(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
長尺で可撓性の管状本体と、前記管状本体に挿通され先端部が前記管状本体の遠位部に接続された複数本の操作線と、を備え、前記操作線を牽引することにより前記管状本体の前記遠位部が屈曲するカテーテルに用いられる操作部であって、
前記管状本体の基端部に装着される操作部本体と、
前記操作線の基端部との係合部を有し牽引操作により複数本の前記操作線に個別に牽引力を付与する屈曲操作部と、
牽引規制部と、を備え、
前記屈曲操作部が前記操作部本体に対して移動可能に設けられており、前記屈曲操作部と前記操作部本体とを相対移動させることにより前記管状本体の前記基端部から前記係合部までの経路長が増大または減少し、
前記屈曲操作部が、前記操作部本体に対して操作位置と退避位置とに遷移可能であり、
前記屈曲操作部が前記退避位置にあるとき、前記経路長は前記操作位置における前記経路長よりも短く、複数本の前記操作線は弛んでおり、
前記牽引規制部は、前記退避位置にある前記屈曲操作部が、弛んでいる前記操作線に前記牽引力を付与することを規制し、
前記退避位置から前記操作位置に前記屈曲操作部が遷移することにより前記牽引規制部の前記規制が解除され、複数本の前記操作線の前記弛みは除去され、
前記操作位置にある前記屈曲操作部が前記牽引操作を行うことで、前記弛みが除去された前記操作線に前記牽引力が付与されて前記管状本体の前記遠位部が屈曲することを特徴とするカテーテル操作部。
長尺で可撓性の管状本体と、前記管状本体に挿通され先端部が前記管状本体の遠位部に接続された複数本の操作線と、を備え、前記操作線を牽引することにより前記管状本体の前記遠位部が屈曲するカテーテルに用いられる操作部であって、
前記管状本体の基端部に装着される操作部本体と、
前記操作線の基端部との係合部を有し牽引操作により複数本の前記操作線に個別に牽引力を付与する屈曲操作部と、
遷移規制部と、を備え、
前記屈曲操作部が前記操作部本体に対して移動可能に設けられており、前記屈曲操作部と前記操作部本体とを相対移動させることにより前記管状本体の前記基端部から前記係合部までの経路長が増大または減少し、
前記屈曲操作部が、前記操作部本体に対して操作位置と退避位置とに遷移可能であり、
前記退避位置における前記経路長は前記操作位置における前記経路長よりも短く、
前記操作位置にある前記屈曲操作部が前記牽引操作を行うことで複数本の前記操作線に前記牽引力が付与されて前記管状本体の前記遠位部が屈曲し、
前記遷移規制部は、前記操作位置から前記退避位置への前記屈曲操作部の遷移を規制することを特徴とするカテーテル操作部。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。
【0019】
<第一実施形態>
はじめに、本実施形態のカテーテル100の概要を説明する。
図1(a)は、本実施形態のカテーテル100の全体構成を示す平面図である。
図1(b)は、屈曲操作部60を一方向(同図における時計回り)に操作した状態を示すカテーテル100の平面図である。
図1(c)は、屈曲操作部60を他方向(同図における反時計回り)に操作した状態を示すカテーテル100の平面図である。
図2は、カテーテル100の横断面図であり、
図1(a)のII−II線断面図である。
図3は、カテーテル100の遠位部DEの縦断面図であり、
図2のIII−III線断面図である。
【0020】
カテーテル100は、長尺で可撓性の管状本体10、この管状本体10に挿通され先端部が管状本体10の遠位部DEに接続された複数本の操作線30a、30b、管状本体10の基端部PEに設けられた操作部本体80、および屈曲操作部60を備えている。
屈曲操作部60は、操作線30a、30bの基端部との係合部66(
図8、
図9を参照)を有し、牽引操作により複数本の操作線30a、30bに個別に牽引力を付与して管状本体10の遠位部DEを屈曲させる。屈曲操作部60は操作部本体80に対して移動可能に設けられている。
本実施形態のカテーテル100は、屈曲操作部60と操作部本体80とを相対移動させることにより複数本の操作線30a、30bの先端部から係合部66までの経路長が共に増大または減少することを特徴とする。
【0021】
本実施形態のカテーテル操作部50は、上記のカテーテル100、すなわち上記の管状本体10と操作線30a、30bとを備え、操作線30a、30bを牽引することにより管状本体10の遠位部DEが屈曲するカテーテル100、に用いられる。以下、カテーテル操作部を「操作部」と略記する。
操作部50は、管状本体10の基端部PEに装着される操作部本体80と、操作線30a、30bの基端部との係合部66(
図8、
図9を参照)を有し牽引操作により複数本の操作線30a、30bに個別に牽引力を付与する屈曲操作部60と、を備えている。屈曲操作部60は操作部本体80に対して移動可能に設けられている。
本実施形態の操作部50は、屈曲操作部60と操作部本体80とを相対移動させることにより管状本体10の基端部PEから係合部66までの経路長が増大または減少するものである。ここでいう管状本体10の基端部PEから係合部66までの経路長とは、
図9に示すように、操作部本体80(下側本体84)に対する管状本体10の引き込み位置11から、弛みなく張られた操作線30が係合部66に至るまでの長さをいう。
【0022】
操作部本体80は、使用者が手で把持するハウジングである。管状本体10の基端部PEは、管状のプロテクタ87に保護されたうえ、操作部本体80の内部に導入されている。
【0023】
操作部50は、操作部本体80および屈曲操作部60に加えて、ハブコネクタ70を備えている。ハブコネクタ70は操作部本体80の後端部に装着されている。ハブコネクタ70には、管状本体10の最基端が接続されて互いに連通しており、ハブコネクタ70の後方(
図1(a)の右方)からシリンジ(図示せず)が装着される。シリンジによってハブコネクタ70内に薬液等を注入することにより、主管腔20(
図2、
図3を参照)を介して薬液等を患者の体腔内へ供給することができる。
【0024】
つぎに、カテーテル100の動作の概要を説明する。
図2および
図3に示すように、管状本体10には操作線30a、30bが挿通されている。操作線30a、30bは操作部本体80の内部で管状本体10から側方に引き出されて、屈曲操作部60に直接的または間接的に連結されている。
【0025】
