特許第6221259号(P6221259)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セイコーエプソン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6221259-液体吐出装置 図000002
  • 特許6221259-液体吐出装置 図000003
  • 特許6221259-液体吐出装置 図000004
  • 特許6221259-液体吐出装置 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6221259
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20171023BHJP
   B41J 11/04 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   B41J2/01 125
   B41J2/01 305
   B41J11/04
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-36781(P2013-36781)
(22)【出願日】2013年2月27日
(65)【公開番号】特開2014-162171(P2014-162171A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2015年12月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116665
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 和昭
(74)【代理人】
【識別番号】100164633
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(72)【発明者】
【氏名】戸谷 昭寛
【審査官】 島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−338126(JP,A)
【文献】 特開2007−223215(JP,A)
【文献】 特開2012−148576(JP,A)
【文献】 特開2011−207210(JP,A)
【文献】 特開2009−226919(JP,A)
【文献】 特開2011−168019(JP,A)
【文献】 特開2011−194797(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 − 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を支持するための支持部と、
前記支持部と対向する位置に配置され、前記支持部に支持された前記媒体に液体を吐出する第1ヘッドと、
前記支持部と対向する位置に前記第1ヘッドと並べて配置され、前記支持部に支持された前記媒体に前記第1ヘッドが吐出する前記液体とは異なる液体を吐出する第2ヘッドと、
前記支持部を挟んで前記第1ヘッド及び前記第2ヘッドが配置された側とは反対側であって、前記支持部と対向する位置に配置され、前記媒体に着弾した前記液体を乾燥する乾燥部と、
前記支持部と前記第1ヘッドとの間に前記媒体を搬送し、その後、前記支持部と前記乾燥部との間に前記媒体を搬送し、その後、前記支持部と前記第2ヘッドとの間に前記媒体を搬送する搬送部と、
前記支持部と前記乾燥部との間を通過した前記媒体が前記支持部と前記第2ヘッドとの間へ向かう前記媒体の搬送経路において、前記媒体と対向する位置に配置され、前記媒体を冷却可能な冷却部と、
を備えることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
媒体を支持するための支持部と、
前記支持部と対向する位置に配置され、前記支持部に支持された前記媒体に液体を吐出する第1ヘッドと、
前記支持部と対向する位置に前記第1ヘッドと並べて配置され、前記支持部に支持された前記媒体に前記第1ヘッドが吐出する前記液体とは異なる液体を吐出する第2ヘッドと、
前記支持部を挟んで前記第1ヘッド及び前記第2ヘッドが配置された側とは反対側であって、前記支持部と対向する位置に配置され、前記媒体に着弾した前記液体を乾燥する乾燥部と、
前記支持部と前記第1ヘッドとの間に前記媒体を搬送し、その後、前記支持部と前記乾燥部との間に前記媒体を搬送し、その後、前記支持部と前記第2ヘッドとの間に前記媒体を搬送する搬送部と、
