(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の最良の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本装置における光学系及び制御系の概略構成図である。測定光学系10は投影光学系10aと受光光学系10bから構成される。本実施形態では、投光手段として投影光学系10aは被検眼の瞳孔中心部から眼底に測定指標を投光し、受光手段として受光光学系10bは眼底に投光した測定指標の反射光を瞳孔周辺部から複数のリング光束として取り出す。なお、本実施形態では測定指標をスポット状の光束として投影している。
【0010】
投光手段となる投影光学系10aは、本実施形態では、近赤外点光源11、リレーレンズ12、ホールミラー13、プリズム15、第1駆動部23、測定用対物レンズ14からなり、この順に被検眼に向けて配置されている。近赤外点光源11は測定光軸L1上に配置されたLEDやSLD等である。プリズム15は光束偏向部材である。第1駆動部23はプリズム15を光軸L1を中心に回転駆動させる回転手段である。光源11は被検眼眼底と共役な関係となっており、ホールミラー13のホール部は瞳孔と共役な関係となっている。プリズム15は被検眼Eの瞳孔と共役な位置から外れた位置に配置されており、通過する光束を光軸L1に対して偏心させる。測定用対物レンズ14と被検眼の間には、光路分岐部材であるビームスプリッタ29が配置されている。ビームスプリッタ29は、前眼部観察光及びアライメント光を観察光学系50に反射させ、固視標光学系30の光束を被検眼に導く。
【0011】
光源31〜観察系対物レンズ36により固視標光学系30が構成される。ビームスプリッタ29により光軸L1と同軸にされる光軸L2上には、観察系対物レンズ36、ハーフミラー35、ダイクロイックミラー34、投光レンズ33、固視標32、可視光源31が順次配置される。光源31及び固視標32は光軸L2方向に移動することにより被検眼の調節を解く。光源31は固視標32を照明し、固視標32からの光束は投光レンズ33、ダイクロイックミラー34、ハーフミラー35、対物レンズ36を経た後、ビームスプリッタ29で反射して被検眼に向かい、被検眼は固視標32を固視する。
【0012】
40は被検眼正面からアライメント指標を投影する光学系である。光源41からの近赤外光は集光レンズ42により集光されてダイクロイックミラー34、ハーフミラー35、対物レンズ36を介して略平行光束とされた後、ビームスプリッタ29で反射されて被検眼に投影される。
【0013】
50は観察光学系である。ハーフミラー35の反射側には、撮影レンズ51、撮像素子であるCCDカメラ52が配置されている。カメラ52の出力は画像処理部77を介してモニタ7に接続されている。被検眼の前眼部像は、ビームスプリッタ29、対物レンズ36、ハーフミラー35、撮影レンズ51を介してカメラ52の撮像素子面に結像し、観察画像がモニタ7に表示される。観察光学系50は被検眼角膜に形成されるアライメント指標像を検出する光学系及び瞳孔位置や瞳孔径を検出する光学系を兼ねることも可能であり、画像処理部77により指標像の位置及び瞳孔位置、瞳孔径が検出される。
【0014】
受光手段となる受光光学系10bは、本実施形態では、投影光学系10aの測定用対物レンズ14、プリズム15及びホールミラー13を共用し、ホールミラー13の反射方向の光路に配置されたリレーレンズ16、ミラー17、ミラー17の反射方向の光路に配置された受光絞り18、コリメータレンズ19、リングレンズ20、CCD等の二次元撮像素子22(以下、撮像素子22と記載する)を備える。受光絞り18及び撮像素子22は、被検眼眼底と共役な関係となっている。撮像素子22の出力は、画像処理部77を介して制御部70に接続されている。また、演算手段となる制御部70には、メモリ75が接続されており、リング像に基づいて眼屈折力を算出するための演算プログラム等を記憶できる。また、制御部70は、装置全体の制御を行う。撮像素子22には、例えば、1/3型の30万画素CCDが用いられる。
【0015】
