特許第6221251号(P6221251)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セイコーエプソン株式会社の特許一覧

特許6221251撮影装置、撮影装置の制御方法、撮影装置の制御プログラム
<>
  • 特許6221251-撮影装置、撮影装置の制御方法、撮影装置の制御プログラム 図000002
  • 特許6221251-撮影装置、撮影装置の制御方法、撮影装置の制御プログラム 図000003
  • 特許6221251-撮影装置、撮影装置の制御方法、撮影装置の制御プログラム 図000004
  • 特許6221251-撮影装置、撮影装置の制御方法、撮影装置の制御プログラム 図000005
  • 特許6221251-撮影装置、撮影装置の制御方法、撮影装置の制御プログラム 図000006
  • 特許6221251-撮影装置、撮影装置の制御方法、撮影装置の制御プログラム 図000007
  • 特許6221251-撮影装置、撮影装置の制御方法、撮影装置の制御プログラム 図000008
  • 特許6221251-撮影装置、撮影装置の制御方法、撮影装置の制御プログラム 図000009
  • 特許6221251-撮影装置、撮影装置の制御方法、撮影装置の制御プログラム 図000010
  • 特許6221251-撮影装置、撮影装置の制御方法、撮影装置の制御プログラム 図000011
  • 特許6221251-撮影装置、撮影装置の制御方法、撮影装置の制御プログラム 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6221251
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】撮影装置、撮影装置の制御方法、撮影装置の制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/238 20060101AFI20171023BHJP
   H04N 5/341 20110101ALI20171023BHJP
   H04N 5/353 20110101ALI20171023BHJP
   H04N 5/374 20110101ALI20171023BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20171023BHJP
   G03B 9/36 20060101ALI20171023BHJP
   G03B 7/093 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   H04N5/238
   H04N5/341
   H04N5/353
   H04N5/374
   H04N5/225 400
   G03B9/36 D
   G03B7/093
【請求項の数】8
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-29730(P2013-29730)
(22)【出願日】2013年2月19日
(65)【公開番号】特開2014-160897(P2014-160897A)
(43)【公開日】2014年9月4日
【審査請求日】2016年1月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116665
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 和昭
(74)【代理人】
【識別番号】100164633
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(72)【発明者】
【氏名】塩原 隆一
【審査官】 高野 美帆子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−159061(JP,A)
【文献】 特開2008−294753(JP,A)
【文献】 特開2006−191282(JP,A)
【文献】 特開2010−103948(JP,A)
【文献】 特開2008−092440(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/222−5/257
G03B 7/093
G03B 9/36
H04N 5/335−5/378
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズユニットを装着するマウントと、
前記レンズユニットを通過して入射した光を電荷として蓄積する撮像センサーと、
前記電荷の蓄積を開始する走査を前記撮像センサーの位置ごとに順次行う露光制御手段と、
前記撮像センサーへ入射する前記光を遮光するように走行する機械式シャッターと、
前記走査を行うタイミングを前記位置ごとに定めた走査制御情報を前記レンズユニットのマウントと前記レンズユニットの焦点距離との組み合わせに対応付けて記録している内部記録媒体と、
前記レンズユニットのマウントと前記レンズユニットの焦点距離とを受け付ける受付手段と、
前記内部記録媒体に保存された前記走査制御情報のうち、受け付けた前記レンズユニットのマウントと前記レンズユニットの焦点距離との組み合わせに対応する前記走査制御情報に基づいて前記走査を行わせ、当該走査に続いて前記光を前記機械式シャッターに遮光させることによって撮影を行う撮影制御手段と、
を備える撮影装置。
【請求項2】
前記受付手段は、前記レンズユニットのマウントの選択肢と前記レンズユニットの焦点距離の選択肢とを別々に案内し、前記選択肢の中から選択された前記レンズユニットのマウントと前記レンズユニットの焦点距離とを受け付ける、
請求項1に記載の撮影装置。
【請求項3】
前記内部記録媒体は、前記レンズユニットのマウントが同じ場合、基準となる距離以下の前記レンズユニットの焦点距離は当該距離より長い前記レンズユニットの焦点距離よりも小さい焦点距離の間隔で前記走査制御情報を記録している、
請求項1または請求項に記載の撮影装置。
【請求項4】
前記受付手段において、前記レンズユニットの焦点距離の選択肢は、基準となる距離以下の焦点距離は当該距離より長い焦点距離よりも小さい単位で選択可能に案内する、
請求項に記載の撮影装置。
【請求項5】
前記受付手段は、前記レンズユニットのマウントおよび前記レンズユニットの焦点距離の選択を受け付けた後、選択された前記マウントおよび前記焦点距離の組み合わせに対応する前記走査制御情報が前記内部記録媒体に保存されていないと判断した場合、選択された前記マウントに対応する前記走査制御情報のうち対応する前記焦点距離が選択された前記焦点距離に近い前記走査制御情報を予め規定された条件によって抽出し、抽出された前記走査制御情報を選択肢として案内する、
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の撮影装置。
【請求項6】
前記レンズユニットに入射する被写体からの反射光の輝度分布が均一な状態で当該被写体を前記撮影制御手段が複数種類の前記走査制御情報を用いて複数回撮影した結果得られた複数の画像データを取得し、当該複数の画像データの前記露光制御手段による走査方向における位置ごとの輝度値をそれぞれ取得し、前記走査方向における前記画像データの中央部を基準にして前記輝度値の分布が前記複数の画像データのうち最も対称に近い前記画像データを撮影した際に用いられた前記走査制御情報を選定する選定手段を備える、
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の撮影装置。
【請求項7】
レンズユニットを装着するマウントと、
前記レンズユニットを通過して入射した光を電荷として蓄積する撮像センサーと、
前記電荷の蓄積を開始する走査を前記撮像センサーの位置ごとに順次行う露光制御手段と、
前記撮像センサーへ入射する前記光を遮光するように走行する機械式シャッターと、
前記走査を行うタイミングを前記位置ごとに定めた走査制御情報を前記レンズユニットのマウントと前記レンズユニットの焦点距離との組み合わせに対応付けて記録している内部記録媒体と、
を備える撮影装置の制御方法であって、
前記レンズユニットのマウントと前記レンズユニットの焦点距離とを受け付ける受付工程と、
前記内部記録媒体に保存された前記走査制御情報のうち、受け付けた前記レンズユニットのマウントと前記レンズユニットの焦点距離との組み合わせに対応する前記走査制御情報に基づいて前記走査を行わせ、当該走査に続いて前記光を前記機械式シャッターに遮光させることによって撮影を行う撮影制御工程と、
