(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、インク吐出面に存在する異物によっては、前記特許文献1のようなワイピング装置で除去することが難しい場合もある。例えば、異物が、ノズルに突き刺さった紙粉(紙の繊維)等である場合には、ワイピング部材でインク吐出面を何回払拭しても、このような異物を除去することは難しい。
【0006】
本発明の目的は、液体吐出ヘッドの液体吐出面に付着した異物をより確実に除去できる、液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明の液体吐出装置は、複数のノズルが形成された液体吐出面を有する液体吐出ヘッドと、第1縁部を有する第1除去部材と、第2縁部を有する第2除去部材と、前記第1除去部材及び前記第2除去部材と、前記液体吐出ヘッドとを、前記液体吐出面と平行な方向な第1方向に相対移動させる第1駆動部と、前記第1縁部と前記第2縁部とが、互いに接近と離間を繰り返すように、前記第1除去部材と前記第2除去部材とを相対的に移動させる第2駆動部とを備えていることを特徴とするものである。
【0008】
本発明では、第1除去部材と第2除去部材とが液体吐出面に対して相対移動しつつ、第1除去部材の第1縁部と第2除去部材の第2縁部とが接近と離間を繰り返す。これにより、ノズルに突き刺さった紙粉などの異物を、第1縁部と第2縁部とで挟み、その状態で、第1除去部材と第2除去部材を移動させることによって、異物を確実に除去することができる。
【0009】
第2の発明の液体吐出装置は、前記第1の発明において、前記第1縁部と前記第2縁部は、それぞれ、前記第1方向に沿って延び、前記第2駆動部は、前記第1縁部と前記第2縁部とが、前記液体吐出面と平行で且つ前記第1方向と交差する第2方向において、互いに接近と離間を繰り返すように、前記第1除去部材と前記第2除去部材とを前記第2方向に相対的に移動させることを特徴とするものである。
【0010】
本発明では、第1縁部と第2縁部とが接近及び離間する第2方向が、第1方向とは異なる方向となっている。そのため、第1縁部と第2縁部とを第2方向に移動させて異物を挟み、その状態で第1除去部材と第2除去部材を速やかに第1方向に移動させることで、異物をスムーズに除去することができる。
【0011】
第3の発明の液体吐出装置は、前記第2の発明において、前記複数のノズルは、前記第1方向に所定間隔で配列されてノズル列を構成し、前記第1駆動部は、前記第1除去部材と前記第2除去部材を、前記液体吐出面に対して、前記ノズル列に沿って前記第1方向に移動させ、前記第2駆動部は、前記第1除去部材と前記第2除去部材が、前記第1方向において前記所定間隔だけ移動する1周期の間に、前記第1縁部と前記第2縁部とが1回最接近するように、前記第1除去部材と前記第2除去部材を駆動することを特徴とするものである。
【0012】
本発明によれば、第1除去部材と第2除去部材とが、ノズルの配列間隔と等しい距離だけ移動する度に、第1縁部と第2縁部とが1回最接近する。これにより、全てのノズルについて、ノズルに付着した異物を除去することができる。
【0013】
第4の発明の液体吐出装置は、前記第2又は第3の発明において、前記第1除去部材と前記第2除去部材は、共に板状の部材であり、前記第1除去部材には第1貫通孔が形成され、前記第2除去部材には第2貫通孔が形成され、前記第1除去部材と前記第2除去部材とが部分的に重ねられており、前記第1貫通孔の前記第1方向に沿って延びる縁部が前記第1縁部を構成し、前記第2貫通孔の前記第1方向に沿って延びる縁部が前記第2縁部を構成していることを特徴とするものである。
【0014】
本発明では、第1除去部材と第2除去部材とが部分的に重なった状態で第2方向に相対移動することから、第1除去部材と第2除去部材を、第2方向における狭い範囲内でそれぞれ移動させることができる。尚、第1除去部材と第2除去部材とが重なった状態で、第1縁部と第2縁部とを接近させるようにするには、第1縁部と第2縁部が、除去部材に形成された切り欠きの縁部であってもよい。これに対して、本発明では、第1縁部と第2縁部とが、除去部材に形成された貫通孔の縁部であり、貫通孔の場合は、切り欠きと比べて、第1除去部材及び第2除去部材の剛性が高いものとなる。従って、第1除去部材と第2除去部材の剛性によって、それらが液体吐出面に沿った姿勢を維持することができ、第1縁部と第2縁部とで確実に異物を挟んで除去することができる。
【0015】
第5の発明の液体吐出装置は、前記第4の発明において、前記複数のノズルは、前記第1方向に所定間隔で配列されてノズル列を構成し、前記第2除去部材には、前記第2方向に並ぶ2つの前記第2貫通孔と、前記第1方向に沿って延びて前記2つの第2貫通孔を仕切る仕切部とが形成され、前記仕切部の前記第2方向における両側の2つの縁部がそれぞれ前記第2縁部を構成し、
前記第1駆動部は、前記第1除去部材と前記第2除去部材を、前記液体吐出面に対して、前記ノズル列に沿って前記第1方向に移動させ、前記第2駆動部は、2つの前記第2縁部を有する前記仕切部が、前記ノズルを跨ぐように、前記第2除去部材を前記液体吐出面に対して前記第2方向に移動させることを特徴とするものである。
【0016】
本発明では、第2除去部材の仕切部を、ノズル列に対して第2方向における一方側と他方側との間でノズルを跨ぐように交互に移動させるだけで、各ノズルに付着した異物を第1縁部との間で挟むことができる。この構成では、第2除去部材の第2方向における移動量を小さくすることができる。
【0017】
第6の発明の液体吐出装置は、前記第5の発明において、前記第1除去部材は、前記液体吐出面に接触した状態で前記液体吐出面に対して相対移動し、前記第2除去部材は、前記第1除去部材が前記液体吐出面に接触しているときに、前記第1除去部材を基準にして前記液体吐出面とは反対側に配置されて、前記液体吐出面とは接触しない状態で前記液体吐出面に対して相対移動することを特徴とするものである。
