(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内燃機関(11)の排出ガスの一部をEGRガスとして吸気通路(12)へ還流させるEGR装置(28)を備え、減速時に前記内燃機関(11)の点火時期を遅角する制御を行う内燃機関の制御装置において、
前記内燃機関(11)の筒内に流入する筒内流入EGRガス量を推定又は検出する筒内流入EGRガス量判定手段(36)と、
前記筒内流入EGRガス量と前記内燃機関(11)の運転状態とに基づいて失火が発生するか否かを予測する失火発生予測手段(36)と、
前記失火発生予測手段(36)で失火が発生すると予測したときに失火を回避するように制御する失火回避制御を実行する失火回避制御手段(36)と、
前記失火回避制御を実行した場合に失火を回避できるか否かを判定する失火回避判定手段(36)と、
前記失火回避判定手段(36)で前記失火回避制御を実行しても失火を回避できないと判定したときに前記点火時期の遅角を制限する点火遅角制限手段(36)と、
を備え、
前記失火回避制御を実行しても失火を回避できないと前記失火回避判定手段(36)によって判定された場合に、前記点火遅角制限手段(36)によって前記点火時期の遅角を制限した状態で、前記失火回避制御手段(36)による前記失火回避制御を実行することを特徴とする内燃機関の制御装置。
前記内燃機関(11)の運転状態に基づいて正常燃焼可能な筒内流入EGRガス量の上限値である失火限界EGRガス量を算出する失火限界EGRガス量算出手段(36)と、
前記筒内流入EGRガス量と前記失火限界EGRガス量との差に基づいて失火回避に必要な要求失火対策効果量を算出する要求失火対策効果量算出手段(36)と、
前記失火回避制御を実行した場合の実失火対策効果量を算出する実失火対策効果量算出手段(36)とを備え、
前記失火回避判定手段(36)は、前記実失火対策効果量と前記要求失火対策効果量とを比較して前記失火回避制御を実行した場合に失火を回避できるか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
前記点火遅角制限手段(36)は、前記失火回避制御で失火を回避できるようにするのに必要な前記点火時期の遅角制限値を算出し、該遅角制限値を用いて前記点火時期の遅角量を制限することを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関の制御装置。
前記点火遅角制限手段(36)は、前記点火時期の遅角を制限したことによるトルク変化を防止するトルク補正制御を実行することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
前記点火遅角制限手段(36)は、前記トルク補正制御として、前記内燃機関(11)の動力で駆動される発電機(48)を制御してトルクを減少させる制御と、前記内燃機関(11)の動力で駆動される補機を制御してトルクを減少させる制御と、前記内燃機関(11)の複数気筒のうちの一部の気筒の運転を休止してトルクを減少させる制御と、アンチロックブレーキシステムにより制動力を発生させてトルクを減少させる制御のうちの少なくとも一つを実行することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
前記失火回避制御手段(36)は、前記失火回避制御として、前記内燃機関(11)の燃料噴射量を増量する燃料噴射量増量制御と、前記内燃機関(11)の点火エネルギを増加させる点火エネルギ増加制御と、前記内燃機関(11)の筒内の気流を強化する気流強化制御と、前記内燃機関(11)の吸入空気量を増加させる吸入空気量増加制御のうちの少なくとも一つを実行することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を具体化した一実施例を説明する。
まず、
図1に基づいてエンジン制御システムの概略構成を説明する。
内燃機関であるエンジン11の吸気管12(吸気通路)の最上流部には、エアクリーナ13が設けられ、このエアクリーナ13の下流側に、吸入空気(新気)の流量を検出するエアフローメータ14が設けられている。一方、エンジン11の排気管15(排気通路)には、排出ガス中のCO,HC,NOx等を浄化する三元触媒等の触媒16が設置されている。
【0012】
このエンジン11には、吸入空気を過給する排気タービン駆動式の過給機17が搭載されている。この過給機17は、排気管15のうちの触媒16の上流側に排気タービン18が配置され、吸気管12のうちのエアフローメータ14の下流側にコンプレッサ19が配置されている。この過給機17は、排気タービン18とコンプレッサ19とが一体的に回転するように連結され、排出ガスの運動エネルギで排気タービン18を回転駆動することでコンプレッサ19を回転駆動して吸入空気を過給するようになっている。
【0013】
吸気管12のうちのコンプレッサ19の下流側には、モータ20によって開度調節されるスロットルバルブ21と、このスロットルバルブ21の開度(スロットル開度)を検出するスロットル開度センサ22とが設けられている。
