(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記二次空気導入配管(39)の略S字状の湾曲部の湾曲形状内側のスペースには、車体左右の部材間を連結するクロスメンバ(44)が車体左右方向に横切って配置されていることを特徴とする請求項5に記載の鞍乗り型車両の吸気系構造。
前記二次空気導入配管(39)の略S字状の湾曲部の湾曲形状内側のスペースには、エンジン周りの冷却水配管(46)が車体左右方向に横切って配置されていることを特徴とする請求項5または6に記載の鞍乗り型車両の吸気系構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の吸気系構造においては、エアクリーナがエンジンの上部後方側に離間して配置される車両に採用されているため、二次空気導入装置の空気導入配管をある程度のスペース的な余裕をもってエアクリーナとエンジンの排気出口との間で引き回すことができる。しかし、車両によっては、エアクリーナがエンジンの直上部にエンジンの上方を覆うように配置されるものがある。このような車両においては、二次空気導入装置の空気導入配管を、エンジン周りの他の部品と干渉しないように配置することがむずかしく、エアクリーナをエンジンの上面に充分に近づけることができない。このため、このことが車両の小型化を図るうえでの一つの課題となっていた。
【0006】
そこでこの発明は、エアクリーナがエンジンの上部に配置される車両においても、他の部材との干渉を招くことなく二次空気導入装置の空気導入配管を容易に配管できるようにして、車両の小型化を図ることができる鞍乗り型車両の吸気系構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る鞍乗り型車両の吸気系構造は、エンジン(16)の上部にエアクリーナ(32)が配置され、前記エンジン(16)の排気出口に、二次空気導入装置(38)の二次空気導入配管(39)が接続された鞍乗り型車両の吸気系構造において、前記エンジン(16)の上部を覆う前記エアクリーナ(32)の下壁(34a)には、前記二次空気導入配管(39)の配置通路となる通路溝(41)が形成され、
前記エアクリーナ(32)の側壁の下壁寄りには、左右の吸気ダクト(37)が接続され、前記エアクリーナ(32)の下壁(34a)の上面には、前記通路溝(41)の背部に形成された隆起部(60)が設けられており、前記隆起部(60)は、左右の前記吸気ダクト(37)の端部間に配置されていることを特徴とする。
上記の構成により、二次空気導入配管(39)がエアクリーナ(32)の下壁(34a)の通路溝(41)内に配置されることにより、二次空気導入配管(39)と他の部材との干渉を招くことなく、エアクリーナ(32)をエンジン(16)の上部により近づけることが可能になる。
また、この場合、通路溝(41)の背部に形成された隆起部(60)が左右の吸気ダクト(37)の間に配置されていることにより、左右の吸気ダクト(37)からエアクリーナ(32)に外気が導入されるときに、エアクリーナ(32)内で左右方向から流れ込む外気を円滑に整流することができる。
【0008】
左右の前記吸気ダクト(37)は、前記エアクリーナ(32)の左右の側壁にそれぞれ接続され、左右の前記吸気ダクト(37)の各下流側の端部は、前記側壁を貫通し上方に傾斜しつつ前記エアクリーナ(32)の内部に突出するようにしても良い。
この場合、左右の吸気ダクト(37)の各下流側の端部が上方に傾斜していることにより、左右の吸気ダクト(37)からエアクリーナ(32)に外気が導入されるときに、エアクリーナ(32)内で左右方向から流れ込む外気をより円滑に整流することができる。
【0009】
前記二次空気導入配管(39)の上流部は、前記エアクリーナ(32)のフィルター(33)によって濾過された下流室(36)に接続されるようにしても良い。
この場合、専用のフィルターエレメントを設けることなく、エアクリーナ(32)のフィルター(33)で濾過された埃の少ない空気を二次空気導入配管(39)に供給することができる。また、エアクリーナ(32)はエンジン(16)の上部に配置されているため、二次空気導入配管(39)の配管長を短くすることができる。
【0010】