【0018】
本発明では、第1除去部材が液体吐出面に接触しながら液体吐出面に対して相対移動するため、ノズルに突き刺さった異物が小さい場合でも、第1縁部と第2縁部と異物を挟んで捕捉しやすくなる。
【0019】
第7の発明の液体吐出装置は、前記第6の発明において、前記第1除去部材はゴム材料又は樹脂材料で形成され、前記第2除去部材は金属材料で形成されていることを特徴とするものである。
【0020】
第1除去部材が液体吐出面と接触しながら移動することによって、液体吐出面が傷つくことを防止するために、第1除去部材はゴム材料又は樹脂材料で形成されていることが好ましい。一方で、第2除去部材もゴム材料や樹脂材料で形成されていると、2枚の除去部材の剛性が不足し、第1、第2除去部材が撓んで液体吐出面から離れてしまうこともあり得る。そこで、剛性確保のために、第2除去部材は金属材料で形成されることが好ましい。
【0021】
第8の発明の液体吐出装置は、前記第6又は第7の発明において、前記第2除去部材は、前記第1除去部材の前記液体吐出面との接触面とは反対側の面に接触し、前記第1除去部材の前記第2除去部材との接触面、又は、前記第2除去部材の前記第1除去部材との接触面の表面摩擦係数が、前記第1除去部材の前記液体吐出面との接触面と比べて低いことを特徴とするものである。
【0022】
第1除去部材が液体吐出面に接触し、且つ、第2除去部材が第1除去部材と接触しているため、2枚の除去部材が液体吐出面に近づいた位置で移動することになり、小さい異物であっても第1縁部と第2縁部とで捕捉しやすくなる。さらに、第1除去部材と第2除去部材の互いの接触面の、少なくとも一方の摩擦係数が小さくなっているため、2つの除去部材が接触した状態でもスムーズな相対移動が可能となる。
【0023】
第9の発明の液体吐出装置は、前記第6〜第8の何れかの発明において、前記第1除去部材と前記第2除去部材は、前記液体吐出面に接触していないときには、互いに重ねられた状態で、それぞれ前記液体吐出面と交差する方向に延びており、前記第1除去部材の先端部は、前記第2除去部材の先端部よりも先に延びており、前記第1縁部と前記第2縁部は、前記第1除去部材と前記第2除去部材の、前記液体吐出面と交差する方向における途中部にそれぞれ設けられ、前記第1除去部材と前記第2除去部材とを、前記液体吐出面に対して、この液体吐出面と交差する方向に移動させる第3駆動部を備え、
前記第3駆動部は、前記第1除去部材と前記第2除去部材の姿勢を、前記第1除去部材の先端部のみが前記液体吐出面に接触した第1接触姿勢と、前記第1接触姿勢にあるときよりも前記第1除去部材が前記液体吐出面に押し付けられて前記第1除去部材と前記第2除去部材とがそれぞれ屈曲し、前記第1縁部と前記第2縁部がそれぞれ前記第1方向に沿った第2接触姿勢と、の間で切り換えることを特徴とするものである。
【0024】
本発明では、第1除去部材と第2除去部材を第1接触姿勢にすることで、液体吐出面に付着した液体を、第1除去部材の先端部で拭き取ることができる。また、第1除去部材と第2除去部材を第2接触姿勢にすることで、ノズルに突き刺さった紙粉等の異物を第1縁部と第2縁部とによって挟んで除去することができる。つまり、第1除去部材と第2除去部材により、液体吐出面に付着した液体の拭き取りと異物の除去の両方を行うことができる。
【0025】
第10の発明の液体吐出装置は、前記第9の発明において、前記第1除去部材と前記第2除去部材に、吸収体が重ね合わされていることを特徴とするものである。
【0026】
第1除去部材と第2除去部材を第1接触姿勢にして、第1除去部材の先端部で液体吐出面に付着した液体を拭き取ったときに、拭き取られた液体が第1貫通孔から裏側に漏れることも考えられる。本発明では、第1除去部材と第2除去部材に重ね合わされた吸収体によって、第1貫通孔から裏側に漏れた液体を吸収できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、インク吐出面に付着した異物を、第1縁部と第2縁部とで挟んだ状態で、第1除去部材と第2除去部材を移動させることにより、異物を確実に除去することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、本発明の実施の形態について説明する。本実施形態は、所定の搬送方向に搬送される記録用紙に対してインクを吐出して画像等を記録する、インクジェット式のプリンタに本発明を適用した一例である。
図1は、本実施形態のプリンタの概略平面図である。
図2は、
図1のII-II線矢視図、
図3は、プリンタの電気的構成を概略的に示すブロック図である。尚、以下では、
図1の紙面手前側を上方、紙面向こう側を下方、
図1の左右方向(用紙幅方向)をプリンタの左右方向と定義して、適宜、上下左右の方向語を使用して説明する。
【0030】
(プリンタの概略構成)
図1〜
図3に示すように、プリンタ1は、インクジェットヘッド2と、2つの搬送ローラ3,4と、除去装置5と、制御装置6等を備えている。
【0031】
インクジェットヘッド2(本発明の液体吐出ヘッド)は、用紙幅方向に長尺なライン型のヘッドである。インクジェットヘッド2は図示しないインクタンクと接続されており、インクタンクからインクが供給される。インクジェットヘッド2の下面には、その長手方向(用紙幅方向)に沿って所定間隔で配列された、複数のノズル10からなるノズル列16が形成されている。以下、複数のノズル10が形成されたインクジェットヘッド2の下面を、インク吐出面2a(本発明の液体吐出面)と称する。また、用紙幅方向と平行なノズル10の配列方向を、ノズル配列方向とも言う。
【0032】
2つの搬送ローラ3,4は、インクジェットヘッド2の長手方向と直交する搬送方向において、インクジェットヘッド2を挟むように配置されている。これら2つの搬送ローラ3,4は、搬送モータ12(
