【実施例】
【0104】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。これら例は例示的なものであって限定的なものではない。
【0105】
<環式ポリフェニレンスルフィドの生成率の測定>
反応生成物中の環式ポリフェニレンスルフィド化合物の生成率の測定は、HPLCを用いて実施した。HPLCの測定条件を以下に示す。
装置:島津株式会社製 LC−10Avpシリーズ
カラム:関東化学社製 Mightysil RP−18 GP150−4.6(5μm)
検出器:フォトダイオードアレイ検出器(波長270nm)
【0106】
なお、HPLCで成分分割した各成分の構造決定は、LC―MSによる分析及び、分取LCでの分取物のMALDI−MS,NMR,IR測定により行った。
【0107】
環式PAS生成率の算出は、まず環式PAS標品について高速液体クロマトグラフィー分析を行って検量線を作成しておき、その検量線を利用して環式PASのピーク面積からから環式PAS含有量を算出し、反応混合物中のイオウ成分が全て環式PASに転化すると仮定した場合の環式PAS収量に対する実際の環式PAS含有量として環式PASの生成率の算出を行った。また、工程(ii)で加熱を行う前の反応混合物中に線状PASを含む場合には、反応混合物中の全イオウ成分が全て環式PASに転化したと仮定した場合の環式PAS収量に対する実際の環式PAS含有量として環式PASの生成率の算出を行った。
【0108】
<スルフィド化剤の分析>
反応混合物中や反応生成物中のスルフィド化剤の定量(例えば、水硫化ナトリウムの定量)はイオンクロマトグラフィーを用いて以下の条件にて実施した。
装置:島津製作所製 HIC−20Asuper
カラム:島津製作所製 Shim−packIC−SA2(250mm×4.6mmID)
検出器:電気伝導度検出器(サプレッサ)
溶離液:4.0mM炭酸水素ナトリウム/1.0mM炭酸ナトリウム水溶液
流速:1.0ml/分
注入量:50マイクロリットル
カラム温度:30℃
【0109】
試料中に過酸化水素水を添加して試料中に含まれる硫化物イオンの酸化を行った後に上記分析により硫酸イオンとして定量し、過酸化水素水を添加しない無処理の試料を分析した際の硫酸イオン定量値を差し引く方法で、試料中の硫化物イオン量を算出した。ここで算出した硫化物イオン量を未反応のスルフィド化剤量とし、仕込んだスルフィド化剤量との割合から、反応でのスルフィド化剤消費率、すなわち原料消費率を算出した。
【0110】
<スルフィド化剤混合物の均一性判断と固化温度測定>
スルフィド化剤混合物の固化温度測定と均一性判断は、まず、ガラス製サンプル瓶に室温のスルフィド化剤混合物を2g採取し、それを撹拌せずオイルバスで融解するまで加熱して沈降物の有無を確認した。続いて、それをオイルバスから取り出して温度センサーを差し、室温環境にて静置・冷却して目視で固化し始める温度を測定した。なお、精度は5℃刻みで実施した。この固化温度の変動幅はスルフィド化剤混合物の組成により変化するため一概には言えないが、例えば、スルフィド化剤混合物中の水分量がイオウ成分1モル当たり3モルから2.5モルに変化した場合には固化温度は5℃上昇する傾向が見られる。
【0111】
<分子量測定>
線状ポリフェニレンスルフィドの重量平均分子量Mwはサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の一種であるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算で算出した。GPCの測定条件を以下に示す。
装置:センシュー科学 SSC−7100
カラム名:センシュー科学 GPC3506
溶離液:1−クロロナフタレン
検出器:示差屈折率検出器
カラム温度:210℃
プレ恒温槽温度:250℃
ポンプ恒温槽温度:50℃
検出器温度:210℃
流量:1.0mL/min
試料注入量:300μL (スラリー状:約0.2重量%)
【0112】
[実施例1]
<工程(i)>
SUS316製の撹拌機付きオートクレーブの上部に蒸留塔を装着し、その先に冷却管および凝縮液を受ける容器を設置した。オートクレーブ内に48重量%の水硫化ナトリウム水溶液46.7g(水硫化ナトリウムとして0.400モル)、48重量%の水酸化ナトリウム水溶液35.0g(水酸化ナトリウムとして0.420モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)82.0g(0.0799リットル)を仕込んだ。原料に含まれる水分量は42.5g(2.36モル)であり、スルフィド化剤のイオウ成分1モル当たりの水の量は5.90モルであった。また、スルフィド化剤のイオウ成分1モル当たりの有機極性溶媒量は0.200リットルであった。
【0113】
常圧で窒素を通じて撹拌しながら室温から180℃まで加熱し、脱水留出液が16.6g得られた段階で加熱を停止し、130℃まで冷却した。ここで、脱水留出液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、NMP成分を3.1g含んでおり、この情報を元に系内に残留した水分量を算出すると、29.0g(1.610モル)であった。また、イオンクロマトグラフィーの結果より、脱水工程中に硫化水素として飛散したイオウ成分は0.0004モルであることがわかり、これにより、系内に残存しているイオウ成分は0.399モルであることがわかった。よって系内の水分量は、イオウ成分1モル当たり4.03モルであることがわかった。
【0114】
<工程(ii)>
工程(i)を行ったオートクレーブの原料投入口を開き、そこにp−ジクロロベンゼン(p−DCB)59.8g(0.407モル)及びNMP945g(0.921リットル)を加え、反応系内のイオウ成分1モル当たりのNMP量を2.50リットルに調整した。続いて反応器を窒素置換、密封し、400rpmで撹拌しながら25分かけて室温から200℃まで昇温し、次いで200℃から250℃まで35分かけて昇温した。その後、250℃で2時間保持することで反応混合物を加熱して反応させた。加熱が始まると徐々に内圧も上昇し、反応終了時にはゲージ圧で0.65MPaとなった。反応終了後、オートクレーブを室温近傍まで冷却し、反応生成物を回収した。
【0115】
<反応生成物分析評価>
