【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、おもて面に特定のエンボス凹凸模様を有する積層シートによれば上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、下記の積層シートに関する。
1. 繊維質シートの上に少なくとも樹脂層が積層されており、更におもて面にエンボス凹凸模様を有する積層シートであって、
当該エンボス凹凸模様は、凹凸深さ平均が0.2
〜0.524mmであり、且つ、凹凸深さの標準偏差が0.1〜0.2mmであることを特徴とする積層シート。
2. 前記おもて面の光の反射率が70%以上である、上記項1に記載の積層シート。
3. 前記樹脂層がオレフィン系樹脂層である、上記項1又は2に記載の積層シート。
4. 前記樹脂層は、発泡樹脂層である、上記項1〜3のいずれかに記載の積層シート。
5. 前記発泡樹脂層は、片面又は両面に非発泡樹脂層を有する、上記項4に記載の積層シート。
6. 前記発泡樹脂層は、電子線照射により樹脂架橋されている、上記項4又は5に記載の積層シート。
7. 前記樹脂層の上に絵柄模様層を有する、上記項1〜6のいずれかに記載の積層シート。
8. 最表面に電離放射線硬化型樹脂からなる表面保護層を有する、上記項1〜7のいずれかに記載の積層シート。
9. 間接照明及び/又はLED照明を有する居室中で用いられる、上記項1〜8のいずれかに記載の積層シート。
10. 前記おもて面に適用される照明方式が斜光照明である、上記項1〜8のいずれかに記載の積層シート。
11. 厚さが0.35mm以上である、上記項1〜10のいずれかに記載の積層シート。
【0011】
以下、本発明の積層シートについて詳細に説明する。
【0012】
≪積層シート≫
本発明の積層シートは、繊維質シートの上に少なくとも樹脂層が積層されており、更におもて面にエンボス凹凸模様を有する積層シートであって、
当該エンボス凹凸模様は、凹凸深さ平均が0.2mm以上であり、且つ、凹凸深さの標準偏差が0.1mm以上であることを特徴とする。
【0013】
上記特徴を有する本発明の積層シートは、おもて面に特定のエンボス凹凸模様を有することにより、間接照明及び/又はLED照明を有する居室中で用いられる場合であっても、下地の不陸の存在が目立ち難いという効果が得られる。また、この効果は、省エネルギー及び明るさ確保のために、白色の積層シート(光の反射率が70%以上)を用いる場合であっても得られる点で有用性が高い。なお、上記効果は、積層シートが樹脂層として発泡樹脂層を有している場合でも同じである。
【0014】
繊維質シート
繊維質シートとしては限定されず、公知の裏打紙等が利用できる。
【0015】
具体的には、壁紙用一般紙(パルプ主体のシートを既知のサイズ剤でサイズ処理したもの);難燃紙(パルプ主体のシートをスルファミン酸グアニジン、リン酸グアジニン等の難燃剤で処理したもの);水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機添加剤を含む無機質紙;上質紙;薄用紙;繊維混抄紙(パルプと合成繊維とを混合して抄紙したもの)などが挙げられる。
【0016】
基材の坪量は限定的ではないが、50〜300g/m
2程度が好ましく、50〜120 g/m
2程度がより好ましい。
【0017】
樹脂層
本発明の積層シートは、繊維質シートの上に少なくとも樹脂層が積層されている。この樹脂層は、Tダイ製膜法、カレンダー製膜法等の既知の製膜法により形成できる。
【0018】
樹脂層に含まれる樹脂成分としては、従来から壁装材に用いられている塩化ビニル樹脂、オレフィン系樹脂等が広く採用できるが、塩化ビニル樹脂は可塑剤が経時的にブリードするおそれがあることから、積層シートの耐久性を高める観点では塩化ビニル樹脂よりもオレフィン系樹脂が好ましい。また、エンボス賦型が容易である点からも、塩化ビニル樹脂よりもオレフィン系樹脂が好ましく、特にエチレン系樹脂を含有することが好ましい。
【0019】
エチレン系樹脂としては、ポリエチレン(PE)だけでなく、エチレンとエチレン以外の成分とをモノマーとするエチレン共重合体(以下、「エチレン共重合体」と略記する)が挙げられる。
【0020】
ポリエチレンは、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等が広く使用できる。
【0021】
エチレン共重合体は融点及びMFRの観点で押出し製膜に適している。エチレン共重合体としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メチルメタクリレート共重合体(EMMA)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−αオレフィン共重合体等が挙げられる。これらのエチレン共重合体は単独又は2種以上を混合して使用できる。これらのエチレン共重合体の中でも特にエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体が好ましく、これらのいずれか1種と他の樹脂の1種以上とを併用する場合には、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体の含有量は、それぞれ70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。
