(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
炭素数6〜24の脂肪酸銅塩粒子からなる粉末冶金用潤滑剤であって、前記脂肪酸銅塩粒子は、下記(1)式で表される粒度要約値Aが2. 5以下であり、かつ前記脂肪酸銅塩粒子2.0gを80℃の環境下に10分放置後にパウダーテスターで測定される下記(2)式で表される凝集度Bが30%以下であることを特徴とする粉末冶金用潤滑剤。
粒度要約値A= (D90−D10) /D50(但し、1. 0≦D50≦30. 0)・・・(1)式
D10:脂肪酸銅塩の体積基準における10%積算径(μm)
D50:脂肪酸銅塩の体積基準におけるメジアン径(μm)
D90:脂肪酸銅塩の体積基準における90%積算径(μm)
凝集度B=〔(篩目350μmの篩に残存する脂肪酸銅塩粒子の質量(g))/2〕×100×(1/1)+〔(篩目250μmの篩に残存する脂肪酸銅塩粒子の質量(g))/2〕×100×(3/5)+〔(篩目150μmの篩に残存する脂肪酸銅塩粒子の質量(g))/2〕×100×(1/5)〕・・・(2)式
【背景技術】
【0002】
粉末冶金とは、主原料となる金属粉末を金型に充填した後、圧縮成型することにより圧粉体とし、さらに高温で加熱することにより金属粒子を焼結させて金属成型体を製造する技術である。通常、金型へ金属粉末を充填する時に金属粉末相互の粒子摩擦を減じて流動性を向上させるために、あるいは圧縮時の金属粉末と金型壁面との摩擦を緩和し、圧縮後の金型からの抜き出し圧力を減じて金型の磨耗や破損を抑制するために、原料である金属粉末に粉末潤滑剤が添加されている。
【0003】
従来、粉末潤滑剤として、脂肪酸亜鉛塩、脂肪酸リチウム塩、脂肪酸モノアミド、エチレンビス脂肪酸アミド等の粉末が単独で、あるいは複数を組み合わせて使用されてきた。
例えば、特許文献1には、エチレンビスステアロアミド(N,N,−エチレンビス(ステアリン酸アミド))とステアリン酸亜鉛とを重量比1:9〜9:1で配合した粉末冶金用潤滑剤が開示されている。
また、特許文献2には、潤滑性鉄基冶金粉末組成物の製造方法において、ステアリン酸第二銅をテトラヒドロフランまたはジエチルアミン等の有機溶媒に溶解させた溶液を用いて鉄基粒子の冶金粉末組成物を濡らした後、有機溶媒を除去することによりステアリン酸第二銅の被覆を持つ鉄基粒子が得られることが開示されている。
さらに、特許文献3には、エチレンビスラウリンアミドを主成分とする粉体成形剤が開示されている。
【0004】
しかし、粉末冶金用潤滑剤として脂肪酸亜鉛塩を用いた場合、焼結炉の脱ロウ時において、加熱分解後に生成する、脂肪酸亜鉛塩由来の酸化亜鉛が昇華し、焼結炉の炉壁や煙道に酸化亜鉛として堆積し汚染してしまう。この堆積物は、蓄積してくると炉壁から脱落し焼結製品の表面に付着し欠陥を発生させることがある。また、煙道の堆積物は、煙道を閉塞させ炉内雰囲気ガスの排出を阻害させるので、安定製造が困難になるという欠点がある。このため、粉末冶金メーカー、焼結メーカー各社は、定期的に焼結炉の操業を停止し、炉内温度が下がった後にこの堆積物を除去する作業を行っているので、生産管理面およびコスト面で大きな問題となっている。
【0005】
特許文献2の方法では、テトラヒドロフランまたはジエチルアミン等の有機溶媒を工業的に完全に除去することは困難であり、また焼結時に有機溶媒の引火等の危険性があり、さらに作業性が煩雑であるという問題がある。
【0006】
