(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6221172
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】研磨パッド運搬用ボックス、研磨パッド収容部材及び研磨パッドの運搬方法
(51)【国際特許分類】
B24B 37/00 20120101AFI20171023BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
B24B37/00 Z
H01L21/304 621Z
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-198309(P2013-198309)
(22)【出願日】2013年9月25日
(65)【公開番号】特開2015-62975(P2015-62975A)
(43)【公開日】2015年4月9日
【審査請求日】2016年8月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005359
【氏名又は名称】富士紡ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100171675
【弁理士】
【氏名又は名称】丹澤 一成
(72)【発明者】
【氏名】岩尾 智浩
(72)【発明者】
【氏名】武田 秀則
(72)【発明者】
【氏名】古賀 良
【審査官】
須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3179631(JP,U)
【文献】
特開2004−259728(JP,A)
【文献】
特開2007−326584(JP,A)
【文献】
特開2004−175441(JP,A)
【文献】
特開2013−056687(JP,A)
【文献】
特開2007−039096(JP,A)
【文献】
特開2005−029247(JP,A)
【文献】
特開2004−268990(JP,A)
【文献】
特開平04−179144(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0161720(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B3/00−3/60
B24B21/00−51/00
H01L21/304;21/463
B65D67/00−79/02
B65D81/18−81/30;81/38
B65D85/00−85/28;85/575
B24D3/00−99/00
H01L21/67−21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨パッド運搬用ボックスであって、
収納箱と、
該収納箱内で、研磨パッド収容部材に収容された研磨パッドを吊下げ状態で保持する吊下げ手段と、を有し、前記吊下げ手段は、略水平に配置された棒状部材を有している、研磨パッド運搬用ボックス。
【請求項2】
前記収納箱は略直方体形状の外箱と、前記外箱内に収納される略直方体形状の内箱を有し、前記内箱は上面及び前面の少なくとも1面が開放され、前記外箱は少なくとも1面が開閉し、前記内箱を内部に収納することが可能である、請求項1に記載の研磨パッド運搬用ボックス。
【請求項3】
前記内箱は、一方の側面の内側及び他方の側面の内側にそれぞれ設けられ、前記棒状部材の端部が着脱可能に連結される連結部を備えている、請求項2に記載の研磨パッド運搬用ボックス。
【請求項4】
研磨パッド運搬用ボックス内に設けられた吊下げ手段に吊下げられた状態で前記研磨パッド運搬用ボックスに収納される研磨パッド収容部材であって、
前記吊下げ手段に着脱自在に係合可能な係合部を有し、前記研磨パッド収容部材は内部に脱気状態で研磨パッドを収容可能な樹脂製の袋である、研磨パッド収容部材。
【請求項5】
前記係合部は、前記研磨パッド収容部材の縁部に設けられた吊下げ部である、請求項4に記載の研磨パッド収容部材。
【請求項6】
前記係合部は前記研磨パッド収容部材の上縁部に設けられた穴である、請求項4に記載の研磨パッド収容部材。
【請求項7】
