特許第6221029号(P6221029)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6221029新規な化合物、これを用いた重合体、硬化剤及び架橋剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6221029
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】新規な化合物、これを用いた重合体、硬化剤及び架橋剤
(51)【国際特許分類】
   C07C 69/54 20060101AFI20171023BHJP
   C08F 20/20 20060101ALI20171023BHJP
   C08F 20/30 20060101ALI20171023BHJP
   C07D 303/30 20060101ALN20171023BHJP
【FI】
   C07C69/54 BCSP
   C08F20/20
   C08F20/30
   !C07D303/30
【請求項の数】9
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2013-25996(P2013-25996)
(22)【出願日】2013年2月13日
(65)【公開番号】特開2014-152164(P2014-152164A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2016年2月9日
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506203475
【氏名又は名称】黒金化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(72)【発明者】
【氏名】加藤 秀典
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼鳥 正重
【審査官】 鈴木 雅雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−182737(JP,A)
【文献】 特開2001−284052(JP,A)
【文献】 特開2002−056983(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 69/54
C08F 20/20
C08F 20/30
C07D 303/30
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(C1)で表される化合物。
【化1】
前記式(C1)中、R〜Rのうちの少なくとも1つの基が−ORで表され、
前記Rは、−CO−及び−OHを含み、且つ、末端に重合性不飽和結合を有する炭素数2〜12の基であり、
前記少なくとも1つの基以外のR〜Rは、各々独立に、H(水素原子)、X(ハロゲン原子)又は1価の基であり、
前記1価の基は、ヒドロキシル基、グリシジルエーテル基、−O−C2n−OHで表される基(但しn=2〜12)、−O−(C2n−O)−Hで表される基(但しn=2〜12、m=2〜6)、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数〜12のシクロアルキル基、炭素数〜12のアリール基、炭素数〜12のアラルキル基、炭素数〜12のアルケニル基、ハロゲン置換された炭素数1〜12のアルキル基、ハロゲン置換された炭素数〜12のシクロアルキル基、ハロゲン置換された炭素数〜12のアリール基、ハロゲン置換された炭素数〜12のアラルキル基、ハロゲン置換された炭素数〜12のアルケニル基、ニトロ基、及び、アミノ基からなる群から選ばれる。
【請求項2】
前記Rが、下記式(C3)、下記式(C7)又は下記式(C8)で表される請求項1に記載の化合物。
−CH−CH(OH)−CH−OCO−(CH−C(R)=CH
・・・(C3)
前記RはH(水素原子)又はメチル基であり、前記(C3)におけるnは、前記RがHである場合にn=0〜6であり、前記Rがメチル基である場合にn=0〜5である。
−(CH−CH(OH)−CH−OCO−C(R12)=CH
・・・(C7)
前記R12はH(水素原子)又はメチル基であり、前記式(C7)におけるnは、前記R12がHである場合にn=1〜7であり、前記R12がメチル基である場合にn=1〜6である。
−R13−CH−CH(OH)−CH−OCO−C(R14)=CH
・・・(C8)
前記R13は、下記式(C81)又は下記式(C82)で表され、
−(C−O−)− ・・・(C81)
−(C−O−)− ・・・(C82)
前記R14はH(水素原子)又はメチル基であり、前記R14がHである場合に、前記式(C81)のnはn=1〜3であり、前記式(C82)におけるlはl=1〜2であり、前記R14がメチル基である場合に、前記式(C81)におけるnはn=1〜2であり、前記式(C82)におけるlはl=1である。
【請求項3】
前記式(C1)中、R〜Rのうちの2〜4つの基が−ORで表される請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
前記少なくとも1つの基以外のR〜RがH(水素原子)である請求項に記載の化合物。
【請求項5】
前記少なくとも1つの基以外のR〜Rがヒドロキシル基である請求項に記載の化合物。
【請求項6】
前記少なくとも1つの基以外のR〜Rがグリシジルエーテル基である請求項に記載の化合物。
【請求項7】
請求項1乃至のうちのいずれかに記載の化合物を用いて得られたことを特徴とする重合体。
【請求項8】
請求項1乃至のうちのいずれかに記載の化合物を含むことを特徴とする硬化剤。
【請求項9】
請求項1乃至のうちのいずれかに記載の化合物を含むことを特徴とする架橋剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規な化合物これを用いた重合体、硬化剤及び架橋剤に関し、更に詳しくは、ジベンゾ[g,p]クリセン骨格を有する新規な化合物これを用いた重合体、硬化剤及び架橋剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ジベンゾ[g,p]クリセン骨格を有する化合物群は、有機電界発光特性を示す材料として注目されている。そして、芳香環構造を有する嵩高な官能基によって置換された各種ジベンゾ[g,p]クリセン化合物群は、下記特許文献1〜4等に開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−237384号公報
【特許文献2】特開2009−292807号公報
【特許文献3】特開2004−182737号公報
【特許文献4】国際公開第09/107549号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ジベンゾ[g,p]クリセン骨格の構造を利用した化合物の合成は進んでいない。そこで、本発明者らは、ジベンゾ[g,p]クリセン骨格の特性を活かした新規な化合物の合成を試みるに至った。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、ジベンゾ[g,p]クリセン骨格の構造をより有用に活用できるように設計された新規な化合物これを用いた重合体、硬化剤及び架橋剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の化合物は、下記式(C1)で表されることを要旨とする。
【化1】
前記式(C1)中、R〜Rのうちの少なくとも1つの基が−ORで表され、
