特許第6221085号(P6221085)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6221085ポリヒドロキシ硬化性フルオロエラストマー組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6221085
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】ポリヒドロキシ硬化性フルオロエラストマー組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/16 20060101AFI20171023BHJP
   C08L 27/18 20060101ALI20171023BHJP
   C08L 27/20 20060101ALI20171023BHJP
   C08K 5/13 20060101ALI20171023BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   C08L27/16
   C08L27/18
   C08L27/20
   C08K5/13
   C08K3/22
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-556987(P2015-556987)
(86)(22)【出願日】2014年2月4日
(65)【公表番号】特表2016-507627(P2016-507627A)
(43)【公表日】2016年3月10日
(86)【国際出願番号】US2014014583
(87)【国際公開番号】WO2014123851
(87)【国際公開日】20140814
【審査請求日】2017年1月31日
(31)【優先権主張番号】61/761,905
(32)【優先日】2013年2月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515269383
【氏名又は名称】ザ ケマーズ カンパニー エフシー リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河合 剛
【審査官】 中西 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−053842(JP,A)
【文献】 特開2003−277563(JP,A)
【文献】 特表2014−525494(JP,A)
【文献】 特表2014−505747(JP,A)
【文献】 特表2012−524156(JP,A)
【文献】 特公昭48−042553(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00−13/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)ポリヒドロキシ硬化性フルオロエラストマー;
B)ポリヒドロキシ硬化剤;及び
C)水酸化酸化γ−アルミニウムと酸化マグネシウムとを含むアニオントラップ剤の混合物、を含む、硬化性フルオロエラストマー組成物。
【請求項2】
A)フルオロエラストマー;及び
B)水酸化酸化γ−アルミニウムと酸化マグネシウムとを含むアニオントラップ剤の混合物、を含む、ポリヒドロキシ硬化フルオロエラストマー物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、i)フルオロエラストマー、ii)ポリヒドロキシ硬化剤、及びiii)水酸化酸化γ−アルミニウムと酸化マグネシウムとを含むアニオントラップ剤の混合物、を含む硬化性フルオロエラストマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
卓越した耐熱性、耐油性、及び耐薬品性を有するフルオロエラストマーは、シーリング材、容器及びホースに広く使用されている。フルオロエラストマーの例としては、フッ化ビニリデン(VF2)の単位と、少なくとも1つのその他の共重合性フッ素含有モノマーの単位(例えば、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、テトラフルオロエチレン(TFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、フッ化ビニル(VF)、及びパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)のようなフルオロビニルエーテルの単位)とを含むコポリマーが挙げられる。PAVEの具体例としては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)及びパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)が挙げられる。その他のフルオロエラストマーとしては、TFEの単位とパーフルオロ(メチルビニルエーテル)の単位とを含むコポリマーが挙げられる。
