特許第6221213号(P6221213)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6221213車載用視野角制御シート、及びこれを備えた車載用表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6221213
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】車載用視野角制御シート、及びこれを備えた車載用表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/00 20060101AFI20171023BHJP
   G02B 1/14 20150101ALI20171023BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20171023BHJP
   G02F 1/13357 20060101ALI20171023BHJP
   B32B 7/02 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   G02B5/00 Z
   G02B1/14
   G09F9/00 324
   G09F9/00 336F
   G02F1/13357
   B32B7/02 103
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-209520(P2012-209520)
(22)【出願日】2012年9月24日
(65)【公開番号】特開2014-63106(P2014-63106A)
(43)【公開日】2014年4月10日
【審査請求日】2015年7月30日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122529
【弁理士】
【氏名又は名称】藤枡 裕実
(72)【発明者】
【氏名】清水 雄介
【審査官】 加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−217871(JP,A)
【文献】 特開2006−119365(JP,A)
【文献】 特開2012−128178(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0213245(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/00 − 5/136
G02F 1/1335 − 1/13363
G02B 1/10 − 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載用表示装置の表示パネルとバックライトとの間に、空気層を挟んで隣接配置される車載用視野角制御シートであって、
光を透過する光透過部と、光を吸収する光吸収部とが、シート面に平行な面に沿って少なくとも一方向に交互に配置され、前記光吸収部は、一方のシート面から前記光透過部に入光し前記光吸収部の側面に到達した光の一部は全反射して、他方のシート面に出光する視野角制御層と、
前記視野角制御層を挟んだ2つのシート面の双方を形成する、表面の算術平均粗さRaが0.1μm以上の粗面を呈し、光硬化性樹脂を樹脂固形分全量に対して50質量%を超過して用いたハードコート層と、
を含む車載用視野角制御シート。
【請求項2】
前記視野角制御層の一方の面と前記ハードコート層との間、前記視野角制御層の他方の面と前記ハードコート層との間、のいずれか1以上に、透明基材層を含む、請求項1に記載の車載用視野角制御シート。
【請求項3】
前記透明基材層がポリカーボネート系樹脂シートである、請求項2に記載の車載用視野角制御シート。
【請求項4】
バックライトを備え、前記粗面を呈するハードコート層で形成されたシート面側にバックライトが重ねられて配置された、請求項1〜3のいずれかに記載の車載用視野角制御シートを含む、車載用表示装置。
【請求項5】
前記バックライトからの照明光を表示光に利用して表示する表示パネルを備え、前記バックライトが重ねられた面と反対側のシート面に前記表示パネルが重ねられて配置された請求項4に記載の車載用表示装置。
【請求項6】
フロントガラス及びサイドウインドガラスのうち少なくとも一方の窓ガラスを備え、請求項4または5に記載の車載用表示装置が設置された乗り物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用として好適な車載用視野角制御シートと、これを備えた車載用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車ではカーナビゲーション装置の設置が一般化してきている。しかし、カーナビゲーション装置は、通常、フロントガラスの下方に位置するダッシュボードの幅方向中央部の手前側に設置されることが多く、設置条件によっては、特に夜間において、フロントガラスにカーナビゲーション装置の画面が映り込むことがある。
なお、車速などを表示する計器盤(メーターパネル、インストルメントパネル乃至は略してインパネなどと言うこともある。)については、太陽光などの強い光が入り込んで計器が見難くならないように、ひさし(メータクラスタ、インパネクラスタと言うこともある。)が、計器盤の上方に設置されているために、フロントガラスに計器盤が映り込むことはない。
ただ、カーナビゲーション装置については、カー用品店での市販品、或いは車両製造時から設置されているものも含めて、車両室内のデザイン上の関係で、ひさしが設置されない構造、或いは、ひさしが設置されたとしても、計器盤の場合ほど充分に機能できない構造となることがあるため、フロントガラスへの映り込みが生じることになる。
【0003】
そこで、ひさし無しで写り込みを改善するために、カーナビゲーション装置の液晶表示パネルに対して、表示光が画面上方のフロントガラス方向には進行しないように、表示光の進行方向を制御するための車載用視野角制御シートが提案されている(特許文献1)。
特許文献1で開示された車載用視野角制御シートは、液晶表示パネルとバックライトとの間に、バックライトからの照明光が画面上方に進行しないようにする視野角制御シートを挿入するものである。ここで使用される視野角制御シートは、透明シリコーンゴムシートと黒色シリコーンゴムシートとを、交互に多数積層した積層体を、前記ゴムシートのシート面に対してシート厚み方向に縦に薄くシート状に切断して、透明な光透過部と、黒色の光吸収部とが、交互にシート面に沿って配列した構成のものである。以下、これを「積層法」による車載用視野角制御シートとも呼ぶことにする。
ただ、この「積層法」による車載用視野角制御シートは、シート面の全域に亘って均一で精度よく、一定寸法の光透過部と一定寸法の光吸収部とを配置できず、輝度の濃淡ムラが生じることがあり、また、光吸収部でバックライトからの光が一部吸収され光線透過率が低下する問題がある。
【0004】