前記係合部は、前記研磨パッド収容部材にフックを取り付けるための取付け部を有し、前記研磨パッド収容部材は前記取付け部に取付けられたフックにより前記運搬用ボックスの吊下げ手段に吊下げられる、請求項4に記載の研磨パッド収容部材。
【請求項8】
研磨パッドの運搬方法であって、
前記研磨パッドを、係合部を有する研磨パッド収容部材に収容し、
前記研磨パッドを収容した研磨パッド収容部材の前記係合部を研磨パッド運搬用ボックスの吊下げ手段に吊下げて前記研磨パッド運搬用ボックスに収納し、前記吊下げ手段は、略水平に配置された棒状部材を有し、
前記研磨パッドを収納した前記研磨パッド運搬用ボックスを運搬する、研磨パッドの運搬方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨パッド運搬用ボックス、研磨パッド収容部材及び研磨パッドの運搬方法に係り、詳細には、スライス加工により製造された研磨パッドを収容する研磨パッド収容部材と、研磨パッドを収容した研磨パッド収容部材を運搬する研磨パッド運搬用ボックス、そして研磨パッドの運搬方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスク、液晶ディスプレイ用マザーガラス、半導体デバイスなどの材料の表面には高精度な平坦性が求められるため、研磨パッドを用いた遊離砥粒方式の研磨加工が行われている。遊離砥粒方式は、研磨パッドと非研磨物の間に砥粒を含むスラリー(研磨液)を供給しながら被研磨物の加工面を研磨加工する方法である。
【0003】
例えば、半導体デバイス用の研磨パッドには、その研磨パッド表面に、砥粒を保持するための開孔と、半導体デバイス表面の平坦性を維持する硬性と、半導体デバイス表面のスクラッチを防止する弾性とが要求される。これらの要求に応える研磨パッドとして、ウレタン樹脂発泡体から製造された研磨層を有する研磨パッドが使用されている。
【0004】
ウレタン樹脂発泡体は、通常、ポリウレタン結合含有イソシアネート化合物を含むプレポリマと硬化剤との反応により硬化してブロック状に成形される(乾式法)。そして、この樹脂ブロックをシート状にスライスすることにより硬質の研磨層を有する研磨パッド(以下、硬質(乾式)研磨パッドと略すことがある)が形成される。
【0005】
従来、スライス加工された研磨パッドは、一枚ずつ積み重ねられ、所定枚数だけ積み重ねられると、これを一まとめにして、運搬されていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の研磨パッドを積み重ねる方法では、研磨パッドの枚数が増えるにつれて、積み重ねられた研磨パッドの重みが下方にある研磨パッドにかかることになる。重ねられた研磨パッド同士の位置がずれると、下方にある研磨パッドの特にエッジ部分が反るように変形するおそれがあった。このように研磨パッドのエッジ部分に反りが生じると、研磨パッドの品質に悪影響を及ぼす可能性がある。研磨パッドの積み重ねによる反りを生じさせないためには、研磨パッド同士が正確に重なるように研磨パッドを位置決めして積み重ね、下方にある研磨パッドに平均的に重みがかかるようにする必要があるが、このような正確な位置決めは、研磨パッドの製造速度や位置決めの手間を考慮すると困難である。
【0007】
また、研磨パッドを製造する際には、製品1枚ごとに枝番が付与されるが、従来の研磨パッドを積み重ねる方法では、積み重ねられた複数枚の研磨パッドの中から所望の枝番を有する研磨パッドを取り出す、といった操作を行うことが困難である。特に、積み重ねられた状態で下の方に位置している研磨パッドを選択的に取り出すことは困難であった。
【0008】
このように、従来、研磨パッドを運搬する際、研磨パッドを上下に積み重ねてから運搬するようにしていたため、積み重ねられた研磨パッドの重みにより、積み重ねられた研磨パッドのうち下方にある研磨パッドが圧縮され変形するおそれがある、という問題があった。
【0009】
また、複数枚の研磨パッドが積み重ねられた状態から、所望の研磨パッドを取り出すことは困難であった。
【0010】