【0003】
引張強度、伸び、及び圧縮永久ひずみ等の物理的特性を完全に発現させるためには、エラストマーを硬化、即ち、加硫又は架橋しなければならない。フルオロエラストマーの場合、これは一般的に、未硬化ポリマー(即ち、フルオロエラストマーゴム)を多官能硬化剤と混合し、得られた混合物を加熱し、それによって硬化剤とポリマー主鎖又は側鎖に沿った活性部位との化学反応を促進することによって実施される。この化学反応の結果生成する鎖間結合により、三次元網目構造を有する架橋ポリマー組成物が形成される。ポリヒドロキシ化合物は、フルオロエラストマーの硬化剤として一般的に用いられる。かかる求核性硬化剤は、活性化されるために酸受容体(例えば、二価の金属酸化物及び/又は二価の金属水酸化物)を必要とする。
【0004】
しかし、酸受容体を含有する硬化フルオロエラストマー物品は、許容できないほど高い体積膨潤度を示す場合があり、その結果、物品は、硫酸のようなはるかに強い鉱酸に対して卓越した耐性を有するにもかかわらず、酢酸のようなカルボン酸に曝露されたときにシール不良を生じ得る。カルボン酸への曝露は、化学工業用途及び自動車用途(例えば、排気再循環(EGR)システム及びバイオ燃料管理システム)等の様々な最終用途で起こり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カルボン酸への曝露によるポリヒドロキシ硬化フルオロエラストマー物品の体積膨潤及び表面損傷は、物品から金属酸化物及び金属水酸化物の量を低減するか又はなくすことによって少なくなる場合がある。ただし、かかる物品の硬化速度は大幅に低減される。したがって、短時間で硬化し、なおかつカルボン酸に曝露したときに体積膨潤に耐えるポリヒドロキシ硬化性フルオロエラストマー組成物が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様において、本発明は、
A)ポリヒドロキシ硬化性フルオロエラストマー;
B)ポリヒドロキシ硬化剤;及び
C)水酸化酸化γ−アルミニウムと酸化マグネシウムとを含むアニオントラップ剤の混合物、を含む、硬化性フルオロエラストマー組成物を提供する。
【0007】
別の態様によると、本発明は、
A)フルオロエラストマー;及び
B)水酸化酸化γ−アルミニウムと酸化マグネシウムとを含むアニオントラップ剤の混合物、を含む、ポリヒドロキシ硬化フルオロエラストマー物品を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、ポリヒドロキシ硬化剤で硬化したときに、カルボン酸(例えば、自動車のブローバイガス凝縮物又は排ガス凝縮物)中並びに冷却剤及びバイオ燃料中での体積膨潤が低減される硬化性フルオロエラストマー組成物に関する。このような硬化フルオロエラストマー物品は、硫酸/硝酸/酢酸/ギ酸の酸濃縮物に、2500ppm/50ppm/10ppm/1000ppm/300ppmの割合で、60℃で336時間曝露したときに、驚くほど低い体積膨潤度、即ち、10体積%未満、好ましくは5体積%未満の体積膨潤度を有する。硬化フルオロエラストマー組成物は、化学工業用途並びに排気再循環(EGR)システム及びバイオ燃料管理システムのような自動車用途等の様々な最終用途を有する。
【0009】
本発明への使用に好適なフルオロエラストマーは、ポリヒドロキシ硬化性のものである。「ポリヒドロキシ硬化性」は、ビスフェノールAF等のポリヒドロキシ硬化剤で架橋することが知られているフルオロエストマーを意味する。このようなフルオロエラストマーとしては、エラストマーポリマー主鎖に沿って複数の炭素−炭素二重結合を有するもの、並びに容易に脱フッ化水素され得る部位を含有するフルオロエラストマーも挙げられる。後者のフルオロエラストマーとしては、限定するものではないが、フッ化ビニリデン(VF2)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)との隣接共重合単位を有するもの、並びにVF2(又はテトラフルオロエチレン)と酸性水素原子を有するフッ素化コモノマー(2−ヒドロペンタフルオロプロピレン;1−ヒドロペンタフルオロプロピレン;トリフルオロエチレン;2,3,3,3−テトラフルオロプロペン;又は3,3,3−トリフルオロプロペン等)との隣接共重合単位を有するフルオロエラストマーが含まれる。好ましいポリヒドロキシ硬化性フルオロエラストマーとしては、i)フッ化ビニリデンと、ヘキサフルオロプロピレン、及び場合によって、テトラフルオロエチレン(TFE)とのコポリマー;ii)フッ化ビニリデンと、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)等のパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、2−ヒドロペンタフルオロプロピレン及び場合によって、テトラフルオロエチレンとのコポリマー;iii)テトラフルオロエチレンと、プロピレン及び3,3,3−トリフルオロプロペンとのコポリマー;iv)テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)及びヘキサフルオロ−2−(ペンタフルオロフェノキシ)−1−(トリフルオロビニルオキシ)プロパンのコポリマー、並びにv)エチレンと、テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)及び3,3,3−トリフルオロプロピレンとのコポリマーが含まれる。
