(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記スリーブは、前記底部寄りの部分の内周面に前記可動磁極の摺動方向と平行に延びる溝が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のソレノイド。
【背景技術】
【0002】
ソレノイドにおいては、スプール弁などのストローク長が長い弁において使用されるものがある。このような弁において使用するソレノイドも、当然ながらそのストローク長を長くする必要がある。このようなソレノイドにおいて、ストロークの全長に渡って必要となる推力を確保し、さらに可動磁極の軸ずれや傾きを防止しようとすると、ストローク長が短いソレノイドよりも構造が複雑になりやすく、小型化の困難性が高くなる。以下に、ストローク長が長いソレノイドの小型化を図った発明について説明する。
【0003】
図14は、従来技術に係るソレノイドの構造を示す断面図である。
図14において、100は電磁弁、101は可動磁極、102は固定磁極、103はテーパ部、104は蓋部、105は固定磁極部、106は補助磁極部、107はシャフト、108は摺動空間、109、110及び111はスプール、112はケース、113はOリング、114はコイル、115はボビン、116はOリングである。
【0004】
図14は、特開2006−194351公報において開示されている発明である。この発明のソレノイドは、3つのスプール109、110及び111を設けた電磁弁100に組み込まれている。コイル114に通電することによって、固定磁極102、ケース112、蓋部104、固定磁極部105、補助磁極部106を巡る磁気回路が生成され、可動磁極101が固定磁極102に吸引されて摺動する。さらに、可動磁極101の中心軸方向の貫通孔にシャフト107が嵌合されており、可動磁極101の摺動に伴ってスプール109、110及び111を摺動させる。以上の構造において、シャフト107のスプール109と反対側の部分は、固定磁極部105に形成した孔に挿入されている。シャフト107の挿入されている部分は、コイル114に通電したときに、固定磁極部105の孔の内部を摺動する。以上のように構造することによって、シャフト106が固定磁極部105に支持されるので、別途軸受を設ける必要がなく、小型化を図りやすくなると共に、可動磁極101の軸ずれも防止できるようになっている。また、シャフト106が固定磁極部105の孔に挿入されているので、挿入されている部分の長さだけ、電磁弁100の長さを短縮することができるようにしている。
【0005】
しかし、以上のソレノイドの構造をシャフト106の軸方向だけでなく、径方向も含めて小型化を図る場合には、シャフト106が固定磁極部105の孔に挿入することが固定磁極部105の軸方向の長さ及び径を小さくする上で障害となる。また、固定磁極部105の孔で支持する構造に代えて補助磁極部106の内部にドライブッシュを嵌合することも考えられる。しかし、ドライブッシュは2〜3mmの肉厚があるので、少なくともこの肉厚の分だけ可動磁極101の径を小さくする、又は、補助磁極部106の肉厚を削ることが必要になる。可動磁極101の径を小さくする、又は、補助磁極部106の肉厚を削ると磁気抵抗が大きくなるなどして、推力の低下を招くので好ましくない。さらに、補助磁極部106の肉厚を削る場合には、固定磁極102テーパ部103の肉厚もかなり薄くなるので、この部分の磁気抵抗も大きくなる。くわえて、ボビン115の周囲から作動油が漏出することを防止するために設けているOリング113又は116も、いずれかを省略できれば構造が簡素になって小型化が容易になるが、磁極の周辺への作動油の漏出を防止することが難しくなる。