こうした濃淡ムラ、光線透過率低下を改善できる構成として、光硬化性樹脂を2P法(フォトポリマー法とも言う)によって成形した光硬化性樹脂の硬化物からなる光透過部と、光吸収部とが交互にシート面に平行な面に沿って配列した、車載用に適用可能とされる視野角制御シートが提案されている(特許文献2)。また、特許文献2で開示された視野角制御シートは、他の光学部品と空気層を挟んで隣接配置しても、光学密着による干渉縞(ニュートンリングとも言う)が生じないようにする為に、シート表面を算術平均粗さRaが0.1μm以上の粗面にした構成を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−279951号公報
【特許文献2】特開2010−217871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2で開示された視野角制御シートは、車載用として、バックライトと液晶表示パネルとの間に、これらの部材と空気層を挟んで隣接配置して使用すると、走行時の振動、車の過酷な温湿度環境による反り発生等によって、光学密着を防ぐ為に設けた粗面を有する表面が、バックライトとの接触、或いは液晶表示パネルとの接触によって傷付いて、光学密着防止効果が低下して、干渉縞発生により表示画面に明暗ムラが生じるなど、光学性能が低下することがある。
【0007】
すなわち、本発明の課題は、フロントガラスなど乗り物の窓ガラスへの表示面の映り込みを改善でき、空気層を挟んでバックライトと表示パネルとの間に隣接配置しても、これらとの接触面に設けた粗面による光学密着防止効果が低下し難く、光学性能が低下し難い、車載用として好適な車載用視野角制御シートと、これを備えた車載用表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明では、次の様な構成の、車載用視野角制御シートと、これを備えた車載用表示装置とした。
(1)車載用表示装置の表示パネルとバックライトとの間に、空気層を挟んで隣接配置される車載用視野角制御シートであって、
光を透過する光透過部と、光を吸収する光吸収部とが、シート面に平行な面に沿って少なくとも一方向に交互に配置され、前記光吸収部は、一方のシート面から前記光透過部に入光し前記光吸収部の側面に到達した光の一部は全反射して、他方のシート面に出光する視野角制御層と、
前記2つのシート面のうち少なくとも片面を形成する、表面の算術平均粗さRaが0.1μm以上の粗面を呈するハードコート層と、
を含む車載用視野角制御シート。
(2)前記視野角制御層の一方の面と前記ハードコート層との間、前記視野角制御層の他方の面と前記ハードコート層との間、のいずれか1以上に、透明基材層を含む、前記(1)の車載用視野角制御シート。
(3)前記透明基材層がポリカーボネート系樹脂シートである、前記(2)の車載用視野角制御シート。
(4)バックライトと、このバックライトからの照明光を表示光に利用して表示する表示パネルと、前記バックライトと前記表示パネルとの間に、前記粗面を呈するハードコート層で形成されたシート面側では空気層を挟んで隣接配置された前記(1)〜(3)のいずれかの車載用視野角制御シートとを含む、車載用表示装置。
(5)乗り物のフロントガラス及びサイドウインドガラスのうち少なくとも一方の窓ガラスが、前記表示パネルからの表示光が遮られることなく到達する場所に設置される、前記(4)の車載用表示装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、フロントガラスなど乗り物の窓ガラスへの表示面の映り込みを改善できる上、空気層を挟んで車載用視野角制御シートがバックライトと表示パネルとの間に隣接配置されても、これらとの接触面に設けた粗面による光学密着防止効果が低下し難く、光学性能を低下し難くできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明による車載用視野角制御シートの一実施形態例を示す断面図。
図2】視野角制御層によって、バックライトからの光の進行方向が制御され集光される様子を説明する断面図。
図3】視野角制御層の各部寸法を説明する断面図。
図4】本発明による車載用視野角制御シートの別の実施形態例(透明基材層が2層)を示す断面図。
図5】本発明による車載用表示装置の一実施形態例を示す断面図。
図6】バックライトの構成例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面は概念図であり、構成要素の縮尺関係、縦横比等は誇張されていることがある。
【0012】
〔A〕用語の定義
以下に、本発明において用いる主要な用語について、その定義をここで説明しておく。
【0013】
「シート面10p」とは、車載用視野角制御シート10の表裏で対向する2面の表面を意味する。車載用視野角制御シート10の一方のシート面10pと、このシート面10pとは反対側の他方のシート面10pとは、通常、全体的にかつ大局的に観察して互いに平行である。
「シート面10pに平行な面」とは、「シート面10p」に平行な任意の面を意味する。ただし、車載用視野角制御シート10の対向する2面の表面のうち少なくとも片面は、粗面2aという凹凸面であるため、粗面に注目すれば平面ではない。そこで、本発明においては、「シート面10pに平行な面」において、この粗面2aを大局的に観察して平面と見なした面、言い換えると、粗面2aに対する包絡面を「シート面10p」とする。
「層面1p」とは、視野角制御層1の表裏で対向する2面の表面を意味し、この場合の表面は空気と接触せず他の物体と接しているので界面を意味する。「層面1p」と「シート面10p」とは、通常、互いに平行な面である。
【0014】
「法線N」は、シート面10pに対する垂直線を意味する。本発明においては、「法線N」の方向に平行であって、照明光が向う方向を「正面方向」とも呼ぶ。
「主切断面形状」とは、シート面10pに対する法線Nに平行な断面のうち、注目する要素(例えば、光透過部1aや光吸収部1b)をシート面10pの法線Nの方向から観察した場合に延在方向を有する形状であるときに、その注目する要素の注目する部分の延在方向に直交する断面として定義される「主切断面」における形状のことを意味する。
「フィルム」、「シート」、「板」の用語は、一般的にこの順に厚みが厚くなる傾向を持つ用語であるが、その厚み境界が一義的ではないため、本発明においては、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別しない。したがって、例えば、「シート」はフィルムや板とも呼ばれ得るような部材も含む概念で用いる。
【0015】
〔B〕車載用視野角制御シート
以下、本発明による車載用視野角制御シートを、実施形態毎に説明する。
【0016】
《第1の実施形態》
先ず、図1は、本発明による車載用視野角制御シートの一実施形態例を示す断面図である。
図1に示す車載用視野角制御シート10は、視野角制御層1と、この視野角制御層1に接して積層された透明基材層3と、視野角制御層1及び透明基材層3を挟むようにして、片方は視野角制御層1に接して形成され、もう片方は透明基材層3に接して形成された、表面が特定の粗面2aを呈する2層のハードコート層2とからなる。