本実施形態の屈曲操作部60は操作部本体80に対して回転可能である。なお、本実施形態において、回転と回動とは区別しない。屈曲操作部60を一方向に回転させると第一の操作線30aが緊張して第二の操作線30bが弛緩し、屈曲操作部60を他方向に回転させると第二の操作線30bが緊張して第一の操作線30aが弛緩する。牽引された操作線30a、30bはカテーテル100の遠位部DEを屈曲させる。
【0026】
具体的には、
図1(b)に示すように屈曲操作部60を一方向(時計回り)に回転させると、第一の操作線30a(
図3を参照)が基端側に牽引されて管状本体10の遠位部DEは屈曲する。
図1(c)に示すように屈曲操作部60をその回転軸周りにおいて他方向(反時計回り)に回転させると、第二の操作線30bが基端側に牽引されて遠位部DEは逆向きに屈曲する。このように、2本の操作線30a、30bを選択的に牽引することにより、カテーテル100の遠位部DEを、互いに同一平面に含まれる第一または第二の方向に選択的に屈曲させることができる。
【0027】
ここで、管状本体10が屈曲するとは、管状本体10が「くの字」状に折れ曲がる態様と、弓なりに湾曲する態様とを含む。
【0028】
ここで、操作線30が1本のみである場合は、操作部50を操作して操作線30を弛めておけば上述の熱膨張の問題を回避することができる。カテーテル100を使用する際に、操作線30の弛みを除去するように操作部50を操作し、それを初期位置とすればよい。これに対し、本実施形態のように、複数本の操作線30a、30bの一方を弛めると他方が牽引される操作部50の場合には、これらの複数本の操作線30a、30bを共に弛めておくための機構が必要となる。本実施形態は、これを屈曲操作部60の遷移により実現する。
【0029】
屈曲操作部60(ダイヤル操作部61:
図4から
図7を参照)の周面には凹凸係合部が形成されている。操作部本体80には、屈曲操作部60に対して接離可能に摺動するロックスライダ88が設けられている。ロックスライダ88を屈曲操作部60に向けて摺動させると互いに係合して屈曲操作部60の回転が規制される。これにより、カテーテル100の遠位部DEが屈曲した
図1(b)または(c)の状態でロックスライダ88を操作して屈曲操作部60の回転を規制して、カテーテル100の屈曲状態を保持することができる。
【0030】
つぎに、カテーテル100の詳細構造を説明する。本実施形態のカテーテル100は、管状本体10を血管内に挿通させて用いられる血管内カテーテルである。
【0031】
<管状本体について>
図2および
図3を用いて管状本体10の構造を説明する。
管状本体10はシースとも呼ばれ、内部に主管腔(メインルーメン)20が通孔形成された中空管状かつ長尺の部材である。管状本体10は、肝臓の8つの亜区域の何れにも進入させることが可能な外径および長さに形成されている。管状本体10の遠位部DEの外径は1mm未満であり、本実施形態のカテーテル100は末梢血管に挿入可能なマイクロカテーテルである。
【0032】
管状本体10は、主管腔20と、主管腔20よりも小径で複数本の操作線30a、30bがそれぞれ挿通された複数の副管腔32と、を有している。
【0033】
管状本体10は、主管腔20の周囲に補強ワイヤ24を巻回してなるワイヤ補強層26と、このワイヤ補強層26の外側に配置され主管腔20よりも小径の副管腔32を画定する樹脂製のサブチューブ28と、ワイヤ補強層26およびサブチューブ28を内包する樹脂製の外層38と、を含む。
【0034】
管状本体10は積層構造を有している。主管腔20を中心に、内径側から順に内層22、第一外層34および第二外層36が積層されて管状本体10は構成されている。第二外層36の外表面には親水層(図示せず)が形成されている。内層22、第一外層34および第二外層36は可撓性の樹脂材料からなり、それぞれ円環状で略均一の厚みを有している。第一外層34および第二外層36を併せて外層38と呼称する場合がある。
【0035】
内層22は管状本体10の最内層であり、その内壁面により主管腔20を画定する。主管腔20の横断面形状は特に限定されないが、本実施形態では円形である。横断面円形の主管腔20の場合、その直径は、管状本体10の長手方向に亘って均一でもよく、または長手方向の位置により相違してもよい。たとえば、管状本体10の一部または全部の長さ領域において、先端から基端に向かって主管腔20の直径が連続的に拡大するテーパー状としてもよい。
内層22の材料は、例えば、フッ素系の熱可塑性ポリマー材料を挙げることができる。このフッ素系の熱可塑性ポリマー材料としては、具体的には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)およびペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)を挙げることができる。内層22をこのようなフッ素系ポリマー材料で構成することにより、主管腔20を通じて薬液等を供給する際のデリバリー性が良好となる。また、主管腔20にガイドワイヤーを挿通する場合に、ガイドワイヤーの摺動抵抗が低減される。
【0036】
外層38の内側層にあたる第一外層34の内部には、内径側から順にワイヤ補強層26およびサブチューブ28が設けられている。外層38の外側層にあたる第二外層36の内部には第二補強層40が設けられている。第二補強層40は、第一外層34の外表面に接している。ワイヤ補強層26と第二補強層40は、管状本体10と同軸に配置されている。第二補強層40はワイヤ補強層26およびサブチューブ28の周囲を取り囲むように、これらと離間して配置されている。
【0037】
外層38の材料としては熱可塑性ポリマー材料を用いることができる。この熱可塑性ポリマー材料としては、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリアミド(PA)、ポリアミドエラストマー(PAE)、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)などのナイロンエラストマー、ポリウレタン(PU)、エチレン−酢酸ビニル樹脂(EVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)またはポリプロピレン(PP)を挙げることができる。
外層38には無機フィラーを混合してもよい。無機フィラーとしては、硫酸バリウムや次炭酸ビスマスなどの造影剤を例示することができる。外層38に造影剤を混合することで、体腔内における管状本体10のX線造影性を向上することができる。