を含む撮影装置の制御方法。
【請求項8】
レンズユニットを装着するマウントと、
前記レンズユニットを通過して入射した光を電荷として蓄積する撮像センサーと、
前記電荷の蓄積を開始する走査を前記撮像センサーの位置ごとに順次行う露光制御手段と、
前記撮像センサーへ入射する前記光を遮光するように走行する機械式シャッターと、
前記走査を行うタイミングを前記位置ごとに定めた走査制御情報を前記レンズユニットのマウントと前記レンズユニットの焦点距離との組み合わせに対応付けて記録している内部記録媒体と、
を備える撮影装置の制御プログラムであって、
前記レンズユニットのマウントと前記レンズユニットの焦点距離とを受け付ける受付機能と、
前記内部記録媒体に保存された前記走査制御情報のうち、受け付けた前記レンズユニットのマウントと前記レンズユニットの焦点距離との組み合わせに対応する前記走査制御情報に基づいて前記走査を行わせ、当該走査に続いて前記光を前記機械式シャッターに遮光させることによって撮影を行う撮影制御機能と、
を撮影装置に実現させる撮影装置の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影装置、撮影装置の制御方法、撮影装置の制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子シャッターにより電荷の蓄積を開始し機械式シャッターにより光を遮って電荷の蓄積を終了するデジタルカメラが知られている。先幕としての電子シャッターは後幕としての機械式シャッターの走行に先行して撮像センサーの画素を領域毎にリセットする。機械式シャッターによって遮光されるまでに撮像センサーに蓄積された電荷は、撮像センサーに入射する光が機械式シャッターに遮られている期間中に読み出される。ここで各画素の露光時間は、ある画素がリセット解除されてからその画素に入射する光を機械式シャッターが遮るまでの時間となる。各画素の露光時間が領域によって異なると所謂露光ムラが生じる。したがって各画素の露光時間を一定にするため、先幕としての電子シャッターによって電荷の蓄積が開始されるタイミングを機械式シャッターの走行特性に対応させる必要がある。
さらに、特許文献1に記載されているように、機械式シャッターの走行特性が一定であっても、焦点距離、射出瞳距離、フォーカス時のレンズ操り出し量、絞りの開口径、レンズのシフト量やティルト量等が異なれば各画素に入射する光を機械式シャッターが遮るタイミングが異なることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4974596号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、先幕としての電子シャッターによって電荷の蓄積を開始するタイミングを領域毎に制御する情報である走査パターンを光学ユニットの特性に対応付けてデジタルカメラに複数保存しておくことが記載されている。撮影時には光学ユニットの特性を光学ユニットから取得し、デジタルカメラに保存された走査パターンのうち光学ユニットの特性に対応する操作パターンが選択され使用される。しかし、特許文献1の構成では、カメラ本体との通信機能を持たない光学ユニットを使用する場合には、カメラ側は光学ユニットの特性を把握できないため光学ユニットの特性に対応する走行パターンを選択できない。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、様々なレンズユニットを装着して撮影を行う場合も機械式シャッターの走行方向における露光ムラを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための撮影装置は、マウントと、撮像センサーと、露光制御手段と、機械式シャッターと、走査制御情報取得手段と、撮影制御手段と、を備える。マウントは、交換式のレンズユニットを撮影装置本体に装着するための機構である。撮像センサーは、レンズユニットを通過して入射した光を受光し電荷として蓄積する。露光制御手段は、電荷蓄積を開始する走査を撮像センサーの位置ごとに順次行う。機械式シャッターは、撮像センサーへ入射する光を遮光するように走行する。走査制御情報取得手段は、走査を行うタイミングを位置ごとに定めた走査制御情報であってレンズユニットに対応する走査制御情報を外部記録媒体から取得して内部記録媒体に保存する。撮影制御手段は、内部記録媒体に保存されたレンズユニットに対応する走査制御情報に基づいて走査を行わせ、当該走査に続いて前記光を機械式シャッターに遮光させることによって撮影を行う。
ここで、露光制御手段の制御によって電子先幕が実現される。また機械式シャッターによって機械式後幕が実現される。この電子先幕と機械式後幕とによって撮像センサーに対し、必要な秒時の露光をさせることで撮影を行う。この際の電子先幕動作の走査制御を行うためのタイミング情報が走査制御情報である。
【0006】
本発明の撮影装置は上記の構成を備えているため、対応する走査制御情報が撮影装置に予め保存されていない種類のレンズユニットが装着された場合にも外部記録媒体から当該レンズユニットに対応する走査制御情報を取得し、電荷蓄積を開始する走査を行う際に適用することができる。その結果、撮像センサーにおいて、電荷蓄積を開始してから機械式シャッターによって遮光されるまでの時間(露光時間)や光の量が撮像センサーの位置ごとに異なることによって生じる露光ムラを抑制することができる。
【0007】
撮像センサーに投影される機械式シャッターの影の位置は、焦点距離や射出瞳距離やレンズの構成等のレンズユニットの特性によって異なる。機械式シャッターの走行パターンが一定であったとしても、マウントに装着されたレンズユニットの特性に応じて、撮像センサーの受光面に投影される機械式シャッターの影の先端部の走行パターンは機械式シャッターの走行パターンと一致しない。また、撮像センサーが受光する光の量の特性も異なる。撮像センサーの各領域の露光時間を一定にし、電子先幕・機械式後幕のシャッター動作での撮像センサーの各領域の露光特性を同一にするためには、機械式シャッターの影の先端部の走行パターンに近似するようなパターンで機械式シャッターによる遮光に先行して電荷蓄積を開始させる必要がある。走査制御情報は、撮像センサーの各領域の露光時間がほぼ一定となるように各領域における電荷蓄積の開始タイミングを定めた情報であり、装着されたレンズユニットの特性に応じて変化する遮光領域(機械式シャッターによって遮光される領域)の先端の走行パターンに近似するように各領域における電荷蓄積の開始タイミングを定めた情報である。なお撮像センサーの受光面に投影される機械式シャッターの影の先端部の輪郭は鮮明ではないが、グラデーションする影の先端部に含まれる特定の一ラインを機械式シャッターによって遮光される遮光領域の先端とみなして以降では説明を行う。なお遮光領域の先端の走行パターンは、例えば、レンズユニットの射出瞳距離(レンズユニットの射出瞳位置から撮像センサーの受光面までの距離)、焦点距離(ズーム位置)、絞りの開口径、フォーカス繰り出し量等に応じて異なりうる。レンズユニットに応じた走査制御情報は、遮光領域の先端の走行パターンが変化しうるこれらの要因にさらに応じて、それらの要因の組み合わせごとに走査制御情報が定義されていてもよい。
【0008】
ここで、走査制御情報取得手段は、撮影装置の外部からレンズユニットに対応する走査制御情報を取得して内部記録媒体に保存することができればよく、どのような態様で走査制御情報を取得することができてもよい。外部記録媒体は、撮影装置に直接装着されるメモリーカード等であってもよいし、撮影装置と有線通信または無線通信などによって接続されるコンピューターが備える記録媒体であってもよい。
【0009】
レンズユニットからレンズユニットの属性を取得し当該属性に応じた走査制御情報を撮影装置内に保存されている走査制御情報の中から選択して撮影を行う構成では、撮影装置の発売時期より以前に発売されたレンズユニットには対応可能であるが、撮影装置の発売時期より以後に発売されたレンズユニットには対応できない可能性がある。例えば撮影装置より後に発売されたレンズユニットに対応する走査制御情報が撮影装置内に保存できていない場合は当該レンズユニットに最適な走査制御情報を用いて撮影することができない。しかし本発明の場合は撮影装置の発売後に発売されたレンズユニットにも対応可能である。また撮影装置の発売以前に発売されたレンズユニットについても、サードパーティ社製の様々なレンズユニットに対応する走査制御情報を全て撮影装置に保存することは現実的ではない。しかし本発明の場合は、ユーザーが使用するレンズユニットの走査制御情報をユーザーが選択して撮影装置に保存できるため、合理的である。