いずれにせよ、ストローク長が長いソレノイドの機能性や信頼性を低下させずに小型化を図ることは容易でない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために、油圧などの液圧回路に設ける弁の開閉に使用され、かつ、ストロークが長いソレノイドにおいて、構造を簡素化して小型化を容易にしたソレノイドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、筒形状に形成されると共に、第1の開口部及び第2の開口部を備えたケースと、前記ケースの前記第1の開口部側に配置されると共に、前記第2の開口部側に向かって開口している筒状部を備え、該筒状部の内周面の一部又は全部が前記開口部に向かって開口径が漸次大きくなるような円錐台形状に形成された固定磁極と、略有底円筒形状に形成され、かつ、開口部が前記固定磁極の前記開口部に対向するように形成された補助磁極部と、該補助磁極部の底部近傍の周側面から張り出すように形成されると共に前記ケースの前記第2の開口部を閉止する鍔状部とを備えた蓋と、略有底円筒形状に、かつ、開口部寄りの部分が底部寄りの部分よりも径が大きくなるように形成されると共に、前記底部寄りの部分が前記補助磁極部の内部に挿入され、前記開口部寄りの部分の内部に前記筒状部が挿入されているスリーブと、略円柱形状に形成されると共に前記スリーブの内部を摺動可能に設けられた本体部と、略円錐台形状に形成されると共に前記固定磁極の円錐台形状に形成された前記内周面に対向し、かつ、円錐台形状に形成された対向部とを備えた可動磁極とを有することを特徴とするソレノイドである。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記スリーブは、前記補助磁極部の前記底部と対向している部分が前記補助磁極部の前記底部の内側面と接するように配置されていることを特徴とするソレノイドである。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記スリーブは、前記底部寄りの部分の外周面が前記補助磁極部の内周面とに接すると共に、前記開口部寄りの部分の内周面が前記筒状部の外周面に接するように配置されていることを特徴とするソレノイドである。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記固定磁極は、前記筒状部の外周面に環状溝が形成され、前記筒状部の前記環状溝に装着されたOリングをさらに有することを特徴とするソレノイドである。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の発明において、前記固定磁極は、前記筒状部から張り出すように形成されると共に前記ケースの前記第1の開口部を閉止する鍔状部を備え、前記スリーブは、前記開口部側の端部が前記ケースの前記鍔状部と離隔するように形成されていることを特徴とするソレノイドである。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の発明において、前記スリーブは、前記底部寄りの部分の内周面に前記可動磁極の摺動方向と平行に延びる溝が形成されていることを特徴とするソレノイドである。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の発明において、前記固定磁極は、前記可動磁極の摺動方向に沿って内部を貫通する貫通孔が形成され、前記可動磁極は、摺動方向に沿って前記可動磁極の前記本体部及び前記突出部を貫通する貫通孔が形成され、先端寄りの部分が前記固定磁極の貫通孔に挿通され、基端寄りの部分が前記可動磁極の前記貫通孔に嵌合されると共に、基端部近傍が前記可動磁極の前記貫通孔から僅かに突出しているシャフトをさらに有することを特徴とするソレノイドである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、スリーブを有底円筒形状にし、さらに底部寄りの部分が補助磁極部の内部に挿入され、開口部寄りの部分の内部に固定磁極の筒状部が挿入される構成にしたことによって、例えば肉厚を0.2〜0.4mmと相当薄くすることが可能なスリーブによって可動磁極の摺動を支持するので、ドライブッシュを設ける必要がなく、ソレノイドの径方向における小型化が容易になる。さらに、作動油などの液体が補助磁極部又は鍔状部の表面を伝ってケースの内部に拡がる、あるいは、ケースの外部に漏出することを防止できるので、補助磁極部又は鍔状部の周辺にOリングを設ける必要がなく、構造を簡素化できる。ひいては、ソレノイドの小型化も容易になる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、スリーブの補助磁極部の底部と対向している部分が補助磁極部の底板部の内側面と接するようにしたので、この補助磁極部の底板部と対向している部分が可動磁極又はシャフトが衝突することによって次第に変形して行くことを防止できる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、スリーブの底部寄りの部分の外周面が補助磁極部の内周面に接し、開口部寄りの部分の内周面が固定磁極の筒状部の外周面に接しているので、固定磁極及び蓋の補助磁極部にスリーブの中心軸を精確に合わせることができ、可動磁極の軸ずれを防止できる。