(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の蓄熱材は、水と0℃以上の温度で前記水の一部と包接水和物を形成する炭化水素化合物および前記水の他の一部の相変化温度を0℃未満に硬化させる無機化合物で構成されている請求項1から請求項8のいずれかに記載の蓄熱パック。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明者らは、保冷対象物の温度を管理するに際し、保冷材が完全に凍結した状態では、保冷材と保冷対象物との密着性が不十分であるため、保冷対象物を素早く冷却することができない点、および、保冷材が未凍結状態または半凍結状態である場合は、保冷材が蓄えた熱量が不十分であるため、保冷対象物を所望の温度に冷却させることができない点に着目し、保冷材を二重構造とし、第1の層には熱量が十分である蓄熱材を充填し、第2の層には柔軟性を有する蓄熱材を配置することによって保冷対象物への密着性を高め、これにより、保冷対象物を適温に素早く到達させることができることを見出し、本発明をするに至った。
【0013】
すなわち、本発明の蓄熱パックは、飲食物の温度管理を行なう蓄熱パックであって、予め定められた温度で相変化する第1の蓄熱材が充填された第1の収容部と、前記第1の収容部に積重され、前記第1の蓄熱材の相変化温度で液相状態を維持する第2の蓄熱材が充填された第2の収容部と、前記第1の収容部を閉塞する蓋材と、を備え、前記第2の収容部が飲食物に接触する。
【0014】
これにより、本発明者らは、第2の収容部を飲食物に密着させることを可能とした。以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0015】
[第1の実施形態]
[蓄熱パックの構成]
図1は、本発明の実施形態に係る蓄熱パックの使用状態を示す断面図である。この蓄熱パック1は、第1の収容部としての第1の深絞り容器3と、第2の収容部としての第2の深絞り容器5から構成される二重構造を有する。
図1において、第1の深絞り容器3には、第1の蓄熱材3aが充填されており、第2の深絞り容器5には、不凍材としての第2の蓄熱材5aが充填されている。第2の蓄熱材5aは、第1の蓄熱材3aの相変化温度において、液相状態を維持する。第2の蓄熱材5aは、飲料物としてのワインボトル10に密着し、蓋材7は、第1の深絞り容器3を閉塞する。上記の第1の深絞り容器3、第2の深絞り容器5および蓋材7は、接着部9において溶着されている。
【0016】
このように、第2の蓄熱材5aが第1の蓄熱材3aの相変化温度で液相状態を維持し、第2の深絞り容器5がワインボトル10に接触するので、第2の深絞り容器5をワインボトル10に密着させることが可能となる。これにより、第2の蓄熱材5aが蓄えた顕熱をワインボトル10に確実に伝え、ワインボトル10を所望の温度に素早く到達させることが可能となる。さらに、第2の蓄熱材5aを介して第1の蓄熱材3aが蓄えた顕熱、および潜熱をワインボトル10に確実に伝えることで、ワインボトル10を所望の温度に素早く到達させるアシストをすると共に、さらに第1の蓄熱材3aが蓄えた潜熱をワインボトル10に確実に伝えることで、ワインボトル10を所望の温度で長時間保持させることが可能となる。
【0017】
図2Aは、本実施形態に係る蓄熱パックの使用状態を示す断面図であり、
図2Bは、従来の蓄熱パックの使用状態を示す断面図である。
図2Bに示すように、第1の蓄熱材3aが第2の蓄熱材5a中に含まれている場合は、使用時に重力によって第1の蓄熱材3aの位置が鉛直下方となる場合がある。この場合、ボトル上部側に蓄熱材3aが存在しない領域が顕著となり、この蓄熱材3aが存在しない領域から熱が逃げ、ワインボトルを所望の温度に素早く到達させることができなくなる可能性がある。
【0018】
これに対し、
図2Aに示すように、本実施形態に係る蓄熱パック1は、第1の蓄熱材3aが充填された第1の深絞り容器3と、第2の蓄熱材5aが充填された第2の深絞り容器5とがフランジ部とフランジ部で固定されているため、それぞれの蓄熱材の位置関係を重量の影響に依らず常に維持することが可能となる。その結果、第2の蓄熱材5aが蓄えた顕熱をワインボトル10に確実に伝え、ワインボトル10を所望の温度に素早く到達させることが可能となる。さらに、第2の蓄熱材5aを介して第1の蓄熱材3aが蓄えた顕熱、および潜熱をワインボトル10に確実に伝えることで、ワインボトル10を所望の温度に素早く到達させるアシストをすると共に、さらに第1の蓄熱材3aが蓄えた潜熱をワインボトル10に確実に伝えることで、ワインボトル10を所望の温度で長時間保持させることが可能となる。
【0019】
また、第1の深絞り容器3は、第1のプラスチックフィルムで成形される。また、第2の深絞り容器5は、第2のプラスチックフィルムで成形される。この第2のプラスチックフィルムは、第1のプラスチックフィルムよりも柔軟である。
【0020】
このように、第2のプラスチックフィルムに軟質性を有するフィルムを選定することによって、ワインボトル10との密着性をより高めることが可能となる。一方、第1のプラスチックフィルムに硬質性を有するフィルムを選定することによって、第1の蓄熱材3aが潜熱を蓄える過程、すなわち、液相から固相に変化する過程において発生する変形等を防止すると共に、液相状態でも形状を保持することが可能となる。
【0021】
具体的には、第1のプラスチックフィルムは、ヤング率が3,000MPa以上であることが好ましく、第2のプラスチックフィルムは、ヤング率が少なくとも3,000MPa以下、好ましくは、600MPa以下であることがより好ましい。ヤング率は、プラスチックフィルムの硬さ、特に腰の強さを示す指標として用いられることが多い。腰が弱く柔軟性を有し、ヤング率が3,000MPa以下のプラスチックフィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロンなどが挙げられるが、本発明は、これらに限定されない。一方、腰が強く硬質性を有し、ヤング率が3,000MPa以上のプラスチックフィルムとしては、ポリエチレン・テレフタラートなどが挙げられるが、本発明は、これらに限定されない。
【0022】
本発明者らは、第1の深絞り容器として好ましいプラスチックフィルムとして、PET150um/PE15umから構成されたフィルム、第2の深絞り容器として好ましいプラスチックフィルムとして、NY100um/PE15umから構成されたフィルムの引張強度(JIS K 7161に基づく)を測定し、ヤング率を算出した。まず、第1の深絞り容器に選択したフィルム“PET#50um//PE#15um”を幅:15mm、長さ:100mmにカットした。「イマダ社製デジタルフォースゲージ“ZTA−1000N”」を用いて該フィルムの引張応力を測定したところ、約70Nで約1mmフィルムが弾性変形することが分かった。この結果からヤング率({荷重値×フィルム長さ}/{フィルム断面積×フィルム伸び量})=約3,000N/mm
2となる。
【0023】
一方、第2の深絞り容器に選択したフィルム“NY#100um//PE#15um”を幅:15mm、長さ:100mmにカットした。「イマダ社製デジタルフォースゲージ“ZTA−1000N”」を用いて該フィルムの引張応力を測定したところ、約20Nで約1mmフィルムが弾性変形することが分かった。この結果からヤング率({荷重値×フィルム長さ}/{フィルム断面積×フィルム伸び量})=約600N/mm
2となる。
【0024】
図3Aは、本実施形態に係る蓄熱パックの断面図である。
図3Aに示すように、蓄熱パック1において、第1の深絞り容器3および第2の深絞り容器5において、第1の深絞り容器3のフランジ部3bと第2の深絞り容器5のフランジ部5bとが接合される。また、それと共に、第1の深絞り容器3のフランジ部3bと蓋材7とが接合される。また、蓋材7と第1の蓄熱材3aとの間には、空隙層9が存在する。
【0025】
このように、第1の深絞り容器3のフランジ部3bと、第2の深絞り容器5のフランジ部5bとが接合されることによって、第1の深絞り容器3と第2の深絞り容器5の位置関係が固定され、性能を向上させること、並びに繰返し性能を向上させることができる。ここで、第2の深絞り容器5は、深さの異なる底面を有する形状であっても良い。例えば、ワインボトルのような高さ方向にくびれ形状を有する受熱体の場合、第2の深絞り容器5を高さ方向に深さが段階的に深くなるような形状とすることによって、受熱体としての飲食物との密着性を向上させることができる。接合手段としては、超音波溶着、振動溶着、誘導溶着、高周波溶着、半導体レーザー溶着、熱溶着、スピン溶着などが挙げられるが、本発明は、これらに限定されない。
【0026】
[プラスチックフィルムの接合]
図3Aに示すように、本実施形態に係る蓄熱パック1において、第1の深絞り容器3のフランジ部3bの任意の一部に貫通口8が設けられ、貫通口8において、第2の深絞り容器5のフランジ部5bと蓋材7とが直接接合する。このような蓄熱パック1の各部位の接合には、以下のような接合方法を用いる。
【0027】
図3Bは、本実施形態に係るフィルムの接合方法の概念を示す図であり、
図3Cは、フィルムの接合状態を示す平面図であり、
図3Dは、フィルムの接合状態を示す断面図である。また、
図3Eは、従来のフィルムの接合方法の概念を示す図であり、
図3Fは、「JIS Z 0238」に基づいて測定した本実施形態に係る接合方法と従来の接合方法のヒートシール強さを比較する表である。
【0028】
図3Bに示すように、本実施形態に係る接合方法では、下側から、ナイロン、ポリエチレン、ナイロン、ポリエチレン、ポリエチレン、ナイロンと重ねて、ヒートシーラーで溶着する。その際、貫通口8があるため、ポリエチレン同士が溶着される。その結果、溶着強度が高くなる。本実施形態では、