【0014】
更に、スロットルバルブ21の下流側には、吸入空気を冷却するインタークーラがサージタンク23と一体的に設けられている。尚、サージタンク23やスロットルバルブ21の上流側にインタークーラを配置するようにしても良い。サージタンク23には、エンジン11の各気筒に空気を導入する吸気マニホールド24が設けられ、各気筒毎に筒内噴射又は吸気ポート噴射を行う燃料噴射弁(図示せず)が取り付けられている。エンジン11のシリンダヘッドには、各気筒毎に点火プラグ(図示せず)が取り付けられ、各点火プラグの火花放電によって各気筒内の混合気に着火される。
【0015】
エンジン11の各気筒の排気口には排気マニホールド25が接続され、各気筒の排気マニホールド25の下流側の集合部が排気タービン18の上流側の排気管15に接続されている。また、排気タービン18の上流側と下流側とをバイパスさせる排気バイパス通路26が設けられ、この排気バイパス通路26に、排気バイパス通路26を開閉するウェイストゲートバルブ27が設けられている。
【0016】
このエンジン11には、排気管15から排出ガスの一部をEGRガスとして吸気管12へ還流させるLPL方式(低圧ループ方式)のEGR装置28が搭載されている。このEGR装置28は、排気管15のうちの排気タービン18の下流側(例えば触媒16の下流側)と吸気管12のうちのコンプレッサ19の上流側(スロットルバルブ21の上流側の吸気通路)との間にEGR配管29(EGR通路)が接続され、このEGR配管29に、EGRガスを冷却するEGRクーラ30と、EGRガス流量を調節するEGR弁31が設けられている。このEGR弁31は、モータ等のアクチュエータ(図示せず)によって開度が調整され、EGR弁31を開弁することで排気管15のうちの触媒16の下流側から吸気管12のうちのコンプレッサ19の上流側へEGRガスを還流させるようになっている。
【0017】
また、エンジン11には、吸気バルブ(図示せず)のバルブタイミング(開閉タイミング)を変化させる吸気側可変バルブタイミング機構32と、排気バルブ(図示せず)のバルブタイミングを変化させる排気側可変バルブタイミング機構33が設けられている。その他、エンジン11には、冷却水温を検出する冷却水温センサ34や、クランク軸(図示せず)が所定クランク角回転する毎にパルス信号を出力するクランク角センサ35等が設けられ、クランク角センサ35の出力信号に基づいてクランク角やエンジン回転速度が検出される。
【0018】
これら各種センサの出力は、電子制御ユニット(以下「ECU」と表記する)36に入力される。このECU36は、マイクロコンピュータを主体として構成され、内蔵されたROM(記憶媒体)に記憶された各種のエンジン制御用のプログラムを実行することで、エンジン運転状態に応じて、燃料噴射量、点火時期、スロットル開度(吸入空気量)等を制御する。
【0019】
その際、ECU36は、エンジン運転状態(例えばエンジン負荷とエンジン回転速度等)に応じて目標EGR率を算出し、この目標EGR率を実現するようにEGR弁31の開度を制御する。
【0020】
しかし、
図2に示すように、EGR装置28を搭載したエンジン11は、減速時にスロットル開度を閉じ側に制御したときに、EGR弁31を閉弁するようにしても、EGR弁31の下流側のEGR配管29内や吸気管12内にEGRガスが滞留する。特にスロットルバルブ21の上流側の吸気通路にEGRガスを還流させるシステムでは、スロットルバルブ21の上流側の吸気通路内に大量のEGRガスが滞留する。このため、そのままでは減速時やその後の再加速時に筒内に流入するEGRガス量が過剰に多くなって燃焼状態が悪化して失火が発生し易くなるという問題がある。
【0021】
この対策として、本実施例では、ECU36により後述する
図3及び
図4の失火回避制御用の各ルーチンを実行することで、後述する推定方法(
図6乃至
図9参照)により筒内流入EGRガス量(筒内に流入するEGRガス量)を推定すると共に、エンジン運転状態に基づいて正常燃焼可能(失火せずに燃焼可能)な筒内流入EGRガス量の上限値である失火限界EGRガス量を算出し、筒内流入EGRガス量と失火限界EGRガス量とを比較して失火が発生するか否かを予測する。そして、失火が発生すると予測したときに、失火を回避するように制御する失火回避制御を実行する。その際、筒内流入EGRガス量と失火限界EGRガス量との差に基づいて失火回避に必要な要求失火対策効果量を算出し、その要求失火対策効果量に応じた条件で失火回避制御を実行する。
【0022】
尚、筒内流入EGRガス量と失火限界EGRガス量に代えて、筒内流入EGR率と失火限界EGR率を用いるようにしても良い。
筒内流入EGR率=(筒内流入EGRガス量/筒内流入総ガス量)
失火限界EGR率=(失火限界EGRガス量/筒内流入総ガス量)
ここで、筒内流入総ガス量=筒内流入新気量+筒内流入EGRガス量である。
【0023】