また、脂肪酸モノアミドあるいはエチレンビス脂肪酸アミドを用いた場合、金属粉末の金型充填時に高い流動性が得られないことから圧縮後の成型体密度が上がらず、焼結体に十分な強度が得られないという問題があり、特許文献1のように脂肪酸亜鉛塩とエチレンビス脂肪酸アミドを併用しても、その問題点を完全に解決するには至っていない。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の粉末冶金用潤滑剤および粉末冶金用粉末混合物の実施形態について順次説明する。
【0016】
〔粉末冶金用潤滑剤〕
本発明の粉末冶金用潤滑剤は炭素数6〜24の脂肪酸銅塩粒子からなる。かかる脂肪酸銅塩粒子は、炭素数6〜24の脂肪酸に対して銅の酸化物もしくは水酸化物を反応させる直接法によって、または炭素数6〜24の脂肪酸と一価のアルカリ化合物とを反応させて脂肪酸アルカリ化合物塩を調製し、さらに二価の銅塩と水溶液中で反応させる複分解法によって、調製することができる。
【0017】
本発明で用いられる炭素数6〜24の脂肪酸は、天然由来の脂肪酸および合成脂肪酸のいずれであってもよく、飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸のいずれであってもよく、直鎖状および分岐状のいずれであってもよい。さらに、脂肪酸の構造中に、水酸基、アルデヒド基、エポキシ基等の官能基が含まれていてもよい。好ましくは炭素数が12〜22の直鎖飽和脂肪酸である。脂肪酸の炭素数が6未満の場合は、得られる脂肪酸銅塩粒子の粉末冶金用潤滑剤としての効果が得られ難く、炭素数が24を超える脂肪酸は工業的に入手が困難であり、また、複分解法においては、得られる脂肪酸アルカリ化合物塩の水に対する溶解度が著しく低下するので生産性が低くなるおそれがある。
【0018】
上記脂肪酸としては、例えば、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ミリストオレイン酸、パルミチン酸、パルミトオレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキン酸、ベヘン酸、エルカ酸、ヒドロキシステアリン酸およびエポキシステアリン酸などが挙げられ、その中ではステアリン酸が好ましい。混合脂肪酸を用いる場合は、好ましくはステアリン酸含有量が50%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上の混合脂肪酸が用いられる。
【0019】
直接法において用いられる銅の酸化物もしくは水酸化物としては、酸化銅(II)、水酸化銅(II)が挙げられる。
【0020】
複分解法において用いられる一価のアルカリ化合物としては、アルカリ金属(ナトリウム、カリウムなど)の水酸化物、およびアンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミン類などが挙げられる。脂肪酸アルカリ化合物塩を調製したときに水に対する溶解度が高い点から、好ましくはナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物である。
【0021】
複分解法において用いられる脂肪酸アルカリ化合物塩は、一価のアルカリ化合物と脂肪酸とを、一般に、脂肪酸の融点以上であり、かつ該脂肪酸が分解しない程度の温度、好ましくは100℃以下、より好ましくは50〜100℃、さらに好ましくは60〜95℃、特に好ましくは70〜95℃で反応させて得られる。
【0022】
脂肪酸銅塩粒子としては、上記で得られた脂肪酸アルカリ化合物塩と二価の銅塩とを水溶液中で反応させて得られる脂肪酸銅塩粒子を用いることが好ましい。
二価の銅塩としては、例えば、塩化銅、硫酸銅、硝酸銅などが挙げられる。特に、塩化銅、硫酸銅は、水に対する溶解度が高く、効率的に脂肪酸アルカリ化合物塩と反応する点から好ましい。