前記支持部と前記乾燥部との間であって、前記支持部と前記乾燥部との間に搬送された前記媒体と前記支持部との間に配置された断熱材と、
を備えることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の液体吐出装置であって、
前記乾燥部は、前記支持部と前記乾燥部との間に搬送された前記媒体を挟んで前記支持部とは反対側に配置された熱風吹きつけ部と、前記支持部側に配置された熱風回収部とを有し、
前記熱風吹きつけ部は、前記媒体に熱風を吹き付け、
前記熱風回収部は、前記熱風吹きつけ部によって排出された熱を排気することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項4】
外周面に媒体を巻き掛けて搬送する第1ローラーを含み、前記媒体を支持するための支持部と、
前記第1ローラーの外周面に対向する位置に配置され、前記支持部上に搬送された前記媒体に液体を吐出するためのヘッドと、
前記媒体に着弾した前記液体を乾燥するための乾燥部と、
前記媒体の搬送経路における前記乾燥部の上流側において前記液体が吐出された前記媒体を巻き掛ける第2ローラーと、
前記媒体の搬送経路における前記乾燥部の下流側において前記液体が吐出された前記媒体を巻き掛ける第3ローラーと、
少なくとも前記第3ローラーと前記第1ローラーとの間を搬送される前記媒体に対して冷却を行う冷却部と、
を備え、
加熱エリアと非加熱エリアとを有し、前記乾燥部と前記第3ローラーは前記加熱エリア内に配置され、前記支持部及び前記ヘッドが前記非加熱エリアに配置され、
前記第2ローラーと前記第3ローラーと前記ヘッドと前記冷却部は、それぞれ複数組設けられ、前記媒体には、複数種類の前記液体が吐出されることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項5】
請求項に記載の液体吐出装置であって、
前記複数の第2ローラー及び前記複数の第3ローラーが前記第1ローラーに対して軸の角度がずらして設けられることにより、前記媒体が前記第1ローラーの軸方向について複数回巻き掛けられることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項6】
請求項または請求項のいずれかに記載の液体吐出装置であって、
前記乾燥部は、前記支持部を挟んで前記ヘッドに対向する位置に設けられることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項7】
請求項乃至請求項のいずれかに記載の液体吐出装置であって、
前記媒体は、前記液体が吐出される前の前記媒体が巻かれた繰り出しロールから引き出され、前記液体が吐出された後に巻き取りロールに巻き取られることを特徴とする液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクを媒体に吐出することにより画像形成を行うインクジェットプリンターが実用化されている。また、近年では、ヘッドがプリンターに対して実質的に固定されている所謂ライン型インクジェットプリンターが開発されている。このようなライン型インクジェットプリンターでは高速印刷が可能であるが、いかにインクを乾燥させるかが問題となる。
【0003】
特許文献1には、インクジェットヘッドの近傍に加熱手段を有するプリンターにおいて結露対策を行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−199434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インクを乾燥させる手法として熱を利用することが考えられる。しかしながら、熱を用いてインクを乾燥させる場合において、インクを吐出するヘッドも加熱されてしまうことがある。ヘッドが加熱されると、ヘッド内でのインクの硬化も促進されるため、ノズル詰まり等の問題を生ずる。よって、媒体に吐出される液体の乾燥を促進しつつも、ヘッドの信頼性を損ないにくい液体吐出装置が望まれる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、媒体に吐出される液体の乾燥を促進しつつもヘッドの信頼性を損ないにくい液体吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための主たる発明は、