【0038】
第一外層34と第二外層36とは、同種または異種の樹脂材料からなる。
図2では第一外層34と第二外層36との境界面を明示してあるが、本発明はこれに限られない。第一外層34と第二外層36とを同種の樹脂材料で構成した場合、両層の境界面は渾然一体に融合していてもよい。すなわち、本実施形態の外層38は、第一外層34と第二外層36とが互いに区別可能な多層で構成されていてもよく、または第一外層34と第二外層36とが一体となった単一層として構成されていてもよい。
【0039】
第二外層36の外表面に形成される親水層(図示せず)は、カテーテル100の最外層を構成する。親水層は、管状本体10の全長に形成されていてもよく、または遠位部DEを含む先端側の一部長さ領域のみに形成されていてもよい。親水層は、たとえば、ポリビニルアルコール(PVA)などの無水マレイン酸系ポリマーやその共重合体、ポリビニルピロリドンなどの親水性の樹脂材料からなる。
【0040】
ワイヤ補強層26は、管状本体10のうち操作線30よりも内径側に設けられて内層22を保護する保護層である。操作線30の内径側にワイヤ補強層26が存在することで、操作線30が第一外層34および内層22を破断させて主管腔20に露出することを防止する。
ワイヤ補強層26は補強ワイヤ24を巻回してなる。補強ワイヤ24の材料には、タングステン(W)、ステンレス鋼(SUS)、ニッケルチタン系合金、鋼、チタン、銅、チタン合金または銅合金などの金属材料のほか、内層22および第一外層34よりも剪断強度が高いポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)またはポリエチレンテレフタレート(PET)などの樹脂材料を用いることができる。本実施形態では、補強ワイヤ24としてステンレス鋼の細線を挙げる。
ワイヤ補強層26は、補強ワイヤ24をコイル巻回またはメッシュ状に編組してなる。補強ワイヤ24の条数や、コイルピッチ、メッシュ数は特に限定されない。本実施形態のワイヤ補強層26は、多条の補強ワイヤ24をメッシュ状に編組したブレード層である。
【0041】
サブチューブ28は副管腔32を画定する中空管状の部材である。サブチューブ28は第一外層34の内部に埋設されている。サブチューブ28は、たとえば熱可塑性ポリマー材料により構成することができる。その熱可塑性ポリマー材料としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、または四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)などの低摩擦樹脂材料が挙げられる。
サブチューブ28は、外層38よりも曲げ剛性率および引張弾性率が高い材料で構成されている。
【0042】
図1に示すように、ワイヤ補強層26の周囲に180度対向して2本のサブチューブ28が配置され、これらの2本のサブチューブ28には操作線30(30a、30b)がそれぞれ挿通されている。2本のサブチューブ28は、管状本体10の軸心方向に対して平行である。
【0043】
図1に示すように、2本のサブチューブ28は主管腔20を取り囲むように、同一の円周上に配置されている。本実施形態に代えて、3本または4本のサブチューブ28を主管腔20の周囲に等間隔で配置してもよい。この場合、総てのサブチューブ28に操作線30を配置してもよく、または一部のサブチューブ28に操作線30を配置してもよい。
【0044】
操作線30は、サブチューブ28に対して摺動可能に遊挿されている。操作線30の先端部は管状本体10の遠位部DEに固定されている。操作線30を基端側に牽引することで、管状本体10の軸心に対して偏心した位置に引張力が付与されるため管状本体10は屈曲する。本実施形態の操作線30は極めて細く可撓性が高いため、操作線30を遠位側に押し込んでも、管状本体10の遠位部DEには実質的に押込力は付与されない。
【0045】
操作線30は、単一の線材により構成されていてもよいが、複数本の細線を互いに撚りあわせることにより構成された撚り線であってもよい。操作線30の一本の撚り線を構成する細線の本数は特に限定されないが、3本以上であることが好ましい。細線の本数の好適な例は、7本または3本である。
操作線30としては、低炭素鋼(ピアノ線)、ステンレス鋼(SUS)、耐腐食性被覆した鋼鉄線、チタンもしくはチタン合金、またはタングステンなどの金属線を用いることができる。このほか、操作線30としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリ(パラフェニレンベンゾビスオキサゾール)(PBO)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリイミド(PI)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、またはボロン繊維などの高分子ファイバーを用いることができる。
【0046】
本実施形態のカテーテル100は、2本の操作線30がサブチューブ28に挿通され、管状本体10の遠位部DEに対して個別に固定されている。ここで、操作線30が2本であるとは、2本のワイヤが個別に形成されたものでもよく、または1本のワイヤが管状本体10の遠位部DEで折り返されて両端が屈曲操作部60で個別に牽引可能になっていてもよい。すなわち、本実施形態において操作線が複数本または2本であるとは、管状本体10の遠位部DEを屈曲させる牽引力を付与する経路が複数本または2本存在することを意味する。
【0047】
第二補強層40は、管状本体10のうち操作線30よりも外周側に設けられて第二外層36を保護する保護層である。操作線30の外周側に第二補強層40が存在することで、操作線30が第二外層36および親水層(図示せず)を破断させて管状本体10の外部に露出することを防止する。
第二補強層40は第二補強ワイヤ42をコイル巻回またはメッシュ状に編組してなる。第二補強ワイヤ42には、ワイヤ補強層26の補強ワイヤ24として例示した上記の材料を用いることができる。第二補強ワイヤ42と補強ワイヤ24とは同種の材料でもよく、または異種の材料でもよい。本実施形態では、第二補強ワイヤ42として、補強ワイヤ24と同種の材料(ステンレス鋼)からなる細線をメッシュ状に編組したブレード層を例示する。
