(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記回転行列、前記第2の変換行列、前記空間ベクトル、前記法線ベクトル、および前記任意定数における未知のパラメーターの数の総和が、式(1)が示す方程式の数よりも少なく、
前記算出部は、反復法または最小二乗法により前記法線ベクトルを算出する
ことを特徴とする請求項2に記載のプロジェクター。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
三角測量を利用するためには、投射光学系または撮像光学系などの光学系間の相対的な位置関係(位置および角度)が既知である必要がある。特許文献1に記載の技術により投射面の傾きを測定するためには、投射レンズと撮像レンズとの位置関係が既知でなければならない。特許文献2に記載の技術によって対象点の3次元の位置を検出するためには、2つのカメラのレンズの位置関係が既知でなければならない。したがって、光学系間の位置関係が何らかの外的な要因(例えば、プロジェクターに衝撃が加わった場合、または煽り投射によってプロジェクターの筐体が歪んだ場合など)によって変化した場合、三角測量を利用した方法では測定誤差が大きくなるという問題がある。
本発明は、投射面の法線ベクトルの測定誤差を低減することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の課題を解決するため、本発明は、
映像信号に応じて光を変調する光変調器とレンズを含み、前記映像信号が示す画像を、
前記レンズを介して投射面に投射する投射部と、前記投射部により画像が投射された
前記投射面を撮像する撮像部と、前記レンズの光軸に対する前記撮像部の光軸の相対的な回転を示す3次の回転行列が未知の状態で、前記投射面の法線ベクトルを算出する算出部と
、前記算出部により算出された前記法線ベクトルに基づいて、前記光変調器における画像を補正する補正部とを備え
、前記投射部は、4点以上の特徴点を含む較正画像を前記投射面に投射し、前記撮像部は、前記較正画像が投射された前記投射面を撮像し、前記算出部は、前記光変調器における画像を前記撮像部により撮像された撮像画像に射影変換する第1の変換行列であって、前記撮像画像に含まれる前記特徴点に基づいて算出された第1の変換行列と、世界座標を前記光変調器における座標に透視変換する第2の変換行列、前記世界座標を前記撮像画像における座標に透視変換する既知の第3の変換行列、前記レンズに対する前記撮像部の相対的な位置を示す空間ベクトル、前記回転行列、および前記法線ベクトルとの関係に基づいて、前記法線ベクトルを算出するプロジェクターを提供する。このプロジェクターによれば、三角測量を利用した場合に比べて、投射面の法線ベクトルの測定誤差が低減される。
【0008】
また、別の好ましい態様において、前記算出部は、次式(1)により前記法線ベクトルを算出することを特徴とする。
【数1】
ここで、Hは前記第1の変換行列、λは任意定数、Bは前記第3の変換行列、Rは前記回転行列、Eは単位行列、tは前記空間ベクトル、nは前記法線ベクトル、Aは前記第2の変換行列をそれぞれ示す。このプロジェクターによれば、連立方程式を解くことにより投射面の法線ベクトルが算出される。
この態様において、前記回転行列、前記第2の変換行列、前記空間ベクトル、前記法線ベクトル、および前記任意定数における未知のパラメーターの数の総和が、式(1)が示す方程式の数よりも少なく、前記算出部は、反復法または最小二乗法により前記法線ベクトルを算出してもよい。このプロジェクターによれば、未知のパラメーターの数の総和が、式(1)が示す方程式の数と等しくない場合であっても、投射面の法線ベクトルが算出される。
【0009】
また、別の好ましい態様において、前記第2の変換行列は既知であることを特徴とする。このプロジェクターによれば、投射部のレンズが単焦点レンズである場合に、投射面の法線ベクトルの測定誤差が低減される。
【0010】
また、別の好ましい態様において、前記空間ベクトルは既知であることを特徴とする。このプロジェクターによれば、投射部のレンズがズームレンズであっても、投射面の法線ベクトルの測定誤差が低減される。
【0012】
また、本発明は、
映像信号に応じて光を変調する光変調器とレンズを含む投射部を用いて、前記映像信号が示す画像を、
前記レンズを介して投射面に投射する工程と、
前記投射部により画像が投射された
前記投射面を撮像部が撮像する工程と、前記レンズの光軸に対する前記撮像部の光軸の相対的な回転を示す3次の回転行列が未知の状態で、前記投射面の法線ベクトルを算出する工程と