【0010】
フルオロエラストマーに加えて、本発明のポリヒドロキシ硬化性組成物は、ポリヒドロキシ硬化剤及び任意追加的に加硫(又は硬化)促進剤を含有する。
【0011】
硬化性組成物は、フルオロエラストマー100重量部当たり0.4〜4重量部(好ましくは1〜2.5部)、即ち、0.4〜4phr(好ましくは1〜2.5phr)のポリヒドロキシ硬化剤(又はその誘導体)を含有する。典型的なポリヒドロキシ架橋剤としては、ジ−、トリ−、及びテトラヒドロキシベンゼン、ナフタレン、及びアントラセン、並びに式
【化1】
のビスフェノールが挙げられ、式中、Aは、1〜13個の炭素原子の二官能性の脂肪族、脂環式若しくは芳香族基、又はチオ、オキシ、カルボニル、スルフィニル若しくはスルホニル基であり;Aは、少なくとも1個の塩素又はフッ素原子で任意追加的に置換されていてもよく;xは、0又は1であり;nは、1又は2であり;このポリヒドロキシ化合物の任意の芳香族環は、少なくとも1個の塩素若しくはフッ素原子、アミノ基、−CHO基、又はカルボキシル若しくはアシル基で任意追加的に置換されていてもよい。好ましいポリヒドロキシ化合物としては、ヘキサフルオロイソプロピリデン−ビス(4−ヒドロキシ−ベンゼン)(即ち、ビスフェノールAF又はBPAF);4,4'−イソプロピリデンジフェノール(即ち、ビスフェノールA);4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン;及びジアミノビスフェノールAFが含まれる。上記のビスフェノールの式を参照すると、Aがアルキレンである場合、Aは、例えば、メチレン、エチレン、クロロエチレン、フルオロエチレン、ジフルオロエチレン、プロピリデン、イソプロピリデン、トリブチリデン、ヘプタクロロブチリデン、ヘプタフルオロブチリデン、ペンチリデン、ヘキシリデン、及び1,1−シクロヘキシリデンであることができる。Aがシクロアルキレン基である場合、Aは、例えば、1,4−シクロヘキシレン、2−クロロ−1,4−シクロヘキシレン、シクロペンチレン、又は2−フルオロ−1,4−シクロヘキシレンであることができる。更に、Aは、m−フェニレン、p−フェニレン、o−フェニレン、メチルフェニレン、ジメチルフェニレン、1,4−ナフチレン、3−フルオロ−1,4−ナフチレン、及び2,6−ナフチレン等のアリーレン基であることができる。式
【化2】
のポリヒドロキシフェノール(式中、Rは、H、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基若しくは6〜10個の炭素原子を有するアリール基であり、R'は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基である)も、有効な架橋剤として作用する。このような化合物の例としては、ヒドロキノン、カテコール、レゾルシノール、2−メチルレゾルシノール、5−メチル−レゾルシノール、2−メチルヒドロキノン、2,5−ジメチルヒドロキノン、2−t−ブチル−ヒドロキノン;並びに1,5−ジヒドロキシナフタレン及び2,6−ジヒドロキシナフタレンの等の化合物が含まれる。
【0012】
さらなるポリヒドロキシ硬化剤としては、ビスフェノールアニオンのアルカリ金属塩、ビスフェノールアニオンの四級アンモニウム塩、ビスフェノールアニオンの三級スルホニウム塩及びビスフェノールアニオンの四級ホスホニウム塩が挙げられる。具体例としては、ビスフェノールAFの二ナトリウム塩、ビスフェノールAFの二カリウム塩、ビスフェノールAFの一ナトリウム一カリウム塩、及びビスフェノールAFのベンジルトリフェニルホスホニウム塩が挙げられる。
【0013】
ビスフェノールアニオンの四級アンモニウム及びホスホニウム塩は、米国特許第4,957,975号及び同第5,648,429号で考察されている。ビスフェノールAFと、式R1234+四級アンモニウムイオンとの塩(モル比1:1)が好ましく、式中、R1〜R4はC1〜C8アルキル基であり、R1〜R4の少なくとも3個はC3又はC4アルキル基である。これらの好ましい組成物の具体例としては、テトラプロピルアンモニウム−、メチルトリブチルアンモニウム−及びテトラブチルアンモニウム−ビスフェノールAFのモル比1:1の塩が挙げられる。このような塩は、様々な方法で作製され得る。例えば、ビスフェノールAFのメタノール溶液を、四級アンモニウム塩のメタノール溶液と混合してもよく、次いで、pHを、ナトリウムメトキシドで上昇させて、無機ナトリウム塩を沈殿させる。濾過後、メタノールを蒸発させることによって溶液からテトラアルキルアンモニウム/BPAF塩を単離してもよい。あるいは、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシドのメタノール溶液を四級アンモニウム塩の溶液の代わりに用いて、無機塩の沈殿及び溶液の蒸発前のその除去の必要性をなくしてもよい。