前記エンジン(16)のシリンダヘッドカバー(30)には、前記二次空気導入配管(39)に接続されて、二次空気を前記エンジン(16)の排気出口に供給する空気導入部(43)が設けられるようにしても良い。
この場合、シリンダヘッドカバー(30)に空気導入部(43)が設けられているため、二次空気導入配管(39)は、シリンダヘッドカバー(30)の空気導入部(43)まで配管するだけで良いことになる。したがって、この構造を採用することにより、二次空気導入配管(39)を容易に、かつ高い自由度をもって配管することが可能になる。
【0011】
前記二次空気導入装置(38)の二次空気の流れを制御するコントロールバルブ(42)は、車体のヘッドパイプ(11)と前記エアクリーナ(32)の間の空間(S)に配置され、前記二次空気導入配管(39)は、前記コントロールバルブ(42)との接続部から下方に延びて、前記通路溝(41)に沿って車体後方側に延出した後に車体前方側に向きを変え、全体が略S字状に湾曲した状態で前記シリンダヘッドカバー(30)の上部に接続されるようにしても良い。
この場合、二次空気導入装置(38)のコントロールバルブ(42)がヘッドパイプ(11)とエアクリーナ(32)の間のデッドスペースに配置されるため、エンジン周りの部品を集約して配置して、車両のさらなる小型化を図ることができる。また、二次空気導入配管(39)がエアクリーナ(32)の下方で略S字状に湾曲して配置されるため、二次空気の導入に悪影響を及ぼさない緩やかな湾曲を維持しつつ、二次空気導入配管(39)の適切な管長を確保することができる。したがって、この構造を採用することにより、コントロールバルブ(42)の作動時における二次空気の迅速な応答を得ることができるとともに、排気出口からの高温の吹き返しガスによるコントロールバルブ(42)の劣化を抑制することができる。
【0012】
前記二次空気導入配管(39)の略S字状の湾曲部の湾曲形状内側のスペースには、車体左右の部材間を連結するクロスメンバ(44)が車体左右方向に横切って配置されるようにしても良い。
この場合、車体左右の部材をエンジン周りの適切な位置でクロスメンバ(44)によって連結することができるため、車体剛性の向上と車両のコンパクト化を図ることができる。
【0013】
前記二次空気導入配管(39)の略S字状の湾曲部の湾曲形状内側のスペースには、エンジン周りの冷却水配管(46)が車体左右方向に横切って配置されるようにしても良い。
この場合、エンジン周りの適切な位置に冷却水配管(46)を配管することができるため、冷却水配管(46)の短縮化と車両のコンパクト化を図ることができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、二次空気導入装置の二次空気導入配管がエアクリーナの下壁の通路溝内に配置されるため、エアクリーナがエンジンの上部に配置される鞍乗り型車両でありながら、他の部材との干渉を招くことなく二次空気導入配管を容易に配管することができる。したがって、この発明によれば、エアクリーナをエンジンの上部により近づけて、車両の小型化を図ることができる。
また、この発明によれば、通路溝の背部に形成された隆起部が左右の吸気ダクトの間に配置されているため、左右の吸気ダクトからエアクリーナに外気が導入されるときに、エアクリーナ内で左右方向から流れ込む外気を円滑に整流することができる。したがって、この発明によれば、エンジンの吸気性能を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明における前後左右等の向きは、特に記載が無ければ以下に説明する車両における向きと同一とする。また、以下の説明に用いる図中適所には、車両前方を指す矢印FR、車両の左方を指す矢印LH、車両上方を指す矢印UPが示されている。
【0017】
図1は、この実施形態に係る鞍乗り型車両を左側方から見た図である。
この実施形態に係る鞍乗り型車両は、前輪WFと後輪WRを各一つずつ有し、エンジン16によって後輪WRが駆動される自動二輪車である。以下、この実施形態に係る鞍乗り型車両については、「自動二輪車1」と呼ぶ。
【0018】