リングレンズ20は、測定光学系10の光路における被検眼前眼部と略共役な位置に配置され、投影光学系10aで照明された眼底の微小領域からの反射光を測定光軸L1から距離の異なる複数の測定光束に分割し、それぞれ撮像素子22の撮像面に集光させる。これにより測定光軸から距離の異なる複数のリングパターン像が撮像素子22に受光される。
【0016】
より詳細には、
図2(a)及び(b)に示すように、リングレンズ20は、平板上に円筒レンズをリング状に2つ形成した第1レンズ部20a及び第2レンズ部20bと、このレンズ部以外を遮光のためのコーティングを施した遮光部20cより構成されている。この遮光部20cにより、径が異なる2つのリングが形成された二重リング状開口が形成される。そして、各リング開口に対応する円環状の第1レンズ部20a及び第2レンズ部20bが光軸L1を中心として、同心円状にそれぞれ異なる半径にて形成されている。
【0017】
なお、本実施形態においては、第2レンズ部20bの半径が第1レンズ20aの半径よりも大きい半径を持つように構成されている。リングレンズ20は、例えば、遮光部20cが被検眼瞳孔と共役位置(共役位置とは、厳密に共役である必要はなく、測定精度との関係で必要とされる精度で共役であれば良い)となるように受光光学系に設けられている。このため、眼底からの反射光は瞳孔周辺部から第1レンズ部20a及び第2レンズ部20bに対応した大きさでリング状に取り出される。リングレンズ20に平行光束が入射すると、その焦点位置に配置された撮像素子22上には、リングレンズ20と同じサイズのリング像が集光する。なお、リング状開口を持つ遮光部20cは、リングレンズ20の近傍に別部材で構成しても良い。
【0018】
また、投影光学系10aの光源11と、受光光学系10bの受光絞り18、コリメータレンズ19、リングレンズ20、撮像素子22は、可動ユニット25として光軸方向に一体的に移動可能となっている。駆動ユニット26は、外側のリング光束が各経線方向に関して撮像素子22上に入射されるように測定光学系10の一部を光軸方向に移動させる。すなわち、駆動部26は可動ユニット25を光軸方向に移動させる駆動手段である。被検眼の球面屈折誤差(球面屈折力)に応じて移動させることで、球面屈折誤差を補正し、被検眼眼底に対して光源11、受光絞り18及び撮像素子22が光学的に共役になるようにする。可動ユニット25の移動位置は、ポテンショメータ27により検出される。なお、ホールミラー13とリングレンズ20は、可動ユニット25の移動量に拘わらず、被検眼の瞳と一定の倍率で共役になるように配置されている。
【0019】
上記構成において、光源11から出射された近赤外光は、リレーレンズ12、ホールミラー13、プリズム15、対物レンズ14、ビームスプリッタ29を経て、被検眼の眼底上にスポット状の点光源像を形成する。このとき、光軸周りに回転するプリズム15により、ホールミラー13のホール部の瞳投影像(瞳上での投影光束)は、高速に偏心回転される。
【0020】
眼底に投影された点光源像は反射・散乱されて被検眼を射出し、対物レンズ14によって対物レンズ14とプリズム15の間にいちど集光されプリズム15に向かう。高速回転するプリズム15、ホールミラー13、リレーレンズ16、ミラー17を介して受光絞り18の位置に再び集光され、コリメータレンズ19とリングレンズ20(第1レンズ部20a及び第2レンズ部20b)とによって撮像素子22に二重リング状の像(二重リング像)が結像する(
図5参照)。撮像素子22からの出力信号は画像処理部77により検出処理される。
【0021】
プリズム15は、投影光学系10aと受光光学系10bと共通光路に配置されている。このため、眼底からの反射光束は、投影光学10aと同じプリズム15を通過する。よって、それ以降の光学系ではあたかも瞳孔上における投影光束・反射光束(受光光束)の偏心が無かったかのように逆走査される。
【0022】
次に、測定光学系10によって形成される瞳上の測定領域について説明する。
図3は瞳上での各リング光束について説明する図である。
図4は偏心回転されたときの測定領域について説明する図である。
図5は、撮像素子22上のリング像について示す図である。
【0023】