図3Cおよび
図3Dに示すように、蓄熱パックが複数連設されるように、深絞り容器の真空成型および溶着を行なう(製造方法については、後述する)。一方、
図3Eに示すように、従来の溶着方法では、いわゆる三層構造を採る。このような三層構造は、コストが高く、溶着強度が低いことが知られている。
図3Fに示すように、本実施形態に係る接合方法は、シール強さの平均値が従来技術の5倍近く強くなっていることが分かる。
【0029】
このように、第2の深絞り容器5のフランジ部5bと蓋材7とを直接接合する構成とすることによって、パッケージ強度を向上させ、中に充填された蓄熱材が外部に漏洩するのを防止することができる。さらに、第1の深絞り容器3のフランジ部3bの長さが、第2の深絞り容器5のフランジ部5bの長さ、および蓋材7よりも短い構成であっても良い。これによっても、第2の深絞り容器5のフランジ部5bと蓋材7とを、直接接合することができる。
【0030】
[蓄熱材]
図4Aは、本実施形態に係る蓄熱パックに用いる第1の蓄熱材の概念を示す図であり、
図4Bは、蓄熱材に粘性が無い場合の概念を示す図である。本実施形態に係る蓄熱パックは、第1の蓄熱材3aおよび第2の蓄熱材5aが、自重に対して形状維持可能な粘性を有する。
【0031】
このように、第1の蓄熱材3aおよび第2の蓄熱材5aに粘性を持たせることによって、重力の影響を受けず形状を維持することができる。例えば、
図4Bに示すように、蓄熱パックを立掛けて保冷対象物の温度管理を行なう場合、蓄熱材に粘性がないと、蓄熱材が固相から液相に相変化するにつれて、蓄熱材が重力の影響を受け鉛直下方に変位する。これによって、保冷対象物の上部を十分に温度管理することができなくなってしまう。また、蓄熱材が鉛直下方に変位した結果、蓄熱材の鉛直情報に空隙が生じ、その空隙で熱の流入および流出が生じ、保冷効果が減じられてしまう。
【0032】
これを回避するため、本実施形態では、第1の蓄熱材および第2の蓄熱材に粘性を持たせた。使用する増粘材としては、増粘多糖類やゲル化剤などが挙げられ、具体的には、ローカストビーンガム、グァーガム、グァーガム誘電体(カチオン化グァーガム、ヒドロキシプロピルグァーガム、グァーガム加水分解品)、カラギーナン、ペクチン、キサンタンガム、ジェランガム、ダイユータンガム、デンプン、デキストリン、セルロース誘電体(CMC、HEC、HPMC)、乳化剤等が挙げられる。ただし、本発明において、増粘材はこれらに限定されない。これにより、
図4Aに示すように、蓄熱パックを立掛けて保冷対象物の温度管理を行なう場合であっても、保冷対象物を十分に温度管理することが可能となる。
【0033】
また、本実施形態に係る蓄熱パックは、第1の蓄熱材3aおよび第2の蓄熱材5aの粘度が、1000cP以上である。
【0034】
このように、第1の蓄熱材3aおよび第2の蓄熱材5aに1000cP以上の粘性を持たせることによって、重力の影響を受けずに形状を維持することができる。例えば、ワイン等の飲料物を所望の温度に到達させる場合、その到達時間は10〜30分程度と言われている。また、そのような飲料物に搭載する蓄熱材の量としては、飲料物の重量のせいぜい半分程度が現実的である。これらを鑑みて、本発明者らは、750mLのワイン入りボトル(総重量:約1kg)に500gの蓄熱材を搭載する(巻き付ける)場合において、蓄熱材の形状維持持性と蓄熱材の粘度の関係性を評価した。具体的には、面積S、厚みL、粘度ρの蓄熱材において、蓄熱材の厚み方向に力Fを与えた場合の力Fと、蓄熱材内を通過する速度Vの関係は、F={(ρ×S)/L}×Vと表すことができる。本式から、粘度ρと速度Vの関係を求め、さらに速度Vから蓄熱材が長さ方向に完全に潰れてしまうまでの時間が10分以上となる粘度ρを求めたところ、1000cP程度であることを確認した。つまり、蓄熱材に1000cP以上の粘性を持たせることによって、受熱体を所望の温度に素早く、且つ、ムラ無く到達させることが可能となる。さらに、製造工程においても、蓄熱材に粘性がなく、完全な液体である場合は、深絞り容器に充填する際、充填時に液体が跳ね返り、容器外にこぼれる恐れがあり、また、容器全体を進行させながら蓄熱材を充填する場合は、進行中に振動で充填された液体があふれる恐れがあるため、充填量に制約が生ずる。蓄熱材に粘性を持たせることによって、これらの不具合を解消させることが可能となる。
【0035】
また、本実施形態に係る蓄熱パックにおいて、第1の蓄熱材3aは、水と0℃以上の温度で水の一部と包接水和物を形成する炭化水素化合物および水の他の一部の相変化温度を0℃未満に硬化させる無機化合物で構成される。
【0036】
この構成により、蓄える熱量を大きくすることができる。その結果、受熱体としての飲食物を所望の温度に素早く到達させ、且つ長時間所望の温度に保持することができる。また、飲食物の温度管理をするため、使用する材料としては安全、安心であることが望ましい。水と包接水和物を形成する炭化水素化合物、或いは無機化合物で蓄熱材を構成することによって、不燃性で安全性の高い構成を構築できる。
【0037】
ここで、蓄熱とは、熱を一時的に蓄え、必要に応じてその熱を取り出す技術をいう。蓄熱方式としては、顕熱蓄熱、潜熱蓄熱、化学蓄熱等があるが、本実施形態では、専ら潜熱蓄熱を利用する。潜熱蓄熱は、物質の潜熱を利用して、物質の相変化の熱エネルギーを蓄える。潜熱蓄熱は、蓄熱密度が高く、出力温度が一定である。潜熱蓄熱を利用する蓄熱材には、氷(水)、パラフィン(一般式C
nH
2n+
2で表される飽和鎖式炭化水素の総称)、
無機塩水溶液、無機塩水和物、包接水和物などの潜熱蓄熱部材が用いられる。蓄熱材に用いられる無機塩水溶液として、塩化カリウム(KCl)と塩化アンモニウム(NH
4Cl)とを水に溶解した水溶液、塩化ナトリウム(NaCl)と塩化アンモニウム(NH
4Cl)とを水に溶解した水溶液等が挙げられるが、本発明において蓄熱材はこれらの水溶液に限定されない。蓄熱材に用いられる無機塩水和物として、硫酸ナトリウム十水和物(Na
2SO
4・10H
2O)、酢酸ナトリウム三水和物、チオ硫酸ナトリウム五水和物、リン
酸水素二ナトリウム十二水和物とリン酸水素二カリウム六水和物との二元系組成物(融解点5℃)、硝酸リチウム三水和物を主成分とする硝酸リチウム三水和物と塩化マグネシウム六水和物との二元系組成物(融解点8〜12℃)または硝酸リチウム三水和物−塩化マグネシウム六水和物−臭化マグネシウム六水和物の三元系組成物(融解点5.8〜9.7℃)等が挙げられるが、本発明において蓄熱材はこれらの無機塩水和物に限定されない。
【0038】
また、第2の蓄熱材5aは、例えば、塩化ナトリウム水溶液およびCMC(カルボキシメチルセルロース)から構成することが可能である。
【0039】
[空隙層]
また、
図3Aおよび
図4Aに示すように、本実施形態に係る蓄熱パックは、第1の深絞り容器3に充填された第1の蓄熱材3aと、蓋材7との間に空隙層9を有する。
【0040】
このように、第1の深絞り容器3に充填された第1の蓄熱材3aと、蓋材7との間に空隙層9を形成することによって、空隙層9が断熱材の役割を担い、第1の蓄熱材3aの保持時間を長くすることができる。深絞り容器内に液体(ここでは蓄熱材)を充填する場合、深絞り容器の容積に対する液体の充填率は、製造プロセス上、多くとも70〜80%程度と言われている。例えば、深絞り容器に70〜80%程度充填された蓄熱パックを、容器底面を下向きに平に置いて相変化(すなわち、液相から固相へ変化)させる。この蓄熱パックを受熱体としての飲食物に接触させると、熱は、受熱体、深絞り容器底面、蓄熱材、空隙層、蓋材、外気の順に伝導する。これによって、空隙層は蓄熱材にとって外気から断熱効果を示し、結果として蓄熱材の保持時間を長くすることができる。さらに、蓄熱材は形状維持可能な粘性を有していることから、相変化後(すなわち、固相から液相)も上記の位置関係を維持するため、より保持時間を長くすることができる。
【0041】
[断熱材]
本実施形態に係る蓄熱パックにおいて、第1の深絞り容器3は、第2の深絞り容器5の反対側に断熱材を備えていても良い。
【0042】
このように、第1の深絞り容器3は、第2の深絞り容器5の反対側に断熱材をさらに備えることによって、保冷性能または保温性能をさらに高めることができる。断熱材としては、自然系、プラスチック系、ガラス繊維などの鉱物系が用いられる。自然系としては、セルロースファイバーや軽量軟質木質繊維ボード等が挙げられる。プラスチック系としては、ポリスチレンフォーム、硬質ウレタンフォーム、高発泡ポリエチレン、フェノールフォーム等が挙げられる。鉱物系としては、グラスウール、ロックウール、発泡ガラス等が挙げられるが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0043】
[熱交換ユニット]
以上説明した蓄熱パックを連設することによって、熱交換ユニットを構成することができる。
図5Aは、熱交換ユニットの平面図であり、
図5Bは、熱交換ユニットの使用例を示す概念図である。すなわち、本実施形態に係る熱交換ユニット20は、上記のいずれかに記載の蓄熱パック1が複数接続され、隣接する蓄熱パック間に関節機構9を有する。
【0044】
このように、蓄熱パック1が関節機構9を介して複数接続されているため、受熱体としての飲食物の形状に追従させることができ、結果として密着性を向上させることができる。例えば、受熱体がワイン等の飲料ボトルである場合、飲料ボトルの円周方向に蓄熱パックが複数接続された熱交換ユニットとすることで、蓄熱パックを曲面上に密着させることができる。また、ワインボトルやビール瓶などにおいては、高さ方向に断面積が段階的に小さくなるくびれ形状を有する場合がある。このような場合には、ワインボトルやビール瓶の高さ方向に蓄熱パックが複数接続することによって、蓄熱パックをくびれ形状に沿って密着させることができる。さらに、高さ方向に種類の異なる蓄熱材を充填することによって、急冷性能、或いは保冷性能を向上させることができる。