上記反応は、具体的には、二価の銅塩含有水溶液および脂肪酸アルカリ化合物塩含有水溶液を別々に調製し、これらを混合することにより行われる。例えば、脂肪酸アルカリ化合物塩含有水溶液中に二価の銅塩含有水溶液を滴下することによって行われる。
なお、銅塩水溶液の滴下速度は、5.0×10
−3mol/秒以下が好ましく、3.0×10
−3mol/秒以下がより好ましい。滴下速度が5.0×10
−3mol/秒を超えると、得られる脂肪酸銅塩粒子の粒度分布が幅広くなったり、粗大粒子が生成して、本発明で規定する物性値が得られなくなるおそれがある。
【0023】
脂肪酸銅塩製造時の脂肪酸アルカリ化合物塩の濃度は、脂肪酸銅塩の生産性の点、および脂肪酸アルカリ化合物塩含有水溶液または得られる脂肪酸銅塩スラリーのハンドリング性の点から、通常、1〜20質量%、好ましくは5〜15質量%である。脂肪酸アルカリ化合物塩の濃度が1質量%未満の場合は、脂肪酸銅塩の生産性が低下するおそれがある。20質量%を超える場合は、脂肪酸アルカリ化合物塩含有水溶液または得られる脂肪酸銅塩スラリーの粘度が上昇するので、均一な反応を行うことが困難になることがある。
また、二価の銅塩含有液中の二価の銅塩の濃度は、脂肪酸銅塩の生産性の点、および脂肪酸アルカリ化合物塩含有水溶液または得られる脂肪酸銅塩スラリーのハンドリング性の点から、通常、10〜50質量%、好ましくは10〜40質量%である。
【0024】
脂肪酸アルカリ化合物塩と二価の銅塩との反応は、脂肪酸アルカリ化合物塩の溶解度を考慮して、当業者が通常行う温度条件下で行われる。好ましくは50〜100℃、より好ましくは60〜95℃である。
脂肪酸アルカリ化合物塩と二価の銅塩との反応時に脂肪酸銅塩スラリーを安定化させて、脂肪酸銅塩の生産性を向上させる目的で、ポリアルキレングリコール系エーテル、特にオキシプロピレンブロックがオキシエチレンブロックで挟まれた構造(EO−PO−EO)を有するトリブロックエーテルを脂肪酸銅塩スラリー中に存在させることが好ましい。脂肪酸銅塩スラリー中におけるポリアルキレングリコール系エーテルの含有量は、通常、脂肪酸アルカリ化合物塩100質量部に対して、0.01〜5質量部、好ましくは0.05〜2質量部である。
なお、ポリアルキレングリコール系エーテルは、一価のアルカリ化合物と脂肪酸とを反応させる前に反応系に存在させても良く、また脂肪酸アルカリ化合物塩と二価の銅塩との反応の前に反応系に存在させても良い。
【0025】
上記方法によって、脂肪酸銅塩スラリーが得られる。この脂肪酸銅塩スラリーはそのまま、あるいは遠心脱水機、フィルタープレス、真空回転濾過機などにより溶媒を分離し、必要に応じて、洗浄を行い、副生する無機塩を除去した後に、回転乾燥機、気流乾燥装置、通気式乾燥機、噴霧式乾燥機、流動層型乾燥装置などにより乾燥させる。乾燥方法は、連続式または回分式、あるいは常圧または真空下のいずれでもよい。さらに、乾燥させた脂肪酸銅塩を必要に応じて粉砕する。粉砕方法は、例えばピンミル、ジェットミル、アトマイザー等によることができる。粉砕された脂肪酸銅塩粒子は分級される。例えば、振動を与えて篩い分けを行う多段篩装置等を用いて分級を行ない、粒度分布を調整する。このようにして、本発明の粉末冶金用潤滑剤としての脂肪酸銅塩粒子を得ることができる。
【0026】
本発明に用いられる脂肪酸銅塩粒子は、粒度分布の揃ったものとすることで、金属粉末中に均一に存在させることが可能となり、または結合剤を効率的に分散させることができる。これにより、流動性、焼結体の強度、および圧縮成型後の金型からの抜き出し性を向上させるという本発明の作用効果をより安定して発現させ易くする。具体的には、脂肪酸銅塩粒子の下記(1)式で表される粒度要約値Aを2.5以下にする。