しかし、減速時にエンジン11の点火時期を遅角する制御(点火時期の遅角量を大きくする制御)を実行してトルクを減少させることで減速度を確保するシステムでは、減速時に点火時期を遅角する制御を実行したときに失火限界が低下する。このため、減速条件によっては前述した失火回避制御を実行しても効果が不足して失火を回避できない可能性がある。
【0024】
そこで、本実施例では、失火回避制御を実行した場合の実失火対策効果量を算出し、この実失火対策効果量と要求失火対策効果量とを比較して失火回避制御を実行した場合に失火を回避できるか否かを判定する。そして、失火回避制御を実行しても失火を回避できないと判定したときには、失火回避制御で失火を回避できるようにするのに必要な点火時期の遅角制限値を算出し、この遅角制限値を用いて点火時期の遅角量を制限する。これにより、燃焼状態を改善して失火限界の低下を抑制し、失火回避制御により失火を回避できるようにする。
以下、本実施例でECU36が実行する
図3及び
図4の失火回避制御用の各ルーチンの処理内容を説明する。
【0025】
[失火回避制御]
図3に示す失火回避制御ルーチンは、ECU36の電源オン期間中(イグニッションスイッチのオン期間中)に所定周期で繰り返し実行される。本ルーチンが起動されると、まず、ステップ101で、エンジン運転条件パラメータ(例えば、エンジン回転速度、吸入空気量、点火時期等)を読み込む。
【0026】
この後、ステップ102に進み、図示しない筒内流入EGRガス量推定ルーチンを実行することで、後述する推定方法(
図6乃至
図9参照)により筒内流入EGRガス量を推定する。このステップ102の処理が特許請求の範囲でいう筒内流入EGRガス量判定手段としての役割を果たす。
【0027】
この後、ステップ103に進み、エンジン運転状態(例えば吸入空気量や点火時期等)に基づいて失火限界EGRガス量(正常燃焼可能な筒内流入EGRガス量の上限値)をマップ又は数式等により算出する。この失火限界EGRガス量のマップ又は数式等は、予め試験データや設計データ等に基づいて作成され、ECU36のROMに記憶されている。このステップ103の処理が特許請求の範囲でいう失火限界EGRガス量算出手段としての役割を果たす。
【0028】
この後、ステップ104に進み、筒内流入EGRガス量と失火限界EGRガス量とを比較して失火が発生するか否かを予測する。具体的には、失火限界EGRガス量と筒内流入EGRガス量との差分値が所定の閾値よりも小さいか否かによって、失火が発生するか否かを予測する。筒内流入EGRガス量が失火限界EGRガス量を越えると、失火が発生するため、失火限界EGRガス量と筒内流入EGRガス量との差分値が閾値よりも小さいか否かを判定すれば、失火が発生するか否かを精度良く予測することができる。このステップ104の処理が特許請求の範囲でいう失火発生予測手段としての役割を果たす。
【0029】
このステップ104で、失火が発生すると予測した場合(失火限界EGRガス量と筒内流入EGRガス量との差分値が閾値よりも小さいと判定した場合)には、ステップ105に進み、筒内流入EGRガス量と失火限界EGRガス量との差(つまり失火限界EGRガス量に対する筒内流入EGRガス量の超過分であり、燃焼悪化度合の情報となる)に基づいて、失火回避に必要な要求失火対策効果量をマップ又は数式等により算出する。この要求失火対策効果量のマップ又は数式等は、予め試験データや設計データ等に基づいて作成され、ECU36のROMに記憶されている。このステップ105の処理が特許請求の範囲でいう要求失火対策効果量算出手段としての役割を果たす。
【0030】
尚、筒内流入EGRガス量と失火限界EGRガス量との差(失火限界EGRガス量に対する筒内流入EGRガス量の超過分)を筒内流入総ガス量で除算した値を、要求失火対策効果量として算出するようにしても良い。或は、筒内流入EGRガス量と失火限界EGRガス量に代えて、筒内流入EGRガス率と失火限界EGR率を用いる場合には、筒内流入EGRガス率と失火限界EGR率との差(失火限界EGR率に対する筒内流入EGRガス率の超過分)を要求失火対策効果量として算出するようにしても良い。
【0031】
この後、ステップ106に進み、
図4の失火回避制御実行ルーチンを実行することで、次のようにして失火回避に必要な要求失火対策効果量に応じた条件で失火回避制御を実行する。この
図4のルーチンが特許請求の範囲でいう失火回避制御手段としての役割を果たす。
【0032】
図4のルーチンでは、まず、ステップ201で、現在の運転状態(例えば、エンジン回転速度、負荷、車速、アクセル開度、シフトレバーのシフト位置等)や現在選択されている走行モード(例えば、エコモードやスポーツモード等)に基づいて、次の(1) 〜(4) の優先条件の中から今回の優先条件を選択する。
(1) 燃費優先
(2) ドラビリ優先(ドライバビリティ優先)
(3) 応答性優先
(4) エミッション優先
【0033】
このステップ201で、上記(1) 〜(4) の優先条件の中から今回の優先条件を選択した後、次のステップ202〜205のいずれかで、