第二補強ワイヤ42と補強ワイヤ24との線径および条数は、互いに同一でもよく、または異なってもよい。
【0048】
管状本体10の遠位部DEには、第一マーカー14と、この第一マーカー14よりも近位側に位置する第二マーカー16と、が設けられている。第一マーカー14および第二マーカー16は、白金など、X線等の放射線が不透過の材料からなるリング状の部材である。第一マーカー14および第二マーカー16の2つのマーカーの位置を指標とすることにより、放射線(X線)観察下において体腔(血管)内における管状本体10の先端の位置を視認することができる。これにより、カテーテル100の屈曲操作を行うのに最適なタイミングを容易に判断することができる。
操作線30の先端部は、管状本体10のうち第二マーカー16よりも遠位側の部分に固定されている。操作線30を牽引することで、遠位部DEのうち第二マーカー16よりも遠位側の部分が屈曲する。本実施形態のカテーテル100では、操作線30の先端部は第一マーカー14に固定されている。操作線30を第一マーカー14に固定する態様は特に限定されず、ハンダ接合、熱融着、接着剤による接着、操作線30と第一マーカー14との機械的掛止などを挙げることができる。
【0049】
ワイヤ補強層26および第二補強層40の近位端は、管状本体10の近位端、すなわち操作部50の内部に位置している。
内層22の遠位端は、管状本体10の遠位端まで到達していてもよく、または遠位端よりも僅かに基端側で終端していてもよい。内層22の近位端は、管状本体10の近位端、すなわち操作部50の内部に位置している。
【0050】
管状本体10の代表的な寸法について説明する。
主管腔20の直径は400μm〜600μm(上限値および下限値を含む。以下同じ。)、内層22の厚さは5μm〜30μm、外層38の厚さは10μm〜200μmである。サブチューブ28の肉厚は内層22よりも薄く、かつ1μm〜10μmである。ワイヤ補強層26の内径は410μm〜660μm、ワイヤ補強層26の外径は450μm〜740μm、第二補強層40の内径は560μm〜920μm、第二補強層40の外径は600μm〜940μmである。
第一マーカー14の内径は450μm〜740μm、第一マーカー14の外径は490μm〜820μm、第二マーカー16の内径は600μm〜940μm、第二マーカー16の外径は640μm〜960μmである。
カテーテル100の軸心からサブチューブ28の中心までの半径(距離)は300μm〜450μm、サブチューブ28の内径(直径)は40μm〜100μm、操作線30の太さは25μm〜60μmである。
管状本体10の直径は700μm〜980μm、すなわち外径が直径1mm未満であり、管状本体10は末梢血管に挿入可能なマイクロカテーテルを構成する。
【0051】
管状本体10の線膨張係数は、操作線30の線膨張係数よりも大きい。一例として、管状本体10の線膨張係数は100ppm/K以上300ppm/K以下、操作線30のセル膨張係数は10ppm/K以上30ppm/K以下である。
また、管状本体10の膨潤係数が操作線30の膨潤係数よりも大きい。ここで、管状本体10の線膨張係数または膨潤係数とは、管状本体10の積層構造の全体でみた場合の線膨張係数または膨潤係数である。すなわち、内層22、外層38、ワイヤ補強層26、第二補強層40、サブチューブ28およびその他の互いに密着して一体化された構成要素(操作線30を除く)の複合構造体としての合成の線膨張係数または膨潤係数である。上記各構成要素の単独の線膨張係数または膨潤係数に、それぞれのヤング率と、断面積における面積比率を乗じて概算することができる。
【0052】
本実施形態のカテーテル100は、管状本体10の線膨張係数および膨潤係数が操作線30のそれらよりも大きいため、上述したように、加熱滅菌時や夏季の輸送環境など、カテーテルの組立や包装後の種々の環境下で操作線30に過張力が負荷され得る。これに対し本実施形態のカテーテル100は、操作部50の動作によってこの過張力を解消することが可能である。以下、
図4から
図13を用いて本実施形態の操作部50の構造および動作を詳細に説明する。
【0053】
図4および
図5は操作部50の平面図であり、
図6および
図7は操作部50の側面図である。
図8および
図9は、操作線30の状態を説明する平面図であり、操作部50の内部構造を示している。
図4、
図6および
図8は、屈曲操作部60が退避位置にある状態(以下、退避状態)の操作部50を示している。
図5、
図7および
図9は、屈曲操作部60が操作位置にある状態(以下、操作状態)の操作部50を示している。
図10は操作部50の分解斜視図であり、
図11は操作部本体80および屈曲操作部60の分解側面図である。
【0054】
以下の説明において、操作部本体80における上側本体82の配設側を上側と呼称し、下側本体84の配設側を下側と呼称する場合があるが、これはカテーテル100における部材の相対位置を便宜的に説明するものである。カテーテル100の製造または使用に際しての重力方向の上下を意味するものではない。
【0055】
操作部50の寸法、すなわちプロテクタ87の先端からハブコネクタ70の後端までの寸法は、5cmから15cm程度である。
【0056】
図4および
図5に示すように、操作部50は牽引規制部89を有している。牽引規制部89は、
図4、
図6、
図8に示す退避位置にある屈曲操作部60が操作線30(
図8を参照)に牽引力を付与することを規制する。ここで、屈曲操作部60が操作線30に牽引力を付与することを牽引規制部89が規制するとは、牽引規制部89が屈曲操作部60の動作を規制する態様と、屈曲操作部60が動作しても操作線30に対する牽引力の付与が抑制される態様と、を含む。
【0057】
本実施形態では、牽引規制部89が屈曲操作部60の動作を規制する態様を例示する。本実施形態の牽引規制部89は屈曲操作部60に掛止して牽引操作を規制する。具体的には、
図4に示すように、屈曲操作部60のダイヤル操作部61の上面に形成された延出凹部61aに牽引規制部89は嵌合している。
【0058】
図10および
図11に示すように、ダイヤル操作部61の上面には、ダイヤル操作部61の回転軸と同軸にて、環状溝61bが削成されている。延出凹部61aと環状溝61bとは連続して形成されている。延出凹部61aは、環状溝61bの周囲の一部からダイヤル操作部61の径方向の外方に向かって延在している。延出凹部61aは環状溝61bに向かって幅寸法が減少するテーパー形状の凹部である。延出凹部61aは平面視にて扇形をなしている。扇形の延出凹部61aの中心角は特に限定されないが、90度以下が好ましい。
