【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は(請求項1)、非常電源(10)に接続して該非常電源(10)から受電する受電端子(4)と、複数の、該非常電源が負荷に給電できる最大電流より小さな電流に制限する給電電流制限手段(2)と、負荷に接続して該負荷に給電する給電端子(5)を具備した、非常電源の保護装置であって、
複数の給電電流制限手段(2)からひとつの給電電流制限手段(2)を選択する選択手段(3)、および、該選択されたひとつの給電電流制限手段(2)を、前記給電端子(5)を経由した負荷への給電ラインに接続する接続手段(3)、を有することを特徴とした、非常電源保護装置である。(
図1参照)
【0025】
本発明の好適な態様としては(請求項2)、ひとつの給電電流制限手段(2)を選択する選択手段(3)が、 非常電源の発電電力値(P)、非常電源の負荷である非常照明の消費電力値(N1)にもとづいて選択する、という態様である。
【0026】
また、本発明の好適な別態様としては(請求項3)、再生可能エネルギーによる独立電源を兼備し、該独立電源のエネルギーによって、複数の給電電流制限手段(2)からひとつの給電電流制限手段(2)を選択する選択手段、または/および、該選択されたひとつの給電電流制限手段(2)を、前記給電端子(5)を経由した負荷への給電ラインに接続する接続手段が動作する、という態様である。
【0027】
さらにまた、本発明の好適な別態様としては(請求項4)、時計を兼備して、ひとつの給電電流制限手段(2a)が選択されている定刻に、該定刻の条件下で複数の給電電流制限手段(2)からひとつの給電電流制限手段(2b)を選択する選択手段で選択変更がなされ、該選択変更にもとづいて、他の給電電流制限手段(2)を、前記給電端子(5)を経由した負荷への給電ラインに接続する接続変更がなされる、という態様である。
【0028】
<1 メインクレームの説明>
図1が、災害時の避難所の非常電源と本発明装置のイメージスケッチであって、本発明装置の具備する必須アイテム「2」「3」「4」「5」を示している。
図1の右方が、主に照明用として用いられる非常電源(10)、その左方に本発明の装置(1)が接続されている。本発明装置(1)が、「2A」「4A」「6A」「8A」の4つの給電電流制限手段(2)を具備し、さらに、それらのひとつを選択し荷給電ラインへ介入接続させる選択的接続手段(3)の具備、および、受電端子(4)給電端子(5)の具備を示している。
【0029】
最大の特徴は、複数の給電電流制限手段(2)の具備と(3)によるそれらの選択的使い分け、である。
図1では、選択的接続手段(3)はアバウトに示されているが、この具体的構成は後述される。
【0030】
非常電源(10)の多くは、備蓄時のメンテが容易である「カセットガスボンベ式発電機」であって、主として照明用電源とされる。真っ暗闇の恐怖を取り去ることが第一優先とされ、まずは照明、ということである。かかるカセットガスボンベ式発電機で手頃な価格帯の商品の発電電力は、1kw弱(900W程度)のものが多い。カセットガスボンベ(11)が所望の電力量にみあう本数だけ備蓄される。
【0031】
<2 請求項2の説明>
さて、避難所の非常照明は、とにかく明るく、と考え高輝度のハロゲン照明が選ばれた時期があった。ハロゲンの電力は300から400W。複数ハロゲンを備蓄しているのはまれで単数が多い。すなわち、900Wカセットガスボンベ式発電機と300Wハロゲン照明のセットである。
【0032】
ここで、非常電源の発電電力値(P)、と非常電源の負荷である非常照明の消費電力値(N1)にて、余剰電力(Q)はその差:(Q=P-N1)である。すなわち、100V電圧ならば、最大電流6A:((900-300)/100)が、流せる電流の限界値である。ゆえに、電流制限は6Aとするのが適切である。(
図2参照)
【0033】
このようにして給電電流制限手段(2)の制限値が決まる。すなわち、給電電流制限手段(2)を選択する選択手段は、非常電源の発電電力値(P)、非常電源の負荷である非常照明の消費電力値(N1)にもとづいて計算して選択するということである。
【0034】
かかる非常電源にて照明以外のパソコン等を活かす本部電源電力についても給電が必須とすれば、その電力を「その他の重要電力」を「N2」として、Q=P-(N1+N2)であり、そのQの値を100Vで割れば制限電流が求まる。この例を例2とする。そして、LED省エネ照明を使用した例を例3とし、
図3の右方に示した。
これら例1から例3は下表のようにまとめられる:
【0035】