、算出された前記法線ベクトルに基づいて、前記光変調器における画像を補正する工程とを有
し、前記投射する工程は、4点以上の特徴点を含む較正画像を前記投射面に投射し、前記撮像する工程は、前記較正画像が投射された前記投射面を撮像し、前記算出する工程は、前記光変調器における画像を前記撮像部により撮像された撮像画像に射影変換する第1の変換行列であって、前記撮像画像に含まれる前記特徴点に基づいて算出された第1の変換行列と、世界座標を前記光変調器における座標に透視変換する第2の変換行列、前記世界座標を前記撮像画像における座標に透視変換する既知の第3の変換行列、前記レンズに対する前記撮像部の相対的な位置を示す空間ベクトル、前記回転行列、および前記法線ベクトルとの関係に基づいて、前記法線ベクトルを算出するプロジェクターの制御方法を提供する。このプロジェクターの制御方法によれば、三角測量を利用した場合に比べて、投射面の法線ベクトルの測定誤差が低減される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係るプロジェクター1の動作概要を説明する図である。プロジェクター1は、映像信号により示される画像(以下、「入力画像」という)をスクリーンSCに投射する装置である。スクリーンSCは、プロジェクター1から投射される画像を映し出す平面(投射面)である。プロジェクター1の投射軸がスクリーンSCに対して理想的な状態から傾いている場合、スクリーンSC上に映し出される画像(以下、「投射画像」という)は、破線で示したように台形に歪んだものとなる。プロジェクター1は、この歪み(台形歪み)を補正する機能を有する。
図1の例で、プロジェクター1は、補正後の画像として画像IprをスクリーンSCに投射している。台形歪みの補正は、スクリーンSCの法線ベクトルを用いて行われる。
【0015】
図2は、プロジェクター1の機能的構成を示すブロック図である。プロジェクター1は、投射部101と、較正画像記憶部102と、撮像部103と、特徴点検出部104と、射影変換行列算出部105と、法線ベクトル算出部106と、補正値算出部107と、調整値算出部108と、レンズ駆動部109と、映像信号取得部110と、歪み補正部111とを有する。投射部101は、入力画像および較正画像を、レンズを介してスクリーンSCに投射する。較正画像は、台形歪みを補正するために用いられる、スクリーンSCの法線ベクトル(以下、「法線ベクトルn」と表現する)の算出に用いられる画像である。較正画像は、4点以上の特徴点を含む。投射部101は、映像信号に応じて光源(図示略)からの光を変調する光変調器を有する。較正画像記憶部102は、較正画像を示す画像データを記憶する。撮像部103は、投射部101により較正画像が投射されたスクリーンSCを撮像する。特徴点検出部104は、撮像部103により撮像された画像(以下、「撮像画像」という)に含まれる特徴点を検出する。射影変換行列算出部105は、特徴点検出部104により検出された特徴点に基づいて第1の変換行列(以下、「射影変換行列H」と表現する)を算出する。射影変換行列Hは、光変調器における画像を撮像画像に射影変換するための3次正方行列である。法線ベクトル算出部106(算出部の一例)は、射影変換行列算出部105により算出された射影変換行列Hに基づいて、レンズの光軸に対する撮像部103の光軸の相対的な回転(回転行列Rにより表される)が未知の状態で、法線ベクトルnを算出する。補正値算出部107は、法線ベクトル算出部106により算出された法線ベクトルnに基づいて、光変調器における画像を補正するための補正値を算出する。調整値算出部108は、法線ベクトル算出部106により算出された法線ベクトルnに基づいて、レンズのフォーカスを調整するための調整値を算出する。レンズ駆動部109は、調整値算出部108により算出された調整値を用いて、レンズのフォーカスを調整する。映像信号取得部110は、外部装置から映像信号を取得する。歪み補正部111は、補正値算出部107により算出された補正値を用いて、光変調器における画像を補正する。
【0016】