図4および
図10に示すように、ダイヤル操作部61は初期状態において、操作部本体80に対し
延出凹部61aがハブコネクタ70の装着側にあたる後端側を向くように装着される。
【0059】
退避状態の操作部50において牽引規制部89は延出凹部61aの略中央部または先端側(ダイヤル操作部61における外周側)に係合している。延出凹部61aが扇形のテーパー形状であることにより、退避状態のダイヤル操作部61を、扇形の延出凹部61aの中心角に相当する角度だけ回転させることができる。すなわち、退避状態にあるダイヤル操作部61には、いくらかの「遊び」、すなわち微小な回転可能角度(遊動角度)が存在する。この遊動角度が過大となって操作線30に不測の牽引力が付与されないよう、延出凹部61aの中心角は、90度以下、好ましくは60度以下とすることができる。
操作部50の退避状態において屈曲操作部60が操作線30に牽引力を付与することを牽引規制部89が規制するとは、このような遊動角度が存在し、この角度範囲内で屈曲操作部60が操作線30に僅かな牽引力を付与することを排除するものではない。
【0060】
そして、
図4および
図6に示す退避位置から、
図5および
図7に示す操作位置に屈曲操作部60が遷移することにより牽引規制部89の規制が解除される。具体的には、屈曲操作部60が
図5および
図7に矢印で示す遷移方向に移動することで、延出凹部61aに係合していた牽引規制部89は延出凹部61aから環状溝61bに相対的に移動する。これにより、牽引規制部89は環状溝61bに沿ってダイヤル操作部61の周囲に相対的に回転可能となる。
【0061】
操作部50が操作状態にあるとき、屈曲操作部60は操作部本体80に対して角度制限なく自由に回転してもよく、または回転可能角度が360度未満の所定角度に規定されていてもよい。この場合、操作状態における屈曲操作部60の回転可能角度は、退避状態における屈曲操作部60の遊動角度に対応する延出凹部61aの中心角よりも大きい。回転可能角度は、たとえば270度以上360度未満、すなわち
図4の初期状態から正逆方向に135度以上180度未満、などとすることができる。
【0062】
ロックスライダ88は、退避位置にある屈曲操作部60に係合して屈曲操作部60の回転を規制してもよく、または屈曲操作部60と非係合でもよい。退避位置の屈曲操作部60は延出凹部61aにより回転可能角度が小さく規制されているからである。
一方、ロックスライダ88は、操作位置にある屈曲操作部60に対して接離可能に摺動してダイヤル操作部61と係合する。これにより、
図1(b)および
図1(c)に示したように、屈曲操作部60の回転を規制する。
【0063】
本実施形態の屈曲操作部60は、操作部本体80に対して操作位置と退避位置とに遷移可能である。退避位置から操作位置への屈曲操作部60の遷移方向は、操作部本体80の先基端方向であり、管状本体10の軸心方向である。
図6および
図7に示すように、操作部本体80は上側本体82および下側本体84により屈曲操作部60を上下方向から挟持してなる。上側本体82と下側本体84との接合面にあたる分離面81は、屈曲操作部60の遷移方向に平行である。より具体的には、屈曲操作部60の退避位置は操作部本体80のうちプロテクタ87が装着された先端側であり、遷移位置は操作部本体80のうちハブコネクタ70が装着された後端側である。
【0064】
図8は退避状態の操作部50の内部構造を示す平面図であり、
図9は操作状態の操作部50の内部構造を示す平面図である。
図8および
図9においては、上側本体82、ロックスライダ88、ダイヤル操作部61、リミッター部材62、掛合部材63(
図11を参照)、ハブコネクタ70、プロテクタ87および補強部材90(
図10を参照)を図示省略している。
図8および
図9には、操作部本体80に導入された管状本体10の基端部PEおよび管状本体10の側方に引き出された操作線30(30a、30b)を図示してある。
【0065】
管状本体10の基端部PEは屈曲操作部60の下部を通過して、操作部本体80(下側本体84)の後端部84bよりも後方まで引き出されている。管状本体10の基端部PEには、操作部本体80の内部にあたる位置において、外周面からサブチューブ28に至る側孔(図示せず)が穿設されている。側孔はサブチューブ28の周面を貫通している。操作線30は、この側孔を通じてサブチューブ28の外部側方に引き出されている。操作線30は、ワイヤ固定盤64の周囲に巻回されたうえで、スリット64aから引き出され、ワイヤ固定盤64に設けられた係合部66に絡げて固定されている。
【0066】
すなわち、屈曲操作部60は複数の係合部66を有し、係合部66には複数本の操作線30a、30bの基端部がそれぞれ係合している。具体的な係合の態様として、操作線30a、30bは、係合部66に対して交絡されたうえ接着剤により固着されている。
2本の操作線30a、30bは、ワイヤ固定盤64の周囲に互いに逆向きに巻回されている。操作線30a、30bは、それぞれ、360度を超える巻回角度でワイヤ固定盤64に巻回されている。これにより、
図1(a)の初期状態から屈曲操作部60を360度に亘って回転操作しても、弛められる側の操作線30の送り出し長さが不足することがない。
【0067】
図10に示すように、操作部50は操作部本体80、屈曲操作部60、ハブコネクタ70および補強部材90を含む。上側本体82および下側本体84は操作部本体80を構成する半体である。上側本体82の下面と下側本体84の上面は、互いに接合されて分離面81を構成する。上側本体82は下方に開口する上側凹部82aを有している。下側本体84は、上方に開口する下側凹部84aを有している。上側本体82と下側本体84とを組み合わせることにより、上側凹部82aおよび下側凹部84aは屈曲操作部60のための装着空間を構成する。
【0068】
上側本体82の後部には挿入凸部82bが突出形成されている。挿入凸部82bには複数個のピン孔82cが穿設され、さらに後端部に爪状の係合部85が形成されている。挿入凸部82bは、補強部材90の開口部92に挿入される。
【0069】