図3参照)によって同期して回転駆動され、記録用紙100を搬送方向に搬送する。尚、以下では、用紙幅方向(ノズル配列方向)と搬送方向とが直交する形態を例に挙げて説明するが、用紙幅方向と搬送方向とが、90度とは異なる角度で交差していてもよい。
【0033】
インクジェットヘッド2は、2つの搬送ローラ3,4によって搬送方向に搬送される記録用紙100に対して、インク吐出面2aに形成された複数のノズル10からそれぞれインクを吐出することにより、記録用紙100に所望の文字や画像等を印刷する。
【0034】
図2に示すように、インクジェットヘッド2とインクタンク(図示省略)との間にはパージポンプ11が配置されている。このパージポンプ11により、インクタンクからのインクを加圧してインクジェットヘッド2に供給することにより、インクジェットヘッド2の複数のノズル10からインクを強制的に排出させる(この動作をパージという)。このパージにより、インクジェットヘッド2内に混入した異物やエア、あるいは、乾燥によって増粘したインクなどがノズル10から排出されるため、ノズル10の吐出不良の解消、あるいは、吐出不良の発生防止が可能となる。尚、パージによって複数のノズル10から排出されたインクは、記録用紙100が搬送される平面よりも下側に配置された、図示しない廃インク受け部材に回収される。
【0035】
除去装置5は、インク吐出面2aに付着したインクの除去と、インク吐出面2aに付着した異物の除去とを行うものである。上述のパージが行われた後には、ノズル10から排出されたインクの一部がインク吐出面2aに付着するため、この付着したインクを除去装置5で拭き取る。また、インク吐出面2aに付着した異物としては、インク吐出面2aのノズル10に突き刺さった紙粉(紙の繊維)が挙げられる。ノズル10に紙粉等の異物が刺さっていると、当然ながらそのノズル10からのインクの吐出が妨げられることから、除去装置5により異物を除去する。
【0036】
除去装置5は、除去ユニット30と、昇降駆動モータ33と、保持部材34とを有する。除去ユニット30は、第1除去部材31及び第2除去部材32と、第1除去部材31と第2除去部材32とを相対的にスライドさせるスライド駆動部35を有する。第1除去部材31と第2除去部材32はそれぞれ板状の部材であり、互いに重ね合わされている。スライド駆動部35は、インク吐出面2aに付着した異物を挟んで取り除くために、第1除去部材31と第2除去部材32とをそれらの面方向に沿って相対的にスライドさせる。昇降駆動モータ33は、除去ユニット30を上下に昇降駆動するモータであり、この昇降駆動モータ33により、除去ユニット30の2つの除去部材31,32の上下位置を変更することが可能である。保持部材34は、除去ユニット30と昇降駆動モータ33を保持している。除去装置5の詳細な構成については後で説明する。
【0037】
除去装置5は、用紙幅方向に移動可能に構成されている。
図2に示すように、除去装置5の保持部材34は、用紙幅方向に延びるガイドレール14に取り付けられている。また、保持部材34には、除去駆動モータ13(本発明の第1駆動部)に接続された無端ベルト15が連結されている。そして、無端ベルト15が拭き取り駆動モータ13によって走行駆動されることにより、除去装置5は、ガイドレール14に沿って用紙幅方向に移動する。
【0038】
尚、除去装置5を移動させる構成は、
図2の構成には限られるものではない。例えば、保持部材34に、用紙幅方向に延びるネジ軸が螺合連結され、このネジ軸が拭き取り駆動モータ13によって回転駆動されることにより、除去装置5が用紙幅方向に移動する構成であってもよい。
【0039】
図1、
図2に示すように、除去装置5は、除去動作を行わないときには、インクジェットヘッド2よりも右側の位置において待機している。待機状態から除去装置5が用紙幅方向に沿って左側に移動すると、除去部材31,32がインク吐出面2aに接触した状態でインク吐出面2aに対して移動することになり、インク吐出面2aに付着した異物やインクの除去を行う(
図5、
図6参照)。除去装置5の除去動作については、後で詳述する。
【0040】
図3に示すように、制御装置6は、CPU(Central Processing Unit)20、ROM(Read Only Memory)21、RAM(Random Access Memory)22、及び、各種制御回路を含むASIC(Application Specific Integrated Circuit)23等を備える。制御装置6は、インクジェットヘッド2、搬送モータ12、パージポンプ11、除去装置5、除去駆動モータ13と接続されている。また、制御装置6には、操作パネル24や、外部装置であるPC25等も接続されている。
【0041】
制御装置6は、ROM21に格納されたプログラムに従い、CPU20及びASIC23により、様々な処理を実行させる。一例を挙げると、制御装置6は、PC25から送信された印刷指令に基づいて、インクジェットヘッド2や搬送モータ12を制御して、記録用紙100に画像等を印刷させる。また、パージポンプ11を制御して、インクジェットヘッド2のパージを行わせる。また、除去装置5及び除去駆動モータ13を制御して、除去装置5にインクジェットヘッド2のインク吐出面2aのインクの拭き取りや異物の除去を行わせる。
【0042】
尚、上記では、制御装置6が、CPU20及びASIC23によって各種の処理を行う例を挙げたが、本発明はこれに限るものではなく、制御装置6はいかなるハードウェア構成で実現してもよい。例えば、CPUのみ又はASICのみで処理を行ってもよい。また、2以上のCPUや、2以上のASICに機能を分担して実現してもよい。
【0043】
(除去装置5の詳細)
次に、除去装置5の詳細構成について説明する。
図4(a)は第1除去部材の一部平面図、(b)は第2除去部材の一部平面図である。
【0044】