【0014】
更に、モノ−又はジエステル等の誘導体化ポリヒドロキシ化合物、及びトリメチルシリルエーテルは、有用な架橋剤である。このような組成物の例としては、限定するものではないが、レゾルシノールモノベンゾエート、ビスフェノールAFのジアセテート、スルホニルジフェノールのジアセテート、及びヒドロキノンのジアセテートが挙げられる。
【0015】
硬化性フルオロエラストマー組成物に使用してもよい加硫促進剤(硬化促進剤とも呼ばれる)としては、[(C652+(C613)][Cl]-、及び[(C6132S(C65)]+[CH3CO2-のような三級スルホニウム塩、及び式R5678+-の四級アンモニウム、ホスホニウム、アルソニウム、及びスチボニウム塩(式中、Yは、リン、窒素、ヒ素、又はアンチモンであり;R5、R6、R7、及びR8は独立に、C1〜C20アルキル、アリール、アラルキル、アルケニル、並びにそれらの塩素、フッ素、臭素、シアノ、−OR、及び−COOR置換類似体(RはC1〜C20アルキル、アリール、アラルキル、アルケニルである)であり、Xは、ハライド、ヒドロキシド、サルフェート、サルファイト、カーボネート、ペンタクロロチオフェノーラート、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロシリケート、ヘキサフルオロホスフェート、ジメチルホスフェート、並びにC1〜C20アルキル、アリール、アラルキル、及びアルケニルカルボキシレート及びジカルボキシレートである)が挙げられる。特に好ましいのは、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、ベンジルトリフェニルホスホニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムサルフェート、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムブロミド、トリブチルアリルホスホニウムクロライド、トリブチル−2−メトキシプロピルホスホニウムクロライド、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、及びベンジルジフェニル(ジメチルアミノ)ホスホニウムクロライドである。他の有用な促進剤としては、メチルトリオクチルアンモニウムクロライド、メチルトリブチルアンモニウムクロライド、テトラプロピルアンモニウムクロライド、ベンジルトリオクチルホスホニウムブロミド、ベンジルトリオクチルホスホニウムクロライド、メチルトリオクチルホスホニウムアセテート、テトラオクチルホスホニウムブロミド、メチルトリフェニルアルソニウムテトラフルオロボレート、テト
ラフェニルスチボニウムブロミド、4−クロロベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)−7−ウンデセノニウムクロライド、ジフェニルメチルトリフェニルホスホニウムクロライド、アリルトリフェニルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムブロミド、m−トリフルオロメチルベンジルトリオクチルホスホニウムクロライド、並びに米国特許第5,591,804号;同第4,912,171号;同第4,882,390号;同第4,259,463号;同第4,250,278号及び同第3,876,654号に開示された他の四級化合物が挙げられる。使用する促進剤の量は、フルオロエラストマー100重量部当たり0.05〜2重量部(即ち、0.05〜2phr)である。好ましくは、フルオロエラストマー100部当たり0.1〜1.0部の促進剤が使用される。
【0016】
本発明の硬化性組成物は、フルオロエラストマー100重量部当たり1〜25重量部、好ましくは2〜15重量部の、水酸化酸化γ−アルミニウム(即ち、ベーマイト)と酸化マグネシウムとを含むアニオントラップ剤の混合物も含有する。前記アニオントラップ剤中の水酸化酸化γ−アルミニウム混合物の量は、フルオロエラストマー100重量部当たり0.75〜20重量部、好ましくは1.5〜10重量部の範囲である。
【0017】
このアニオントラップ剤の混合物において、酸化マグネシウムは、硬化(架橋)反応を促進するための酸受容体として、及びHF又はカルボン酸等の任意の酸性物質を捕捉するためのアニオントラップ剤としての両方として作用する。水酸化酸化γ−アルミニウムは、任意の酸性物質、好ましくはカルボン酸を捕捉するためのアニオントラップ剤として作用するが、フルオロエラストマー硬化速度に有意な影響を与えない。好適な水酸化酸化γ−アルミニウム化合物としては、限定するものではないが、式AlO(OH)で約20マイクロメートルの平均粒径、約270m2/gのBET比表面積、及び約4.5nmの平均孔径を有するものが挙げられる。かかる化合物は、Nippon Light Metal Company Ltd.からC10Wとして市販されている。