【0022】
また、エチレン共重合体は、エチレン以外のモノマーの含有量としては、5〜25質量%が好ましく、9〜20質量%がより好ましい。このような共重合比率を採用することにより、押出し製膜性がより高まる。具体例としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体は、酢酸ビニルの共重合比率(VA量)としては9〜25質量%が好ましく、9〜20質量%がより好ましい。また、エチレン−メチルメタクリレート共重合体は、メチルメタクリレートの共重合比率(MMA量)としては5〜25質量%が好ましく、5〜15質量%がより好ましい。また、エチレン−メタクリル酸共重合体は、アクリル酸の共重合比率(MAA量)としては2〜15質量%が好ましく、5〜11質量%がより好ましい。
【0023】
また、本発明では、樹脂層に含まれる樹脂成分は、製膜方法にもよるが、JIS K 6922に記載の190℃、荷重21.18Nの条件で測定したMFR(メルトフローレート)が10〜35g/10分であることが好ましい。MFRが上記範囲内の場合には、樹脂層を押出し製膜により形成する際の温度上昇が少なく、非発泡状態で製膜できるため、後に絵柄模様層を形成する場合には、平滑な面に印刷処理をすることができて柄抜け等が少ない。MFRが大きすぎる場合は、樹脂が軟らかすぎることにより、形成される樹脂層の耐傷性が不十分となるおそれがある。
【0024】
本発明では、上記樹脂層は発泡樹脂層であってもよい。発泡樹脂層は、例えば、熱分解型発泡剤を含有する発泡剤含有樹脂層を加熱発泡させることにより形成できる。発泡剤含有樹脂層は、熱分解型発泡剤を含有する樹脂組成物を製膜することにより形成できる。
【0025】
発泡時の加熱条件は、熱分解型発泡剤の分解により発泡剤含有樹脂層から発泡樹脂層が形成される条件ならば限定されない。加熱温度は210〜240℃程度が好ましく、加熱時間は20〜80秒程度が好ましい。
【0026】
発泡剤含有樹脂層を形成する樹脂組成物としては、例えば、上記樹脂成分、無機充填剤、顔料、熱分解型発泡剤、発泡助剤、架橋助剤等を含む樹脂組成物を好適に使用できる。その他にも、安定剤、滑剤等を添加剤として使用できる。
【0027】
熱分解型発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾビスホルムアミド等のアゾ系;オキシベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、パラトルエンスルホニルヒドラジド等のヒドラジド系などが挙げられる。熱分解型発泡剤の含有量は、発泡剤の種類、発泡倍率等に応じて適宜設定できる。発泡倍率の観点からは、7倍以上、好ましくは7〜10倍程度であり、熱分解型発泡剤は、樹脂成分100質量部に対して、1〜20質量部程度とすることが好ましい。
【0028】
発泡助剤は、金属酸化物及び/又は脂肪酸金属塩が好ましく、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、オクチル酸亜鉛、オクチル酸カルシウム、オクチル酸マグネシウム、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム等を使用することができる。これらの発泡助剤の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、0.3〜10質量部程度が好ましく、1〜5質量部程度がより好ましい。
【0029】
なお、これらの発泡助剤とEMAAとADCA発泡剤とを組み合わせて用いる場合には、発泡工程において、EMAAのアクリル酸部と金属系発泡助剤の反応により、発泡助剤としての効果が損なわれるという問題がある。そのため、EMAAとADCA発泡剤とを組み合わせて用いる場合には、特開2009-197219号公報に説明されている通り、発泡助剤としてカルボン酸ヒドラジド化合物を用いることが好ましい。このとき、カルボン酸ヒドラジド化合物はADCA発泡剤1質量部に対して0.2〜1質量部程度用いることが好ましい。
【0030】
無機充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、ホウ酸亜鉛、モリブデン化合物等が挙げられる。無機充填剤を含むことにより、目透き抑制効果、表面特性向上効果、燃焼時発熱抑制効果等が得られる。無機充填剤の含有量は、樹脂成分100質量部に対して0〜100質量部程度が好ましく、20〜70質量部程度がより好ましい。
【0031】