図3(a)に示すように、眼底から反射光のうち、リングレンズ20の第1レンズ部20aによって第1リング光束101が瞳孔上から抽出される。このとき、測定光軸L1(対物レンズ14の光軸)は、眼Eの略瞳孔中心にアライメントされている。よって、第1駆動部23によりプリズム15が偏心回転されると、第1リング光束101が瞳孔Puの中心Pc回りに偏心回転する。
【0024】
そして、プリズム15が高速回転されることにより、
図4(a)に示されるように第1リング光束101が瞳孔上の第1測定領域T1内を高速で移動することになる。したがって、リング光束101の偏心回転により略円形上の第1測定領域T1(第1瞳孔領域)が形成される。
【0025】
このとき、撮影素子22上のリング像は、瞬間を捉えれば、異なる測定位置でのリング像になる。しかしながら、プリズム15が高速回転されることにより、最終的には、各位置で得られたリング像を積分した第1のリング状の像(
図5の第1リング像105)が撮像素子22上に受光される。これにより、第1測定領域T1に対応する瞳孔領域内における平均的な屈折力が得られる。また、一部の屈折情報だけでは、測定結果の算出が困難であるような白内障、小瞳孔眼等の異常眼に対しても、測定領域T1内の各位置での屈折情報を得ることにより、眼屈折力測定が可能である(詳しくは特開2005−185523を参照されたし)。なお、第1リング像は、
図5に示される撮像素子22に結像された二重リング像のうち、内側のリング像105を示している。
【0026】
また、
図3(b)に示すように、眼底反射光の内、リングレンズ20の第2レンズ部20bによって第2リング光束102が瞳孔上から抽出される。このとき、第2リング光束102は、第1リング光束101を円環状に取り囲んで形成される。そして、第1駆動部23によりプリズム15が偏心回転されると第2リング光束102が瞳孔Puの中心Pc回りに偏心回転する。
【0027】
そして、プリズム15が高速回転されることにより、
図4(b)に示されるように第2リング光束102が瞳孔上で、第2測定領域T2内を高速で移動することになる。したがって、リング光束102の偏心回転により略円環状の第2測定領域T2(第2瞳孔領域)が第1測定領域T1の外側に形成される。
【0028】
このとき、撮影素子22上のリング像は、瞬間を捉えれば、異なる測定位置におけるリング像になる。しかしながら、プリズム15が高速回転されることにより、最終的には、各位置で得られたリング像を積分した第2のリング状の像(
図5の第2リング像106参照)が撮像素子22上に受光される。これにより、第2測定領域T2に対応する瞳孔領域内における平均的な屈折力が得られる。また、一部の屈折情報だけでは、白内障等の異常眼に対しても、測定領域T2内の各位置での屈折情報を得ることにより、眼屈折力測定が可能である。なお、本構成は、瞳孔径が第2測定領域T2より小さく、一部の測定光束が虹彩に遮断されても、瞳孔内を通過した測定光束によるリング像に基づいて眼屈折力を取得できる。
【0029】
図6は、本発明のように、瞳上の各測定領域を示した図である。本実施形態では、第1リング光束101と第2リング光束102を高速で同時に偏心回転移動させることにより、φ(直径)=1.0mm〜φ=6.0mmの測定領域を測定可能な構成になっている。第1レンズ部20aとプリズム15の回転により形成される第1測定領域T1は、瞳上においてφ=4.0mmより内側の領域に対応するように設定されている。瞳上において、φ=3.0〜4.0mmのいずれかを上限とする領域に対応するように設定されている。なお、第1測定領域T1は、中心部に測定しない領域(例えば、φ=1.0mm領域内)があってもよい。第2レンズ部20bとプリズム15の回転により形成される第2測定領域T2は、瞳上において、測定領域の下限がφ=3.0〜4.5mmのいずれかに対応するように設定されている。また、第2測定領域T2は、測定領域の上限がφ=4.5〜6.5mmのいずれかに対応するように設定されている。
【0030】
すなわち、リングレンズ20のレンズ部の重心径、瞳上でのリングレンズ20のレンズ部の投影倍率(測定光学系10の光学系によって決定される)、プリズム15による偏心量は、第1測定領域T1で所定のリング光束が偏心回転され、かつ、第1測定領域T1を円環状に取り囲む第2測定領域T2で他のリング光束が偏心回転されるように設定されている。