第1除去部材31と第2除去部材32は、共に、板状の部材である。第1除去部材31と第2除去部材32の材質は特に限定されるものではない。但し、後述するように、第1除去部材31は、インク吐出面2aに接触しながらインク吐出面2aに対して移動する(
図5、
図6参照)。そのため、インク吐出面2aが傷つくことを防止するという観点からは、第1除去部材31はゴム材料又は樹脂材料で形成されることが好ましい。一方、第2除去部材32もゴム材料又は樹脂材料で形成されてもよいが、2つの除去部材31,32の剛性が低いと、撓んでインク吐出面2aから離れてしまうことも考えられる。そこで、一定以上の剛性を確保するために、第2除去部材32は金属材料で形成されていることが好ましい。
【0045】
図2に示すように、第1除去部材31と第2除去部材32は、インク吐出面2aに接触しない待機状態では、インク吐出面2aと直交する上下方向に沿った姿勢で保持されている。また、第2除去部材32は、第1除去部材31の右側の面に重ね合わされている。上記の待機状態にあるときに、第1除去部材31の先端部(上端部)は、第2除去部材32の先端部より上方に延びている。尚、
図4に示すように、第1除去部材31と第2除去部材32の搬送方向における幅(
図4における左右方向の幅)は、ほぼ等しくなっている。
【0046】
図4(a)に示すように、第1除去部材31の、先端(
図2の待機状態にあるときの上端)から所定距離離れた途中部には、正方形状の第1貫通孔36が形成されている。一方、
図4(b)に示すように、第2除去部材32の、先端から所定距離離れた途中部には、搬送方向に並ぶ2つの矩形状の第2貫通孔37a,37bが形成されている。2つの第2貫通孔37a,37bは、仕切部38によって仕切られている。後述するが、インク吐出面2aの異物を除去する際には、第1除去部材31と第2除去部材32がそれぞれ屈曲して、第1除去部材31の第1貫通孔36が形成された部分と第2除去部材32の第2貫通孔37が形成された部分が、それぞれ、インク吐出面2aと平行な状態となる。このとき、第1除去部材31の第1貫通孔36と第2除去部材32の2つの第2貫通孔37a,37bとが互いに重なり合う位置関係になる(
図8参照)。
【0047】
尚、第1貫通孔36の、搬送方向における両側の2つの縁部をそれぞれ第1縁部41(41a,41b)と称する。また、第2貫通孔37の縁部のうち、仕切部38の搬送方向における両側に設けられた2つの縁部を第2縁部42(42a,42b)と称する。2つの第1縁部41と2つの第2縁部42は、それぞれ、用紙幅方向(ノズル配列方向)に沿って延びている。
【0048】
また、
図2において、第1除去部材31の、第2除去部材32と接触する右側の面には、表面摩擦係数を低下させるための、フッ素系樹脂等のコーティングがなされている。これにより、第1除去部材31の右側の面の表面摩擦係数は、除去動作時にインク吐出面2aと接触する左側の面の表面摩擦係数よりも小さくなっている。
【0049】
スライド駆動部35(本発明の第2駆動部)は、第1除去部材31と第2除去部材32とをそれぞれ独立して、ノズル配列方向と交差する方向(具体的には、搬送方向と平行な方向)に移動させることにより、第1除去部材31と第2除去部材32とを搬送方向において相対的にスライドさせる。このスライド駆動部35の構成は特に限定されないが、例えば、モータ等のアクチュエータと、このアクチュエータで発生した駆動力を、2つの除去部材31,32にそれぞれ伝達するギヤ等からなる2つの駆動力伝達機構で構成することができる。後で説明するが、スライド駆動部35が、第1除去部材31と第2除去部材32を搬送方向に相対的にスライドさせることで、第1縁部41と第2縁部42との間で、インク吐出面2aの異物を挟むことができるようになっている。
【0050】
また、先にも述べたように、本実施形態の除去装置5は、インク吐出面2aに付着したインクの拭き取りと、ノズル10に突き刺さった紙粉等の異物の除去とを行う。昇降駆動モータ33は、除去ユニット30を昇降させることにより、除去ユニット30の上下位置を、インクを拭き取る際の第1位置と、第1位置よりも上方の位置であって異物を除去する際の第2位置との間で切り換える。
図5は、除去装置5の、インク拭き取りのための第1除去動作を示す図、
図6は、除去装置5の、異物除去のための第2除去動作を示す図である。尚、昇降駆動モータ33が、本発明の第3駆動部に相当する。
【0051】
図5に示すように、除去ユニット30が第1位置にあるときには、第1除去部材31の先端がインク吐出面2aよりもh1だけ上方に位置する。この状態で、除去装置5がインク吐出面2aに沿ってノズル配列方向に移動すると、2つの除去部材31,32がインク吐出面2aに押し付けられて少し屈曲する。このとき、第1除去部材31と第2除去部材32は、第1除去部材31の先端部のみが接触する姿勢(本発明の第1接触姿勢)となる。
【0052】
図6に示すように、除去ユニット30が第1位置から第2位置まで上昇すると、第1除去部材31の先端がインク吐出面2aよりもh2(>h1)だけ上方に位置する。この状態で、除去装置5がインク吐出面2aに沿ってノズル配列方向に移動すると、2つの除去部材31,32は、第1位置にあるときよりも強くインク吐出面2aに押しつけられる。これにより、第1除去部材31と第2除去部材32はそれぞれ大きく屈曲し、それらの先端側の、第1貫通孔36や第2貫通孔37が形成された部分が、インク吐出面2aに平行な姿勢(本発明の第2接触姿勢)となる。
【0053】
(第1除去動作:インク拭き取り)
次に、インク吐出面2aに付着したインクを除去する、除去装置5の第1除去動作について説明する。