得られた反応生成物の一部を大過剰の水に分散させることで水に不溶な成分を回収し、次いで乾燥することで固形分を得た。赤外分光分析による構造解析の結果、この固形分はフェニレンスルフィド単位からなる化合物であることを確認した。
【0116】
また、得られた反応生成物を高速液体クロマトグラフィー及びイオンクロマトグラフィーにより分析した結果、スルフィド化剤として用いた水硫化ナトリウムの原料消費率は97.3%、反応混合物中のスルフィド化剤が全て環式ポリフェニレンスルフィドに転化すると仮定した場合の環式ポリフェニレンスルフィドの生成率は15.1%であった。
【0117】
また、本実施例1の工程(i)のみ別途実施し、室温まで冷却後に回収したスルフィド化剤混合物について均一性判断と固化温度測定を行ったところ、100℃に固化温度を有すること、100℃以上において固形分の沈降が見られないことを確認した。よって、このスルフィド化剤混合物は均一であり、100℃以上で高い移送性を示すことがわかった。
【0118】
本発明の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法によれば、環式ポリアリーレンスルフィドを高収率で得ることができ、また、原料消費率が高く原料ロスはほとんど生じなかった。
【0119】
[比較例1]
ここでは、特許文献3(特開2009−30012号公報)の実施例に準じて環式PASの製造を行った例を示す。すなわち、前記実施例1の工程(i)を省いた以外は実施例1と同等の反応容器、反応濃度、反応温度の条件にて環式PASの製造を行った例を示す。
【0120】
SUS316製の撹拌機付き1リットルオートクレーブに48重量%の水硫化ナトリウム水溶液28.1g(水硫化ナトリウム0.240モル)、48重量%の水酸化ナトリウム水溶液21.0g(水酸化ナトリウム0.252モル)、p−ジクロロベンゼン(p−DCB)36.0g(0.245モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)615.1g(6.21モル)を仕込んだ。原料に含まれる水分量は25.5g(1.42モル)であり、スルフィド化剤のイオウ成分1モル当たりの水の量は5.92モルであった。また、スルフィド化剤のイオウ成分1モル当たりの溶媒の量は2.50Lであった。
【0121】
反応器を室温にて窒素置換、密封し、400rpmで撹拌しながら25分かけて室温から200℃まで昇温し、次いで200℃から250℃まで35分かけて昇温した。その後、250℃で2時間保持することで反応混合物を加熱して反応させた。加熱が始まると徐々に内圧も上昇し、反応終了時にはゲージ圧で1.12MPaとなった。反応終了後、オートクレーブを室温近傍まで冷却し、反応生成物を回収した。
【0122】
<反応生成物分析評価>
得られた反応生成物の一部を大過剰の水に分散させることで水に不溶な成分を回収し、次いで乾燥することで固形分を得た。赤外分光分析による構造解析の結果、この固形分はフェニレンスルフィド単位からなる化合物であることを確認した。
【0123】
また、得られた反応生成物を高速液体クロマトグラフィー及びイオンクロマトグラフィーにより分析した結果、スルフィド化剤として用いた水硫化ナトリウムの原料消費率は96.6%、反応混合物中のスルフィド化剤が全て環式ポリフェニレンスルフィドに転化すると仮定した場合の環式ポリフェニレンスルフィドの生成率は15.5%であった。
【0124】
このように、工程(i)を行わず、反応混合物中の水分量が多い条件で環式PASの製造を行った場合では、実施例1と比べると環式PASの収率は同等であるが、水分量の増加に伴い加熱時の反応器内の圧力が大幅に上昇することがわかる。さらに本比較例で得られた反応物中には黒色成分が多く、反応物回収後の反応器の接液部も黒色化し金属光沢は認められなかった。
【0125】
[実施例2]
ここでは、実施例1よりも工程(i)後の水分量を減らした例を示す。
【0126】
<工程(i)>
実施例1と同様にして原料を仕込み、常圧で窒素を通じて撹拌しながら室温から180℃まで加熱し、しばらく180℃を維持することで脱水留出液を33.6g得た。その後加熱を停止し、130℃まで冷却した。ここで、脱水留出液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、NMP成分を5.4g含んでおり、この情報を元に系内に残留した水分量を算出すると、14.2g(0.791モル)であった。また、イオンクロマトグラフィーの結果より、脱水工程中に硫化水素として飛散したイオウ成分は0.0013モルであることがわかり、これにより、系内に残存しているイオウ成分は0.399モルであることがわかった。よって系内の水分量は、イオウ成分1モル当たり1.98モルであることがわかった。
【0127】
<工程(ii)>
工程(i)を行ったオートクレーブの原料投入口を開き、そこにp−ジクロロベンゼン(p−DCB)59.8g(0.407モル)及びNMP947g(0.923リットル)を加え、反応系内のイオウ成分1モル当たりのNMP量を2.50リットルに調整した。続いて反応器を窒素置換、密封し、400rpmで撹拌しながら25分かけて室温から200℃まで昇温し、次いで200℃から250℃まで35分かけて昇温した。その後、250℃で2時間保持することで反応混合物を加熱して反応させた。加熱が始まると徐々に内圧も上昇し、反応終了時にはゲージ圧で0.49MPaとなった。反応終了後、オートクレーブを室温近傍まで冷却し、反応生成物を回収した。
【0128】
<反応生成物分析評価>
得られた反応生成物の一部を大過剰の水に分散させることで水に不溶な成分を回収し、次いで乾燥することで固形分を得た。赤外分光分析による構造解析の結果、この固形分はフェニレンスルフィド単位からなる化合物であることを確認した。
【0129】
また、得られた反応生成物を高速液体クロマトグラフィー及びイオンクロマトグラフィーにより分析した結果、スルフィド化剤として用いた水硫化ナトリウムの原料消費率は97.5%、反応混合物中のスルフィド化剤が全て環式ポリフェニレンスルフィドに転化すると仮定した場合の環式ポリフェニレンスルフィドの生成率は15.8%であった。