【0031】
以上のような構成を備える装置の測定動作について説明する。まず、被検者の顔を図示なき顔支持ユニットに固定させ、固視標32を固視するよう指示した後、被検眼に対するアライメントを行う。
【0032】
制御部70は、光源11を点灯すると共に、第1駆動部23によりプリズム15を高速回転させる。光源11から出射された測定光は、リレーレンズ12からビームスプリッタ29までを介して眼底Ef上に投影され、瞳投影像(瞳孔上での投影光束)は、高速に偏心回転される。
【0033】
そして、第1測定領域T1及び第2測定領域T2内をそれぞれ第1リング光束101と第2リング光束102とが通過する。これらのリング光束は、対物レンズ14〜コリメータレンズ19までを介して、リングレンズ20によってリング状光束として取り出され、撮像素子22から第1リング像105及び第2リング像106として検出される。
【0034】
このとき、はじめに眼屈折力の予備測定が行われ、予備測定の結果に基づいて光源31及び固視標板32が光軸L2方向に移動されることにより、被検眼Eに対して雲霧がかけられる。その後、雲霧がかけられた被検眼に対して眼屈折力の測定が行われる。
【0035】
また、制御部70は、予備測定の結果に基づいて駆動部26を制御し、第1リング像105が正視眼(0ディオプター)に対応する大きさとなるように測定光学系10の一部を移動させる。これにより、視度が補正されると共に、第2リング像106が撮像素子22の撮像面から外れるのを回避できる。この場合、視度補正を行う場合、第2リング像106が利用されても良い。
【0036】
図5は、測定の際に撮像素子22に撮像された二重リング像である。撮像素子22からの出力信号は、画像メモリ71に画像データ(測定画像)として記憶される。そして、制御部70は、撮像素子22に撮像される各リング像に基づいて眼屈折力をそれぞれ算出する。例えば、制御部70は、画像メモリ71に記憶された測定画像に基づいて各経線方向に各リング像の位置を特定(検出)する。この場合、制御部70は、エッジ検出によりリング像の位置を特定する。なお、各リング像の位置の特定は、輝度信号の波形を所定の閾値にて切断し、その切断位置での波形の中間点や、輝度信号の波形のピーク、輝度信号の重心位置などによって求めてもよい。
【0037】
次に、制御部70は、特定された各リング像の像位置に基づいて、最小二乗法等を用いて楕円を近似する。そして、制御部70は、近似した楕円の形状から各経線方向の屈折誤差が求める。これらの屈折誤差と駆動部26による視度補正量、および後述する瞳孔の異なる領域を通過する光束に重み付けを行う演算を行い、被検眼の眼屈折力、S(球面度数)、C(柱面度数)、A(乱視軸角度)の各値を求め、測定結果をモニタ7にそれぞれ表示する。
【0038】
ここで、本実施形態ではモニタ7にはφ=4.0mmより内側の眼屈折力となる第1リング像105から求めた眼屈折力を表示する。また、検者が図示なき操作部で印刷指示を行った場合には図示なき印刷ユニットによって測定結果データが印刷される。印刷される測定結果データにはモニタ7に表示したφ=4.0mmより内側となる昼間用の眼屈折力とともに、下述するφ=6.0まで測定領域を広げた夜間用の眼屈折力が示される。なお、φ=6.0まで測定領域を広げた眼屈折力は、本件発明に基づき第1リング像105と第2リング像106に対して重み付けを行い求めたものであり、その算出方法は下述する。
【0039】
なお、二重リング像のうち、内側の第1リング像105と外側の第2リング像106は、ディオプターによるリング径の変化量が異なる。そのため、制御部70は、各リング像用に設定された眼屈折値とリング径に基づいて第1測定領域T1及び第2測定領域T2での眼屈折力をそれぞれ算出する。すなわち、それぞれのリング像の径に対応するディオプターを設定しておく必要がある。そして、内側の第1リング像105と外側の第2リング像106の各リング像専用に設定されたディオプターとリング像径の設定値に基づいて、各々リングの眼屈折力が算出される。制御部70は、内側の第1リング像105の眼屈折力を測定する際には、内側リング像をエッジ検出し、リング像の径を検出する。次いで、内側のリング像専用に設定されたディオプターとリング像径の設定値に基づいて、検出したリング径に対応するディオプターを算出する。