【0045】
[蓄熱パックの製造方法]
本実施形態に係る蓄熱パックの製造方法は、飲食物の温度管理を行なう蓄熱パックの製造方法であって、第1の金型によって凹形状を有する第1の深絞り容器(第1の収容部)を成型する工程と、第2の金型によって、少なくとも第1の深絞り容器の凹形状よりも大きい凹形状を有する第2の深絞り容器(第2の収容部)を成形する工程と、第1の深絞り容器に、予め定められた温度で相変化する第1の蓄熱材を充填する工程と、第2の深絞り容器に、第1の蓄熱材の相変化温度で液相状態を維持する第2の蓄熱材を充填する工程と、第2の蓄熱材が充填された第2の深絞り容器に、第1の蓄熱材が充填された第1の深絞り容器を積重させて、蓋材、第1の深絞り容器のフランジ部および第2の深絞り容器のフランジ部を接合する工程と、を少なくとも含む。
【0046】
また、次のような製造方法であっても良い。すなわち、第1の金型によって凹形状を有する第1の深絞り容器(第1の収容部)を成型する工程と、第2の金型によって、少なくとも第1の深絞り容器の凹形状よりも大きい凹形状を有する第2の深絞り容器(第2の収容部)を成形する工程と、第2の深絞り容器に、第1の蓄熱材の相変化温度で液相状態を維持する第2の蓄熱材を充填する工程と、第2の蓄熱材が充填された第2の深絞り容器に、第1の深絞り容器を積重させる工程と、第1の深絞り容器に、予め定められた温度で相変化する第1の蓄熱材を充填する工程と、蓋材、第1の深絞り容器のフランジ部および第2の深絞り容器のフランジ部を接合する工程と、を少なくとも含む。
【0047】
ここで、蓋材、第1の深絞り容器、第2の深絞り容器を構成するフィルム材としては、PCV(軟質)、PCV(硬質)、PE、CPP(無延伸)、OPP(延伸)、PET、NY等が、単独、或いは複数の構成にて用いられる。
【0048】
蓋材としては、NY//PE、NY//PP構成が一般的である。なお、本実施形態では、充填物が液体であり、内容物の漏洩が懸念されるため、PPよりも柔らかく溶着性に優れているNY//PE構成がより好ましい。なお、ガスバリア性が求められる場合には、CPP構成から成るフィルムを選定しても良い。
【0049】
図6Aおよび
図6Bは、第1の深絞り容器3の製造の様子を示す図である。
図6Aに示すように、第1の金型としての真空成型金型60に、硬質フィルム61を設置し、真空成型機を用いて真空成型を行なう。第1の深絞り容器3を成型するために用いる軟質フィルム材には、成型性の観点から、PP構成から成るフィルムが好ましい。本実施形態では、第1の深絞り容器3は、形状保持性が重要であることから、PVC(硬質)、PP構成から成るフィルムを選定することが好ましい。
【0050】
ここで、第1の深絞り容器は、蓋材と第2の深絞り容器との間に存在することから、例えば、PE//NY//PPのような3層から成るフィルムで構成するのが一般的である。しかしながら、上述したように、3層フィルムはヒートシール強度が弱いため、本実施形態では、敢えて、2層フィルム構成とし、フィルムの任意の一部に貫通口を設ける構成とした。
【0051】
このような工程により、
図6Bに示すように、凹形状を有する第1の深絞り容器3(第1の収容部)が成形される。
【0052】
図7Aおよび
図7Bは、第2の深絞り容器5の製造の様子を示す図である。
図7Aに示すように、第2の金型としての真空成型金型70に、軟質フィルム71を設置し、真空成型機を用いて真空成型を行なう。本実施形態においては、第2の深絞り容器は、保冷対象物との密着性が重要であることから、PVC(軟質)、PE構成から成るフィルムを選定することが好ましい。さらに、溶着する相手方がPE構成から成るフィルムの場合、同様にPE構成から成るフィルムを選定することがより好ましい。
【0053】
図8は、第2の蓄熱材を充填する工程を示す概念図である。この工程では、上記のように形成した第2の深絞り容器5内に、液体充填機を用いて、不凍材としての第2の蓄熱材5aを定量充填する。なお、液体充填機にはポンプ式充填機を使用することが好ましい。第2の蓄熱材としては、充填プロセス上、材料の跳返り・飛出し等の影響が無い最低限の粘性、且つ自重に対して形状維持性のある最低限の粘性を有することが好ましい。例えば、1000〜10000cP程度の粘度を有することが好ましい。
【0054】
図9は、フィルムを熱圧着する工程を示す概念図である。この工程では、上記のように形成した第1の深絞り容器3を、不凍材としての第2の蓄熱材5aが充填された第2の深絞り容器5上に位置決めし、第1の深絞り容器3を形成するフィルム材と第2の深絞り容器5を形成するフィルム材とを熱溶着する。このフィルムの熱圧着には、ヒートシーラーを用いることが好ましい。また、超音波溶着機を用いても良い。
【0055】
図10は、第1の蓄熱材を充填する工程を示す概念図である。この工程では、上記のように形成した第1の深絞り容器3内に、液体充填機を用いて、第1の蓄熱材3aを定量充填する。なお、液体充填機にはポンプ式充填機を使用することが好ましい。また、第1の蓄熱材3aは、自重に対して形状維持性のある粘性を有することが好ましい。例えば、1000〜10000cP程度の粘度がより好ましい。また、容器容積に対する蓄熱材の充填率は70〜90%程度とし、容器天面との間に空隙層が形成されている状態が好ましい。
【0056】
図11は、フィルムを熱圧着する工程を示す概念図である。この工程では、第2の深絞り容器5上に蓋材7を位置決めし、第2の深絞り容器5を形成するフィルム材と蓋材7とを熱溶着する。このフィルムの熱圧着には、ヒートシーラーを用いることが好ましい。また、超音波溶着機を用いても良い。蓋材7には、軟質プラスチックフィルムを使用することが好ましい。
【0057】
ここで、第2の深絞り容器5を形成するフィルムの天面の一部には貫通口8が設けられ、本工程における溶着時には、貫通口8を介して、第1の深絞り容器3を形成するフィルムと蓋材7とが溶着されることが好ましい。
【0058】
このように、第1の深絞り容器3と、第2の深絞り容器5が接合されることによって、第1の深絞り容器3と第2の深絞り容器5の位置関係が固定され、性能を向上させること、並びに繰返し性能を向上させることができる。ここで、第2の深絞り容器5は、
図7A〜
図11に示されるように、深さの異なる底面を有する形状であっても良い。例えば、ワインボトルのような高さ方向にくびれ形状を有する受熱体の場合、第2の深絞り容器5を高さ方向に深さが段階的に深くなるような形状とすることによって、受熱体としての飲食物との密着性を向上させることができる。接合手段としては、上記のような溶着として、超音波溶着、振動溶着、誘導溶着、高周波溶着、半導体レーザー溶着、熱溶着、スピン溶着などが挙げられるが、本発明は、これらに限定されない。
【0059】
以上のような製造方法を採ることにより、第2の蓄熱材5aが第1の蓄熱材3aの相変化温度で液相状態を維持し、第2の深絞り容器5が受熱体としての飲食物に接触する蓄熱パックを製造することが可能となる。
【0060】
[比較対照実験]
次に、本実施形態に係る蓄熱パックの効果を検証するために行なった比較対照実験について説明する。
図12は、実験手順を示す図である。
【0061】
(手順1)
液温が常温(25℃近辺)に保たれたワインボトルを準備する。
【0062】
(手順2)
ワインボトル周囲に冷却した蓄熱材、 或いは不凍材、或いはその両方を巻きつける。
【0063】
(手順3)
蓄熱材の外周に発泡断熱材を巻きつける。
【0064】
(手順4)
ワインボトルを25℃環境下の保温庫に入れ、ボトル中央部のワイン液温の変化を測定する。
【0065】
図13は、実験結果の評価方法を示す図であり、以下の手法を用いる。
【0066】
(評価方法)
冷却開始後の「到達温度」と「到達時間」を実測する。また、冷却スピードを評価するため、急冷速度を下記と定義する。この指標を用いて、以下の各実施例における急冷性能を評価する。
急冷度=(T初期−T10min)/10min
【0067】
図14は、比較例1〜3および実施例1〜3の蓄熱材の構成を示す表である。この表に示されるように、蓄熱材を作製し、上記の実験手順に従って評価を実施した。なお、比較例1〜3および実施例1〜3に示すように、蓄熱パックの形態がそれぞれ異なっている。
【0068】
図15は、蓄熱材の充填および包装の概要を示す図である。
【0069】
(1)撹拌槽に水道水とNaCl(塩化ナトリウム)を入れ、150rpm/10min撹拌・溶解させ、NaCl
23wt%水溶液を作製する。
【0070】
(2)水溶液中に、CMCを添加し、300rpm/15min撹拌・溶解させ、CMC
5wt%が添加されたNaCl水溶液を作製する。
【0071】
(3)ポンプを動作させ、上記(2)で作製した水溶液を、縦ピロー型包装機にてフィルム包装し、合計300gのパッケージを作製する。
【0072】
[比較例1」
図16は、
図12で示した実験手順に従って、
図14に示した比較例1について、ワインの液温の温度測定を行なった結果を示す図である。ボトルとの密着性が良いため、冷却の傾き(△t/△T)は良好であるが、熱量が十分でないため、到達温度が不十分であるとい
う結果を得た。
【0073】
[比較例2]
図17は、
図12で示した実験手順に従って、
図14に示した比較例2について、ワインの液温の温度測定を行なった結果を示す図である。比較例2では、KCl(塩化カリウム)
21wt%水溶液+CMC
5wt%の蓄熱材を生成し、撹拌・包装機にて、蓄熱パックを作製した。凍結材のため潜熱を有しており、比較例1に比べて到達温度を満たす結果を得た。一方、密着性が不十分であるため、冷却の傾きは比較例1よりも劣る結果を得た。