そこで、本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、製造された研磨パッドの積み重ねを最小限として、研磨パッドの圧縮・変形を抑制し、所定枚数の研磨パッドをまとめて運搬することができるとともに、所望の研磨パッドへのアクセスを容易とする研磨パッド運搬用ボックス及び研磨パッド収容部材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明は、研磨パッド運搬用ボックスであって、収納箱と、収納箱内で、研磨パッド収容部材に収容された研磨パッドを吊下げ状態で保持する吊下げ手段と、を有
し、吊下げ手段は、略水平に配置された棒状部材を有していることを特徴としている。
【0012】
このように構成された本発明においては、研磨パッドを運搬する際、研磨パッドを収容した研磨パッド収容部材を吊下げ手段に吊下げて運搬するため、研磨パッドを上下方向に重ねて運搬する必要が無く、研磨パッドの変形を抑制することが可能となる。また、研磨パッドを上下方向に重ねていないため、運搬途中でも所望の研磨パッドへのアクセスが容易となる。
【0014】
また、このように構成された本発明においては、研磨パッド収容部材を容易に吊下げることが可能となる。
【0015】
本発明において、好ましくは、収納箱は略直方体形状の外箱と、外箱内に収納される略直方体形状の内箱を有し、内箱は上面及び前面の少なくとも1面が開放され、外箱は少なくとも1面が開閉し、内箱を内部に収納することが可能であることを特徴としている。
【0016】
このように構成された本発明においては、更に、研磨パッド運搬用ボックスの運搬や保管、特に研磨パッド運搬用ボックスを複数運搬することや保管することが容易となる。
【0017】
本発明において、好ましくは、内箱は、内箱の一方の側面の内側及び他方の側面の内側にそれぞれ設けられ、棒状部材の端部が着脱可能に連結される連結部を備えていることを特徴としている。
【0018】
このように構成された本発明においては、研磨パッドを収容した研磨パッド収容部材が吊下げられた棒状部材を箱の内面に連結して箱の内部に収納し、この箱を運搬することによって、複数の研磨パッドを容易に運搬することが可能となる。
【0019】
また、本発明は、研磨パッド運搬用ボックス内に設けられた吊下げ手段に吊下げられた状態で研磨パッド運搬用ボックスに収納される研磨パッド収容部材であって、吊下げ手段に着脱自在に係合可能な係合部を有し
、研磨パッド収容部材は内部に脱気状態で研磨パッドを収容可能な樹脂製の袋であることを特徴としている。
【0020】
このように構成された本発明においては、研磨パッドを運搬する際、研磨パッドを収容した研磨パッド収容部材を吊下げ手段に吊下げて運搬するため、研磨パッドを上下方向に重ねて運搬する必要が無く、研磨パッドの変形を抑制することが可能となる。また、研磨パッドを上下方向に重ねていないため、運搬途中でも所望の研磨パッドへのアクセスが容易となる。
【0022】
また、このように構成された本発明においては、研磨パッド収容部材に研磨パッドを収容し、脱気状態にして運搬することが可能となる。
【0023】
本発明において、好ましくは、係合部は研磨パッド収容部材の縁部に設けられた吊下げ部であることを特徴としている。
【0024】
このように構成された本発明においては、研磨パッドを収容した研磨パッド収容部材を容易に研磨パッド運搬用ボックスの吊下げ手段に吊下げることが可能となる。
【0025】
本発明において、好ましくは、係合部は研磨パッド収容部材の上縁部に設けられた穴であることを特徴としている。
【0026】
このように構成された本発明においては、追加部材を使用することなく、研磨パッド収容部材に係合部を設けることができ、研磨パッド収容部材を研磨パッド運搬用ボックスの吊下げ手段に吊下げることが可能となる。
【0027】
本発明において、好ましくは、係合部は、研磨パッド収容部材にフックを取り付けるための取付け部を有し、研磨パッド収容部材は取付け部に取付けられたフックにより運搬用ボックスの吊下げ手段に吊下げられることを特徴としている。
【0028】
このように構成された本発明においては、研磨パッド収容部材に穴を開けずに、フックを用いて研磨パッド収容部材を研磨パッド運搬用ボックスの吊下げ手段に吊下げることが可能となる。
【0029】