例示したように、給電電流制限手段(2)を選択する選択手段が、非常電源の発電電力値(P)、非常電源の負荷である非常照明の消費電力値(N1)、さらに「その他の重要電力」(N2)にもとづいて選択するのが好適な態様である。
【0036】
ここで、この選択をなす手段は、コンピュータが実行するとして、上記の計算はプログラミングされたものとして実現してよい。しかしながら、現実的には人間(非常電源管理者)が手計算してその結果を得る、でもよい。
【0037】
また、後述するが、給電電流制限手段(2)を、前記給電端子(5)を経由した負荷への給電ラインに接続する接続手段の実現主体も、リレー制御やシーケンサーによる自動回路としてよいが、人間(非常電源管理者)が手作業で電流制限器周縁の遮断/接続スイッチをオンオフ操作して実現するとしてもよい。
【0038】
<3 請求項3の説明>
このサブクレームは、本装置をより具体的に実現(インプリメント)する方策を示している。
図2が、前述の発電電力値(P)、非常電源の負荷である非常照明の消費電力値(N1)の数値を入力できるテンキー、および、判断「はい(Yes)」「いいえ(No)」入力キーを具備した簡易電卓型の機器(手段)と人間系(電源管理者)とがなすやり取りルーチン、および、その簡易電卓型機器の駆動エネルギーを示したものである。
【0039】
非常電源の貴重なエネルギーを、電力消費がわずかと雖も、この簡易電卓型機器の駆動にもちいることは好ましいことではない。そこで、かかる簡易電卓型機器は、太陽光などの再生可能エネルギーを利用して駆動できるようにするのが好適である。この電源アレンジは公知の電卓と同様の仕様で容易に実現できる。すなわち、再生可能エネルギーによる独立電源を兼備し、該独立電源のエネルギーで選択手段が動作する、のが好適である。
【0040】
この選択手段、すなわち「複数の給電電流制限手段(2)からひとつの給電電流制限手段(2)を選択する選択手段」は、電卓同様のデータ入力と四則演算なので、消費電力は小さい。
【0041】
同様に、「選択されたひとつの給電電流制限手段(2)を、前記給電端子(5)を経由した負荷への給電ラインに接続する接続手段」についても、再生可能エネルギーによる独立電源のエネルギーで動作される、のが好適である。しかし、この「接続手段」は、継電器(Relay)接点の駆動を要するため(データ入力や演算だけでないので)、比較的大きな電力を要する。
【0042】
この比較的大きな電力は、給電電流制限手段(2a)から(2b)への切替え時に瞬時的に消費されるものであるので、装置内の回路に瞬時大電力放出に適したキャパシター(コンデンサー)を配設し、この瞬時エネルギー放出(放電)で駆動するのが好適である。
【0043】
該キャパシターには、切替え操作のない時間期間にて、太陽電池等から充分な充電がなされるよう、太陽電池容量、キャパシター容量を設計するのが好適である。また、この給電電流制限手段(2)の再選択・接続替えタイミングとその頻度の設定(次項に説明する「定時」の設定)を踏まえつつ、当該容量を設計するのが好適である。
【0044】
給電電流制限手段(2a)から(2b)への切替えは、
図3に例示されるよう行えばよい。すなわち、照明については時刻や天候の条件を加味して、余剰電力(Q)を計算し直し、その結果から異なる電流制限に変更すれば良い。
【0045】
<4 請求項4の説明>
このような給電電流制限手段(2)の再選択・接続替えの実施の必要性は、次の理由による。すなわち、非常電源によって給電される最大の相手先は非常照明であるが、好天に恵まれた昼間には照明無しで済む可能性が高い。ただし、朝の天候からの急変もありうる。
そのため、毎朝、たとえば9:00に、天候をみて給電電流制限手段(2)の「再選択/必要あれば接続替え」のルーチンを行うことが好ましい。
【0046】
すなわち、
図4に例示されるように、たとえば、11:00、13:00、15:00・・・といった具合に、定刻に給電電流制限手段(2)の「再選択/必要あれば接続替え」ルーチンを実施することが推奨される。
【0047】
そして、夕刻16:00から17:00には薄暗くなってくるので、半強制的に照明を優先給電先にすべきであろう。季節や地域によって薄暗くなる時刻は変わるで、その定刻の設定は人間系(電源管理者)が介在して、前記の簡易電卓型の機器(手段)を通じて行うのが好ましい。
【0048】
ここで、電流制限用デバイス製品について解説を行う。まず業界用語として、「ブレーカ」「アンペアブレーカ」「電流制限器」等々と言った場合、これは電力契約にて給電できる最大電流以上にて給電遮断する回路遮断器を指す。そのため、電力契約の段階電力に対応した電流値、すなわち、10、15、20、30、40・・といった10アンペア以上の離散値の製品しか存在しない。