また、本実施例2の工程(i)のみ別途実施し、室温まで冷却後に回収したスルフィド化剤混合物について均一性判断と固化温度測定を行ったところ、120℃に固化温度を有すること、120℃以上において固形分の沈降が見られないことを確認した。よって、このスルフィド化剤混合物は均一であり、120℃以上で高い移送性を示すことがわかった。
【0130】
このように、実施例1よりも工程(i)後の水分量が、本発明のより好ましい範囲にある場合、環式ポリアリーレンスルフィドを高収率で得ることができ、また、原料消費率が高く原料ロスはほとんど生じなかった。
【0131】
[実施例3]
ここでは、工程(i)を行った後、工程(i)を行った反応器に、スルフィド化剤のイオウ成分1モル当たり0.4リットル以上になるように有機極性溶媒を加えてスルフィド化剤混合物を希釈し、さらに工程(i)とは異なる反応器に分割・移液してから工程(ii)を行った例を示す。
【0132】
<工程(i)>
実施例2と同様の操作により、水分がスルフィド化剤のイオウ成分1モル当たり1.96モルであるスルフィド化剤混合物を得た。続いて、内温を130℃に維持したままNMPを415g加え、有機極性溶媒がイオウ成分1モル当たり1.20リットルになるようオートクレーブ内で希釈を行った。この操作により、低粘度なスルフィド化剤混合物が得られた。これを室温まで冷却し、ステンレス容器に回収して重量を測ると541gであった。前述の留出液量などから算出される理論収量544gに対する回収率は99.4%であった。
【0133】
<工程(ii)>
撹拌機の付いたSUS316製のオートクレーブ(前記工程(i)で用いたものとは異なる)を、あらかじめ窒素置換しておき、前記工程(i)で得られたスルフィド化剤混合物を270g(イオウ成分として0.199モル、水酸化ナトリウムとして0.209モル、NMPとして0.239リットル)仕込んだ。そこにp−ジクロロベンゼン(p−DCB)30.8g(0.209モル)及びNMP266g(0.259リットル)を加え、反応系内のイオウ成分1モル当たりのNMP量を2.50リットルに調整した。続いて反応器を窒素置換、密封し、400rpmで撹拌しながら25分かけて室温から200℃まで昇温し、次いで200℃から250℃まで35分かけて昇温した。その後、250℃で2時間保持することで反応混合物を加熱して反応させた。加熱が始まると徐々に内圧も上昇し、反応終了時にはゲージ圧で0.48MPaとなった。反応終了後、オートクレーブを室温近傍まで冷却し、反応生成物を回収した。
【0134】
<反応生成物分析評価>
得られた反応生成物の一部を大過剰の水に分散させることで水に不溶な成分を回収し、次いで乾燥することで固形分を得た。赤外分光分析による構造解析の結果、この固形分はフェニレンスルフィド単位からなる化合物であることを確認した。
【0135】
また、得られた反応生成物を高速液体クロマトグラフィー及びイオンクロマトグラフィーにより分析した結果、スルフィド化剤として用いた水硫化ナトリウムの原料消費率は98.2%、反応混合物中のスルフィド化剤が全て環式ポリフェニレンスルフィドに転化すると仮定した場合の環式ポリフェニレンスルフィドの生成率は16.1%であった。
また、本実施例3の工程(i)のみ別途実施し、希釈は行わずに室温まで冷却後に回収したスルフィド化剤混合物について均一性判断と固化温度測定を行ったところ、120℃に固化温度を有すること、120℃以上において固形分の沈降が見られないことを確認した。よって、このスルフィド化剤混合物は均一であり、120℃以上で高い移送性を示すことがわかった。
【0136】
このように、工程(i)を行った後、工程(i)を行った反応器に、スルフィド化剤のイオウ成分1モル当たり0.4リットル以上になるように有機極性溶媒を加えてスルフィド化剤混合物を希釈し、さらに工程(i)とは異なる反応器に移送してから工程(ii)を行った場合には、実施例2と同様に反応時の低い内圧と高い原料消費率を両立することができ、収率よく環式ポリアリーレンスルフィドを得ることができた。
【0137】
[参考例1]
ここでは、実施例3で得られた反応生成物を固液分離することで、副生した線状ポリフェニレンスルフィドを有機極性溶媒を含む固形分として回収した例について示す。
【0138】
実施例3で得られた反応生成物120gを分取し、300mLのフラスコに仕込んだ。反応生成物をマグネチックスターラーで撹拌し、反応生成物のスラリーに窒素バブリングを行いながら、オイルバスで100℃に加熱した。
【0139】
ADVANTEC社製の万能型タンク付フィルターホルダーKST−90−UH(有効濾過面積約45平行センチメートル)に、直径90mm、平均細孔直径1μmのPTFE製メンブレンフィルターをセットし、タンク部分をバンドヒーターにて100℃に調温した。
【0140】
100℃に加熱した反応生成物をタンクに仕込み、タンクを密封後、窒素にて0.4MPaに加圧した。続いてタンク下部のバルブをゆっくり開き、濾過を開始した。濾液の排出がなくなったら作業を終了し、タンクを開封してメンブレンフィルター上に残存した線状ポリフェニレンスルフィド、NMP、塩化ナトリウムからなるケークを62.5g回収した。
【0141】
上記ケークを4g量り取って40gの水に分散させ、70℃で15分撹拌した後、ガラスフィルターで吸引濾過することでケーク中のNMPおよび塩化ナトリウムを除去した。この洗浄操作を計4回繰り返した。得られた固形分を真空乾燥機70℃で3時間処理して乾燥し、最初に量り取ったケークの重量に対する割合として線状ポリフェニレンスルフィドの含有率を算出すると21.3重量%であった。なお、乾燥法によってケーク中のその他の成分についても分析を行ったところ、NMPが48.7重量%、塩化ナトリウムが30.0重量%であった。なお、得られた線状ポリフェニレンスルフィドの分子量をGPCにより測定したところ、Mw=12,000であった。
【0142】
[実施例4]
ここでは、参考例1で回収した線状ポリフェニレンスルフィドを反応混合物中に含ませることで、線状ポリフェニレンスルフィドを原料として再利用した環式ポリフェニレンスルフィドの合成例について示す。
【0143】