【0074】
[比較例3]
図18Aは、比較例3に係る蓄熱パックを作製する概要を示す図であり、
図18Bは、比較例3の平面図であり、
図18Cは、比較例3の側面図である。すなわち、比較例1と同様の方法で、不凍材[NaCl(塩化ナトリウム)
23wt%水溶液+CMC
5wt%]を作製し、比較例2と同様の方法で、蓄熱材[KCl(塩化カリウム)
21wt%水溶液+CMC
5wt%]を作製した。
図18Aに示す縦ピロー型包装機を用いて、フィルムパックの中に、不凍材とフィルムパック化された蓄熱材が充填されたパックinパック蓄熱パックを作製した。
【0075】
図19は、
図12で示した実験手順に従って、上記のように作製した比較例3について、ワインの液温の温度測定を行なった結果を示す図である。比較例3では、不凍材と蓄熱パックを充填したパックinパック構成により、比較例1同等の冷却速度を維持しつつ、十分な到達温度を得ることができた。しかしながら、ここで言う適温範囲は、白ワインの適温範囲であって、更に適温の低い、スパークリングワイン(2〜6℃)の仕様を実現するには十分ではない。
【0076】
[実施例1]
図20は、
図12で示した実験手順に従って、
図6A〜
図11を用いて説明した方法で作製した実施例1について、ワインの液温の温度測定を行なった結果を示す図である。実施例1では、
図14に示すように、第1の蓄熱材3aを「KCl(塩化カリウム)
21wt%水溶液+CMC
5wt%」とし、不凍材としての第2の蓄熱材5aを「NaCl(塩化ナトリウム)
23wt%水溶液+CMC
5wt%」とした。実施例1は、軟質フィルムから構成され、第2の蓄熱材5a(不凍材)が充填された第2の深絞り容器5内に、硬質フィルムから構成され、第1の蓄熱材3aが充填された第1の深絞り容器3が熱溶着された構成を取ることで、スパークリングワインの適温範囲(2〜6℃)に素早く到達する構成を実現することができた。
【0077】
[実施例2]
図21は、
図12で示した実験手順に従って、
図6A〜
図11を用いて説明した方法で作製した実施例2について、ワインの液温の温度測定を行なった結果を示す図である。実施例2では、
図14に示すように、第1の蓄熱材3aを「NH
4Cl(塩化アンモニウム
)
18wt%水溶液+CMC
5wt%」とし、不凍材としての第2の蓄熱材5aを「NaCl(塩化ナトリウム)
23wt%水溶液+CMC
5wt%」とした。実施例2では、軟質フィルムから構成され、第2の蓄熱材5a(不凍材)が充填された第2の深絞り容器5内に、硬質フィルムから構成され、第1の蓄熱材3aが充填された第1の深絞り容器3が熱溶着された構成を取ることで、スパークリングワインの適温範囲(2〜6℃)に素早く到達する構成を実現することができた。
【0078】
[実施例3]
図22は、
図12で示した実験手順に従って、
図6A〜
図11を用いて説明した方法で作製した実施例3について、ワインの液温の温度測定を行なった結果を示す図である。実施例3では、
図14に示すように、第1の蓄熱材3aを「TBAB(テトラブチルアンモニウムブロミド)
40wt%水溶液+CMC
5wt%」とし、不凍材としての第2の蓄熱材5aを「NaCl(塩化ナトリウム)
23wt%水溶液+CMC
5wt%」とした。軟質フィルムから構成され、第2の蓄熱材5a(不凍材)が充填された第2の深絞り容器5内に、硬質フィルムから構成され、第1の蓄熱材3aが充填された第1の深絞り容器3が熱溶着された構成を取ることで、赤ワインの適温範囲(14〜18℃)に素早く到達し、且つ2時間以上、適温を維持可能な構成を実現することができた。
【0079】
図23は、実験結果をまとめた表である。比較例1は赤ワインに対してのみ有効であり、比較例2および比較例3は赤ワインと白ワインついてのみ有効であったが、比較例1〜3は、スパークリングワインについては有効ではなかった。これに対し、実施例1および実施例2は、赤ワイン、白ワインおよびスパークリングワインのすべてについて有効であることが分かった。また、実施例3については、赤ワインについて、十分な急冷特性を示すと共に、適温を2時間以上維持できることが分かった。
【0080】
[変形例1]
本実施形態に係る蓄熱パックは、アイシングパックに適用することが可能である。
図24Aは、本実施形態の変形例1に係るアイシングパックの平面図であり、
図24Bは、
図24A中のB−B断面図である。アイシングパック240は、パック本体241、周辺部241a、収容部241bを備えている。また、アイシングパック240は、バンド部242R、242L、フック部243R、ループ部243Lを備えている。この構成により、保冷対象物を、所望の温度に素早く到達させることが可能となる。
【0081】
[変形例2]
本実施形態に係る蓄熱パックは、保冷アイスマスクに適用することが可能である。
図25Aは、本実施形態の変形例2に係る保冷アイスマスクの平面図であり、
図25Bは、
図25A中のD−D断面図である。保冷アイスマスク30は、右眼保冷部31Rと、左眼保冷部31Lと、接続部32と、ゴムバンド34R、34Lを備えている。この構成により、眼を、所望の温度に素早く到達させることが可能となる。
【0082】
[変形例3]
本実施形態に係る蓄熱パックは、アイス枕に適用することが可能である。
図26は、本実施形態の変形例3に係るアイス枕の概要を示す図である。
図26に示すように、気泡入緩衝材を用いて、アイス枕の表面を細かいひだ状の構成とする。すなわち、アイス枕260は、第1の蓄熱材3aを有する第1の収容部261と、第2の蓄熱材5aを有する第2の収容部262と、を備える。これにより、人体(頭)との接触面積を増やし、顕著な急冷感を得ることが可能となる。
【0083】
[変形例4]
変形例4において、
図6A〜
図11に示した方法で以下に記載の蓄冷マットを作製した。
図27は、変形例4に係る蓄冷マットの分解図であり、
図28は、蓄冷マット280が完成した様子を示す図である。この蓄冷マット280は、蓋材7、第1の深絞り容器3、および第2の深絞り容器5を有し、第1の深絞り容器3には、第1の蓄熱材3aが充填されている。また、第2の深絞り容器5には、第2の蓄熱材5aが充填されている。変形例4では、第1の深絞り容器3は、「三菱樹脂株式会社製の共押多層フィルム“F116_350um”」を用い、第2の深絞り容器5aは、「三菱樹脂株式会社製の共押多層フィルム“C131_200um”」を用いる。蓋材には、「市販のNY/LL_75um」を用いた。
【0084】
また、第1の蓄熱材3aは、「KCl(塩化カリウム)_20wt%水溶液」であり、第2の蓄熱材5aは、「NaCl(塩化ナトリウム)_23wt%水溶液+CMC_5wt%」とする。また、第1の蓄熱材3aの搭載量は、40g×6=240gとし、第2の蓄熱材5aの搭載量は、350gとした。
【0085】
次に、変形例4における測定方法について説明する。冷凍室内(-18℃前後)で蓄冷マット280を冷却し、
図29に示すように、蓄冷マット280の上に市販のアルミ製皿282を載せる。次に、アルミ製皿282の上に水(500g)を注ぐ。この水は、冷蔵室(4〜5℃)で保冷したものを用いる。そして、水温の経時変化を測定した。また、対照実験として、蓄冷マット280を用いない場合を併せて測定した。
【0086】
図30は、変形例4における測定結果を示すグラフである。
図30において、周囲温度(1)は、30℃弱を維持しており、変化はない。蓄冷マット280を用いない場合、アルミ製皿282中の水温の温度変化(2)は、測定開始から約30分の間で急上昇し、60分後には約22度に到達した。これに対し、蓄冷マット280を用いた場合、アルミ製皿282中の水温の温度変化(3)は、測定開始から約30分の間はやや上昇して、8℃〜9℃となったが、60分を過ぎるころまで、その温度が維持され、その後、上昇した。また、蓄冷マット280の表面温度は、測定開始から約30分の間はやや上昇して、−5℃なったが、60分を過ぎるころまで、その温度が維持され、その後、上昇した。この場合、蓄冷マット280中の蓄冷材は、約60分後まで相変化していたと考えられる。
【0087】
この結果により、蓄冷マット280を用いることによって、蓄冷マット280上に載置した保冷対象物(変形例4では、水)を、約60分、一定温度に保持できることが分かった。
【0088】
なお、本実施形態に係る蓄熱パックは、ワインや日本酒などの飲み頃温度を保冷する使用シーン、或いは変形例4のような蓄冷マットの上に前菜や果物などを載せて食べ頃温度を保持するような使用シーンに好適である。さらに、これらのシーン以外にも、冷凍肉や冷凍魚などの冷凍食品類を、急速、且つ高品位に解凍可能な解凍機や、カレーやシチューなど作り立ての料理や、乳幼児のミルクなどの熱を素早く取ることが可能な粗熱取り機に用いられることも好ましい。
【0089】
[第2の実施形態]
第2の実施形態では、保冷材の分割数を増やすことなく、保冷材と飲食物との密着性を向上させるため、第2の深絞り容器に「形状追従性」を付与する。第2の深絞り容器に「形状追従性」を付与するために、第2の深絞り容器を軟質性材料で形成すると共に、第2の深絞り容器の容量を増大すると共に、第2の深絞り容器に充填する不凍材の量を増加する。これにより、飲食物の形状に追従するように、第2の深絞り容器が自由に変形し、第2の深絞り容器に充填されている不凍材がボトルに隙間なく密着させることが可能となる。
【0090】
[内トレイ]
図34は、第2の実施形態に係る内トレイを示す図であり、
図34(a)は内トレイの上面図であり、
図34(b)は内トレイの正面図であり、
図34(c)は内トレイの側面図であり、