前記Rは、−CO−及び−OHを含み、且つ、末端に重合性不飽和結合を有する炭素数2〜12の基であり、
前記少なくとも1つの基以外のR〜Rは、各々独立に、H(水素原子)、X(ハロゲン原子)又は1価の基であり、
前記1価の基は、ヒドロキシル基、グリシジルエーテル基、−O−C2n−OHで表される基(但しn=2〜12)、−O−(C2n−O)−Hで表される基(但しn=2〜12、m=2〜6)、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のシクロアルキル基、炭素数1〜12のアリール基、炭素数1〜12のアラルキル基、炭素数1〜12のアルケニル基、ハロゲン置換された炭素数1〜12のアルキル基、ハロゲン置換された炭素数1〜12のシクロアルキル基、ハロゲン置換された炭素数1〜12のアリール基、ハロゲン置換された炭素数1〜12のアラルキル基、ハロゲン置換された炭素数1〜12のアルケニル基、ニトロ基、及び、アミノ基からなる群から選ばれる。
【0006】
請求項2に記載の化合物は、請求項1に記載の化合物において、前記Rが、下記式(C3)、下記式(C7)又は下記式(C8)で表されることを要旨とする。
−CH−CH(OH)−CH−OCO−(CH−C(R)=CH
・・・(C3)
前記RはH(水素原子)又はメチル基であり、前記(C3)におけるnは、前記RがHである場合にn=0〜6であり、前記Rがメチル基である場合にn=0〜5である。
−(CH−CH(OH)−CH−OCO−C(R12)=CH
・・・(C7)
前記R12はH(水素原子)又はメチル基であり、前記式(C7)におけるnは、前記R12がHである場合にn=1〜7であり、前記R12がメチル基である場合にn=1〜6である。
−R13−CH−CH(OH)−CH−OCO−C(R14)=CH
・・・(C8)
前記R13は、下記式(C81)又は下記式(C82)で表され、
−(C−O−)− ・・・(C81)
−(C−O−)− ・・・(C82)
前記R14はH(水素原子)又はメチル基であり、前記R14がHである場合に、前記式(C81)のnはn=1〜3であり、前記式(C82)におけるlはl=1〜2であり、前記R14がメチル基である場合に、前記式(C81)におけるnはn=1〜2であり、前記式(C82)におけるlはl=1である。
【0011】
請求項に記載の化合物は、請求項1又は2に記載の化合物において、前記式(C1)中、R〜Rのうちの2〜4つの基が−ORで表されることを要旨とする。
請求項に記載の化合物は、請求項に記載の化合物において、前記少なくとも1つの基以外のR〜RがH(水素原子)であることを要旨とする。
請求項に記載の化合物は、請求項に記載の化合物において、前記少なくとも1つの基以外のR〜Rがヒドロキシル基であることを要旨とする。
請求項に記載の化合物は、請求項に記載の化合物において、前記少なくとも1つの基以外のR〜Rがグリシジルエーテル基であることを要旨とする。
請求項に記載の重合体は、請求項1乃至のうちのいずれかに記載の化合物を用いて得られたことを要旨とする。
請求項に記載の硬化剤は、請求項1乃至のうちのいずれかに記載の化合物を含むことを要旨とする。
請求項に記載の架橋剤は、請求項1乃至のうちのいずれかに記載の化合物を含むことを要旨とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ジベンゾ[g,p]クリセン骨格の構造を有用に活用できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[1]本発明の化合物
本発明の化合物は、下記式(C1)で表される化合物に含まれる。
【化2】
式(C1)中、R〜Rのうちの少なくとも1つの基が−ORで表され、
少なくとも1つの基のRは、末端に重合性不飽和結合を有する炭素数2〜12の基であり、
少なくとも1つの基以外のR〜Rは、各々独立に、H(水素原子)、X(ハロゲン原子)又は1価の基である。
即ち、後述する式(C1−1)〜式(C1−6)で表される化合物が含まれる。
そして、本発明の化合物は、更に、Rは、−CO−及び−OHを含み、
1価の基は、ヒドロキシル基、グリシジルエーテル基、−O−C2n−OHで表される基(但しn=2〜12)、−O−(C2n−O)−Hで表される基(但しn=2〜12、m=2〜6)、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜12のアラルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、ハロゲン置換された炭素数1〜12のアルキル基、ハロゲン置換された炭素数3〜12のシクロアルキル基、ハロゲン置換された炭素数6〜12のアリール基、ハロゲン置換された炭素数7〜12のアラルキル基、ハロゲン置換された炭素数2〜12のアルケニル基、ニトロ基、及び、アミノ基からなる群から選ばれる。
【0014】
上記式(C1)においてR〜Rのうちの1つが−ORである化合物は下記式(C1−1)で表される。
【化3】
式(C1−1)中、Rは、末端に重合性不飽和結合を有する炭素数2〜12の基である。−ORで表される基は、1位、2位、3位及び4位のうちのいずれに置換されていてもよい。
また、式(C1−1)中、R〜Rは、各々独立に、H(水素原子)、X(ハロゲン原子)又は1価の基である。
【0015】
上記式(C1)においてR〜Rのうちの2つが上記−ORである化合物は、下記式(C1−2)〜式(C1−4)で表される。
【化4】
式(C1−2)中、R51及びR52は、各々独立に、末端に重合性不飽和結合を有する炭素数2〜12の基である。また、式(C1−2)中、R及びRは、各々独立に、H(水素原子)、X(ハロゲン原子)又は1価の基である。
式(C1−2)において、−OR51と−OR52との置換位置の組合せとしては、[1,9]、[1,10]、[1,11]、[1,12]、[2,9]、[2,10]、[2,11]、[2,12]、[3,9]、[3,10]、[3,11]、[3,12]、[4,9]、[4,10]、[4,11]、[4,12]が挙げられる。
【0016】
【化5】
式(C1−3)中、R51及びR52は、各々独立に、末端に重合性不飽和結合を有する炭素数2〜12の基である。また、式(C1−3)中、R及びRは、各々独立に、H(水素原子)、X(ハロゲン原子)又は1価の基である。
式(C1−3)において、−OR51と−OR52との置換位置の組合せとしては、[1,5]、[1,6]、[1,7]、[1,8]、[2,5]、[2,6]、[2,7]、[2,8]、[3,5]、[3,6]、[3,7]、[3,8]、[4,5]、[4,6]、[4,7]、[4,8]が挙げられる。
【0017】
【化6】
式(C1−4)中、R51及びR52は、各々独立に、末端に重合性不飽和結合を有する炭素数2〜12の基である。また、式(C1−4)中、R及びRは、各々独立に、H(水素原子)、X(ハロゲン原子)又は1価の基である。
式(C1−4)において、−OR51と−OR52との置換位置の組合せとしては、[1,13]、[1,14]、[1,15]、[1,16]、[2,13]、[2,14]、[2,15]、[2,16]、[3,13]、[3,14]、[3,15]、[3,16]、[4,13]、[4,14]、[4,15]、[4,16]が挙げられる。
【0018】
上記式(C1)においてR〜Rのうちの3つが上記−ORである化合物は、下記式(C1−5)で表される。
【化7】
式(C1−5)中、R51、R52及びR53は、各々独立に、末端に重合性不飽和結合を有する炭素数2〜12の基である。また、式(C1−5)中、Rは、H(水素原子)、X(ハロゲン原子)又は1価の基である。
