(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6221235
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】非接触給電装置および非接触給電装置を用いた物品搬送装置
(51)【国際特許分類】
H02J 50/10 20160101AFI20171023BHJP
B60M 7/00 20060101ALI20171023BHJP
B60L 9/00 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
H02J50/10
B60M7/00 X
B60L9/00
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-6228(P2013-6228)
(22)【出願日】2013年1月17日
(65)【公開番号】特開2014-138496(P2014-138496A)
(43)【公開日】2014年7月28日
【審査請求日】2015年12月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂本 恭二
(72)【発明者】
【氏名】中野 克好
【審査官】
坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−172172(JP,A)
【文献】
特開2012−003996(JP,A)
【文献】
特開2010−063304(JP,A)
【文献】
特開2001−211501(JP,A)
【文献】
特開2002−354711(JP,A)
【文献】
実開平06−066201(JP,U)
【文献】
特開2007−274828(JP,A)
【文献】
特開2007−236127(JP,A)
【文献】
特開2005−287193(JP,A)
【文献】
特開昭50−109417(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/10
B60L 9/00
B60M 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波電力が供給される1次給電線と2次巻線との電磁誘導作用によって2次巻線に交流電力を発生させる給電トランスと、
前記2次巻線に発生する交流電力を整流する整流部と、
前記整流部で整流した直流電力を所定の定電圧に制御する定電圧制御部とを備え、
前記1次給電線に供給される電力を非接触で負荷に給電する非接触給電装置において、
前記定電圧制御部に、その主回路を駆動する駆動部と、前記駆動部を制御する制御部と、前記駆動部および制御部に定電圧を供給する第1および第2の制御電源とを設け、
前記第1の制御電源には、前記整流部の出力電圧を入力し、前記第2の制御電源には、前記主回路の出力電圧を入力するようにし、
さらに、前記第1の制御電源の入側に開閉器を設け、前記非接触給電装置の起動時は前記開閉器を閉とし、起動後の定常時には前記開閉器を開とするようにしたことを特徴とする非接触給電装置。
【請求項2】
前記負荷が所定の軌道に沿って移動する移動体に設けられ、前記軌道に沿わせて配線された前記1次給電線に継ぎ目が設けられた請求項1に記載の非接触給電装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の非接触給電装置を備えた物品搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力を消費する移動体等の負荷に、非接触で電力を給電する非接触給電装置と、非接触給電装置で給電される物品搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工場や倉庫等に敷設された所定の軌道に沿って移動体を移動させる物品搬送装置等には、非接触で電力を給電する非接触給電装置が広く用いられている。非接触給電装置は、軌道に沿わせて1次給電線を配線するとともに、移動体側に2次巻線を巻いた給電トランスを1次給電線に近接させて配置し、1次給電線に高周波電力を供給することにより、給電トランスでの電磁誘導作用によって、ピックアップコイルとなる2次巻線に誘導起電力を発生させるものである。
【0003】
この種の非接触給電装置には、
図5に示すように、高周波電源1から1次給電線2に高周波電力を供給し、給電トランス4の2次巻線3に発生する交流電力を整流部6で整流したのち、定電圧制御部7で所定の電圧として、移動体等の負荷22に給電するものが多い。2次巻線3にコンデンサ5aを直列または並列に接続して形成した共振回路5を設け、2次巻線3に流れる電流の周波数を1次給電線2に流れる電流の周波数と等しい共振周波数として無効電流を少なくし、電力伝送効率を高めるようにしたものもある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図6に示すように、前記定電圧制御部7は、入力される整流部6の出力電圧を一定電圧に制御して出力する主回路8と、主回路8のスイッチング素子等を駆動する駆動部9と、駆動部9を制御する制御部10と、駆動部9および制御部10に定電圧を供給するスイッチング方式やシリーズレギュレータ方式の制御電源11とからなるのが一般的である。制御部10は、主回路8の出側電圧に基づいて駆動部9を制御し、制御電源11には整流部6の出力電圧が供給されるようになっている。