顔料については、無機顔料として、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、黒色酸化鉄、黄色酸化鉄、黄鉛、モリブデートオレンジ、カドミウムイエロー、ニッケルチタンイエロー、クロムチタンイエロー、酸化鉄(弁柄)、カドミウムレッド、群青、紺青、コバルトブルー、酸化クロム、コバルトグリーン、アルミニウム粉、ブロンズ粉、雲母チタン、硫化亜鉛等が挙げられる。また、有機顔料として、例えば、アニリンブラック、ペリレンブラック、アゾ系(アゾレーキ、不溶性アゾ、縮合アゾ)、多環式(イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、ペリノン、フラバントロン、アントラピリミジン、アントラキノン、キナクリドン、ペリレン、ジケトピロロピロール、ジブロムアンザントロン、ジオキサジン、チオインジゴ、フタロシアニン、インダントロン、ハロゲン化フタロシアニン)等が挙げられる。顔料の含有量は、樹脂成分100質量部に対して10〜50質量部程度が好ましく、15〜30質量部程度がより好ましい。
【0032】
本発明では、発泡剤含有樹脂層は電子線照射により樹脂架橋されていてもよい。発泡剤含有樹脂層を電子線照射により樹脂架橋することにより、発泡剤含有樹脂層に溶融張力を付与することができるため、加熱発泡の際に所望の発泡特性が得られ易い。このように、発泡剤含有樹脂層が電子線照射により樹脂架橋されている場合には、発泡により得られる発泡樹脂層も樹脂架橋されている。なお、発泡剤含有樹脂層に電子線を照射する方法及び発泡させる方法としては、後記の製造方法に記載された方法に従って実施すればよい。
【0033】
なお、樹脂層(発泡樹脂層の場合を除く)の厚さは40〜200μm程度が好ましく、樹脂層が発泡樹脂層の場合の厚さは300〜550μm程度が好ましい。
【0034】
非発泡樹脂層A及びB
発泡樹脂層は、その片面又は両面に非発泡樹脂層を有していてもよい。
【0035】
例えば、発泡樹脂層の裏面(繊維質シートが積層される面)には、繊維質シートとの接着力を向上させる目的で非発泡樹脂層B(接着樹脂層)を有してもよい。
【0036】
接着樹脂層の樹脂成分としては、特に限定はないが、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)が好ましい。EVAは公知又は市販のものを使用することができる。特に、酢酸ビニル成分(VA成分)が10〜46質量%であるものが好ましく、15〜41質量%であるものがより好ましい。
【0037】
接着樹脂層の厚さは限定的ではないが、5〜50μm程度が好ましい。
【0038】
発泡樹脂層の上面には、絵柄模様層を形成する際の絵柄模様を鮮明にしたり発泡樹脂層の耐傷性を向上させたりする目的で非発泡樹脂層Aを形成してもよい。
【0039】
非発泡樹脂層Aの樹脂成分としては、ポリオレフィン系樹脂、メタクリル系樹脂、熱可塑性ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられ、その中でもポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0040】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン(低密度ポリエチレン(LDPE)又は高密度ポリエチレン(HDPE))、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリイソプレン等の樹脂単体、エチレンと炭素数が4以上のαオレフィンの共重合体(線状低密度ポリエチレン(LLDPE))、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体等のエチレン(メタ)アクリル酸系共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、エチレン−ビニルアルコール共重合体、アイオノマー等の少なくとも1種が挙げられる。本発明では、特に前記樹脂層中の樹脂として塩化ビニル樹脂を用いる場合には、積層シートの耐久性を得るために、非発泡樹脂層A(特にエチレン−ビニルアルコール共重合体層)を形成することが好ましい。なお、「(メタ)アクリル」は、アクリル又はメタクリルを意味し、他の類似する部分についても同様である。
【0041】
非発泡樹脂層Aの厚さは限定的ではないが、2〜50μm程度が好ましい。
【0042】
本発明では、後記製造上の観点からも、発泡樹脂層を設ける場合には、非発泡樹脂層B、発泡樹脂層及び非泡樹脂層Aが順に形成された態様が好ましい。なお、非発泡樹脂層B及び/又は非発泡樹脂層Aは、発泡剤含有樹脂層とともに押出し製膜により形成しても良いし、各フィルムを熱ラミネートすることにより形成してもよい。
【0043】
絵柄模様層
本発明の積層シートは、樹脂層(発泡樹脂層、非発泡樹脂層A等)又は後述のプライマー層の上には、必要に応じて絵柄模様層を形成してもよい。
【0044】
絵柄模様層は、積層シートに意匠性を付与する。絵柄模様としては、例えば木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様等が挙げられ、目的に応じて選択できる。
【0045】
絵柄模様層は、例えば、絵柄模様を印刷することで形成できる。印刷手法としては、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷等が挙げられる。印刷インキとしては、着色剤、結着材樹脂、溶剤を含む印刷インキが使用できる。これらのインキは公知又は市販のものを使用してもよい。