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、スリーブと固定磁極との間から作動油等の液体が漏出することを防止できる。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、固定磁極若しくはスリーブ、又は他の構成部品の寸法精度が高くない場合でも、組立時に固定磁極の鍔状部とスリーブと開口部側の端部とが衝突してスリーブが変形することを防止できる。よって、スリーブの肉厚を衝突による変形を考慮せずに薄くすることができ、ひいては、ソレノイドの小型化が容易になる。
【0020】
請求項6に記載の発明によれば、可動磁極の摺動時に、スリーブの溝が油路などの液圧回路とスリーブの底部と可動磁極との間隙との差圧の調整を促進するので、小型化するときに低下しやすい動作性を確保することができる。
【0021】
請求項7に記載の発明によれば、シャフトの突出部が可動磁極のスリーブの底部への張り付くことを防止する。よって、別途スペーサを設ける必要がなく、小型化が容易になる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
まず、本発明の第1の実施の形態に係るソレノイドについて説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るソレノイドの通電状態を示す断面図である。
図1において、10はソレノイド、20はスリーブ、21は径大部、22は径小部、23は底部、24は段差部、25は誘い込み部、30は可動磁極、31は本体部、32は対向部、33及び34は連通用溝、40はシャフト、42は基端側部分、43は突出部、50は固定磁極、51筒状部、53は嵌合部、54は鍔状部、55は突出部、56は貫通孔、60は蓋、61は補助磁極部、62は鍔状部、66はボビン、67及び68は鍔部、71及び72は端子金具、73はOリング、75はコイル、76は封止樹脂、80はケース、81は嵌合受け部、82は肉薄部、83はかしめ部である。また、
図2は、本発明の第1の実施の形態に係るソレノイドの非通電状態を示す断面図である。
図2において、38及び52は円錐台面、74はスペーサであり、その他の符号は
図1と同じものを示す。
【0024】
まず、ソレノイド10の概要について説明する。本発明の第1の実施の形態に係るソレノイド10は、主として油圧回路で使用する弁に装着される直動型のソレノイドである。すなわち、ソレノイド10は、
図1に示すように、可動磁極30が固定磁極50に吸引されることによって、シャフト40を突出して弁体などを摺動させるものである。すなわち、可動磁極30は、コイル75に通電すると、固定磁極50、ケース80、補助磁極部61を含む蓋60、可動磁極30を巡る磁束の流れによって固定磁極50とのエアギャップを埋めるように摺動する。コイル75への通電を停止すると、ソレノイド10の外部に設けられている図示していないスプリングによって、可動磁極30が固定磁極50から離間するように摺動して、
図2に示す状態となる。また、ストローク長を長くするために、可動磁極30の対向部32と固定磁極50の筒状部51とをそれぞれ鋭角な凸状の円錐台形状と深い凹状の円錐台形状にしており、これらの対向部の中心軸は共通している。さらに、ソレノイド10は、可動磁極30の軸受けとしてスリーブ20を設けている。スリーブ20には、可動磁極30が内部に挿入されていると共に、固定磁極50の筒状部51も挿入されている。また、スリーブ20の径大部21と固定磁極50の筒状部51との間には、Oリング固定磁極50の貫通孔からを収納している。なお、ソレノイド10は、水圧回路などの油圧以外の液圧回路において使用してもよい。
【0025】
次に、ソレノイド10の各構成部品について説明する。
図3は、本発明の第1の実施の形態に係るスリーブの断面図である。
図3において用いた符号は、すべて
図1と同じものを示す。
【0026】