【0017】
〔視野角制御層1〕
視野角制御層1は、光を透過する光透過部1aと、光を吸収する光吸収部1bとが、シート面10pに平行な面に沿って、本実施形態では、一方向に交互に配置された光学構造を有する。
光透過部1aの配置の形態は、本実施形態では、一定の配列周期Pで図面左右方向に配列された形態である。同様に、光吸収部1bの配置の形態も、本実施形態では、前記配列周期Pと同じ一定の配列周期Pで図面左右方向に配列した形態となる。
【0018】
さらに、本実施形態の視野角制御層1は、透明で光透過性であるランド部1cも視野角制御層1の全面に有する。このランド部1cは、同図に示すように、視野角制御層1の図面上方側、楔状形状の光吸収部1bに対して言えば幅狭となる側に存在し図面上方の側の層面1pを構成している。
ランド部1cは、光透過部1aと一体的に形成され同一材料からなる。このため、ランド部1cと光透過部1aとの互いの境界は、屈折率及び透過率など光学的物性は同一となっている。図1では、ランド部1cと光透過部1aとの境界は、点線で示してある。
なお、このランド部1cは、前記背景技術で述べた積層法によって形成された視野角制御層では、存在し得ない構成要素である。
【0019】
同図は、シート面10pの法線Nを含む面の断面図であり、同図の形態では、光透過部1aの断面形状は台形形状であり、その上底及び下底のうち辺の長さが小さい方の上底を図面下方として配置される。一方、光吸収部1bの断面形状も台形形状からなる楔状形状
であり、光吸収部1bは光透過部1aとは逆に、その楔状形状の幅狭となる上底を図面上方として配置される。
【0020】
このように、本実施形態においては、光透過部1a及び光吸収部1bは、それぞれ断面形状が台形形状の柱状体であり、ともにその柱状体の延在方向が直線状で紙面に垂直方向となっている。したがって、同図の断面図は、光透過部1a及び光吸収部1bに対して主切断面でもある。
【0021】
[視野角制御層による集光作用]
図2の断面図は、車載用視野角制御シート10の視野角制御層1が、バックライトからの光を集光する作用を模式的に説明する図である。
【0022】
図2は、視野角制御層1のうち、二つの光吸収部1bを中心した部分拡大断面図である。視野角制御層1に対して、図面下側の層面1pが入光面Pinであり、図面上側の層面1pが出光面Poutであり、図面上下方向が車載用視野角制御シート10のシート面10pに対する法線Nである。この法線Nの方向の図面上方が正面方向である。
車載用視野角制御シート10に入光した光は、視野角制御層1に入光面Pinから入光し、そのうちの一部を除いて出光面Poutから出光する。図面は、視野角制御層1に入光する光として、視野角制御層1への入射角に応じて、4種類の光を描いてある。
【0023】
先ず、視野角制御層1の光透過部1aの部分に入射角90°で垂直に入光した光Laは、光透過部1aの内部を直進して通過し、出光面Poutから出光される。なお、図示はしないが、視野角制御層1の光吸収部1bの部分に入射角90°で垂直に入光した光は、光吸収部1bで吸収され、視野角制御層1によって遮断される。
視野角制御層1の光透過部1aの部分に入射角90°未満で斜めに入光した光のうち、光吸収部1bとの境界付近に入光した光Lbは、光透過部1aの内部を斜めに進行して、前記光吸収部1bに隣接する光吸収部1bによって遮られることなく、出光面Poutから出光される。したがって、この光Lbの入射角よりも大きい角度で光透過部1aに入光する光は、光吸収部1bによって遮られる結果、視野角制御層1に入光する光全体としては集光される。
視野角制御層1の光透過部1aの部分に入射角90°未満で斜めに入光した光のうち、光透過部1aの内部を斜めに進行して、光吸収部1bの側面に到達する光Lcは、光吸収部1bの側面で反射されて、進行方向を正面方向側に変えて集光され、光透過部1aを通過する。このとき、光吸収部1bの屈折率nbが、光透過部1aの屈折率naよりも小さく設定されていると、光吸収部1bの側面に臨界角以上の入射角で到達した光Lcは、光吸収部1bで吸収されることなく、全反射される。このため、全反射作用によって、光線透過率が向上する。
視野角制御層1の光透過部1aの部分に入射角90°未満で斜めに入光した光のうち、光透過部1aの内部を斜めに進行して光吸収部1bの側面に前記光Lcよりも該側面に対する入射角を小さくして到達した光Ldは、光吸収部1bの側面で反射するにしても一部で、残りは光吸収部1bで吸収される。
【0024】
こうして、視野角制御層1によって、車載用視野角制御シート10のシート面10pの正面方向から大きく離れた角度で出光する光を減らすことができ、この車載用視野角制御シート10を車載用表示装置に用いると、フロントガラスなど乗り物の窓ガラスへの映り込みが改善されることになる。
【0025】
[光透過部1aとランド部1c]
光透過部1aは、透明材料から構成され、好ましくは、形成が容易な点等から透明樹脂から構成される。この透明樹脂としては、公知の透明樹脂を用いることができる。例えば、透明樹脂としては、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂等の熱可塑性樹脂を用いることができる。但し、透明樹脂としては、熱可塑性樹脂に比べて、耐溶剤性があり形成時の固化が迅速などの点で、好ましくは、硬化性樹脂、それも、紫外線や電子線で硬化する光硬化性樹脂を用いるのがよい。光硬化性樹脂としては、アクリレート系、エポキシ系、ポリエステル系などの樹脂が挙げられ、例えばアクリレート系では、ウレタンアクリレート系樹脂などを用いることができる。
【0026】
ランド部1cは、光学性能的には、また、本発明においては、必須ではないが、光透過部1aを形成時に付随的に同時に形成され得る部分であり、視野角制御層1に属する要素である。ランド部1cは透明であり不要光を吸収不可能な部分でもある。
ランド部1cは、典型的には、光透過部1aと一体的に形成され同一材料からなり、このため、ランド部1cと光透過部1aとの互いの境界は、屈折率及び透過率など光学的物性は同一となる。
ランド部1cを構成する材料は、前記した光透過部1aと同一とすることができる。
【0027】
[光吸収部1b]
光吸収部1bは、光透過部1aとの共同作用により、正面方向から大きく離れた角度で視野角制御層1に入光する光を遮断することで、それ以外の光を視野角制御層1から出光するように制御をする。また、光吸収部1bは、その側面に適度な角度で到達した光は全反射して、視野角制御層1から集光された光として出光させることで、光線透過率を向上させることができる。
【0028】
(主切断面形状)
光吸収部1bの主切断面形状は、本実施形態においては、図面上方の側が幅狭となる楔状形状をしている。
光吸収部1bは、図2のような、幅狭の方をシート出光面Pout側とする楔状形状とすることで、光吸収部1bの側面、具体的には光吸収部1bと光透過部1aとの界面に、光透過部1aの内部を進行して到達する光を、全反射させて正面方向に集光して映り込みを改善しつつ、光線透過率を向上させることができる。