撹拌機の付いたSUS316製のオートクレーブを窒素置換しておき、前記実施例3の工程(i)で得られたスルフィド化剤混合物を33.8g(イオウ成分として0.0249モル、水酸化ナトリウムとして0.0262モル、NMPとして0.0299リットル)仕込んだ。そこにp−ジクロロベンゼン(p−DCB)4.58g(0.0311モル)、前記参考例1で得られたケーク成分50.6g(線状ポリフェニレンスルフィドとして0.0997モル、NMPとして24.6g(0.0240リットル)、塩化ナトリウムとして15.2g)、NMP289g(0.282リットル)を加え、反応混合物中のイオウ成分1モル当たりのNMP量を2.50リットルに調整した。続いて反応器を窒素置換、密封し、400rpmで撹拌しながら25分かけて室温から200℃まで昇温し、次いで200℃から250℃まで35分かけて昇温した。その後、250℃で2時間保持することで反応混合物を加熱して反応させた。加熱が始まると徐々に内圧も上昇し、反応終了時にはゲージ圧で0.34MPaとなった。反応終了後、オートクレーブを室温近傍まで冷却し、反応生成物を回収した。
【0144】
<反応生成物分析評価>
得られた反応生成物の一部を大過剰の水に分散させることで水に不溶な成分を回収し、次いで乾燥することで固形分を得た。赤外分光分析による構造解析の結果、この固形分はフェニレンスルフィド単位からなる化合物であることを確認した。
【0145】
また、得られた反応生成物を、加えた線状PASも原料として利用される点を考慮して、高速液体クロマトグラフィー及びイオンクロマトグラフィーにより分析した結果、反応混合物中の全イオウ成分を基準とした水硫化ナトリウムの原料消費率は98.0%、反応混合物中の全イオウ成分が環式ポリフェニレンスルフィドに転化すると仮定した場合の環式ポリフェニレンスルフィドの生成率は12.2%であった。
【0146】
このように、工程(ii)を行う前の反応混合物中に線状ポリフェニレンスルフィドが含まれる場合には、実施例1、2、3と比較して環式ポリフェニレンスルフィドの収率は低下するものの、実施例3で副生した線状ポリフェニレンスルフィドを原料として有効に利用できることがわかり、水硫化ナトリウムやジクロロベンゼンなどの原料の節約に有効であることがわかった。また、反応時の低い内圧と高い原料消費率を両立することができた。
【0147】
[比較例2]
ここでは、実施例3との比較で、工程(i)において、水分をスルフィド化剤のイオウ成分1モル当たり0.8モル未満まで脱水させた例について示す。
【0148】
<工程(i)>
実施例1と同様にして原料を仕込み、常圧で窒素を通じて撹拌しながら室温から210℃まで加熱し、脱水留出液が60.7g得られた段階で加熱を停止し、130℃まで冷却した。すると内容物が固化して撹拌が停止してしまったため、内温を150℃まで再加熱して液状を維持させた。ここで、脱水留出液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、NMP成分を22.0g含んでおり、この情報を元に系内に残留した水分量を算出すると、3.8g(0.209モル)であった。また、イオンクロマトグラフィー分析の結果より、脱水工程中に硫化水素として飛散したイオウ成分は0.0036モルであることがわかり、これにより、系内に残存しているイオウ成分は0.396モルであることがわかった。よって系内の水分量は、イオウ成分1モル当たり0.53モルであることがわかった。
【0149】
続いて、内温を150℃に保ったままオートクレーブ内にNMPを428g加えて、有機極性溶媒がイオウ成分1モル当たり1.20リットルになるよう希釈を行った。この操作により、低粘度なスルフィド化剤混合物が得られた。これを室温まで冷却し、ステンレス容器に回収して重量を測ると527gであった。前述の留出液量などから算出される理論収量531gに対する回収率は99.3%であった。
【0150】
<工程(ii)>
撹拌機の付いたSUS316製のオートクレーブ(前記工程(i)で用いたものとは異なる)を、あらかじめ窒素置換しておき、前記工程(i)で得られたスルフィド化剤混合物を264g(イオウ成分として0.198モル、水酸化ナトリウムとして0.208モル、NMPとして0.238リットル)仕込んだ。そこにp−ジクロロベンゼン(p−DCB)30.6g(0.208モル)及びNMP264g(0.258リットル)を加え、反応系内のイオウ成分1モル当たりのNMP量を2.50リットルに調整した。続いて反応器を窒素置換、密封し、400rpmで撹拌しながら25分かけて室温から200℃まで昇温し、次いで200℃から250℃まで35分かけて昇温した。その後、250℃で2時間保持することで反応混合物を加熱して反応させた。加熱が始まると徐々に内圧も上昇し、反応終了時にはゲージ圧で0.38MPaとなった。反応終了後、オートクレーブを室温近傍まで冷却し、反応生成物を回収した。
【0151】
<反応生成物分析評価>
得られた反応生成物の一部を大過剰の水に分散させることで水に不溶な成分を回収し、次いで乾燥することで固形分を得た。赤外分光分析による構造解析の結果、この固形分はフェニレンスルフィド単位からなる化合物であることを確認した。
【0152】
また、得られた反応生成物を高速液体クロマトグラフィー及びイオンクロマトグラフィーにより分析した結果、スルフィド化剤として用いた水硫化ナトリウムの原料消費率は93.0%、反応混合物中のスルフィド化剤が全て環式ポリフェニレンスルフィドに転化すると仮定した場合の環式ポリフェニレンスルフィドの生成率は15.0%であった。
また、本比較例2の工程(i)のみ別途実施し、希釈は行わずに室温まで冷却後に回収したスルフィド化剤混合物について均一性判断と固化温度測定を行ったところ、140℃に固化温度を有すること、140℃以上において固形分の沈降が見られないことを確認した。よって、このスルフィド化剤混合物は均一であり、140℃以上で高い移送性を示すことがわかった。
【0153】
このように、工程(i)において水分をスルフィド化剤のイオウ成分1モル当たり0.8モル未満まで脱水すると、環式ポリフェニレンスルフィドの収率は実施例1、2、3の結果と大きく変わらないものの、原料消費率は明らかに低下することがわかった。このことは、原料ロスや未反応原料混入による目的物の品質悪化といった問題につながる。また、得られるスルフィド化剤混合物の固化温度が比較的高くなり、液状を保つ必要がある場合により高温が必要となることがわかった。
【0154】
[実施例5]
ここでは、実施例3の場合より工程(i)での有機極性溶媒量を増やした例について示す。
【0155】
<工程(i)>