図5に示すように、制御装置6は、昇降駆動モータ33を制御して、除去ユニット30を第1位置に位置させる。次に、制御装置6は、除去駆動モータ13を制御して、除去装置5をノズル配列方向に沿って左側に移動させる。このとき、2つの除去部材31,32はインク吐出面2aに押し付けられて少し屈曲し、第1除去部材31の、第1貫通孔36が形成された部分よりも先端側の先端部のみがインク吐出面2aに接触した第1接触姿勢をとる。この状態のままで、除去装置5がインク吐出面2aに沿って左側に移動することで、インク吐出面2aに付着したインクが第1除去部材31の先端部によって拭き取られる。
【0054】
(第2除去動作:異物除去)
次に、インク吐出面2aのノズル10に突き刺さった異物を除去する、除去装置5の第2除去動作について説明する。
図6に示すように、制御装置6は、昇降駆動モータ33を制御して、除去ユニット30を、
図5の第1位置よりも上方の第2位置に位置させる。次に、制御装置6は、除去駆動モータ13を制御して、除去装置5をノズル配列方向に沿って左側に移動させる。このとき、2つの除去部材31,32は、第1位置にあるときよりもインク吐出面2aに強く押し付けられて大きく屈曲して、第2接触姿勢を取る。即ち、第1除去部材31の、第1貫通孔36が形成された部分がインク吐出面2aに平行な状態で接触し、且つ、2つの第1縁部41がノズル配列方向に沿った状態となる。また、第2除去部材32の2つの第2貫通孔37が形成された部分が、第1除去部材31を基準としてインク吐出面2aと反対側において、インク吐出面2aと平行な状態で配置され、且つ、2つの第2縁部42がノズル配列方向に沿った状態となる。
【0055】
制御装置6は、2つの除去部材31,32が前記の第2接触姿勢にある状態で、除去駆動モータ13を駆動して、除去装置5をノズル配列方向(本発明の第1方向)の左側に移動させる。これと同時に、制御装置6は、スライド駆動部35を制御して、2つの除去部材31,32をそれぞれ独立して搬送方向(本発明の第2方向)に移動させる。これにより、2つの除去部材31,32は、それぞれ、ノズル列16に沿ってノズル配列方向に移動しつつ、第1縁部41と第2縁部42とが接近と離間を繰り返すように搬送方向において相対移動する。
【0056】
以下、2つの除去部材31,32の移動について詳細に説明する。
図7は、第1、第2除去部材のインク吐出面に対する移動を説明する図であり、(a)〜(c)は第1除去部材の移動、(d)〜(f)は第2除去部材の移動をそれぞれ示す。
図7に示すように、2つの除去部材31,32は、ノズル配列方向に移動しつつ、スライド駆動部35により駆動されてノズル列16を中心として搬送方向両側に交互に移動する。
【0057】
図7(a)〜(c)に示すように、第1除去部材31は、ノズル列16に沿ってノズル10の配列間隔Pだけ移動するたびに、第1貫通孔36の2つの第1縁部41が交互にノズル10に接するように移動する。即ち、第1除去部材31は、ノズル配列方向に並ぶ3つのノズル10a,10b,10cに対して、図中左側の第1縁部41a、右側の第1縁部41b、左側の第1縁部41aという順に接するように、ノズル列16に対して左側と右側にジグザグに移動する。
【0058】
第2除去部材32は、第1除去部材31の、インク吐出面2aとの接触面とは反対側の面に接触し、第1除去部材31と部分的に重なった状態で、インク吐出面2aとは接触せずに移動する。
図7(d)〜(f)に示すように、第2除去部材32は、ノズル列16に沿ってノズル10の配列間隔Pだけ移動するたびに、仕切部38がノズル列16を挟んで図中左側と右側との間でノズルを跨ぐように移動する。これにより、仕切部38の両側の2つの第2縁部42が交互にノズル10に接するように移動する。即ち、第2除去部材32は、ノズル配列方向に並ぶ3つのノズル10a,10b,10cに対して、図中左側の第2縁部42a、右側の第2縁部42b、左側の第2縁部42aという順に接するように、ノズル列16に対して左側と右側にジグザグに移動する。
【0059】
図8は、第1除去部材31と第2除去部材32の相対移動による異物の除去を説明する図である。尚、
図8は、
図7(a)の位置から(b)の位置まで移動する第1除去部材31と、
図7(d)の位置から(e)の位置まで移動する第2除去部材32とを重ね合わせた図でもある。
図8(a)に示すように、ノズル10aに長い紙粉50が突き刺さっているとする。
図8(b)に示すように、このノズル10aが形成された位置においては、ノズル10に対して、図中左側から第1縁部41aが接しており、図中右側から第2縁部42aが接している。また、このとき、ノズル10aに接する第1縁部41と第2縁部42の搬送方向における距離dは最大となっている。
【0060】
図8(b)のノズル10aの位置から、
図8(c)〜
図8(f)のように、ノズル10bの位置まで移動するに従って、第2除去部材32が、第1除去部材31と重なった状態で第1除去部材31に対して相対的に図中左側に移動し、第2縁部42aが第1縁部41aに近づいていく。これにより、第1縁部41aと第2縁部42aの距離dが狭まっていくとともに、ノズル10aに突き刺さっていた紙粉50が第2縁部42aによって第1縁部41a側へ押しやられて、第1縁部41aと第2縁部42aとの間で紙粉50が挟まれる。その状態で、第1除去部材31と第2除去部材32とがノズル配列方向に移動することで、紙粉50がノズル10aから抜き取られる。
【0061】
このように、ノズルに突き刺さった紙粉50等の異物を、第1縁部41aと第2縁部42aとで挟んだ状態で、第1除去部材31と第2除去部材32が移動することによって、異物を確実に除去することができる。
【0062】
図8(f)に示すように、次のノズル10bが形成された位置に到達したときには、第1縁部41aと第2縁部42aとが搬送方向において最も接近している。尚、このとき、他方の第1縁部41bと他方の第2縁部42bとは、最も離間した状態となっている。仮にノズル10bにも紙粉50が突き刺さっている場合には、第1縁部41bと第2縁部42bとにより紙粉50の除去が行われる。このように、本実施形態では、第1除去部材31と第2除去部材32とが、ノズル列16に沿ってノズルの配列間隔Pだけ移動する1周期内で、第1縁部41aと第2縁部42aと、第1縁部41bと第2縁部42bの、何れか一方の組み合わせで、第1縁部41と第2縁部とが1回最接近する。従って、ノズル列16の全てのノズル10について、紙粉等の異物を除去することができる。