【0040】
ここで、本発明に係わる瞳孔の複数の領域を通過した光束から眼屈折力を求める際の演算方法について説明する。まず、前述したように各リング像に対して眼屈折力となるS(球面度数)、C(柱面度数)、A(乱視軸角度)を求める。ここで、各リング像はレンズパワーとして以下第1式で表すこともできる。なお、Sは球面度数,Cは柱面度数,Aは乱視軸角度である。
【0041】
【数1】
また、2つのレンズパワーP
A,P
Bを合成する場合は以下第2式で表すことができる。
【0042】
【数2】
ここで、2つのリング像(第1リング像105,第2リング像106)により全体として1つの眼屈折力(S,C,A)を算出する場合、各々のリング像から算出されたレンズパワーP
A,P
Bを合成して求めることができる。しかしながら、各領域ごとで瞳孔サイズが異なると、求める眼屈折力測定値に与える影響は異なる。つまり、スタイルクロフォード効果(Stile−Crawford Effect)と呼ばれる現象で、瞳孔の外側から入射した光の影響(視細胞での感度)は、瞳孔中心領域に対して小さいとするものである。ここで、光軸からxだけ離れた位置から入射するときの視細胞の感度Sは以下第3式で表すことができる。
【0043】
【数3】
前述したスタイルクロフォード現象を考慮し、第2リング像106(第2測定領域T2を通過した光束)のリング像によるレンズパワー(第2の眼屈折力特性)は、第1リング像105(第1測定領域T1を通過した光束)のリング像によるレンズパワー(第1の眼屈折力特性)に対し、重み付けをして、2つのレンズパワーを加重平均することで、より正確な眼屈折力測定値を算出することができる。すなわち、瞳孔径が大きい場合は、第2測定領域T2の範囲が外側に広くなるため、この領域から算出される眼屈折特性の影響は、内側リングに比べて相対的に小さいと考えることができる。2つのレンズパワーを重み付けして加重平均で求める1つのレンズパワー(第3の眼屈折力特性)は、重み付け係数をα(第1測定領域T1に対する第2測定領域T2の重み付け:<1)として、以下第4式で算出する事ができる。このように演算手段(制御部70)は第1の眼屈折力特性と第2の眼屈折力特性とを加重平均して第3の眼屈折力特性を求める。
【0044】
【数4】
ここで、本実施形態では眼屈折力を測定中の眼Eの瞳孔径を検出し、検出した瞳孔径に基づいた重み付け係数を設定する。より詳細には、制御部70は観察光学系50のCCDカメラ52で撮像した眼Eの前眼部像から瞳孔径を検出する。続けて、検出した瞳孔径に対応する重み付け係数をメモリ75に記憶してあるテーブルに基づいて決定する。制御部70はテーブルから決定した重み付け係数値をαとして第4式で示した演算を行う。第1測定領域T1に基づく眼屈折力と第2測定領域T2に基づく眼屈折力とを組み合わせ1つの眼屈折力を生成するが、スタイルクロフォード現象を配慮して瞳孔径が大きくなると、生成する1つの眼屈折力において第2測定領域T2に基づく眼屈折力の影響を低減させるべくする。
【0045】
より詳しくは、
図7は瞳孔径と重み付け係数の関係を示す。瞳孔径が大きくなると第4式で求める加重平均したレンズパワーにおいて第2測定領域T2によるレンズパワーの影響が小さくなるように重み付け係数が決められている。本実施形態では瞳孔径が3.5mmから6mmのときは直線で重み付け係数が小さくなってゆき、瞳孔径が6mmを超えると重み付け係数は一定になる。なお、
図7で示すテーブルが3.5mmから始めるのは第2測定領域の内径に基づくものであり、この数値に限るものではない。瞳孔径が3.5mmのときは重み付け係数は0.8であり、瞳孔径が6mmのときは重み付け係数は0.55としている。なお、本実施形態では瞳孔径が6mmを超えると重み付け係数が一定になるが、瞳孔径が大きくなるほど小さくしてもよい。また、本実施形態では瞳孔径と重み付け係数の関係を直線で構成しているが曲線で構成してもよい。