【0010】
さらに、上記目的を達成するための撮影装置において、レンズユニットの指定を受け付ける受付手段を備えてもよい。この場合、撮影制御手段は、指定されたレンズユニットに対応する走査制御情報に基づいて電荷蓄積開始の走査を行わせる。
使用するレンズユニットの指定を受け付ける手段を備えることにより、例えばレンズユニット側が撮影装置と通信する機能を備えていない場合にユーザーが手動で指定したレンズユニットの種類に対応する走査制御情報を適用して走査を行うことができる。なお、遮光領域の先端の走行パターンが変化しうる要因についての指定をさらに受け付けることができてもよく、その場合、撮影制御手段は、それらの要因の組み合わせに対応する走査制御情報を撮影の際に適用してもよい。
【0011】
さらに、上記目的を達成するための撮影装置において、走査制御情報は、レンズユニットのマウント名とレンズユニットの焦点距離との組み合わせごとに定義されていてもよい。その場合に受付手段は、レンズユニットのマウント名の選択肢とレンズユニットの焦点距離の選択肢とを案内し、選択肢の中から選択されたレンズユニットのマウント名とレンズユニットの焦点距離とを受け付ける。撮影制御手段は、選択されたレンズユニットのマウント名とレンズユニットの焦点距離との組み合わせに対応する走査制御情報に基づいて電荷蓄積開始の走査を行わせる。
【0012】
焦点距離が同じレンズユニットであってもレンズ群の構成が異なることにより、射出瞳距離が異なる場合がある。また、撮影装置のマウントとは異なり焦点距離が同じレンズユニットを、アダプターを用いて装着する場合でも射出瞳距離が同程度の場合もあるし,異なる場合もある。しかし、使用するレンズユニットのマウント名とレンズユニットの焦点距離との組み合わせが同じであれば、射出瞳距離が大幅には異ならない場合がありえる。そのため、マウント名と焦点距離の組み合わせごとに走査制御情報を定義しておき、ユーザーからは当該組み合わせを指定させることで、当該組み合わせに対応する走査制御情報を選択し撮影時に適用することができる。その場合、極端に大きな露光ムラが発生する可能性は低く、比較的誤差の少ない範囲で撮像センサーの位置ごとの露光時間の誤差を少なくできる可能性がある。レンズユニットの射出瞳距離は一般に公表されるケースが少ないためユーザーは容易に知ることはできないが、レンズユニットのマウント名と焦点距離であればユーザーが容易に知りうる情報であるため、これらの組み合わせをユーザーに指定させることは、直接的に射出瞳距離をユーザーに選択させることよりユーザーにとって便利である。
【0013】
さらに、上記目的を達成するための撮影装置において、受付手段におけるレンズユニットの焦点距離の選択肢は、基準となる距離以下の焦点距離は当該距離より長い焦点距離よりも小さい単位で選択可能に案内するようにしてもよい。なお、基準となる距離は複数定義されてもよい。
焦点距離が短い場合は長い場合よりも撮像センサーの位置ごとの露光時間の誤差が大きくなる傾向にある。そのため、焦点距離が基準となる距離以下の場合は、当該距離よりも長い場合よりも小さい単位で選択可能に案内することにより、各焦点距離に対応したより適切な走査制御情報を適用して電荷蓄積開始の走査を行うことができる。
【0014】
さらに、上記目的を達成するための撮影装置において、受付手段は、レンズユニットのマウント名およびレンズユニットの焦点距離の選択を受け付けた後、選択されたマウント名および焦点距離の組み合わせに対応する走査制御情報が内部記録媒体に保存されていないと判断した場合、選択されたマウント名に対応する走査制御情報のうち対応する焦点距離が選択された焦点距離に近い走査制御情報を予め規定された条件によって抽出し、抽出された走査制御情報を選択肢として案内するようにしてもよい。予め規定された条件によって抽出される走査制御情報としては例えば、ユーザーが選択した焦点距離に最も近い焦点距離に対応する走査制御情報であってもよい。また例えば、ユーザーが選択した焦点距離に近い順に予め決められた所定個の走査制御情報であってもよい。また例えば、ユーザーが選択した焦点距離を基準にして所定距離以内の焦点距離に対応する走査制御情報であってもよい。
【0015】
受付手段がこのように案内することにより、同じマウントで焦点距離が近いレンズユニットの走査制御情報を選択して走査の際に適用することができる。マウント名と焦点距離の組み合わせに該当する走査制御情報が内部記録媒体に保存されていない場合に、焦点距離が同じであっても異なるマウントのレンズユニットに対応する走査制御情報が適用される場合や、同じマウントであってもユーザーが選択した焦点距離と大きく異なる焦点距離のレンズユニットに対応する走査制御情報が適用される場合と比較すると、本構成ではより適した走査制御情報を適用して電荷蓄積開始の走査を行うことができる。
【0016】
さらに、上記目的を達成するための撮影装置は、次のような選定手段を備えてもよい。本構成における選定手段は、レンズユニットに入射する被写体からの反射光の輝度分布が均一な状態で当該被写体を撮影制御手段が複数種類の走査制御情報を用いて複数回撮影した結果得られた複数の画像データを取得し、当該複数の画像データの露光制御手段による走査方向における位置ごとの輝度値をそれぞれ取得し、走査方向における画像データの中央部を基準にして輝度値の分布が複数の画像データのうち最も対称に近い画像データを撮影した際に用いられた走査制御情報を選定する。
【0017】
このような選定手段を備えることにより、内部記録媒体に保存されている複数の走査制御情報の中から、使用しているレンズユニットに最適な走査制御情報を選定することができる。機械式シャッターの走行特性は撮影装置の個体によって僅かに違いがある可能性がある。また、同一の撮影装置の機械式シャッターであっても走行特性は経年変化する可能性がある。そのような場合にユーザーが指定したレンズユニットの属性に対応する走査制御情報を適用しても露光ムラの発生を十分に抑制できない可能性がある。しかし本構成のような選定手段を備えることにより、内部記録媒体に保存されている複数の走査制御情報の中から最適な走査制御情報を選択して撮影時に適用することができる。
【0018】
さらに、本発明のように、レンズユニットに対応する走査制御情報を外部記録媒体から取得して内部記録媒体に保存し、内部記録媒体に保存された走査制御情報に基づいて撮像センサーの電荷の蓄積を開始する走査を行わせる手法は、プログラムや方法の発明としても成立する。また、以上のような装置、プログラム、方法は、単独の装置として実現される場合もあれば、複合的な機能を有する装置において共有の部品を利用して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】撮影装置の構成を示すブロック図。
図2】撮像センサーを示す模式図。
図3】(3A)および(3B)は機械式シャッターの位置と露光終了位置との関係を説明するための模式図。
図4】(4A)および(4B)は機械式シャッターの走行パターンと遮光領域の走行パターンと電荷蓄積開始走査の走査パターンを示す図。
図5】第一実施形態にかかる走査制御情報を示す図。
図6】第一実施形態にかかるレンズプロファイル登録画面を示す図。
図7】第一実施形態にかかる使用レンズ設定画面を示す図。
図8】(8A)および(8B)は第二実施形態にかかる走査制御情報を示す図。
図9】第二実施形態にかかるレンズプロファイル候補選択画面を示す図。
図10】第三実施形態にかかる自動レンズプロファイル選択画面を示す図。
図11】(11A)は第三実施形態にかかる画像撮影を示す模式図、(11B)〜(11D)は機械式シャッター走行方向における位置ごとの輝度を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照しながら説明する。尚、各図において対応する構成要素には同一の符号が付され、重複する説明は省略される。
1.第一実施形態
1−1.撮影装置の構成
図1は本発明の一実施形態にかかる撮影装置1を示している。撮影装置1には、レンズユニット10、機械式シャッター13、撮像センサー14、記憶部15、表示部20、外部I/F部30、内部記録媒体35、操作部40、フォーカス制御部43、絞り調整部45、シャッター制御部50、露光制御部60、カメラ制御部70、画像生成部80が備えられている。カメラ制御部70は、所定のプログラムに従って、フォーカス制御部43、絞り調整部45、シャッター制御部50、露光制御部60、記憶部15、画像生成部80、表示部20、外部I/F部30、内部記録媒体35、操作部40の動作を制御する。