図3は、プロジェクター1のハードウェア構成を示すブロック図である。プロジェクター1は、CPU(Central Processing Unit)10と、ROM(Read Only Memory)11と、RAM(Random Access Memory)12と、IF(インターフェース)部13と、画像処理回路14と、投射ユニット15と、カメラ16と、受光部17と、操作パネル18と、入力処理部19とを有する。CPU10は、制御プログラム11Aを実行することによりプロジェクター1の各部を制御する制御装置である。ROM11は、各種プログラムおよびデータを記憶した不揮発性の記憶装置である。ROM11は、CPU10が実行する制御プログラム11Aを記憶する。RAM12は、データを記憶する揮発性の記憶装置である。RAM12は、フレームメモリー12aを有する。フレームメモリー12aは、映像信号により示される映像のうち、1フレーム分の画像を記憶する領域である。
【0017】
IF部13は、DVD(Digital Versatile Disc)プレーヤー又はパーソナルコンピューターなどの外部装置と通信を行なう。IF部13は、外部装置と接続するための各種端子(例えば、VGA端子、USB端子、有線または無線LANインターフェース、S端子、RCA端子、HDMI(High-Definition Multimedia Interface:登録商標)端子など)を備える。IF部13は、外部装置から取得した映像信号から、垂直・水平の同期信号を抽出する。画像処理回路14は、映像信号により示される画像に所定の画像処理を施す。画像処理回路14は、画像処理後の画像をフレームメモリー12aに書き込む。
【0018】
投射ユニット15は、光源151と、液晶パネル152と、光学系153と、光源駆動回路154と、パネル駆動回路155と、光学系駆動部156とを有する。光源151は、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、若しくはメタルハライドランプなどのランプ、又はLED(Light Emitting Diode)若しくはレーザーダイオードなどの発光体を有し、液晶パネル152に光を照射する。液晶パネル152は、光源151から照射された光を画像データに応じて変調する光変調器である。この例で液晶パネル152は、マトリクス状に配置された複数の画素を有する。液晶パネル152は、例えば、XGA(eXtended Graphics Array)の解像度を有し、1024×768個の画素により構成される表示領域を有する。この例で、液晶パネル152は透過型の液晶パネルであり、各画素の透過率が画像データに応じて制御される。プロジェクター1は、RGBの三原色に対応した3枚の液晶パネル152を有する。光源151からの光はRGBの3色の色光に分離され、各色光は対応する液晶パネル152に入射する。各液晶パネルを通過して変調された色光はクロスダイクロイックプリズム等によって合成され、光学系153に射出される。光学系153は、液晶パネル603により画像光へと変調された光を拡大してスクリーンSCに投射する投射レンズ1531と、投射画像の焦点を調整するフォーカスレンズ1532とにより構成されている。投射レンズ1531には、単焦点レンズが用いられる。光源駆動回路154は、CPU10の制御に従って光源151を駆動する。パネル駆動回路155は、CPU10から出力された画像データに応じて液晶パネル152を駆動する。光学系駆動部156は、フォーカスレンズ1532のフォーカスを調整するモーター、および当該モーターをCPU10の制御に従って駆動する駆動回路を有する。
【0019】
カメラ16は、スクリーンSCを撮像し、画像データを生成するデジタルカメラである。カメラ16は、例えば、投射ユニット15が投射画像を投射可能な最大範囲を含む画角でスクリーンSCを撮像する。受光部17は、コントローラーRCから送信される赤外線信号を受光し、受光した赤外線信号をデコードして入力処理部19に出力する。操作パネル18は、プロジェクター1の電源のオン/オフまたは各種操作を行うためのボタンおよびスイッチを有する。入力処理部19は、コントローラーRCまたは操作パネル18による操作内容を示す情報を生成し、CPU10に出力する。
【0020】
プロジェクター1において、プログラムを実行しているCPU10は、特徴点検出部104、射影変換行列算出部105、法線ベクトル算出部106、補正値算出部107、および調整値算出部108の一例である。プログラムを実行しているCPU10により制御されている投射ユニット15(光学系駆動部156を除く)は、投射部101の一例である。プログラムを実行しているCPU10により制御されている光学系駆動部156は、レンズ駆動部109の一例である。プログラムを実行しているCPU10により制御されているカメラ16は、撮像部103の一例である。ROM11は、較正画像記憶部102の一例である。プログラムを実行しているCPU10により制御されているIF部13は、映像信号取得部110の一例である。プログラムを実行しているCPU10により制御されている画像処理回路14は、歪み補正部111の一例である。