図34(d)は内トレイの斜視図である。内トレイ100は、第1の深絞り容器に相当する。そして、相対的に浅く一定の深さを有する第1の内トレイ102と、一方から他方へ向けて深くなっていく第2の内トレイ104とから構成されている。第2の実施形態では、第1の内トレイ102が幅方向に3つ連接され、第2の内トレイ104が幅方向に3つ連接され、これらの第1の内トレイ102と第2の内トレイ104とが長手方向に接続されている。
図34(c)の側面図に示すように、第1の内トレイ102は、一定の深さを有しているが、第2の内トレイ104は、紙面に向かって左から右に行くに従って深くなっている。また、
図34(b)の正面図に示すように、内トレイ100の底部106を、開口側に凸となるように形成しても良い。これにより、内トレイ100の底部106が、ボトルの外面に沿い、密着性をより高めることが可能となる。
【0091】
内トレイ100の製作手順は以下の通りである。すなわち、キャビティー金型に包材を設置し、真空成型機を用いて、第1の深絞り容器としての内トレイ100を形成する。包材には、硬質プラスチックフィルムを使用することが好ましく、具体的には、次のような仕様がより好ましい。すなわち、構成が「PE/PA/PE、PP/PA/PP」であり、総厚が「300〜500um」であり、硬さが「ヤング率≧3000Mpa」である。このような仕様を満たす包材としては、例えば、「三菱樹脂株式会社製の共押多層フィルム“F116_350um”」などが挙げられる。また、酸素バリアや水蒸気バリアなど、包材に求める性能がそれほど高くない場合には、PE単層/300〜500umを用いるのが良い。これによって、包材コストを抑えること、ならびに容器の成型性を向上させることが可能となる。
【0092】
一方、冷凍室等で冷却/凍結させた本発明の熱交換ユニットを外に取出して使用する場合、取出した直後の該熱交換ユニットの温度(冷凍室内の温度)と外の環境温度の差が大きく、該熱交換ユニットの表面に結露が発生する場合がある。そのような場合には、不織布素材の包材や表面に界面活性剤が塗布された包材を用いるのが良い。これによって、結露の発生を抑えることができる。例えば、「三井化学東セロ株式会社製のLLDPE特殊グレード“TNF”」などが挙げられる。
【0093】
[外トレイ]
図35は、第2の実施形態に係る外トレイを示す図であり、
図35(a)は外トレイの上面図であり、
図35(b)は外トレイの正面図であり、
図35(c)は外トレイの側面図であり、
図35(d)は外トレイの斜視図である。外トレイ110は、第2の深絞り容器に相当する。そして、相対的に浅く一定の深さを有する第1の外トレイ112と、一方から他方へ向けて深くなっていく第2の外トレイ114とから構成されている。このため、外トレイ110の容量は、内トレイ100の容量よりも大きい。
【0094】
このように、外トレイ110の容量は、内トレイ100の容量よりも大きいので、第2の蓄熱材としての不凍材をより多く使用することができる。また、外トレイ110は柔軟であるため、変形の自由度が高い。このため、外トレイ110を飲食物の外形に追従させ、飲食物との密着性を高めることが可能となる。なお、外トレイ110の容量は、好ましくは内トレイ100の容量の2倍〜10倍である。
【0095】
第2の実施形態では、第1の外トレイ112が幅方向に3つ連接され、第2の外トレイ114が幅方向に3つ連接され、これらの第1の外トレイ112と第2の外トレイ114とが長手方向に接続されている。
図35(c)の側面図に示すように、第1の外トレイ112は、一定の深さを有しているが、第2の外トレイ114は、紙面に向かって左から右に行くに従って深くなっている。また、
図35(b)の正面図に示すように、外トレイ110の底部116を、開口側に凸となるように形成しても良い。これにより、外トレイ110の底部116が、ボトルの外面に沿い、密着性をより高めることが可能となる。
【0096】
外トレイ110の製作手順は以下の通りである。すなわち、キャビティー金型に包材を設置し、真空成型機を用いて第2の深絞り容器としての外トレイ110を形成する。包材には、軟質プラスチックフィルムを使用することが好ましく、具体的には、次のような仕様がより好ましい。すなわち、構成が「PA/PE、PA/PP」であり、総厚が「100〜300um」であり、硬さが「ヤング率が3000Mpa以下、好ましくは、600Mpa以下」である。このような仕様を満たす包材としては、例えば、「三菱樹脂株式会社製の共押多層フィルム“C131_200um”」などが挙げられる。
【0097】
また、酸素バリアや水蒸気バリアなど、包材に求める性能がそれほど高くない場合には、PE単層/100〜300umを用いるのが良い。これによって、包材コストを抑えること、ならびに容器の成型性を向上させることが可能となる。一方、冷凍室等で冷却/凍結させた本発明の熱交換ユニットを外に取出して使用する場合、取出した直後の該熱交換ユニットの温度(冷凍室内の温度)と外の環境温度の差が大きく、該熱交換ユニットの表面に結露が発生する場合がある。そのような場合には、不織布素材の包材や表面に界面活性剤が塗布された包材を用いるのが良い。これによって、結露の発生を抑えることができる。例えば、「三井化学東セロ株式会社製のLLDPE特殊グレード“TNF”」などが挙げられる。
【0098】
また、
図39で示したように、本発明に係る熱交換ユニットは、ワインボトルの上から被せるための構成を採っている。ユーザが熱交換ユニットをワインボトルに被せる過程においては、熱交換ユニットの第1の外トレイ112および第2の外トレイ114を押し潰しながら装着させるため、特に、ワインボトルと接触する上段側の第2の外トレイ114を構成する包材については、「摺動性の付与」が重要となる。
【0099】
内トレイ用包材としては、前述のように、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等が一般的であるが、それらの摩擦係数は、ナイロンが0.37、ポリエチレンが0.18、ポリプロピレンが0.3、ポリスチレンが0.5程度である。これらの包材の表面に、摩擦係数が小さいもの、例えば、摩擦係数が0.04〜0.10であるテフロン(登録商標) やフッ素樹脂(PTFE、PFA、FEPなど)をコーティングした包材、或
いは、同包材をそのまま適用することによって、脱着性を向上させることが可能となる。
【0100】
このように、内トレイ100の包材のヤング率は、3000MPa以上であると共に、外トレイ110の包材ヤング率は、3000MPa未満であるので、内トレイ100の強度を維持しつつ、外トレイ110を柔軟に変形させることが可能となる。
【0101】
[蓄熱パックの構成]
図36は、第2の実施形態に係る蓄熱パック200の概略構成を示す図である。上述した方法で形成した内トレイ100内に、液体定量充填機を用いて、第1の蓄熱材としての潜熱材108を充填する。潜熱材108を選定する場合、少なくとも飲料対象物が必要とする温度以下で相変化する潜熱蓄熱材が好ましい。具体的には、塩化カリウム水溶液、塩化アンモニウム水溶液、テトラブチルアンモニウムブロミド水溶液、或いはパラフィン系蓄熱材等であっても良い。また、潜熱材108には、粘性が付与されていても良い。粘度としては、100cP以上、好ましくは200cP以下が望ましい。この粘度については、後述する。また、増粘材としては、ローカストビーンガム、グァーガム、カラギーナン、ジェランガムや吸水ポリマー、アクリル酸ポリマーなどが挙げられる。
【0102】
次に、上述した方法で形成した外トレイ110内に、液体定量充填機を用いて、第2の蓄熱材としての不凍材118を充填する。不凍材118を選定する場合、少なくとも上記潜熱材108が凍結する温度で液相状態を保つ材料が好ましい。具体的には、塩化ナトリウム水溶液、塩化カルシウム水溶液、或いはエチレングリコールやポリプロピレングリコール、シリコンオイル等であっても良い。また、不凍材118には、粘性が付与されていても良い。粘度としては、100cP以上、好ましくは200cP以下が望ましい。この粘度については、後述する。増粘材としては、ローカストビーンガム、グァーガム、カラギーナン、ジェランガムや吸水ポリマー、アクリル酸ポリマーなどが挙げられる。
【0103】
次に、上記のように製作した「潜熱材108が充填された内トレイ100(これを潜熱
層と呼ぶ)」と、上記のように製作した「不凍材118が充填された外トレイ110(これを不凍層と呼ぶ)」と、断熱機能を有し、或いは断熱材を貼り付けた蓋材120とをブリスターシール/包装機を用いて、これらの三層部材を熱溶着する。
【0104】
このように、蓋材自体が断熱性を有するため、飲食物の反対側から熱が出入りすることを防止し、飲食物の温度管理の効率化を図ることが可能となる。
【0105】
ここで、蓋材120を選定する場合、「PA/PE、PA/PP構成」が一般的である。なお、ガスバリア性が求められる場合には、CPP構成、或いはEVOH構成から成るフィルムを選定しても良い。また、酸素バリアや水蒸気バリアなど、包材に求める性能がそれほど高くない場合には、PE単層を用いるのが良い。これによって、包材コストを抑えることが可能となる。
【0106】
一方、冷凍室等で冷却/凍結させた本発明の熱交換ユニットを外に取出して使用する場合、取出した直後の該熱交換ユニットの温度(冷凍室内の温度)と外の環境温度の差が大きく、該熱交換ユニットの表面に結露が発生する場合がある。そのような場合には、不織布素材の包材や表面に界面活性剤が塗布された包材を用いるのが良い。これによって、結露の発生を抑えることができる。例えば、「三井化学東セロ株式会社製のLLDPE特殊グレード“TNF”」などが挙げられる。
【0107】
ブリスターシール/包装機としては、「株式会社タイセイテクノ社製“TB5060”、“TB6090”」などが挙げられる。断熱材としては、硬質ウレタンフォーム、高発泡ポリエチレン、ポリオレフィンフォーム(ペフ)などが挙げられる。