【0063】
また、本実施形態では、第1縁部41と第2縁部42とが、ノズル配列方向と直交する搬送方向に接近及び離間する。つまり、縁部41,42の接近及び離間の方向と、除去駆動モータ13により駆動された第1除去部材31と第2除去部材32とがインク吐出面2aに対して移動する方向(ノズル配列方向)とが異なる方向となっている。そのため、第1縁部41と第2縁部42とを搬送方向に相対移動させて異物を挟み、その状態で第1除去部材31と第2除去部材32を速やかにノズル配列方向に移動させることで、異物をスムーズに除去することができる。
【0064】
第1除去部材31と第2除去部材32とは、部分的に重なった状態で搬送方向に相対移動する。そのため、第1除去部材31と第2除去部材32を、搬送方向において狭い範囲でそれぞれ移動させることができる。尚、第1除去部材31と第2除去部材32とが部分的に重ねた状態で、第1縁部41と第2縁部42の接近及び離間が可能な構成としては、後の
図11(b)に例示するように、第1縁部41と第2縁部42が、除去部材31,32に形成された切り欠きの縁部である形態を挙げることができる。これに対して、本実施形態では、第1縁部41と第2縁部42とが、除去部材31,32に形成された貫通孔36,37の縁部によって構成されている。貫通孔の場合は、切り欠きと比べて、第1除去部材31及び第2除去部材32の剛性が高いものとなる。従って、第1除去部材31と第2除去部材32の剛性によって、それらがインク吐出面2aに沿った姿勢を維持することができ、第1縁部41と第2縁部42とで確実に異物を挟んで除去することができる。
【0065】
第2除去部材32には、搬送方向に並ぶ2つの第2貫通孔37a,37bと、2つの第2貫通孔37a,37bを仕切る仕切部38が形成されている。そして、仕切部38の両側の2つの縁部が2つの第2縁部42a,42bを構成している。この構成では、第2除去部材32の仕切部38を、ノズル列16の一方側と他方側との間でノズルを跨ぐように交互に移動させるだけで、各ノズルに付着した異物を第1縁部41と第2縁部42との間で挟み込むことができる。後の
図11(a)及び
図12で例示するように、第2除去部材32に、第1除去部材31と同じように1つの貫通孔が形成されている場合は、第2縁部42を第1縁部41に近づけるために、第2除去部材32を搬送方向に大きく移動させる必要がある。このような構成と比べると、本実施形態では、第2除去部材32の搬送方向における移動量を小さくすることができる。
【0066】
第1除去部材31と第2除去部材32とが、インク吐出面2aに極力近い位置で移動する方が、ノズル10に突き刺さった異物が小さい場合でも除去しやすくなる。そこで、本実施形態では、第2除去動作において、第1除去部材31はインク吐出面2aに接触した状態でインク吐出面2aに対して移動する。また、第2除去部材32は、第1除去部材31を基準にして、インク吐出面2aとは反対側に配置され、且つ、第1除去部材31と接触している。また、第1除去部材31の第2除去部材32との接触面にコーティングが施されて、この面の表面摩擦係数が、インク吐出面2aとの接触面の表面摩擦係数よりも低くなっている。従って、2つの除去部材31,32が接触した状態でもスムーズな相対移動が可能となる。尚、第2除去部材32の第1除去部材31との接触面に、フッ素系樹脂等のコーティングが施されていてもよい。
【0067】
尚、本実施形態では、
図1に示すように、説明の簡単のため、インクジェットヘッド2のノズル列16が1列である場合を例に挙げて説明しているが、ノズル列16が複数ある場合は、第1除去部材31と第2除去部材32に、複数のノズル列16にそれぞれ対応した第1貫通孔36と第2貫通孔37が形成されていればよい。あるいは、複数のノズル列16にそれぞれ対応して、除去装置5が、複数の第1除去部材32と複数の第2除去部材32を備えていてもよい。
【0068】
ところで、上述した、インク拭き取りのための第1除去動作と異物除去のための第2除去動作は、その目的に応じて、何れか一方のみが単独で行われてもよいが、除去装置5が両方の動作を続けて行ってもよい。その一例を以下に挙げる。
【0069】
以下では、上述したパージを含む、インクジェットヘッド2のメンテナンス処理の一環として、除去装置5に第1、第2除去動作を行わせる例を挙げる。
図9は、メンテナンス処理のフローチャートである。尚、
図9において、Si(i=10,11,12・・・)は各ステップのステップ番号を示す。
【0070】
このメンテナンス処理は、プリンタ1の電源が投入されている間、常に制御装置6において実行されており、パージ指令の入力待ちの状態で待機している(S10)。記録用紙100に印刷された画像がかすれた場合などに、ユーザが操作パネル24を操作することにより、パージ指令が制御装置6に入力されると(S10:Yes)、制御装置6は、まず、パージポンプ11を制御してパージを実行させる(S11)。尚、ここでのパージ指令は、ユーザにより入力された指令には限られず、例えば、一定期間経過毎に自動的に行われる定期パージの指令であってもよい。パージ後にはインク吐出面2aにインクが付着しているため、制御装置6は、除去装置5に第1除去動作を行わせ、インク吐出面2aに付着したインクを拭き取らせる(S12)。
【0071】