【0021】
図4は、プロジェクター1が投射画像の台形歪みを補正する処理(以下、「歪み補正処理」という)を示すフローチャートである。歪み補正処理は、例えば、プロジェクター1の電源が投入されたことを契機として、または、ユーザーがコントローラーRCを操作して歪み補正処理を開始するための指示をプロジェクター1に入力したことを契機として開始される。ステップS1において、CPU10は、較正画像をスクリーンSCに投射する。具体的には、CPU10は、較正画像を示す画像データをROM11から読み出して、当該画像データをパネル駆動回路155に出力する。
【0022】
図5は、較正画像の例を示す図である。
図5は、液晶パネル152に表示された較正画像Icを示している。
図5において、実線は液晶パネル152の表示領域の輪郭を表し、破線は較正画像Icの輪郭を表す。この例で、較正画像Icは、特徴点以外の領域が透明、且つ矩形の画像である。
図5の例では、較正画像Icは、点U1から点U4の4つの特徴点を有する。この例では、4つの頂点がそれぞれ特徴点である。特徴点は、液晶パネル152において複数の画素の集合として表示される。液晶パネル152における各特徴点の座標(ここでは、特徴点を構成する複数の画素の中心の座標)は、予めROM11に記憶されている。
図5において、点U1から点U4の各特徴点の液晶パネル152上の座標は、U1(X0,Y0)、U2(X1、Y1)、U3(X2、Y2)、U4(X3、Y3)である。投射レンズ1531の光軸がスクリーンSCに対して理想的な状態から傾いている場合、スクリーンSCに映し出される較正画像Icは、歪んだものとなる。
【0023】
再び
図4を参照する。ステップS2において、CPU10は、スクリーンSCに投射された較正画像Icを撮像する。CPU10は、較正画像Icが撮像された撮像画像をRAM12に記憶する。ステップS3において、CPU10は、較正画像Icが撮像された撮像画像から特徴点を検出する。具体的には、CPU10は、撮像画像に含まれる4つの特徴点を検出し、撮像画像における各特徴点の座標を算出する。CPU10は、算出された各特徴点の座標をRAM12に記憶する。
【0024】
図6は、撮像画像Iphを示す図である。撮像画像Iphは、スクリーンSCに投射された較正画像Icを撮像した画像である。
図6において、実線は撮像画像Iphの輪郭(カメラ16のフレーム)を表し、破線は較正画像Icの輪郭を表す。撮像画像Iphにおいて点u1から点u4の各特徴点は、較正画像Icにおける点U1から点U4の各特徴点にそれぞれ対応する。
図6の例で、点u1から点u4の各特徴点の撮像画像Iph上の座標は、u1(x0、y0)、u2(x1、y1)、u3(x2、y2)、u4(x3、y3)である。
【0025】
再び
図4を参照する。ステップS4において、CPU10は、液晶パネル152における各特徴点の座標と、撮像画像Iphにおける各特徴点の座標とに基づいて、以下の式(2)に示す射影変換行列Hを算出する。
【数2】
具体的には、CPU10は、液晶パネル152における各特徴点(点U1から点U4)の座標をROM11から、撮像画像Iphにおける各特徴点(点u1から点u4)の座標をRAM12からそれぞれ読み出して、以下の式(3)に示す8元連立一次方程式を解くことにより、射影変換行列Hを算出する。なお、射影変換行列Hのパラメーターi
0は、定数(i
0=1)である。CPU10は、算出した射影変換行列HをRAM12に記憶する。
【数3】
【0026】
ステップS5において、CPU10は、射影変換行列Hを用いて法線ベクトルnを算出する。具体的には、CPU10は、RAM12から射影変換行列Hを読み出して、以下の式(4)に示す9元連立方程式を解くことにより、法線ベクトルn(3行1列の行列)を算出する。式(4)において「T」はある行列の転置を表す。
【数4】
各記号はそれぞれ以下の数または行列を示す。
λ:任意定数
B:世界座標を撮像画像における座標に透視変換するための座標変換行列(3次正方行列)
R:投射レンズ1531の光軸に対するカメラ16の光軸の相対的な回転を示す3次の回転行列
E:3次の単位行列
t:投射レンズ1531に対するカメラ16の相対的な位置を示す空間ベクトル(3行1列の行列)
A:世界座標を液晶パネル152における座標に透視変換するための座標変換行列(3次正方行列)