図5に示す失火回避制御選択マップを用いて、複数種類の失火回避制御の中から、要求失火対策効果量と今回の優先条件を満たす失火回避制御を選択して実行する。
図5の失火回避制御選択マップは、複数種類の失火回避制御に対して、各失火回避制御毎にそれぞれの失火限界拡大効果量と燃費悪化度とドラビリ悪化度と応答性悪化度とエミッション悪化度が設定されている。この失火回避制御選択マップは、予め試験データや設計データ等に基づいて作成され、ECU36のROMに記憶されている。
【0034】
具体的には、上記ステップ201で、今回の優先条件として、(1) 燃費優先が選択された場合には、ステップ202に進み、
図5に示す失火回避制御選択マップの失火限界拡大効果量と燃費悪化度の項目を参照して、複数種類の失火回避制御の中から、失火限界拡大効果量の合計値が要求失火対策効果量以上となり且つ燃費悪化度の合計値が最小となるように失火回避制御の組み合わせ(又は1つの失火回避制御)を選択し、その選択した失火回避制御を実行する。
【0035】
また、上記ステップ201で、今回の優先条件として、(2) ドラビリ優先が選択された場合には、ステップ203に進み、
図5に示す失火回避制御選択マップの失火限界拡大効果量とドラビリ悪化度の項目を参照して、複数種類の失火回避制御の中から、失火限界拡大効果量の合計値が要求失火対策効果量以上となり且つドラビリ悪化度の合計値が最小となるように失火回避制御の組み合わせ(又は1つの失火回避制御)を選択し、その選択した失火回避制御を実行する。
【0036】
また、上記ステップ201で、今回の優先条件として、(3) 応答性優先が選択された場合には、ステップ204に進み、
図5に示す失火回避制御選択マップの失火限界拡大効果量と応答性悪化度の項目を参照して、複数種類の失火回避制御の中から、失火限界拡大効果量の合計値が要求失火対策効果量以上となり且つ応答性悪化度の合計値が最小となるように失火回避制御の組み合わせ(又は1つの失火回避制御)を選択し、その選択した失火回避制御を実行する。
【0037】
また、上記ステップ201で、今回の優先条件として、(4) エミッション優先が選択された場合には、ステップ205に進み、
図5に示す失火回避制御選択マップの失火限界拡大効果量とエミッション悪化度の項目を参照して、複数種類の失火回避制御の中から、失火限界拡大効果量の合計値が要求失火対策効果量以上となり且つエミッション悪化度の合計値が最小となるように失火回避制御の組み合わせ(又は1つの失火回避制御)を選択し、その選択した失火回避制御を実行する。
【0038】
ここで、複数種類の失火回避制御としては、例えば、次のような制御が挙げられる。
・燃料噴射量を増量する燃料噴射量増量制御
・点火放電時間を長くして点火エネルギを増加させる第1の点火エネルギ増加制御
・点火放電電流を大きくして点火エネルギを増加させる第2の点火エネルギ増加制御
・点火回数を増やして点火エネルギを増加させる第3の点火エネルギ増加制御
・タンブル制御弁により筒内のタンブル流を強化する第1の気流強化制御
・スワール制御弁により筒内のスワール流を強化する第2の気流強化制御
・吸気バルブのリフト量を小さくし筒内への吸気通路を絞ることで筒内に流入する吸気の流速を速くして気流を強化する第3の気流強化制御
・筒内に新気を噴射可能な新気噴射弁により筒内に新気を噴射して気流を強化する第4の気流強化制御
・スロットル開度を増加させて吸入空気量を増加させる吸入空気量増加制御
【0039】
燃料噴射量増量制御により燃料噴射量を増量すれば、混合気の着火性や燃焼速度を高めて燃焼状態を改善することができ、失火の発生を防止することができる。また、点火エネルギ増加制御により点火エネルギを増加させれば、混合気の着火性を高めて燃焼状態を改善することができ、失火の発生を防止することができる。また、気流強化制御により筒内の気流を強化すれば、混合気の燃焼速度を高めて燃焼状態を改善することができ、失火の発生を防止することができる。更に、吸入空気量増加制御により吸入空気量を増加させれば、筒内充填空気量を増加させて耐EGR性を高めることができ、失火の発生を防止することができる。
【0040】
尚、
図4のルーチンでは、要求失火対策効果量に応じて失火回避制御の種類と組み合わせを変更するようにしたが、これに限定されず、例えば、要求失火対策効果量に応じて失火回避制御の制御量(例えば、燃料噴射増加量、点火エネルギ増加量、気流強化増加量、吸入空気増加量等)や実施タイミングを変更するようにしても良い。
【0041】
この後、
図3のステップ107に進み、選択した失火回避制御を実行した場合の実失火対策効果量を算出する。この場合、例えば、エンジン運転状態(例えば吸入空気量や点火時期等)と選択した失火回避制御とに基づいて実失火対策効果量をマップ又は数式等により算出する。この実失火対策効果量のマップ又は数式等は、予め試験データや設計データ等に基づいて作成され、ECU36のROMに記憶されている。このステップ107の処理が特許請求の範囲でいう実失火対策効果量算出手段としての役割を果たす。
【0042】