【0049】
一方、本発明にては、2、4、6、8といった10アンペア未満の電流制限デバイスを用いる。これを例示すると、和泉電気(IDEC社)の熱動引外し方式「サーキットプロテクタ(商標登録なし)」製品(
図10参照)、同社の流体電磁引外し方式「サーキットプロテクタ(商標登録なし)」製品(
図11参照)が挙げられる。
10アンペア未満の電流制限デバイスはこれに限定されるわけでなく、各社各様の製品が上梓されているので、適宜用いれば良い。
【0050】
<本案「保護装置」の発明の本質>
図16が、本案「保護装置」の発明の本質を示す図である。すなわち、日常、「電源」は強いものであって保護は考えない。分電盤にある電流制限器は、電源ではなく負荷の過電流保護のために配設されている(
図16(a))。
これに対して非日常、すなわち、激甚災害時の避難所には非常電源が設置される。この非常電源は弱く脆弱なもので、負荷からの過剰な電流要求に対して保護を必要とする(
図16(b))。
本発明の「保護装置」は、
図16(b)の状況を論理的かつ技術的に再現可能なレベルで開示した。
【0051】
当然のことながら、本発明の「保護装置」でも、通常なされる各負荷に対する保護はあってしかるべきである。これを
図16(c)に明示した。
以上、本案「保護装置」を説明した。
【0052】
<本案「制御装置」>
次に本案「制御装置」、すなわち、重要負荷と非重要負荷とを混在させ給電している非常電源の電力制御装置について説明する。
【0053】
避難民のもつ電池切れ多数スマホ群の一斉充電に関しては、以下の方策も提案されている(府中市防災センター案)。すなわち、家電量販店やコンビニ等に設置される「マルチスマホ急速受電ブース(
図9)」を自治体が購入し、非常電源容量の大きな防災センター等に配設、センター職員管理下で避難民にこれを開放する、とすれば前記のような混乱の発生は防ぐことができる。
【0054】
しかしながら、この方策を安直に採用すると次のような事象発生のおそれがある。すなわち、前述の「マルチスマホ急速受電ブース」を、たとえば非常電源の空きコネクタに接続し、不特定多数のスマホを同時に充電させると、スマホによっては自らに、または、専用コネクタにインプリメントされた「急速充電ロジック」が作動する。
【0055】
この「急速充電ロジック」では、スマホ、あるいは、専用コネクタが大容量電源からの給電を判断し、自己インピーダンス(内部抵抗)を急減させ数アンペアの大電流給電を誘導する。
【0056】
この大電流誘導は、供給側の事情を考慮しない(制御設計上考慮できない)ものであって、通常の東京電力等のように大電力供給能力がある給電ケースでは問題ない、が、非常電源にて、これが行われると、前記のような想定外の大電流が非常電源に誘導される可能性を否定できない。
【0057】
当然ながら、不特定多数の所有物であるスマホやコネクタを外部からコントロールすることは難しい(スマホメーカは急速充電ロジック非公開)。そのため、個々のスマホの急速充電が重なった場合、非常電源側に瞬時的超過大負荷、超過大電流が誘導されるおそれがある。ゆえに「マルチスマホ急速受電ブース」を非常電源で利用するにあたっては、予備実験で電流測定するなどして、非常電源への悪影響がないか、種々のスマホ混在及び種々のコネクタ混在の状態で充分チェックする必要がある。
【0058】
この問題に好適に対応するには、インバータ・コンバータで電流をアナログ的に制限する「電流制限器」および「電流変換器(CT: Current Transformer)」「AD変換器」などで負荷側が低インピーダンス化しても非常電源の供給電流を定格内に抑えるロジック回路を具備した電気電子機器を組み込んだ、アナログ的に連続して電流を制限する機能をもった非常電源制御装置をもちいればよい。(
図12、
図13参照)
【0059】
本発明の「電力制御装置」は(
図12参照、請求項5)、ひとつ以上k個(k≧1)の重要負荷(N1・・・Nk[W])、および、他の非重要負荷に電圧V[V]で給電している電力(P[W])の非常電源の電力制御装置であって、以下の(甲)(乙)(丙)(丁)の手段を具備する、装置である。
(甲)非重要負荷に供給できる最大余剰電力(Q[W])を式(1)の計算で求める計算手段、
(乙)最大余剰電力(Q[W])が給電される際の最大電流(i[A])を式(2)の計算でもとめる計算手段
(丙)非常電源が、他の非重要負荷に電圧V[V]で給電している出力電流icurrent[A]の測定手段
(丁)(丙)のicurrent[A]測定値を制御対象として、
該icurrent[A]が、前記最大電流(i[A])未満のときには、無制御で、