ところで、ノズル10の吐出不良の原因が、インクジェットヘッド2内のインク流路におけるエアの混入や乾燥によるインクの増粘であれば、パージによって、ノズル10から排出されるインクとともに、エアや増粘インクが排出されることによって吐出不良は解消されうる。しかし、ノズル10に紙粉等の異物が突き刺さっている場合、紙粉は長い紙の繊維であって、ノズル10の奥深くまで入り込んでいる場合もあり、このような場合にはパージでは紙粉等の異物が排出されにくい。従って、何度パージを行っても吐出不良が解消されないこともある。
【0072】
そこで、S11のパージ後、ある一定期間が経過する前に、パージ指令が再び制御装置6に入力されると(S13:Yes)、制御装置6は、除去装置5に第2除去動作を行わせて、インク吐出面2aの紙粉等の異物を除去させる(S14)。尚、異物除去の第2除去動作では、第1除去部材31がインク吐出面2aに接触しながら移動するため、ノズル10のメニスカスが乱れることがある。そこで、第2除去動作が終了したら、ノズル10にメニスカスを再形成させるため、制御装置6は、再びパージポンプ11を制御してパージを行わせ(S15)、その後に、除去装置5に第1除去動作を行わせてインクを拭き取らせる(S16)。
【0073】
尚、
図9では、2回目のパージ指令が入力されたときに、第2除去動作を行っているが、3回あるいはそれ以上のパージ指令が入力されたときに、初めて第2除去動作を行ってもよい。
【0074】
次に、前記実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0075】
1]
図5に示すように、第1除去動作によって、第1除去部材31の先端部でインク吐出面2aに付着したインクを拭き取ったときに、拭き取られたインクが第1貫通孔36から裏側に漏れて、下に垂れ落ちることが考えられる。そこで、
図10に示すように、第1除去部材31と第2除去部材32に、多孔質材料からなる、インクを吸収する吸収体43が重ね合わされていてもよい。第1除去部材31のインク吐出面2aとは反対側にインクが漏れても、そのインクを吸収体43によって吸収することができる。尚、
図10では、第1除去部材31と第2除去部材32の間に吸収体43が配されているが、第2除去部材32の、第1除去部材31とは反対側(右側)の面に、第2貫通孔37を塞ぐように吸収体43が重ね合わされてもよい。
【0076】
2]前記実施形態では、
図5、
図6に示すように、インク拭き取りのための第1除去動作と、異物除去のための第2除去動作とで、除去装置5の移動方向が同じ方向となっている。これに対して、第1除去動作と第2除去動作とで、除去装置5の移動方向が左右逆方向であってもよい。尚、第1除去動作と第2除去動作の移動方向が逆であると、何れか一方の除去動作において、第2除去部材32がインク吐出面2aに接触することになる。このとき、第2除去部材32が接触することによってインク吐出面2aが傷つくことを防止するために、第2除去部材32は、ゴム材料又は樹脂材料で形成されることが好ましい。
【0077】
3]第1除去部材31と第2除去部材32とを搬送方向に相対移動させるスライド駆動部35が、専用のアクチュエータを有さず、除去装置5の用紙幅方向の移動を利用して、2つの除去部材31,32をスライドさせる構成であってもよい。例えば、スライド駆動部35が、除去装置5の用紙幅方向の直線移動をピニオンの回転に変換するラック・アンド・ピニオン機構と、ピニオンの回転を2つの除去部材31,32の搬送方向の直線移動に変化するクランク機構とを有するものを挙げることができる。尚、この構成では、
図5のインクを拭き取る第1除去動作においても、2つの除去部材31,32がインク吐出面2aに対して搬送方向に移動することになる。第1除去動作では、2つの除去部材31,32を相対移動させたくない場合は、前記実施形態で説明したように、スライド駆動部35が、専用のアクチュエータを備えている必要がある。
【0078】
4]第1除去部材31の第1縁部41と第2除去部材32の第2縁部42の形状は、前記実施形態のものには限られない。例えば、
図11(a)に示すように、第2除去部材32にも、第1除去部材31と同じように、1つの第2貫通孔37が形成されてもよい。この場合、第2貫通孔37の図中左右両側の2つの縁部が第2縁部42a,42bを構成する。但し、
図11(a)のような構成では、第1除去部材31と第2除去部材32とが、ノズル10の配列間隔と等しい距離だけノズル配列方向に移動する間に、第2除去部材32を第1除去部材31に対して、搬送方向に大きく移動させる必要がある。
【0079】
図12は、
図11(a)の2つの除去部材のインク吐出面に対する移動を説明する図である。第1除去部材31は、
図12(a)から(b)の位置までノズル配列方向に配列間隔Pだけ移動する間に、ノズル10aに対して左側の第1縁部41aが接した状態から、ノズル10bに対して右側の第2縁部42bが接するように、図の左側に移動する。これに対して、第2除去部材32は、
図12(d)から(e)の位置まで、ノズル配列方向に配列間隔Pだけ移動する間に、ノズル10aに対して右側の第2縁部42bが接した状態から、ノズル10bに対して左側の第2縁部42aが接する状態となるまで、搬送方向に移動している。
【0080】
ここで、ノズル10aに紙粉等の異物が刺さっている場合、第1除去部材31が
図12(a)から(b)まで移動し、且つ、第2除去部材32が
図12(d)から(e)まで移動する間に、左側の第1縁部41aと右側の第2縁部42bとの協働によって異物を挟んで除去する。そのためには、第2除去部材32は、
図12(d)の位置からすぐに右側に移動するのではなく、矢印で示すように、第2縁部42bが第1縁部41aに近づくように、一旦左側へ、第1除去部材31よりも大きく移動する。これにより、左側の第1縁部41aと右側の第2縁部42bとでノズル10aの異物を挟んで除去する。その後、第2除去部材32は、右側に反転して、第2縁部42bが第1縁部41aから離れるように移動して、
図12(e)の状態となる。このように、配列間隔Pだけ移動する間に、第2縁部42bを第1縁部41aに近づけるために、第2除去部材32を搬送方向に大きく移動させる必要がある。