【0027】
本発明において粒度要約値Aは、マイクロトラックレーザー回折法により測定した粒子径から算出される。粒度要約値Aが2.5を超えると、金属粉末中に存在する脂肪酸銅塩粒子の粒子径のバラツキにより、粉末混合物の流動性が不安定となり、混合機からの排出性、金型への充填性が低下するばかりか、粉末混合物の嵩密度が低下し、目的とする強度を有する焼結体を製造できなくなる可能性がある。粒度要約値Aは、2.0以下がより好ましく、これにより本発明の作用効果がさらにより安定して得られる。
【0028】
なお、粒度要約値Aの調整は、脂肪酸アルカリ化合物塩の濃度、脂肪酸アルカリ化合物塩と二価の銅塩との反応時の温度、二価の銅塩含有水溶液を脂肪酸アルカリ化合物塩含有水溶液に滴下する際の滴下速度をそれぞれ適宜調整することによって行うことができる。また、粒度分布が広い、つまり粒度要約値Aの値が大きいものについては、後処理において、100メッシュ、200メッシュ、330メッシュ等の篩を用いて分級することによって行なうことができる。
【0029】
ここで使用するマイクロトラックレーザー回折法は、レーザー光を粒子に照射することによって得られる散乱光を利用して、粒度分布を求める方法である。本発明においては、脂肪酸銅塩粒子が溶解しない有機溶媒、例えばエタノール、イソプロピルアルコールなどの有機溶媒を循環させたところに試料をそのまま投入する湿式による測定とする。また、本発明における測定対象は粒子径0.1〜200μmの範囲であり、下記の(1)式で表わされる値を粒度要約値Aとした。なお、本発明においては、例えば日機装株式会社製のマイクロトラックMT−3000を用いて測定することができる。
【0030】
粒度要約値A = (D90−D10) /D50(但し、1. 0≦D50≦30. 0)・・・(1)式
D10:脂肪酸銅塩の体積基準における10%積算径(μm)
D50:脂肪酸銅塩の体積基準におけるメジアン径(μm)
D90:脂肪酸銅塩の体積基準における90%積算径(μm)
【0031】
粉末冶金用粉末混合物の製造においては、通常、全材料を混合釜に投入し、30分〜2時間混合する。混合時は、金属粉末粒子同士の衝突熱により混合釜内が70〜90℃程度になる。本発明者の検討によれば、脂肪酸銅塩粒子を80℃の環境下に10分放置後にパウダーテスターで測定したときの下記(2)式で表される凝集度B(%)が30%以下であることにより、粉末冶金用粉末混合物を製造するための上記混合条件でも、脂肪酸銅塩粒子が解れ易く、粉末冶金用粉末混合物中に素早く均一に分散することができる。したがって、粉末冶金用粉末混合物の流動性向上に伴って嵩密度を上げることができ、混合機からの排出性、金型への充填性を向上させることができる。凝集度Bは27%以下がより好ましく、さらに好ましくは25%以下である。凝集度Bが25%以下であるとき、本発明の作用効果がさらにより安定して得られる。
【0032】
なお、凝集度Bの調整は、脂肪酸アルカリ化合物塩と二価の銅塩との反応を穏和な条件下で行ない、反応によって得られるスラリー中の脂肪酸銅塩粒子同士の凝集を防ぐことによって行うことができる。つまり、例えば、脂肪酸アルカリ化合物塩と二価の銅塩との反応時の反応率を低下させない程度の穏和な温度で反応を行ったり、熟成時間を短縮したりすることによって行なうことができる。反応時のこれら因子を適宜調整することによって、凝集度Bを本発明規定の範囲に調整することができる。
【0033】
凝集度B=〔(篩目350μmの篩に残存する脂肪酸銅塩粒子の質量
(g))/2〕×100×(1/1)+〔(篩目250μmの篩に残存する脂肪酸銅塩粒子の質量