スリーブ20は、ステンレス鋼から形成されており、全体を略有底円筒形形状としている。この実施の形態では、肉厚を0.4mmとしている。なお、この肉厚はソレノイドの大きさに応じて適宜設定することができ、例えば0.2mmや、1.0mmなどとしてもよい。また、
図3に示すように、開口部寄りの部分である径大部21は、底部23寄りの部分である径小部22よりも径が大きく、これらの間の部分は短い円錐台形状の段差部24となっている。径大部21は、ソレノイド10を組み立てた状態において、
図1及び
図2に示すように、内部に固定磁極50の筒状部51が挿入されて互いに接した状態となる。また、径大部21と筒状部51との間にはOリング73が設けられており、固定磁極50の貫通孔56を介してスリーブ20の内部に浸入した作動油が径大部21と筒状部51との間から浸出することを防止している。なお、径大部21と径小部22とは絞り加工によって形成する。さらに、開口部には、
図3に示すように、誘い込み部25が形成されている。誘い込み部25は、中心軸に対して非常に短い円錐台形状に形成されており、これによってスリーブ20の開口部がごく短いラッパのような形状を呈している。ソレノイド10を組み立てる際には筒状部51を径大部21に挿入する必要があるが、誘い込み部25を設けることによって、筒状部51の端面に開口部が引っ掛かることなくスムーズに挿入できる効果がある。くわえて、後述するように、組立工程においてOリング73を破損させることを防止する効果もある。
【0027】
スリーブ20の径小部22及び底部23は、
図1及び
図2に示すように、ソレノイド10を組み立てた状態において、補助磁極部61に接した状態となる。前述のように、径大部21は筒状部51に接しており、スリーブ20はこれらの磁極に接した状態で配置されている。後述するように、蓋60及び固定磁極50はケース80に対して嵌合されているので、これらのものは正確に配置される。したがって、蓋60及び固定磁極50によって配置が決定されるスリーブ20も、その中心軸が本来設置されるべき位置からずれる、又は、スリーブ20の中心軸が本来の設置されるべき方向に対して傾くことなく正確に配置できる。したがって、スリーブ20の内部を摺動する可動磁極30も中心軸のずれがなく、ひいては可動磁極30に固定されているシャフト40の中心軸にもずれがなく、精度が高いソレノイドを提供することが可能になる。
【0028】
さらに、底部23が補助磁極部61に接しているので、ソレノイド10を長期間使用することによる底部23の変形を防止できる。すなわち、コイル75への通電を停止すると、
図2に示すように、シャフト40の突出部43は図示していないスプリングの弾発力によって底部23に軽い衝撃が加わる。底部23の肉厚は0.4mmと非常に薄いので、この衝撃を底部23だけで受けると、長期間使用している間に変形したり破断したりすることが考えられる。この実施の形態では、底部23が補助磁極部61の底部と接しており、底部23が補助磁極部61の底部によって支持されるので、この衝撃を受けても底部23の変形を防止できる。段差部24は、補助磁極部61と筒状部51とのいずれに対してもある程度の間隙を保てる部位に形成されている。これは、例えば筒状部51に対して接するほどに近い位置に形成すると、スリーブ20の寸法のばらつきが比較的大きい場合、段差部24に対して筒状部51が引っ掛かり、筒状部51を径大部21に挿入することを阻害する可能性があることによる。
【0029】
以上のように、この実施の形態では、スリーブ20が可動磁極の摺動を支持するので、ドライブッシュやドライベアリングを設ける必要がなく、ソレノイド10の径を2mm乃至3mmを小さくすることができる。また、ソレノイド10を組み立てた状態においてスリーブ20の中心軸がずれを生じることがなく、スリーブ20に摺動可能な状態で支持される可動磁極30と、可動磁極30と一体のシャフト40の中心軸もずれを生じることなく、かつ、傾くこともない。さらに、スリーブ20に底部23を設けているので、作動油が蓋60の補助磁極部61又は鍔状部62の表面を伝ってケース80内の各部に浸潤する、あるいは、ケース80の外部に漏出することを防止できるので、補助磁極部61又は鍔状部62の周辺にOリングを設ける必要がなく、構造を簡素化できる。ひいては、ソレノイド10自体の小型化も容易になる。
【0030】
次に、可動磁極について説明する。