媒体を支持するための支持部と、
前記支持部上に搬送された前記媒体に液体を吐出するためのヘッドと、
前記媒体に着弾した前記液体を乾燥するための乾燥部と、
を備え、
加熱エリアと非加熱エリアとを有し、前記乾燥部は前記加熱エリア内に配置され、前記支持部及び前記ヘッドが前記非加熱エリアに配置されることを特徴とする液体吐出装置である。
【0008】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態におけるインクジェットプリンター1の概略側面図である。
図2】本実施形態におけるインクジェットプリンター1の概略平面図である。
図3】乾燥装置51の説明図である。
図4】冷却装置63の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。すなわち、
媒体を支持するための支持部と、
前記支持部上に搬送された前記媒体に液体を吐出するためのヘッドと、
前記媒体に着弾した前記液体を乾燥するための乾燥部と、
を備え、
加熱エリアと非加熱エリアとを有し、前記乾燥部は前記加熱エリア内に配置され、前記支持部及び前記ヘッドが前記非加熱エリアに配置されることを特徴とする液体吐出装置である。
【0011】
このようにすることで、乾燥部が加熱エリア内に配置される一方、支持部とヘッドが非加熱エリアに配置されるので、乾燥部による熱が支持部とヘッドに伝達しにくい。よって、媒体に吐出される液体の乾燥を促進しつつも支持部と支持部に近いヘッドは加熱されにくいので、ヘッドのノズル詰まり等を抑制して、ヘッドの信頼性を損ないにくい液体吐出装置を提供することができる。
【0012】
かかる液体吐出装置であって、前記支持部が、外周面に前記媒体を巻き掛けて搬送する第1ローラーを含み、前記ヘッドが、前記第1ローラーの外周面に対向する位置に配置され、前記媒体の搬送経路における前記乾燥部の上流側において前記液体が吐出された媒体を巻き掛ける第2ローラーと、前記媒体の搬送経路における前記乾燥部の下流側において前記液体が吐出された媒体を巻き掛ける第3ローラーと、を含み、少なくとも前記第3ローラーが前記加熱エリア内に配置されることが望ましい。
【0013】
このようにすることで、第3ローラーが加熱エリア内に配置されるので、乾燥部を出た媒体が加熱エリア内においてその進路を変更することができる。そして、進路を変更された媒体が非加熱エリアに入ることができる。このような構成としているので、加熱エリアと非加熱エリアとを適切に分けることができる。
【0014】
また、少なくとも前記第3ローラーと前記第1ローラーとの間において断熱材を有することが望ましい。
このようにすることで、加熱エリアと非加熱エリアとを断熱材で分けることができる。そして、加熱エリアの熱が非加熱エリアに伝達されにくいようにすることができる。
【0015】
また、少なくとも前記第3ローラーと前記第1ローラーとの間を搬送される媒体に対して冷却を行う冷却部を有することが望ましい。
このようにすることで、第3ローラーと第1ローラー間で媒体を冷却して、第3ローラーが設けられる加熱エリアの熱を非加熱エリアにもたらしにくくすることができる。
【0016】
また、前記第2ローラーと前記第3ローラーと前記ヘッドと前記冷却部は、それぞれ複数組設けられ、前記媒体には、複数種類の液体が吐出されることが望ましい。
このようにすることで、媒体が加熱エリアと非加熱エリアを複数回通る構成とすることができる。このような構成であっても、加熱エリアと非加熱エリアが適切に分けられているので、ヘッドのノズル詰まり等を抑制して、ヘッドの信頼性を損ないにくい液体吐出装置を提供することができる。
【0017】
また、前記複数の第2ローラー及び前記複数の第3ローラーが前記第1ローラーに対して軸の角度がずらして設けられることにより、前記媒体が前記第1ローラーの軸方向について複数回巻き掛けられることが望ましい。
このようにすることで、媒体が複数回加熱エリアと非加熱エリアを通る構成とすることができる。
【0018】
また、前記乾燥部は、前記支持部を挟んで前記ヘッドに対向する位置に設けられることが望ましい。
このようにすることで、熱を発する乾燥部をヘッドから遠ざけた構成とすることができる。
【0019】
また、前記媒体は、前記液体が吐出される前の前記媒体が巻かれた繰り出しロールから引き出され、前記液体が吐出された後に巻き取りロールに巻き取られることが望ましい。
