(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、使用する図面は、説明する部分が認識可能な状態となるように、適宜拡大または縮小して表示している。
【0023】
なお、以下の形態において、例えば「基板上に」と記載された場合、基板の上に接するように配置される場合、または基板の上に他の構成物を介して配置される場合、または基板の上に一部が接するように配置され、一部が他の構成物を介して配置される場合を表すものとする。
【0024】
本実施形態では、液晶装置として、薄膜トランジスター(TFT:Thin Film Transistor)を画素のスイッチング素子として備えたアクティブマトリックス型の液晶装置を例に挙げて説明する。この液晶装置は、例えば、投射型表示装置(液晶プロジェクター)の光変調素子(液晶ライトバルブ)として好適に用いることができるものである。
【0025】
<液晶装置の構成>
図1は、液晶装置の構成を示す模式平面図である。
図2は、
図1に示す液晶装置のH−H’線に沿う模式断面図である。
図3は、液晶装置の電気的な構成を示す等価回路図である。以下、液晶装置の構成を、
図1〜
図3を参照しながら説明する。
【0026】
図1及び
図2に示すように、本実施形態の液晶装置100は、対向配置された素子基板10(第1基板)および対向基板20(第2基板)と、これら一対の基板によって挟持された液晶層15とを有する。素子基板10を構成する第1基材10a、および対向基板20を構成する第2基材20aは、例えば、ガラス基板、石英基板などの透明基板が用いられている。
【0027】
素子基板10は対向基板20よりも大きく、両基板は、対向基板20の外周に沿って配置されたシール材14を介して接合されている。平面視で環状に設けられたシール材14の内側で、素子基板10は対向基板20の間に正または負の誘電異方性を有する液晶が封入されて液晶層15を構成している。シール材14は、例えば熱硬化性又は紫外線硬化性のエポキシ樹脂などの接着剤が採用されている。シール材14には、一対の基板の間隔を一定に保持するためのスペーサー(図示省略)が混入されている。
【0028】
シール材14の内縁より内側には、複数の画素Pが配列した表示領域Eが設けられている。表示領域Eは、表示に寄与する複数の画素Pに加えて、複数の画素Pを囲むように配置されたダミー画素を含むとしてもよい。また、
図1及び
図2では図示を省略したが、表示領域Eにおいて複数の画素Pをそれぞれ平面的に区分する遮光膜(ブラックマトリックス;BM)が対向基板20に設けられている。
【0029】
素子基板10の1辺部に沿ったシール材14と該1辺部との間に、データ線駆動回路22が設けられている。また、該1辺部に対向する他の1辺部に沿ったシール材14と表示領域Eとの間に、検査回路25が設けられている。さらに、該1辺部と直交し互いに対向する他の2辺部に沿ったシール材14と表示領域Eとの間に走査線駆動回路24が設けられている。該1辺部と対向する他の1辺部に沿ったシール材14と検査回路25との間には、2つの走査線駆動回路24を繋ぐ複数の配線29が設けられている。
【0030】
対向基板20における環状に配置されたシール材14と表示領域Eとの間には、遮光膜18(見切り部)が設けられている。遮光膜18は、例えば、遮光性の金属あるいは金属酸化物などからなり、遮光膜18の内側が複数の画素Pを有する表示領域Eとなっている。なお、
図1では図示を省略したが、表示領域Eにおいても複数の画素Pを平面的に区分する遮光膜が設けられている。
【0031】
これらデータ線駆動回路22、走査線駆動回路24に繋がる配線は、該1辺部に沿って配列した複数の外部接続用端子61に接続されている。以降、該1辺部に沿った方向をX方向とし、該1辺部と直交し互いに対向する他の2辺部に沿った方向をY方向として説明する。
【0032】
図2に示すように、第1基材10aの液晶層15側の表面には、画素Pごとに設けられた透光性の画素電極27およびスイッチング素子である薄膜トランジスター(TFT:Thin Film Transistor、以降、「TFT30」と呼称する)と、信号配線と、これらを覆う第1無機配向膜28とが形成されている。
【0033】
また、TFT30における半導体層に光が入射してスイッチング動作が不安定になることを防ぐ遮光構造が採用されている。本発明における素子基板10は、少なくとも画素電極27、TFT30、第1無機配向膜28を含むものである。