該icurrent[A]が、前記最大電流(i[A])以上のときには、(3)式を制御目標として電流制御する電流制御手段。
【0060】
図12が、本発明の「電力制御装置」の模式図であって、特に図中「20」が発明の本質部分である。すなわち、「甲」「乙」「丙」「丁」:
甲 非重要負荷に供給できる最大余剰電力(Q[W])を式(1)の計算で求める計算手段
乙 最大余剰電力(Q[W])が給電される際の最大電流(i[A])を式(2)の計算でもとめる計算手段
丙 非常電源が、他の非重要負荷に電圧V[V]で給電している出力電流icurrent[A]の測定手段
丁 丙のicurrent[A]測定値を制御対象として電流制御する電流制御手段。
および、「D」「S」:
D 非常電源のすべての負荷の名称、電力容量をまとめたデータベース
S 非常電源のすべての負荷から、k個(k≧1)の重要負荷を選択する選択手段
を具備する。
【0061】
データベースDには、たとえば、照明負荷:300W、パソコン負荷:50W、非常階段照明LED:40W、救命AEDデバイス:100W、緊急通報無線電源:200W・・・・などが記憶されている。選択手段Sは、データベースに記憶された負荷の中から、災害時に優先給電すべき負荷を、その時々の事情に合わせて選択する。
【0062】
さらに、本発明の「電力制御装置」は(請求項6)、非常電源のすべての負荷から、ひとつ以上k個(k≧1)の重要負荷(N1・・・Nk[W])を選択する選択手段をさらに具備している装置である。
【0063】
たとえば、選択手段Sの選択が天候の良い昼間になされたなら、照明負荷は優先選択されない。また逆に、選択手段Sの選択が日暮れになされたら、照明負荷を優先選択する。さらにまた、内閣府テロ対策情報機関からの連絡で災害時に乗じたテロが懸念される状況で選択されたなら、緊急通報無線電源を最優先に選択して、正しい情報が確保されるようにする。
【0064】
この選択手段の選択は、人間系(非常電源管理者)が行うものだが、遠い将来はAI(Artificial Intelligence:人工知能)が自動実行するだろう。
【0065】
本発明の「電力制御装置」は、丁の、『丙のicurrent[A]測定値を制御対象として、該icurrent[A]が、前記最大電流(i[A])未満のときには、無制御で、該icurrent[A]が、前記最大電流(i[A])以上のときには、(3)式を制御目標として電流制御する』という電流制御手段としての機能に応じる、交流での電流制限を実現するブロック「CLAC」を具備する。
【0066】
かかる回路ブロック「CLAC」は、「Con:コンバータ(整流器 AC→DC変換器)」、「CLDC:直流での電流制限回路」、「Inv:インバータ(DC→AC変換器)」とからなり、前記の、最大電流(i[A])未満のときには、無制御で、該icurrent[A]が、前記最大電流(i[A])以上のときには、(3)式を制御目標として電流制御する』という制御された交流給電を非重要負荷に対して行う。
【0067】
その時当然ながら、非常電源の出力電流は前記最大電流i[A]を超えることはない。
【0068】
直流での電流制限回路「CLDC」は、たとえば
図12中に例示される「Current limiter with NPN transistors」「Current limiter with PNP transistors」のような半導体をもちいた非線形回路であって、トランジスタ、サイリスタ、トライアック等々のデバイス特性ごとに多様な回路が公知であるので、それらの中からコストパフォーマンスの高い適切なものを採用して回路設計すれば良い。
【0069】
図13は、従来(a)、本明細書前半で説明した本発明の「電源保護装置」(b)、本明細書後半で説明した「電力制御装置」(c)による電流制御のイメージを示すものである。
【0070】
すなわち、
図13(a)の従来は、急速充電されたい負荷側のスマホやコネクタからの過激な電流デマンド(大きな電流で高速充電したい)に対し、対抗することもなく応じたため、非常電源内部の保護機構が働く時間余裕がないため起こる瞬時短絡等々の危険をはらむ状態であった。
【0071】
対して本発明の「電源保護装置」では、限界電流を超えたときに給電を遮断する電流制限をかけ、限界電流を超えた過激な電流デマンドには一切応じない、という対抗策をこうしたものである(
図13(b)参照)。
【0072】
また、本発明の「電力制御装置」は、前記「電源保護装置」のデジタル的な「流すか遮断か」のようなゼロイチ対応ではなく、アナログ的に給電電流値をわずか安全サイドに絞って電流制御しつつ給電を維持する方策を提示したもので、模式的に