下側本体84の後部に延出する後端部84bの上面には、上方に突出する複数本のピン84cが形成されている。ハブコネクタ70の前端部には、その厚み方向に貫通する複数個のピン孔73が穿設されている。上側本体82と下側本体84とを組み合わせることで、複数本のピン84cは、ハブコネクタ70のピン孔73をそれぞれ貫通してピン孔82cに挿入される。これにより、上側本体82および下側本体84からなる操作部本体80からハブコネクタ70が脱落することが防止されている。
【0070】
ハブコネクタ70の後端には、シリンジを螺合装着するための装着口77が設けられている。装着口77にシリンジが装着される。ハブコネクタ70の前端には、装着口77と連通する先端開口75が設けられている。ハブコネクタ70には、先端開口75を挟んで幅方向の両側に補強リブ72が立設されている。補強リブ72により、先端開口75の潰れを防止している。
【0071】
補強部材90は、上側本体82と下側本体84との分離を規制し、操作部本体80とハブコネクタ70との取り付け部を補強する環状部材である。上側本体82および下側本体84によりハブコネクタ70を挟持した状態で、補強部材90を挿入凸部82bおよび後端部84bの周囲に装着することにより、上側本体82と下側本体84との分離面81の離間が防止される。
【0072】
上側凹部82aの下面側と、下側凹部84aの上面側には、半割円筒状の凹溝部82d、84dがそれぞれ形成されている。上側本体82と下側本体84とを組み合わせることにより、凹溝部82d、84dは合わさって円柱状の空隙部を構成する。この空隙部には、管状本体10の基端部PEが装着される(
図8および
図9を参照)。
【0073】
操作部本体80(上側本体82)の係合部85は補強部材90に係止される。これにより、操作部本体80の挿入凸部82bおよび後端部84bに周着された補強部材90が操作部本体80から脱落することが防止されている。
【0074】
図11に示すように、本実施形態の屈曲操作部60は、ダイヤル操作部61、リミッター部材62、掛合部材63、ワイヤ固定盤64および軸部材65を含む。
【0075】
ダイヤル操作部61は屈曲操作部60の外周側に配置されて操作者が手指で直接に接触して操作する回転盤である。ダイヤル操作部61の上面側には、上述のように延出凹部61aおよび環状溝61bが形成されている。ダイヤル操作部61の軸心には非円形の開口部61cが形成されている。
【0076】
リミッター部材62は、ダイヤル操作部61に対して回転不可に装着される。リミッター部材62は、バネ係合部62aと軸部62bを有している。バネ係合部62aはリミッター部材62の径方向に突没可能に変形する弾性変形部材である。軸部62bには軸部材65の回転軸65aが挿通される。軸部62bの状態には非円形の係止凸部62cが形成されている。係止凸部62cは、ダイヤル操作部61の開口部61cに対して回転不可に嵌合する。これにより、リミッター部材62とダイヤル操作部61とは一体となって回転軸65aまわりに回転する。
【0077】
掛合部材63は、リミッター部材62の軸部62bを挿通するとともに、バネ係合部62aと係脱自在に係合する環状部材である。掛合部材63は有底円環状をなし、円形の周壁の内周面には波形の凹凸部63aが形成されている。凹凸部63aの周方向の複数箇所で、リミッター部材62のバネ係合部62aが係合する。リミッター部材62と掛合部材63とが所定以上のトルクで相対的に捩られると、バネ係合部62aと凹凸部63aとの係合が外れる。掛合部材63は、複数の凹欠部63bを有している。
【0078】
ワイヤ固定盤64は操作線30a、30bを巻き付けるボビンである(
図8および
図9を参照)。ワイヤ固定盤64は一対の大径のフランジ部64bと、その間に形成された小径の巻付部64cと、を備えている。フランジ部64bの一方(本実施形態では
図11における上側のフランジ部64b)に、スリット64aおよび係合部66が形成されている。
図8および
図9に示すように、管状本体10の基端部PEから側方に引き出された2本の操作線30a、30bは、ワイヤ固定盤64に対して互いに逆向きに巻回され、360度以上巻回されたうえでスリット64aから引き出される。引き出された操作線30a、30bの端部は、係合部66に絡げられたうえで接着固定される。
ワイヤ固定盤64の上面には複数本の突起部64dが形成されている。突起部64dが掛合部材63の凹欠部63bに嵌合することにより、掛合部材63はワイヤ固定盤64に対して回転不可に固定され、両者は軸部材65に対して回転自在に軸支されている。
【0079】
上述のように、リミッター部材62と掛合部材63とが互いに所定以上のトルクで捩られることでリミッター部材62のバネ係合部62aと掛合部材63との係合が外れる。このため、使用者がダイヤル操作部61に対して上記所定以上のトルクを付与した場合に、このトルクが掛合部材63およびワイヤ固定盤64を通じて操作線30aまたは30bに伝達されることがない。言い換えると、リミッター部材62および掛合部材63は操作線30a、30bの破断を防止する張力リミッターを構成している。
【0080】
軸部材65は、ワイヤ固定盤64を収容する円形の凹部を有する保持部材であり、下側本体84に対して摺動可能である。軸部材65は、上方に突出する回転軸65aと、下方にそれぞれ突出するガイドリブ65b、65cを備えている。
回転軸65aにはダイヤル操作部61、リミッター部材62、掛合部材63およびワイヤ固定盤64が回転可能に装着される。これにより屈曲操作部60が一体に構成される。
ガイドリブ65b、65cは二対の平行な板状の突起部である。一対のガイドリブ65cには、それぞれ外向きに突出する爪部(遷移規制部68)が形成されている。遷移規制部68は下側本体84の幅方向に突没自在に弾性変形する。遷移規制部68は前端側(
図12および
図13の左方)を返し部とする矢尻形状をなしている。
【0081】
下側本体84は、ガイドリブ65bに接して摺動する内側ガイド84jと、ガイドリブ65cに接して摺動する間欠リブ84iと、を備えている。内側ガイド84jおよび間欠リブ84iは、下側本体84の前後方向に延在するそれぞれ一対の板状の凸部である。一対の間欠リブ84iはそれぞれ少なくとも2箇所の空隙(退避側空隙84gおよび操作側空隙84h)により分断されて離散的に形成された複数のリブ片の集合である。
軸部材65を下側本体84に装着すると、ガイドリブ65cは一対の間欠リブ84iの内側に沿って配置され、ガイドリブ65bは内側ガイド84jと間欠リブ84iとの間に挟まれて配置される。これにより、ダイヤル操作部61、リミッター部材62、掛合部材63、ワイヤ固定盤64および軸部材65を一体に組み合わせてなる屈曲操作部60は、下側本体84の前後方向に摺動可能に取り付けられる。