【0029】
本発明においては、光透過部1aの主切断面形状は、矩形形状でもよい。矩形形状であっても、映り込みを改善しつつ、車載用視野角制御シート10の接触面を傷付き難くして光学性能を低下し難くすることができる。
ただ、光線透過率も改善する意味では、幅狭となる先端をシート出光面側Soutに向けた楔状形状がより好ましい。
【0030】
光吸収部1bの主切断面形状として、シート出光面側Soutをシート入光面側Sinよりも幅狭とする楔状形状の形状としては、本実施形態のような台形以外の形状でもよい。例えば、三角形形状(含む二等辺三角形形状)、五角形形状、六角形形状、三角形の両方又は片方の斜辺を折れ線化又は曲線化した形状(外側に向かって凸形状或いは凹形状)等である。
光吸収部1bの主切断面形状は、図1では左右対象であったが、図1のように台形形状であっても、また台形形状以外の形状であっても、左右非対称形状とすることができる。
左右非対称形状とすることで、光吸収部1bの配列方向に平行な面内において、視野角を、左右非対称とすることができる。
【0031】
このように、光吸収部1bの主切断面形状を調整することで、側面での不要光の吸収、側面での全反射条件の調整などにより、集光機能及び光線透過率を調整することができる。
【0032】
[構成材料]
光吸収部1bは、光吸収粒子と、この光吸収粒子を分散し保持する透明な樹脂バインダとから構成することができる。
【0033】
前記光吸収粒子としては、カーボンブラック等の光吸収性の着色粒子が好ましく用いられるが、これらに限定されるものではなく、映像光の特性に合わせて特定の波長を選択的に吸収する着色粒子を使用してもよい。
こうした光吸収粒子としては、具体的には、カーボンブラック、グラファイト、黒色酸化鉄等の金属塩、染料、顔料等で着色した有機微粒子や着色したガラスビーズ等を挙げることができる。特に、着色した有機微粒子が、コスト面、品質面、入手の容易さ等の観点から好ましい。より具体的には、カーボンブラックを含有したアクリル架橋微粒子や、カーボンブラックを含有したウレタン架橋微粒子等が好ましい。光吸収性およびバインダーとの密着性に優れているからである。
【0034】
前記樹脂バインダとしては、樹脂を含む透明なバインダ材料を用いることができ、典型的には、紫外線で硬化する光硬化性樹脂を用いることができる。樹脂バインダの樹脂(バインダ樹脂)としては、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂等の熱可塑性樹脂でもよいが、形成時の固化が迅速などの点で、好ましくは、硬化性樹脂、それも、紫外線や電子線で硬化する光硬化性樹脂を用いるのが好ましい。光硬化性樹脂としては、アクリレート系、エポキシ系、ポリエステル系などの樹脂が用いられる。
【0035】
[各部の寸法]
ここで、視野角制御層1を構成する各部の寸法について説明する。
光吸収部1bの主切断面形状に於ける寸法は、図3に示すように、例えば、高さAは光透過部1aの厚み以下であり10〜200μm、幅は、台形形状の場合で言えば、下底Bは5〜50μm、上底Cは2〜10μm、シート面10pの法線Nに対する、光吸収部1bの側面の傾斜角αは0〜15°とすることができる。
光吸収部1bの配列周期Pは、10〜200μmとすることができる。この配列周期Pは、光透過部1aの配列周期Pでもある。
【0036】
光透過部1aの厚みは、光制御機能に応じて適宜に設定すればよく、例えば20〜200μmとすることができる。
光透過部1aは、シート面10pの法線Nの方向から観察したときに、通常、視野角制御層1を、その層面1p乃至はシート面10pに投影した面積の主要な部分を占める。前記主要とは、投影面積が50%を超過することを意味する。
【0037】
ランド部1cの厚みは、例えば、0〜50μmとすることができる。0μmとは、ランド部1cを設けない場合である。
【0038】
[光透過部1aと光吸収部1bとの屈折率差]
光吸収部1bの樹脂バインダの屈折率をnbとし、光透過部1aを構成する材料の屈折率をnaとしたときに、屈折率nbと屈折率naの大きさの関係を調整することで、光吸収部1bと光透過部1aとの界面での光の屈折及び全反射を含む反射光量を調整して、集光機能及び光線透過率を調整することができる。
全反射の光量を増やせる点で、屈折率nbは屈折率naよりも小さくするのが好ましい。例えば、屈折率nbは屈折率naよりも0.01以上、より好ましくは0.06〜0.07、小さくする。こうした屈折率の差は、汎用的な材料で容易に屈折率差を大きくとることができる利点がある。
【0039】
[形成法]
光透過部1a及び光吸収部1b、さらにランド部1cも含み得る視野角制御層1は、視野角制御層1に対する従来公知の材料及び形成法を適宜採用することができる。
【0040】
例えば、加熱された成形型を熱可塑性樹脂層に押圧する熱プレス法、熱可塑性樹脂組成物を成形型内に注入して固化させるキャスティング法、射出成形法、光硬化性樹脂組成物を成形型上(内)に注入して活性エネルギー光線で硬化させる2P法(フォトポリマー法)等を利用できる。これらの成形法の中でも、2P法は生産性に優れる点でより好ましい。2P法では、シリンダ状(円筒状)の成形型を使用して、帯状シートなどを供給しながら連続的に成形できる。帯状シートとして透明基材層3を用いれば、透明基材層3上に積層された、ランド部1cと、ランド部1c上に該ランド部1cと一体的に積層された光透過部1aと、この光透過部1a側の面に光吸収部1bの形状に対応した凹部とを形成できる。また、成形型の型面と透明基材層3とを密着させて成形すれば、ランド部1cが存在しない形態で、透明基材層3上に光透過部1aと、この光透過部1a側の面に光吸収部1bの形状に対応した凹部とを形成できる。
そして、前記凹部の内部に、光吸収粒子と樹脂バインダを含む光吸収部形成用組成物を、ワイピング法によって充填し固化させれば光吸収部1bを形成できる。
【0041】
〔ハードコート層2〕
ハードコート層2は、表面がJIS B0601:1994年版による算術平均粗さRaが0.1μm以上の粗面2aを呈する硬質な塗工層である。ハードコート層2は、車載用視野角制御シート10の表裏両面のシート面のうち少なくとも片面を形成する。
ハードコート層2は、その表面の粗面2aによって、車載用視野角制御シート10が、車載用表示装置に組み込まれたときに、隣接する他の光学部材との接触によって傷付き難くすると共に、その表面の粗面2aによって光学密着を防止し、ひいては、光学密着による干渉縞の発生を抑制し、光学性能が低下し難いようにすることができる。
なお、粗面2aを呈するハードコート層2で形成されてないシート面は、粗面2aを呈さないハードコート層、粗面2aを呈さない透明基材層3、その他機能層、など任意の層で形成することができる。
【0042】
[ハードコートとは]
本発明において、「ハードコート」とは、JISK5600−5−4:1994年版で規定される鉛筆硬度で「F」以上の硬度を示すことを意味する。
上記鉛筆硬度は、より傷付き難くする点で、好ましくはH以上、より好ましくは2H以上、さらに好ましくは3H以上、である。