【0021】
レンズユニット10は、撮像センサー14に被写体画像を結像させるレンズ11、絞り12、鏡筒を備えている。本実施形態においてレンズ11と絞り12とは鏡筒内に備えられており、当該鏡筒は撮影装置1本体のマウント100に交換可能に装着される。本実施形態において、レンズ11は光軸に平行な方向に沿って並べられた複数枚のレンズ群110で構成される。各レンズは外縁部で支持されるとともに、光軸方向に1部又は全部のレンズが移動することでフォーカス調整を行うことができる。また、ズームレンズの場合、光軸方向に1部又は全部のレンズを移動可能とすることで光学的なズーム動作を行うことが可能である。また、絞り12は複数枚のレンズ群110の間に配置される。
【0022】
撮影装置1本体との通信機能を備え撮影装置1の制御に従ってレンズ11や絞り12を駆動することが可能なレンズユニット10が装着されている場合は、レンズ11の位置はフォーカス制御部43によって制御されるように構成されており、当該フォーカス制御部43がレンズ位置の調整を指示されると、フォーカス制御部43がレンズ11を移動させてフォーカス調整する。撮影装置1本体との通信機能を備えていないマニュアル操作専用のレンズユニットが装着されている場合は、レンズユニット10の鏡筒に設けられた図示しないフォーカスリングをユーザーが回転操作することによってレンズ11を移動させてフォーカス調整することができる。ズームレンズの場合、ユーザーは当該ズームリングを回転操作することでズーム調整することができる。
【0023】
また、絞り12は、例えばレンズ11の光軸に対して垂直な平面内で回動可能に支持された複数の遮蔽板によって構成され、複数の遮蔽板が連動して回動することによって光軸に対して垂直な平面内で遮蔽されていない部分の面積を変化させることが可能である。撮影装置1との通信機能を備えたレンズユニット10が装着されている場合は、絞り12の開口径は絞り調整部45によって制御されるように構成されており、当該絞り調整部45が絞り12の開口径を指示されると、絞り調整部45が絞り12を駆動させて当該指示された開口径となるように設定する。マニュアル操作専用のレンズユニット10が装着されている場合、ユーザーは絞りリングを回転操作することによって絞り12の開口径を調整することができる。
【0024】
機械式シャッター13は機械式のフォーカルプレーン型シャッターであり、撮像センサー14の撮像センサー面に対して平行な平面板状の遮光部としての開閉式(折り畳み式)の複数の遮光幕を備えている。遮光幕はシャッター制御部50からの制御信号に応じて光軸に対して垂直な方向に移動するように構成されており、通常は遮光幕が光軸に平行な方向の光路を遮らない状態で保持されている。また、遮光幕が光路を遮らない状態で保持されている状態において、所定のトリガが与えられると当該遮光幕が光路を遮らない状態で保持された状態が解除され、遮光幕は光軸に対して垂直な方向に駆動して複数の羽根が光路を遮る状態となる。また、図1においては、遮光幕の移動方向を破線の矢印Amで示している。
【0025】
撮像センサー14は、ベイヤー配列されたカラーフィルターと、光量に応じた電荷を光電変換によって画素ごとに蓄積する複数の受光素子(フォトダイオード)とを備えるCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサーである。むろん、撮像センサーはCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサー等の他のセンサーであってもよい。本実施形態にかかる撮像センサー14は、露光制御部60(露光制御手段)がリセット指示を行うことによって受光素子の受光量に対応した蓄積電荷をリセットするリセット動作を行い、リセットの解除と同時に各受光素子での電荷の蓄積を開始することができる。また、露光制御部60は撮像センサー14に読出指示を行うことによって受光素子の受光量を示す情報の読出を行うことで電荷の蓄積を終了させることができる。なお、受光素子の読出し前に機械式シャッター13により撮像センサー14を遮光することで、被写体像の撮像センサー14への露光は指定した秒時で中断される。その後撮像センサー14に読出指示を行う事で、受光素子の受光量を示す情報を読み出すことが出来る。
【0026】
本実施形態にかかる撮影装置1は、本撮影(記録用の画像撮影)の際には、機械式シャッター13と撮像センサー14の電子シャッターとの組み合わせによって露光時間を制御する。すなわち、撮像センサー14における電子シャッター(リセット動作及びリセット動作の解除)で露光を開始させ、機械式シャッター13の遮光幕で露光を終了させる電子先幕−機械後幕シャッター方式によって露光時間が制御される。具体的には、電子シャッターによりライン順次で電荷蓄積が開始され、ライン毎の露光時間が、設定されたシャッター速度(=秒時)となるタイミングで各ラインが遮光されるように機械式シャッター13による遮光が開始される。なお表示部20においてライブビュー表示を行うための画像を撮影する際には、電子シャッター方式によって露光時間が制御される。すなわち、先幕も後幕も電子シャッターによって制御される。
【0027】
表示部20は、図示しないインターフェース回路、液晶パネルドライバー、液晶パネル、図示しない接眼レンズ等を備えている。本実施形態においては、表示部20として、撮影対象となる被写体を示す画像を表示してユーザーに撮影前の被写体の様子(ライブビュー)および撮影条件等の情報を把握させるEVF(Electronic View Finder)と背面液晶部を備えている。本実施形態にかかる撮影装置1はEVFを備えたミラーレスデジタルカメラである。また、表示部20には各種のメニュー画面を表示しユーザーの設定を受け付けることができる。
【0028】
外部I/F部30は、外部記録媒体200と接続することが可能であり、外部I/F部30に外部記録媒体200が接続された状態で、外部記録媒体200に対して情報を記録し、また、外部記録媒体200から情報を読み出すことができる。すなわち、撮影した画像を示す画像データを外部記録媒体200に記録することができる。また、本実施形態においてはカメラ制御部70は外部I/F部30を介して走査制御情報を外部記録媒体200から読み出し、内部記録媒体35に記録することができる。外部I/F部30は、撮影装置1に装着されたメモリーカードとの通信インターフェースを備えている。また外部I/F部30は、その他にも各種の有線通信(USBインターフェース等)または無線通信のインターフェース(WiFiインターフェース等)を備えており、外部のPCやサーバー等と通信して走査制御情報を取得してもよい。
【0029】
内部記録媒体35(フラッシュメモリ等)には、カメラ制御部70が実行する各種の制御プログラムや、当該制御プログラムが参照するパラメーターなどが保存されている。本実施形態においては、外部記録媒体200から取得した走査制御情報を保存することができる。なお、記憶部15は、撮像センサー14が出力する画像データ(受光素子毎の受光量を示す情報)を一時的に記録しておくメモリである。
【0030】
画像生成部80は、撮像センサー14が出力する画素毎、色毎の受光量情報に対して予め決められた手順によって各種の処理を実行して画像データを生成する回路によって構成されている。画像生成部80が実行する画像処理には、画素補間処理、色再現処理、フィルター処理、ガンマ補正処理、リサイズ処理等が含まれる。また、画像生成部80が実行する画像処理には、AE(Automatic Exposure)処理を行うための評価値とAF(Automatic Focus)処理を行うための評価値とAWB(Auto White Balance)処理を行うための評価値を出力する処理が含まれる。
【0031】
すなわち、画像生成部80は、撮像センサー14による撮影範囲内に設定された所定の測光エリアに含まれる画素の明るさを評価するための評価値(例えば、輝度の平均値等)を特定し、AE処理を行うための評価値として出力することが可能である。カメラ制御部70は、AE処理を行うための評価値に基づいて絞り調整部45、シャッター制御部50、露光制御部60に制御信号を出力し、適正露出となるように露出を調整する。すなわち、カメラ制御部70は、操作部40における指示やデフォルト設定に基づいて画像データを撮影する際の撮影条件を特定し、当該撮影条件通りに各部を設定する機能を備えている。具体的には、カメラ制御部70が上述のAE処理を行うための評価値に基づいて適正露出となるために必要な撮影条件を特定し、当該撮影条件通りに絞り12、シャッター速度および機械式シャッター13の位置が設定されるように、絞り調整部45、シャッター制御部50、露光制御部60に対して制御信号を出力する。なお、適正露出となるための必要な撮影条件は、各種の前提条件(例えば、絞り優先、シャッター速度優先等)において特定可能である。
