(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記連結部は、前記連結部の前記補強部材を向く面とは反対側において、前記連結部から前記第二突起よりも下方に突出するカバー部を有する請求項1に記載の水管保護用耐火物。
【背景技術】
【0002】
例えば、ごみなどを焼却した際に生じる熱を利用して発電するボイラ付き焼却炉においては、焼却炉の炉壁は、多数の水管を有する水管構造体(ボイラパネル)によって形成されている。焼却炉の炉内は、高温高腐食性環境になるため、水管を保護するために、耐火タイルなどの水管保護用耐火物を用いることが一般的である。耐火タイルとしては、特許文献1に記載されているものが知られている。
【0003】
特許文献1に記載されている耐火タイルは、水管構造体に形成されているフックにタイルを引っ掛ける方式にて取り付けられている。耐火タイルと水管構造体との間にはモルタルが充填されている。
耐火タイルは、水管の各々の半周部分に沿う形状を有する一対の保護部と、保護部同士を連結する連結部とを有している。保護部は、水管の外周面に沿うアーチ状に形成されている。これにより、耐火タイルの保護部を薄く形成することが可能となり、耐火タイルの表面温度の上昇が抑えられている。耐火タイルの表面温度の上昇が抑えられることによって、ごみの燃焼により発生するクリンカの付着が抑制される。
水管構造物に設けられているフックに係合する受け構造は、連結部の上下方向中央、即ち、タイルの中心部に形成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の耐火タイルは、耐火タイルの中心にフックの受け構造が形成されているため、保護部同士を連結する連結部を厚く形成する必要があった。連結部の厚みが増すことで、水管の冷却効果が連結部の表面(焼却炉の内部空間を向く面)に及びにくくなるという課題があった。
また、耐火タイルの中心にフックの受け構造を形成するためには、耐火タイルの成型方法が複雑となり、耐火タイルの製造コストが増加するという課題があった。
【0006】
この発明は、耐火タイルの中心を薄くすることができるとともに、耐火タイルの製造コストを低減することができる耐火タイルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様によれば、水管保護用耐火物は、上下方向に延在する複数の水管と、隣り合う前記水管同士を延在方向にわたって連結する補強部材と、前記補強部材に上下方向に離間して配置された複数のフックであって、前記補強部材の表面に交差する方向に突出する基部と、前記基部の端部より上方に突出するフック上部と、前記基部の端部より下方に突出するフック下部と、を有する複数のフックと、を有する水管構造体を保護する水管保護用耐火物であって、隣り合う前記複数の水管の各々の外周面の一部に沿う形状を有する一対の保護部と、前記保護部同士を連結する連結部と、を備え、前記連結部は、連結部本体と、前記連結部本体から上方に突出し、前記補強部材と前記フック下部との間の空間に挿入される第一突起と、前記連結部本体から下方に突出し、前記補強部材と前記フック上部との間の空間に挿入される第二突起と、を有し、前記第一突起の前記連結部本体からの突出長さは前記第二突起の前記連結部本体からの突出長さよりも長く形成され、かつ、前記第一突起の上端から前記第二突起の下端までの長さが、上下方向に隣り合う一対の前記フックのうち上方の前記フックの前記フック下部の下端から下方の前記フックの前記フック上部の上端の寸法よりも長く形成され
、前記補強部材を向く面とは反対側の上下方向中央近傍に形成された凹部を有する。
【0008】
このような構成によれば、水管保護用耐火物が上端及び下端にてけんどん式によって支持される構造となるため、水管保護用耐火物の中心にフックの受け構造を形成する必要が無く、水管保護用耐火物の中心部の厚さを薄くすることができる。また、水管保護用耐火物を低コストで製造することが可能となる。
【0009】
上記水管保護用耐火物において、前記連結部は、前記連結部の前記補強部材を向く面とは反対側において、前記連結部から前記第二突起よりも下方に突出するカバー部を有してよい。
【0010】
このような構成によれば、水管保護用耐火物によって保護される水管構造体の範囲をより広くすることができる。
【0011】
本発明の第二の態様によれば、水管保護用耐火物は、上下方向に延在する複数の水管と、隣り合う前記水管同士を延在方向にわたって連結する補強部材と、前記補強部材に上下方向に離間して配置された複数のフックであって、前記補強部材の表面に交差する方向に突出する基部と、前記基部の端部より上方に突出するフック上部と、前記基部の端部より下方に突出するフック下部と、を有する複数のフックと、を有する水管構造体を保護する水管保護用耐火物であって、隣り合う前記複数の水管の各々の外周面の一部に沿う形状を有する一対の保護部と、前記保護部同士を連結する連結部と、を備え、前記連結部は、けんどん式によって上下方向に隣り合う一対の前記フックの前記フック上部と前記フック下部との間に取り付けられ