この後、ステップ108に進み、実失火対策効果量と要求失火対策効果量とを比較して失火回避制御を実行した場合に失火を回避できるか否かを判定する。具体的には、実失火対策効果量と要求失火対策効果量との差分値が所定の閾値よりも大きいか否かによって、失火回避制御を実行した場合に失火を回避できるか否かを判定する。実失火対策効果量が要求失火対策効果量よりも大きければ、失火回避制御を実行した場合に失火を回避できるため、実失火対策効果量と要求失火対策効果量との差分値が閾値よりも大きいか否かを判定すれば、失火回避制御を実行した場合に失火を回避できるか否かを精度良く判定することができる。このステップ108の処理が特許請求の範囲でいう失火回避判定手段としての役割を果たす。
【0043】
このステップ108で、失火回避制御を実行した場合に失火を回避できると判定された場合には、ステップ111に進み、吸入空気量増加制御を実行する場合(失火回避制御として吸入空気量増加制御を選択した場合)には、吸入空気量増加制御によるトルク変化(トルク増加)を防止する第1のトルク補正制御を実行する。これにより、吸入空気量増加制御によるトルク増加分を第1のトルク補正制御によるトルク減少分で打ち消して、吸入空気量増加制御によるトルク変化を防止することができ、ドライバビリティの悪化を防止することができる。
【0044】
第1のトルク補正制御としては、例えば、次のような制御が挙げられる。
・エンジン11の複数気筒のうちの一部の気筒の運転を休止してトルクを減少させる制御
・ABS(アンチロックブレーキシステム)により制動力を発生させてトルクを減少させる制御
・エンジン11の動力で駆動される補機(例えばエアコンのコンプレッサ、電動ファン等)を制御してトルクを減少させる制御
【0045】
一方、上記ステップ108で、失火回避制御を実行しても失火を回避できないと判定された場合には、ステップ109に進み、点火時期の遅角を制限する点火遅角制限制御を実行する。この点火遅角制限制御では、失火回避制御で失火を回避できるようにするのに必要な点火時期の遅角制限値(遅角ガード値又は進角補正量)を算出し、この遅角制限値を用いて点火時期の遅角量を制限する。
【0046】
具体的には、実失火対策効果量と要求失火対策効果量との差分値に基づいて遅角ガード値をマップ又は数式等により算出し、この遅角ガード値を越えないように点火時期の遅角量を制限する。或は、実失火対策効果量と要求失火対策効果量との差分値に基づいて進角補正量をマップ又は数式等により算出し、この進角補正量だけ点火時期の遅角量を減少させる。遅角制限値(遅角ガード値又は進角補正量)のマップ又は数式等は、予め試験データや設計データ等に基づいて作成され、ECU36のROMに記憶されている。尚、失火限界EGRガス量と筒内流入EGRガス量との差分値に基づいて遅角制限値(遅角ガード値又は進角補正量)を算出するようにしても良い。このステップ109の処理が特許請求の範囲でいう点火遅角制限手段としての役割を果たす。
【0047】
この後、ステップ110に進み、点火遅角制限制御により点火時期の遅角を制限したことによるトルク変化(トルク増加)を防止する第2のトルク補正制御を実行する。この第2のトルク補正制御では、エンジン11の動力で駆動されるオルタネータ48(発電機)の発電量を制御してトルクを減少させる制御を実行する。具体的には、点火遅角制限制御により点火時期の遅角を制限したことによるトルク増加量を遅角制限値に基づいて算出し、このトルク増加量を打ち消すのに必要な負荷トルクに相当するオルタネータ48の発電量を算出し、この発電量を実現するようにオルタネータ48を制御する。
【0048】
尚、第2のトルク補正制御は、オルタネータ48を制御してトルクを減少させる制御に限定されず、例えば、エンジン11の動力で駆動される補機(例えばエアコンのコンプレッサ、電動ファン等)を制御してトルクを減少させる制御、エンジン11の複数気筒のうちの一部の気筒の運転を休止してトルクを減少させる制御、ABSにより制動力を発生させてトルクを減少させる制御等のうちの少なくとも一つを第2のトルク補正制御として実行するようにしても良い。
【0049】
この後、ステップ111に進み、吸入空気量増加制御を実行する場合(失火回避制御として吸入空気量増加制御を選択した場合)には、吸入空気量増加制御によるトルク変化(トルク増加)を防止する第1のトルク補正制御を実行する。
【0050】
その後、上記ステップ104で、失火限界EGRガス量と筒内流入EGRガス量と差分値が閾値以上であると判定した場合には、ステップ112に進み、失火回避制御を終了する(トルク補正制御を実行していた場合にはトルク補正制御も終了する)。
【0051】
[筒内流入EGRガス量推定]
次に、
図6乃至
図9を用いて筒内流入EGRガス量の推定方法を説明する。
本実施例のように、吸気管12のうちのコンプレッサ19の上流側(スロットルバルブ21の上流側の吸気通路)にEGRガスを還流させるLPL方式のEGR装置28を採用したシステムの場合には、ECU36により筒内流入EGRガス量(以下の説明では「筒内流入EGRガス流量」という)を次のようにして演算(推定)する。