なお、座標変換行列Aおよび座標変換行列Bは、3次元の世界座標を2次元の平面上の座標に変換する行列であり、ある2次元の平面上の座標を他の2次元の平面上の座標に変換する射影変換行列Hとは異なる種類の行列である。
【0027】
ここで、座標変換行列Bの各パラメーターは、カメラ16に固有の値であり、プロジェクター1の製造時に測定された既知の値がROM11に記憶されている。座標変換行列Aの各パラメーターは、投射レンズ1531により決まる値である。本実施形態では投射レンズ1531が単焦点レンズであるため(焦点距離が変化しないため)、座標変換行列Aの各パラメーターは一定の値となる。そのため、座標変換行列Aの各パラメーターについても、プロジェクター1の製造時に測定された既知の値がROM11に記憶されている。空間ベクトルtは、単位ベクトルに正規化することができ、3つのパラメーターのうち2つのパラメーターに基づいて残りのパラメーターを算出することができる。つまり、空間ベクトルtの未知のパラメーターの数は2つに減らすことができる。したがって、式(4)の右辺について、未知のパラメーターの数の総和は、任意定数λについて1つ、回転行列Rについて3つ、空間ベクトルtについて2つ、法線ベクトルnについて3つの合計9つとなる。これは式(4)から得られる方程式の数と等しいため、式(4)に示す9元連立方程式を解くことにより、法線ベクトルnが算出される。なお、式(4)に示す9元連立方程式を解くと、法線ベクトルnの解が2つ得られるが、CPU10は、算出された回転行列Rと空間ベクトルtとが初期値により近くなる一方の法線ベクトルnを採用する。回転行列Rと空間ベクトルtの初期値は、予めROM11に記憶されている。CPU10は、算出された法線ベクトルnを示すデータをRAM12に記憶する。
【0028】
式(4)によれば、回転行列Rが未知の状態であっても、法線ベクトルnが算出される。したがって、三角測量を利用した場合に比べて、法線ベクトルnの測定誤差が低減される。例えば、投射レンズ1531の光軸に対するカメラ16の光軸の相対的な回転が外的な要因(例えば、プロジェクター1に衝撃が加わった場合、または煽り投射によってプロジェクター1の筐体が歪んだ場合など)によって変化した場合であっても、精度の高い法線ベクトルnが算出される。
【0029】
ステップS6において、CPU10は、法線ベクトルnを用いて、投射レンズ1531に対するスクリーンSCの傾きを算出する。具体的には、CPU10は、RAM12から法線ベクトルnを示すデータと投射レンズ1531の光軸の方向ベクトルを示すデータとを読み出して、法線ベクトルnと投射レンズ1531の光軸とがなす角度θを算出する。投射レンズ1531の光軸の方向ベクトルを示すデータは、歪み補正処理が開始される前に予め測定され、RAM12に記憶されている。CPU10は、算出された角度θをRAM12に記憶する。
【0030】
ステップS7において、CPU10は、スクリーンSCの傾きに応じて、台形歪みを補正するための射影変換行列(以下、「射影変換行列F」と表現する)を算出する。射影変換行列Fは、液晶パネル152における座標を、入力画像における座標に射影変換する3次正方行列である。具体的には、CPU10は、スクリーンSCの傾きに基づいて台形歪みの補正が行われない場合の投射画像を特定し、特定された投射画像に基づいて以下の式(5)に示す射影変換行列Fを算出する。CPU10は、算出された射影変換行列FをRAM12に記憶する。射影変換行列Fの各パラメーターは、補正値の一例である。
【数5】
【0031】
ステップS8において、CPU10は、射影変換行列Fを用いて、入力画像を射影変換する。具体的には、CPU10は、以下の式(6)により、液晶パネル152における座標(Xj,Yj)に対して座標変換を行い、入力画像における座標(Xk,Yk)を算出する。
【数6】
CPU10は、入力画像における座標(Xk,Yk)の画素の階調値を、液晶パネル152における座標(Xj,Yj)の画素の階調値としてフレームメモリー12aに書き込む。なお、式(6)を用いた演算において、入力画像における座標が小数で算出された場合には、対応する階調値が存在しないことになる。この場合、CPU10は、画素補間(畳み込み演算)を行い、入力画像における複数の座標の階調値から一の階調値を算出する。CPU10は、画素補間により算出された階調値を、液晶パネル152における座標(Xj,Yj)の画素の階調値としてフレームメモリー12aに書き込む。このように、液晶パネル152についてX座標およびY座標を走査することにより、液晶パネル152が有するすべての画素について、その階調値が決定される。ステップS9において、CPU10は、液晶パネル152を駆動する。具体的には、CPU10は、フレームメモリー12aに書き込まれた画像データを読み出して、パネル駆動回路155に出力する。ステップS9の処理により、投射画像は、台形歪みのないものとなる。このように、本実施形態では、式(4)により算出された法線ベクトルnに基づいて入力画像の射影変換が行われるため、三角測量により法線ベクトルnが算出された場合に比べて、台形歪みの補正の精度が高くなる。