【0034】
対向基板20の液晶層15側の表面には、遮光膜18と、これを覆うように成膜された平坦化層33と、平坦化層33を覆うように設けられた対向電極31と、対向電極31を覆う第2無機配向膜32とが設けられている。本発明における対向基板20は、少なくとも対向電極31、第2無機配向膜32を含むものである。
【0035】
遮光膜18は、
図1に示すように、表示領域Eを取り囲むと共に、平面的に走査線駆動回路24、検査回路25と重なる位置に設けられている(図示簡略)。これにより対向基板20側からこれらの駆動回路を含む周辺回路に入射する光を遮蔽して、周辺回路が光によって誤動作することを防止する役目を果たしている。また、不必要な迷光が表示領域Eに入射しないように遮蔽して、表示領域Eの表示における高いコントラストを確保している。
【0036】
平坦化層33は、例えば酸化シリコンなどの無機材料からなり、光透過性を有して遮光膜18を覆うように設けられている。このような平坦化層33の形成方法としては、例えばプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法などを用いて成膜する方法が挙げられる。
【0037】
対向電極31は、例えばITO(Indium Tin Oxide)などの透明導電膜からなり、平坦化層33を覆うと共に、
図1に示すように対向基板20の四隅に設けられた上下導通部26により素子基板10側の配線に電気的に接続している。
【0038】
画素電極27を覆う第1無機配向膜28および対向電極31を覆う第2無機配向膜32は、液晶装置100の光学設計に基づいて選定される。例えば、気相成長法を用いてSiOx(酸化シリコン)などの無機材料を成膜して、負の誘電異方性を有する液晶分子に対して略垂直配向させた無機配向膜が挙げられる。
【0039】
このような液晶装置100は透過型であって、電圧が印加されない時の画素Pの透過率が電圧印加時の透過率よりも大きくて明表示となるノーマリーホワイトや、電圧が印加されない時の画素Pの透過率が電圧印加時の透過率よりも小さくて暗表示となるノーマリーブラックモードの光学設計が採用される。光の入射側と射出側とにそれぞれ偏光素子が光学設計に応じて配置されて用いられる。
【0040】
図3に示すように、液晶装置100は、少なくとも表示領域Eにおいて互いに絶縁されて直交する複数の走査線3aおよび複数のデータ線6aと、容量線3bとを有する。走査線3aが延在する方向がX方向であり、データ線6aが延在する方向がY方向である。
【0041】
走査線3aとデータ線6aならびに容量線3bと、これらの信号線類により区分された領域に、画素電極27と、TFT30と、容量素子16とが設けられ、これらが画素Pの画素回路を構成している。
【0042】
走査線3aはTFT30のゲートに電気的に接続され、データ線6aはTFT30のデータ線側ソースドレイン領域(ソース領域)に電気的に接続されている。画素電極27は、TFT30の画素電極側ソースドレイン領域(ドレイン領域)に電気的に接続されている。
【0043】
データ線6aは、データ線駆動回路22(
図1参照)に接続されており、データ線駆動回路22から供給される画像信号D1,D2,…,Dnを画素Pに供給する。走査線3aは、走査線駆動回路24(
図1参照)に接続されており、走査線駆動回路24から供給される走査信号SC1,SC2,…,SCmを各画素Pに供給する。
【0044】
データ線駆動回路22からデータ線6aに供給される画像信号D1〜Dnは、この順に線順次で供給してもよく、互いに隣り合う複数のデータ線6a同士に対してグループごとに供給してもよい。走査線駆動回路24は、走査線3aに対して、走査信号SC1〜SCmを所定のタイミングで供給する。
【0045】
液晶装置100は、スイッチング素子であるTFT30が走査信号SC1〜SCmの入力により一定期間だけオン状態とされることで、データ線6aから供給される画像信号D1〜Dnが所定のタイミングで画素電極27に書き込まれる構成となっている。そして、画素電極27を介して液晶層15に書き込まれた所定レベルの画像信号D1〜Dnは、画素電極27と液晶層15を介して対向配置された対向電極31との間で一定期間保持される。
【0046】
