(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記親局装置は、通常時には、上記予備系光通信手段の動作を停止させ、上記1又は複数の運用系光通信手段のいずれかに異常時には、異常が生じた運用系光通信手段の動作を停止させると共に、上記予備系光通信手段を動作させる切替制御手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の冗長システム。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(A)主たる実施形態
以下では、本発明の冗長システム、光通信装置及び親局装置の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
(A−1)実施形態の構成
図1は、この実施形態の光通信システムの構成を示す構成図である。
【0017】
図1において、光通信システム1は、親局装置としてのOLT100、子局装置としての複数台のONU200、光カプラ300を有して構成される。また、
図1において、PON#1〜PON#Nは、光ファイバと光カプラ300からなる光線路網である。
【0018】
OLT100は、例えば通信事業者の局舎に設置される局側終端装置である。OLT100は、例えばインターネット等に代表される広域通信網と、ONU200との間の光信号の送受信制御を担う。
【0019】
OLT100は、加入者線インタフェースとしてOLT IF(0)110−1〜OLT IF(0)110−N及びOLT IF(1)120と、切替制御部130とを備えるものである。
【0020】
ここで、OLT100は、通常時の運用系インタフェースとして、N(Nは整数)個のOLT IF(0)110−1〜OLT IF(0)110−Nを有する。また、OLT100は、障害が発生した場合に予備系として機能する予備系インタフェースとして、1個のOLT IF(1)120を有する。
【0021】
OLT IF(0)110−1〜110−N及びOLT IF(1)120は、例えばインタフェースカード等であり、それぞれOLT100に対して着脱可能に設けられている。
【0022】
なお、加入者線インタフェースとして光通信を行うOLT IF(0)110−1〜110−N及びOLT IF(1)120を、「光通信装置」ともいう。
【0023】
OLT IF(0)110−1〜110−Nは、それぞれPON#1〜PON#Nを構成する光ファイバと接続しており、光カプラ300を介して、複数のONU200と接続している。
【0024】
ここで、光カプラ300は、2:M分岐スプリッタを適用することができる。すなわち、OLT IF(0)110−1〜110−Nはそれぞれ、最大でM台のONU200と接続可能である。そのため、1台のOLT100に対してN×M台のONU200が収容可能である。
【0025】
OLT IF(0)110−1〜110−Nは、
図1に示すように、光波長合分波部(WDM)111、光送信部(Tx)112、光受信部(Rx)113を有して構成される。
【0026】
光送信部(Tx)112は、電気信号を光信号に変換する電気光変換部(図示せず)を有し、送信信号を電気光変換部によって光信号に変換し、この光信号を配下のONU200に向けて送信する処理を行う。
【0027】
光受信部(Rx)113は、光信号を電気信号に変換する光電気変換部(図示せず)を有し、WDM112を介して受信したONU200からの光信号を光電気変換部によって電気信号に変換するものである。光受信部213の光電気変換部は、例えば、フォトダイオード、アバランシェフォトダイオード等を適用することができる。
【0028】
光変調伝送部(WDM)111は、光送信部112からの送信された光信号(例えば波長λ
OLT)を波長分割多重方式で多重して送信するものである。また、光変調伝送部(WDM)111は、光ファイバを介して入力された光信号を波長分離して光受信部113に与えるものである。
【0029】
なお、この実施形態において、複数のOLT IF(0)110−1〜110−Nが送信する光信号の波長をλ
OLTとして説明する。例えば、OLT100からONU200に向けた下り方向の光信号の波長λ
OLTは、1.48〜1.50μmとすることができる。
【0030】
また、例えば、運用系のOLT IF(0)110−1〜110−Nは、自身の故障を検出する故障検出部(図示しない)を備えるようにしてもよい。また例えば、OLT100が、各OLT IF(0)110−1〜110−Nの動作を監視して、OLT IF(0)110−1〜110−Nの故障を検出する故障検出部(図示しない)を備えるようにしてもよい。
【0031】
上記故障検出部は、例えば、各OLT IF(0)110−1〜110−Nの光送信部112や光受信部113や光波長合分波部111等の異常を検出すると、検出結果を切替制御部130へ通知する。