【0032】
ステップS10において、CPU10は、法線ベクトルnを用いて、投射レンズ1531からスクリーンSCまでの距離dSCを算出する。具体的には、CPU10は、RAM12から法線ベクトルnを示すデータを読み出し、以下の式(7)により距離dSCを算出する。CPU10は、算出された距離dSCをRAM12に記憶する。
【数7】
【0033】
ステップS11において、CPU10は、距離dSCに応じて、フォーカスレンズ1532のフォーカスを調整するための調整値を算出する。CPU10は、予め定められた式をROM11から読み出して、距離dSCに応じた調整値を算出する。CPU10は、算出された調整値を示すデータをRAM12に記憶する。ステップS12において、CPU10は、調整値を用いてフォーカスレンズ1532のフォーカスを調整する。具体的には、CPU10は、調整値を示すデータをRAM12から読み出して、光学系駆動部156に出力する。このように、本実施形態では、式(4)により算出された法線ベクトルnに基づいてフォーカスの調整が行われるため、三角測量により法線ベクトルnが算出された場合に比べて、フォーカスの調整の精度が高くなる。
【0034】
<変形例>
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。以下、変形例をいくつか説明する。以下で説明する変形例のうち、2つ以上のものが組み合わされて用いられても良い。
【0035】
(1)変形例1
上述の実施形態では、投射レンズ1531が単焦点レンズであって、座標変換行列Aの各パラメーターが既知である場合について説明した。この点、投射レンズ1531は、焦点距離が変化するズームレンズであって、座標変換行列Aのパラメーターのうちの1つが未知であってもよい。この場合、式(4)に示す連立方程式において、空間ベクトルtの各パラメーターには、プロジェクター1の製造時に測定された既知の値が用いられる。空間ベクトルtの各パラメーターの値は、予めROM11に記憶されている。これにより、式(4)の右辺について、未知のパラメーターの数の総和は、任意定数λについて1つ、回転行列Rについて3つ、法線ベクトルnについて3つ、座標変換行列Aについて1つの合計8つとなる。これは式(4)から得られる方程式の数よりも少ないため、式(4)に示す9本の方程式からなる8元連立方程式を解くことにより、法線ベクトルnが算出される。未知のパラメーターの数が、式(4)から得られる方程式の数よりも少ない場合、CPU10は、反復法または最小二乗法により法線ベクトルnを算出する。なお、座標変換行列Aおよび空間ベクトルtの各パラメーターのいずれもが既知であってもよい。
【0036】
(2)変形例2
投射レンズ1531がズームレンズである場合、プロジェクター1は、投射レンズ1531の焦点距離を取得するための構成を備えていてもよい。例えば、投射レンズ1531の焦点距離が、可変抵抗の抵抗値を変化させることにより制御される場合には、当該抵抗値に基づいて焦点距離が取得されてもよい。この場合、式(4)の右辺について、未知のパラメーターの数の総和は、実施形態と同様に合計9つとなる。したがって、実施形態と同様の方法により法線ベクトルnが算出される。
【0037】
(3)その他の変形例
歪み補正処理において行われる処理は、
図4に示した処理に限らない。例えば、フォーカスレンズ1532のフォーカスの調整に関する処理(ステップS10からステップS12)が、入力画像の射影変換に関する処理(ステップS6からステップS9)よりも前に行われてもよい。
較正画像は、
図5に示したものに限らない。較正画像は、例えば、輪郭がユーザーに知覚されるように液晶パネル152に表示されてもよい。別の例で、較正画像は、4点を超える特徴点を含んでいてもよい。
プロジェクター1のハードウェア構成は、
図3に示した構成に限らない。プロジェクター1は、
図4に示した各ステップの処理を実行できれば、どのようなハードウェア構成であってもよい。例えば、液晶パネル152に代えて、デジタルミラーデバイス(DMD)が光変調器として用いられてもよい。