なお、レンズパワーを組み合せる際には、パワーベクトルと呼ばれる手法を用いる。上述したレンズパワーを示す第1式は、sin成分、cos成分、等価球面度数を使って以下第5式に変換される。
【0046】
【数5】
第1測定領域T1に基づく第1リング像105、第2測定領域T2に基づく第2リング像106に対してそれぞれJ
45,J
180,Mを算出し、前述した重み付けを行い1つの眼屈折力を求める第4式に当てはめることで、2つの領域のレンズパワーを組み合せて算出する事ができる。
【0047】
このように、被検眼の異なる領域に関する受光信号から各々の領域に関する眼屈折力を求め、各眼屈折力を重み付けして組合せて1つの眼屈折力を求めることで、眼Eの瞳孔径に対応した精度よい眼屈折力を求め提示することができる。また、各眼屈折力の組合せは加重平均で行い、加重平均の重み付け係数は変更可能であり、眼底に対する光の入射角度が大きいほど視細胞の感度が下がるというスタイルクロフォード現象を考慮した係数を用いる。ここで、スタイルクロフォード現象を考慮して各眼屈折力を測定した領域が測定光軸に対して離れるほど求める1つの眼屈折力への影響が小さくなるように係数を設定する。また、複数の眼屈折力から1つの眼屈折力を求める際にはパワーベクトル法を用いる。更には、測定中の眼Eの瞳孔径を検出し、検出した瞳孔径に基づいて加重平均の重み付け係数を変更する。このようにして、測定結果として、昼間と夜間のように変化する瞳孔径に対応した眼屈折力を提供することができる。
【0048】
なお、本実施形態では、第1測定領域T1、第2測定領域T2の2つの領域の組み合わせ算出したが、領域が3つ以上あっても同様に重み付けして算出することができる。例えば、3つ以上のリング光束があってもよい。また、連続的なリング像でなく、間欠的なリング像を取り出す構成であってもよい。点像が略リング状に並べられた眼底反射像を取り出す構成(例えば、6点指標)であってもよい。また受光素子は二次元撮像素子に限るものでなく、領域が区切られた複数のフォトダイオードを並べた受光素子を眼Eの瞳孔と共役となる位置に配置して回転させる眼屈折力測定装置にも適用できる。
【0049】
また、本実施形態は測定光を瞳孔の中央部から眼底に投光し、眼底からの反射光を瞳孔の周辺部(複数領域)から取出す構成としているがこれに限るものではない。眼底への測定光の投光を瞳孔の周辺部(複数領域)から行い、眼底で反射した測定光を瞳孔の中央部から取出す構成としてもよい。つまり、眼Eの複数箇所の眼屈折力を求め、複数箇所の眼屈折力を重み付けして組合せ1つの眼屈折力を求めればよい。
【0050】
また、本実施形態では測定光軸から離れるほど重み付け係数が小さくなることとしたがこれに限らない。視細胞に入射する光束の角度または方向に対応した、その光量の分布を配慮した重み付けを行い眼屈折力を求めてもよい。例えば、白内障により水晶体(略瞳孔)に局所的な混濁がある場合、眼底(黄班)には当該する混濁部の光束が達し難くなる。よって、測定前または測定中に眼Eの透光体(角膜から網膜まで)の混濁箇所および混濁度合いを検知し、検知した情報に基づいて瞳孔部で分離させ受光する光束の各々に重み付け係数を設定すればよい。
【0051】
また、重み付け係数は検者が任意に変更可能であってもよい。検者が図示なき操作部のスイッチを操作して、予め重み付け係数を設定してもよい。
【0052】
また、本実施形態では測定中の瞳孔径が第2測定領域T2に掛かる場合、2つのレンズパワーを加重平均する第4式では測定中に検出した眼Eの瞳孔径に基づいた重み付け係数を用いたがこれに限らない。第4式の重み付けの係数は測定中に検出した瞳孔径によらず一定であってもよい。
【0053】
また、本実施形態では二次元撮像素子22が撮像した2つのリング像に基づく2つのレンズパワー(眼屈折力)から1つの眼屈折力を求める演算(第4式)において重み付けを行っている。しかし、重み付け係数を付与するのは眼屈折力同士を組合せる演算に限るものではない。2つの眼屈折力を求めるとき、または2つの眼屈折力を求める前に、瞳孔の通過領域に基づく重み付けを予め行っておいてもよい。例えば、検出したリング像の形状に対して重み付け係数に基づく補正(変形)を行ってから合成してもよい。