【0108】
[熱交換ユニットの構成]
図37は、熱交換ユニットを示す図である。ここでは、上記のように製作した2つの蓄熱パック200を、伸縮性接続ゴム122を介して連接し、熱交換ユニット202を構成した様子を示す。
図37では、熱交換ユニット202を、外トレイ110側から見た様子を示している。
図37に示すように、2つの蓄熱パック200を、伸縮性接続ゴム122を用いて接続する。伸縮性接続ゴム122を選定する場合、天然ゴム、合成ゴム、シリコンゴム、ウレタンゴムなどが挙げられる。また、伸縮性接続ゴム122の締付け力としては、15N以上であることが好ましい。上記加重以上の締付力を与えることによって、ワインボトル等の飲料対象物と蓄熱パック200との密着性を更に向上させることができ、急冷性能の向上が期待できる。
【0109】
なお、各蓄熱パック200を同心円の中心方向に押圧する押圧部をさらに備えても良い。押圧部としては、例えば、円環状のゴムバンドが該当する。これにより、外トレイ110を飲食物により強く密着させることが可能となる。また、押圧部の押圧力は、25N以上であることが望ましい。25N以上であれば、外トレイ110を飲食物に強く密着させることが可能となる。
【0110】
[熱交換ユニットの形態]
図38は、熱交換ユニットの形態を示す図である。
図38(a)は熱交換ユニット202を寝かせた状態を示し、
図38(b)は熱交換ユニット202を立て掛けた状態を示し、
図38(c)は熱交換ユニット202が完成した状態を示している。
図38(a)に示すように、熱交換ユニット202を寝かせた状態にすると、第1の外トレイ112は変化しないが、第2の外トレイ114は紙面に向かって左側が高くなった状態となる。次に、
図38(b)に示すように、熱交換ユニット202を立て掛けた状態にすると、第2の外トレイ114は、不凍材が充填された軟質包材からなるため、図中、点線で囲んだように、自重で垂れ下がった状態となる。
図38(c)に示す完成体においても、立てた状態にすると、第2の外トレイ114は、鉛直下方に垂れ下がった状態となっている。
【0111】
このように、蓄熱パック200を、伸縮性接続ゴム122で接続することにより、各蓄熱パック200は、同心円上に配列するように接続されるので、飲食物を包囲することができる。また、関節機構が伸縮性を有するため、飲食物の外形に応じて関節機構が伸縮し、各蓄熱パック200を飲食物により強く密着させることが可能となる。その結果、飲食物の温度管理の効率化を図ることが可能となる。
【0112】
図38(c)に示す完成体を、ワインボトル等の飲料物の上からを被せると、
図38(b)に示したように、垂れ下がった状態の不凍材層としての第1の外トレイ112および第2の外トレイ114は、飲料物と接触すると押上げられ、異形状を有する飲料物の形状に追従し、隙間なく密着する。飲料物を構成する容器は、例えば、ワインボトルに代表されるように、上段側が細いネックを有し、下段側に相対的に太いボディを有する。このように、場所によって太さ(径)の異なる飲料物用容器であっても、第1の外トレイ112および第2の外トレイ114がその外形に追従するように変形するため、飲料物への密着性を向上させることが可能となる。すなわち、急冷という観点においては、飲料物の上段側を如何に冷却させるかが非常に重要であるが、第2の実施形態に係る熱交換ユニットによれば、飲料物の特に上段部の形状に依らず、第1の外トレイ112および第2の外トレイ114が追従可能であるため、密着性が高まり、複数種の飲料対象物に対応が可能となる。
【0113】
図39は、第2の実施形態に係る熱交換ユニットの使用状態を段階的に示した図である。
図39中、紙面に向かって左から右に向かって状態が変化している。
図39では、ブルゴーニュタイプのワインボトル10に熱交換ユニットを装着させた。
図39に示すように、(1)下段側の第1の外トレイ112をワインボトル10に接触させる。(2)次に、上段側の第2の外トレイ114がボトル形状に沿って変形する。(3)上段側および下段側ともに、潜熱材層が不凍材層を介してワインボトル10に隙間なく密着する。このように、場所に応じて径が異なるワインボトル10に、隙間なく密着可能な熱交換ユニットを実現することが可能となる。
【0114】
このように、上段部と下段部の2つの部分が飲食物に接触するため、相対的に小さい蓄熱パックを多数接続する場合よりも、隙間を減らすことができ、外トレイ110と飲食物との密着性を高めることが可能となる。また、上段部の外トレイ110が相対的に大きいため、飲食物が、例えば、瓶のように、鉛直上方が細く、鉛直下方が太い形状を有する場合であっても、外トレイ110が飲食物に密着し、温度管理の効率を高めることが可能となる。
【0115】
[第2の実施形態の比較対照実験]
次に、第2の実施形態に係る熱交換ユニットの効果を検証するために行なった比較対照実験について説明する。
【0116】
(手順1)
熱交換ユニットを冷蔵庫の冷凍室、或いは、−18〜−20℃に設定した低温恒温槽で凍結させる。
【0117】
(手順2)
潜熱材が凍結した熱交換ユニットを恒温槽から取出し、飲料対象物に装着させる。
【0118】
(手順3)
手順2を経た熱交換ユニットを、25〜30℃程度に設定した定温恒温槽内に投入し、飲料物の液温(2点)の変化(冷却特性)を測定する。温度測定ポイントは、
図40に示
すように、飲料物の下から100mmの箇所と、下から200mmの箇所とした。
【0119】
(評価方法)
図13は、実験結果の評価方法を示す図であり、以下の手法を用いる。すなわち、冷却開始後の「到達温度/時間」を実測する。また、冷却スピードを評価するため、急冷速度を下記と定義する。
急冷度=(T初期−T30min)/30min
【0120】
図41は、第2の実施形態の比較対照実験における比較例4〜6および実施例4〜7の不凍材および潜熱材の構成を示す図である。比較例4では、熱交換ユニットを、ワインボトルの上段側において、巾着構造でワインボトルに接触させる手法を採っている。比較例5では、熱交換ユニットを、ワインボトルに単に巻き付けた状態となっている。比較例6では、比較例5に対する改善を期待して、保冷材(不凍材・潜熱材)を、高さ方向に3分割した構成を採る。
【0121】
図41の表に示されるように、不凍材および潜熱材を作製し、上記の実験手順に従って評価を実施した。なお、この比較対照実験に使用する試作品は、以下のように作製した。
(1)第1の撹拌槽に水道水とNaCl(塩化ナトリウム)を入れ、攪拌機にて攪拌・溶解させ、NaCl_23%水溶液を作製した。ここで、攪拌条件は、150rpm/10minとした。
(2)同様に、第2の撹拌槽に水道水とKCl(塩化カリウム)を入れ、攪拌機にて攪拌・溶解させ、KCl_20%水溶液を作製した。ここで、攪拌条件は、150rpm/10minとした。
(3)真空成型で成型したトレイに、ポンプ充填機を用いて、(1)で作製したNaCl_23%水溶液、(2)で作製したKCl_20%水溶液を定量充填した。
(4)ブリスターシール機にて、トレイと蓋材をシールし、熱交換ユニットを作製した。
【0122】
[比較例4]
図42は、
図41で示した比較例4について、ワインの液温の温度測定を行なった結果を示す図である。比較例4では、熱交換ユニットを、ワインボトルの上段側において、巾着構造でワインボトルに接触させる手法を採っている。ワインボトルは、ブルゴーニュタイプである。比較例4では、ワインボトルの上段側の密着性が確保され、その結果、飲料物を白ワインの飲み頃の温度(5〜8℃)に到達させることができた。しかしながら、巾着の締付け具合が測定毎に異なり、測定結果にもバラつきが発生することを確認した。
【0123】
[比較例5]
図43は、
図41で示した比較例5について、ワインの液温の温度測定を行なった結果を示す図である。ワインボトルは、ボルドータイプである。比較例4で用いた試作品同様の熱交換ユニットを、ボルドータイプのワインボトルに装着し、測定を実施した。比較例5では、熱交換ユニットをワインボトルに単に巻き付けた状態となっており、さらに、比較例4とワインボトルの形状が異なることから、特に上段側の密着性が悪く、比較例4で達成していた白ワインの適温に到達しないという結果を得た。
【0124】
[比較例6]
図44は、
図41で示した比較例6について、ワインの液温の温度測定を行なった結果を示す図である。ワインボトルは、ボルドータイプである。比較例6では、比較例5に対する改善を期待して、保冷材(不凍材・潜熱材)を、高さ方向に3分割した構成を採る。また、比較例6では、関節機構を設け、上段側の密着性を改善することで比較例5に対し到達温度が下がる結果を得た。しかしながら、関節機構付与により容器に対する総接触面積が小さくなり、結果として性能が低下するという懸念がある。
【0125】
[実施例4]
図45は、
図41で示した実施例4について、ワインの液温の温度測定を行なった結果を示す図である。ワインボトルは、ブルゴーニュタイプである。
図45に示すように、本発明によれば、熱交換ユニットが、ワインボトルに対して一様に密着可能な状態となり、比較例4〜6に比べて、急冷速度が早く、且つ所望の温度以下で保冷可能な性能を得た。
【0126】
[実施例5]
図46は、
図41で示した実施例5について、ワインの液温の温度測定を行なった結果を示す図である。ワインボトルは、ボルドータイプである。
図46に示すように、実施例4同様に、本発明の構成によって、熱交換ユニットが、ワインボトルに対して一様に密着可能な状態となり、比較例4〜5に比べて、急冷速度が早く、且つ所望の温度以下で保冷可能な性能を得た。
【0127】
[実施例6]
図47は、
図41で示した実施例6について、ワインの液温の温度測定を行なった結果を示す図である。ワインボトルは、ブルゴーニュタイプである。