式(C1−5)において、−OR51、−OR52及び−OR53の置換位置の組合せとしては、[1,5,9]、[1,5,10]、[1,5,11]、[1,5,12]、[1,6,9]、[1,6,10]、[1,6,11]、[1,6,12]、[1,7,9]、[1,7,10]、[1,7,11]、[1,7,12]、[1,8,9]、[1,8,10]、[1,8,11]、[1,8,12]、[2,5,9]、[2,5,10]、[2,5,11]、[2,5,12]、[2,6,9]、[2,6,10]、[2,6,11]、[2,6,12]、[2,7,9]、[2,7,10]、[2,7,11]、[2,7,12]、[2,8,9]、[2,8,10]、[2,8,11]、[2,8,12]、[3,5,9]、[3,5,10]、[3,5,11]、[3,5,12]、[3,6,9]、[3,6,10]、[3,6,11]、[3,6,12]、[3,7,9]、[3,7,10]、[3,7,11]、[3,7,12]、[3,8,9]、[3,8,10]、[3,8,11]、[3,8,12]、[4,5,9]、[4,5,10]、[4,5,11]、[4,5,12]、[4,6,9]、[4,6,10]、[4,6,11]、[4,6,12]、[4,7,9]、[4,7,10]、[4,7,11]、[4,7,12]、[4,8,9]、[4,8,10]、[4,8,11]、[4,8,12]が挙げられる。
【0019】
上記式(C1)においてR〜Rのうちの4つすべてが上記−ORである化合物は、下記式(C1−6)で表される。
【化8】
式(C1−6)中、R51、R52、R53及びR54は、各々独立に、末端に重合性不飽和結合を有する炭素数2〜12の基である。
式(C1−6)において、−OR51、−OR52、−OR53及び−OR54の置換位置の組合せとしては、[3,6,11,14]、[3,6,11,15]、[3,6,10,15]、[2,7,10,14]、[2,7,10,15]、[3,7,10,14]、[3,7,11,15]、[3,6,10,14]、[3,7,10,15]、[3,7,11,14]、[2,7,11,14]、[2,7,11,15]、[2,6,10,14]、[2,6,10,15]、[2,6,11,14]、[2,6,11,15]、等が挙げられる。
【0020】
これらの式(C1−1)〜式(C1−6)で表される化合物は、どのように合成されてもよい。通常、ジベンゾクリセン骨格に直接結合された−O−を含む基を有するジベンゾクリセン誘導体を用い、この基に対して重合性不飽和結合末端を有する原子団を結合して得ることができる。このようなジベンゾクリセン骨格に直接結合された−O−を含む基としては、ヒドロキシル基(−OH)、グリシジルエーテル基(−O−CH−CO)、−O−C2n−OHで表される基(但しn=2〜12、具体的には、−O−C−OH、−O−C−OH、−O−C−OH等}、−O−(C2n−O)−Hで表される基(但しn=2〜12、m=2〜6、具体的には、−O−(C−O−)−H、−O−(C−O−)−H、−O−(C−O−)−H等}などが挙げられる。これらの基は、ジベンゾクリセン誘導体に1種のみが含まれてもよく、2種以上が含まれてもよい。
【0021】
このような基を有するジベンゾクリセン誘導体としては、例えば、ヒドロキシジベンゾクリセン{下記式(A1)参照}、ジベンゾクリセングリシジルエーテル{下記式(A2)参照}、ヒドロキシジベンゾクリセンのエチレンオキシド付加体からなるポリグリコールエーテル{下記式(A3)参照、通常n=1〜4}、ヒドロキシジベンゾクリセンのプロピレンオキシド付加体からなるポリグリコールエーテル{下記式(A3)参照、通常n=1〜3}等が挙げられる。尚、下記式(A1)〜式(A4)はジベンゾクリセンの1官能型の誘導体を例示しているが、当然ながら、2官能型、3官能型、4官能型の各誘導体も挙げられる。
【化9】
【0022】
上記各種ジベンゾクリセン誘導体のうち、式(A1)、式(A3)及び式(A4)等のように基の末端にヒドロキシル基を有するヒドロキシジベンゾクリセン誘導体を用いる場合には、末端のヒドロキシル基(−OH)に対して、重合性不飽和結合末端を付与して得ることができる。
また、ジベンゾクリセングリシジルエーテル{上記式(A2)及び同様な多官能誘導体}を用いる場合には、そのグリシジルエーテル基(−O−CH−CO)が有するエポキシ環(−CO)を開環させたうえで、重合性不飽和結合末端を付与して得ることができる。
【0023】
[2]−ORで表される基
式(C1)におけるRは、末端に重合性不飽和結合を有する炭素数2〜12の基である。即ち、式(C1−2)〜式(C1−6)における、R51、R52、R53及びR54は、各々独立に末端に重合性不飽和結合を有する炭素数2〜12の基である。以下の説明におけるRは、前述のR51、R52、R53及びR54についても共通する。
【0024】
上記Rは、末端に重合性不飽和結合を有するとともに、−CO−を含む、炭素数2〜12の基とすることができる。具体的には、上記Rは、下記式(C2)で表される基とすることができる。
−CO−(CH−C(R)=CH ・・・(C2)
式(C2)のRはH(水素原子)又はメチル基である。このRがH(水素原子)である場合にnはn=0〜9である。また、Rがメチル基である場合にnはn=0〜8である。
【0025】
上記式(2)においてn=0であり、RがH(水素原子)である場合、Rは下記式(C21)で表される。
−CO−CH=CH ・・・(C21)
また、上記式(2)においてn=0であり、Rがメチル基である場合、Rは下記式(C22)で表される。
−CO−C(CH)=CH ・・・(C22)
【0026】
上記Rが上記式(C21)で表される基である場合としては、下記式(C1−7)〜式(C1−12)が挙げられる。
【化10】
【化11】
【化12】
式(C1−7)〜式(C1−12)中のR〜Rは、各々独立に、H(水素原子)、X(ハロゲン原子)又は1価の基である。
尚、式(C1−7)〜式(C1−12)における下記式(C21−1)で表される基の置換位置の組合せは、各々前述の式(C1−1)〜式(C1−6)における−ORと同様である。
−O−CO−CH=CH ・・・(C21−1)
【0027】
上記Rが式(C21)で表される基である化合物{式(C1−7)〜式(C1−12)}は、例えば、ヒドロキシジベンゾクリセンに、アクリロイルハライドを反応させることによって得られる。アクリロイルハライドは、X−CO−CH=CH(但し、Xはハロゲン原子)で表される化合物であり、ヒドロキシジベンゾクリセンのヒドロキシル基と反応して、アクリロイル基を付与することができる(下記スキームS1参照)。
【化13】
上記アクリロイルハライドとしては、アクリロイルクロライド及びアクリロイルブロマイドが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0028】
上記Rが上記式(C22)で表される基である場合としては、下記式(C1−13)〜式(C1−18)が挙げられる。
【化14】
【化15】
【化16】
式(C1−13)〜式(C1−18)中のR〜Rは、各々独立に、H(水素原子)、X(ハロゲン原子)又は1価の基である。
尚、式(C1−13)〜式(C1−18)における下記式(C22−1)で表される基の置換位置の組合せは、各々前述の式(C1−1)〜式(C1−6)における−ORと同様である。
−O−CO−C(CH)=CH ・・・(C22−1)
【0029】
上記Rが式(C22)で表される基である化合物{式(C1−13)〜式(C1−18)}は、例えば、ヒドロキシジベンゾクリセンに、メタクリロイルハライドを反応させることによって得られる。メタクリロイルハライドは、X−CO−C(CH)=CH(但し、Xはハロゲン原子)で表される化合物であり、ヒドロキシジベンゾクリセンのヒドロキシル基と反応して、メタクリロイル基を付与することができる(下記スキームS2参照)。