このようにすることで、繰り出しロールから媒体を連続的に供給し、巻き取りロールで連続的に媒体を回収することができる。
【0020】
===実施形態===
図1は、本実施形態におけるインクジェットプリンター1の概略側面図である。図2は、本実施形態におけるインクジェットプリンター1の概略平面図である。以下、これらの図を参照しつつ、本実施形態におけるインクジェットプリンター1の構成について説明する。なお、図1及び図2には、X軸とY軸とZ軸が説明の便宜上示されている。そして、Z軸方向は、インクジェットプリンター1における上下方向を表し、X軸とY軸は平面方向を表すものとする。
【0021】
インクジェットプリンター1(液体吐出装置に相当)は、回転ドラム10(支持部、第1ローラーに相当)と、繰り出しロール21と、巻き取りロール22を備える。また、インクジェットプリンター1は、複数の入り口ローラー31(第2ローラーに相当)と、複数の出口ローラー32(第3ローラーに相当)を備える。さらに、インクジェットプリンター1は、複数の乾燥装置51(乾燥部に相当)と、複数の第1冷却装置61と、複数の第2冷却装置62(冷却部に相当)と、断熱材63を備える。
【0022】
本実施形態におけるインクジェットプリンター1における回転ドラム10は、その外周面に媒体Mを巻き掛けて、その回転とともに媒体Mの搬送を行う。回転ドラム10は、Y軸方向に軸心方向が一致し、かつ、Y軸方向に長い回転ドラムである。
【0023】
繰り出しロール21は、回転ドラム10に媒体Mの一つの例として用紙を供給する。また、巻き取りロール22は、印刷が完了した用紙を回収する。
【0024】
また、本実施形態におけるインクジェットプリンター1は3種類のインクを吐出可能とする。そのため、3つの印刷ユニットを有する。1つの印刷ユニットは、入り口ローラー31と、出口ローラー32と、ヘッド40と、乾燥装置51と、第1冷却装置61と、第2冷却装置と、断熱材63を備える。
【0025】
図2において、第1の印刷ユニットに対応する各要素については、ハイフン「−」の後に「1」の番号が付され、第2の印刷ユニットに対応する各要素については、ハイフン「−」の後に「2」の番号が付され、第3の印刷ユニットに対応する各要素については、ハイフン「−」の後に「3」の番号が付されている。なお、各要素において共通する説明の場合には、特段ハイフン「−」及びその後の番号を付さないで説明を行うものとする。
【0026】
ヘッド40は、回転ドラム10の上部であって、後述する媒体Mの進路上に配置される。ただし、回転ドラム10の外周面に対向する位置であって、媒体Mにインクを吐出できる位置であれば、その配置は上部に限られない。
【0027】
入り口ローラー31は、回転ドラム10の下方向かつ、X軸方向についてプラス方向側に設けられる。そして、媒体Mの搬送経路における後述する乾燥装置51の上流においてインクが吐出された媒体Mを巻き掛け、その進路を変える役割を果たす。また出口ローラー32は、回転ドラム10の下方向かつ、X軸方向についてマイナス方向側に設けられる。そして、媒体Mの搬送経路における乾燥装置51の下流において媒体Mを巻き掛け、その進路を変える役割を果たす。
【0028】
これら入り口ローラー31の軸心と出口ローラー32の軸心は、それぞれ、回転ドラム10の軸心とは一致せず、X軸に対して所定の角度α(図2)を有している。そして、出口ローラー32は入り口ローラー31よりもY軸方向プラス側にずれて配置されている。また、乾燥装置51は、回転ドラム10の下部であって、かつ、入り口ローラー31と出口ローラー32との間に設けられる。そして、これらの間を進行する媒体Mにおけるインクを乾燥させる。
【0029】
また、回転ドラム10と乾燥装置51との間には、断熱材63が設けられる。また、第1冷却装置61が、回転ドラム10中心軸の下方向かつ入り口ローラー31の上方向であって、回転ドラム10よりもX軸方向についてプラス方向側に設けられる。そして、第1冷却装置61は、回転ドラム10と入り口ローラー31との間を進行する媒体Mを冷却する。
【0030】
また、第2冷却装置62が、回転ドラム10中心軸の下方向かつ出口ローラー32の上方向であって、回転ドラム10よりもX軸方向についてマイナス方向側に設けられる。そして、第2冷却装置62は、回転ドラム10と出口ローラー32との間を進行する媒体Mを冷却する。
【0031】
図2に示されるように、1つの印刷ユニットは、X軸に対して斜めに設けられている。そして、これらは、Y軸方向に複数(ここでは3組)並べられる。