図13(c)に示す。
【0073】
このように給電維持すれば、過激な電流デマンドを出してきた負荷側のスマホやコネクタへも悪影響を及ぼすことなく、時間はかかるものの充電自体は維持される(「保護装置」のように遮断による充電停止はない)。
【0074】
すなわち、スマホやタブレットの充電電流を限界電流でアタマ打ちし給電維持するもので、高速充電の過激な速度を制御により緩和した「緩速充電」とする。結果的に時間はかかるが、頻繁に充電停止したり、非常電源がダウンしたりするより適切。しかも、深夜から翌朝までの「緩速充電」で翌朝には充電完了できればスマホやタブレットユーザからの大クレームを受けるほどにならないだろう。
【0075】
一方で、このアナログ的に連続して電流を制限する機能をもった非常電源制御装置は概して高額となり、非常時だけにしか使わないといった事情を考慮すれば投資効果にやや疑問がある。実際に適用する場合は非常用という特殊事情を熟慮して本案前半の「保護」、すなわち、「デジタル式(流すか遮断するかして)電源の保護装置」でよいのか、本案後半の「アナログ式に電流を抑制する制御装置」でよいのか、コストパフォーマンスを見極めて使い分けるべきである。
【0076】
さて最後に、「他の非重要負荷」が直流負荷である場合の本案「制御装置」態様を説明する。本明細書にて複数回例示したスマホやタブレットといった携帯用電子機器の充電。これは、スマホやダブレットの内蔵二次電池を充電することであるから、当然ながらに直流負荷に対する給電である。
【0077】
一方、
図12では、交流負荷を想定しており、出力最終段にインバータ(Inv)が配備されて回路となっている。しかしながら、スマホやタブレットといった携帯用電子機器の充電であるなら、このインバータ(Inv)は不要である。インバータ(Inv)排除は、本制御装置の製作コスト削減効果があるばかりでなく、非常電源から負荷に至るまでのロスも削減され有効である。
【0078】
そこで、
図14に示すように、
図12にあった出力最終段にインバータ(Inv)を取り除き、「CLDC」直流での電流制限回路の出力として直流出力端子を配備し、この端子にスマホやタブレットといった携帯用電子機器のコネクタを接続して充電する構成である。
【0079】
図12で「CLAC」であった大きなブロックは、
図14では「CLDC’」中規模ブロックとなり、それは「Con」と「CLDC」によって、交流から直流変換、そしてその直流で電流制限回路を介して直流で出力する回路ブロックとなっている。
【0080】
すなわち(請求項7)、他の非重要負荷が直流負荷であり、かつ、(丁)の手段が直流出力端子を具備するとともに次のようであるのが好適である。すなわち;
・(丁):(丙)のicurrent[A]測定値を制御対象として以下の(ア)(イ)の制御を行う電流制御手段。
・・(ア):該icurrent[A]が、前記最大電流(i[A])未満のときには、無制御で直流出力を前記直流出力端子に給電する。
・・(イ):該icurrent[A]が、前記最大電流(i[A])より大きいときには、(3)式を制御目標として電力入力側の該icurrent[A]の電流値を最大電流(i[A])以下に抑制し、電力出力側の直流出力を前記直流出力端子に給電する電流制御手段。
【0081】
スマホやタブレットの充電端子には、アップル系とその他のものの2系統あって、さらに個々スマホとタブレットの容量ごとに2段階のコネクタサイズに差があるようなので、これだけで4通りの異なったオスコネクタが存在する。
【0082】
そこで、
図14の直流出力端子「T」は、好適には
図15に示すような4通りのメスコネクタの並列接続構成であることが好適である。このようにすれば、4通りのどのオスコネクタをもったスマホやタブレットも共通的に充電ができて便利である。
【0083】
<本案「制御装置」の発明の本質>
図17が、本案「制御装置」の発明の本質を示す図である。すなわち、日常、「電源」は強いものであって負荷の電流要求に対してある程度は応じるパワーをもっている。これに対して負荷によっては負荷電流を制限せねばならないものもある(
図17(a))。
ところが非日常、すなわち、激甚災害時の避難所には非常電源が設置される。この非常電源は弱く脆弱なもので、負荷からの過剰な電流要求に対応できないため、その電流要求を制限する必要がある(
図17(b))。
本発明の「制御装置」は、
図17(b)の状況を論理的かつ技術的に再現可能なレベルで開示した。
【0084】
当然のことながら、本発明の「制御装置」でも、通常なされる負荷に対する負荷電流制限はあってしかるべきである。これを
図17(c)に明示した。
以上、本案「制
御装置」を説明した。