(g))/2〕×100×(3/5)+〔(篩目150μmの篩に残存する脂肪酸銅塩粒子の質量
(g))/2〕×100×(1/5)〕・・・(2)式
【0034】
ここで使用するパウダーテスターによる脂肪酸銅塩粒子の凝集度Bは、下記の測定方法で得られた値である。すなわち、例えばパウダーテスター(ホソカワミクロン株式会社製、PT−N型)を用いて下記の(a)〜(f)の工程を行なう。
(a)80℃に設定された恒温機内で、測定対象の脂肪酸銅塩粒子を10分間放置する。
(b)パウダーテスターの振動台に、上層から篩目350μm、250μm、150μmの篩いを順次セットする。
(c)上記(a)工程後の脂肪酸銅塩粒子2.0gを即座に篩目350μmの篩上に静かにのせる。
(d)篩を振幅1mmで105秒間振動させる。
(e)各篩に残存した脂肪酸銅塩粒子の質量を計測する。
(f)上記(e)工程で得られた各質量にそれぞれ1/1、3/5および1/5の重みを順次に乗じ、これらを加算して上記(2)式により百分率を算出した値を凝集度B(%)とする。
以上の(a)〜(f)の工程を5回繰り返し、その平均値を測定値とする。
【0035】
さらに、本発明に用いられる脂肪酸銅塩粒子は、ゆるみ嵩密度(Da)(g/cc)が0.120≦Da≦0.250であることが好ましい。0.120≦Da≦0.250であることにより、金属粉末と混合した際に、脂肪酸銅塩粒子に高い滑り性が得られ、粉末混合物に流動性をさらに付与することができる。
【0036】
ゆるみ嵩密度(Da)は、下記の測定方法で得られた値である。まず、例えばパウダーテスター(ホソカワミクロン株式会社製、PT−N型)を用い、振動台に篩目710μmの篩をセットし、その中に試料250ccを入れ、30秒間振動させて、篩の下方に設置した測定用カップの中に、落下した試料を集める。付属のブレードを用いて、カップ上の余分な脂肪酸金属塩粒子をすりきった後、試料の入ったカップの重量を測定する。なお、本発明においては、この操作・測定を5回繰り返し、その平均値を嵩密度(Da)の測定値とする。PT−N型では、自動で測定値が表示される。
【0037】
ゆるみ嵩密度(Da)(g/cc)=試料の入ったカップの重量(g)/カップの容積(cc)・・・(3)式
【0038】
〔粉末冶金用粉末混合物〕
本発明の粉末冶金用粉末混合物は、金属粉末と、本発明の粉末冶金用潤滑剤とを含有し、金属粉末100質量部に対し、本発明の粉末冶金用潤滑剤を、好ましくは0.01〜2質量部、より好ましくは0.05〜1質量部含有させて得られる。
【0039】
金属粉末としては、一般的に用いられる鉄粉末や鋼粉末のほか、銅、チタン、タングステン、モリブデン、ニッケル、コバルト、クロムなどの粉末を挙げることができ、これらを合金化した鉄−ニッケル合金、鉄−コバルト合金などの粉末も用いることができる。
【0040】
本発明の粉末冶金用粉末混合物は、結合剤をさらに含有していてもよい。結合剤としては、銅粉末、黒鉛粉末、二硫化モリブデン粉末、錫粉末などが挙げられ、さらに、これら粉末の2種以上を組み合わせて用いてもよい。結合剤は、金属粉末100質量部に対し、5質量部程度までの含有量で用いられる。
【0041】
本発明の粉末冶金用粉末混合物は、他の粉末冶金用潤滑剤を含有していてもよい。他の粉末冶金用潤滑剤としては、エチレンビスステアリン酸アミドおよびステアリン酸アミドが挙げられる。他の粉末冶金用潤滑剤を用いる場合、本発明の粉末冶金用潤滑剤と他の粉末冶金用潤滑剤とを質量比1:9〜9:1で乾式混合させた潤滑剤混合物として用いてもよい。
【0042】
本発明の粉末冶金用粉末混合物は、均一な混合物を得るのに十分な時間、十分に混合される。通常、混合物は30分間〜2時間、より好ましくは45分間〜1.5時間混合され、均一な混合物が得られる。混合に際しては、ボールミキサーなどいずれの好適な混合手段を用いることができる。