図4は、本発明の第1の実施の形態に係る可動磁極を示す図であり、(a)は断面図、(b)は平面図である。
図4において、35は貫通孔、36及び37はかしめ溝、38は円錐台面、39は上端面であり、その他の符号は
図1と同じものを示す。
【0031】
可動磁極30は、略円柱形状に形成した本体部31から対向部32が固定磁極50の筒状部51に向かって突出するように延びている。また、可動磁極30は、本体部31と対向部32とを中心軸に沿って貫通する貫通孔35が形成されている。さらに、貫通孔35の上下の開口部の周辺には、かしめによってシャフト40を固定するためのかしめ溝36及び37が環状に形成されている。対向部32は、略円錐台形状に形成されており、シャフト40のストローク長をできる限り長くするために、筒状部51に向かって鋭角に形成されている。また、対向部32の円錐台面38は、可動磁極30の中心軸に対する傾斜角度が固定磁極50の筒状部51の傾斜角度と同一となるように形成されており、対向部32と筒状部51とが接近したときには、多くの磁束が中心軸に対して直交する方向、又は、これに近い方向に流れる。なお、後述するスペーサ74を設けていることによって、可動磁極30が固定磁極50に最も接近したときにおいても、対向部32と筒状部51とが当接することはない。
【0032】
本体部31は、
図1及び
図2に示すように、その周側面側が補助磁極部61に囲まれている。本体部31と補助磁極部61とは、肉厚0.4mmのスリーブ20を介して非常に接近した状態に配置されているので、ドライブッシュを軸受とする従来技術に係るソレノイドよりも両者の間の磁気抵抗が非常に小さくなり、磁気効率が大幅に改善できる。したがって、シャフトの推力がほぼ同等な従来技術に係るソレノイドよりも小型化が容易になる。また、本体部31の周側面は、
図4に示すように、中心軸と平行に連通用溝33及び34が形成されている。連通用溝33及び34は、本体部31の上端面39とスリーブ20の底部23との間隙とシャフト側の空間とを連通して作動油を流通させるものである。なお、ソレノイド10が比較的大型のものである場合には、スリーブ20の肉厚も例えば1.0mmとなる。そこで、可動磁極30には連通用溝33及び34を形成せず、スリーブ20の内周面にスリーブ20の中心軸に沿って1本又は複数本の溝を形成してもよい。なお、この溝は、径小部22だけに形成してもよいが、径小部22から段差部24まで、あるいは、径小部22から径大部21してもよい。
【0033】
続けて、シャフトについて説明する。
図5は、可動磁極とシャフトとを一体にした状態の断面図である。
図5において、41は先端側部分であり、その他の符号は
図2及び
図4と同じものを示す。
【0034】
図5に示すように、この実施の形態に係るシャフト40は、基端側部分42が可動磁極30の貫通孔35に挿入されており、この状態で貫通孔35の上下の開口部とかしめ溝36及び37と間の部分をかしめることによって可動磁極30に固定されている。また、ストローク長が長いソレノイドであるので、先端側部分41が貫通孔35から突出して長く延びている。さらに、シャフト40の基端側の端部は、貫通孔35からわずかに突出した突出部43となっている。突出部43は、上端面39よりもスリーブ20の底部23側に突出することによって、コイル75への通電を停止したとき、上端面39と底部23とが当接することのないようにするものである。すなわち、上端面39と底部23とが当接すると、残留磁気の影響によって両者が張り付いた状態となり、コイル75への通電時に可動磁極30の動作を妨げることがあるので、張り付きを防止するためにシャフト40が上端面39からわずかに突出するようにしている。なお、従来技術においては、可動磁極の張り付きを防止するためにスペーサを設けるが、この実施の形態ではシャフト40を代用することによって部品点数の削減を実現している。
【0035】
次に、固定磁極について説明する。
図6は、本発明の第1の実施の形態に係る固定磁極を示す図であり、(a)は断面図、(b)は平面図である。
図6において57は環状溝であり、その他の符号はすべて
図1と同じものを示す。
【0036】
固定磁極50は、磁気回路の一部を構成すると共に、ケース80の蓋であり、さらに、長いシャフト40の摺動を案内する役割も果たす。すなわち、