、前記補強部材を向く面とは反対側の上下方向中央近傍に形成された凹部を有する。
【0012】
上記水管保護用耐火物において、前記連結部は、前記連結部の前記補強部材を向く面とは反対側において、前記連結部から下方に突出するカバー部を有してよい。
【0014】
上記水管保護用耐火物において、前記保護部は、前記水管の外周面との間に隙間を有するように形成された保護部本体と、前記保護部本体の内周面に前記隙間と同じ高さに形成されたスペーサと、を有してよい。
【0015】
このような構成によれば、水管と保護部との間の隙間を一定に保持することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、水管保護用耐火物が上端及び下端にてけんどん式によって支持される構造となるため、水管保護用耐火物の中心部の厚さを薄くすることができる。また、水管保護用耐火物を低コストで製造することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態の水管保護用耐火物(耐火タイル)、及び水管保護用耐火物を有する水管保護用構造体について図面を参照して詳細に説明する。本実施形態の水管保護用構造体は、例えば、ストーカ型焼却炉のボイラ水管壁などの熱交換器の水管構造体を保護するものである。
【0019】
図1は、本実施形態の水管保護用耐火物(以下、耐火タイルと呼ぶ)を有する水管保護用構造体1が適用されるストーカ型焼却炉50を示す概略図である。
ストーカ型焼却炉50は、投入ホッパ51と、火格子52と、内部空間53と、ボイラ54と、水管構造体10と、水管保護用構造体1と、を備えている。
【0020】
投入ホッパ51は、ごみなどの焼却対象物を受け入れる部分である。投入ホッパ51は、内部空間53に接続されている。火格子52は、内部空間53の底面を形成している。水管構造体10は、内部空間53の側面(炉壁)に設けられている。
水管構造体10は複数の水管11(
図2参照)を有している。複数の水管11は、上下方向に沿って延在している。複数の水管11は、ボイラ54に接続されている。
【0021】
投入ホッパ51から投入された焼却対象物(ごみ)は、内部空間53に導かれ、火格子52上で焼却される。焼却により、内部空間53内には熱が発生する。複数の水管11内を流れる水と、内部空間53との間で熱交換が行われる。複数の水管11内を流れる水が受け取った熱は、ボイラ54において熱交換され、有効利用される。
【0022】
内部空間53内では、焼却によって高温高腐食性ガスが発生する。水管保護用構造体1は、高温高腐食性ガスから複数の水管11を保護するために設けられており、複数の水管11の内部空間53側を保護している。
【0023】
図2、
図3、
図4及び
図5に示すように、水管構造体10は、上下方向Vに延在する複数の水管11と隣り合う水管11同士を延在方向にわたって連結する補強部材12(フィン)と、補強部材12に上下方向Vに離間して配置された複数のフック13と、を有している。複数のフック13は上下方向Vに等間隔で配置されている。本実施形態の耐火タイル2は、上下方向Vに隣り合うフック13同士の間に配置される。
なお、図面には、上下方向Vの方向と、上方V1の向き、及び下方V2の向きを記している。
【0024】
複数の水管11の各々は、円筒状である。複数の水管11は、同一の直径を有し、同一ピッチで並んでいる。
補強部材12は平板状をなしている。補強部材12は、複数の水管11の軸線を含む平面と、同一平面上に配置されている。
【0025】
図5に示すように、フック13は、補強部材12の内部空間53側の表面から内部空間53側に突出する基部14と、基部14の端部から上方に突出するフック上部15と、基部14の端部から下方に突出するフック下部16と、を有している。基部14は、補強部材12の表面に直交(交差)する方向に突出している。
【0026】
フック上部15及びフック下部16と補強部材12との間には、空間が形成されている。フック下部16と補強部材12との間の第一空間S1は、後述する、耐火タイル2の第一突起6が挿入される空間である。フック上部15と補強部材12との間の第二空間S2は、後述する、耐火タイル2の第二突起7が挿入される空間である。
図3に示すように、フック上部15及びフック下部16の水平方向の幅は、補強部材12の幅よりも小さい。
【0027】