【化17】
【0030】
一方、式(C2)においてn≧1であり、RがH(水素原子)である場合、上記Rは式(C23)で表される。但し、n=1〜9である。
−CO−(CH−CH=CH ・・・(C23)
また、式(C2)においてn≧1であり、Rがメチル基である場合、上記Rは式(C24)で表される。但し、n=1〜8である。
−CO−(CH−C(CH)=CH ・・・(C24)
【0031】
また、上記式(C21)、式(C22)、式(C23)及び式(C24)以外に、上記Rが、末端に重合性不飽和結合を有するとともに、−CO−を含み、炭素数2〜12の基である場合として、下記式(C5)で表される基が挙げられる。
−(CH−OCO−C(R)=CH ・・・(C5)
式(C5)のRはH(水素原子)又はメチル基であり、RがH(水素原子)である場合にn=1〜9であり、Rがメチル基である場合にn=1〜8である。
【0032】
加えて、上記Rが、末端に重合性不飽和結合を有するとともに、−CO−を含み、炭素数2〜12の基である場合として、下記式(C6)で表される基が挙げられる。
−R10−CH−OCO−C(R11)=CH ・・・(C6)
但し、式(C6)中のR10は、下記式(C61)又は下記式(C62)で表される。
−(C−O−)− ・・・(C61)
−(C−O−)− ・・・(C62)
式(C6)のR11はH(水素原子)又はメチル基である。R11がH(水素原子)である場合にn=1〜4であり、l=1〜2である。また、R11がメチル基である場合にn=1〜3であり、l=1〜2である。
【0033】
即ち、式(C6)中のR10が式(C61)で表され、式(C6)中のR11がH(水素原子)である場合、上記Rは式(C61−1)で表される。但し、n=1〜4である。
−(C−O−)−CH−OCO−CH=CH ・・・(C61−1)
式(C6)中のR10が式(C61)で表され、式(C6)中のR11がメチル基である場合、上記Rは式(C61−2)で表される。但し、n=1〜3である。
−(C−O−)−CH−OCO−C(CH)=CH
・・・(C61−2)
【0034】
また、式(C6)中のR10が式(C62)で表され、式(C6)中のR11がH(水素原子)である場合、上記Rは式(C62−1)で表される。但し、l=1〜2である。
−(C−O−)−CH−OCO−CH=CH ・・・(C62−1)
式(C6)中のR10が式(C62)で表され、式(C6)中のR11がメチル基である場合、上記Rは式(C62−2)で表される。但し、l=1〜2である。
−(C−O−)−CH−OCO−C(CH)=CH
・・・(C62−2)
【0035】
上記Rは、末端に重合性不飽和結合を有するとともに、−CO−及び−OHを含む、炭素数2〜12の基とすることができる。具体的には、上記Rは、下記式(C3)で表される基とすることができる。
−CH−CH(OH)−CH−OCO−(CH−C(R)=CH
・・・(C3)
式(C3)のRはH(水素原子)又はメチル基である。このRがH(水素原子)である場合にnはn=0〜6である。また、Rがメチル基である場合にnはn=0〜5である。
【0036】
上記式(C3)においてn=0であり、RがH(水素原子)である場合、Rは下記式(C31)で表される。
−CH−CH(OH)−CH−OCO−CH=CH ・・・(C31)
また、上記式(C3)においてn=0であり、Rがメチル基である場合、Rは下記式(C32)で表される。
−CH−CH(OH)−CH−OCO−C(CH)=CH ・・(C32)
【0037】
上記Rが上記式(C31)で表される基である場合としては、下記式(C1−19)〜式(C1−24)が挙げられる。
【化18】
【化19】
【化20】
式(C1−19)〜式(C1−24)中のR〜Rは、各々独立に、H(水素原子)、X(ハロゲン原子)又は1価の基である。
尚、式(C1−19)〜式(C1−24)における−OR、即ち、下記式(C31−1)で表される基の置換位置の組合せは、各々前述の式(C1−1)〜式(C1−6)における場合と同様である。
−O−CH−CH(OH)−CH−OCO−CH=CH ・・(C31−1)
【0038】
上記Rが式(C31)で表される基である化合物{式(C1−19)〜式(C1−24)}は、例えば、ジベンゾクリセングリシジルエーテルに、アクリル酸(CH=CH−COOH)を反応させることによって得られる。アクリル酸は、グリシジルエーテル基が有するエポキシ環を開環させたうえで、アクリロイルオキシ基(−OCO−CH=CH)を付与することができる(下記スキームS3参照)。
【化21】
【0039】
また、上記Rが式(C31)で表される基である化合物{式(C1−19)〜式(C1−24)}は、例えば、ヒドロキシジベンゾクリセンに、グリシジルアクリレート(CH=CH−CO−O−CH−CO)を反応させることによって得られる。グリシジルアクリレートは、ヒドロキシジベンゾクリセンのヒドロキシル基と反応して、アクリロイル基を付与することができる(下記スキームS3’参照)。
【化22】
【0040】
上記Rが上記式(C32)で表される基である場合としては、下記式(C1−25)〜式(C1−30)が挙げられる。
【化23】
【化24】
【化25】
式(C1−25)〜式(C1−30)中のR〜Rは、各々独立に、H(水素原子)、X(ハロゲン原子)又は1価の基である。
尚、式(C1−25)〜式(C1−30)における下記式(C32−1)で表される基の置換位置の組合せは、各々前述の式(C1−1)〜式(C1−6)における−ORと同様である。
−O−CH−CH(OH)−CH−OCO−C(CH)=CH
・・・(C32−1)
【0041】
上記Rが式(C32)で表される基である化合物{式(C1−25)〜式(C1−30)}は、例えば、ジベンゾクリセングリシジルエーテルに、メタクリル酸{CH=C(CH)−COOH}を反応させることによって得られる。メタクリル酸は、グリシジルエーテル基が有するエポキシ環を開環させたうえで、メタクリロイルオキシ基{−OCO−C(CH)=CH}を付与することができる(下記スキームS4参照)。
【化26】
【0042】
また、上記Rが式(C32)で表される基である化合物{式(C1−25)〜式(C1−30)}は、例えば、ヒドロキシジベンゾクリセンに、グリシジルメタクリレート{CH=C(CH)−CO−O−CH−CO}を反応させることによって得られる。グリシジルタメクリレートは、ヒドロキシジベンゾクリセンのヒドロキシル基と反応して、メタクリロイル基を付与することができる(下記スキームS4’参照)。
【化27】
【0043】
一方、式(C3)においてn≧1であり、RがH(水素原子)である場合、上記Rは式(C33)で表される。但し、n=1〜6である。
−CH−CH(OH)−CH−OCO−(CH−CH=CH
・・・(C33)
また、式(C3)においてn≧1であり、Rがメチル基である場合、上記Rは式(C34)で表される。但し、n=1〜5である。
−CH−CH(OH)−CH−OCO−(CH−C(CH)=CH
・・・(C34)
【0044】
上記式(C31)、式(C32)、式(C33)及び式(C34)以外に、上記Rが、末端に重合性不飽和結合を有するとともに、−CO−及び−OHを含み、炭素数2〜12の基である場合として、下記式(C7)で表される基が挙げられる。
−(CH−CH(OH)−CH−OCO−C(R12)=CH・・(C7)
式(C7)のR12はH(水素原子)又はメチル基である。R12がH(水素原子)である場合にn=1〜7であり、R12がメチル基である場合にn=1〜6である。