【0043】
本発明の粉末冶金用粉末混合物は、次いで、金型に流し込み圧縮成型される。さらに、圧縮成型体は、金型からの抜き出し処理がなされ、通常、圧縮成型体の焼結が起きる焼結炉に運ばれる。焼結とは、圧縮成型体の大部分の成分の液相温度以下に圧縮成型体を加熱することによる圧縮成型体中の隣接面の結合である。焼結は、通常の焼結温度(1050〜1300℃)にて、また選択的に窒素と水素のガス混合物の還元雰囲気下で、いずれも20分間〜1時間、好ましくは30分間行なわれ、これにより、接触点で粉末粒子の拡散結合が達成され、焼結塊が形成させる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
【0045】
〔粉末冶金用潤滑剤の調製〕
(実施例1)
3Lセパラブルフラスコに混合脂肪酸(ミリスチン酸を2.1質量%、パルミチン酸を30.3質量%、ステアリン酸を66.5%、アラキン酸を0.8質量%、およびベヘン酸を0.3質量%含有する。)250g、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロックエーテル(日油株式会社製、商品名:プロノン♯104)を0.75gおよび水2500gを仕込み、90℃まで昇温した。次いで、48質量%水酸化ナトリウム水溶液を77.2g加え、同温度(90℃)にて1時間攪拌し、脂肪酸アルカリ化合物塩水溶液を得た。
その後、90℃に保持したまま、20質量%硫酸銅水溶液151.2gを30分間(1.1×10
−4mol/秒)かけて脂肪酸アルカリ化合物塩水溶液に滴下した。滴下終了後、90℃に保持して10分間攪拌して熟成した。得られた混合脂肪酸銅塩水溶液スラリーに水1500gを加え、65℃以下まで冷却した。その後、吸引濾過機でろ過し、1000gの水で2回水洗し、得られたケーキをミクロンドライヤーで乾燥、粉砕して脂肪酸銅塩粒子を得た。
【0046】
(実施例2)
3Lセパラブルフラスコに混合脂肪酸(ミリスチン酸を1.6質量%、パルミチン酸を24.0質量%、ステアリン酸を73.4質量%、アラキン酸を0.7質量%、およびベヘン酸を0.3質量%含有する。)250g、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロックエーテル(日油株式会社製、商品名:プロノン♯104)を0.75gおよび水2500gを仕込み、90℃まで昇温した。次いで、48質量%水酸化ナトリウム水溶液を76.5g加え、同温度(90℃)にて1時間攪拌し、脂肪酸アルカリ化合物塩水溶液を得た。
その後、90℃に保持したまま、20質量%硫酸銅水溶液150.1gを1時間(5.2×10
−4mol/秒)かけて脂肪酸アルカリ化合物塩水溶液に滴下した。滴下終了後、さらに、90℃にて1時間攪拌した。得られた混合脂肪酸銅塩水溶液スラリーに水1500gを加え、65℃以下まで冷却した。その後、吸引濾過機でろ過し、1000gの水で2回水洗し、得られたケーキをミクロンドライヤーで乾燥、粉砕して脂肪酸銅塩粒子を得た。
【0047】
(実施例3)
4Lステンレス製ニーダーに混合脂肪酸(ミリスチン酸を2.1質量%、パルミチン酸を30.3質量%、ステアリン酸を66.5質量%、アラキン酸を0.8質量%、およびベヘン酸を0.3質量%含有する。)を1000g(2.9モル)仕込み、80℃まで昇温した。次いで、酸化銅(II)110g(1.5モル)を加え、反応により生成する水を除去しながら内温を180℃まで昇温し、同温度で1時間攪拌を継続した。