【0052】
図6に示すように、筒内流入総ガス流量演算部37では、まず、吸気管12内を流れる気体がスロットルバルブ21を通過する挙動を模擬したスロットルモデル39を用いて、スロットル通過総ガス流量(スロットルバルブ21を通過する総ガス流量)を演算する。尚、スロットルモデル39として、例えば特許文献(特開2008−101626号公報)に記載されたスロットルモデルを使用しても良い。
【0053】
また、エアフローメータ14で検出した新気流量(吸気管12内を流れる新気の流量)を用いて、スロットル通過総ガス流量の演算値(スロットルモデル39を用いて演算したスロットル通過総ガス流量)を補正するようにしても良い。具体的には、所定の補正値学習条件が成立したとき(例えば定常運転状態のとき)に、エアフローメータ14で検出した新気流量とスロットル通過総ガス流量の演算値との差をガス流量補正値として算出して記憶する。そして、このガス流量補正値を用いてスロットル通過総ガス流量の演算値を補正する。これにより、スロットル通過総ガス流量を精度良く求めることができる。
【0054】
或は、エアフローメータ14を備えていないシステムの場合には、吸気管圧力センサ(図示せず)で検出した吸気管圧力に基づいて新気流量を推定(演算)し、この推定した新気流量を用いて、スロットル通過総ガス流量の演算値を補正するようにしても良い。具体的には、所定の補正値学習条件が成立したとき(例えば定常運転状態のとき)に、吸気管圧力センサで検出した吸気管圧力に基づいて新気流量をマップ又は数式等により推定(演算)すると共に、空燃比フィードバック補正量に基づいて新気流量の補正値をマップ又は数式等により演算し、この補正値を用いて、吸気管圧力から推定した新気流量を補正する。この後、吸気管圧力から推定した新気流量(補正後の新気流量)とスロットル通過総ガス流量の演算値との差をガス流量補正値として算出して記憶する。そして、このガス流量補正値を用いてスロットル通過総ガス流量の演算値を補正する。これにより、エアフローメータ14を備えていないシステムの場合でも、スロットル通過総ガス流量を精度良く求めることができる。
【0055】
この後、スロットルバルブ21を通過した気体がスロットルバルブ21の下流側の吸気通路(サージタンク23や吸気マニホールド24等)内に充填される挙動を模擬したインマニモデル40を用いて、スロットル通過総ガス流量と筒内流入総ガス流量の前回値とに基づいてインマニ圧力(スロットルバルブ21の下流側の吸気通路内の圧力)を演算する。尚、インマニモデル40として、例えば特許文献(特開2008−101626号公報)に記載された吸気管モデルを使用しても良い。
【0056】
この後、スロットルバルブ21の下流側の吸気通路に充填された気体が筒内に吸入される挙動を模擬した吸気弁モデル41を用いて、インマニ圧力に基づいて筒内流入総ガス流量(=筒内流入新気流量+筒内流入EGRガス流量)を演算する。尚、吸気弁モデル41として、例えば特許文献(特開2008−101626号公報)に記載された吸気弁モデルを使用しても良い。
【0057】
一方、筒内流入EGRガス流量演算部38では、まず、EGR配管29内を流れるEGRガスがEGR弁31を通過する挙動を模擬したEGR弁モデル42を用いて、EGR弁通過ガス流量(EGR弁31を通過するEGRガス流量)を演算する。
【0058】
図7に示すように、EGR弁モデル42は、EGR弁31の開度とスロットル通過総ガス流量とEGR弁通過ガス流量との関係を規定するマップにより構築され、このEGR弁通過ガス流量のマップを用いて、EGR弁31の開度とスロットル通過総ガス流量とに応じたEGR弁通過ガス流量を演算する。EGR弁通過ガス流量のマップは、予め試験データや設計データ等に基づいて作成され、ECU36のROMに記憶されている。
【0059】
或は、EGR弁モデル42を、EGR弁31の開度とEGR弁31の上流側の圧力Pin及び下流側の圧力Pout とEGR弁通過ガス流量Megr との関係を規定する物理式により構築するようにしても良い。
具体的には、次の絞りの式(オリフィスの式)でEGR弁モデル42を近似する。
【0061】
ここで、Cは流量係数で、AはEGR弁31の開度に応じて変化するEGR配管29の開口断面積である。また、Rは気体定数で、Tegr はEGR弁31の上流側のEGRガスの温度であり、Φ(Pout /Pin)は(Pout /Pin)を変数とする関数である。
【0062】
この場合、上記の絞りの式(オリフィスの式)を用いて、EGR弁31の開度とEGR弁31の上流側の圧力Pin及び下流側の圧力Pout とEGRガスの温度とに基づいてEGR弁通過ガス流量Megr を演算する。
【0063】
この後、EGR弁31を通過したEGRガスがスロットルバルブ21を通過して筒内に流入するまでの挙動を模擬したEGRガス遅れモデル43(
図6参照)を用いて、EGR弁通過ガス流量の演算値に基づいて筒内流入EGRガス流量を演算する。
【0064】