図6に示すように、全体を略円筒形状に形成し、ケース80の内側に向かって筒状部51が延び、外側に向かって突出部55が突出するように延びている。また、中心軸方向の中央付近に嵌合部53と鍔状部54とが鍔状に張り出している。さらに、筒状部51と突出部55とを中心軸に沿って貫通する貫通孔56が形成されている。固定磁極50の筒状部51は、前述のように、凹状の円錐台面52が可動磁極30の円錐台面38と対向しており、コイル75への通電時に可動磁極30への吸引力を生成する役割を果たす。筒状部51の外周面の嵌合部53寄りの部位には、この外周面を周回する環状溝57が形成されている。さらに、環状溝57にはOリング73が装着されており、Oリング73は筒状部51スリーブ20の径大部21とによって挟み込まれた状態になっている。また、嵌合部53は、
図1に示すようにケース80の嵌合受け部81に嵌合されてケース80の蓋の役割を果たす。鍔状部54は、嵌合部53よりも周囲に張り出すことによって、嵌合部53を圧入する際のストッパの役割を果たす。突出部55は、貫通孔56の長さを十分確保するためにケース80の外側に向かって長く突出している。なお、貫通孔56とシャフト40との間には間隙があるので、図示していない油圧回路の弁体側から作動油が筒状部51側に浸入するが、前述のように、Oリング73を設けているので、スリーブ20の外側には浸出しない。
【0037】
さらに、蓋について説明する。
図7は、本発明の第1の実施の形態に係る蓋を示す図であり、(a)は断面図、(b)は平面図である。
図7において、63は底板部、64aは底面、64bは内周面、65a及び65bは切欠部であり、その他の符号は
図1と同じものを示す。
【0038】
蓋60は、磁気回路の一部を形成する補助磁極部61と、ケース80の蓋の役割を果たす鍔状部62とから構成されている。補助磁極部61は、略有底円筒形状に形成されており、底がある側の端部から鍔状に張り出すように鍔状部62が形成されている。前述のように、補助磁極部61の底面64a及び内周面64bには、スリーブ20の底部23と径小部22とに接しており、スリーブ20の補強材としての役割も併せ持っている。また、補助磁極部61の底板部63の肉厚は、鍔状部62の肉厚よりも薄くなるように形成されている。すなわち、底板部63は、ケース80の蓋の一部を構成する部分であるが、スリーブ20の底部23に接する部分でもある。そこで、底板部63を蓋としての強度に支障のない範囲で薄くすることによって、ソレノイド10のシャフト40の中心軸方向における長さを短くするようにしている。さらに、鍔状部62は、
図7(b)に示すように、端子金具71及び72をケース80の外部に導出するための切欠部65a及び65bが形成されている。
【0039】
次に、ボビンについて説明する。
図8は、本発明の第1の実施の形態に係るボビンの断面図である。
図8において、69は保持部、70a及び70bは内周面、70cは段差部であり、その他の符号は
図1と同じものを示す。
【0040】
図8に示すように、ボビン65は、全体を略円筒形状に形成し、鍔部67と鍔部68との間にコイルワイヤを見解してコイル75を設けている。また、径がやや大きい内周面70aと、径がやや小さい内周面70bとを形成して段差部70cを設けている。段差部70cは、
図1に示すように、補助磁極部61の下端部に接するように設けられている。後述する方法でソレノイド10の組み立てるときに、ボビン65の補助磁極部61に対する押し込みが十分でない場合でも、蓋60を圧入するとき、又は、肉薄部82をかしめるときに補助磁極部61の先端部が段差部70cに当接するので、ソレノイド10の組立を終えた段階ではボビン65は所定位置に配置された状態となる。また、ボビン65は作動油に触れることがないので、
図1に示すように、保持部69と図示してないもう1つの保持部によって端子金具71と端子金具72とを保持し、これらの端子金具をケース80の外部に直接導出している。また、この実施の形態に係るボビン65は、その周囲に作動油の浸出を防止するためのOリングを設ける必要がないので、配線や端子金具の固定のための設計の自由度が比較的高いと言える。
【0041】
さらに、本発明の第1の実施の形態における特徴の1つである本発明の第1の実施の形態に係るボビン、スリーブ及び蓋をケースに挿入する工程について説明する。
図9は、本発明の第1の実施の形態に係るボビン、スリーブ及び蓋をケースに挿入する工程を示す断面図(1)である。
図9において用いた符号は、すべて
図1と同じものを示す。また、