【0046】
着色剤としては、例えば、前記の発泡剤含有樹脂層で使用されるような顔料を適宜使用することができる。
【0047】
結着材樹脂は、基材シートの種類に応じて設定できる。例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキド系樹脂、石油系樹脂、ケトン樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、繊維素誘導体、ゴム系樹脂等が挙げられる。
【0048】
溶剤(又は分散媒)としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル等のエステル系有機溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤、;ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤;水などが挙げられる。これらの溶剤(又は分散媒)は、単独又は混合物の状態で使用できる。
【0049】
絵柄模様層の厚みは、絵柄模様の種類より異なるが、一般には0.1〜10μm程度とすることが好ましい。
【0050】
プライマー層
樹脂層(発泡樹脂層、非発泡樹脂層A等)又は絵柄模様層の上には、必要に応じてプライマー層を形成してもよい。
【0051】
プライマー層に含有される樹脂としては、例えば、アクリル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ポリウレタン、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン等を使用することができるが、特にアクリル、塩素化ポリプロピレン等が望ましい。
【0052】
アクリルとしては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、(メタ)アクリル酸エチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体等の(メタ)アクリル酸エステルを含む単独又は共重合体からなるアクリル樹脂が挙げられる。
【0053】
ポリウレタンとはポリオール(多価アルコール)を主剤とし、イソシアネートを架橋剤(硬化剤)とする組成物である。
【0054】
ポリオールとしては、分子中に2個以上の水酸基を有するもので、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等が用いられる。
【0055】
また、イソシアネートとしては、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多価イソシアネートが用いられる。例えば、2−4トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、4−4ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、或いはヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族(又は脂環族)イソシアネートが用いられる。
【0056】
プライマー層の厚さは限定的ではないが、0.1〜10μm程度が好ましく、0.1〜5μm程度がより好ましい。
【0057】
表面保護層
樹脂層(発泡樹脂層、非発泡樹脂層A等)、絵柄模様層又はプライマー層の表面には艶調整及び/又は絵柄模様層の保護を意図して表面保護層を有してもよい。
【0058】
表面保護層の種類は限定的ではない。艶調整を目的とする表面保護層であれば、例えば、シリカなどの既知フィラーを含む表面保護層がある。表面保護層の形成方法としては、グラビア印刷などの公知の方法が採用できる。
【0059】
積層シートの表面強度(耐スクラッチ性など)、耐汚染性、絵柄模様層の保護等を目的として表面保護層を形成する場合には、電離放射線硬化型樹脂を樹脂成分として含有するものが好適である。電離放射線硬化型樹脂としては、電子線照射によってラジカル重合(硬化)するものが好ましい。
【0060】
積層シートの厚さ
積層シート(発泡樹脂層を有する場合を除く)の厚さは限定的ではないが、0.35mm以上であることが好ましく、0.60mm以下であることが好ましい。0.35mm以上を確保することにより、シートの厚さの点からも下地の不陸の影響を緩和することができる。
【0061】
また、積層シート(発泡樹脂層を有する場合)の厚さは限定的ではないが、0.40mm以上であることが好ましく、0.60mm以下であることが好ましい。かかる厚さであれば前記0.35mm以上を確保できていることにより、シートの厚さの点からも下地の不陸の影響を緩和することができる。
【0062】
積層シートのエンボス凹凸模様
積層シートのおもて面には、凹凸深さ平均が0.2mm以上であり、且つ、凹凸深さの標準偏差が0.1mm以上であるエンボス凹凸模様を有する。
【0063】