フック下部16の基部14からの突出長さL1は、フック上部15の基部14からの突出長さL2よりも大きい。例えば、フック下部16の基部14からの突出長さL1は、フック上部15の基部14からの突出長さL2の1.5倍とすることができる。
換言すれば、フック下部16によって形成される第一空間S1のフック下部16の端部からの深さは、フック上部15によって形成される第二空間S2のフック上部15の端部からの深さよりも深い。
【0028】
次に、水管構造体10を保護する水管保護用構造体1の構成について説明する。
水管保護用構造体1は、補強部材12に設けられているフック13と、フック13を介して水管構造体10に取り付けられている複数の耐火タイル2と、水管構造体10と耐火タイル2との間に充填されたモルタル17と、を有している。本実施形態の耐火タイル2は、けんどん式によって水管構造体10に取り付けることができる。
【0029】
各々の耐火タイル2は、耐火性を有している。耐火タイル2は、例えば、炭化ケイ素(SiC)製である。各々の耐火タイル2は、隣接する2本の水管11を保護するように構成されている。耐火タイル2は、モルタル17を介して水管構造体10に接着されている。
【0030】
図3に示すように、耐火タイル2は、水管構造体10に取り付けた状態において、水管構造体10と直交する方向から見て矩形状をなしている。耐火タイル2は、水管構造体10の内部空間53側を向く面の全体を覆うように、上下方向及び左右方向に規則的に配置されている。
【0031】
図6、
図7、及び
図8に示すように、耐火タイル2は、隣り合う複数の水管11の各々の半周部分に沿う形状を有する第一保護部3A及び第二保護部3B(保護部3)と、第一保護部3Aと第二保護部3Bとを連結する連結部4と、を有している。保護部3は、水管11の外周面11aの一部を覆っている形状であればよい。
保護部3は保護部本体18と、保護部本体18に形成されている複数のスペーサ19と、を有している。
【0032】
図4に示すように、保護部本体18の内周面31は、水管11の外周面11aと平行となるように形成されている。換言すれば、保護部本体18は、水管11と保護部3との間の隙間G1が略一定となるように形成されている。
保護部本体18の外周面32は、保護部本体18の内周面31と平行となるように形成されている。換言すれば、保護部本体18は、厚さが一定となるように形成されている。
【0033】
図6に示すように、スペーサ19は、保護部本体18の内周面31の周方向の中央近傍に配置されたメインスペーサ19Aと、メインスペーサ19Aの両側に配置されたサブスペーサ19Bと、を有している。メインスペーサ19Aは、上下方向に複数設けられている。メインスペーサ19Aの高さ(保護部本体18の内周面31からの高さ)は、水管11と保護部3との間の隙間G1(
図4参照)と略同一である。
サブスペーサ19Bは、上下方向に複数設けられている。サブスペーサ19Bの高さは、メインスペーサ19Aよりもやや低い。
なお、メインスペーサ19Aは、各々の保護部3に一つ設けられていればよい。
【0034】
図8に示すように、連結部4は、連結部本体5と、連結部本体5から上方に突出する第一突起6と、連結部本体5から下方に突出する第二突起7と、を有している。連結部本体5は、補強部材12側を向き補強部材12と平行をなす連結部平行面20と、内部空間53を向く連結部表面21と、を有している。本実施形態の耐火タイル2は、第一突起6及び第二突起7を、第一空間S1及び第二空間S2にけんどん式に取り付けるようになっている。
【0035】
第一突起6及び第二突起7は、連結部本体5の連結部平行面20側に設けられている。即ち、第一突起6及び第二突起7は、連結部本体5の補強部材12側に設けられている。第一突起6は、補強部材12とフック下部16との間の第一空間S1に挿入される。第二突起7は、補強部材12とフック上部15との間の第二空間S2に挿入される。
【0036】
第一突起6は、連結部4の上面に、有底穴である第一穴部8を形成することによって形成される。第二突起7は、連結部4の下面に、有底穴である第二穴部9を形成することによって形成される。
第一突起6の連結部本体5からの突出長さP1は第二突起7の連結部4本体からの突出長さP2よりも長い。第一突起6の連結部本体5からの突出長さP1は、フック下部16の基部14からの突出長さL1と略同じである。第二突起7の連結部本体5からの突出長さP2は、フック上部15の基部14からの突出長さL2と略同じである。
【0037】
第一突起6の上端から第二突起7の下端までの長さL4は、上下方向に隣り合う一対のフック13のうち上方のフック13のフック下部16の下端から下方のフック13のフック上部15の上端までの長さL3(