図10は、本発明の第1の実施の形態に係るボビン、スリーブ及び蓋をケースに挿入する工程を示す断面図(2)である。
図10において用いた符号は、すべて
図9と同じものを示す。
【0042】
この実施の形態に係るソレノイド10では、まずシャフト40を可動磁極30の貫通孔35に挿入し、かしめて固定する。つぎに、シャフト40を固定磁極50の貫通孔56にシャフト40を挿入して、筒状部51に対向部32を挿入しておく。くわえて、補助磁極部61の内部にスリーブ20の径大部21を押し込み、補助磁極部61をボビン66の中空部に押し込んでおく。これによって、蓋60に対してスリーブ20及びボビン66が一体の状態となる。次に、鍔状部62は、以下のようにしてケース80に固定する。まず、
図9に示すように、蓋60を支持しながら、スリーブ20及びボビン66をケース80の内部に挿入して行く。ある程度挿入すると、スリーブ20と筒状部51とのが当接するが、誘い込み部25が筒状部51を誘い込むので、スリーブ20の径大部21に筒状部51がスムーズに挿入されて行く。そして、鍔状部62がケース80の肉薄部82に当接したら鍔状部62を軽く圧入して行く。このとき、
図10に示すように、スリーブ20とOリング73とが当接するが、誘い込み部25がOリング73を誘い込むので、スリーブ20の先端部によってOリング73が切断されることを防止できる。底板部63とスリーブ20の底部23とが当接したら、肉薄部82をかしめて蓋60を固定する。さらに、蓋60の上に樹脂を流し込んで封止樹脂76を形成し、
図1に示す状態にする。
【0043】
ところで、例えばスリーブ20の径大部21と径小部22とを形成する絞り加工は、熟練度が高くない者が行うと、スリーブ20の中心軸方向の長さにばらつきを生じやすい。この長さが所定の長さよりも長い場合には、誘い込み部25が
図1に示した本来の位置よりも下方に位置することになるが、スリーブ20の誘い込み部25と固定磁極50の嵌合部53との間に所定の間隙を設定してあるので、この間隙が小さくなるものの、蓋60を圧入するときに誘い込み部25が嵌合部53に強く押し当てられて変形することはない。また、製造工程における外部からの衝撃などが原因となって、スリーブ20が下方にずれて誘い込み部25が嵌合部53と当接した状態に組み上がることがある。しかし、このような状態になっても、組立後の動作確認試験においてコイル75への通電を数回以上繰り返すと、シャフト40の突出部43がスリーブ20の底部23に衝突することによって、スリーブ20を蓋60側に叩き込むので、スリーブ20の底部23と蓋60の底板部63が当接した状態となる。以上のように、この実施の形態に係るソレノイド10は、組立工程における不都合を組立工程、又は、組立後の動作確認試験において自己修復するように構成した点においても大きな特徴がある。また、スリーブによってOリングが損傷することよる不良も解消できる。
【0044】
さらに、他の構成部品について、
図1に戻って説明する。ケース80は、嵌合受け部81の肉厚を他の部分よりも厚くして、固定磁極50を強固に固定すると共に、嵌合部53との間から作動油が漏出しないようにしている。また、肉薄部82の上方の部分は、
図8において示した手順で蓋50を圧入した後にかしめることにってかしめ部83となる。さらにかしめ部83で囲まれた空間には、封止樹脂76を設けて、端子金具71と端子金具72を保護している。また、
図2に示すように、固定磁極50の筒状部51の略円錐台形状の内部空間の底部に当たる部位にスペーサ74を設けている。スペーサ74は、対向部32の円錐台面38と筒状部51の円錐台面52とが当接しないように、可動磁極30の摺動範囲を規制するものである。これによって、円錐台面38と円錐台面52とが当接して両者が張り付くことを防止されるので、ソレノイド10の動作の信頼性を高めることできる。
【0045】