【0032】
切替制御部130は、運用系のOLT IF(0)110−1〜110−Nに異常が発生したときに、その異常が生じたOLT IF(0)からの光出力を停止し、異常が生じたOLT IF(0)を、予備系のOLT IF(1)120に切り替えるものである。
【0033】
例えば、切替制御部130は、異常が生じたOLT IF(0)を特定する情報(例えば、OLT IF(0)識別情報等)を予備系のOLT IF(1)120に通知し、どのOLT IF(0)が故障したかを知らせる。これにより、予備系のOLT IF(1)120は、異常が生じたOLT IF(0)を認識することができる。
【0034】
予備系のOLT IF(1)120は、切替制御部130からOLT IF(0)に異常が生じた旨の通知を受けると、その異常が生じたOLT IF(0)に代わって、そのOLT IF(0)が通信しているONU200との間で光通信を行うものである。
【0035】
予備系のOLT IF(1)120は、N個の光加入者線ポートを有し、各光加入者線ポートは、PON#1〜PON#Nの光カプラ(2:M分岐スプリッタ)300の第2ポート側の単芯光ファイバに接続される。
【0036】
図3は、OLT IF(1)120の内部構成を示す内部構成図である。
図3に示すように、予備系のOLT IF(1)120は、PON終端電気回路部121、可変波長E/O変換部122、光合分波器123、O/E変換器124を有して構成される。
【0037】
PON終端電気回路部121は、送信電気信号を可変波長E/O変換器122に与えたり、又はO/E変換器124により変換された受信電気信号を取得したりするものである。
【0038】
PON終端電気回路部121は、切替制御部130からの通知を受けて、異常が発生したOLT IF(0)の電気回路部として機能するものである。これにより、異常が発生したOLT IF(0)に代わって、ONU200との間の通信を継続することができる。
【0039】
可変波長E/O変換器122は、PON終端電気回路部121から送信電気信号を受け取り、送信電気信号を所定波長に変調して得た光信号を光合分波器123に与えるものである。
【0040】
ここで、可変波長E/O変換器122が変換する光信号の波長は、複数の波長λ
D1、λ
D2、…、λ
DNのいずれか1波長とすることができる。
【0041】
この複数の波長λ
D1、λ
D2、…、λ
DNは、例えば、PON#1〜PON#N毎(すなわち、運用系のOLT IF(0)110−1〜110−N毎に割り当てられており、OLT IF(0)110−1〜110−Nに異常が生じたときに、そのOLT IF(0)に対応する波長を用いるようにしてもよい。
【0042】
また例えば、可変波長E/O変換部122は、複数の波長λ
D1、λ
D2、…、λ
DNからランダムに選択した波長を用いるようにしてもよい。
【0043】
いずれにしても、この実施形態では、説明を容易にするために、PON#1には波長λ
D1、PON#2には波長λ
D2、…PON#Nには波長λ
DNを使用するものとして説明する。
【0044】
光合分波器123は、可変波長E/O変換器122から光信号を受け取り、光信号を分波し、送信波長の光信号を光加入者線ポートに出力するものである。
【0045】
例えば、OLT IF(0)110−1が故障した場合、光合分波器123は波長λ
D1をPON#1の光加入者線ポートに出力し、OLT IF(0)110−2が故障した場合、光合分波器123は波長λ
D2をPON#2の光加入者線ポートに出力するなどとする。
【0046】
ここで、光合分波器123は、可変波長E/O変換器122からの光信号を、例えば、フィルタやプリズム等により波長を分波し、それぞれの波長を対応する光加入者線ポートに向けて出力することで実現できる。
【0047】
また、光合分波器123は、各光加入者線ポートから入力された光信号を、
O/E変換器124に与えるものである。
【0048】
ここで、後述するONU200は、予備系のOLT IF(1)120から波長λ
D1、λ
D2、…、λ
DNのいずれかの光信号を入力すると、特定波長(この実施形態では、λ
U1、λ
U2、…、λ
UN)の光信号を出力する。これらの波長の光信号は、各光加入者線ポートを介して、光合分波器123に入力される。
【0049】
光合分波器123において、いずれの光加入者線ポートから波長λ
ONUの光信号が入力されても、他の光加入者線ポートに光信号が出力されない。
【0050】
例えば、光合分波器123は、ONU200が使用する波長λ
ONUをカットするフィルタ等を備えることで、通常時に使用する波長λ
ONUの光信号をカットすることができる。
【0051】
O/E変換部124は、光合分波器123から入力された光信号を電気信号に変換し、受信電気信号をPON終端電気回路部121に与えるものである。