また、本発明は、研磨パッドの運搬方法であって、研磨パッドを、係合部を有する研磨パッド収容部材に収容し、研磨パッドを収容した研磨パッド収容部材の係合部を研磨パッド運搬用ボックスの吊下げ手段に吊下げて研磨パッド運搬用ボックスに収納し、
吊下げ手段は、略水平に配置された棒状部材を有し、研磨パッドを収納した
研磨パッド運搬用ボックスを運搬することを特徴としている。
【0030】
このように構成された本発明においては、研磨パッドを運搬する際、研磨パッドを収容した研磨パッド収容部材を吊下げ手段に吊下げて運搬するため、研磨パッドを上下方向に重ねて運搬する必要が無く、研磨パッドの変形を抑制することが可能となる。また、研磨パッドを上下方向に重ねていないため、運搬途中でも所望の研磨パッドへのアクセスが容易となる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の研磨パッド運搬用ボックス、研磨パッド収容部材及び研磨パッドの運搬方法によれば、研磨パッドの運搬の際に、研磨パッドの変形を抑制することが可能となり、更に運搬途中でも所望の研磨パッドへのアクセスが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の一実施形態の研磨パッド運搬用ボックスを示す概略的に示す分解斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態の研磨パッド運搬用ボックスの吊下げ手段を内箱に連結する連結部を概略的に示す斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態の研磨パッド運搬用ボックスの吊下げ手段を内箱に連結する連結部の他の例を示す概略的に示す斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態の研磨パッド収容部材の例を概略的に示す正面図である。
【
図5】本発明の一実施形態の研磨パッド収容部材の他の例を示す概略的に示す正面図である。
【
図6】本発明の一実施形態の研磨パッド運搬用ボックスに研磨パッド収容部材を収納する様子を概略的に示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の好ましい実施形態の研磨パッド運搬用ボックスの一例を概略的に示す斜視図である。研磨パッド運搬用ボックスは、収納箱1を有しており、収納箱1は略直方体形状の外箱2と、この外箱2の内部空間に収納されることができる寸法形状の略直方体形状の内箱3を有している。
【0034】
外箱2は内箱3よりも若干寸法が大きく、内箱3を内部に収納するために、外箱2を構成する面のうち、前面21が開閉可能となっている。内箱3を収納し易くするため、前面21の他に上面や側面、背面を開閉可能にしても良い。外箱2として、コストや重量、強度の観点から、ダンボール箱を用いることが好ましい。
【0035】
内箱3は略直方体形状をしており、後述する研磨パッドを吊下げ状態で保持した棒状部材を内箱3の内部へと搬入するため、内箱3の上面及び前面の少なくとも1面が開放され(即ち壁を有さず)、内箱3の内部へのアクセスを容易にすることが好ましい。
図1に示された例では、内箱3は前面及び上面が壁体を有しておらず、前方向及び上方向に開放された状態となっている。一方で、内箱3は収納箱としての強度を保つため、右面、左面、後面、底面の4面を備えている。なお、これら右面、左面、後面、底面の4面について、ダンボール箱の一部を使用する他に、他の板状部材やメッシュ部材を用いて内箱3の各面を構成することも可能である。また、例えば後面について、ポールを斜めに交差させて右面と左面、底面を連結して固定するようにしても良い。
【0036】
内箱3の右面の内側及び左面の内側にはそれぞれ連結部31が対向して設けられており、この連結部31は、研磨パッド5を収容した研磨パッド収容部材4を吊下げ状態で保持する棒状部材32の端部を内箱3に着脱可能に連結するためのものである。
図1に示す例では、右面の内側及び左面の内側にそれぞれ2箇所ずつ連結部31が設けられ、棒状部材32を2本、それぞれ内箱3の右面の内側及び左面の内側に連結することが可能である。このような棒状部材32を2本連結可能とする内箱3は、後述する