自動二輪車1の車体フレームFは、前端部に配置されるヘッドパイプ11と、ヘッドパイプ11から後斜め下方へ延出した後に下方に屈曲して延出する左右一対のメインフレーム12と、左右のメインフレーム12同士を連結する図示しないクロスメンバと、左右のメインフレーム12の後部上端から後斜め上方に延出する図示しないシートレールと、を備えている。メインフレーム12の前縁部には、下方に延出するエンジンハンガー12aが一体に延設されている。左右のメインフレーム12の後部の下方延出部12bには、スイングアーム13が上下揺動可能に支持されている。スイングアーム13の後部には、後輪WRが回転可能に支持されている。
【0019】
ヘッドパイプ11には、図示しないステアリングステムが回動自在に軸支されている。ステアリングステムには、操向ハンドル14と左右一対のフロントフォーク15がそれぞれ支持部材を介して結合されている。左右のフロントフォーク15の下端部には、前輪WFが回転自在に軸支されている。
【0020】
左右のメインフレーム12のエンジンハンガー12aと下方延出部12bには、エンジン16と変速機17が一体ブロックとして構成されたパワーユニットPUが取り付けられている。また、左右のメインフレーム12の上方には燃料タンク18が取り付けられ、図示しないシートレールには運転者の着座するシート19が取り付けられている。
【0021】
ヘッドパイプ11には、ヘッドパイプ11と、操向ハンドル14の中央領域の前方を覆う樹脂製のフロントカウル20が図示しないステーを介して取り付けられている。フロントカウル20の上部には、透明なウインドスクリーン21が取り付けられている。
また、左右の各メインフレーム12の車幅方向外側には、フロントフォーク15の前方からパワーユニットPUの後部に亘る車体側部の広い範囲を覆う樹脂製のサイドカウル22(車体カバー)が取り付けられている。左右のサイドカウル22の間には、フロントカウル20の下方において、車両前方側に開口する外気の流入通路61が形成されている。
【0022】
図2は、自動二輪車1のエンジン16の上部領域を車幅方向と直交する面で切った断面を示す図である。
この自動二輪車1に搭載されるエンジン16は、二気筒のレシプロ式のエンジンであり、図示しないピストンが昇降するシリンダブロック23の上部にシリンダヘッド24が取り付けられている。シリンダヘッド24には、図示しない燃焼室に臨む吸気ポートと排気ポート(いずれも図示せず)が設けられており、これらの吸気ポートと排気ポートが、吸気バルブ25と排気バルブ26によって開閉されるようになっている。
【0023】
シリンダヘッド24の後壁には、下流側が吸気ポートに連通するスロットルボディ27が取り付けられている。スロットルボディ27には、吸気ポートの上流側に燃料を噴射するためのインジェクター28が接続されている。シリンダヘッド24の前壁には、上流側が排気ポートに連通する排気管29が取り付けられている。
【0024】
また、シリンダヘッド24の上部にはシリンダヘッドカバー30が取り付けられている。シリンダヘッドカバー30とシリンダヘッド24の間には、図示しないクランク軸の回転と連動させて吸気バルブ25と排気バルブ26を昇降駆動させるための動弁機構31a,31bが収容されている。
【0025】
エンジン16のシリンダヘッドカバー30の上方には、外部から吸い入れた空気を内部のフィルター33で濾過するエアクリーナ32が配置されている。エアクリーナ32は、左右のメインフレーム12の間に配置され、これらのメインフレーム12に図示しないステー等を介して取り付けられている。エアクリーナ32は、箱型状のエアクリーナケース34の内部がフィルター33によって下方側の上流室35と、上方側の下流室36とに隔成されている。エアクリーナケース34の上流室35に臨む前部寄りの左右の側壁には、一対の吸気ダクト37の各下流部37e−1が接続されている。各吸気ダクト37から上流室35内に導入された外気はフィルター33で濾過されて上方側の下流室36に流入する。
【0026】
エアクリーナケース34の下流室36に臨む後部寄りの下壁には、スロットルボディ27の上流部が接続されている。フィルター33で濾過されて外気は、スロットルボディ27を通ってエンジン16の吸気ポートに供給される。
【0027】