【0032】
このように構成されたインクジェットプリンター1において、繰り出しロール21から供給された媒体Mは、最初に、ヘッド40−1下部分の回転ドラム10上部に巻き掛けられる。そして、ヘッド40−1から吐出されたインクが媒体Mに吐出される。その後、媒体Mは入り口ローラー31−1に巻き掛けられる。前述のように入り口ローラー31−1は、所定の角度αを有しているので、X軸方向に進行していた媒体Mは、図2に示されるように進行方向が変えられる。
【0033】
その後、媒体Mは、乾燥装置51−1を通る。これにより、媒体Mに着弾したインクが乾燥させられる。次に、媒体Mは、出口ローラー32−1に巻き掛けられる。出口ローラー32−1も前述のように所定の角度αを有しており、巻き掛けられた媒体Mの進行方向はX軸方向に一致するように変えられる。
【0034】
その後、媒体Mは、上記とほぼ同様の搬送過程により、第2印刷ユニットと第3印刷ユニットによる印刷が行われる。本実施形態では3つの印刷ユニットを有するため、3種類のインクによる印刷が行われ、これらの印刷完了後において、媒体Mは、巻き取りロール22に巻き取られる。
【0035】
上記媒体Mの搬送において、回転ドラム10に巻き掛けられる媒体Mは、回転ドラム10の外周に対して滑らずに搬送される。すなわち、回転ドラム10の外周速度が媒体Mの搬送速度とほぼ一致していることになる。
【0036】
図3は、乾燥装置51の説明図である。乾燥装置51は、熱風吹きつけ部51aと、熱風回収部51bからなり、熱風吹きつけ部51aは、熱風送風部511と、ノズルボックス512を備える。なお、図3において破線で示す矢印は、熱風の経路である。
【0037】
熱風吹きつけ部51aは、媒体Mに対して熱風を吹き付けることにより、媒体Mに着弾したインクの乾燥を促進する。熱風吹きつけ部51aでは、熱源及び送風装置を備える熱風送風部511により熱風が生成される。熱風吹きつけ部51aはノズルボックス512に連結される。ノズルボックス512は、媒体Mに向かう向きに複数の孔(ノズル)が設けられており、このノズルから熱風を吹き付ける構造となっている。
【0038】
熱風回収部51bは、排気装置を含み、熱風吹きつけ部51a周辺の空気を回収し、これをインクジェットプリンター1の外部に排気する。これにより、熱風吹きつけ部51aによって排出された熱を排気することができる。このようにして、乾燥装置51が配置される加熱エリア50内にのみ熱をとどめ、非加熱エリア60にその熱が及ばないようにすることができる。
【0039】
図4は、第2冷却装置62の説明図である。前述の第1冷却装置61は第2冷却装置62と同様の構成であるので、ここでは第2冷却装置62を例に説明を行う。第2冷却装置62は、ダクト624と、その内部にフィルター622と、冷却ファン623を備える。なお、図4において破線で示す矢印は、空気の経路である。
【0040】
ダクト624の一端側の外気取り入れ口621はフィルター622が取り付けられる。また、ダクト624の他端側に冷却ファン623が複数取り付けられる。冷却ファン623は、媒体Mに対して空気を送風できる方向に取り付けられており、これにより、外気取り入れ口621から取り入れられた空気が媒体Mに対して吹き付けられる。そして、前述の乾燥装置51によって暖められた媒体Mの温度を低下させる。
【0041】
このような構成のインクジェットプリンター1において、各要素の配置により、加熱エリア50と非加熱エリア51の区分けがなされている。具体的には、加熱エリア50には、入り口ローラー31と出口ローラー32と乾燥装置51が配置される。一方、非加熱エリア60には、回転ドラム10と、ヘッド40と、第1冷却装置61と、第2冷却装置62と、断熱材63が配置される。
【0042】
このようにすることで、乾燥装置51が加熱エリア50内に配置される一方、回転ドラム10とヘッド40が非加熱エリア60に配置されるので、乾燥装置51による熱が回転ドラム10とヘッド40に伝達されにくい。よって、媒体Mに吐出されるインクの乾燥を乾燥装置51によって促進しつつも、回転ドラム10とこの回転ドラム10に近いヘッド40は加熱されにくいことになる。そのため、ヘッド40のノズル詰まり等を抑制して、ヘッドの信頼性を損ないにくいインクジェットプリンター1を提供することができる。また、このように、加熱エリア50と非加熱エリア60が適切に分離されているので、ヘッド40において結露を生じにくいという利点もある。