図4に示したような、穴42を2箇所備えた研磨パッド収容部材4を収納するのに適しており、後述する
図6に実際に収納した様子が示されている。
【0037】
なお、
図1に示した例では、内箱3に棒状部材32を2本連結するようになっているが、研磨パッド収容部材4の形状によっては、棒状部材32の本数は1本でも良い。また、収納する研磨パッドの大きさや内箱3の大きさの関係によっては、3本以上にすることも可能である。この場合、内箱3に収納される棒状部材32の本数に対応する数の連結部31が内箱3に設けられている。
【0038】
図2に連結部31の具体的な例を示す。
図2に示した例では、内箱3は1本の棒状部材32を連結するようになっており、棒状部材32として、ステンレス製のポールを用いている。棒状部材32の端部を受ける棒受け部33が内箱3に設けられている。棒状部材32を略水平に保ちながら、この棒受け部33の上方から下ろし、棒状部材32の左右の端部をそれぞれ内箱3の左面の内側、右面の内側に設けられた棒受け部33に係合させる。棒受け部33に棒状部材32の端部を係合させた後は、図示しないストッパーなどで端部を固定してもよい。
【0039】
図3に連結部31の別の例を示す。
図3に示した例では、内箱3は
図2に示した例と同様に、1本の棒状部材32を連結するようになっており、連結部31は、棒状部材32を内箱3の右面の内側、左面の内側にそれぞれ着脱可能に連結する溝34である。この例では、内箱3の右面及び左面のうち、棒状部材32を連結させる部分に対応する部分を肉厚にし、この肉厚部に棒状部材32の直径より若干大きい幅を有する溝34が内箱3の上端から所定長さだけ設けられている。溝34は上端部が開口しており、この開口部から溝34の終点まで、棒状部材32の端部がガイドされるように構成されている。棒状部材32を略水平に保ちながら、内箱3の上端部からこの溝34に沿って上方から溝34の終点まで下ろすことで、棒状部材32を内箱3に連結することができる。溝34の終点付近に、棒状部材32の端部を固定するための図示しないストッパーを設けてもよい。
【0040】
上述した吊下げ手段(棒状部材32)に研磨パッド5を吊下げるために用いられる、研磨パッド5を収容する研磨パッド収容部材4の例を
図4及び
図5に示す。
図4、
図5にはいずれも研磨パッド収容部材4に研磨パッド5を収容した状態が示されている。これらの実施形態において、研磨パッド収容部材4として、内部に脱気状態で研磨パッドを収容可能な樹脂製の袋(いわゆる真空パック用の袋)を用いるのが好ましい。スライス加工された研磨パッドは、この樹脂製の袋に1枚ずつ、又は数枚を1組として挿入され、例えば、富士インパルス社が販売しているヒートシーラーを用いて、脱気してパックされる。このように袋内を脱気して研磨パッド5を収容することによって、研磨パッド5の品質を保ち、さらに研磨パッド5の体積を減らすことが可能となる。研磨パッド5の体積が減ることにより、研磨パッド5の運搬が容易になるだけでなく、収容された研磨パッドの密度や剛性が増すため、運搬中の研磨パッドの変形を更に抑制することが可能となる。
【0041】
図4に示した研磨パッド収容部材4の上縁部41付近には、上述した棒状部材32と係合するための係合部として、棒状部材32を通すための穴42が2箇所に設けられている。この研磨パッド収容部材4は、
図1に示された内箱3のように棒状部材32を2本連結する例に対応したものであり、これらの穴42にそれぞれ棒状部材32を通すことにより、並列する2本の棒状部材32に研磨パッド収容部材4が吊下げられることになる。このように並列する2本の棒状部材32に研磨パッド収容部材4を吊下げることで、安定した吊下げ状態を得ることができ、研磨パッド運搬用ボックス1を搬送している間の揺れを抑えることができる。
【0042】
なお、
図4に示した研磨パッド収容部材4の変形例として、穴42を1箇所だけ設けるようにしても良い。この場合、安定して収容部材4が吊下げられるよう、穴42は上縁部41付近であって、収容部材4の中心軸上に設けるのが好ましい。
【0043】