図47に示すように、実施例6では、熱交換ユニットが、ワインボトルに対して一様に密着可能な状態となり、赤ワインの飲み頃である温度(12〜15℃)に素早く到達し、且つ保冷可能な性能を得た。
【0128】
[実施例7]
図48は、
図41で示した実施例7について、ワインの液温の温度測定を行なった結果を示す図である。ワインボトルは、ボルドータイプである。
図48に示すように、実施例6同様に、本発明の構成によって、熱交換ユニットが、ワインボトルに対して一様に密着可能な状態となり、比較例4〜5に比べて、急冷速度が早く、且つ所望の温度以下で保冷可能な性能を得た。
【0129】
図49は、実験結果をまとめた表である。白ワインに適用した場合、比較例4は有効であったが、比較例5は有効ではなかった。また、比較例4も良好であったものの、巾着の締付け具合が測定毎に異なるため、同じ条件で何度か測定したところ、測定結果にバラつきが発生することが確認された。比較例6は、比較例5よりは有効と言えるが、十分に有効であるとは言えない。これらの比較例4〜6に対し、実施例4〜7は、ワインボトルがブルゴーニュタイプであってもボルドータイプであっても有効であった。これにより、本実施形態によれば、ワインボトルの形状を問わず、ワインを所望の温度にすることが可能であると言える。
【0130】
[蓄熱材(不凍材および潜熱材)の粘性について]
蓄熱材に粘性を付与させる目的は二点ある。
(1)重力の影響を受けない形状維持性を付与すること。
図4Aおよび
図4Bで示したように、蓄熱材の保持状態が、置き方によって変わってしまう。例えば、蓄熱材に粘性が無い場合、同ユニットを立掛けると、蓄熱材が垂れ下がり、熱のパスが発生してしまう。この課題を解決するためには、上述したように、蓄熱材の粘度を1000cP以上とする。
(2)搬送時の液こぼれを低減すること。
蓄熱材をトレイに充填後、シール工程まで搬送する際に、搬送による揺れによってトレイから蓄熱材がこぼれてしまう恐れがある。搬送速度DownとタクトUPはトレードオフの関係がある。これを改善させるため、蓄熱材に粘性を付与させることによって液面の揺れを低減させる。本発明者らは、一つの目安として、トレイの容積に対して、80%充填する場合には約100cP以上あれば良いことを計算で確認した。
【0131】
[蓄熱材の粘性と液面の揺れ]
上記の手法で求めた搬送速度でトレイを「搬送から停止」とした場合における充填材液面の揺れを、ANSYS−CFXを用いて計算した。その結果、粘度が「1.0cP」である場合は、液面が大きく揺れたが、粘度が「100cP」である場合は、液面は揺れなかった。
【0132】
図50は、蓄熱材の粘度に対する液面変化量を表す図である。
図50に示されるように、充填率が70±0.1%の状態では、トレイの高さを10mmとすると、液面の高さは約7mmとなる。そこで、液面変化量が3mmを超えると蓄熱材が溢れることとなる。液面変化量が2mm以下に抑えられれば、蓄熱材の溢れを抑制することが可能となる。
図49によれば、蓄熱材の粘度が100cPであれば、液面変化量が2mm未満となり、実用に耐え得ると言える。そこで、本実施形態では、搬送時の液こぼれを低減するという観点で、蓄熱材の粘度を100〜200cPと規定した。
【0133】
[第3の実施形態]
[第2の深絞り容器の材料について]
図1に示したように、第2の深絞り容器5は、飲料物としてのワインボトル10に直接接触する。ワインボトル10などの保冷対象物の温度を、所望の温度に素早く到達させるためには、保冷対象物と直接接触する第2の深絞り容器5に、高い熱伝導率を有する包材を選定することが好ましい。この包材は、プラスチックから構成されることが一般的であるが、その熱伝導率は、
図51に示す通りである。すなわち、ポリエチレン(低密度)は0.33[W/m・K]、ポリエチレン(高密度)は0.46〜0.52[W/m・K]、ポリプロピレンは0.12[W/m・K]、ポリスチレンは0.10〜0.14[W/m・K]、ポリカーボネートは0.19[W/m・K]、ポリエチレンテレフタレートは0.14[W/m・K]、ポリアミド6(ナイロン6)は0.35〜0.43[W/m・K]である。
【0134】
図51に示した包材のうち、選定すべき樹脂としては、高密度ポリエチレン(LDPE)、低密度ポリエチレン(HDPE)、または、ポリメチルメタクリレート(PMMA)が好ましい。さらに好ましくは、高熱伝導率の粒子(フィラー)を分散した複合プラスチックからなる包材を選定するのが良い。具体的な粒子(フィラー)としては、シリカ、アルミナ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、などが挙げられる。各フィラーの熱伝導率は、
図52に示すとおりである。
【0135】
図52に示すように、各フィラーの熱伝導率[W/m・K]は、酸化物フィラーとしてのシリカは2〜4[W/m・K]、酸化物フィラーとしてのアルミナは3〜7[W/m・K]、窒化ケイ素は5〜10[W/m・K]、炭化ケイ素は7〜12[W/m・K]、窒化アルミニウムは5〜13[W/m・K]、窒化ホウ素は12〜45[W/m・K]である。そして、例えば、ポリアミドフィルムに、30vol%の窒化ホウ素フィラーを添加すると、熱伝導率は、およそ3.0W/m・Kに上昇する。
【0136】
図53は、フィラー添加量(vol%)と熱伝導率[W/m・K]との関係を示す図である。
図53に示すように、フィラーの添加量の増加に伴って、熱伝導率は上昇する傾向にある。すなわち、用途に応じて必要な熱伝導率のフィルムを選定することが可能となる。
【0137】
[蓄熱材の選定について]
図54は、蓄熱材の選定の概念を示す図である。蓄熱材は、比熱が高く、且つ熱伝導率が高い物性を有することが好ましい。すなわち、比熱が高い物性を有する蓄熱材は、比熱が低い物性を有する蓄熱材よりも同温度において蓄えている熱量が多いため、冷却対象物をより早く冷却することを可能にする。例えば、本明細書で示している蓄熱材の構成要素の大半は水である。水の比熱は、温度依存もあるが、4200J/kg・℃程度と非常に高い。
【0138】
一方、有機系蓄熱材の代表例であるパラフィンの比熱は2180J/kg・℃程度であり、一般の保冷剤等に使用されているエチレングリコールでも、比熱は2400J/kg・℃程度と、水の半分程度である。つまり、比熱の大きい水系蓄熱材は、他の蓄熱材に比べて冷却能力が優位であると言える。
【0139】
次に、熱伝導率について考察する。熱伝導率が高い物性で構成された蓄熱材は、熱伝導率が低い物性で構成された蓄熱材よりも、より早く外部からの冷熱を吸収することができるため、例えば、蓄熱材を冷凍室で凍結させる場合、より素早く凍結させることができる。また、蓄熱材が蓄えた冷熱をより素早く冷却対象物に熱交換することができるため、結果として、冷却対象物をより早く冷却することが可能になる。
【0140】
図54に示す通り、熱伝導率の低いパラフィン系蓄熱材から構成された蓄熱材の場合、蓄熱材内部での熱交換が悪く、冷却対象物に近い領域の冷熱量のみが冷却対象物に熱交換され、冷却対象物から遠い領域に在る冷熱量は冷却対象物に熱交換されない。つまり、蓄熱材が有する全冷熱量を効率的に冷却対象物に熱交換できない。また、パラフィン系の場合、可燃性を有するため、パッケージからの漏洩等に対する安全対策として、蓄熱材自体を増粘化、或いはゲル化することが多い。この場合、蓄熱材内部での対流が妨げられ、結果としてさらに熱交換が悪くなる可能性がある。一方、熱伝導率の高い水系から構成された蓄熱材の場合、有する冷熱量を冷却対象物への効率的に熱交換することが可能となる。また、水系の場合、安全性の観点で増粘化、ゲル化する必要がないため、パラフィン系の蓄熱材に比べ熱交換性が優位であると言える。
【0141】
[検証]
図55は、シミュレーションによる検証で用いたモデルを示す図である。
図55に示すように、このモデルは蓄熱材が135mm×80mm×t25mmのサイズとし、周囲環境は、温度が一定の−18℃であるとし、深絞り容器は、所期温度が25℃で、熱伝導率がパラメータAで与えられるものとする。また、蓄熱材は、所期温度が25℃で、熱伝導率がパラメータBで与えられるものとする。また、設定パラメータは、以下の通りである。
【0142】
この様なモデルを用いて、パラメータA〜Bを変動させた場合の冷却対象物の時間に対する温度変化を計算した。パラメータAは、(1)230W/m・K(AL相当)、(2)0.33W/m・K(PE相当)とする。パラメータBは、(1)0.57〜0.62W/m・K(水相当)、(2)0.1W/m・K(パラフィン相当)とする。なお、冷却対象物は、0℃で相変化する水(334J/g)を設定している。また、
図55中、測定ポイントIは、蓄熱材の左右方向の中心で、最下部から18.75mmの位置とし、測定ポイントIIは、蓄熱材の左右方向の中心で、最下部から12.5mmの位置とし、測定ポイントIIIは、蓄熱材の左右方向の中心で、最下部から6.25mmの位置とした。
【0143】
[検証結果]
図56は、シミュレーションによる検証結果を示す図であり、
図57は、シミュレーションによる温度測定結果を模式的に表した図である。
図56および
図57において、どの場合も、測定してから1分後は変化がなく、いずれも0℃を示している。5分経過すると、設定パラメータを、A(1)およびB(2)としたときは、測定ポイントIでは−3.1℃、測定ポイントIIでは0℃、測定ポイントIIIでは−3.5℃に変化した。この場合、
図57に示すように、冷却対象物の周辺部分において、わずかな厚みを持ってマイナスの温度領域が分布しているが、中心を含む部分は依然として0℃のままである。また、設定パラメータを、A(2)およびB(1)としたときと、設定パラメータを、A(2)およびB(2)としたときは、全く変化がなかった。