【0082】
図12および
図13は、屈曲操作部60(軸部材65)と操作部本体80(下側本体84)との位置関係を説明する平面図である。
【0083】
図12に示す退避状態では、遷移規制部68は間欠リブ84iにおける前端側の空隙にあたる退避側空隙84gに係合している。屈曲操作部60(軸部材65)が
図13に示す操作状態に遷移すると、遷移規制部68は間欠リブ84iにおける後端側の空隙にあたる操作側空隙84hに係合することとなる。遷移規制部68は上述のように矢尻形状をなしているため、これが間欠リブ84iの空隙に係合することにより、下側本体84の前端側から後端側(
図12および
図13の左方から右方)への移動は許容し、後端側から前端側(
図12および
図13の右方から左方)への移動は規制される。
【0084】
すなわち、本実施形態の操作部50は遷移規制部68を有し、この遷移規制部68は、退避位置から操作位置へ屈曲操作部60の遷移を許容し、操作位置から退避位置への屈曲操作部60の遷移を規制する。そして、屈曲操作部60を退避位置から操作位置に遷移させることにより、屈曲操作部60の複数の係合部66が一体に移動する。
【0085】
屈曲操作部60の操作位置と退避位置とは、管状本体10の軸線方向に並んで配置されている。ここでいう管状本体10の軸線方向とは、操作部本体80に引き込まれた管状本体10の基端部PE(
図8、
図9を参照)の延在方向をいう。
【0086】
上述のように、管状本体10の基端部PEから係合部66までの操作線30の経路長とは、
図9に示すように、操作部本体80に対する管状本体10の引き込み位置11から、弛みなく張られた操作線30が係合部66に至るまでの長さをいう。
【0087】
屈曲操作部60が退避位置にあるときの操作線30の経路長は、屈曲操作部60が操作位置にあるときの操作線30の経路長よりも短い。このため、
図8に示すように、屈曲操作部60が退避位置にあるとき、操作線30は弛んでいる。
図9に示すように、屈曲操作部60が退避位置から操作位置に遷移すると操作線30の弛みは除去される。そして、操作位置にある屈曲操作部60が牽引操作を行うことで、複数本の操作線30a、30bに牽引力が付与されて管状本体10の遠位部DEが屈曲する。
【0088】
このように、退避位置で回転が規制されていた屈曲操作部60を操作位置に遷移させると、操作線30の弛みが除去されるとともに屈曲操作部60は回転可能となる。これにより、カテーテル100の組立後の初期状態において屈曲操作部60を退避位置に配設しておくことで、管状本体10および操作線30に熱変形または膨潤変形が生じ、管状本体10が操作線30よりも大きく伸張したとしても、操作線30の弛みによってこれを吸収することができる。
【0089】
すなわち、カテーテル100を加熱滅菌する際には屈曲操作部60を退避位置に配設し、加熱滅菌後に屈曲操作部60を退避位置から操作位置に遷移させるとよい。これにより、操作線30の弛みが除去されて屈曲操作部60により牽引操作することが可能となり、管状本体10の遠位部DE(
図3を参照)を適切に屈曲操作することができる。
【0090】
すなわち、上記のカテーテル100の製造方法として、屈曲操作部60が退避位置にあるカテーテル100を準備する工程と、カテーテル100を滅菌用包装体(図示せず)に収納して加熱滅菌する工程と、加熱滅菌されたカテーテル100における屈曲操作部60を退避位置から操作位置に遷移させることにより操作線30a、30bの弛みの一部または全部を除去する工程と、を行うとよい。
【0091】
屈曲操作部60を退避位置から操作位置に遷移させる工程は、カテーテル100が滅菌用包装体に収納された状態で、滅菌用包装体のうえから屈曲操作部60を移動させることにより実施してもよい。または、カテーテル100を滅菌用包装体から取り出してから実施してもよい。
【0092】
上記実施形態では牽引規制部89が屈曲操作部60の動作を規制する態様を説明したが、本実施形態に代えて、屈曲操作部60が動作しても操作線30に対する牽引力の付与が抑制される態様としてもよい。具体的には、屈曲操作部60と操作線30とを係合部66において着脱自在に構成してもよい。そして、屈曲操作部60の退避状態では係合部66において屈曲操作部60と操作線30とを脱離させ、屈曲操作部60の操作状態では係合部66において屈曲操作部60と操作線30とを係合させてもよい。これにより、退避状態および操作状態で屈曲操作部60は自由に回転し、かつ退避状態では操作線30に牽引力が付与されることを抑制することができる。
【0093】
<第二実施形態>
図14(a)、(b)は、本発明の第二実施形態の操作部50の内部構造を説明する縦断面図である。
図14(a)は退避状態を示し、
図14(b)は操作状態を示す。補強部材90およびハブコネクタ70は図示省略してある。
【0094】
本実施形態の操作部50は、屈曲操作部60が操作部本体80に対して個別に進退移動する複数のスライド部110、120を有している点で第一実施形態と相違する。
スライド部110、120には複数本の操作線30a、30bの基端部がそれぞれ係合している。そして、屈曲操作部60を退避位置から操作位置に遷移させることにより複数のスライド部110、120が一体に移動する。
スライド部110、120は、操作部本体80(下側本体84)に対向して個別に設けられている。スライド部110、120は、スライド本体の後端側(
図14各図の右方)に係合凸部111が形成されている。スライド部110、120の前端側(
図14各図の左方)には、係止穴を有する摺動リング112が装着されている。
【0095】
操作部本体80(下側本体84)の外周面には、爪部131と、この爪部131に連続して形成された摺動溝133が形成されている。また、下側本体84は、スライド部110、120の前端側に係止片132を備えている。係止片132は下側本体84より側方(
図14各図の上下方向)に突没自在に弾性変形する。
図14(a)に示す退避状態で、係止片132は摺動リング112の係止穴に対して非係合である。
【0096】
操作線30は、管状本体10の基端部PEから引き出され、下側本体84の内部で引き回されてスライド部110、120に接続されている。操作線30の経路上には1本または複数本の摺動突起134が形成されている。摺動突起134は、操作部本体80(下側本体84)の内部で引き回される操作線30の経路を規定する。