【0043】
[算術平均粗さRa]
算術平均粗さRaは、JIS B0601:1994年版による算術平均粗さRaで、0.1μm以上とする。
算術平均粗さRaが、上記値未満であると、光学密着防止効果が充分に発揮されないことがある。一方、算術平均粗さRaの上限は、1.5μmとすることが好ましい。算術平均粗さRaが上記値を超えると、光の拡散が多くなり、光を集光する効果が低減することがあるからである。よって、算術平均粗さRaは、0.1〜1.5μmの範囲内が好ましい。
【0044】
(空気層を挟んで隣接配置されるとは)
本実施形態において、車載用視野角制御シート10は、バックライトと表示パネルとの間に、空気層を挟んで隣接配置されるものであるが、ここでは、先ず、粗面2aを呈するハードコート層2で形成されたシート面に対向して配置されるバックライトや表示パネルを「対向部材」と言うことにする。そして、「空気層を挟んで」とは、車載用視野角制御シート10が、その粗面2aの凸部で、対向部材と接触しており、その粗面2aの凹部の部分に存在する空気を挟んでという意味である。したがって、「空気層を挟んで隣接配置される」とは、車載用視野角制御シート10と、対向部材とが、完全に離間した状態で、粗面2aが有する全ての凸部が、対向部材と接触していない状態のことを意味するのではなく、粗面2aの全ての凸部のうち、少なくともその一部が、対向部材と接触する様に、隣接して配置されていることを意味する。
【0045】
[粗面2aの形成法]
ハードコート層2の表面を、上記特定の粗面2aとするには、熱プレスによるエンボス法、サンドブラスト加工、光硬化性樹脂を用いた2P法、凸部をパターン形成する印刷法、粗面形成用の粒子を含有する塗料で塗布形成する塗工法、など、公知の方法を適宜採用することができる。
【0046】
ハードコート層2の厚みは、用途、要求仕様に応じて設定すればよく、例えば、3〜20μm程度とすることができる。厚みが薄すぎると、傷付きに対する耐性が不足することがあり、厚みが厚すぎると過剰性能となることがある。
【0047】
[構成材料]
ハードコート層2は、架橋された樹脂層として形成することが好ましく、架橋された樹脂としては、ウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂でもよいが、より優れた耐傷付き性が得易い点で、光硬化性樹脂を主要な樹脂に用いるのが好ましい。光硬化性樹脂は紫外線や電子線などの活性エネルギー光線で硬化する樹脂であり、電離放射線硬化性樹脂とも呼ばれている。
前記「主要」とは、樹脂固形分全量に対して50質量%を超過していることを意味する。
【0048】
上記光硬化性樹脂としては、公知のものを用い得ることができる。例えば、上記光硬化性樹脂としては、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート、アクリルアクリレートなどのアクリレート系プレポリマー、多官能性アクリレート系モノマー、単官能性アクリレート系モノマー、ビニル系モノマー等の重合性化合物を一種以上含む樹脂組成物を用いることができる。
【0049】
鉛筆硬度をより硬くできる点では、多官能重合性化合物を含ませるのが好ましい。例えば、上記多官能性アクリレート系モノマーとして、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(TMPTA)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどを用いることができる。
【0050】
また、多官能重合性化合物には多官能プレポリマーとして、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、シリコーンアクリレート、エポキシアクリレートなどを用いることができる。
【0051】
なお、本明細書では、(メタ)アクリレートとはアクリレート又はメタクリレートを意味し、単に「アクリレート系」と言うときはメタクリレート系も含む。
【0052】
上記樹脂組成物は、上記のような重合性化合物の他に、更に紫外線で硬化させる場合は光重合開始剤を含む。また、この樹脂組成物は、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂などの熱可塑性樹脂、ウレタン系樹脂などの熱硬化性樹脂、その他、レベリング剤、消泡剤、安定剤などの各種公知の添加剤を含むことができる。
また、上記樹脂組成物は、シリコーン系などの易滑剤を含ませることで、表面が振動などで擦れたときの滑り性が向上し、表面損傷による光学性能低下を、より生じ難くすることができる。上記易滑剤としては、前記したシリコーンアクリレートなどの反応性易滑剤の他、シリコーンオイルなどの非反応性易滑剤などを用いることができる。
【0053】
[形成法]
粗面2aを有するハードコート層2の形成法は、特に限定されない。粗面2aはハードコート層2の形成と同時に形成することが、製造が容易になる等の点で、好ましい。こうしたハードコート層2の好ましい形成法としては、スプレー塗装、ロールコートなどの塗工法、或いは2P法を挙げることができる。
なお、粗面2aを、粗面2a無しのハードコート層を形成した後に、このハードコート層に形成するのであれば、熱プレスによるエンボス法、サンドブラスト法などを利用することもできる。ただ、この場合は、ハードコート層2の硬化性樹脂を半硬化状態に留めて熱可塑性を呈する状態のときに、粗面2aを形成した後、残りの硬化を進めて、目的とする粗面2aを有するハードコート層2を完成させることができる。
【0054】
〔透明基材層3〕
透明基材層3は、光を透過可能な透明な基材シートから構成される。透明基材層3は、視野角制御層1のみでは機械的強度が不足する場合に機械的強度を補うことができ、また、2P法(フォトポリマー法)等において視野角制御層1を形成するときの基材として作用し、形成を容易にすることができる。
透明基材層3としては、透明性を備えた材料であれば、特に制限はなく公知のものを適宜採用できる。例えば、透明基材層3には、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、或いは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、シクロオレフィン重合体などのポリオレフィン系樹脂、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂、などを用いることができる。
なかでも、車載用として耐熱性の点で、ポリカーボネート系樹脂は好ましい。ここで、
ポリカーボネート系樹脂とは、ポリカーボネートを主要なポリマーとする樹脂であり、劣化防止剤、可塑剤、軟化剤等の充填剤を含み得る他、アクリル系樹脂等との複合体でもよい。前記「主要」とは、樹脂固形分全量に対して50質量%を超過していることを意味する。
これら樹脂は、フィルム、シート、板の形態で使用される。透明基材層3の厚みは、要求仕様などに応じて適宜に設定され、例えば25〜300μmである。
本発明においては、透明基材層3は必須ではない。