【0144】
これに対し、設定パラメータを、A(1)およびB(1)としたときは、測定ポイントIでは−13.5℃、測定ポイントIIでは−9.8℃、測定ポイントIIIでは−14.1℃に変化しており、その他の場合と比較して顕著である。また、
図57に示すように、設定パラメータを、A(1)およびB(1)としたときは、他の場合と比較して低い温度が広く分布している。
【0145】
10分が経過すると、設定パラメータを、A(1)およびB(2)としたときは、測定ポイントIでは−6.7℃、測定ポイントIIでは0℃、測定ポイントIIIでは−8.3℃に変化した。この場合は、
図57に示すように、冷却対象物の周辺部分において、一定の厚みを持ってマイナスの温度領域が分布しているが、中心を含む部分は依然として0℃のままである。
【0146】
また、設定パラメータを、A(2)およびB(1)としたときは、測定ポイントIでは−2.2℃、測定ポイントIIでは0℃、測定ポイントIIIでは−3.7℃に変化した。この場合、
図57に示すように、冷却対象物の周辺部分において、わずかな厚みを持ってマイナスの温度領域が分布しているが、中心を含む部分は依然として0℃のままである。設定パラメータを、A(2)およびB(2)としたときは、全く変化がなかった。
【0147】
これに対し、設定パラメータを、A(1)およびB(1)としたときは、測定ポイントIでは−18.0℃、測定ポイントIIでは−17.6℃、測定ポイントIIIでは−18.0℃に変化しており、その他の場合と比較して顕著である。また、
図57に示すように、設定パラメータを、A(1)およびB(1)としたときは、冷却対象物の温度が、すべての部分において、周囲温度とほぼ同じ−18℃となっている。
【0148】
以上の検証結果によれば、蓄熱材をより早く凍結させるとう観点においては、蓄熱材、並びに該蓄熱材を包装する深絞り容器ともに、その熱伝導率は、高い方が優位であると言える。一方、モデルの上方部よりも下方部の方が、温度が低い傾向が確認されるが、これは密度の温度依存によるものであり、冷たい領域が下部に、温かい領域が上部に移動する特性が現われたものであると推察される。
【0149】
以上のように、本シミュレーションによる検証結果から、蓄熱材は、熱伝導率が高く、比熱が高い構成とすることによって、蓄熱材の凍結時間を短縮することが可能であることが分かった。一方、この結果より、凍結した蓄熱材が有する冷熱量を効率的に素早く冷却対象物に熱交換させるためには、蓄熱材を、熱伝導率が高く、比熱が高い構成とすることが望ましいことも示唆された。
【0150】
以上説明したように、本実施形態によれば、熱伝導率の高い包材を用いると共に、比熱が高く熱伝導率も高い蓄熱材を用いることによって、保冷対象物を適した温度に素早く到達させることが可能となる。
【0151】
本発明は、以下のような構成を採ることができる。すなわち、(1)本発明の蓄熱パックは、飲食物の温度管理を行なう蓄熱パックであって、予め定められた温度で相変化する第1の蓄熱材が充填された第1の収容部と、前記第1の収容部に積重され、前記第1の蓄熱材の相変化温度で液相状態を維持する第2の蓄熱材が充填された第2の収容部と、前記第1の収容部を閉塞する蓋材と、を備え、前記第2の収容部が飲食物に接触する。
【0152】
(2)また、本発明の蓄熱パックにおいて、前記第1の収容部は、第1のプラスチックフィルムで成形される一方、前記第2の収容部は、第2のプラスチックフィルムで成形され、前記第2のプラスチックフィルムは、前記第1のプラスチックフィルムよりも柔軟である。
【0153】
(3)また、本発明の蓄熱パックにおいて、前記第1の収容部および前記第2の収容部は、深絞り成型容器であって、前記第1の収容部のフランジ部と前記第2の収容部のフランジ部とが接合されると共に、前記第1の収容部のフランジ部と前記蓋材とが接合されている。
【0154】
(4)また、本発明の蓄熱パックにおいて、前記第1の収容部のフランジ部の任意の一部に貫通口が設けられ、前記貫通口で、前記第2の収容部のフランジ部と前記蓋材とが直接接合している。
【0155】
(5)また、本発明の蓄熱パックは、前記第1の蓄熱材および第2の蓄熱材が、自重に対して形状維持可能な粘性を有する。
【0156】
(6)また、本発明の蓄熱パックは、前記第1の蓄熱材および第2の蓄熱材の粘度が、1000cP以上である。
【0157】
(7)また、本発明の蓄熱パックは、前記第1の収容部に充填された前記第1の蓄熱材と、前記蓋材との間に空隙層を有する。
【0158】
(8)また、本発明の蓄熱パックにおいて、前記第1の収容部は、前記第2の収
容部の反対側に断熱材を更に備える。
【0159】
(9)また、本発明の蓄熱パックにおいて、前記第1の蓄熱材は、水と0℃以上の温度で前記水の一部と包接水和物を形成する炭化水素化合物および前記水の他の一部の相変化温度を0℃未満に硬化させる無機化合物で構成されている。
【0160】
(10)また、本発明の蓄熱パックにおいて、前記第1の蓄熱材および第2の蓄熱材の粘度が、100〜200cPである。
【0161】
(11)また、本発明の蓄熱パックにおいて、前記第2の収容部の容量は、前記第1の収容部の容量よりも大きい。
【0162】
(12)また、本発明の蓄熱パックにおいて、前記蓋材は、断熱材で形成されている。
【0163】
(13)また、本発明の蓄熱パックにおいて、前記第1のプラスチックフィルムのヤング率は、3000MPa以上であると共に、前記第2のプラスチックフィルムのヤング率は、3000MPa未満である。
【0164】
(14)また、本発明の蓄熱パックにおいて、前記第2の収容部の飲食物に接触する面は、他の面よりも相対的に小さい摩擦係数を有する。
【0165】
(15)また、本発明の熱交換ユニットは、上記(1)〜(14)のいずれかに記載の蓄熱パックが複数接続され、隣接する蓄熱パック間に関節機構を有する。
【0166】
(16)また、本発明の熱交換ユニットにおいて、前記各蓄熱パックは、同心円上に配列するように接続され、前記関節機構は、伸縮性を有する。
【0167】
(17)また、本発明の熱交換ユニットにおいて、相対的に大きい第2の収容部を有する複数の蓄熱パックが同心円上に配列するように接続された上段部と、相対的に小さい第2の収容部を有する複数の蓄熱パックが同心円上に配列するように接続された下段部と、を備え、使用時に、前記上段部が鉛直上方に位置する一方、前記下段部が鉛直下方に位置することで前記各第2の収容部が飲食物に接触する。
【0168】
(18)また、本発明の熱交換ユニットにおいて、前記各蓄熱パックを同心円の中心方向に押圧する押圧部をさらに備える。
【0169】
(19)また、本発明の熱交換ユニットにおいて、前記押圧部の押圧力は、25N以上である。
【0170】
(20)また、本発明の蓄熱パックの製造方法は、飲食物の温度管理を行なう蓄熱パックの製造方法であって、第1の金型によって凹形状を有する第1の収容部を成型する工程と、第2の金型によって、少なくとも前記第1の収容部の凹形状よりも大きい凹形状を有する第2の収容部を成形する工程と、前記第1の収容部に、予め定められた温度で相変化する第1の蓄熱材を充填する工程と、前記第2の収容部に、前記第1の蓄熱材の相変化温度で液相状態を維持する第2の蓄熱材を充填する工程と、前記第2の蓄熱材が充填された第2の収容部に、前記第1の蓄熱材が充填された第1の収容部を積重させて、蓋材、前記第1の収容部のフランジ部および前記第2の収容部のフランジ部を接合する工程と、を少なくとも含む。
【0171】
(21)また、本発明の蓄熱パックの製造方法は、飲食物の温度管理を行なう蓄熱パックの製造方法であって、第1の金型によって凹形状を有する第1の収容部を成型する工程と、第2の金型によって、少なくとも前記第1の収容部の凹形状よりも大きい凹形状を有する第2の収容部を成形する工程と、前記第2の収容部に、第1の蓄熱材の相変化温度で液相状態を維持する第2の蓄熱材を充填する工程と、前記第2の蓄熱材が充填された第2の収容部に、前記第1の収容部を積重させる工程と、前記第1の収容部に、予め定められた温度で相変化する前記第1の蓄熱材を充填する工程と、蓋材、前記第1の収容部のフランジ部および前記第2の収容部のフランジ部を接合する工程と、を少なくとも含む。
【0172】
(22)また、本発明の蓄熱パックの製造方法は、前記第1の収容部のフランジ部の任意の一部に貫通口を設ける工程を更に備え、前記貫通口で、前記第2の収容部のフランジ部と前記蓋材とが直接接合している。
【0173】
以上説明したように、本実施形態によれば、第2の蓄熱材5aが第1の蓄熱材3aの相変化温度で液相状態を維持し、第2の深絞り容器5が受熱体としての飲食物に接触するので、所望の温度において、第2の深絞り容器5を飲食物に密着させることが可能となる。これにより、第2の蓄熱材5aが蓄えた顕熱を飲食物に確実に伝え、飲食物を所望の温度に素早く到達させることが可能となる。さらに、第2の蓄熱材5aを介して第1の蓄熱材3aが蓄えた顕熱、および潜熱を飲食物に確実に伝えることで、飲食物を所望の温度に素早く到達させるアシストをすると共に、さらに第1の蓄熱材3aが蓄えた潜熱を飲食物に確実に伝えることで、飲食物を所望の温度で長時間保持させることが可能となる。
【0174】
また、本実施形態に係る熱交換ユニットは、ワインボトルの上から被せて装着するように構成されていることが特徴である。従来は、ワインボトルに装着した後に、ワインボトルの先端部分を絞る必要があった、いわゆる巾着機構を有する飲料クーラーが提案されていたが、そのような構成の場合、巾着部の締付け力のバラつきによって、特に、急冷性能に大きな差異が発生する懸念がある。これに対し、本発明では、「装着後に締付ける」という作業がないため上記懸念の発生は極めて少ないという優れた効果を奏する。