以上のように、本発明の第1の実施の形態に係るソレノイド10は、スリーブ20を有底円筒状にし、さらに底部寄りの径小部22が補助磁極部61の内部に挿入され、開口部寄りの径大部21の内部に固定磁極50の筒状部51が挿入される構成にしたことによって、例えば肉厚を0.2〜0.4mmと相当薄くすることが可能なスリーブ20によって可動磁極30の摺動を支持するので、ドライブッシュを設ける必要がなく、ソレノイド10の径方向における小型化が容易になる。さらに、作動油などの液体が補助磁極部61又は鍔状部62の表面を伝ってケース80の内部に拡がる、あるいは、ケース80の外部に漏出することを防止できるので、補助磁極部61又は鍔状部62の周辺にOリングを設ける必要がなく、構造を簡素化できる。ひいては、ソレノイド10の小型化も容易になる。また、スリーブ20の底部23と対向している補助磁極部61の底板部63の内側面、つまり、コップ状の内部空間の底面64aと接するようにしたので、底部23がシャフト40の突出部43が衝突することによって次第に変形して行くことを防止できる。くわえて、スリーブ20の径小部22の外周面が補助磁極部61の内周面に接し、径大部21の内周面が筒状部51の外周面に接しているので、固定磁極50及び補助磁極部61にスリーブ20の中心軸を精確に合わせることができ、可動磁極30の軸ずれを防止できる。さらに、径大部21と筒状部51との間にOリング73を設けているので、これらの間からから作動油が漏出することを防止できる。また、スリーブ20の誘い込み部25と固定磁極50の嵌合部53とに間隙があるので、固定磁極50若しくはスリーブ20、又は他の構成部品の寸法精度が高くない場合でも、誘い込み部25と嵌合部53とが衝突してスリーブ20が変形することを防止できる。よって、スリーブ20の肉厚を衝突による変形を考慮せずに薄くすることができ、ひいては、ソレノイド10の小型化が容易になる。さらに、開口部側の端部が前記ケース80の前記鍔状部と離隔接続手段を第1の領域により確実に狭持しておくことができる。本体部31の周側面に連通用溝33及び34を形成したので、可動磁極30の摺動時に、連通用溝33及び34が油路と、スリーブ20の底部と可動磁極30の上端面39の間隙との差圧の調整を促進するので、小型化するときに低下しやすい動作性を確保することができる。くわえて、シャフト40の突出部43が可動磁極30のスリーブ20の底部23への張り付きを防止する。よって、別途スペーサを設ける必要がなく、小型化が容易になる。
【0046】
続けて、本発明の第2の実施の形態に係るソレノイドについて説明する。
図11は、本発明の第2の実施の形態に係るソレノイドの通電状態を示す断面図である。
図11において、11はソレノイド、84はケース、85は肉薄部、86はかしめ部、87は肉薄部、90は固定磁極、91は対向部、93は嵌合部、94は階段状部、95は突出部、96は貫通孔、97は環状溝であり、その他の符号は
図1と同じものを示す。また、
図12は、本発明の第2の実施の形態に係るソレノイドの非通電状態を示す断面図である。
図12において、92は円錐台面であり、その他の符号は
図11と同じものを示す。さらに、
図13は、本発明の第2の実施の形態に係る固定磁極を示す図であり、(a)は断面図、(b)は平面図である。
図13において用いた符号は、すべて
図11と同じものを示す。
【0047】
本発明の第2の実施の形態に係るソレノイド11は、
図11及び
図12に示すように、第2の実施の形態に係るものよりもケース84の構成を簡素にしている。すなわち、ケース84の固定磁極90側の開口部近傍の部分を、蓋60側の肉薄部85と同様に肉薄部87とし、肉薄部87に対して固定磁極90の嵌合部93を嵌合している。また、
図13に示すように、嵌合部93の外側には、蓋としての剛性を高めるために階段状部94を形成している。なお、ケース84のかしめ部86、並びに、固定磁極90の対向部91、円錐台面92、突出部95、環状溝97及び貫通孔62は、第1の実施の形態に係るものと同じ形状及び構造である。
【0048】
以上のように構成したソレノイド11は、ケース84の肉薄部87が第1の実施の形態に係るものよりも薄くて加工が容易であるので、この部分の剛性をあまり必要としない用途に適している。また、以上に説明した部分以外の構成は、第1の実施の形態に係るものと同じであるので、第1の実施の形態に係るものと同様の作用効果が得られる。
【0049】
なお、本発明は以上に説明した内容に限定されるものではなく、例えば、固定磁極にシャフトを設けるのではなく、固定磁極自体にシャフト状の突出部を設けてもよい。また、固定磁極に対してスプールを保持するための油路とスプールを設けて弁と一体のものとしてもよい。さらに、蓋と補助磁極とを分離して、それぞれ独立した構成部品としてもよい。このこのように、各請求項に記載した範囲を逸脱しない限りにおいて種々の変形を加えることが可能である。