【0045】
加えて、上記Rが、末端に重合性不飽和結合を有するとともに、−CO−及び−OHを含み、炭素数2〜12の基である場合として、下記式(C8)で表される基が挙げられる。
−R13−CH−CH(OH)−CH−OCO−C(R14)=CH・・(C8)
但し、式(C8)中のR13は、下記式(C81)又は下記式(C82)で表される。
−(C−O−)− ・・・(C81)
−(C−O−)− ・・・(C82)
式(C8)のR14はH(水素原子)又はメチル基である。R14がH(水素原子)である場合にn=1〜3であり、l=1〜2である。また、R14がメチル基である場合にn=1〜2であり、l=1である。
【0046】
即ち、式(C8)中のR13が式(C81)で表され、式(C8)中のR14がH(水素原子)である場合、上記Rは式(C81−1)で表される。但し、n=1〜3である。
−(C−O−)−CH−CH(OH)−CH−OCO−CH=CH
・・・(C81−1)
式(C8)中のR13が式(C81)で表され、式(C8)中のR14がメチル基である場合、上記Rは式(C81−2)で表される。但し、n=1〜2である。
−(C−O−)−CH−CH(OH)−CH−OCO−C(CH)=CH
・・・(C81−2)
【0047】
また、式(C8)中のR13が式(C82)で表され、式(C8)中のR14がH(水素原子)である場合、上記Rは式(C82−1)で表される。但し、l=1〜2である。
−(C−O−)−CH−CH(OH)−CH−OCO−CH=CH
・・・(C82−1)

式(C8)中のR13が式(C82)で表され、式(C8)中のR14がメチル基である場合、上記Rは式(C82−2)で表される。
−C−O−−CH−CH(OH)−CH−OCO−C(CH)=CH
・・・(C82−2)
【0048】
尚、前述のスキームS3’及び前述のスキームS4’として例示されるように、グリシジル(メタ)アクリレート化合物(グリシジルエーテル基とアクリロイル基とを有する化合物)を用いることで、これらの化合物に応じた各種ジベンゾクリセン誘導体が得られる。例えば、グリシジルエーテル基とアクリロイル基との間にアルキレン鎖が介在されたグリシジル(メタ)アクリレート化合物を用いれば、R中に所望のアルキレン鎖を導入できる。グリシジルエーテル基とアクリロイル基との間にポリオキシアルキレン鎖が介在されたグリシジル(メタ)アクリレート化合物を用いれば、R中に所望のポリオキシアルキレン鎖を導入できる。
【0049】
その他、上記Rとしては、下記式(C4)で表される基が挙げられる。
−(CH−C(R)=CH ・・・(C4)
式(C4)のRはH(水素原子)又はメチル基である。このRがH(水素原子)である場合にnはn=0〜10である。また、Rがメチル基である場合にnはn=0〜9である。
【0050】
上記式(C4)においてn=0であり、RがH(水素原子)である場合、Rは下記式(C41)で表される。
−CH−CH=CH ・・・(C41)
また、上記式(C4)においてn=0であり、Rがメチル基である場合、Rは下記式(C42)で表される。
−CH−C(CH)=CH ・・・(C42)
【0051】
上記Rが上記式(C41)で表される基である場合としては、下記式(C1−31)〜式(C1−36)が挙げられる。
【化28】
【化29】
【化30】
式(C1−31)〜式(C1−36)中のR〜Rは、各々独立に、H(水素原子)、X(ハロゲン原子)又は1価の基である。
尚、式(C1−31)〜式(C1−36)における下記式(C41−1)で表される基の置換位置の組合せは、各々前述の式(C1−1)〜式(C1−6)における−ORと同様である。
−O−CH−CH=CH ・・・(C41−1)
【0052】
上記Rが式(C41)で表される基である化合物{式(C1−31)〜式(C1−36)}は、例えば、ヒドロキシジベンゾクリセンに、ハロゲン化プロペン(3−クロロ−1−プロペン、3−ブロモ−1−プロペン等)を反応させることによって得られる。ハロゲン化プロペンは、X−CH−CH=CH(但し、Xはハロゲン原子)で表される化合物であり、ヒドロキシジベンゾクリセンのヒドロキシル基に対して、2−プロペニル基(−CH−CH=CH)を付与することができる(下記スキームS5参照)。
【化31】
【0053】
また、上記Rが式(C42)で表される基である化合物は、例えば、ヒドロキシジベンゾクリセンに、ハロゲン化メチルプロペン(3−クロロ−2−メチル−1−プロペン、3−ブロモ−2−メチル−1−プロペン等)を反応させることによって得られる。ハロゲン化メチルプロペンは、X−CH−C(CH)=CH(但し、Xはハロゲン原子)で表される化合物であり、ヒドロキシジベンゾクリセンのヒドロキシル基に対して、2−メチル−2−プロペニル基{−CH−C(CH)=CH}を付与することができる(下記スキームS6参照)。
【化32】
【0054】
一方、式(C4)においてn≧1であり、RがH(水素原子)である場合、上記Rは式(C43)で表される。但し、n=1〜10である。
−(CH−CH=CH ・・・(C43)
また、式(C4)においてn≧1であり、Rがメチル基である場合、上記Rは式(C44)で表される。但し、n=1〜9である。
−(CH−C(CH)=CH ・・・(C44)
【0055】
また、上記式(C41)、式(C42)、式(C43)及び式(C44)以外に、上記Rとして、下記式(C9)で表される基が挙げられる。
−R15−CH−C(R16)=CH ・・・(C9)
但し、式(C9)中のR15は、下記式(C91)又は下記式(C92)で表される。
−(C−O−)− ・・・(C91)
−(C−O−)− ・・・(C92)
式(C9)のR16はH(水素原子)又はメチル基である。R16がH(水素原子)である場合にn=1〜4であり、l=1〜3である。また、R16がメチル基である場合にn=1〜4であり、l=1〜2である。
【0056】
即ち、式(C9)中のR15が式(C91)で表され、式(C9)中のR16がH(水素原子)である場合、上記Rは式(C91−1)で表される。但し、n=1〜4である。
−(C−O−)−CH−CH=CH ・・・(C91−1)
式(C9)中のR15が式(C91)で表され、式(C9)中のR16がメチル基である場合、上記Rは式(C91−2)で表される。但し、n=1〜4である。
−(C−O−)−CH−C(CH)=CH ・・(C91−2)
【0057】
また、式(C9)中のR15が式(C92)で表され、式(C9)中のR16がH(水素原子)である場合、上記Rは式(C92−1)で表される。但し、l=1〜3である。
−(C−O−)−CH−CH=CH ・・・(C92−1)
式(C9)中のR15が式(C92)で表され、式(C9)中のR16がメチル基である場合、上記Rは式(C92−2)で表される。但し、l=1〜2である。
−(C−O−)−CH−C(CH)=CH ・・(C92−2)
【0058】
[3]−OR以外の基
本発明の化合物において、式(C1)中、R〜Rのうち−OR以外の基は、各々独立に、H(水素原子)、X(ハロゲン原子)又は1価の基である。
上記1価の基として、ジベンゾクリセン骨格に直接結合されたO(酸素原子)を含む1価の基が挙げられる。具体的には、ヒドロキシル基(−OH)、グリシジルエーテル基(−O−CH−CO)、−O−C2n−OHで表される基(但しn=2〜12、具体的には、−O−C−OH、−O−C−OH、−O−C−OH等}、−O−(C2n−O)−Hで表される基(但しn=2〜12、m=2〜6、具体的には、−O−(C−O−)−H、−O−(C−O−)−H、−O−(C−O−)−H等}などが挙げられる。
【0059】