図5に示した研磨パッド収容部材4の上縁部41付近には、上述した棒状部材32と係合するための係合部として、棒状部材32に掛けるためのフック部45を有するクリップハンガー43が取り付けられている。クリップハンガー43のクリップ部44が研磨パッド収容部材4の上縁部41付近を2箇所挟み、クリップハンガー43のフック部45を棒状部材32に掛けることにより、研磨パッド収容部材4は棒状部材32に吊下げられる。
【0044】
このようなクリップハンガー43を有する研磨パッド収容部材4を吊下げるには、棒状部材32が1本あれば良い。1つの内箱3に棒状部材32が複数連結可能となっている場合は、研磨パッド5及び研磨パッド収容部材4の大きさに応じて、複数の棒状部材32にそれぞれ研磨パッド収容部材4を吊下げて、これらの棒状部材を1つの内箱3に連結するようにもできる。
【0045】
上述した研磨パッド収容部材の寸法は、運搬する研磨パッド5の寸法に応じて、適宜設定するのが好ましい。例えば、運搬する研磨パッド5の直径が775mmである場合、研磨パッド収容部材である樹脂製の袋の寸法は840mm×805mm(縦×横)、内寸法は830mm×790mm(縦×横)程が好ましい。この場合、上述した2つの穴42は、縦方向について樹脂製の袋の上端から50mm以内、横方向について樹脂製の袋の一方の側端から102.5mm〜702.5mmの範囲内に設けることが好ましい。
【0046】
また、上述した研磨パッド運搬用ボックス1の寸法は、運搬する研磨パッド5の寸法や運搬量に応じて適宜設定するのが好ましい。上述したような、運搬する研磨パッド5の直径が775mmである場合は、研磨パッド運搬用ボックス1の寸法は300〜600mm×1100mm×1100mm(縦×横×高さ)程が好ましい。このような構成を有する研磨パッド運搬用ボックス1には上述した研磨パッド5を約50枚収納して運搬することができる。
【0047】
図6には、
図4に示した研磨パッド収容部材4が研磨パッド5を収容した状態で2本の棒状部材32に吊り下げられ、2本の棒状部材32が内箱3に連結されている様子が示されている。
【0048】
研磨パッド5を運搬するにあたっては、まず、研磨パッド収容部材4に研磨パッド5を収容して脱気してパックする。その後、複数の研磨パッド収容部材4に関して、棒状部材32を穴42に通した後、棒状部材を内箱3に連結することによって、
図6に示すように、研磨パッド5が棒状部材32に吊下げられた状態で、研磨パッド運搬用ボックス1の内箱3に収納される。そして、この内箱3を更に研磨パッド運搬用ボックス1の外箱2にスライドインして、収納する。内箱3が外箱2に収納された後、外箱2の前面を閉じ、外箱2の内部に内箱3を収納した状態で、研磨パッド運搬用ボックス1が搬送される。これにより、研磨パッド5が吊下げられた状態で運搬することが可能となる。
【0049】
従来のように研磨パッド5を上下方向に重ねる必要がなくなるため、研磨パッド5を重ねた際に生じるような研磨パッド5の自重による変形が起こることを防ぐことができる。また、研磨パッド5を収容した研磨パッド収容部材4が棒状部材32に吊下げられている状態で研磨パッド運搬用ボックス1の内箱3に収納されているため、搬送途中でも内箱3の中に吊下げられている研磨パッド収容部材4を左右にずらすことで、所望の枝番を有する研磨パッドを取り出すことができ、所望の研磨パッドへのアクセスが容易となる。
【0050】
以上、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明したが、本発明はこの実施形態に限られるものではなく、様々な改変を施すことも可能である。例えば、研磨パッド収容部材4の側縁部に更にタブを設けて、製品管理に活用することも可能である。
【0051】
このように、本発明の各実施形態によると、研磨パッドを運搬する際、研磨パッドを収容した研磨パッド収容部材を吊下げ手段に吊下げて運搬するため、研磨パッドを上下方向に重ねて運搬する必要が無く、研磨パッドの変形を抑制することが可能となる。また、研磨パッドを上下方向に重ねていないため、運搬途中でも所望の研磨パッドへのアクセスが容易となる。
【符号の説明】
【0052】
1 研磨パッド運搬用ボックス
2 外箱
21 前面
3 内箱
31 連結部
32 棒状部材
33 棒受け部
34 溝
4 研磨パッド収容部材
41 上縁部
42 穴
43 クリップハンガー
44 クリップ部
45 フック部
5 研磨パッド