【0052】
ONU200は、例えば加入者宅に設置される加入者側終端装置である。ONU200は、光アクセス網としてのPON#1〜PON#Nを介してOLT100との間の光通信を行うものである。
【0053】
PON#1〜PON#Nに接続するONU200はそれぞれ、同一又は対応する構成を備え、
図1に示すように、光波長合分波部(WDM)201、光送信部(Tx)202、光受信部(Rx)203を有する。
【0054】
光送信部(Tx)202は、電気信号を光信号に変換する電気光変換部(図示せず)を有し、送信信号を電気光変換部によって光信号に変換し、この光信号をOLT100に向けて送信する。
【0055】
光受信部(Rx)203は、光信号を電気信号に変換する光電気変換部(図示せず)を有し、WDM201を介して受信した光信号を光電気変換部によって電気信号に変換するものである。光受信部203の光電気変換部は、例えば、フォトダイオード(PD)、アバランシェフォトダイオード(APD)等を適用することができる。
【0056】
光波長合分波部(WDM)201は、光ファイバを介して入力された光信号を波長分離して光受信部203に与えるものである。
【0057】
光波長合分波部(WDM)201は、通常時は、光送信部202からの送信された光信号(例えば波長λ
onu)を波長分割多重方式で多重して送信するものである。
【0058】
また、光波長合分波部(WDM)201は、自身が接続するPON#1〜PON#の運用系のOLT IF110−1〜110−Nに障害が発生した場合、すなわち、予備系のOLT IF120から波長λ
D1〜λ
DNのいずれの波長の光信号を受信すると、特定波長の光信号を出力する。
【0059】
ここで、障害発生時に光変調伝送部(WDM)201が出力する波長は、予め決められているものであってもよいし、OLT IF(1)120側から指定された波長であってもよい。
【0060】
いずれにしても、この実施形態では、説明を容易にするために、PON#1のONU200は波長λ
U1の光信号を出力し、PON#2のONU200は波長λ
U2の光信号を出力し、PON#NのONU200は波長λ
UNの光信号するものとする。
【0061】
(A−2)実施形態の動作
次に、この実施形態の光通信システム1の冗長システムの処理の動作を説明する。
【0062】
まず、通常時には、切替制御部130は、予備系のOLT IF(1)120の光出力を停止させる。そして、運用系の複数のOLT IF(0)110−1〜110−Nがそれぞれ、PON#1〜PON#NによりONU200との間で光通信を行う。
【0063】
例えば、PON#1に注目して説明すると、OLT100からONU200への下り方向は、OLT IF(0)110−1が波長λ
OLTで光信号を光ファイバに出力する。光信号が光カプラ300に与えられると、光カプラ300はM個のポートに光信号を出力する。これにより、光信号は、PON#1の全てのONU200に与えられる。
【0064】
また、ONU200からOLT100への上り方向は、各ONU200がそれぞれ割り当てられた波長λ
ONUで光信号を光ファイバに出力する。光カプラ300は、各ONU200からの光信号を2個のポートに光信号を出力する。
【0065】
つまり、光カプラ300の光信号は、運用系のOLT IF(0)110−1と接続するポートと、予備系のOLT IF(1)120と接続するポートとから出力される。
【0066】
しかし、このとき、予備系のOLT IF(1)120において、光合分波器123は、波長λ
ONUの光信号が入力されても、この波長λ
ONUの光信号を出力しないようにする。
【0067】
なお、他のPON#2〜PON#Nについても、PON#1の通信処理と同様の処理がなされる。
【0068】
次に、運用系のOLT IF(0)110−1〜110−Nのいずれに異常が生じると、切替制御部130は、異常が生じたOLT IF(0)の光出力を停止する。
【0069】
また、切替制御部130は、OLT IF(0)に異常が生じた旨を、予備系のOLT IF(1)120に通知する。
【0070】
例えば、OLT IF(0)110−1に異常が生じ、運用系のOLT IF(0)110−1から予備系のOLT IF(1)120に切り替える場合を説明する。
【0071】
この場合、切替制御部130は、OLT IF(0)110−1の光出力を停止し、予備系のOLT IF(1)120に対して、OLT IF(0)110−1が異常である旨を通知する。
【0072】
予備系のOLT IF(1)120において、PON終端電気回路部121は、異常が生じたOLT IF(0)110−1の送信電気信号を取得し、その送信電気信号を可変波長E/O変換器122に与える。
【0073】
可変波長E/O変換器122は、送信電気信号を波長