保持された画像信号D1〜Dnがリークするのを防止するため、画素電極27と対向電極31との間に形成される液晶容量と並列に容量素子16が接続されている。容量素子16は、TFT30の画素電極側ソースドレイン領域と容量線3bとの間に設けられている。容量素子16は、2つの容量電極の間に誘電体層を有するものである。
【0047】
図4は、液晶装置の構造を示す模式断面図である。以下、液晶装置の構造を、
図4を参照しながら説明する。なお、
図4は、各構成要素の断面的な位置関係を示すものであり、明示可能な尺度で表されている。
【0048】
図4に示すように、液晶装置100は、一対の基板のうち一方の基板である素子基板10と、これに対向配置される他方の基板である対向基板20とを備えている。素子基板10を構成する第1基材10a、及び対向基板20を構成する第2基材20aは、上記したように、例えば、石英基板等によって構成されている。
【0049】
第1基材10a上には、チタン(Ti)やクロム(Cr)等からなる下側遮光膜3cが形成されている。下側遮光膜3cは、平面的に格子状にパターニングされており、各画素の開口領域を規定している。なお、下側遮光膜3cは、走査線3aの一部として機能するようにしてもよい。第1基材10a及び下側遮光膜3c上には、シリコン酸化膜等からなる下地絶縁層11aが形成されている。
【0050】
下地絶縁層11a上には、TFT30及び走査線3a等が形成されている。TFT30は、例えば、LDD(Lightly Doped Drain)構造を有しており、ポリシリコン等からなる半導体層30aと、半導体層30a上に形成されたゲート絶縁膜11gと、ゲート絶縁膜11g上に形成されたポリシリコン膜等からなるゲート電極30gとを有する。上記したように、走査線3aは、ゲート電極30gとしても機能する。
【0051】
半導体層30aは、例えば、リン(P)イオン等のN型の不純物イオンが注入されることにより、N型のTFT30として形成されている。具体的には、半導体層30aは、チャネル領域30cと、データ線側LDD領域30s1と、データ線側ソースドレイン領域30sと、画素電極側LDD領域30d1と、画素電極側ソースドレイン領域30dとを備えている。
【0052】
チャネル領域30cには、ボロン(B)イオン等のP型の不純物イオンがドープされている。その他の領域(30s1,30s,30d1,30d)には、リン(P)イオン等のN型の不純物イオンがドープされている。このように、TFT30は、N型のTFTとして形成されている。
【0053】
ゲート電極30g、下地絶縁層11a、及び走査線3a上には、シリコン酸化膜等からなる第1層間絶縁層11bが形成されている。第1層間絶縁層11b上には、容量素子16が設けられている。具体的には、TFT30の画素電極側ソースドレイン領域30d及び画素電極27に電気的に接続された画素電位側容量電極としての第1容量電極16aと、固定電位側容量電極としての容量線3b(第2容量電極16b)の一部とが、誘電体膜16cを介して対向配置されることにより、容量素子16が形成されている。
【0054】
容量線3b(第2容量電極16b)は、例えば、Ti(チタン)、Cr(クロム)、W(タングステン)、Ta(タンタル)、Mo(モリブデン)等の高融点金属のうち少なくとも一つを含む、金属単体、合金、金属シリサイド、ポリシリサイド、これらを積層したもの等からなる。或いは、Al(アルミニウム)膜から形成することも可能である。
【0055】
第1容量電極16aは、例えば、導電性のポリシリコン膜からなり容量素子16の画素電位側容量電極として機能する。ただし、第1容量電極16aは、容量線3bと同様に、金属又は合金を含む単一層膜又は多層膜から構成してもよい。第1容量電極16aは、画素電位側容量電極としての機能のほか、コンタクトホールCNT52、中継層55、コンタクトホールCNT53、CNT51を介して、画素電極27とTFT30の画素電極側ソースドレイン領域30d(ドレイン領域)とを中継接続する機能を有する。
【0056】
容量素子16上には、第2層間絶縁層11cを介してデータ線6aが形成されている。データ線6aは、第1層間絶縁層11b及び第2層間絶縁層11cに開孔されたコンタクトホールCNT54を介して、半導体層30aのデータ線側ソースドレイン領域30s(ソース領域)に電気的に接続されている。
【0057】