その後、ステンレスバットに排出し、放冷して固化した後に気流式粉砕装置を使用して粉砕を行い、空気分級機で分級して150μm以上の粒子を除去し、脂肪酸銅塩粒子を得た。
【0048】
(比較例1)
4Lステンレス製ニーダーに混合脂肪酸(ミリスチン酸を2.1質量%、パルミチン酸を30.3質量%、ステアリン酸を66.5質量%、アラキン酸を0.8質量%、およびベヘン酸を0.3質量%含有する。)を1000g(2.9モル)仕込み、80℃まで昇温した。次いで、酸化銅(II)110g(1.5モル)を加え、反応により生成する水を除去しながら内温を180℃まで昇温し、同温度で1時間攪拌を継続した。
その後、ステンレスバットに排出し、放冷して固化した後に気流式粉砕装置を使用して粉砕を行い、空気分級機で分級して500μm以上の粒子を除去し、脂肪酸銅塩粒子を得た。
【0049】
(比較例2)
3Lセパラブルフラスコに混合脂肪酸(ミリスチン酸を1.6質量%、パルミチン酸を24.0質量%、ステアリン酸を73.4質量%、アラキン酸を0.7質量%、およびベヘン酸を0.3質量%含有する。)250g、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロックエーテル(日油株式会社製、商品名:プロノン♯104)を0.75gおよび水2500gを仕込み、98℃まで昇温した。次いで、48質量%水酸化ナトリウム水溶液76.5gを加え、同温度(98℃)にて1時間攪拌し、脂肪酸アルカリ化合物塩水溶液を得た。
その後、98℃に保持したまま、20質量%硫酸銅水溶液150.1gを1時間(5.2×10
−4mol/秒)かけて脂肪酸アルカリ化合物塩水溶液に滴下した。滴下終了後、さらに、98℃にて1時間攪拌した。得られた混合脂肪酸銅塩水溶液スラリーに水1500gを加え、65℃以下まで冷却した。その後、吸引濾過機でろ過し、1000gの水で2回水洗し、得られたケーキをミクロンドライヤーで乾燥、粉砕して脂肪酸銅塩粒子を得た。
【0050】
(比較例3)
60gのKOHを1Lの蒸留水中に溶かした後、ステアリン酸70gを加えて攪拌し、この溶液を加熱して沸騰させることによりステアリン酸カリウムを作成した。次に、この作成液を冷却することでゼリー状にした。これを16時間放置して分離させた固体のステアリン酸カリウムを、等量のメタノールと混ぜ合わせてから濾過した。ステアリン酸1質量部に対してメタノール4質量部を用い、この濾過処理をさらに2回行った。
次にステアリン酸カリウム(約3g)を150mlの蒸留水中に溶かした。これとは別に、50mlの蒸留水に約1.2gの硫酸銅を溶かした溶液も作成した。これら2つの溶液を混合して、ステアリン酸第二銅を青い沈殿物として生成させた。この沈殿物を濾過し、蒸留水で洗浄して乾燥後、粉砕して脂肪酸銅塩粒子を得た。
【0051】
(比較例4)
脂肪酸銅塩粒子の代わりに脂肪酸金属塩粒子として、ステアリン酸亜鉛(日油株式会社製、商品名「ジンクステアレート」)を用いた。
【0052】
実施例1〜3および比較例1〜4の脂肪酸銅(金属)塩粒子について、粒度要約値A〔体積基準における10%積算径D10(μm)、体積基準におけるメジアン径D50(μm)、体積基準における90%積算径D90(μm)から算出した値〕、ゆるみ嵩密度Da(g/cc)および凝集度B(%)を、それぞれ以下の装置を用い、上述の方法で測定した。その結果を表1に示す。
【0053】
(1)粒度(D10、D50、D90)
粒度分布測定装置(機器名「マイクロトラックMT−3000」日機装株式会社製)で測定した(原理:レーザー回折・散乱法)。
測定する粉体の集団の全体積を100%として累積カーブを求めたとき、その累積カーブが10%、50%、90%となる点の粒子径をそれぞれ10%径(D10)、50%径(D50)、90%径(D90)(μm)として求めた。