図8に示すように、EGRガス遅れモデル43は、EGR弁31を通過したEGRガスがスロットルバルブ21の上流側の吸気通路(吸気管12のうちのコンプレッサ19の上流側)に流入する挙動を模擬した新気合流遅れモデル44と、スロットルバルブ21の上流側の吸気通路に流入したEGRガスがスロットルバルブ21を通過するまでの挙動を模擬した吸気管移流遅れモデル45と、スロットルバルブ21を通過したEGRガスがスロットルバルブ21の下流側の吸気通路(サージタンク23や吸気マニホールド24等)に充填される挙動を模擬したインマニ充填遅れモデル46と、スロットルバルブ21の下流側の吸気通路に充填されたEGRガスが吸気ポートを通過して筒内に流入するまでの挙動を模擬した吸気ポート移流遅れモデル47とから構成されている。
【0065】
これにより、EGRガスがスロットルバルブ21の上流側の吸気通路に流入する際の遅れと、スロットルバルブ21の上流側の吸気通路に流入したEGRガスがスロットルバルブ21を通過するまでの移流遅れと、スロットルバルブ21を通過したEGRガスがスロットルバルブ21の下流側の吸気通路に充填される際の充填遅れと、スロットルバルブ21の下流側の吸気通路に充填されたEGRガスが吸気ポートを通過して筒内に流入するまでの移流遅れを、筒内流入EGRガス流量の演算に反映させることができ、筒内流入EGRガス流量の推定精度を高めることができる。
【0066】
筒内流入EGRガス流量を演算する場合には、まず、新気合流遅れモデル44を用いて、EGR弁通過ガス流量Megr(a)に基づいてスロットルバルブ21の上流側の吸気通路に流入するEGRガス流量Megr(b)を演算する。
【0067】
新気合流遅れモデルは、下記(1)式で近似されている。
Megr(b)={K1 /(τ1 +1)}×Megr(a) ……(1)
上記(1)式の係数K1 と時定数τ1 は、それぞれEGR配管29(EGR弁31から吸気管12との合流部までの部分)の配管径と長さ、吸気管12の配管径等によって決まる値であり、予め試験データや設計データ等に基づいて算出される。
【0068】
この後、吸気管移流遅れモデル45を用いて、スロットルバルブ21の上流側の吸気通路に流入するEGRガス流量Megr(b)とスロットル通過総ガス流量Mthとに基づいてスロットルバルブ21を通過するEGRガス流量Megr(c)を演算する。
【0069】
図9に示すように、吸気管移流遅れモデル45は、スロットルバルブ21の上流側の吸気通路に流入したEGRガスがスロットルバルブ21を通過するまでの連続時間系の挙動を任意時間で離散化した行列(例えばサンプル時間16ms毎に離散化した32個の行列)により構築され、データを先入れ先出しのリスト構造で保持するキューを備えている。一般に、吸気管12内のEGRガスの移送速度は、ECU36の演算処理速度と比較して十分に遅いため、任意時間で離散化した行列により吸気管移流遅れモデル45を構築することができる。この吸気管移流遅れモデル45で用いる各種の係数は、それぞれ吸気管12(EGR配管29との合流部からスロットルバルブ21までの部分)の配管径と長さ等によって決まる値であり、予め試験データや設計データ等に基づいて算出される。
【0070】
この後、
図8に示すように、インマニ充填遅れモデル46を用いて、スロットルバルブ21を通過するEGRガス流量Megr(c)に基づいてスロットルバルブ21の下流側の吸気通路(サージタンク23や吸気マニホールド24等)に充填されるEGRガス流量Megr(d)を演算する。
インマニ充填遅れモデル46は、下記(2)式で近似されている。
Megr(d)={K2 /(τ2 +1)}×Megr(c) ……(2)
【0071】
上記(2)式の係数K2 とインマニ充填遅れ時定数τ2 は、それぞれスロットルバルブ21の下流側の吸気通路(吸気管12のうちのスロットルバルブ21の下流側の部分、サージタンク23、吸気マニホールド24等)の配管径と長さと容積等によって決まる値であり、予め試験データや設計データ等に基づいて算出される。尚、インマニモデル40でインマニ充填遅れ時定数を用いる場合には、インマニモデル40で用いたインマニ充填遅れ時定数をインマニ充填遅れモデル46で使用するようにしても良い。
【0072】
この後、吸気ポート移流遅れモデル47を用いて、スロットルバルブ21の下流側の吸気通路に充填されるEGRガス流量Megr(d)と筒内流入総ガス流量の前回値とに基づいて筒内流入EGRガス流量Megr(e)を演算する。
【0073】
吸気ポート移流遅れモデル47は、スロットルバルブ21の下流側の吸気通路に充填されたEGRガスが吸気ポートを通過して筒内に流入するまでの連続時間系の挙動を任意時間で離散化した行列により構築され、データを先入れ先出しのリスト構造で保持するキューを備えている。この吸気ポート移流遅れモデル47で用いる各種の係数は、それぞれ吸気ポートの配管径と長さ等によって決まる値であり、予め試験データや設計データ等に基づいて算出される。
【0074】