更に、上記1価の基として、ジベンゾクリセン骨格に直接結合されたC(炭素原子)を含む1価の基、即ち、1価の有機基が挙げられる。具体的には、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、及びこれらのハロゲン置換基等が挙げられる。通常、これらの1価の有機基の炭素数は1〜12である。
また、上記1価の基として、ジベンゾクリセン骨格に直接結合されたN(窒素原子)を含む1価の基が挙げられる。具体的には、ニトロ基(―NO)、及び、アミノ基(−NH)等が挙げられる。
【0060】
また、上記1価の基の大きさは特に限定されないが、通常、−ORよりも小さい分子量を有する。このような1価の基は、例えば、−ORを導入する際の出発物質であるジベンゾクリセン誘導体、及び、中間化合物であるジベンゾクリセン誘導体が元から有していた基や、−OR以外の基としてジベンゾクリセン誘導体にその後に導入された基である。
【0061】
[4]化合物の利用
上記式(C1)で表される本発明のジベンゾ[g,p]クリセン骨格を有する各化合物は、単量体、硬化剤、及び架橋剤等として有用である。
とりわけ、単量体としては、重合体を得るための、重合性末端を供給する単量体や、重合性末端を供給するオリゴマー等として利用できる。本発明の各化合物は、単量体やオリゴマーとして単用してもよいし、他の重合性不飽和結合を有する単量体やオリゴマーと併用してもよい。
【0062】
上記本発明の化合物を単量体として利用した場合には、重合体の主鎖に共役縮合多環構造(ジベンゾ[g,p]クリセン骨格)を導入できる。このため、従来の汎用単量体を利用する場合に比べてガラス転移点が高く、高い耐熱性を得ることができる。また、ジベンゾ[g,p]クリセン骨格同士のスタッキングによって、熱伝導性を向上させることができる。更に、大きな共役構造を持つジベンゾ[g,p]クリセン骨格は、剛直な分子で耐熱性が高い。それにも関わらず、ねじれた構造を呈して、溶媒等に対する溶解度は比較的高い。このため、他の単量体とのブレンドが容易であり、得られる重合体の特性を制御し易い。また、ジベンゾ[g,p]クリセン骨格は、この骨格を構成する3位、6位、11位及び14位の各炭素原子が同一平面に配置されないねじれた構造を呈し、多種の光学異性体を有する。このために、上記ジベンゾ[g,p]クリセン化合物のなかから、異なる光学活性を有した化合物を併用することで、得られる重合体の靭性を向上させることができる。
【0063】
また、本発明の化合物は、ヒドロキシ末端、グリシジル末端、ビニルエーテル末端、(メタ)アクリロイル末端、これらの異なる重合特性を発揮する基を分子内に併存させた化合物とすることができる。このため、このようなジベンゾクリセン誘導体を用いた場合には、光重合、熱重合、カチオン重合、ラジカル重合など異なる重合形態を併用して重合できる。即ち、異種重合性モノマーとして利用できる。例えば、式(C1−19)〜式(C1−23)及び式(C1−25)〜式(C1−29)に含まれる化合物のうち、グリシジル末端と(メタ)アクリロイル末端との両方を有する化合物、具体的には、後述の式(C1−19a)、式(C1−21a)、式(C1−23a)、式(C1−25a)、式(C1−27a)、式(C1−29a)等の化合物は、(メタ)アクリロイル末端を用いて重合したうえで、更に、グリシジル末端を用いた硬化を行うことができる。これにより極めて緻密な硬化体(重合体)を得ることがきる。このような重合体では、上述のジベンゾクリセン骨格を有する有意性をより効果的に発揮させることができる。
【0064】
[5]本発明の重合体
本発明の重合体は、上記本発明の化合物を用いて得られたことを特徴とする。即ち、本発明の化合物は、重合に際してどのように利用してもよいが、例えば、前述のように、単量体、硬化剤、及び、架橋剤等として利用できる。
【0065】
本発明のジベンゾ[g,p]クリセン骨格を有する化合物を単量体として利用した場合には、得られる重合体の主鎖に共役縮合多環構造(ジベンゾ[g,p]クリセン骨格)を導入できる。ジベンゾ[g,p]クリセン骨格が導入された重合体は、従来の汎用単量体のみを利用して得られた重合体に比べて高いガラス転移温度を得ることができる。即ち、高い耐熱性を有する重合体とすることができる。
また、得られる重合体には、ジベンゾ[g,p]クリセン骨格同士のスタッキング構造が存在することによって、熱伝導性に優れた重合体とすることができる。
更に、ジベンゾ[g,p]クリセン骨格を有する重合体は、この骨格を構成する3位、6位、11位及び14位の各炭素原子が同一平面に配置されないねじれた構造を呈し、多種の光学異性体を有する。このために、ジベンゾ[g,p]クリセン骨格を有する本発明の化合物のなかから、異なる光学活性を有した化合物を併用することで、高い靱性の重合体を得ることができる。
【0066】
上記本発明の重合体としては、前述の各種本発明の化合物(1)と、本発明の化合物と共重合可能なそれ以外の化合物(2)と、の共重合体が挙げられる。
上記本発明の化合物と共重合可能なそれ(本発明の化合物)以外の化合物としては、例えば、脂肪族ビニル化合物、芳香族ビニル化合物、不飽和ニトリル化合物、不飽和有機酸、不飽和有機酸エステル化合物、ハロゲン化ビニル化合物等が挙げられる。
【0067】
即ち、脂肪族ビニル化合物としては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン等の直鎖状α−オレフィン、2−メチル−1−プロペン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、5−メチル−1−ヘキセン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン等の分岐状α−オレフィン、ブタジエン及びイソプレン等の共役ジエン等が挙げられる。
【0068】
芳香族ビニル化合物としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、ジイソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、ビニルベンジルジメチルアミン、ビニルベンジルジメチルアミノエタノールアミン、4−tert−ブトキシスチレン、ビニルピリジン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等が挙げられる。
【0069】
不飽和ニトリル化合物としては、アクリロニトリル及びメタクリロニトリル等が挙げられる。
不飽和有機酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸及びイタコン酸等が挙げられる。
不飽和有機酸エステル化合物としては、上記不飽和有機酸の、アルキルエステル、アルコキシエステル、ヒドロキシル基含有エステル、アミノ基含有エステル、及びアミド基含有エステル等が挙げられる。
【実施例】
【0070】
以下、実施例を挙げて、本発明の実施の形態を更に具体的に説明する。但し、本発明は、これらの実施例に何ら制約されるものではない。尚、以下では、ジベンゾ[g.p]クリセンを単に「ジベンゾクリセン」又は「DBC」という。
【0071】
また、以下におけるLC/MS分析では、液体クロマトグラフ質量分析計(Agilent Technologies社製、型式「6220 Accurate−Mass TOF LC/MS」)を用いた。LC条件として、カラムにAgilent Extend C−18(50mm×4.6mm、1.8μm)を用いた。移動相に(A)メタノール及び(B)5mMギ酸アンモニウムを用いた。グラジエントは、5分までA:B=6:4、5分から10分までA:B=10:0、更に10分から15分までA:B=10:0、その後A:B=6:4を保持した。MS条件として、イオン化モードにポジティブAPPIを用い、Vcap=3500V及びフラグメンター150Vとした。