また、エアクリーナケース34の下流室36に臨む前壁には、エンジン16内の排気ポートの近傍部に新気を導入するための二次空気導入装置38の二次空気導入配管39が接続されている。二次空気導入配管39は、エアクリーナケース34の前壁に沿って下方に延出した後に略S字状に湾曲して、エンジン16のシリンダヘッドカバー30の上部に設置されたリードバルブ40に接続されている。
【0028】
二次空気導入配管39の略S字状に湾曲する領域の一部は、エアクリーナケース34の前部寄り下壁34aに形成された断面略円弧状の通路溝41に沿って配管されている。通路溝41は、エアクリーナケース34の前部寄りの下壁34aの車幅方向の略中央部分に上方に凸に窪んで形成されている。二次空気導入配管39の略S字状に湾曲する領域39aは、エアクリーナケース34の前壁の下端の近傍部から車両後方側に湾曲した後に再度前方側に湾曲して向きを変え、その先端部が車両前方を向いてリードバルブ40に接続されている。リードバルブ40には、車体後方側に向く接続部59が突設され、その接続部59に二次空気導入配管39の先端部が接続されている。リードバルブ40は、シリンダヘッドカバー30の内部に設けられた空気導入部43に接続されている。空気導入部43の端部はシリンダヘッド24内の排気ポートの近傍部に開口している。
【0029】
また、二次空気導入配管39の中途部には、エンジン16の運転状況に応じて二次導入空気の流れを制御するコントロールバルブ42が介装されている。このコントロールバルブ42は、車体フレームFのヘッドパイプ11とエアクリーナケース34の前壁の間の空間Sに配置されている。
なお、
図2中の符号44は、左右のメインフレーム12を連結するクロスメンバであり、符号45は、冷却水を放熱するためのラジエータ、符号46は、ラジエータ45とエンジン16を接続する冷却水配管である。クロスメンバ44と冷却水配管46は、二次空気導入配管39の略S字状の湾曲部の湾曲形状内側のスペースに、車体左右方向に横切って配置されている。
【0030】
図3は、
図2のIII−III線に沿う断面を示す図である。
図3に示すように、二次空気導入装置38のコントロールバルブ42は、一対の金属製のステー62,63によって挟持され、そのステー62,63を介して車体フレームFに固定されている。コントロールバルブ42には、上方と下方にそれぞれ延出する一対のフランジ部42a,42bが延設されている。コントロールバルブ42は、一対のフランジ部42a,42bがそれぞれゴムブッシュ64を介して左右のステー62,63間に配置され、左右のステー62,63がその状態でボルト65及びナット66によって締結されることにより、左右のステー62,63に弾性的に保持されている。ゴムブッシュ64は、軸方向の両端にフランジが延設された断面H字状に形成されており、コントロールバルブ42の各フランジ部42a,42bに板厚方向に貫通した状態で取り付けられている。コントロールバルブ42は、このようなゴムブッシュ64を介してステー62,63に取り付けられることにより、エンジン振動に対する保護が図られている。
【0031】
図4は、自動二輪車1のサイドカウル22のアウタパネルを取り外して示した左側面を示す図であり、
図5は、
図4のV−V断面に対応する断面を示す図である。
左右のサイドカウル22は、メインフレーム12やヘッドパイプ11、エンジン16等に固定されるインナシェル22Iと、インナシェル22Iに取り付けられてインナシェル22Iの外側を覆うアウタパネルと、を備えている。インナシェル22Iとアウタパネルの間には空洞部が設けられ、その空洞部に吸気ダクト37の一部が配置されている。
【0032】
左右の各吸気ダクト37は、上流部37e−2に外気を吸入するための吸気口48が設けられ、下流部37e−1がエアクリーナケース34の下部寄りの側壁(エアクリーナ32内の上流室35)に接続されている。左右の各吸気ダクト37は、エアクリーナケース34の下部寄りの側壁から車幅方向外側に延出して左右の対応するメインフレーム12に設けられた挿通孔47(
図4参照)に挿通されている。
【0033】