D1の光信号に変換して光合分波器123に与える。
【0074】
光合分波器123は、可変波長E/O変換器122からの光信号を分波する。そして、光合分波器123は、波長λ
D1の光信号をPON#1の光カプラ(2:M分岐スプリッタ)300に接続する光加入者線ポートに出力する。
【0075】
つまり、光合分波器123は、分波して得た波長λ
D1の光信号を、その波長λ
D1に対応する光加入者線ポートのみから出力し、他の光加入者線ポートから出力されない。
【0076】
これにより、OLT IF(1)120から出力される波長λ
D1の光信号は、PON#1の光カプラ(2:M分岐スプリッタ)300のみに与えられ、他のPON#2〜#Nには出力されない。
【0077】
予備系のOLT IF(1)120からの光信号は、PON#1の光カプラ300に与えられる。そして、光カプラ300は、M個のポートから光信号を出力する。これにより、波長λ
D1の光信号は、PON#1のONU200に与えられる。
【0078】
また、PON#1のONU200は、波長λ
D1の光信号が入力されると、ONU200が出力する波長を通常時の波長とは異なる波長λ
U1に切り替える。これにより、PON#1のONU200は、OLT100に送信する送信電気信号を波長λ
U1の光信号に変換して出力する。
【0079】
PON#1の光カプラ300は、各ONU200からの光信号を2個のポートに光信号を出力する。
【0080】
つまり、光カプラ300の光信号は、運用系のOLT IF(0)110−1と接続するポートと、予備系のOLT IF(1)120と接続するポートとから出力される。しかし、運用系のOLT IF(0)110−1はインタフェースカードの取り替え等が行われるため、光信号は予備系のOLT IF(1)120に与えられる。
【0081】
また、予備系のOLT IF(1)120が動作することで、他のPON#2〜PON#Nから波長λ
ONUの光信号も、予備系のOLT IF(1)120に入力される。
【0082】
しかし、予備系のOLT IF(1)120において、光合分波器123は、他のPON#2〜PON#Nの光加入者線ポートから入力される波長λ
ONUの光信号についてはO/E変換器124に出力しない。
【0083】
これにより、O/E変換器124には、波長λ
U1の光信号のみが入力される。O/E変換器124は、入力された光信号を電気信号に変換して、PON終端電気回路部121に与える。PON終端電気回路部121は、O/E変換器124から受信電気信号を受信して終端処理を行う。
【0084】
上記では、OLT IF(0)110−1を切り替える場合を説明したが、OLT IF(0)110−1以外のOLT IF110−2〜110−Nを切り替える場合も、予備系のOLT IF(1)120及びONU200が使用する波長が異なるだけで、上記と同様の動作である。
【0085】
例えば、OLT IF(0)110−n(1≦n≦N)が切り替わる場合、切替制御部130がOLT IF(0)110−nの光出力を停止する。
【0086】
そして、OLT IF(1)120は、波長λ
Dnで光信号を送信し、この光信号は、PON#nの光カプラ(2:M分岐スプリッタ)300に『のみ』入力され、PON#nのONU200に到達し、受信される。
【0087】
PON#nのONU200は、通常時とは異なる波長λ
Unで光信号を送信し、OLT IF(1)120が波長λ
Unの光信号を受信する。PON#n以外のPONに帰属するONU200の波長λ
ONUの光信号もOLT IF(1)120に到達する。しかし、光合分波器123は、波長
ONUの光信号をカットし、波長
ONUの光信号をO/E変換器124に出力しない。これにより、OLT IF(1)120は波長λ
ONUの光信号を受信しない。
【0088】
(A−3)実施形態の効果
以上のように、この実施形態によれば、N:1 PONにおける冗長システムでは、冗長を組むために、予備系として動作するOLT IF盤の追加のみで冗長系が構成できる。よって、従来のように、「N:N+1光マトリックススイッチ」を追加する必要がなくなり、冗長なしの場合と比べたシステムコストの上昇度合いを小さくできるという効果が得られる。
【0089】
(B)他の実施形態
上述した実施形態においても、種々の変形実施形態を説明したが、以下の他の実施形態についても本発明は適用することができる。
【0090】
上述した実施形態では、通常時に予備系のOLT IF(1)のIF盤からの光出力を停止し、切替時に運用系のOLT IF(0)のIF盤からの光出力を停止する例を説明した。しかし、光出力を停止するだけでなく、OLT IF(0)又はOLT IF(1)のIF盤の送受信動作の全部を停止するようにしても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。