【0081】
また、第1除去部材31の第1貫通孔36と、第2除去部材32の第2貫通孔37は、それぞれ、方形に限られず、三角形等の他の多角形や、円形や楕円形等であってもよい。
【0082】
第1除去部材31と第2除去部材32に貫通孔が形成される代わりに、何れか一方、又は、両方に切り欠きが形成されてもよい。例えば、
図11(b)では、第1除去部材31と第2除去部材32に、ノズル配列方向に延びる切り欠き44,45がそれぞれ形成されている。それぞれの切り欠き44,45のノズル配列方向に延びる2つの縁部が、2つの第1縁部41a,41bと2つの第2縁部42a,42bとを構成している。この構成でも、
図11(a)と同様にして第1縁部41と第2縁部42とで異物を挟むことができる。但し、切り欠きの場合には、前記実施形態のように貫通孔が形成されている場合と比べて、第1除去部材31及び第2除去部材32の剛性は低くなるという点でやや不利である。
【0083】
第1縁部41と第2縁部42はそれぞれ2つある必要はなく、第1縁部41と第2縁部42の一方又は両方が1つであっても、異物を挟むことは可能である。また、
図11(c)に示すように、第1除去部材31と第2除去部材32の外縁部が、第1縁部41及び第2縁部42であってもよい。この場合は、第1除去部材31と第2除去部材32の外縁部同士を突き合わせるようにして、異物を挟むことが可能である。
【0084】
5]前記実施形態では、除去駆動モータ13によって第1除去部材31と第2除去部材32とを移動させる方向(ノズル配列方向)とは異なる方向に、第1縁部41と第2縁部42とを接近、離間させていた。これに対して、第1除去部材31と第2除去部材32とをノズル配列方向に移動させながら、同時に、このノズル配列方向に、第1縁部41と第2縁部42とが接近と離間を繰り返すように、第1除去部材31と第2除去部材32とを相対移動させてもよい。
【0085】
6]前記実施形態では、スライド駆動部35が、2つの除去部材31,32の両方を、それぞれ独立してインク吐出面2aに対して搬送方向に移動させることによって、第1縁部41と第2縁部42とを接近、離間させていたが、2つの除去部材31,32の一方のみを搬送方向に移動させてもよい。
【0086】
7]前記実施形態では、除去装置5が、インク拭き取りの第1除去動作と、異物除去の第2除去動作を行うように構成されていたが、除去装置5が異物除去専用の装置として構成され、インク拭き取りを行う拭き取り装置が別に設けられてもよい。
【0087】
8]前記実施形態のインクジェットヘッド2は、ライン型のインクジェットヘッドであったが、用紙幅方向に移動しながら、記録用紙に対してインクを吐出するシリアル型のインクジェットヘッドであってもよい。
【0088】
図13に示すように、この変更形態に係るプリンタ1Aは、キャリッジ60と、インクジェットヘッド62と、除去装置65とを備えている。キャリッジ60は、用紙幅方向に延びる2本のガイドレール63,64に沿って往復移動可能である。インクジェットヘッド62は搬送方向に配列された複数のノズル70を備えており、キャリッジ60に搭載されている。インクジェットヘッド62は、キャリッジ60と一体的に用紙幅方向に移動しながら、ローラ3,4によって搬送方向に搬送される記録用紙100に対して、複数のノズル70からインクを吐出させる。
【0089】
除去装置65は、用紙幅方向におけるキャリッジ60の移動範囲のうちの、記録用紙が搬送される範囲よりも右側に配置されている。除去装置65は、図示しない除去駆動モータにより駆動されて、搬送方向に移動する。インクジェットヘッド62のインク吐出面に付着したインクや異物を除去する場合には、まず、キャリッジ60が右側へ移動して、インクジェットヘッド62のインク吐出面を除去装置65と対向させる。この状態で除去装置65が搬送方向と平行な方向に移動することにより、2つの除去部材71,72がインク吐出面に対して搬送方向(ノズル配列方向)に沿って移動してインクや異物を除去する。
【0090】
尚、
図13では、除去装置65がインクジェットヘッド62に対して移動する構成となっているが、逆に、キャリッジ60を除去装置65に対して移動させることによって、インクジェットヘッド62を2つの除去部材71,72に対して移動させてもよい。
【0091】
9]異物の種類によっては、プリンタの使用期間が長いほど生じやすい場合もある。例えば、紙粉は、搬送されてくる記録用紙から飛散するものであるが、搬送ローラの表面が経年劣化で荒れてくるなどの理由から、プリンタを長く使用するにつれて紙粉の発生量が増える場合が考えられる。また、異物除去の第2除去動作では、第1除去部材をインク吐出面に強く押しつけて大きく屈曲させた状態で移動させるため、あまり頻繁に第2除去動作を行うとインク吐出面が荒れる虞もある。インク吐出面が荒れると、インク吐出面の撥インク性が低下してインクが濡れやすくなり、第1除去動作によってインク吐出面に付着したインクを除去するのが困難となる。従って、インク吐出面に紙粉等の異物が付着しにくい、プリンタの使用初期の段階では、不必要に第2除去動作を行わないことが好ましい。
【0092】
そこで、制御装置が、プリンタをどのくらい使用したかによって、除去装置の第2除去動作を行うか否かを決定してもよい。例えば、制御装置が、記録用紙の総印刷枚数をカウントしておき、この総印刷枚数が所定枚数を超えた場合に、除去装置に第2除去動作を行わせるようにしてもよい。
【0093】
以上説明した前記実施形態及びその変更形態は、本発明を、記録用紙にインクを吐出して画像等を印刷するインクジェットプリンタに適用したものであるが、画像等の印刷以外の様々な用途で使用される液体吐出装置においても本発明は適用されうる。例えば、基板に導電性の液体を噴射して、基板表面に導電パターンを形成する液体吐出装置にも、本発明を適用することは可能である。