挿通孔47を通ってメインフレーム12の外側に延出した吸気ダクト37は湾曲して車両前方側に向きを変え、サイドカウル22のインナシェル22Iの車幅方向外側の面に沿って配管されている。インナシェル22Iの車幅方向外側の面に沿って配管された吸気ダクト37は、複数箇所でインナシェル22Iにビス止めされている。そして、吸気ダクト37の上流部37e−2は、車幅方向内側に向きを変えて端面に設けられた吸気口48が、インナシェル22Iに設けられた開口に連通している。
【0034】
ところで、メインフレーム12の挿通孔47から車幅方向外側に延出した吸気ダクト37は、上流部37e−2の吸気口48に向かって車両前方にストレートに延出しているのではなく、中途部が上方側に凸状に湾曲して形成されている。この部分は、吸気ダクト37における上方湾曲部51を構成している。吸気ダクト37の上方湾曲部51の下方には、外気吸入時における吸気音を低減するための吸気レゾネータ52が配置されている。吸気ダクト37は、上方湾曲部51の湾曲方向の頂部の下端が接続管53を介して吸気レゾネータ52に接続されている。
【0035】
ところで、左右の吸気ダクト37の各下流部37e−1には、
図5に示すように、下方側に凸状に湾曲する下方湾曲部57が形成されている。各吸気ダクト37の下流部37e−1は、下方湾曲部57の下方側の湾曲頂部よりも車幅方向内側部分が、エアクリーナ32のエアクリーナケース34の側壁に結合されている。各吸気ダクト37の下流部37e−1のうちの、エアクリーナケース34の内側(上流室35)に突出する領域は、エアクリーナケース34の車幅方向の略中央部に向かって上方に傾斜している。エアクリーナケース34の下壁34aの車幅方向の略中央部には、前述した通路溝41の形成部が上方側に円弧状に隆起して、隆起部60を形成している。したがって、左右の各吸気ダクト37に吸い入れられた外気は、エアクリーナケース34内において、各吸気ダクト37の下流部37e−1が上方に傾斜していることと、下壁34a上の隆起部60によるガイド作用とにより、フィルター33方向にスムーズに流れ込む。
【0036】
また、各吸気ダクト37の下方湾曲部57の湾曲頂部(最下端部)は、エアクリーナケース34の左右の側壁の外側に位置されており、その湾曲頂部の底部には、所定通路長のドレンパイプ58が突設されている。ドレンパイプ58は、吸気ダクト37内に雨水等の水滴が流入したときに、エアクリーナケース34に入り込む前に、その水滴を吸気ダクト37の外部に排出する。
【0037】
この実施形態に係る自動二輪車1では、以下のようにして外気がエンジン16内に供給される。
即ち、左右のサイドカウル22の間の流入通路61(
図1参照)から左右の各吸気ダクト37の吸気口48に入り込んだ空気は、左右の各吸気ダクト37を通ってエアクリーナ32の下部側の上流室35に流入し、その空気は、フィルター33で埃を除去されて上方側の下流室36に流入する。エアクリーナ32の下流室36に流入した空気は、スロットルボディ27を通過してエンジン16の燃焼室内に供給される。
【0038】
また、エンジン16の運転中に、二次空気導入装置38のコントロールバルブ42が開弁方向に制御されると、エアクリーナ32の下流室36内の空気が、二次空気導入配管39とリードバルブ40とシリンダヘッドカバー30内の空気導入部43を通って排気ポートの近傍部に導入される。これにより、エンジン16から排出された排気ガス中の未燃焼ガスが再燃焼して浄化されることになる。
【0039】
以上のように、この実施形態に係る自動二輪車1の吸気系構造は、エアクリーナ32の下壁34aに通路溝41が形成され、その通路溝41内に二次空気導入配管39が配置されている。このため、エアクリーナ32がエンジン16のシリンダヘッドカバー30の直上部に配置されている車両構造でありながら、エンジン周りの他の部品との干渉を招くことなく二次空気導入配管39を容易に配管することができる。
【0040】
さらに、この実施形態に係る自動二輪車1の吸気系構造では、二次空気導入配管39の一部がエアクリーナ32の下壁34aの通路溝41内に配置されるため、二次空気導入配管39をエアクリーナ32の下壁34aによって保護することができるとともに、エアクリーナ32をエンジン16の上部により近づけ、エンジン周りのコンパクト化、延いては車両の小型化を図ることができる。
【0041】