【0018】
フルオロエラストマー、硬化剤、アニオントラップ剤及び任意の他の成分(例えば、充填剤、加工助剤、着色剤等の、フルオロエラストマー組成物に一般的に使用される成分)は、一般的に、内部ミキサー又はゴムミルによって硬化性組成物に取り込まれる。
【0019】
次いで、得られた組成物を、成形(例えば、型成形又は押出成形)及び硬化して、フッ素ゴム物品を形成してもよい。硬化は、典型的には約150℃〜200℃で1〜60分間行われる。適切な加熱及び硬化手段を備えた従来のゴム硬化プレス、型、押出機等を使用できる。更に、最適な物理的特性及び寸法安定性のために、後硬化操作を行うことが好ましく、この操作では、型成形又は押出成形されたフッ素ゴム物品を、オーブン等の中で更に約1〜48時間、典型的には約180℃〜275℃で、一般的に空気雰囲気において、加熱する。
【0020】
本発明の別の態様は、上記の硬化性組成物から作製された硬化フルオロエラストマー物品である。このような硬化フルオロエラストマー物品は、硫酸/硝酸/酢酸/ギ酸の酸濃縮物に、2500ppm/50ppm/10ppm/1000ppm/300ppmの割合で、60℃で336時間曝露したときに、低い体積膨潤度、即ち、10体積%未満、好ましくは5体積%未満の体積膨潤度を有する。この硬化フルオロエラストマー物品は、化学工業用途並びに排気再循環(EGR)システム及びバイオ燃料管理システムのような自動車用途等の様々な最終用途を有する。
【実施例】
【0021】
試験方法
硫酸/硝酸/酢酸/ギ酸の酸濃縮物に、2500ppm/50ppm/10ppm/1000ppm/300ppmの割合で、60℃で浸漬した後の体積膨潤度(%)は、標準ASTM D471クーポンでASTM D471−96により決定した。このクーポンは、硬化フルオロエラストマースラブから調製し、密封Parr容器内で、酸濃縮物に、60℃にて実施例に記載の時間浸漬した。
【0022】
硬化速度及び硬化率のムービングダイレオメトリー(MDR)試験は、JIS K6300−2:2001に従って、温度177℃で12分間、0.5°の弧にて実施した。
【0023】
機械特性は、JIS K6251:2004に従って、25℃で測定した。
【0024】
圧縮永久ひずみは、JIS K6262:2006に従って、200℃、70時間、大粒ペレットで測定した。
【0025】
材料
実施例に用いたフルオロエラストマーFKM1は、DuPontから入手可能な、Viton(登録商標)AL−600(フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン及びテトラフルオロエチレンのコポリマー)であった。
【0026】
使用した硬化剤は、DuPontから入手可能な、VC50(ビスフェノールAFと四級ホスホニウム塩との混合物)であった。
【0027】
使用した水酸化酸化γ−アルミニウムは、Nippon Light Metal Company Ltd.から入手可能な、ベーマイトC10Wであった。
【0028】
使用したカーボンブラックは、Asahi Carbon Company Limitedから入手可能な、MTグレードのカーボンブラックであった。
【0029】
使用した米ぬかワックス加工助剤は、DuPontから入手可能な、VPA#2であった。
【0030】
使用した酸化マグネシウムは、Kyowa Chemicalから入手可能な、MgO#150であった。
【0031】
使用した水酸化カルシウムは、Ohmi Chemical製であった。
【0032】
本発明は更に以下の実施例で例証されるが、これらに限定するものではない。
【0033】
実施例1及び比較例1〜4
実施例1(E1)及び比較例1〜4(CE1〜CE4)のための硬化性組成物は、実験用内部ミキサー及びシートオフミル中で成分を配合することによって作製した。処方を、表Iに示す。
【0034】
組成物を、スラブ(体積膨潤度試験用)及びペレット状に型成形し、177℃で10分間プレス硬化した。
【0035】
硬化スラブから作製したクーポンを、硫酸/硝酸/酢酸/ギ酸の酸濃縮物の混合物に、2500ppm/250ppm/10ppm/1000ppm/300ppmの割合で、60℃で、表示時間にわたって曝露した。結果を表Iに示す。
【0036】
【表1】
【0037】
MgOとベーマイトの両方を含有する本発明の組成物(E1)は、酸濃縮物中で低い体積膨潤度、速い硬化速度(Tc90(最大トルクの90%に達する時間)によって測定)及び硬化度(最大トルク、MH)の最適なバランスを示した。比較例CE1〜CE4は、高い体積膨潤度、遅い硬化速度又は低い硬化度に悩まされた。