SUS316製の撹拌機付きオートクレーブの上部に蒸留塔を装着し、その先に冷却管および凝縮液を受ける容器を設置した。オートクレーブ内に48重量%の水硫化ナトリウム水溶液46.7g(水硫化ナトリウムとして0.400モル)、48重量%の水酸化ナトリウム水溶液35.0g(水酸化ナトリウムとして0.420モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)160g(0.156リットル)を仕込んだ。原料に含まれる水分量は42.5g(2.36モル)であり、スルフィド化剤のイオウ成分1モル当たりの水の量は5.90モルであった。また、スルフィド化剤のイオウ成分1モル当たりの有機極性溶媒量は0.390リットルであった。
【0156】
常圧で窒素を通じて撹拌しながら室温から180℃まで加熱し、しばらく180℃を維持することで脱水留出液を35.6g得た。その後加熱を停止し、130℃まで冷却した。ここで、脱水留出液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、NMP成分を8.1g含んでおり、この情報を元に系内に残留した水分量を算出すると、15.0g(0.833モル)であった。また、イオンクロマトグラフィー分析の結果より、脱水工程中に硫化水素として飛散したイオウ成分は0.0012モルであることがわかり、これにより、系内に残存しているイオウ成分は0.399モルであることがわかった。よって系内の水分量は、イオウ成分1モル当たり2.09モルであることがわかった。
【0157】
続いて、内温を130℃に保ったままオートクレーブ内にNMPを339g加えて、有機極性溶媒がイオウ成分1モル当たり1.20リットルになるよう希釈を行った。この操作により、低粘度なスルフィド化剤混合物が得られたが、容器の底に粒子径が3〜5mm程度の赤色固形分が0.1g沈殿していることを確認した。
【0158】
内容物を室温まで冷却し、ステンレス容器に回収して重量を測ると540gであった。前述の留出液量などから算出される理論収量545gに対する回収率は99.0%であった。なお、赤色固形分を定性分析したところ、イオン性の硫黄を含む化合物であることがわかり、スルフィド化剤混合物中のイオウ成分の回収率を算出すると、98.7%であった。
【0159】
<工程(ii)>
撹拌機の付いたSUS316製のオートクレーブ(前記工程(i)で用いたものとは異なる)を、あらかじめ窒素置換しておき、前記工程(i)で得られたスルフィド化剤混合物を270g(イオウ成分として0.199モル、水酸化ナトリウムとして0.209モル、NMPとして0.239リットル)仕込んだ。そこにp−ジクロロベンゼン(p−DCB)30.8g(0.209モル)及びNMP266g(0.259リットル)を加え、反応系内のイオウ成分1モル当たりのNMP量を2.50リットルに調整した。続いて反応器を窒素置換、密封し、400rpmで撹拌しながら25分かけて室温から200℃まで昇温し、次いで200℃から250℃まで35分かけて昇温した。その後、250℃で2時間保持することで反応混合物を加熱して反応させた。加熱が始まると徐々に内圧も上昇し、反応終了時にはゲージ圧で0.48MPaとなった。反応終了後、オートクレーブを室温近傍まで冷却し、反応生成物を回収した。
【0160】
<反応生成物分析評価>
得られた反応生成物の一部を大過剰の水に分散させることで水に不溶な成分を回収し、次いで乾燥することで固形分を得た。赤外分光分析による構造解析の結果、この固形分はフェニレンスルフィド単位からなる化合物であることを確認した。
【0161】
また、得られた反応生成物を高速液体クロマトグラフィー及びイオンクロマトグラフィーにより分析した結果、スルフィド化剤として用いた水硫化ナトリウムの原料消費率は97.5%、反応混合物中のスルフィド化剤が全て環式ポリフェニレンスルフィドに転化すると仮定した場合の環式ポリフェニレンスルフィドの生成率は15.3%であった。
【0162】
また、本実施例5の工程(i)のみ別途実施し、希釈は行わずに室温まで冷却後に回収したスルフィド化剤混合物について均一性判断と固化温度測定を行ったところ、120℃に固化温度を有すること、120℃以上において粒子径が3〜5mm程度の固形分の沈降がわずかに見られることを確認した。よって、このスルフィド化剤混合物は均一ではなかった。
【0163】
このように、実施例3の場合より工程(i)での有機極性溶媒量を増やした例では、工程(i)で硫黄を含む微量の赤色固形分が生じたが、その量はわずかであり、本発明の好ましい範囲である限り原料モルバランスへの影響は軽微であり、環式ポリフェニレンスルフィドの収率は実施例1、2、3と同等の結果を得ることができた。また、原料消費率が高く原料ロスはほとんど生じなかった。
【0164】
[比較例3]
ここでは、実施例3との比較で、工程(i)において、有機極性溶媒量をスルフィド化剤のイオウ成分1モル当たり0.4リットル以上とした条件で脱水させた例について示す。
【0165】
<工程(i)>
SUS316製の撹拌機付きオートクレーブの上部に蒸留塔を装着し、その先に冷却管および凝縮液を受ける容器を設置した。オートクレーブ内に48重量%の水硫化ナトリウム水溶液46.7g(水硫化ナトリウムとして0.400モル)、48重量%の水酸化ナトリウム水溶液35.0g(水酸化ナトリウムとして0.420モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)410g(0.400リットル)を仕込んだ。原料に含まれる水分量は42.5g(2.36モル)であり、スルフィド化剤のイオウ成分1モル当たりの水の量は5.90モルであった。また、スルフィド化剤のイオウ成分1モル当たりの有機極性溶媒量は1.00リットルであった。
【0166】
常圧で窒素を通じて撹拌しながら室温から180℃まで加熱し、しばらく180℃を維持することで脱水留出液を39.7g得た。その後加熱を停止し、130℃まで冷却した。ここで、脱水留出液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、NMP成分を13.0g含んでおり、この情報を元に系内に残留した水分量を算出すると、15.7g(0.874モル)であった。また、イオンクロマトグラフィー分析の結果より、脱水工程中に硫化水素として飛散したイオウ成分は0.0012モルであることがわかり、これにより、系内に残存しているイオウ成分は0.399モルであることがわかった。よって系内の水分量は、イオウ成分1モル当たり2.19モルであることがわかった。