【0097】
図14(a)に示す退避状態で、操作線30は下側本体84の内部で弛んでいる。この状態では、スライド部110、120の係合凸部111は爪部131と非係合であり、スライド部110、120のスライド操作は規制されている。すなわち、爪部131は、退避位置にある屈曲操作部60(スライド部110、120)が操作線30に牽引力を付与することを規制する牽引規制部89である。
【0098】
退避位置から操作位置に屈曲操作部60(スライド部110、120)が遷移することにより、牽引規制部89(爪部131)による屈曲操作部60の規制が解除され、
【0099】
かかる退避状態から、摺動リング112を後端側に摺動させることで、スライド部110および120が一体に同方向に移動して
図14(b)に示す操作状態に遷移する。これにより、操作線30の経路長が伸張するため、操作線30の弛みは除去される。また、
図14(b)に示す操作状態で、係止片132は摺動リング112の係止穴に係合する。これにより、摺動リング112の摺動は規制され、操作状態から退避状態にスライド部110および120が逆戻りすることが禁止される。すなわち、係止片132は、操作位置から退避位置への屈曲操作部60(スライド部110、120)の遷移を規制する遷移規制部68として機能する。
【0100】
退避位置から操作位置に屈曲操作部60(スライド部110、120)が遷移することにより、牽引規制部89(爪部131)による牽引規制が解除される。具体的には、操作状態で係合凸部111は爪部131と係合する。これにより、係合凸部111は摺動溝133に沿って後端側に摺動可能となる。したがって、スライド部110、120を摺動溝133に対して個別にスライドさせることで、操作線30a、30bがそれぞれ牽引されて管状本体10の遠位部DE(
図3を参照)を屈曲させる。
【0101】
なお、本発明の各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
【0102】
本実施形態は以下の技術思想を包含する。
(1)長尺で可撓性の管状本体と、前記管状本体に挿通され、先端部が前記管状本体の遠位部に接続された複数本の操作線と、前記管状本体の基端部に設けられた操作部本体と、前記操作線の基端部との係合部を有し牽引操作により複数本の前記操作線に個別に牽引力を付与して前記管状本体の遠位部を屈曲させる屈曲操作部と、を備え、前記屈曲操作部が前記操作部本体に対して移動可能に設けられており、前記屈曲操作部と前記操作部本体とを相対移動させることにより複数本の前記操作線の前記先端部から前記係合部までの経路長が共に増大または減少することを特徴とするカテーテル。
(2)前記屈曲操作部が、前記操作部本体に対して操作位置と退避位置とに遷移可能であり、前記退避位置における前記経路長は前記操作位置における前記経路長よりも短く、前記操作位置にある前記屈曲操作部が前記牽引操作を行うことで複数本の前記操作線に前記牽引力が付与されて前記管状本体の前記遠位部が屈曲する上記(1)に記載のカテーテル。
(3)前記操作位置と前記退避位置とが前記管状本体の軸線方向に並んで配置されている上記(2)に記載のカテーテル。
(4)前記屈曲操作部が複数の係合部を有し、前記係合部には複数本の前記操作線の前記基端部がそれぞれ係合しており、前記屈曲操作部を前記退避位置から前記操作位置に遷移させることにより複数の前記係合部が一体に移動する上記(2)または(3)に記載のカテーテル。
(5)前記屈曲操作部は前記操作部本体に対して回転可能であって、前記屈曲操作部を一方向に回転させると第一の前記操作線が緊張して第二の前記操作線が弛緩し、前記屈曲操作部を他方向に回転させると第二の前記操作線が緊張して第一の前記操作線が弛緩する上記(2)から(4)のいずれか一項に記載のカテーテル。
(6)前記屈曲操作部は、前記操作部本体に対して個別に進退移動する複数のスライド部を有し、前記スライド部に複数本の前記操作線の前記基端部がそれぞれ係合しており、前記屈曲操作部を前記退避位置から前記操作位置に遷移させることにより複数の前記スライド部が一体に移動する上記(2)から(4)のいずれか一項に記載のカテーテル。
(7)牽引規制部を更に有し、前記牽引規制部は、前記退避位置にある前記屈曲操作部が前記操作線に前記牽引力を付与することを規制する上記(2)から(6)のいずれか一項に記載のカテーテル。
(8)前記牽引規制部が前記屈曲操作部に掛止して前記牽引操作を規制する上記(7)に記載のカテーテル。
(9)前記退避位置から前記操作位置に前記屈曲操作部が遷移することにより前記牽引規制部の前記規制が解除される上記(7)または(8)に記載のカテーテル。
(10)遷移規制部を更に有し、前記遷移規制部は、前記操作位置から前記退避位置への前記屈曲操作部の遷移を規制する上記(2)から(9)のいずれか一項に記載のカテーテル。
(11)前記管状本体の線膨張係数が前記操作線の線膨張係数よりも大きい上記(2)から(10)のいずれか一項に記載のカテーテル。
(12)前記管状本体の膨潤係数が前記操作線の膨潤係数よりも大きい上記(2)から(11)のいずれか一項に記載のカテーテル。
(13)前記管状本体が、主管腔と、前記主管腔よりも小径で複数本の前記操作線がそれぞれ挿通された複数の副管腔と、を有する上記(2)から(12)のいずれか一項に記載のカテーテル。
(14)長尺で可撓性の管状本体と、前記管状本体に挿通され先端部が前記管状本体の遠位部に接続された複数本の操作線と、を備え、前記操作線を牽引することにより前記管状本体の前記遠位部が屈曲するカテーテルに用いられる操作部であって、前記管状本体の基端部に装着される操作部本体と、前記操作線の基端部との係合部を有し牽引操作により複数本の前記操作線に個別に牽引力を付与する屈曲操作部と、を備え、前記屈曲操作部が前記操作部本体に対して移動可能に設けられており、前記屈曲操作部と前記操作部本体とを相対移動させることにより前記管状本体の前記基端部から前記係合部までの経路長が増大または減少することを特徴とするカテーテル操作部。
(15)上記(2)から(13)のいずれか一項に記載のカテーテルの製造方法であって、前記屈曲操作部が前記退避位置にある前記カテーテルを準備する工程と、前記カテーテルを滅菌用包装体に収納して加熱滅菌する工程と、加熱滅菌された前記カテーテルにおける前記屈曲操作部を前記退避位置から前記操作位置に遷移させることにより前記操作線の弛みの一部または全部を除去する工程と、を含むカテーテルの製造方法。