【0072】
〈合成例1〉ヒドロキシジベンゾクリセンの製造
ジベンゾクリセンを用いて、下記スキーム(S11)に示す合成により、ジベンゾクリセンスルホン酸カルシウム塩を得た。更に、得られたジベンゾクリセンスルホン酸カルシウム塩を用いてヒドロキシジベンゾクリセンを得た(詳細は特願2012−77951に記載)。
【化33】
【0073】
(1−1);純度99.8%ジベンゾクリセン(東京化成工業株式会社製;分子量328.41)20g(0.06mol)と、95%硫酸200g(1.94mol)と、を80℃で反応させた。40℃以下に維持ながら得られた内容物に蒸留水400gを添加し、その後、45℃以下を維持しながら水酸化カルシウム154.4g(2.08mol)を添加してスラリーを得た。得られたスラリーから、ろ液(淡黄色の液体)を回収して減圧濃縮し、淡黄色粉状固体であるジベンゾクリセンスルホン酸カルシウム塩を36.5g得た(収率82.7%)。
【0074】
(1−2);85%水酸化カリウム粒14.0g(0.212mol)を熱溶融させた。続いて、上記(1−1)で得られたジベンゾクリセンスルホン酸カルシウム塩4.0g(0.0055mol)を添加して赤褐色の粘調な液体を得た。得られた液体を冷却固化したのち水溶した液体に、pH値が3(pH=3)になるまで35%塩酸を添加して褐色固体を含む内容物を得た。
【0075】
(1−3);上記(1−2)までに得られた内容物を、30gの酢酸エチルに溶解し、静置して有機相と水相とに分離させた後、有機相を分取した。回収された有機相から不溶物を除去した後、減圧濃縮して、褐色粉状固体としてヒドロキシジベンゾクリセン1.6gを得た(収率73.9%)。得られたヒドロキシジベンゾクリセンをLC/MS分析に供した結果、98%の4置換ヒドロキシジベンゾクリセンと、残部である3置換ヒドロキシジベンゾクリセンが含まれていることが確認された。
【0076】
(1−4);フーリエ変換核磁気共鳴装置(FT−NMR装置:Bruker Biospin社製、形式「AVANCE III−600 with Cryo Probe」)を用い、H−NMR及び13C−NMRの測定を行うとともに構造解析を行った。その結果、上記(1−3)までに得られた4置換ヒドロキシジベンゾクリセンには、ヒドロキシル基の位置が[3,6,11,14]、[3,6,11,15]、[3,6,10,15]、[2,7,10,14]、[2,7,10,15]、[3,7,10,14]、[3,7,11,15]である7種の異性体が認められた。
尚、FT−NMR測定における測定条件は、以下の通りである。
観測周波数; H−NMRが600MHz、13C−NMRが150MHz
測定溶媒 ; DMSO−d
測定温度 ; 300K
化学シフト基準 ; H;2.50ppm、13C;39.50ppm
【0077】
〈合成例2〉ジベンゾクリセングリシジルエーテルの製造
上記合成例1で得られたヒドロキシジベンゾクリセンを用いて下記スキーム(S12)に示す合成によってジベンゾクリセングリシジルエーテルを得た(詳細は特願2012−77951に記載)。
【化34】
【0078】
(2−1);ヒドロキシジベンゾクリセン1.0g(約0.0255mol)と、エタノール10gと、エピクロロヒドリン(関東化学株式会社製)30g(0.324mol)と、を仕込んで40℃で撹拌・混合した。内温40℃を維持しながら、先の内容物に水酸化ナトリウム粉末0.43g(0.011mol含有)を添加して溶液を得た。その後、溶媒(エタノール及びエピクロロヒドリン)を減圧除去した。次いで、溶媒が除去された内容物にメチルイソブチルケトン(MIBK)10gを添加・撹拌した後、不溶物を除去した。
【0079】
(2−2);上記(2−1)で得られた液体から溶媒を減圧除去して、黄色油状物としてジベンゾクリセングリシジルエーテル1.4g(収率82.8%)を得た。得られたジベンゾクリセングリシジルエーテルをLC/MS分析に供した結果、98%の4置換ジベンゾクリセングリシジルエーテルと、残部として3置換ジベンゾクリセングリシジルエーテルとが含まれることが確認された。
【0080】
参考例1〉ジベンゾクリセン誘導体の製造(1)
前述の合成例1で得られたヒドロキシジベンゾクリセンを用いて、下記スキーム(S13)に示す合成によって、式(C1)中のRが式(C21)で表されるジベンゾクリセン誘導体を製造した。
【化35】
【0081】
(1−1);合成例1で得られたヒドロキシジベンゾクリセン10g(0.026mol、及び、フェノチアジン(関東化学株式会社)50mgをアセトニトリル(和光純薬工業株式会社製)200gに溶解した。その後、アクリロイルクロライド(和光純薬工業製)18.5g(0.2mol)及びトリエチルアミン(関東化学株式会社製)26g(0.26molを滴下し、25℃で6時間攪拌した。その後、メタノール10gを滴下した。反応液に酢酸エチル800g、及び、蒸留水150gを加えて洗浄した。蒸留水による洗浄を2回繰り返した後、減圧下エバポレーターにより溶媒を留去した。得られた油状物をトルエン/酢酸エチル=10/1の混合溶媒を用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、減圧乾燥を行って褐色粉状固体9.8gを得た(収率62%)。
【0082】
得られた褐色粉状固体をLC/MS分析に供した結果、チャートにm/zが626.1740であるピークが認められた。この結果、生成物の分子量は608.1471(Exact Mass)と特定された(測定条件により付加されたアンモニウムイオン1分子相当を上記ピーク値から差し引いた値)。よって、スキーム(S13)に示す式(C1−12)で表される4置換化合物が確認された。
【0083】
参考例2〉ジベンゾクリセン誘導体の製造(2)
後述する合成例1で得られたヒドロキシジベンゾクリセンを用いて、下記スキーム(S14)に示す合成によって、式(C1)中のRが式(C22)で表されるジベンゾクリセン誘導体を製造した。
【化36】
【0084】
(1−1);合成例1で得られたヒドロキシジベンゾクリセン10g(0.026mol、及び、フェノチアジン(関東化学株式会社)50mgをアセトニトリル(和光純薬工業株式会社製)200gに溶解した。その後、メタクリロイルクロライド(和光純薬工業製)20.9g(0.2mol)及びトリエチルアミン(関東化学株式会社製)26g(0.26mol)を滴下し、25℃で6時間攪拌した。その後、メタノール10gを滴下し、得られた反応液に酢酸エチル800g及び蒸留水150gを加えて洗浄した。蒸留水による洗浄を2回繰り返した後、減圧下エバポレーターにて溶媒を留去した。得られた油状物をトルエン/酢酸エチル=10/1の混合溶媒を用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、減圧乾燥を行って、褐色粉状固体12.1gを得た(収率70%)。
【0085】
得られた褐色粉状固体をLC/MS分析に供した結果、チャートにm/zが682.2433であるピークが認められた。この結果、生成物の分子量は664.2097(Exact Mass)と特定された(測定条件により付加されたアンモニウムイオン1分子相当を上記ピーク値から差し引いた値)。よって、スキーム(S14)に示す式(C1−18)で表される4置換化合物が確認された。
【0086】
〈実施例〉ジベンゾクリセン誘導体の製造(3)
後述する合成例2で得られたジベンゾクリセングリシジルエーテルを用いて、下記スキーム(S15)に示す合成によって、式(C1)中のRが式(C31)で表されるジベンゾクリセン誘導体を製造した。