【0032】
また、画像生成部80は、撮像センサー14による撮影範囲内に設定された所定の測距エリアに含まれる画素の合焦度合いを評価するための合焦評価値を特定し、AF処理を行うための評価値として出力することが可能である。カメラ制御部70は、AF処理を行うための評価値に基づいてフォーカス制御部43に制御信号を出力し、合焦状態となるように調整する。すなわち、カメラ制御部70は、上述のAF処理を行うための合焦評価値が合焦状態であることを示す所定範囲となるまでフォーカス制御部43に対して制御信号を出力してレンズ11の位置を変動させ、合焦状態を実現する。
【0033】
操作部40はシャッターボタンと、撮影モードを切り換えるための操作部と、絞りを調整するための操作部と、シャッター速度を切り換えるための操作部と、メニュー画面を表示させるためのメニューボタン、各種の設定メニューを操作するための十字ボタン、OKボタン、キャンセルボタン等の操作部とを備えており、ユーザーは当該操作部40に対する操作によって撮影装置1に対して各種の指示を与えることができる。
【0034】
1−2.走査制御情報
図2は、撮像センサー14をレンズ11側からレンズ11の光軸方向に見た模式図である。図2では機械式シャッター13の図示を省略している。図2に示す矢印Amは機械式シャッター13の走行方向を示している。xy軸は、撮像センサー14の画素の位置を示すための座標軸である。x軸は撮像センサー14の水平ラインに平行であり、y軸は画像の上から下に向かう方向が正方向となるように撮像センサー14の下から上に向かって正方向がとられている。そして矢印Amで示すように、機械式シャッター13は撮像センサー14の下から上に向かって走行する。y軸と矢印Amは平行である。
【0035】
先幕に相当するリセット信号は、機械式シャッター13に先行するように、撮像センサー14の下から上に向かって順次撮像センサー14に入力される(リセット動作を行い、リセット動作の解除と同時に電荷蓄積が開始される)。撮像センサー14の撮像領域aのうち電荷蓄積領域bは、リセット信号が入力されたことによって、記録される画像データの画素値に対応する電荷を蓄積している領域である。電荷蓄積領域bは、時間の経過に伴って撮像センサー14の下から上に向かって拡張していく。このとき、電荷蓄積領域bの先端の位置は、走査制御情報に定められたタイミングで1ラインずつ上昇する。遮光領域cは、レンズユニット10を通過した光が機械式シャッター13によって遮光されている領域である。露光領域dは、電荷蓄積中の領域であって、なおかつ機械式シャッター13によってまだ遮光されていない領域である。露光ムラは各画素の露光時間の不一致によるものであるため、各画素の露光時間が一致するようにリセット信号の印加タイミングが定められている。なお、露光時間は、ある画素にリセット信号が印加されてから、その画素に機械式シャッター13の影の先端部が到達するまで(当該画素に遮光領域cの先端が到達するまで)の期間である。したがって、各画素に遮光領域cの先端が到達するタイミングから一定時間前のタイミングにリセット信号が印加されるように、走査制御情報でリセット信号のタイミングを定める必要がある。
【0036】
図3Aおよび図3Bは、レンズ11、機械式シャッター13および撮像センサー14をx軸と平行な方向から見た模式図である。図3Aおよび図3Bにおいて、Paは第一のレンズユニットにおける射出瞳位置を示しており、撮像センサー14から距離La(射出瞳距離La)離れた位置にある。Pbは、第一のレンズユニットとは別の第二のレンズユニットにおける射出瞳位置を示しており、撮像センサー14から距離Lb(射出瞳距離Lb)離れた位置にある。射出瞳距離Lbは射出瞳距離Laより長い。図3Aに示すように、機械式シャッター13の先端がレンズの光軸を横切るまでは、遮光領域cの先端は、機械式シャッター13自体の先端よりも遅く走行する(Y0>Ya、Y0>Yb)。そして、射出瞳距離の長い第二のレンズユニットのレンズ群を通る光が機械式シャッター13によって遮られたことによる遮光領域cの先端の方が、射出瞳距離の短い第一のレンズユニットのレンズ群を通る光が機械式シャッター13によって遮られたことによる遮光領域cの影の先端よりも速く走行する(Yb>Ya)。一方、図3Bに示すように機械式シャッター13の先端がレンズの光軸を横切った後は、遮光領域cの先端は、機械式シャッター13自体の先端よりも速く走行する(Y0<Ya、Y0<Yb)。そして、射出瞳距離の短い第一のレンズユニットのレンズ群を通る光が機械式シャッター13によって遮られたことによる遮光領域cの先端の方が、射出瞳距離の長い第二のレンズユニットのレンズ群を通る光が機械式シャッター13によって遮られたことによる遮光領域cの先端部よりも速く走行する(Ya>Yb)。
【0037】
図4Aおよび図4Bは、機械式シャッター13の先端の走行パターン131と、遮光領域cの先端の走行パターン132と、露光制御部60のリセット走査(電荷蓄積開始の走査)の走査パターン141との関係を示す図である。図4Aおよび図4Bにおいて、横軸は時間、縦軸は撮像センサー14の下から上へ向かう方向における位置(y)を示している。図4Aおよび図4Bにおいて131は機械式シャッター13の先端の移動特性を示しており、132は遮光領域cの先端の移動特性を示しており、141は電子先幕の移動特性を示している。図4Aおよび図4Bにおいて時間軸に平行な両矢印が示す時間ΔTが撮像センサー14の上中下の各位置での露光時間を示しており、いずれの位置においてもΔTは均等になる。機械式シャッター13は図示しないばねによって駆動されるため、機械式シャッター13が光路を遮らない状態で保持されている状態が解除されると時間と共に速度が大きくなり時間と共に傾きが急峻になる2次曲線のような時間変化特性で機械式シャッター13の先端部の位置は変化する。機械式シャッター13が撮像センサー14の受光面の遮光を開始してから受光面全てを遮光し終えるまでの期間の序盤においては、遮光領域cの先端は機械式シャッター13自体の先端よりも遅く走行し、当該期間の終盤においては、遮光領域cの先端は機械式シャッター13自体の先端よりも速く走行するため、機械式シャッター13の先端の走行パターン131と遮光領域cの先端の走行パターン132は、図4Aおよび図4Bに示すような関係となる。図4Aの走行パターン132は、射出瞳距離の短い第一のレンズユニットを用いた場合の遮光領域cの先端の走行パターンを示しており、図4Bの走行パターン132は、射出瞳距離の長い第二のレンズユニットを用いた場合の遮光領域cの先端の走行パターンを示している。射出瞳距離が長い第二のレンズユニットを用いた場合の方が、射出瞳距離が短い第一のレンズユニットを用いた場合よりも機械式シャッター13自体の先端の走行パターン131とのずれが小さい。
【0038】
このように遮光領域cの先端の走行パターン132は、機械式シャッター13自体の先端の走行パターン131と一致しないし、レンズ11の射出瞳距離に応じても異なる。また、走行パターン132は絞り12の開口径や、レンズ11の焦点距離や、フォーカス繰り出し量等に応じても異なりうる。露光制御部60のリセット走査の走査パターン141は、このようなレンズユニット10の特性に応じて変化する走行パターン132と同様の形状であるように制御することで撮像センサー14の各領域における露光時間をほぼ一定に保つことができる。したがって、走査制御情報は、レンズユニット10の特性に応じて定義される必要がある。
【0039】
そこで、例えば撮影装置1のメーカーが様々なレンズメーカーの様々な種類のレンズユニット10を撮影装置1に装着した場合の最適な走査制御情報を予め準備しておく。そして、それらの走査制御情報を含むレンズプロファイルを、例えばインターネット上のサーバーからユーザーがダウンロード可能に公開しておく。最適な走査制御情報とはすなわち、レンズユニット10に応じた撮影装置1の機械式シャッター13による遮光領域cの先端の走行パターンと同様の形状のパターンでリセット走査を行うように定義された走査制御情報を意味する。
【0040】