また、この実施形態に係る自動二輪車1の吸気系構造は、エンジン16のシリンダヘッドカバー30内に空気導入部43が設けられ、二次空気導入配管39の先端部が、その空気導入部43にリードバルブ40を介して接続されることにより、二次空気がエンジン16内の排気ポートの近傍部に導入されるようになっている。このため、この構造を採用した場合には、二次空気導入配管39は、シリンダヘッドカバー30の上部のリードバルブ40の接続部59の位置まで配管するだけで良いため、二次空気導入配管39を容易に、かつ高い自由度をもって配管でき、大型部品である二次空気導入装置38のコントロールバルブ42も最適位置に配置することができる。
【0042】
また、この実施形態に係る自動二輪車1の吸気系構造においては、二次空気導入装置38のコントロールバルブ42が車体のヘッドパイプ11とエアクリーナ32の間の空間Sに配置され、シリンダヘッドカバー30の上部に、二次空気導入配管39と接続されるリードバルブ40の接続部59が車体後方側に向いて突設されている。そして、二次空気導入配管39は、コントロールバルブ42との接続部から、通路溝41に沿って車体後方側に延出した後に車体前方側に向きを変え、全体が略S字状に湾曲した状態において接続部59に接続されている。
この実施形態に係る自動二輪車1の吸気系構造では、大型部品であるコントロールバルブ42がヘッドパイプ11とエアクリーナ32の間のデッドスペースに配置されることになるため、エンジン周りの部品を集約して配置して、車両のさらなる小型化を図ることができる。
また、二次空気導入配管39がエアクリーナ32の下方で略S字状に湾曲して配置されることから、二次空気の導入に悪影響を及ぼさない緩やかな湾曲を維持しつつ、二次空気導入配管39の適切な管長を確保することができる。このため、この構造を採用することにより、二次空気導入装置38の作動時における二次空気の迅速な応答を得ることが可能になるとともに、排気ポートからの高温の吹き返しガスがコントロールバルブ42に直接当たりにくくなり、コントロールバルブ42の熱による劣化を抑制することが可能になる。
【0043】
さらに、この実施形態に係る自動二輪車1の吸気系構造は、エアクリーナ32の下壁寄りの左右の側壁に、左右の吸気ダクト37の上流部37e−2がそれぞれ接続され、各上流部37e−2の端部が側壁を貫通して上方に傾斜しつつエアクリーナ32の内部に突出している。そして、エアクリーナ32の下壁34aの上面には、左右の吸気ダクト37の端部間に位置されるように隆起部60が形成されている。このため、左右の吸気ダクト37からエアクリーナ32に空気が導入されるときには、左右の各吸気ダクト37の上流部37e−2が、相互に対向する位置で斜め上方に傾斜していることと、下壁34a上の隆起部60による案内作用とにより、空気を上方のフィルター33方向に向けて円滑に整流することができる。
したがって、この構造を採用することにより、エンジン16の吸気性能を高めることができる。
【0044】
また、この実施形態に係る自動二輪車1の吸気系構造では、二次空気導入配管39の略S字状の湾曲部の湾曲形状内側のスペースに、車体左右の部材を連結するクロスメンバ44が車体左右方向に横切って配置されているため、車体左右の部材をエンジン周りの適切な位置でクロスメンバ44によって連結することができる。したがって、この構造を採用することにより、車体剛性の向上と車両のコンパクト化を図ることができる。
【0045】
さらに、この実施形態に係る自動二輪車1の吸気系構造においては、二次空気導入配管39の略S字状の湾曲部の湾曲形状内側のスペースに、エンジン冷却用の冷却水配管46が車体左右方向に横切って配置されているため、エンジン周りの適切な位置に冷却水配管46を配管することができる。したがって、この構造を採用することにより、冷却水配管46の短縮化と車両のコンパクト化を図ることができる。
【0046】
なお、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、上記の実施形態においては、二次空気導入配管39が略S字状に湾曲しているが、二次空気導入配管39の形状は略S字形状以外の形状であっても良い。
また、この発明に係る鞍乗り型車両は、自動二輪車(原動機付自転車及びスクータ型車両を含む)に限らず、三輪(前一輪かつ後二輪の他に、前二輪かつ後一輪の車両も含む)又は四輪の小型車両も含まれる。