【0055】
〔構成例〕
ここで、本実施形態の車載用視野角制御シート10について、より具体的な構成例を示す。透明基材層3には厚み150μmの透明なポリカーボネート系樹脂シートを用い、この透明基材層3の表側とする面に、厚み3μmで粗面2aを呈するハードコート層2を塗工形成して、先ず、ハードコート層付きポリカーボネート系樹脂シートを作成する。上記ハードコート層2は、アクリレート系重合性化合物を含む光硬化性樹脂中に、平均粒子径4μmの透明な架橋アクリル系樹脂ビーズを添加した光硬化性樹脂組成物からなる塗料を塗工し紫外線照射により硬化物層として形成する。粗面2aは、算術平均粗さRaが0.2μmである。
【0056】
次に、上記ポリカーボネート系樹脂シートを帯状シートとして用いて、そのハードコート層2が形成された面とは反対側の面に、シリンダ状の成形型を用いた2P法により連続的に、光透過部1a及びランド部1cを形成すると同時に、光吸収部1bに対応する逆凹凸形状の溝状凹部を形成し、次いで、この溝状凹部内にワイピング法によって光吸収部1bを形成することで、視野角制御層1を形成する。視野角制御層1を構成する光透過部1a及びランド部1cの樹脂には、ウレタンアクリレート系重合性化合物を含む光硬化性樹脂を用い、光吸収部1bには、アクリレート系重合性化合物を含む光硬化性樹脂中に、カーボンブラックにより黒色に着色した平均粒子径4μmの架橋アクリル系着色樹脂ビーズを添加した樹脂組成物からなる暗色塗料を用いる。なお、光硬化性樹脂の硬化には紫外線を用いる。
視野角制御層1の厚みは、180μm、光吸収部1bは左右対称形である等角台形形状からなる楔状形状とした光吸収部1bの寸法は、高さAは160μm、幅は、台形の下底Bが10μm、上底Cが3.5μm、側面の傾斜角αは1.5°である。
屈折率差は、波長589nmに於いて光吸収部1bの屈折率nbが1.490、光透過部1aの屈折率naが1.550で、光透過部1aが光吸収部1bよりも0.06大きい屈折率差である。
【0057】
次に、上記視野角制御層1の面に、前記ハードコート層2の形成に用いた塗料を同様に塗工形成して、視野角制御層1の面にも、表面が粗面2aを呈するハードコート層2を形成する。
この結果、図1に示した、車載用視野角制御シート10が得られる。
【0058】
〔本実施形態による効果〕
本実施形態によれば、フロントガラスなど乗り物の窓ガラスへの表示面の映り込みを改善できる上、空気層を挟んで車載用視野角制御シートがバックライトと表示パネルとの間に隣接配置されても、これらとの接触面に設けた粗面による光学密着防止効果が低下し難く、光学性能を低下し難くできる。
さらに、透明基材層3を1層有するので、機械的強度が増して、取り扱い易くなり、皺や反りの発生を生じ難くすることができる。
【0059】
《第2の実施形態》
第2の実施形態は、上記第1の実施形態の構成に対して、透明基材層3を、視野角制御層1の両側の面に設けた構成である。
本実施形態の車載用視野角制御シート10は、図4の断面図に示すように、視野角制御層1と、この視野角制御層1の一方の面(同図では視野角制御層1の図面上方の層面1p)に接して積層された透明基材層3と、他方の面(同図では視野角制御層1の図面下方の層面1p)に、間に接着層4を介して積層された前記透明基材層3とは別体の透明基材層3と、これら視野角制御層1及び2つの透明基材層3を挟むようにして、それぞれの透明基材層3に接して形成され、表面が粗面2aを呈する2層のハードコート層2とからなる。
【0060】
本実施形態では、図4からも判るように、上記第1の実施形態に対して、層構成的には、透明基材層3が1層追加され、追加された透明基材層3が視野角制御層1を挟む様に形成されている点、及び、この追加された透明基材層3が接着層4を介して形成されている点が異なる以外は、上記第1の実施形態と同じである。
よって、ここでは、これらの相違点に関係する事項についてのみ説明する。
【0061】
〔透明基材層3〕
本実施形態のように、視野角制御層1の表裏両側に設ける場合の、透明基材層3としては、上記第1の実施形態で説明した材料を用いることができる。
ただし、2層の透明基材層3は、厚みも含めて同じ材料であってもよく、異なる材料であってもよい。
ただ、同じ樹脂材料を用いるのが、反りを小さくできることがある点で好ましい。同様に、厚みについても同じにするのが、好ましい。
本実施形態においては、2層の透明基材層3に、同じポリカーボネート系樹脂シートを用いてある。
接着層4に接する側の透明基材層3は、この接着層4によって既に形成済みの視野角制御層1に接着積層することができる。このとき、ハードコート層2を形成ずみの透明基材層3を用いることができる。
【0062】
本実施形態のように、視野角制御層1を表裏両側から挟み込むように、車載用視野角制御シート10の表裏両側に透明基材層3を設けることで、反りを減らせることがあり、それによるシート面10pの傷付きを減らせる点で好ましい。
【0063】
〔接着層4〕
接着層4は、その両側の層を接合するための透明な層である。接着層4は接着の必要性に応じて設けられる。本実施形態では、接着層4は、視野角制御層1を形成した後の、この視野角制御層1の面に透明基材層3を接着するために、使われている。
接着層4は、粘着剤層、接着剤層等として用いられ得る。接着層4には、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂等の熱可塑性樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、光硬化性樹脂等の硬化性樹脂を用いることができる。
本発明においては、接着層4は必須ではない。
【0064】
〔構成例〕
ここで、本実施形態の車載用視野角制御シート10について、より具体的な構成例を示す。本実施形態は、前記第1の実施形態に対して、透明基材層3が1層追加され、この透明基材層3が接着層4を介して積層されている点が異なるので、この追加の透明基材層3と接着層4について説明する。その他の構成は、光吸収部1bなどの各部の寸法を下記のように変更した他は、同じである。
視野角制御層1の厚みは、180μm、光吸収部1bは左右対称形である等角台形形状からなる楔状形状とした光吸収部1bの寸法は、高さAは150μm、幅は、台形の下底Bが22μm、上底Cが3μm、側面の傾斜角αは4.2°である。
よって、ハードコート層付きポリカーボネート系樹脂シートの片面に、視野角制御層1を形成する段階までは、同様にして作成される。
【0065】
本実施形態では、上記第1の実施形態の具体的構成例において、上記ハードコート層付きポリカーボネート系樹脂シートの視野角制御層1の面に対して、ハードコート層2を直接に塗工形成する代わりに、接着層4を介して、上記ハードコート層付きポリカーボネート系樹脂シートと同じシートを接着積層する。接着層4には、アクリレート系重合性化合物を含む光硬化性樹脂からなる紫外線照射で硬化可能な透明な接着剤を、前記視野角制御層1の面と、前記ハードコート層付きポリカーボネート系樹脂シートの粗面2aとは反対側の面を対向させて、これらの面の間に前記接着剤を供給して貼り合わせた後、紫外線照射で接着剤を硬化させて、光硬化性樹脂の硬化物かなる接着層4とする。