以上説明した本実施例では、EGRガス流量の挙動を模擬したモデルを用いて筒内流入EGRガス量を推定すると共に、エンジン運転状態に基づいて失火限界EGRガス量を算出し、筒内流入EGRガス量と失火限界EGRガス量とを比較して失火が発生するか否かを予測する。そして、失火が発生すると予測したときに、失火回避制御(例えば、燃料噴射量増量制御、点火エネルギ増加制御、気流強化制御、吸入空気量増加制御等)を実行する。これにより、減速時や再加速時に拘らず、筒内流入EGRガス量が過剰に多くなって失火が発生すると予測したときに、失火回避制御を実行することができるため、EGRガスによる減速時及び再加速時の失火を回避することができる。
【0075】
しかし、減速時にエンジン11の点火時期を遅角する制御(点火時期の遅角量を大きくする制御)を実行してトルクを減少させることで減速度を確保するシステムでは、減速時に点火時期を遅角する制御を実行したときに失火限界EGRガス量が低下する(
図10参照)。このため、
図10に示す比較例のように、点火遅角制限制御を実行しない場合、減速条件によっては失火回避制御を実行して失火限界EGRガス量を増加させても効果が不足して失火を回避できない可能性がある。
【0076】
これに対して、
図11に示す本実施例では、失火回避制御を実行した場合の実失火対策効果量を算出し、この実失火対策効果量と要求失火対策効果量とを比較して失火回避制御を実行した場合に失火を回避できるか否かを判定する。そして、失火回避制御を実行しても失火を回避できないと判定したときには、失火回避制御で失火を回避できるようにするのに必要な点火時期の遅角制限値(遅角ガード値又は進角補正量)を算出し、この遅角制限値を用いて点火時期の遅角量を制限する点火遅角制限制御を実行する。これにより、燃焼状態を改善して失火限界EGRガス量の低下を抑制することができ、失火回避制御により失火を回避することが可能となる。この場合、失火を回避するためにEGRガス量を減少させる必要がないため、EGRガスによる燃費向上効果を維持することができる。
【0077】
ところで、点火遅角制限制御により点火時期の遅角を制限すると、エンジン11のトルクが増加するため、そのままでは減速度が不足する可能性がある。
その点、本実施例では、
図12に示すように、点火遅角制限制御により点火時期の遅角を制限したことによるトルク変化(トルク増加)を防止する第2のトルク補正制御(例えばオルタネータ48の発電量を制御してトルクを減少させる制御)を実行するようにしたので、点火遅角制限制御によるトルク増加分を第2のトルク補正制御によるトルク減少分で打ち消して、点火遅角制限制御によるトルク変化を防止することができ、通常通りに点火時期を遅角した場合(点火時期の遅角を制限しなかった場合)と同程度の減速度を確保することができる。
【0078】
また、本実施例では、点火遅角制限制御の際に、失火回避制御で失火を回避できるようにするのに必要な点火時期の遅角制限値(遅角ガード値又は進角補正量)を算出し、この遅角制限値を用いて点火時期の遅角量を制限するようにしたので、点火時期の遅角量を必要以上に制限してしまう(点火時期の遅角量を必要以上に減少させてしまう)ことを防止することができる。
【0079】
尚、上記実施例では、EGRガス流量の挙動を模擬したモデルを用いて筒内流入EGRガス量を演算(推定)するようにしたが、筒内流入EGRガス量の推定方法は、これに限定されず、適宜変更しても良く、例えば、吸気管圧力センサやエアフローメータの出力信号等に基づいて筒内流入EGRガス量を演算(推定)するようにしても良い。また、筒内流入EGRガス量の情報として、吸気管12内に残留するEGRガス量をセンサで検出するようにしても良い。
【0080】
また、上記実施例では、筒内流入EGRガス量と失火限界EGRガス量との差に基づいて失火回避に必要な要求失火対策効果量を算出するようにしたが、これに限定されず、例えば、エンジン運転状態(例えば吸入空気量等)に応じて失火限界EGRガス量が変化することを考慮して、筒内流入EGRガス量とエンジン運転状態に基づいて失火回避に必要な要求失火対策効果量を算出するようにしても良い。
【0081】
また、上記実施例では、排気管15のうちの排気タービン18の下流側(例えば触媒16の下流側)から吸気管12のうちのコンプレッサ19の上流側へEGRガスを還流させるLPL方式(低圧ループ方式)のEGR装置28を採用した過給機付きエンジンに本発明を適用したが、これに限定されず、例えば、排気管のうちの排気タービンの上流側から吸気管のうちのコンプレッサの下流側(例えばスロットルバルブの下流側)へEGRガスを還流させるHPL方式(高圧ループ方式)のEGR装置を採用した過給機付きエンジンに本発明を適用しても良い。
【0082】
更に、本発明は、排気タービン駆動式の過給機(いわゆるターボチャージャ)を搭載したエンジンに限定されず、機械駆動式の過給機(いわゆるスーパーチャージャ)や電動式の過給機を搭載したエンジンに適用しても良い。
【0083】
その他、本発明は、過給機付きエンジンに限定されず、過給機を搭載していない自然吸気エンジン(NAエンジン)に適用しても良い。