【0043】
また、上記インクジェットプリンター1によれば、出口ローラー32が加熱エリア50内に配置されるので、乾燥装置51を出た後に媒体Mが加熱エリア50内においてその進路を変更することができる。そして、進路を変更された媒体Mが非加熱エリア60に入ることができる。このような構成としているので、加熱エリア50と非加熱エリア60とを適切に分離することができる。
【0044】
また、上記インクジェットプリンター1によれば、少なくとも出口ローラー32と回転ドラム10との間において、断熱材63を有する。このようにすることで、加熱エリア50の熱が非加熱エリア60に伝達されにくくすることができる。
【0045】
また、上記インクジェットプリンター1によれば、出口ローラー32と回転ドラム10との間を搬送される媒体Mに対して冷却を行う第2冷却装置62を有する。このようにすることで、出口ローラー32と回転ドラム10との間で媒体Mを冷却して、出口ローラー32が設けられる加熱エリア50の熱を非加熱エリア60にもたらしにくくすることができる。
【0046】
また、上記インクジェットプリンター1によれば、入り口ローラー31と出口ローラー32とヘッドと第2冷却装置62は、それぞれ複数組設けられ、媒体Mには、複数種類のインクが吐出される。このようにすることで、媒体Mが複数回加熱エリア50と非加熱エリア60を通る構成とすることができる。そして、このような構成であっても、加熱エリア50と非加熱エリア60が適切に分けられているので、ヘッド40のノズル詰まり等を抑制して、ヘッド40の信頼性を損ないにくいインクジェットプリンター1を提供することができる。
【0047】
また、上記インクジェットプリンター1によれば、複数の入り口ローラー31と複数の出口ローラー32が回転ドラム10に対して軸の角度がずらして設けられており、媒体Mが回転ドラム10の軸方向について複数回巻き掛けられる構成となっている。このようにすることで、媒体Mが複数回加熱エリア50と非加熱エリア60を通る構成とすることができる。
【0048】
また、上記インクジェットプリンター1によれば、乾燥装置51が、回転ドラム10を挟んでヘッド40に対向する位置に設けられている。このようにすることで、熱を発する乾燥装置51をヘッド40から遠ざけた構成とすることができる。
【0049】
また、上記インクジェットプリンター1によれば、媒体Mは、インクが吐出される前の媒体Mが巻かれた繰り出しロール21から引き出され、インクが吐出された後に巻き取られる巻き取りロール22に巻き取られることが望ましい。このようにすることで、繰り出しロール21から媒体Mを連続的に供給し、連続的な印刷を行うことができる。
【0050】
===その他の実施の形態===
【0051】
上述の実施形態では、液体吐出装置としてインクジェットプリンター1が説明されていたが、これに限られるものではなくインク以外の他の流体(液体や、機能材料の粒子が分散されている液状体、ジェルのような流状体)を噴射したり吐出したりする液体吐出装置に具現化することもできる。例えば、カラーフィルタ製造装置、染色装置、微細加工装置、半導体製造装置、表面加工装置、三次元造形機、気体気化装置、有機EL製造装置(特に高分子EL製造装置)、ディスプレイ製造装置、成膜装置、DNAチップ製造装置などのインクジェット技術を応用した各種の装置に、上述の実施形態と同様の技術を適用してもよい。また、これらの方法や製造方法も応用範囲の範疇である。
【0052】
<ヘッドについて>
前述の実施形態では、圧電素子を用いてインクを吐出することができる。しかし、液体を吐出する方式は、これに限られるものではない。例えば、熱によりノズル内に泡を発生させる方式など、他の方式を用いてもよい。
【0053】
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0054】
1 インクジェットプリンター、
10 回転ドラム(支持部、第1ローラーに相当)
21 繰り出しロール、22 巻き取りロール、
31 入口ローラー(第2ローラーに相当)、
32 出口ローラー(第3ローラーに相当)、
50 加熱エリア、51 乾燥装置、
51a 熱風吹きつけ部、51b 熱風回収部、
511 加熱送風部、512 ノズルボックス、
60 非加熱エリア、61 第1冷却装置、62 第2冷却装置、
621 外気取り入れ口、622 フィルター、
623 冷却ファン、624 ダクト、
63 断熱材、
M 媒体
図1
図2
図3
図4