データ線6a上には、第3層間絶縁層11dを介して画素電極27が形成されている。画素電極27は、第2層間絶縁層11c及び第3層間絶縁層11dに開孔されたコンタクトホールCNT52、CNT53、中継層55を介して第1容量電極16aに接続されることにより、半導体層30aの画素電極側ソースドレイン領域30d(ドレイン領域)に電気的に接続されている。なお、画素電極27は、例えば、ITO膜等の透明導電性膜から形成されている。
【0058】
画素電極27及び第3層間絶縁層11d上には、酸化シリコン(SiO
2)などの無機材料を斜方蒸着した第1無機配向膜28が設けられている。第1無機配向膜28上には、シール材14(
図1及び
図2参照)により囲まれた空間に液晶等が封入された液晶層15が設けられている。
【0059】
一方、第2基材20a上には、その全面に渡って対向電極31が設けられている。対向電極31上(
図4では下側)には、酸化シリコン(SiO
2)などの無機材料を斜方蒸着した第2無機配向膜32が設けられている。対向電極31は、上述の画素電極27と同様に、例えばITO膜等の透明導電性膜からなる。
【0060】
液晶層15は、画素電極27と対向電極31との間で電界が生じていない状態で無機配向膜28,32によって所定の配向状態をとる。シール材14は、素子基板10及び対向基板20をそれらの周辺で貼り合わせるための、例えば光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂からなる接着剤であり、両基板間の距離を所定値とするためのグラスファイバー或いはガラスビーズ等のスペーサーが混入されている。
【0061】
<無機配向膜の構成>
図5は、液晶装置のうち主に無機配向膜及びシール材及び封止材の構成を示す模式平面図である。
図6は、
図5に示す液晶装置のA−A’線に沿う模式断面図である。以下、液晶装置のうち主に無機配向膜及びシール材及び封止材の平面的に重なる領域について、
図5及び
図6を参照しながら説明する。なお、第1基材10aから第3層間絶縁層11dまでを第1基材10aと称して説明する。
【0062】
図5及び
図6に示すように、液晶装置100の素子基板10を構成する第1基材10a上には、画素電極27が設けられている(
図6では簡略化して図示する)。画素電極27が設けられた第1基材10a上には、上記したように、酸化シリコン(SiO
2)などの無機材料を斜方蒸着した第1無機配向膜28が設けられている。
【0063】
詳述すると、第1無機配向膜28の外縁は、平面視で、少なくともシール材14の一部と重なる領域、及び、シール材14が開口する開口領域14aと重なる領域に延在して設けられている。第1無機配向膜28は、柱状構造物28a(カラム)を有している。
【0064】
第1無機配向膜28とシール材14とが平面視で重なる量は、シール材14の幅の1/3〜1/2程度である。このように、シール材14の一部と重なるように第1無機配向膜28を設けることにより、素子基板10(第1無機配向膜28)とシール材14との密着力を向上させることができる。第1無機配向膜28の厚みは、例えば、750Åである。
【0065】
複数の柱状構造物28aは、第1基材10aに対し傾斜して設けられており、傾斜角度によって液晶層15の液晶分子にプレチルト角が付与されるようになっている。ここで、プレチルト角とは、第1基材10aの表面に直交する方向と液晶分子の長軸方向とのなす角度をいう。封止材17は、シール材14の開口領域において液晶層15を封止するために用いられる。
【0066】
図6に示すように、第1無機配向膜28の表面には、表面処理が施された表面層41が設けられている。表面層41の厚みは、例えば、2nm〜20nmである。表面層41は、アルキル基41aを有している。ここで、アルキル基41aとは、有機官能基を備えたアルキル基をいう。
【0067】
有機官能基がアルキル(C
nH
2n+1)である場合、炭素数が多くなるほど分子量が大きくなって長鎖になる。また、炭素数が少なくなるほど分子量が小さくなって短鎖になる。長鎖の有機官能基とは、炭素数nが8以上の有機官能基をいう(n≧8)。短鎖の有機官能基とは、炭素数nが1又は2の有機官能基をいう(n≦2)。
【0068】
一方、対向基板20を構成する第2基材20a上(第2基材20aの液晶層15側の面)には、対向電極31が設けられている。対向電極31の表面には、素子基板10側と同様に、柱状構造物32aを有する第2無機配向膜32と表面層41とが設けられている。