凹凸深さ平均は0.2mm以上であればよいが、特に0.3〜0.5mmが好ましい。また、凹凸深さの標準偏差は0.1mm以上であればよいが、特に0.1〜0.2mmが好ましい。このような凹凸深さ平均及び標準偏差の要件を具備することにより、積層シートが間接照明及び/又はLED照明を有する居室中で用いられる場合であっても、下地の不陸の存在が目立ち難いという効果が得られる。
【0064】
なお、本明細書における凹凸深さ平均及び標準偏差は、表面粗さ計(オリンパス株式会社製STM6-F21)を用いて、積層シート(縦10mm×横10mm)について、X方向50点、Y方向50点(計2500点)で凹凸深さを測定し、当該2500点の平均及び標準偏差を算出した値である。
【0065】
エンボス凹凸模様は、最表面層(繊維質シートと反対側)の上からエンボス加工を行うことにより賦型できる。例えば、エンボス版の押圧等、公知の手段により実施することができる。具体的には、最表面層が表面保護層である場合は、そのおもて面を加熱軟化後、エンボス版を押圧することにより所望のエンボス模様を賦型できる。エンボス模様としては、例えば木目板導管溝、石板表面凹凸、布表面テクスチャア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等がある。これらのエンボス凹凸模様の中でも、規則性の無いランダムな模様であるものが下地の不陸の影響の緩和には好ましい。
【0066】
本発明の積層シートは、上記特定のエンボス凹凸模様を有することにより、間接照明及び/又はLED照明を有する居室中で用いられる場合であっても、下地の不陸の存在が目立ち難いという効果が得られる。また、この効果は、省エネルギー及び明るさ確保のために、白色のシート(光の反射率が70%以上)を用いる場合であっても得られる。
【0067】
なお、本明細書における光の反射率の測定方法は、分光測色計(コニカミノルタセンシング株式会社製、CM-3600d)を反射モードに設定し、光源:D65、視野:2°を用いて、検出器を、反射光のうち拡散反射光と鏡面反射光の両方を総合した全反射光の(積分)強度を測定するようなSCI(Specular Component Included)モードに設定しY値(3刺激値XYZのY)を測定した値である。
【0068】
≪積層シートの製造方法≫
積層シート(発泡樹脂層を有する場合を除く)の製造方法としては、例えば、繊維質シートの上に少なくとも樹脂層を積層した後、おもて面に所定のエンボス凹凸模様を賦型する製造方法が挙げられる。
【0069】
また、発泡樹脂層を有する積層シートの製造方法としては、少なくとも、樹脂層として発泡剤含有樹脂層を積層した後、加熱発泡することにより発泡剤含有樹脂層を発泡樹脂層とした後、おもて面に所定のエンボス凹凸模様を賦型する製造方法が挙げられる。以下、発泡樹脂層を有する積層シートの製造方法について例示的に説明する。
【0070】
発泡剤含有樹脂層がその片面又は両面に非発泡樹脂層を有する場合には、Tダイ押出し機による同時押出し製膜が好適である。例えば、両面に非発泡樹脂層を有する場合には、3つの層に対応する溶融樹脂を同時に押出すことにより3層の同時成膜が可能なマルチマニホールドタイプのTダイを用いることができる。
【0071】
なお、発泡剤含有樹脂層を形成する樹脂組成物に無機充填剤が含まれる場合であって、発泡剤含有樹脂層を押出し製膜により形成する場合には、押出し機の押出し口(いわゆるダイス)に無機充填剤の残渣(いわゆる目やに)が発生し易く、これが発泡剤含有樹脂層表面の異物となり易い。そのため、発泡剤含有樹脂層を形成する樹脂組成物に無機充填剤が含まれる場合には、上記のように3層同時押出し製膜することが好ましい。即ち、発泡剤含有樹脂層を非発泡樹脂層によって挟み込んだ態様で同時押出し製膜することにより、前記目やにの発生を抑制することができる。
【0072】
発泡剤含有樹脂層を製膜後は、電子線照射を行ってもよい。これにより樹脂成分を架橋して発泡樹脂層の表面強度、発泡特性等を調整することができる。電子線のエネルギーは、150〜250kV程度が好ましく、175〜200kV程度がより好ましい。照射量は、10〜100kGy程度が好ましく、10〜50kGy程度がより好ましい。電子線源としては、公知の電子線照射装置が使用できる。
【0073】
発泡剤含有樹脂層上には、必要に応じて、絵柄模様層及びプライマー層を任意の順序で形成した後、必要に応じて、表面保護層を形成して積層シートとし、次に熱処理して発泡剤含有樹脂層を発泡樹脂層とした後、所定のエンボス凹凸模様を賦型することにより発泡樹脂層を有する積層シートが得られる。
【0074】
図1に、繊維質シート上に、非発泡樹脂層B、発泡樹脂層、非発泡樹脂層A、絵柄模様層、プライマー層、表面保護層及びエンボス凹凸模様を順に形成した積層シートの層構成を例示する。各層は、印刷、塗布などのコーティング、押出し製膜等を組み合わせることにより積層でき、印刷、塗布等のコーティングは常法に従って行うことができる。
【0075】
熱処理条件は、熱分解型発泡剤の分解により発泡樹脂層が形成される条件であればよく、加熱温度は210〜240℃程度が好ましく、加熱時間は20〜80秒程度が好ましい。また、エンボス凹凸模様は、エンボス版の押圧等、公知の手段により所定の凹凸模様となるように賦型することにより形成する。