【0167】
続いて、内温を130℃に保ったままオートクレーブ内にNMPを94g加えて、有機極性溶媒がイオウ成分1モル当たり1.20リットルになるよう希釈を行った。この操作により、低粘度のスルフィド化剤混合物が得られたが、容器の底に粒子径が3〜10mm程度の赤色固形分が7.1g沈殿していることを確認した。内容物を室温まで冷却し、ステンレス容器に回収して重量を測ると534gであった。前述の留出液量などから算出される理論収量546gに対する回収率は97.8%であった。なお、赤色固形分を定性分析したところ、イオン性の硫黄を含む化合物であることがわかり、スルフィド化剤混合物中のイオウ成分の回収率を算出すると、75.3%であった。
【0168】
<工程(ii)>
撹拌機の付いたSUS316製のオートクレーブ(前記工程(i)で用いたものとは異なる)を、あらかじめ窒素置換しておき、前記工程(i)で得られたスルフィド化剤混合物を、半量の267gを仕込んだ。(比例計算によると、仕込んだイオウ成分の量は0.200モル、水酸化ナトリウムの量は0.210モル、NMPの量は0.240リットル含む。)そこにp−ジクロロベンゼン(p−DCB)30.8g(0.209モル)及びNMP266g(0.259リットル)を加え、反応系内のイオウ成分1モル当たりのNMP量を2.50リットルに調整した。続いて反応器を窒素置換、密封し、400rpmで撹拌しながら25分かけて室温から200℃まで昇温し、次いで200℃から250℃まで35分かけて昇温した。その後、250℃で2時間保持することで反応混合物を加熱して反応させた。加熱が始まると徐々に内圧も上昇し、反応終了時にはゲージ圧で0.48MPaとなった。反応終了後、オートクレーブを室温近傍まで冷却し、反応生成物を回収したところ、反応液は乳濁液であった。これは、工程(i)で赤色固形分が大量に沈殿したためスルフィド化剤混合物が不均一となり、正確な分割が行えず、想定した原料組成で反応できなかったためと考えられる。
【0169】
<反応生成物分析評価>
得られた反応生成物の一部を大過剰の水に分散させることで水に不溶な成分を回収し、次いで乾燥することで固形分を得た。赤外分光分析による構造解析の結果、この固形分はフェニレンスルフィド単位からなる化合物であることを確認した。
【0170】
また、得られた反応生成物を高速液体クロマトグラフィー及びイオンクロマトグラフィーにより分析した結果、スルフィド化剤として用いた水硫化ナトリウムの原料消費率は98.1%、反応混合物中のスルフィド化剤が全て環式ポリフェニレンスルフィドに転化すると仮定した場合の環式ポリフェニレンスルフィドの生成率は10.0%であった。
【0171】
また、本比較例3の工程(i)のみ別途実施し、希釈は行わずに室温まで冷却後に回収したスルフィド化剤混合物について均一性判断と固化温度測定を行ったところ、120℃に固化温度を有すること、120℃以上において多くの固形分が沈降していることを確認した。よって、このスルフィド化剤混合物は不均一であった。
【0172】
このように、工程(i)において有機極性溶媒をスルフィド化剤のイオウ成分1モル当たり0.4リットル以上の条件で脱水すると、工程(i)終了時に硫黄を含む大量の赤色固形分が沈殿することがわかった。その影響でスルフィド化剤混合物の正確な分割が難しくなり、このことが工程(ii)でのモルバランスにずれを及ぼしたことで、環式ポリフェニレンスルフィドの収率が実施例1、2、3の場合と比較して大きく低下してしまったと考えられる。
【0173】
[比較例4]
ここでは、実施例3との比較で、工程(i)を行った後の水分量が、スルフィド化剤のイオウ成分1モル当たり6.0モルより多い例について示す。
【0174】
<工程(i)>
SUS316製の撹拌機付きオートクレーブの上部に蒸留塔を装着し、その先に冷却管および凝縮液を受ける容器を設置した。オートクレーブ内に48重量%の水硫化ナトリウム水溶液46.7g(水硫化ナトリウムとして0.400モル)、48重量%の水酸化ナトリウム水溶液35.0g(水酸化ナトリウムとして0.420モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)82.0g(0.0799リットル)、水40.0gを仕込んだ。原料に含まれる水分量は82.5g(4.58モル)であり、スルフィド化剤のイオウ成分1モル当たりの水の量は11.46モルであった。また、スルフィド化剤のイオウ成分1モル当たりの有機極性溶媒量は0.200リットルであった。
【0175】
常圧で窒素を通じて撹拌しながら室温から180℃まで加熱し、しばらく180℃を維持することで脱水留出液を38.5g得た。その後加熱を停止し、130℃まで冷却した。ここで、脱水留出液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、NMP成分を2.9g含んでおり、この情報を元に系内に残留した水分量を算出すると、46.9g(2.60モル)であった。また、イオンクロマトグラフィー分析の結果より、脱水工程中に硫化水素として飛散したイオウ成分は0.0008モルであることがわかり、これにより、系内に残存しているイオウ成分は0.399モルであることがわかった。よって系内の水分量は、イオウ成分1モル当たり6.52モルであることがわかった。
【0176】
続いて、内温を130℃に保ったままオートクレーブ内にNMPを412g加えて、有機極性溶媒がイオウ成分1モル当たり1.20リットルになるよう希釈を行った。この操作により、低粘度なスルフィド化剤混合物が得られた。これをステンレス容器に回収して重量を測ると572gであった。前述の留出液量などから算出される理論収量577gに対する回収率は99.0%であった。
【0177】
<工程(ii)>
撹拌機の付いたSUS316製のオートクレーブ(前記工程(i)で用いたものとは異なる)を、あらかじめ窒素置換しておき、前記工程(i)で得られたスルフィド化剤混合物を286g(イオウ成分として0.200モル、水酸化ナトリウムとして0.210モル、NMPとして0.241リットル)仕込んだ。そこにp−ジクロロベンゼン(p−DCB)30.8g(0.210モル)及びNMP266g(0.259リットル)を加え、反応系内のイオウ成分1モル当たりのNMP量を2.50リットルに調整した。続いて反応器を窒素置換、密封し、400rpmで撹拌しながら25分かけて室温から200℃まで昇温し、次いで200℃から250℃まで35分かけて昇温した。その後、250℃で2時間保持することで反応混合物を加熱して反応させた。加熱が始まると徐々に内圧も上昇し、反応終了時にはゲージ圧で0.87MPaとなった。反応終了後、オートクレーブを室温近傍まで冷却し、反応生成物を回収した。
