亜鉛5質量部、共架橋剤1のトリメチロールプロパントリメタクリレート2質量部、架橋剤1の有機
過酸化物(日油社製 商品名:パークミルD)3質量部、及び架橋剤4の硫黄1質量部を投入配合して混練して未架橋ゴム組成物を作製した。この未架橋ゴム組成物をゴム3-4とした。
【0094】
【表1】
【0095】
[歯付ベルト]
以下の実施例1〜9及び比較例1〜2の歯付ベルトを作製した。それぞれの構成は表2にも示す。
【0096】
(実施例1)
ゴム1-1をカレンダー成形によってベルト本体用の未架橋ゴムシートに成形した。
【0097】
ラテックス成分をCSMラテックスとするRFL水溶液を用いたRFL接着処理を施したガラス繊維製の心線に、更にゴム2をMEKに溶解させたゴム糊に浸漬した後に乾燥炉で乾燥させるゴム糊接着処理を施し、RFL接着層で覆われた心線の外側を覆うように心線接着層を付着させた。
【0098】
ラテックス成分をCSMラテックスとするRFL水溶液を用いたRFL接着処理を施したナイロン繊維製の補強布(経糸をナイロン撚糸及び緯糸をウーリー加工ナイロン撚糸とした織布)の一方の表面に、更にゴム3-1をMEKに溶解させたゴム糊をナイフコーターによりコーティングした後に乾燥炉で乾燥させるコーティング接着処理を施し、RFL接着層で覆われた補強布の一方の表面を覆うように補強布接着層を付着させた。
【0099】
以上の構成のベルト本体用の未架橋ゴムシート、並びに接着処理を施した心線及び補強布を用いて上記実施形態と同様の構成の歯付ベルトを作製した。この歯付ベルトを実施例1とした。
【0100】
なお、ベルト長さは400mm、ベルト幅は20mm、及びベルト最大厚さは2.4mmとした。歯幅は1.5mm、歯高さは1.2mm、及び歯ピッチは2mmとした。
【0101】
(実施例2)
ベルト本体用の未架橋ゴムシートとしてゴム1-2を用いたことを除いて実施例1と同一構成の歯付ベルトを作製した。この歯付ベルトを実施例2とした。
【0102】
(実施例3)
ベルト本体用の未架橋ゴムシートとしてゴム1-3を用いたことを除いて実施例1と同一構成の歯付ベルトを作製した。この歯付ベルトを実施例3とした。
【0103】
(実施例4)
ベルト本体用の未架橋ゴムシートとしてゴム1-4を用いたことを除いて実施例1と同一構成の歯付ベルトを作製した。この歯付ベルトを実施例4とした。
【0104】
(実施例5)
補強布のコーティング接着処理にゴム3-2のゴム糊を用いたことを除いて実施例4と同一構成の歯付ベルトを作製した。この歯付ベルトを実施例5とした。
【0105】
(実施例6)
補強布のコーティング接着処理にゴム3-3のゴム糊を用いたことを除いて実施例1と同一構成の歯付ベルトを作製した。この歯付ベルトを実施例6とした。
【0106】
(実施例7)
心線及び補強布のRFL接着処理にラテックス成分を2,3−DCBラテックスとするRFL水溶液を用いたことを除いて実施例1と同一構成の歯付ベルトを作製した。この歯付ベルトを実施例7とした。
【0107】
(実施例8)
心線及び補強布のRFL接着処理にラテックス成分をH−NBRラテックスとするRFL水溶液を用いたことを除いて実施例1と同一構成の歯付ベルトを作製した。この歯付ベルトを実施例8とした。
【0108】
(実施例9)
心線及び補強布のRFL接着処理にラテックス成分をVp−SBRラテックスとするRFL水溶液を用いたことを除いて実施例1と同一構成の歯付ベルトを作製した。この歯付ベルトを実施例9とした。
【0109】
(比較例1)
ベルト本体用の未架橋ゴムシートとしてゴム1-5を用いたことを除いて実施例1と同一構成の歯付ベルトを作製した。この歯付ベルトを比較例1とした。
【0110】
(比較例2)
補強布のコーティング接着処理にゴム3-4のゴム糊を用いたことを除いて実施例1と同一構成の歯付ベルトを作製した。この歯付ベルトを比較例2とした。
【0111】
【表2】
【0112】
[試験評価方法]
図8はベルト走行試験機30のプーリレイアウトを示す。
【0113】
このベルト走行試験機30は、駆動プーリ31と、従動プーリ32と、アイドラプーリ33とを有する。駆動プーリ31には、プーリ周縁に21箇所の歯部噛合溝が設けられている。従動プーリ32には、プーリ周縁に42箇所の歯部噛合溝が設けられている。アイドラプーリ33は、ベルト背面を押圧するためにプーリ周縁がフラットに形成されている。駆動プーリ31、従動プーリ32、及びアイドラプーリ33は、いずれも炭素鋼(S45C)製である。
【0114】
実施例1〜9及び比較例1〜2のそれぞれの歯付ベルトBについて、このベルト走行試験機30を用い、以下のようにして耐熱耐久性及び耐寒耐久性を評価した。
【0115】
(耐熱耐久性試験)
歯付ベルトBを、ベルト走行試験機30に、歯部が駆動プーリ31及び従動プーリ32に噛み合うと共に、ベルト背面がアイドラプーリ33に当接するように巻き掛けた後、従動プーリ32にデッドウェイトを負荷して歯付ベルトBに200Nの張力を与え、雰囲気温度120℃の下、駆動プーリ31を1000rpmの回転数で回転させてベルト走行させた。そして、50時間毎にベルト走行を停止して破損の有無を目視確認した。なお、ベルト走行時間の最長を300時間とした。
【0116】
(耐寒耐久性試験)
耐熱耐久性試験と同様に、歯付ベルトBをベルト走行試験機30にセットし、雰囲気温度−40℃の下、駆動プーリ31を1000rpmの回転数で回転させて1分間ベルト走行させた後に30分間停止する操作を1サイクルとし、それを500サイクルした後の破損の有無を目視確認した。
【0117】
[試験評価結果]
試験結果を表2に示す。
【0118】
耐熱耐久性について、実施例1、2、4、及び5では走行時間300時間まで破損は認められず、実施例6及び7では走行時間250時間で破損が認められ、実施例3及び8では走行時間200時間で破損が認められ、実施例9では走行時間150時間で破損が認められた。実施例3及び6〜9では補強布の剥離が認められた。一方、比較例1では走行時間300時間まで破損は認められなかったものの、比較例2では走行時間100時間で破損が認められた。比較例2では心線の剥離が認められた。
【0119】
耐寒耐久性については、実施例2でベルト背面に微小なクラックが認められた以外、その他の実施例1及び3〜9のいずれもベルト背面にクラックは認められなかった。一方、比較例2ではベルト背面にクラックは認められなかったものの、比較例1でベルト背面に心線にまで達するようなクラックが認められた。
歯付ベルト(B)は、ベルト長さ方向に一定ピッチで歯部(10)が設けられている。ベルト本体(11)は、エチレン含量が44〜66質量%であるエチレン−α−オレフィンエラストマーをゴム成分の主体とするゴム組成物で形成されている。補強布(13)は補強布接着層を介してベルト本体(11)の歯部側表面に貼設されており、その補強布接着層が水素化ニトリルゴムをゴム成分の主体とするゴム組成物で形成されている。