【0069】
表面層41には、アルキル基41aが設けられている。このように、第1無機配向膜28及び第2無機配向膜32にアルキル基41aが付与されているので、この領域の被覆率が高まり耐光性を向上させることができる。よって、例えば、画素電極27に強い光を当てる場合でも、第1無機配向膜28と液晶との界面で、化学反応による液晶の分解が発生することを抑えることができる。
【0070】
また、封止材17の下に第1無機配向膜28が設けられているので、第1無機配向膜28を構成する柱状構造物28a(カラム)の凹凸に倣って、表面層41上を凹凸にすることが可能となる。よって、表面層41上における開口領域14aに封止材17を設けた際、表面層41の凹凸により封止材17との密着面積を増やすことができ、素子基板10から封止材17が剥がれることを抑えることができる。
【0071】
なお、シール材14の外縁から封止材17が飛び出す量は、例えば、100μm〜150μmである。また、対向基板20側の第2無機配向膜32の形状や表面層41の平面的な形状は、素子基板10側の形状と同様である。
【0072】
<液晶装置の製造方法>
図7は、液晶装置の製造方法を工程順に示すフローチャートである。
図8は、液晶装置の製造方法のうち一部の製造方法を示す模式図である。以下、液晶装置の製造方法を、
図7及び
図8を参照しながら説明する。
【0073】
最初に、素子基板10側の製造方法を説明する。なお、第1基材10aから第3層間絶縁層11dまでを、第1基材10aと称して説明する。まず、ステップS11では、ガラス基板などからなる第1基材10a上に、周知の成膜技術、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を用いて、画素電極27等を形成する。
【0074】
ステップS12(無機配向膜形成工程)では、第1無機配向膜28を形成する。具体的には、
図8(a)に示すように、画素電極27が設けられた第3層間絶縁層11d(第1基材10a)上の全体に、酸化シリコンなどの無機材料を斜方蒸着することで、柱状構造物28aを有する第1無機配向膜28を形成する。
【0075】
ステップS13(表面層形成工程)では、第1無機配向膜28に表面層41を形成する。具体的には、
図8(b)に示すように、化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition:以下CVDという。)を用いる。以下、
図8(b)を参照しながら、CVD装置70の構造及び表面層41の製造方法を説明する。
【0076】
図8(b)に示すように、まず、素子基板10と液状のアルキル基41aを有するシランカップリング材41a1の入った容器72とを、CVD装置70の真空槽の密閉チャンバー71に入れる。次に、ヒーター73によって容器72を加熱し、シランカップリング材41a1を気化させる。これにより、
図8(c)に示すように、画素電極27の表面、及び露出した第3層間絶縁層11dの表面に、アルキル基41aが付与された表面層41が形成される。
【0077】
つまり、第1無機配向膜28表面のシラノール基とシランカップリング材41a1の加水分解基とが反応し、シランカップリング材41a1が付着することにより、
図8(c)に示すように、第1無機配向膜28表面にアルキル基41aを有する表面層41が形成される。
【0078】
次に、素子基板10に紫外線(Ultra Violet:UV)を照射して、形成された表面層41(アルキル基41a)の一部を分解して除去する。以下、
図8(d)を参照しながら、紫外線の照射方法を説明する。
【0079】
図8(d)に示すように、まず、素子基板10を紫外線を照射する装置80に入れる。その後、遮光部81aを有するフォトマスク81を用いて、素子基板10の一部の領域に紫外線(Vacuum Ultra Violet:UV)を照射する。
【0080】
これにより、平面視で、表示領域Eからシール材14の一部まで、及び封止材17と重なる領域の第1無機配向膜28に形成された表面層41が残り、それ以外の領域の表面層41(アルキル基41a)が分解されて除去される。この表面層41の除去は、真空紫外線の照射により表面層41の有機官能基が直接励起されるとともにオゾン等の活性酸素が生成されて、この活性酸素によって励起された表面層41が酸化されるためだと考えられている。