【0178】
<反応生成物分析評価>
得られた反応生成物の一部を大過剰の水に分散させることで水に不溶な成分を回収し、次いで乾燥することで固形分を得た。赤外分光分析による構造解析の結果、この固形分はフェニレンスルフィド単位からなる化合物であることを確認した。
【0179】
また、得られた反応生成物を高速液体クロマトグラフィー及びイオンクロマトグラフィーにより分析した結果、スルフィド化剤として用いた水硫化ナトリウムの原料消費率は97.8%、反応混合物中のスルフィド化剤が全て環式ポリフェニレンスルフィドに転化すると仮定した場合の環式ポリフェニレンスルフィドの生成率は16.0%であった。
【0180】
このように、工程(i)を実施せず、反応混合物中の水分量が多い条件で環式ポリフェニレンスルフィドの製造を行った場合には、環式ポリフェニレンスルフィドの収率は実施例1、2、3と同等だが、反応時の圧力が0.87MPaと実施例に比べてはるかに大きく、高い耐圧性能をもつ反応器が必要になることがわかった。さらに、反応終了後のオートクレーブ(SUS製)内壁に、実施例では確認されない腐食(黒色化)が進行した形跡があり、その黒色物が一部反応液中に混入している様子も確認された。
【0181】
[実施例6]
ここでは、実施例3の場合より工程(ii)での有機極性溶媒量を増やした例について示す。
【0182】
<工程(i)>
実施例3と同様の操作により、水分がスルフィド化剤のイオウ成分1モル当たり1.96モルであるスルフィド化剤混合物542gを得た。理論収量544gに対する回収率は99.6%であった。
【0183】
<工程(ii)>
撹拌機の付いたSUS316製のオートクレーブ(前記工程(i)で用いたものとは異なる)を、あらかじめ窒素置換しておき、前記工程(i)で得られたスルフィド化剤混合物を271g(イオウ成分として0.199モル、水酸化ナトリウムとして0.209モル、NMPとして0.239リットル)仕込んだ。そこにp−ジクロロベンゼン(p−DCB)30.8g(0.209モル)及びNMP437g(0.426リットル)を加え、反応系内のイオウ成分1モル当たりのNMP量を3.33リットルに調整した。続いて反応器を窒素置換、密封し、400rpmで撹拌しながら25分かけて室温から200℃まで昇温し、次いで200℃から250℃まで35分かけて昇温した。その後、250℃で2時間保持することで反応混合物を加熱して反応させた。加熱が始まると徐々に内圧も上昇し、反応終了時にはゲージ圧で0.44MPaとなった。反応終了後、オートクレーブを室温近傍まで冷却し、反応生成物を回収した。
【0184】
<反応生成物分析評価>
得られた反応生成物の一部を大過剰の水に分散させることで水に不溶な成分を回収し、次いで乾燥することで固形分を得た。赤外分光分析による構造解析の結果、この固形分はフェニレンスルフィド単位からなる化合物であることを確認した。
【0185】
また、得られた反応生成物を高速液体クロマトグラフィー及びイオンクロマトグラフィーにより分析した結果、スルフィド化剤として用いた水硫化ナトリウムの原料消費率は96.6%、反応混合物中のスルフィド化剤が全て環式ポリフェニレンスルフィドに転化すると仮定した場合の環式ポリフェニレンスルフィドの生成率は23.3%であった。
【0186】
また、本実施例6の工程(i)のみ別途実施し、希釈は行わずに室温まで冷却後に回収したスルフィド化剤混合物について均一性判断と固化温度測定を行ったところ、120℃に固化温度を有すること、120℃以上において固形分の沈降が見られないことを確認した。よって、このスルフィド化剤混合物は均一であり、120℃以上で高い移送性を示すことがわかった。
【0187】
このように、実施例3の場合より工程(ii)での有機極性溶媒量を増やした例では、反応時の低い内圧と高い原料消費率を両立することができ、収率よく環式ポリアリーレンスルフィドを得ることができた。
【0188】
[比較例5]
ここでは、実施例6との比較で、工程(i)において、水分をスルフィド化剤のイオウ成分1モル当たり0.8モル未満まで脱水させた例について示す。
【0189】
<工程(i)>
比較例2と同様の操作により、水分がスルフィド化剤のイオウ成分1モル当たり0.53モルであるスルフィド化剤混合物525gを得た。理論収量531gに対する回収率は98.9%であった。
【0190】
<工程(ii)>
撹拌機の付いたSUS316製のオートクレーブ(前記工程(i)で用いたものとは異なる)を、あらかじめ窒素置換しておき、前記工程(i)で得られたスルフィド化剤混合物を263g(イオウ成分として0.198モル、水酸化ナトリウムとして0.208モル、NMPとして0.238リットル)仕込んだ。そこにp−ジクロロベンゼン(p−DCB)30.6g(0.208モル)及びNMP436g(0.425リットル)を加え、反応系内のイオウ成分1モル当たりのNMP量を3.33リットルに調整した。続いて反応器を窒素置換、密封し、400rpmで撹拌しながら25分かけて室温から200℃まで昇温し、次いで200℃から250℃まで35分かけて昇温した。その後、250℃で2時間保持することで反応混合物を加熱して反応させた。加熱が始まると徐々に内圧も上昇し、反応終了時にはゲージ圧で0.34MPaとなった。反応終了後、オートクレーブを室温近傍まで冷却し、反応生成物を回収した。
【0191】
<反応生成物分析評価>
得られた反応生成物の一部を大過剰の水に分散させることで水に不溶な成分を回収し、次いで乾燥することで固形分を得た。赤外分光分析による構造解析の結果、この固形分はフェニレンスルフィド単位からなる化合物であることを確認した。
【0192】
また、得られた反応生成物を高速液体クロマトグラフィー及びイオンクロマトグラフィーにより分析した結果、スルフィド化剤として用いた水硫化ナトリウムの原料消費率は89.5%、反応混合物中のスルフィド化剤が全て環式ポリフェニレンスルフィドに転化すると仮定した場合の環式ポリフェニレンスルフィドの生成率は22.8%であった。