【0054】
(2)ゆるみ嵩密度
粉体特性評価装置(機器名「パウダーテスターPT−N型」ホソカワミクロン株式会社製)で測定した。
【0055】
(3)凝集度B
粉体特性評価装置(機器名「パウダーテスターPT−N型」ホソカワミクロン株式会社製)で測定した。脂肪酸銅(金属)塩粒子を80℃の環境下に10分放置したものを測定試料とした。
【0056】
【表1】
【0057】
(実施例1〜4および比較例1〜5;粉末冶金用粉末混合物の製造と評価)
ベース金属粉末として純鉄粉(神戸製鋼所製、商品名「アトメル300M」)を用い、この純鉄粉100質量部に対して、市販の銅粉末2質量部、黒鉛粉末0.8質量部、表1に示した粉末冶金用潤滑剤0.1質量部を加えて混合し、この混合物を羽根付ミキサーによって30分間高速攪拌した。攪拌後、排出して混合粉末のサンプルを得た。
得られた混合粉末を用いて、見かけ密度、流動度、抜き出し圧力を測定した。また、混合粉末の特性の測定として、混合粉末の焼結体について、引張り強さ、炉内汚染を測定した。結果を表2に示した。
【0058】
見かけ密度(g/cm
3)
JIS Z 2504(金属粉の見掛密度試験法)に準じて行った。
【0059】
流動度(sec/50g)
JIS Z 2502(金属粉の流動度試験法)に準じ、直径2.63mmのオリフィスを50gの金属粉末が流れ出るまでの時間を流動度(秒/50g)とした。
【0060】
抜き出し圧力(MPa)
成形圧を4ton/cm
2に設定して、直径11.3mm×高さ11mmのタブレットを圧縮成形し、ついで金型から成形体を抜き出し、その時の抜き出し圧力で評価した。なお、抜き出し圧力は、抜き出しに必要な力を上記のタブレットの断面積(直径11.3mmの円の面積)で除した値である。
【0061】
引張り強さ(MPa)
上記の抜き出し圧力の測定にて圧縮成形した成形体に、弱酸化性のRXガス雰囲気下で、昇温速度:60℃/分、保持:1200℃×20分、冷却速度:60℃/分の条件で焼結を施し、焼結体とした。焼結後、大気中にて180℃、60分の焼戻し処理を施した。なお、焼結体の引張強さは、JIS Z 2550に従い測定した。
【0062】
炉内汚染
上記の引張り強さの測定で焼結を施した焼結炉の汚れを観察し、以下の基準で評価した。
○:焼結炉内部の表面に析出物(汚れ)が無い。
×:焼結炉内部の表面に析出物(汚れ)が有る。
【0063】
表2に記載の実施例1〜3では表1中の実施例1〜3の粉末冶金用潤滑剤を用い、表2に記載の実施例4では表1中の実施例1記載の潤滑剤50質量部と脂肪酸アミド50質量部をナウターミキサーで30分間乾式混合して得た混合潤滑剤を用いた。なお、脂肪酸アミドは、日油株式会社製「アルフローH−50TF」(エチレンビスステアリン酸アミド)である。
【0064】
また、表2に記載の比較例1〜4では表1中の比較例1〜4の粉末冶金用潤滑剤を用い、表2に記載の比較例5では表1中の比較例4記載の潤滑剤50質量部と脂肪酸アミド50質量部をナウターミキサーで30分間乾式混合して得た混合潤滑剤を用いた。なお、脂肪酸アミドは、日油株式会社製「アルフローH−50TF」(エチレンビスステアリン酸アミド)である。
【0065】
【表2】
【0066】
表2に示す実施例1〜4の結果より、本発明による粉末冶金用潤滑剤を使用すると、抜き出し圧力を低減でき、引張り強さが870MPa以上となり、炉内汚染を起こさなかった。
これに対し、比較例1〜3は、抜き出し圧力が9.6MPa以上と高く、引張り強度も780MPa以下となった。また、比較例4〜5では、引張り強度が750MPa以下となり、従来用いられるステアリン酸亜鉛の影響により炉内汚染を引き起こした。