図5は、レンズユニット10の種類ごとに走査制御情報を含むレンズプロファイルが準備されることを説明するための図である。例えば単焦点レンズの場合(例:Lens01,02,03,04)、レンズユニット一つにつき一つの走査制御情報が準備される。ズームレンズ(例:Lens05,06)の場合は、例えば焦点距離に応じた走査制御情報が準備される。なお、絞りの開口径やフォーカス繰り出し量に応じても射出瞳距離は変化しうるため、さらに絞りの開口径やフォーカス繰り出し量に応じて走査制御情報が準備されてもよい。
【0041】
1−3.レンズプロファイルの登録
撮影装置1のユーザーは自身が使用したいレンズユニット10に対応する走査制御情報を含むレンズプロファイルを例えば上述したサーバーからダウンロードし、例えば次のようにして撮影装置1に読み込ませることができる。ユーザーが、ダウンロードしたレンズプロファイルを外部記録媒体200としてのメモリーカードに保存してメモリーカードを撮影装置1に装着した状態で、ユーザーが撮影装置1の操作部40を操作して表示部20にレンズプロファイルの登録メニューを表示させると、カメラ制御部70は例えば図6の画面G10を表示部20に表示する。なお、走査制御情報を含むレンズプロファイルはユーザーがPC等を利用して作成することや編集することができてもよく、ユーザーが作成・編集した走査制御情報を撮影装置1に登録できてもよい。例えばレンズプロファイルの名前(識別情報)をユーザーが自由に変更できてもよい。走査制御情報自体をユーザーが新規作成したりあるいはダウンロードした走査制御情報を編集したりすることができてもよい。
【0042】
画面G10では、外部記録媒体200にレンズプロファイルが記録されているレンズユニットの一覧G1aが提示される。一覧の中からユーザーがレンズプロファイルを登録したいレンズユニットを十字ボタンを操作して選択しOKボタンを押下して決定すると、画面G11をカメラ制御部70は表示部20に表示し、外部記録媒体200からユーザーが選択したレンズユニットに対応するレンズプロファイルを読み出して内部記録媒体35に保存する。例えばユーザーが図5に示すLens06を選択したのであれば、カメラ制御部70はレンズプロファイルとして走査制御情報#8〜#11を外部記録媒体200から読み出して内部記録媒体35に保存する。このように走査制御情報を登録する場合に、カメラ制御部70と外部I/F部30と表示部20は走査制御情報取得手段として機能する。
【0043】
このように本実施形態では、レンズユニットに応じた走査制御情報を外部記録媒体200から取得して内部記録媒体35に保存することができる。そのため、対応する走査制御情報が撮影装置1に予め登録されていない種類のレンズユニットが装着された場合にも外部記録媒体200から当該レンズユニットに対応する走行制御情報を取得し、後述するように電荷蓄積を開始する走査を行う際に当該走査制御情報を適用することができる。その結果、撮像センサーにおいて、露光時間が位置ごとに異なることによって生じる露光ムラを抑制することができる。なお、このようにして登録したレンズプロファイルを内部記録媒体35から削除するメニューも準備されている。
【0044】
1−4.レンズユニットの指定
次に、使用するレンズユニットをユーザーが指定して当該レンズユニットに対応するレンズプロファイルを適用した状態で撮影を行うまでの流れについて図7の画面遷移図を参照しながら説明する。ユーザーが操作部40を操作して使用レンズ設定メニューを表示させると、カメラ制御部70は表示部20に画面G20を表示する。画面G20〜G23は使用するレンズユニット10をユーザーに指定させるメニュー画面である。装着したレンズユニット10が撮影装置1本体との通信機能を備えている場合、カメラ制御部20はレンズユニットの種類を自動検出する。すなわちカメラ制御部70はレンズユニット10と通信してレンズユニット10の属性情報を取得し、装着されているレンズユニット10の識別情報を画面G21のG2dに示すように表示する。そしてカメラ制御部70は、検出されたレンズユニット10に対応する走査制御情報を内部記録媒体35に保存されている走査制御情報の中から選択する。なお、装着されたレンズユニットに対応するレンズプロファイルが内部記録媒体35に保存されていない場合、その旨を伝えるアラートを表示しても良い。
【0045】
レンズユニット10が撮影装置1との通信機能を備えていないとカメラ制御部70が判断した場合は、カメラ制御部70は内部記録媒体35に走査制御情報が保存されているレンズユニットの一覧を画面G22のG2aに示すように表示する。ユーザーが十字ボタンを操作して一覧の中から使用するレンズユニットを選択しOKボタンを押下して決定すると、カメラ制御部70は画面G23のG2aのように選択されたレンズユニットの識別情報を表示し、選択されたレンズプロファイルに含まれる走査制御情報を撮影時に適用する走査制御情報として設定する。レンズユニットによっては焦点距離やその他の撮影条件の組み合わせごとに複数の走査制御情報を有している場合があるので、その場合は、焦点距離やその他の撮影条件(絞り値、フォーカス繰り出し量等)の選択肢をさらに案内してユーザーに選択させることでカメラ制御部70はそれらの撮影条件に適した走査制御情報を設定することができる。例えば画面G23のG2bは、焦点距離の選択肢をさらに案内することを示している。本実施形態ではこのようにしてレンズユニットの指定を受け付けることができ、カメラ制御部70と操作部40と表示部20が受付手段として機能する。
【0046】
1−5.走査制御情報に基づいた撮影
上記したように走査制御情報が設定された状態で、ユーザーが操作部40のシャッターボタンを全押しすると、走査制御情報によって定められるタイミングにおいて露光制御部60が撮像センサー14の各ラインにリセット信号を出力する。リセット信号が入力されると、撮像センサー14の対応するラインを構成する全画素において、蓄積されていた電荷が一旦全て破棄され、その後に再び電荷の蓄積が開始される。なお、レンズユニット10が撮影装置1との通信機能を有する場合、シャッターボタンの全押しに先立ってシャッターボタンが半押しされた際に、カメラ制御部70はレンズユニット10と通信して撮影条件を取得するようにしてもよい。撮影条件には、レンズユニット10におけるフォーカス繰り出し量、絞り12の開口径、焦点距離(ズーム位置)等が含まれている。そしてカメラ制御部70は、レンズユニット10の撮影条件に応じた走査制御情報を自動的に選択し適用するようにしてもよい。
【0047】
カメラ制御部70は、撮像センサー14上の最初のラインにリセット信号を印加したタイミング(図4Aに示す例ではT)と機械式シャッター13の影が撮像センサー14上の最初のラインに到達するタイミング(図4Aに示す例ではT)との間の時間がシャッター速度(秒時)に対応するように、シャッター制御部50に対して制御信号を出力して機械式シャッター13の移動を開始させる。カメラ制御部70とシャッター制御部50は撮影制御手段に相当する。機械式シャッター13の走行開始タイミングは、シャッター速度によって、電荷の蓄積開始タイミングよりも先行する場合もあれば、電荷の蓄積開始タイミングより後になる場合もある。シャッター速度によっては機械式シャッター13の走行開始タイミングは電荷蓄積開始タイミングより前になる場合もあるが、その場合も、各領域においては電荷蓄積が開始された後に機械式シャッター13によって遮光されることになる。機械式シャッター13が遮光し終えた撮像センサー14の領域の画像データを露光制御部60はラインごとに順に記憶部15に読み出す。記憶部15に読み出された画像データを画像生成部80が取得して所定の処理を施し、外部I/F部30に接続された外部記録媒体200としてのメモリーカードに保存することができる。
【0048】
このように本実施形態では、使用するレンズユニットをユーザーに指定させることができるため、例えばレンズユニット側が撮影装置1と通信する機能を備えていない場合であってもユーザーが指定したレンズユニットに対応する走査制御情報に基づいて撮影時の電荷蓄積開始タイミングを走査することができる。その結果、露光ムラを軽減できる。