【0193】
また、本比較例5の工程(i)のみ別途実施し、希釈は行わずに室温まで冷却後に回収したスルフィド化剤混合物について均一性判断と固化温度測定を行ったところ、140℃に固化温度を有すること、140℃以上において固形分の沈降が見られないことを確認した。よって、このスルフィド化剤混合物は均一であり、140℃以上で高い移送性を示すことがわかった。
【0194】
このように、工程(i)において水分をスルフィド化剤のイオウ成分1モル当たり0.8モル未満まで脱水させた場合は、環式ポリフェニレンスルフィドの収率は実施例6の結果とほぼ同等であるものの、原料消費率は実施例6の場合より大幅に低下する結果であった。この結果から、実施例6および比較例5で示すような工程(ii)の基質濃度が比較的薄い条件は、工程(i)での水分量を減らすことで原料消費率が極端に低下し、本発明の効果がより際立つ濃度領域であることがわかった。
【0195】
[実施例7]
ここでは、実施例3の場合より工程(ii)での有機極性溶媒量を減らした例について示す。
【0196】
<工程(i)>
実施例3と同様の操作により、水分がスルフィド化剤のイオウ成分1モル当たり1.96モルであるスルフィド化剤混合物541gを得た。理論収量544gに対する回収率は99.4%であった。
【0197】
<工程(ii)>
撹拌機の付いたSUS316製のオートクレーブ(前記工程(i)で用いたものとは異なる)を、あらかじめ窒素置換しておき、前記工程(i)で得られたスルフィド化剤混合物を270g(イオウ成分として0.199モル、水酸化ナトリウムとして0.209モル、NMPとして0.239リットル)仕込んだ。そこにp−ジクロロベンゼン(p−DCB)30.8g(0.209モル)及びNMP97g(0.0945リットル)を加え、反応系内のイオウ成分1モル当たりのNMP量を1.67リットルに調整した。続いて反応器を窒素置換、密封し、400rpmで撹拌しながら25分かけて室温から200℃まで昇温し、次いで200℃から250℃まで35分かけて昇温した。その後、250℃で2時間保持することで反応混合物を加熱して反応させた。加熱が始まると徐々に内圧も上昇し、反応終了時にはゲージ圧で0.58MPaとなった。反応終了後、オートクレーブを室温近傍まで冷却し、反応生成物を回収した。
【0198】
<反応生成物分析評価>
得られた反応生成物の一部を大過剰の水に分散させることで水に不溶な成分を回収し、次いで乾燥することで固形分を得た。赤外分光分析による構造解析の結果、この固形分はフェニレンスルフィド単位からなる化合物であることを確認した。
【0199】
また、得られた反応生成物を高速液体クロマトグラフィー及びイオンクロマトグラフィーにより分析した結果、スルフィド化剤として用いた水硫化ナトリウムの原料消費率は98.0%、反応混合物中のスルフィド化剤が全て環式ポリフェニレンスルフィドに転化すると仮定した場合の環式ポリフェニレンスルフィドの生成率は11.8%であった。
【0200】
また、本実施例7の工程(i)のみ別途実施し、希釈は行わずに室温まで冷却後に回収したスルフィド化剤混合物について均一性判断と固化温度測定を行ったところ、120℃に固化温度を有すること、120℃以上において固形分の沈降が見られないことを確認した。よって、このスルフィド化剤混合物は均一であり、120℃以上で高い移送性を示すことがわかった。
【0201】
このように、実施例3の場合より工程(ii)での有機極性溶媒量を減らした例では、環式ポリフェニレンスルフィドの収率は若干低下するものの、反応時の低い内圧と高い原料消費率を両立することができた。
【0202】
[実施例8]
ここでは、実施例7の場合よりさらに工程(ii)での有機極性溶媒量を減らした例について示す。
【0203】
<工程(i)>
実施例3と同様の操作により、水分がスルフィド化剤のイオウ成分1モル当たり1.96モルであるスルフィド化剤混合物541gを得た。理論収量544gに対する回収率は99.4%であった。
【0204】
<工程(ii)>
撹拌機の付いたSUS316製のオートクレーブ(前記工程(i)で用いたものとは異なる)を、あらかじめ窒素置換しておき、前記工程(i)で得られたスルフィド化剤混合物を270g(イオウ成分として0.199モル、水酸化ナトリウムとして0.209モル、NMPとして0.239リットル)仕込んだ。そこにp−ジクロロベンゼン(p−DCB)30.8g(0.209モル)及びNMP12g(0.0114リットル)を加え、反応系内のイオウ成分1モル当たりのNMP量を1.25リットルに調整した。続いて反応器を窒素置換、密封し、400rpmで撹拌しながら25分かけて室温から200℃まで昇温し、次いで200℃から250℃まで35分かけて昇温した。その後、250℃で2時間保持することで反応混合物を加熱して反応させた。加熱が始まると徐々に内圧も上昇し、反応終了時にはゲージ圧で0.68MPaとなった。反応終了後、オートクレーブを室温近傍まで冷却し、反応生成物を回収した。
【0205】
<反応生成物分析評価>
得られた反応生成物の一部を大過剰の水に分散させることで水に不溶な成分を回収し、次いで乾燥することで固形分を得た。赤外分光分析による構造解析の結果、この固形分はフェニレンスルフィド単位からなる化合物であることを確認した。
【0206】
また、得られた反応生成物を高速液体クロマトグラフィー及びイオンクロマトグラフィーにより分析した結果、スルフィド化剤として用いた水硫化ナトリウムの原料消費率は98.3%、反応混合物中のスルフィド化剤が全て環式ポリフェニレンスルフィドに転化すると仮定した場合の環式ポリフェニレンスルフィドの生成率は10.3%であった。
【0207】
また、本実施例8の工程(i)のみ別途実施し、希釈は行わずに室温まで冷却後に回収したスルフィド化剤混合物について均一性判断と固化温度測定を行ったところ、120℃に固化温度を有すること、120℃以上において固形分の沈降が見られないことを確認した。よって、このスルフィド化剤混合物は均一であり、120℃以上で高い移送性を示すことがわかった。
【0208】
このように、実施例7の場合よりさらに工程(ii)での有機極性溶媒量を減らした例では、環式ポリフェニレンスルフィドの収率は低下するものの、反応時の低い内圧と高い原料消費率を両立することができた。