【0081】
次に、対向基板20側の製造方法を説明する。まず、ステップS21では、ガラス基板等の透光性材料からなる第2基材20a上に、周知の成膜技術、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を用いて、対向電極31を形成する。
【0082】
ステップS22では、対向電極31上に第2無機配向膜32を形成する。第2無機配向膜32の製造方法は、例えば、素子基板10側の第1無機配向膜28と同様に、斜方蒸着法を用いて形成する。
【0083】
ステップS23では、第2無機配向膜32に表面層41を形成する。具体的には、素子基板10側と同様に、化学気相成長法(CVD)を用いて形成する。その後、対向基板20に紫外線(UV)を照射して、形成された表面層41の一部を分解して除去する。具体的には、素子基板10側と同様にして形成する。
【0084】
これにより、素子基板10側と同様に、第2基材20a上に付与された表面層41の一部が分解して除去される。次に、素子基板10と対向基板20とを貼り合わせる方法を説明する。
【0085】
ステップS31(シール材形成工程)では、素子基板10上にシール材14を塗布する。具体的には、例えば、素子基板10とディスペンサー(吐出装置でも可能)との相対的な位置関係を変化させて、素子基板10における表示領域Eの周縁部に(表示領域Eを囲むように)シール材14を塗布する。
【0086】
ステップS32(貼り合わせ工程)では、素子基板10と対向基板20とを貼り合わせる。具体的には、素子基板10に、塗布されたシール材14を介して素子基板10と対向基板20とを貼り合わせる。より具体的には、互いの基板10,20の平面的な縦方向や横方向の位置精度を確保しながら行う。
【0087】
ステップS33(注入工程、封止材形成工程)では、液晶注入口(開口領域14a)から構造体の内部に液晶を注入し、その後、液晶注入口を封止材17で封止する。以上により、液晶装置100が完成する。
【0088】
<電子機器の構成>
次に、本実施形態の電子機器としての投射型表示装置について、
図9を参照して説明する。
図9は、上記した液晶装置を備えた投射型表示装置の構成を示す概略図である。
【0089】
図9に示すように、本実施形態の投射型表示装置1000は、システム光軸Lに沿って配置された偏光照明装置1100と、光分離素子としての2つのダイクロイックミラー1104,1105と、3つの反射ミラー1106,1107,1108と、5つのリレーレンズ1201,1202,1203,1204,1205と、3つの光変調手段としての透過型の液晶ライトバルブ1210,1220,1230と、光合成素子としてのクロスダイクロイックプリズム1206と、投射レンズ1207とを備えている。
【0090】
偏光照明装置1100は、超高圧水銀灯やハロゲンランプなどの白色光源からなる光源としてのランプユニット1101と、インテグレーターレンズ1102と、偏光変換素子1103とから概略構成されている。
【0091】
ダイクロイックミラー1104は、偏光照明装置1100から射出された偏光光束のうち、赤色光(R)を反射させ、緑色光(G)と青色光(B)とを透過させる。もう1つのダイクロイックミラー1105は、ダイクロイックミラー1104を透過した緑色光(G)を反射させ、青色光(B)を透過させる。
【0092】
ダイクロイックミラー1104で反射した赤色光(R)は、反射ミラー1106で反射した後にリレーレンズ1205を経由して液晶ライトバルブ1210に入射する。ダイクロイックミラー1105で反射した緑色光(G)は、リレーレンズ1204を経由して液晶ライトバルブ1220に入射する。ダイクロイックミラー1105を透過した青色光(B)は、3つのリレーレンズ1201,1202,1203と2つの反射ミラー1107,1108とからなる導光系を経由して液晶ライトバルブ1230に入射する。
【0093】
液晶ライトバルブ1210,1220,1230は、クロスダイクロイックプリズム1206の色光ごとの入射面に対してそれぞれ対向配置されている。液晶ライトバルブ1210,1220,1230に入射した色光は、映像情報(映像信号)に基づいて変調されクロスダイクロイックプリズム1206に向けて射出される。
【0094】