図5参照)よりも長く形成されている。即ち、第一突起6が第一空間S1に配置されるとともに第二突起7が第二空間S2に配置され、かつ、耐火タイル2の下部がフック13によって支持されている状態においては、第一突起6とフック下部16とが干渉することによって、耐火タイル2が落下することはない。
【0038】
また、本実施形態のタイルは、第一穴部8の底面と第二突起7の下端との距離L5が、フック上部15の下端からフック下部16の上端の寸法L3よりも小さい。
上記した構成とすることによって、耐火タイル2をけんどん式によって、水管構造体10に取り付けることができる。
【0039】
図8に示すように、連結部4には、連結部4の厚さを低減する凹部22が形成されている。凹部22は、連結部4の連結部表面21(内部空間53を向く面)に形成されている。凹部22は、連結部4の上下方向の中央に形成されている。
凹部22が形成されていることによって、連結部4の上下方向中央近傍において、連結部4の厚さが薄くなる。凹部22は、凹部中央23と、凹部中央23と連結部4の上下方向の端部とを接続する斜面24とを有している。斜面24は、凹部中央23から、連結部4の端部に向かうに従って漸次連結部4の厚さが厚くなるように形成されている。
【0040】
図8に示すように、連結部4は、連結部本体5の連結部表面21側において、上方に突出する第一カバー部25と、連結部本体5の連結部表面21側において、下方に突出する第二カバー部26と、を有している。
第一カバー部25の連結部本体5からの突出長さは、第一突起6の突出長さP1と略同一である。第二カバー部26の連結部本体5からの突出長さは、第二突起7の突出長さP2よりも大きい。第二カバー部26は、複数の耐火タイル2を水管構造体10に取り付けた際に、下方に隣り合う耐火タイル2との隙間を埋めるような長さを有している。
【0041】
次に、実施の形態の耐火タイル2を水管構造体10に取り付ける方法について説明する。
まず、
図9(a)に示すように、耐火タイル2を傾けて、耐火タイル2の第一突起6を水管構造体10のフック13下方(第一空間S1)に挿入する。
次に、
図9(b)に示すように、耐火タイル2の第一突起6をフック13の基部14に当接させる。次いで、耐火タイル2の下部を水管構造体10側に移動させて、耐火タイル2を水管構造体10と平行にする。
【0042】
最後に、
図9(c)に示すように、耐火タイル2の第二突起7がフック13の基部14に支持されるように、耐火タイル2を落とし込む。
このような方法を用いることによって、耐火タイル2を水管構造体10にけんどん式で取り付けることができる。
【0043】
上記実施形態によれば、耐火タイル2が上端及び下端にてけんどん式によって支持される構造となるため、耐火タイル2の中心にフックの受け構造を形成する必要が無く、耐火タイル2の中心部の厚さを薄くすることができる。即ち、耐火タイル2の連結部4に凹部22を形成することができる。これにより、水管11の冷却効果が連結部4の表面(連結部表面21、内部空間53を向く面)に及びやすくなり、連結部4にクリンカが付着するのを抑制することができる。また、耐火タイル2における水管構造体10側と内部空間53側との温度差が小さくなるため、耐火タイル2自身に発生する応力を小さくすることができる。
また、耐火タイル2を製造する際の成形方法が単純になるため、耐火タイル2を低コストで製造することが可能となる。例えば、耐火タイル2を型を用いてプレス成形する場合、第一穴部8と第二穴部9を形成するための棒状の治具を型の所定位置にそれぞれ配置した後に炭化ケイ素を型に入れ、プレス成型し、その後、これら治具を引き抜くという単純な方法で、耐火タイル2の形を得ることができる。なお、当該成形後、焼き固められて耐火タイル2となる。
【0044】
また、連結部本体5の下端から第二カバー部26が突出していることによって、耐火タイル2によって保護される水管構造体10の範囲をより広くすることができる。
【0045】
また、保護部3の内周面31にスペーサ19が形成されていることによって、水管11と保護部3との間の隙間Gを一定に保持することができる。これにより、モルタル17の厚さを均質に確保することができ、施工品質を向上することができる。
【0046】
以上、本発明の実施形態について詳細を説明したが、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、耐火タイル2を有する水管保護用構造体1をストーカ型焼却炉50のボイラ水管壁に適用したが、これに限ることはない。ストーカ型焼却炉以外の炉のボイラ水管壁にも適用できる。本発明の耐火タイル2は、上記実施形態に記載された水管構造体10と同形状の水管構造体を有する熱交換器であれば、採用が可能である。