なお、様々なレンズユニットに応じた走査制御情報は撮影装置1と同一機種の標準機を用いて作成される。しかし撮影装置1の個体ごとに機械式シャッター13の走行パターンは異なりうる。そのため、標準機では最適となる走査制御情報を撮影装置1にそのまま適用しても露光ムラを十分に軽減できない可能性がある。そこで、例えば撮影装置1の出荷前に、標準機においてある特定のレンズユニットを用いて撮影した場合の遮光領域の先頭の走行パターンt=f0(y)と、撮影装置1において当該特定のレンズユニットを用いて撮影した場合の遮光領域の先頭の走行パターンt=f1(y)と、を測定しておき、走行パターンf0,f1を撮影装置1に保存しておくようにしてもよい。ここでyは機械式シャッターの移動方向における位置を示しtは時間を示している。そして、ユーザーが使用するレンズユニットに対応する走査制御情報が示す走査パターンであって標準機を用いて作成された走査パターンt=f2(y)を撮影装置1に適用する際に、保存されている走行パターンf0,f1に基づいて走査パターンf2を補正し、補正後の走査パターンf2'を用いて撮影装置1において電荷蓄積開始の走査の制御を行うようにしてもよい。具体的には例えば、撮像センサーの位置ごとの走行パターンf0における時間と走行パターンf1における時間との比が、撮像センサーの位置ごとの補正前の走査パターンf2における時間と補正後の走査パターンf2'における時間との比と等しくなるように、次式で補正後の走査パターンf2'を算出するようにしてもよい。f2'(y)={f1(y)/f0(y)}・f2(y)
【0049】
2.第二実施形態
第二実施形態が第一実施形態と相違する点は、走査制御情報がレンズユニットごとではなく、図8Aに示すようにレンズユニットのマウント名と焦点距離の組み合わせごとに定義されている点である。本実施形態では、撮影装置1のマウントに様々な種類のマウントのレンズユニットであって様々な焦点距離のレンズユニットを取り付けた場合に、レンズユニットのマウントの種類と焦点距離との組み合わせごとに撮影装置1における最適な走査制御情報が定義されている。撮影装置1のマウント100にレンズユニット10を装着する場合、焦点距離が同じであっても、レンズの構成により射出瞳距離は異なる可能性があるため、マウントの種類が異なると射出瞳距離は異なる可能性がある。そのため、第二実施形態ではレンズユニットのマウントの種類と焦点距離との組み合わせごとに、撮影装置1に当該レンズユニットを装着して撮影する場合の最適な走行制御情報を定義しておき、ユーザーには当該組み合わせを選択させる。
ユーザーが所有する撮影装置専用ではないレンズユニット(通常レンズマウントの形状が異なる)について、レンズユニットと撮影装置とを接続可能にするレンズマウント変換アダプターが市販されている。このアダプターを用いて他の撮影装置専用のレンズユニットを使用して撮影を楽しむユーザーが多い。このようなことが可能な理由は、(1)レンズのイメージサークルが撮影装置の撮像センサーを充分カバーする大きさを有していること、(2)アダプターを装着することで光学的にレンズの焦点距離位置を適切に補正し、撮像センサー面に被写体像を適切に結像させること可能になること、の2項目が満たされるためである。この結果,異なるレンズマウントのレンズでしかも焦点距離の異なるレンズを多数使用することが可能になる。このような状況にあって、アダプターを接続することで撮影装置に装着して使用可能になるレンズは数百種類に及ぶことになる。一般にユーザーは、一つの撮影装置に対し複数の異なるマウントのレンズを使う習慣が希薄である。そのためユーザーにレンズを指定させる場合は、まずレンズマウントを選択させて、次にレンズの焦点距離を選択させる方が、例えば射出瞳距離をユーザーに指定させる場合と比較してユーザーにとって利便性が高く、膨大なプロファイルの中から所望のレンズを指定させる方法としてより適切な方法であると言える。
【0050】
また、一般的には焦点距離が長いほど射出瞳距離も長くなる傾向にあり、焦点距離が短いほど射出瞳距離も短くなる傾向にある。射出瞳距離が長いほど、機械式シャッター13自体の先端の走行パターン131と遮光領域cの先端の走行パターン132とのずれは小さくなる(図4A図4B参照)。逆に、射出瞳距離が短いほど、当該ずれは大きくなる。そのため第二実施形態では、焦点距離が短いほど小さい単位で走査制御情報を定義し、焦点距離が長いほど大きい単位で走査制御情報を定義する。なお、焦点距離によらず全て同じ単位で走査制御情報を定義してもよい。
【0051】
本実施形態では、図8Aに示すように、焦点距離が5mm〜100mmの間は1mm刻みでマウントごとに走査制御情報を定義し、100mm〜200mmの間は5mm刻みでマウントごとに走査制御情報を定義し、200mmを超えると50mm刻みでマウントごとに走査制御情報を定義する。そして第一実施形態と同様に例えばインターネット上のサーバーにおいてダウンロード可能に公開することにより、ユーザーが所望のマウントと焦点距離との組み合わせに対応する走査制御情報をダウンロードすることができる。そしてユーザーは外部記録媒体200にダウンロードした走査制御情報を保存し、撮影装置1の内部記録媒体35に読み込ませることができる。
【0052】
マウントと焦点距離との組み合わせに応じた走査制御情報を内部記録媒体35に保存した後、ユーザーが操作部40を走査してレンズプロファイル候補選択メニューを表示させる指示を与えると、カメラ制御部70は図9の画面G30を表示する。画面G30はレンズマウントとレンズの焦点距離を選択させる画面である。デフォルトの動作として自動検出が試みられる。レンズユニット10側が撮影装置1との通信機能を備えている場合、カメラ制御部70はレンズユニット10からレンズユニットの属性情報を取得する。レンズユニットの属性情報には、マウント名と焦点距離とが含まれる。カメラ制御部70はマウント名と焦点距離とを取得すると、取得したマウント名と焦点距離との組み合わせに対応する走査制御情報が内部記録媒体35に保存されているか否かを判断する。カメラ制御部70は、当該走査制御情報が内部記録媒体35に保存されていると判断した場合は対応する走査制御情報を選択し、画面G31のG3a、G3b、G3cに示すようにマウント名と焦点距離とともに選択された走査制御情報の識別情報を表示する。画面G31が表示されている状態でユーザーがOKボタンを押下するとカメラ制御部70は次回の撮影時に適用する走査制御情報として選択された走査制御情報を設定する。
【0053】
レンズユニット10が撮影装置1との通信機能を備えていないとカメラ制御部70が判断した場合、カメラ制御部70は画面G32および画面G33を表示してユーザーに手動でマウント名と焦点距離とを選択させる。ユーザーは十字ボタンやOKボタンを押下してマウント名と焦点距離を選択し決定することができる。このときカメラ制御部70は、焦点距離の選択肢を、焦点距離が短いほど小さい単位で選択可能に案内する。具体的には本実施形態においては、5〜100mmの間は画面G33のG3bに示すように1mm刻みで選択可能に案内し、100〜200mmの間は5mm刻みで選択可能に案内し、200mmを超える焦点距離は50mm刻みで選択可能に案内する。焦点距離が短い場合は長い場合よりも撮像センサーの位置ごとの露光時間の誤差が大きくなる傾向にある。そのため、焦点距離が基準となる距離以下の場合は、当該距離よりも大きい場合よりも小さい単位で選択可能に案内することにより、各焦点距離に対応したより適切な走査制御情報を適用して電荷蓄積開始の走査を行うことができる。
【0054】
ここで、内部記録媒体35に保存されている走査制御情報が図8Bに示す一覧であるとする。そしてユーザーが画面G32および画面G33で、マウント名としてマウントBを選択し焦点距離として35mmを選択したとする。マウントBの焦点距離35mmの組み合わせに対応する走査制御情報は図8Bに示すように内部記録媒体35に保存されていないため、内部記録媒体35に保存されているマウントBに対応する走査制御情報のうち焦点距離が35mmに近い走査制御情報を候補として画面G34に示すように表示する。焦点距離が最も近いものを一つだけ表示してもよいし、ユーザーが指定した焦点距離から所定距離以内にあるものが複数存在する場合は、画面G34のG3cに示すように複数の候補を提示してもよい。ユーザーが指定した焦点距離に近い順に所定個の走査制御情報を提示してもよい。ユーザーが提示された候補の中から十字ボタンを操作して所望の走査制御情報を選択しOKボタンを押下すると、ユーザーが指定した走査制御情報をカメラ制御部70は撮影時に適用する走査制御情報として設定する。マウント名と焦点距離の組み合わせに対応する走査制御情報が内部記録媒体35に保存されていない場合に、焦点距離が同じであっても異なるマウントのレンズユニットに対応する走査制御情報が適用される場合や、同じマウントであってもユーザーが選択した焦点距離と所定量を超えて大きく異なる焦点距離のレンズユニットに対応する走査制御情報が適用される場合と比較すると、本実施形態ではより適した走査制御情報を適用して撮影を行うことができる。