この結果、図4に示した、車載用視野角制御シート10が得られる。
【0066】
〔本実施形態による効果〕
本実施形態によれば、フロントガラスなど乗り物の窓ガラスへの表示面の映り込みを改善できる上、空気層を挟んで車載用視野角制御シートがバックライトと表示パネルとの間に隣接配置されても、これらとの接触面に設けた粗面による光学密着防止効果が低下し難く、光学性能を低下し難くできる。
さらに、透明基材層3を2層、視野角制御層1を挟むように有するので、透明基材層3が1層のみの構成に比べてさらに、機械的強度が増して、取り扱い易くなり、皺や反りの発生を生じ難くすることができる。
【0067】
《変形形態》
本発明においては、車載用視野角制御シート10は、上記した形態以外に、その他の形態もとり得る。以下、その一部を説明する。
【0068】
〔粗面2aを呈するハードコート層2をシート面の片面のみに有する形態〕
本発明においては、粗面2aを呈するハードコート層2を、シート面の片面のみに有する形態もあり得る。粗面2aを呈するハードコート層2をバックライト20側とする形態では、他方の表示パネル30側のシート面には、粗面2aを呈するハードコート層2が存在しない。このため、当該ハードコート層2を有さない方のシート面については、接触などによる傷付きを防ぐ意味で、表示パネル30の面を粗面2aを呈するハードコート層2の面として空気層を挟んで隣接配置するか、或いは、表示パネル30にアクリル系接着剤など公知の接着剤(含む粘着剤)などで密着固定するのが好ましい。逆に、粗面2aを呈するハードコート層2を表示パネル30側とする形態では、他方のバックライト20側のシート面には、粗面2aを呈するハードコート層2が存在しない。このため、当該ハードコート層2を有さない方のシート面については、接触などによる傷付きを防ぐ意味で、バックライト20の面を粗面2aを呈するハードコート層2の面として空気層を挟んで隣接配置するか、或いは、バックライト20にアクリル系接着剤など公知の接着剤(含む粘着剤)などで密着固定するのが好ましい。
このようにすれば、粗面2aを呈するハードコート層2がシート面の片面であっても、他方のシート面も、接触による傷付きが生じず、接触による光学性能の低下を生じ難くすることができる。
【0069】
〔光透過部1a及び光吸収部1bの配置〕
上記した形態では、光透過部1aは柱状体で、その柱状体の直線状に延びる延在方向を互いに平行にして、一定の間隔で一定の方向に、シート面10pに平行な視野角制御層1の層面1pに沿って配列する様な配置をしており、また同時に光吸収部1bも同様に柱状体で、その柱状体の直線状に延びる延在方向を互いに平行にして、一定の間隔で一定の方向に、シート面10pに平行な視野角制御層1の層面1pに沿って配列する様な配置をしていた。光透過部1a及び光吸収部1bともに、その延在方向に直交する方向が前記配列方向である。言い換えると、法線Nの方向から観察すると、光透過部1aと光吸収部1bは交互にストライプ状の配列をしていた。
しかし、本発明においては、光透過部1aの配置、及び光吸収部1bの配置は、光透過部1aと光吸収部1bとがシート面10pに平行な面に沿って少なくとも一方向に交互に配置されていれば、上記構成に限定されない。
例えば、法線Nの方向から観察すると、光吸収部1bが縦横に走る正方格子状の配列で、この正方格子の正方形部分が光透過部1aとなる配列である。言い換えると、光吸収部1bの形状は、第1の方向に直線状に延在する柱状体と、この第1の方向と直交する第2の方向に直線状に延在する柱状体とが互いに融合した形状となる。第1の方向と第2の方向とが直交するとき、正方格子となり、斜めに交差すると斜方格子となる。
こうした配列方向が2方向となる視野角制御層1とすることで、例えば、第1の方向は、表示パネルの表示画面の天地方向、第2の方向は表示パネルの表示画面の水平方向として用いることで、第1の方向の配列によって、フロントガラスへの写り込みを改善すると共に、第2の方向の配列によって、サイドウインドガラスへの写り込みを改善することも可能となる。
【0070】
〔機能層〕
本発明における車載用視野角制御シート10は、上記した構成層以外に、さらに、機能層を積層した構成とすることができる。機能層は、従来公知の光学シートに於ける各種機能層を適宜採用できる。
機能層は、大別すると光学機能を担う光学機能層と、光学機能以外の機能を担う非光学機能層がある。
光学機能層の例を挙げれば、紫外線を吸収する紫外線吸収層、着色フィルタ層などがある。
非光学機能層の例を挙げれば、帯電防止層、汚染防止層、耐衝撃層、或いは前記した透明基材層3、接着層4などがある。
【0071】
光学機能層及び非光学機能層の各層は単層で機能を兼用する事もあり、光学機能層と非光学機能層間で兼用する事もある。また、紫外線吸収層、着色フィルタ層等は、透明基材層3や接着層4、視野角制御層1中の光透過部1a及びランド部1cと、兼用させることもできる。
機能層の位置は、機能層が透明基材層3、ハードコート層2、並びに視野角制御層1中の光透過部1a及びランド部1c以外の層である場合では、例えば、視野角制御層1、ハードコート層2、透明基材層3の何れかの層間の1以上の位置に設けることができる。また、ハードコート層2の表面の粗面2aによる光学密着防止効果を阻害しない範囲内であれば、粗面2aの面に帯電防止層を設けることもできる。
これらの機能層を積層することによって、積層した機能層が有する機能に応じた機能を、付与することができる。
【0072】
〔C〕車載用表示装置
本発明による車載用表示装置は、バックライトと、このバックライトからの照明光を表示光に利用して表示する表示パネルと、前記バックライトと前記表示パネルとの間に、粗面2aを呈するハードコート層2で形成されたシート面側では空気層を挟んで隣接配置された上記本発明の車載用視野角制御シート10とを含む、車載用の表示装置である。
図5の実施形態例で示す車載用表示装置100は、図面下側の光源側から順に、バックライト20、車載用視野角制御シート10、及び、表示パネル30を含んだ構成である。
図面上方が、車載用表示装置100の表示面を観察する観察者Vの側である。
同図では、車載用視野角制御シート10について、視野角制御層1、及び粗面2aを有するハードコート層2のみを描いてあり、この他の構成層、例えば透明基材層3、接着層4などは、含まれている構成であっても図示は省略してある。
また、同図に示す本実施形態における車載用視野角制御シート10は、シート面の両面に、粗面2aを呈するハードコート層2を有する場合の形態例である。
【0073】
〔車載用視野角制御シート10〕
車載用視野角制御シート10は、その視野角制御層1の光透過部1a及び光吸収部1bの配列方向を、表示パネル30の表示画面の天地方向になる様にして配置される。
表示パネル30の画素の配列周期と、視野角制御層1の光透過部1a及び光吸収部1bの配列周期Pとが干渉してモアレ(縞模様)が生じるときは、配列周期Pの配列方向を天地方向からずらして、モアレを生じ難くしてもよい。ずらす角度は、例えば、天地方向からの角度で1〜45°の範囲で調整する。