【0005】
図5に示したような非接触給電装置では、高周波電源1から一定の振幅で一定の周波数の高周波電流が1次給電線2に供給されるが、
図7に示すように、整流部6の出力電圧は、負荷22への供給電力によって変化し、負荷22への供給電力が大きくなるほど低くなる。
【0006】
また、
図8に示すように、長い距離を移動する移動体に電力を給電する非接触給電装置では、軌道に沿わせた1次給電線2に継ぎ目2aが設けられることが多い。
図8(a)に示すように、移動体側に設けられた給電トランス4が継ぎ目2aのない部位を移動する通常時は、
図7に実線で示したように整流部6の出力電圧Vaが変化する。
図8(b)に示すように、給電トランス4が継ぎ目2aの存在する部位を移動する給電線の継ぎ目時は、
図7に点線で示すように、出力電圧Vbが通常時よりも低くなる。給電線の継ぎ目時の出力電圧Vbは、給電トランス4のコア4aの長さをA、コア4aが1次給電線2に実際に沿う長さをBとすると、ほぼB/Aの割合だけ通常時の出力電圧Vaよりも低くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−354711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図6に示したような定電圧制御部は動作可能な入力電圧の範囲がある。
図7に示したように整流部の出力電圧は負荷への供給電力によって変化するが、定電圧制御部の入力電圧はこの動作可能な範囲内である必要がある。整流部の出力電圧は、定電圧制御部の主回路と制御電源とに入力されるが、主回路は入力電圧の許容範囲が比較的広い。これに対して、制御電源はスイッチング方式、シリーズレギュレータ方式いずれのものも、入力電圧の許容範囲の仕様が比較的狭く規定されている。制御電源の入力電圧が高過ぎると、その内部回路の耐電圧を超えて、制御電源が破損に至る恐れがあり、入力電圧が低過ぎると、出力すべき定電圧を生成できず、制御電源が正常に機能しない恐れがある。
【0009】
通常、
図7に付記するように、制御電源の入力電圧の許容範囲は、過剰電圧による破損を防止するために、上限値が整流部の出力電圧の最大値よりも高い仕様のものが選定される。しかしながら、このように仕様を選定すると、給電線の継ぎ目時等のように整流部の出力電圧が低くなると、制御電源の入力電圧の許容範囲が狭いので、その下限値よりも整流部の出力電圧が低くなって、制御電源が正常に機能しなくなり、定電圧制御部の駆動部や制御部に定電圧を供給できなくなる問題がある。
【0010】
そこで、本発明の課題は、整流部の出力電圧が低くなっても、定電圧制御部の駆動部や制御部に定電圧を供給できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明は、高周波電力が供給される1次給電線と2次巻線との電磁誘導作用によって2次巻線に交流電力を発生させる給電トランスと、前記2次巻線に発生する交流電力を整流する整流部と、前記整流部で整流した直流電力を所定の定電圧に制御する定電圧制御部とを備え、前記1次給電線に供給される電力を非接触で負荷に給電する非接触給電装置において、前記定電圧制御部に、その主回路を駆動する駆動部と、前記駆動部を制御する制御部と、前記駆動部および制御部に定電圧を供給する第1および第2の制御電源とを設け、前記第1の制御電源には、前記整流部の出力電圧を入力し、前記第2の制御電源には、前記主回路の出力電圧を入力する構成を採用した。
【0012】
すなわち、定電圧制御部に、その主回路を駆動する駆動部と、駆動部を制御する制御部と、駆動部および制御部に定電圧を供給する第1および第2の制御電源とを設け、第1の制御電源には、整流部の出力電圧を入力し、第2の制御電源には、主回路の出力電圧を入力することにより、整流部の出力電圧が低くなって第1の制御電源が正常に機能しなくなっても、定電圧制御部の主回路から安定した一定の電圧が入力される第2の制御電源を機能させて、整流部の出力電圧が低くなっても、定電圧制御部の駆動部や制御部に定電圧を供給できるようにした。
【0013】
前記第1の制御電源の入側に開閉器を設け、前記非接触給電装置の起動時は前記開閉器を閉とし、起動後の定常時には前記開閉器を開とすることにより、定電圧制御部の主回路の出力電圧がない起動時は、第1の制御電源から定電圧を供給し、整流部の出力電圧が低くなる恐れのある定常時は、第1の制御電源からの定電圧の供給を停止させて、安定した一定の電圧が入力される第2の制御電源から定電圧を供給することができる。
【0014】
上述した各非接触給電装置は、前記負荷が所定の軌道に沿って移動する移動体に設けられ、前記軌道に沿わせて配線された前記1次給電線に継ぎ目が設けられたものに好適である。
【0015】
さらに、本発明は、上述した非接触給電装置を備えた物品搬送装置も採用した。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る非接触給電装置は、定電圧制御部に、その主回路を駆動する駆動部と、駆動部を制御する制御部と、駆動部および制御部に定電圧を供給する第1および第2の制御電源とを設け、第1の制御電源には、整流部の出力電圧を入力し、第2の制御電源には、主回路の出力電圧を入力するようにしたので、整流部の出力電圧が低くなって第1の制御電源が正常に機能しなくなっても、定電圧制御部の主回路から安定した一定の電圧が入力される第2の制御電源を機能させて、整流部の出力電圧が低くなっても、定電圧制御部の駆動部や制御部に定電圧を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】