【0055】
このように、マウント名と焦点距離の組み合わせごとに走査制御情報を定義しておき、ユーザーからは当該組み合わせを指定させることで、当該組み合わせに適した走査制御情報を選択し撮影時に適用することができる。レンズユニットを撮影装置のマウントに装着した状態における射出瞳距離をユーザーは容易に知ることはできないが、レンズユニットのマウント名と焦点距離であればユーザーが容易に知りうる情報であるため、これらの組み合わせをユーザーに指定させることは射出瞳距離をユーザーに指定させることより容易である。なお、レンズユニットのマウント名と焦点距離に加えてさらに、機械式シャッター13による遮光領域cの走行パターンを変化させる他の要因(絞り12の開口径やフォーカス繰り出し量等)との組み合わせに応じて走査制御情報が定義されていてもよく、ユーザーにはそれらの組み合わせを指定させることができてもよい。そしてそれらの組み合わせに応じた走査制御情報を適用して撮影を行うことができてもよい。
【0056】
3.第三実施形態
本実施形態が第一実施形態および第二実施形態と相違する点は、装着されたレンズユニットに応じた走査制御情報を選択する手法である。本実施形態では、内部記録媒体35に保存されている複数の走査制御情報を適用して複数回撮影を行い、撮影の結果得られた複数の画像データのうち露光ムラが最も少なく撮影できた画像を選択する。そしてその画像を撮影する際に用いた走査制御情報を次回の撮影時に適用する走査制御情報として選択する。
【0057】
そのためにまず、カメラ制御部70は図10に示す画面G40を表示する。画面G40は、レンズユニットを装着してシートを撮影する準備を行うことをユーザーに促し、準備完了後にOKボタンを押下することを案内する画面である。ユーザーは、例えば図11Aに示すように、撮影装置1を三脚に固定し、壁などに固定されたシートSを撮影範囲の全体に含むように撮影装置1の撮影範囲を調整した後、OKボタンを押下する。なお、シートSは表面が無地のシートであり、表面からの反射光の輝度分布がほぼ均一な状態でレンズユニットに反射光が入射するように照明等が調整される必要がある。画面G40が表示された状態でOKボタンが押下されたことを検出するとカメラ制御部70は画面G41を表示し、内部記録媒体35に保存されている各走査制御情報を順に適用して連写を行った後、選定処理を行う。画面G41は連写とその後の選定処理の進捗状況を案内する画面である。なお、連写撮影の際に適用されるシャッター速度は撮影装置1の最高シャッター速度(もしくは最高シャッター速度に近い高速秒時のシャッター速度の秒時)である。シャッター速度が高速の場合により露光ムラが顕著になるためである(撮像センサー14の位置ごとの露光時間の誤差が露光時間全体に対して占める割合が大きくなるため)。
【0058】
カメラ制御部70は、複数の画像データのそれぞれにおいて、機械式シャッターの走行方向(=電荷蓄積開始の走査方向)と直交する方向における中央部であって、機械式シャッターの走行方向における各位置の輝度値を取得する。図11B図11C図11Dは、機械式シャッターの走行方向における位置ごとの輝度値を示す図である。図11Bは、機械式シャッターの走行方向における画像の中央部が最も輝度値が高く(すなわち明るく)、機械式シャッターの走行方向における両端部に向かうほど輝度値が低い(すなわち暗い)ことを示している。図11Cは、機械式シャッターの走行方向における画像の上部(撮像センサー14の下部)が最も輝度値が高く、下部(撮像センサー14の上部)に向かうほど輝度値が低いことを示している。図11Dは、機械式シャッターの走行方向における画像の下部(撮像センサー14の上部)が最も輝度値が高く、上部(撮像センサー14の下部)に向かうほど輝度値が低いことを示している。
【0059】
図11Bに示すように機械式シャッターの走行方向における中央部を基準にして端部に向かうほど輝度値が対称に低くなっていく画像が、機械式シャッターの走行方向における各領域の露光時間がほぼ一定の状態で撮影できたことを示している。なお、中央部を基準にして端部に向かって輝度値が低下するのは、レンズの特性によりレンズユニットの光軸を中心に同心円状に光量が低下するためである。輝度値の分布が図11Cに示す状態の場合、レンズユニットの特性により端部の光量が低下するために輝度値が低下することを上回る程度に画像の上部領域が下部領域と比較して露光時間が長いために上部領域の輝度値が高くなっていることを示している。輝度値の分布が図11Dに示す状態の場合、レンズユニットの特性により端部の光量が低下するために輝度値が低下することを上回る程度に画像の下部領域が上部領域と比較して露光時間が長いために下部領域の輝度値が高くなっていることを示している。
【0060】
カメラ制御部70は各画像データに基づいて、中央部を基準にして機械式シャッターの走行方向における位置ごとの輝度値が最も対称に近い画像を撮影した際に適用された走査制御情報を選定する。この場合にカメラ制御部70は選定手段として機能する。そしてカメラ制御部70は、選定した走査制御情報の識別情報を図10の画面G42に示すように案内する。画面G42が表示された状態でユーザーがOKボタンを押下すると、次回の撮影時に適用する走査制御情報としてカメラ制御部70は設定する。
【0061】
このように、本実施形態では、内部記録媒体35内に保存されている走査制御情報のうち装着されているレンズユニットに最適な走査制御情報を撮影装置1に自動的に選定させることができる。このため、第一実施形態や第二実施形態のようにユーザーが手動でレンズユニット10に最適な走査制御情報を選択する必要がない。また機械式シャッター13の走行特性が経時変化した場合も、常に適する走査制御情報を選定することができるため、有益である。
【0062】
4.他の実施形態
尚、本発明の技術的範囲は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記実施形態においては、シャッター速度の値や焦点距離の値にかかわらず常に最適な走査制御情報がプロファイルが適用される構成を説明したが、例えばシャッター速度が所定以上に高速の場合の撮影時にのみ、レンズユニット10に応じた走査制御情報が適用されてもよい。また、焦点距離が所定値以下に短いレンズユニット10を用いた撮影時にのみレンズユニット10に応じた走査制御情報が適用されてもよい。シャッター速度が低速の場合は、撮像センサー14の位置ごとの露光時間の誤差が露光時間全体に対して占める割合が小さくなるので露光ムラの発生が目立たなくなるためである。また、レンズユニット10の焦点距離が所定値より長い場合は、撮像センサー14の位置ごとの露光時間の誤差が少なくなるため、露光ムラの発生が目立たなくなるためである。
【0063】
また、内部記録媒体35に保存できる走査制御情報の個数は有限であるので、保存する走査制御情報の管理方法を工夫する必要がある。例えば第一実施形態ではレンズユニットの種類ごとに別々に走査制御情報を保存しているが、異なる種類のレンズユニットであっても走査制御情報の内容が近いもの同士は同じ走査制御情報を共有するようにしてもよい。実体として1つの走査制御情報を異なる複数のレンズユニットの走査制御情報として共有することにより、内部記録媒体35の使用量を節約できる。レンズユニットの識別情報と、当該レンズユニットの識別情報に対応する共有の走査制御情報との対応付けをテーブルで管理しておくことにより、共有化が実現である。例えば新規に走査制御情報を登録する際に、内部記録媒体35に保存されている走査制御情報をスキャンし新規登録する走査制御情報の内容とある程度同じであれば上記のように共有化するようにしてもよい。
【0064】
また、上記実施形態では撮影装置としてミラーレスデジタルカメラを例に用いて説明したが、本発明はミラーレスデジタルカメラへの適用に限定されるものではない。レンズ交換式の従来の一眼レフカメラにももちろん本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0065】
1…撮影装置、10…レンズユニット、11…レンズ、13…機械式シャッター、14…撮像センサー、15…記憶部、20…表示部、30…外部I/F部、35…内部記録媒体、40…操作部、43…フォーカス制御部、45…絞り調整部、50…シャッター制御部、60…露光制御部、80…画像生成部、100…マウント、200…外部記録媒体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11