【0074】
〔バックライト20〕
バックライト20は、光を面状に出光可能なものであればよく、公知のものを適宜採用することができる。バックライト20は、ELパネル(電界発光パネル)であれば、それ自体でバックライト20とすることもできる。また、LED(発光ダイオード)のような点状光源、冷陰極管のような線状光源などの光源と、導光板、さらに適宜反射板も加えて、前記光源からの光を面状光源に変換した、光源ユニットを用いることもできる。光源ユニットは、このように複数の光学部品から構成してもよいし、例えば導光板不要なELパネル単体で構成してもよい。
【0075】
図6の断面図は、複数の部品から構成したバックライト20の一例であり、上記したような光源ユニット21、この光源ユニット21の出光面上に、順に、光拡散シート22、プリズムシート23、反射型偏光シート24を、配置した構成例を示す。これら各光学部材には、公知のものを採用することができる。上記反射型偏光シート24は、輝度向上シートとも呼ばれている。
【0076】
〔表示パネル30〕
表示パネル30としては、パネル背面からの照明光を表示光に利用して表示する透過型の形式で表示できるパネルであれば特に限定はない。表示パネル30としては、電界発光表示パネルのような自発光タイプではない表示パネル、代表的には、液晶表示パネルを用いることができる。液晶表示パネルとしては、透過型と反射型を兼用するものでもよい。また、液晶表示パネルとしては、偏光板を必要とするものでもよいし、拡散型で偏光板を不要にできるものでもよい。
【0077】
〔その他の構成要素〕
本発明においては、車載用表示装置100は、上記した、車載用視野角制御シート10、バックライト20及び表示パネル30以外に、これらのバックライト20、車載用視野角制御シート10及び表示パネル30を、一組の部品としての表示モジュールにするためのフレーム、バックライト20及び表示パネル30の駆動回路、各種入出力部品など、公知の各種部品、及びこれらを収納する筐体(キャビネット)等を備えることができる。
【0078】
〔効果〕
以上のような構成とすることで、車載用表示装置100は、車載用視野角制御シート10による効果が得られ、バックライト10から表示パネル30に到達する照明光を集光して、表示パネル30からの表示光のうち、フロントガラスなど乗り物の窓ガラスのある方向に向かう光を少なくして、乗り物の窓ガラスへの映り込みを改善することができる。また、車載用視野角制御シート10として、前記変形形態で述べたような2方向の視野角を制御できるものを用いれば、フロントガラスとサイドウインドガラスへの映り込みも改善することができる。
こうして、車載用表示装置100は、乗り物のフロントガラス及びサイドウインドガラスのうち少なくとも一方の窓ガラスが、前記表示パネルからの表示光が遮られることなく到達する場所に設置される装置として好適なものとなる。
さらに、車載用表示装置100は、その車載用視野角制御シート10が、バックライト20及び表示パネル30に対して、これらとの間に接着剤層や粘着剤層などの樹脂層を介して固着することなく、空気層を挟んで隣接配置する構造が採用されているため、樹脂層で固着する構造に比べて、組み立てが容易であり、故障修理時でも、光源ユニットのみの交換、或いは、表示パネルのみの交換などが容易に行え、より低コストな補修費用とすることができる。
【0079】
〔変形形態〕
上記した実施形態では、車載用視野角制御シート10は、そのシート面の両面が、粗面2aを呈するハードコート層2の面となっていた。このため、車載用視野角制御シート10、バックライト20、及び表示パネル30の各部材は、別体として組み付け可能な自由度が得られる利点を有する。
しかし、本発明においては、シート面のいずれか片面が、粗面2aを呈するハードコート層2の面であってもよい。すなわち、車載用視野角制御シート10の粗面2aを呈するハードコート層2をバックライト20側とする形態では、他方の表示パネル30側のシート面には、粗面2aを呈するハードコート層2が存在しない。このため、当該ハードコート層2を有さない方のシート面については、接触などによる傷付きを防ぐ意味で、表示パネル30の面を粗面2aを呈するハードコート層2の面として空気層を挟んで隣接配置するか、或いは、表示パネル30にアクリル系接着剤など公知の接着剤(含む粘着剤)などで密着固定するのが好ましい。逆に、粗面2aを呈するハードコート層2を表示パネル30側とする形態では、他方のバックライト20側のシート面には、粗面2aを呈するハードコート層2が存在しない。このため、当該ハードコート層2を有さない方のシート面については、接触などによる傷付きを防ぐ意味で、バックライト20の面を粗面2aを呈するハードコート層2の面として空気層を挟んで隣接配置するか、或いは、バックライト20にアクリル系接着剤など公知の接着剤(含む粘着剤)などで密着固定するのが好ましい。
【0080】
つまり、車載用視野角制御シート10は、粗面2aを呈するハードコート層2で形成されたシート面側では空気層を挟んで隣接配置され、粗面2aを呈するハードコート層2で形成されたシート面の他方のシート面が、粗面2aを呈するハードコート層2で形成されてないシート面であるときは、当該シート面は対向するバックライト20又は表示パネル30の面を粗面2aを呈するハードコート層2として空気層を挟んで隣接配置するか、当該シート面は対向するバックライト20又は表示パネル30に密着積層するのが好ましい。
このようにすれば、粗面2aを呈するハードコート層2がシート面の片面であっても、他方のシート面も、接触による傷付きが生じず、接触による光学性能の低下を生じ難くすることができる。
【0081】
〔適用する車〕
車載用表示装置100の用途は、フロントガラスなど乗り物の窓ガラスへの映り込みが生じ得る表示面を有し、この表示にバックライトを利用する車載用の表示装置であれば、特に制限はない。例えば、カーナビゲーション装置、カーオーディオ装置、計器盤、空調装置、、或いは、列車、バス、航空機など客席モニター表示装置などがある。
車載用表示装置100を適用可能な車は、フロントガラスやサイドウインドガラスなどの窓ガラスを有する乗り物であれば、特に制限はない。例えば、自動車、鉄道車両、船舶、航空機などである。
【符号の説明】
【0082】
1 視野角制御層
1a 光透過部
1b 光吸収部
1c ランド部
1p 視野角制御層の層面
2 ハードコート層
2a 粗面
3 透明基材層
4 接着層
10 車載用視野角制御シート
10p シート面
20 バックライト
21 光源ユニット
22 光拡散シート
23 プリズムシート
24 反射型偏光シート
30 表示パネル
100 車載用表示装置
A 光吸収部の高さ
B 光吸収部の入光面側となる下底の幅
C 光吸収部の出光面側となる上底の幅
La,Lb,Lc,Ld 光
P 光吸収部又は光透過部の配列周期
Pin 入光面
Pout 出光面
Sin シート入光面側
Sout シート出光面側
V 観察者
α 光吸収部の側面のシート法線に対する傾斜角
図1
図2
図3
図4
図5
図6