【化37】
【0087】
(1−1);合成例2で得られたジベンゾクリセングリシジルエーテル5.0g(0.0081mol)、フェノチアジン(関東化学株式会社)30mg、及びトリフェニルホスフィン(和光純薬工業株式会社製)60mg、をアクリル酸(関東化学株式会社製)50.0g(0.7mol)に溶解した。その後、トルエン(和光純薬工業株式会社製)100gを加え、油浴上で90℃にて10時間反応させた。得られた反応液に、酢酸エチル400g及び飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた後、酢酸エチル相を分取した。次いで、不溶解物をろ別した後、酢酸エチル相を蒸留水100gで洗浄し、更に、減圧下濃縮後、乾燥させて茶褐色固体3.5gを得た{概算収率48%(4置換体換算)}。
【0088】
得られた褐色粉状固体をLC/MS分析に供した結果、チャートにm/zが689.2324であるピークが認められた。この結果、生成物の分子量が688.2309(Exact Mass)と特定された(測定条件により付加されたプロトン相当を上記ピーク値から差し引いた値)。よって、下記式(C1−19a)で表される1置換化合物が確認された。
また、m/zが761.2550であるピークが認められた。この結果、生成物の分子量が760.2520(Exact Mass)と特定された(測定条件により付加されたプロトン相当を上記ピーク値から差し引いた値)。よって、下記式(C1−21a)等で表される2置換化合物が確認された。尚、2置換化合物には、前述の式(C1−20)、式(C1−21)及び式(C1−22)の形態で表される各異性体が含まれるものと考えられる。
【0089】
更に、m/zが833.2771であるピークが認められた。この結果、生成物の分子量が832.27(Exact Mass)と特定された(測定条件により付加されたプロトン相当を上記ピーク値から差し引いた値)。よって、下記式(C1−23a)で表される3置換化合物が確認された。
また、m/zが905.2982であるピークが認められた。この結果、生成物の分子量が904.2942(Exact Mass)と特定された(測定条件により付加されたプロトン相当を上記ピーク値から差し引いた値)。よって、下記式(C1−24)で表される4置換化合物が確認された。
【0090】
【化38】
【0091】
〈実施例〉ジベンゾクリセン誘導体の製造(4)
後述する合成例2で得られたジベンゾクリセングリシジルエーテルを用いて、下記スキーム(S16)に示す合成によって、式(C1)中のRが式(C32)で表されるジベンゾクリセン誘導体を製造した。
【化39】
【0092】
(1−1);合成例2で得られたジベンゾクリセングリシジルエーテル5.0g(0.0081mol)、フェノチアジン(関東化学株式会社)30mg及びトリフェニルホスフィン(和光純薬工業株式会社製)60mgをメタクリル酸(和光純薬工業株式会社製)60.3g(0.7mol)に溶解した後、トルエン(和光純薬工業株式会社製)100gを加えた。油浴上で90℃にて10時間反応させた。得られた反応液に、酢酸エチル400g及び飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた後、酢酸エチル相を分取した。次いで、不溶解物をろ別した後、酢酸エチル相を蒸留水100gで洗浄し、更に、減圧下濃縮後、乾燥させて茶褐色固体4.1gを得た{概算収率53%(4置換体換算)}。
【0093】
得られた褐色粉状固体をLC/MS分析に供した結果、チャートにm/zが703.2516であるピークが認められた。この結果、生成物の分子量が702.2465(Exact Mass)と特定された(測定条件により付加されたプロトン相当を上記ピーク値から差し引いた値)。よって、下記式(C1−25a)で表される1置換化合物が確認された。
また、m/zが789.2888であるピークが認められた。この結果、生成物の分子量が788.2833(Exact Mass)と特定された(測定条件により付加されたプロトン相当を上記ピーク値から差し引いた値)。よって、下記式(C1−27a)等で表される2置換化合物が確認された。尚、2置換化合物には、前述の式(C1−26)、式(C1−27)及び式(C1−28)の形態で表される各異性体が含まれるものと考えられる。
【0094】
更に、m/zが875.3271であるピークが認められた。この結果、生成物の分子量が874.3201(Exact Mass)と特定された(測定条件により付加されたプロトン相当を上記ピーク値から差し引いた値)。よって、下記式(C1−29a)で表される3置換化合物が確認された。
また、m/zが961.3716であるピークが認められた。この結果、生成物の分子量が960.3568(Exact Mass)と特定された(測定条件により付加されたプロトン相当を上記ピーク値から差し引いた値)。よって、下記式(C1−30)で表される4置換化合物が確認された。
【0095】
【化40】
【0096】
参考〉ジベンゾクリセン誘導体の製造(5)
後述する合成例1で得られたヒドロキシジベンゾクリセンを用いて、下記スキーム(S17)に示す合成によって、式(C1)中のRが式(C4)で表されるジベンゾクリセン誘導体を製造した。
【化41】
【0097】
(1−1);合成例1で得られたヒドロキシジベンゾクリセン5g(0.013mol)、アリルブロマイド(東京化成工業株式会社製)12.3g(0.10mol)をジメチルスルホキシド(和光純薬工業株式会社製)50gに溶解した。その後、水酸化ナトリウム(東ソー株式会社製 品名:東ソーパール)2.54g(0.064mol)、窒素気流下中、80℃で18時間撹拌した。反応終了後、酢酸エチル300g、及び、蒸留水80gを加えて洗浄した。蒸留水による洗浄を2回繰り返した後、減圧下エバポレーターにて溶媒を留去した。トルエンを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、減圧乾燥を行って、褐色粉状固体4.8gを得た(収率67%)。
【0098】
得られた褐色粉状固体をLC/MS分析に供した結果、チャートにm/zが553.2471であるピークが認められた。この結果、生成物の分子量は552.2301(Exact Mass)と特定された(測定条件により付加されたプロトン相当を上記ピーク値から差し引いた値)。よって、スキーム(S17)に示す式(C1−36)で表される4置換化合物が確認された。
【0099】
尚、本発明においては、上記の具体的実施例に示すものに限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。
即ち、例えば、ジベンゾクリセンをニトロ化して得られたニトロジベンゾクリセンに、触媒下でヒドラジンを作用させてアミノジベンゾクリセンを得る。更に、アミノジベンゾクリセンに、酸の存在下で亜硝酸ナトリウムを作用させて、ジベンゾクリセンのジアゾニウム塩を得る。更に、得られたジアゾニウム塩を分解することでヒドロキシジベンゾクリセンを得ることができる(特願2012−77951に記載)。このようにして、得られたヒドロキシジベンゾクリセンは、ヒドロキシル基により1置換されたヒドロキシジベンゾクリセン、及び、2置換されたヒドロキシジベンゾクリセンを主生成物とする(前述の合成例1により得られるヒドロキシジベンゾクリセンは4置換された化合物を主生成物とする)。このため、1置換及び/又は2置換されたジベンゾクリセン誘導体を目的とする場合には、上記工程により得られるヒドロキシジベンゾクリセンを利用することができる。