このプリズムは、4つの直角プリズムが貼り合わされ、その内面に赤色光を反射する誘電体多層膜と青色光を反射する誘電体多層膜とが十字状に形成されている。これらの誘電体多層膜によって3つの色光が合成されて、カラー画像を表す光が合成される。合成された光は、投射光学系である投射レンズ1207によってスクリーン1300上に投射され、画像が拡大されて表示される。
【0095】
液晶ライトバルブ1210は、上述した液晶装置100が適用されたものである。液晶装置100は、色光の入射側と射出側とにおいてクロスニコルに配置された一対の偏光素子の間に隙間を置いて配置されている。他の液晶ライトバルブ1220,1230も同様である。
【0096】
このような投射型表示装置1000によれば、液晶ライトバルブ1210,1220,1230として、焼き付き等が抑えられた液晶装置100を用いているので、高い表示品質を実現することができる。
【0097】
なお、液晶装置100が搭載される電子機器としては、投射型表示装置1000の他、ヘッドアップディスプレイ、スマートフォン、EVF(Electrical View Finder)、モバイルミニプロジェクター、携帯電話、モバイルコンピューター、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、ディスプレイ、車載機器、オーディオ機器、露光装置や照明機器など各種電子機器に用いることができる。
【0098】
以上詳述したように、本実施形態の液晶装置100、液晶装置100の製造方法、及び電子機器によれば、以下に示す効果が得られる。
【0099】
(1)本実施形態の液晶装置100によれば、封止材17の下に第1無機配向膜28が設けられているので、第1無機配向膜28を構成する柱状構造物28a(カラム)の凹凸に倣って、素子基板10上を凹凸にすることが可能となる。よって、素子基板10上の開口領域14aに封止材17を設けた際、素子基板10上の凹凸により封止材17との密着面積を増やすことができ、素子基板10から封止材17が剥がれることを抑えることができる。加えて、封止材17は、シール材14で囲まれた中に液晶を入れたウェットな状態で封止するので、より密着性が厳しくなる。しかしながら、封止材17の領域まで第1無機配向膜28の領域を拡張させることにより、素子基板10とシール材14との密着性を向上させることができる。
【0100】
(2)本実施形態の液晶装置100によれば、第1無機配向膜28の表面に表面層41を設けるので、耐光性を向上させることが可能となり、液晶装置100に強い光を照射することができる。
【0101】
(3)本実施形態の液晶装置100の製造方法によれば、封止材17の下に第1無機配向膜28を形成するので、第1無機配向膜28を構成する柱状構造物28a(カラム)の凹凸に倣って、素子基板10上を凹凸にすることが可能となる。よって、素子基板10上における開口領域14aに封止材17を形成した際、素子基板10上の凹凸により封止材17との密着面積を増やすことができ、素子基板10から封止材17が剥がれることを抑えることができる。
【0102】
(4)本実施形態の電子機器によれば、上記した液晶装置100を備えているので、信頼性の高い電子機器を提供することができる。
【0103】
なお、本発明の態様は、上記した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、本発明の態様の技術範囲に含まれるものである。また、以下のような形態で実施することもできる。
【0104】
(変形例1)
上記したように、第1基材10a上における封止材17と重なる領域、及び、シール材14の一部と重なる領域に延在して第1無機配向膜28が設けられていることに限定されず、例えば、
図10に示す液晶装置200のように、第1基材10a上における、シール材14及び封止材17と平面視で重なる領域の全体に亘って第1無機配向膜28が設けられるようにしてもよい。これによれば、第1基材10a上の略全体に第1無機配向膜28を設けるので、マスクを用いて製造する場合でも、製造を容易にすることができる。
【0105】
(変形例2)
上記したように、封止材17と第1無機配向膜28の間に表面層41を設けることに限定されず、液晶装置100に強い光を照射しない場合であれば、表面層41を設けない構成にしてもよい。
【0106】
(変形例3)
上記したように、透過型の液晶装置100であることに限定されず、例えば、反射型の液晶装置に本発明を適用するようにしてもよい。