図1の非接触給電装置を備えた物品搬送装置を示す一部省略正面図
【
図7】負荷への供給電力と整流部の出力電圧の関係を示すグラフ
【
図8】(a)(b)は、それぞれ1次給電線の継ぎ目と給電トランスの位置関係における通常時と継ぎ目時を説明する概念図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。この非接触給電装置は、
図1に示すように、高周波電源1から高周波電力が供給される1次給電線2と2次巻線3との電磁誘導作用によって2次巻線3に交流電力を発生させる給電トランス4と、2次巻線3にコンデンサ5aを直列に接続して形成された直列共振回路5と、2次巻線3に発生する交流電力を整流する整流部6と、整流部6で整流された直流電力を所定の定電圧に制御する定電圧制御部7とを備え、後述する部品搬送装置の移動体21に搭載された負荷22に非接触で給電するようになっている。
【0019】
前記定電圧制御部7は、入力される整流部6の出力電圧を一定電圧に制御して出力する主回路8と、主回路8を駆動する駆動部9と、駆動部9を制御する制御部10と、駆動部9および制御部10に定電圧を供給する第1および第2の制御電源11a、11bとからなる。第1の制御電源11aには、開閉器12を介して整流部6の出力電圧が入力され、第2の制御電源11bには、主回路8の出力電圧が入力されるようになっている。
【0020】
前記開閉器12は、主回路8の出力電圧がない起動時に閉(ON)とされ、主回路8から出力電圧が出力される定常時には開(OFF)とされる。したがって、起動時は第1の制御電源11aから駆動部9と制御部10に定電圧が供給され、定常時は第2の制御電源11bから駆動部9と制御部10に定電圧が供給される。このため、定常時に整流部6の出力電圧が低下しても、主回路8の安定した出力電圧が入力される第2の制御電源11bから駆動部9と制御部10に定電圧を安定して供給することができる。
【0021】
前記定電圧制御部7の主回路8の構成は、昇圧チョッパ方式、降圧チョッパ方式または昇降圧可能なコンバータ方式とすることができる。昇圧チョッパ方式は、入力よりも高い電圧のみを出力する電力変換方式であり、降圧チョッパ方式は、逆に入力よりも低い電圧のみを出力する電力変換方式である。コンバータ方式には、フライバックコンバータ、フォワードコンバータ、ハーフブリッジコンバータ等に代表されるトランスを利用した電力変換方式と、SEPICコンバータ、Cukコンバータ等のトランスを利用しない電力変換方式とがある。
【0022】
前記第1の制御電源11aと第2の制御電源11bは、スイッチング方式またはシリーズレギュレータ方式のものとすることができる。また、開閉器12は、リレー等の機械式のものであっても、トランジスタ等の半導体のものであってもよい。
【0023】
図2および
図3は、上述した非接触給電装置を備えた部品搬送装置を示す。この部品搬送装置は、部品を搬送する移動体21に搭載された負荷22に非接触給電装置で給電して、移動体21を所定の軌道に沿って移動させるものであり、軌道に沿わせたステー23に1次給電線2が配線されている。移動体21側には、1次給電線2に近接させて給電トランス4が配置され、給電トランス4のコア4aにピックアップコイルとなる2次巻線3が巻回されている。
【0024】
前記軌道は工場内の広い範囲に長い距離で敷設されたものであり、
図2および
図4に示すように、1次給電線2には継ぎ目2aが設けられている。移動体21がこの継ぎ目2aの部分を移動するときには、
図7に継ぎ目時として示したように、整流部6の出力電圧が低下するが、前述したように、移動体21が移動中の定常時には、主回路8の出力電圧が入力される第2の制御電源11bを機能させて、駆動部9と制御部10に定電圧を供給することができるので、定電圧制御部7の制御を良好に行うことができる。また、この定常時には、開閉器12が開とされるので、低下した整流部6の出力電圧が第1の制御電源11aに入力されることはなく、第1の制御電源11aに機能障害が生じる恐れもない。
【0025】
上述した実施形態では、2次巻線に形成した共振回路を、2次巻線にコンデンサを直列に接続した直列共振回路としたが、この共振回路は、コンデンサを並列に接続した並列共振回路や、コンデンサを直列と並列の両方に接続した直並列共振回路とすることもできる。また、共振回路は省略することもできる。
【0026】
上述した実施形態では、第1の制御電源の入側に開閉器を設けたが、この開閉器は省略することもできる。
【0027】
上述した実施形態では、非接触給電装置を部品搬送装置の移動体の負荷に給電するものとしたが、本発明に係る非接触給電装置は、実施形態のものに限定されることはなく、各種の装置等の負荷に給電するものとすることもできる。
【符号の説明】
【0028】
1 高周波電源
2 1次給電線
2a 継ぎ目
3 2次巻線
4 給電トランス
4a コア
5 共振回路
5a コンデンサ
6 整流部
7 定電圧制御部
8 主回路
9 駆動部
10 制御部
11a、11b 制御電源
12 開閉器
21 移動体
22 負荷
23 ステー