(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6221338
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】壁掛けフック、及びこの壁掛けフックの剥離方法
(51)【国際特許分類】
A47G 29/00 20060101AFI20171023BHJP
【FI】
A47G29/00 E
A47G29/00 C
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-101542(P2013-101542)
(22)【出願日】2013年5月13日
(65)【公開番号】特開2014-221115(P2014-221115A)
(43)【公開日】2014年11月27日
【審査請求日】2016年3月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108111
【氏名又は名称】セメダイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116872
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 和子
(74)【代理人】
【識別番号】100107560
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 惣一郎
(72)【発明者】
【氏名】木村 修司
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 淳朗
【審査官】
山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−268248(JP,A)
【文献】
特開2012−100960(JP,A)
【文献】
特開2000−051059(JP,A)
【文献】
特開2006−144235(JP,A)
【文献】
特開2002−209714(JP,A)
【文献】
特開平11−266997(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊下部材を有する表面と、
前記表面に対して略平行である接着剤、粘着剤、充填剤からなる貼合手段を有する水平面、及びこの水平面の境界から端に向けて、前記水平面から前記表面の方向に傾斜する傾斜面を有する裏面とを備え、
前記水平面を被取付面に沿って取り付けたとき、前記端が前記被取付面から水平方向へ2mm以上8mm以下離れている壁掛けフック。
【請求項2】
前記水平面が前記被取付面に沿って取り付けられた請求項1に記載の壁掛けフックの前記傾斜面と前記被取付面との間に剥離部材を挿入する剥離部材挿入工程と、
前記剥離部材を操作して前記壁掛けフックを前記被取付面から剥離する剥離工程とを含む、壁掛けフックの剥離方法。
【請求項3】
前記剥離部材を前記傾斜面と前記被取付面との間に挿入したとき、前記剥離部材と前記被取付面との接点がてこの支点であり、前記剥離部材の前記傾斜面と接する部分がてこの作用点であり、
前記剥離部材は、前記支点から前記作用点までの距離よりも前記支点からの距離が長い力点を有し、
前記剥離工程は、前記力点を操作して前記剥離部材を前記被取付面に向かって回動させて前記壁掛けフックを前記被取付面から剥離する工程である、請求項2に記載の剥離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁掛けフック、及びこの壁掛けフックの剥離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、壁掛けフックは広く一般に用いられている。壁板や家具の側壁等に例示される被取付面に、接着剤、粘着剤、充填剤等が付いた壁掛けフックを取り付けると、その後、壁掛けフックをきれいに剥がすのは容易でない。
【0003】
不要になった際に容易に剥離できるようにするため、中央下半部が略短冊状に切欠された基板の裏面に両面粘着テープが貼着され、切欠部に略J字状の鉤片が上下方向に回動可能に取着された掛吊具が提案されている(特許文献1参照)。この掛吊具を用いると、鉤片の下端を手前に引上げることによって、鉤片上端が後方へ回動して被着面に当接するため、不要になった際、基板を被着面から容易に剥離できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−107018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の掛吊具では、基板の中央下半部が略短冊状に切欠された形状に限られるため、基板表面のデザインのバリエーションに限界がある。そこで、基板に切欠を設けることなく、不要になった際、基板を被着面から容易に剥離できるようにすることが求められている。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、基板に切欠を設けることなく、不要になった際、基板を被着面から容易に剥離できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために、鋭意研究を重ねたところ、裏面に関し、表面に対して略平行である水平面、及びこの水平面の境界から端に向けて、水平面から表面の方向に傾斜する傾斜面を設け、水平面を被取付面に沿って取り付けたとき、上記端が被取付面から離れるようにすることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的に、本発明では、以下のようなものを提供する。
【0008】
(1)本発明は、吊下部材を有する表面と、前記表面に対して略平行である水平面、及びこの水平面の境界から端に向けて、前記水平面から前記表面の方向に傾斜する傾斜面を有する裏面とを備え、前記水平面を被取付面に沿って取り付けたとき、前記端が前記被取付面から離れている壁掛けフックである。
【0009】
(2)また、本発明は、前記水平面が前記被取付面に沿って取り付けられた(1)に記載の壁掛けフックの前記傾斜面と前記被取付面との間に剥離部材を挿入する剥離部材挿入工程と、前記剥離部材を操作して前記壁掛けフックを前記被取付面から剥離する剥離工程とを含む、壁掛けフックの剥離方法である。
【0010】
(3)また、本発明は、前記剥離部材を前記傾斜面と前記被取付面との間に挿入したとき、前記剥離部材と前記被取付面との接点がてこの支点であり、前記剥離部材の前記被取付面と接する部分がてこの作用点であり、前記剥離部材は、前記支点から前記作用点までの距離よりも前記支点からの距離が長い力点を有し、前記剥離工程は、前記力点を操作して前記剥離部材を前記被取付面に向かって回動させて前記壁掛けフックを前記被取付面から剥離する工程である、(2)に記載の剥離方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、不要になった際、壁掛けフックを被取付面から容易に剥離できる。その際、切欠を有することが必須ではないため、表面のデザインを自由自在に変更できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る壁掛けフック1の斜視図の一例である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る壁掛けフック1の正面図の一例である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る壁掛けフック1の背面図の一例である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る壁掛けフック1の平面図の一例である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る壁掛けフック1の底面図の一例である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る壁掛けフック1の右側面図の一例である。
【
図7】壁掛けフック1を被取付面30に取り付けたときの一例である。
【
図8】壁掛けフック1を被取付面30から剥がすときの一例である。
【
図9】本発明の変形例に係る壁掛けフック1の右側面図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の具体的な実施形態について、詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0014】
<壁掛けフック>
図1〜
図6は、それぞれ、本発明に係る壁掛けフック1の斜視図、正面図、背面図、平面図、底面図、右側面図の一例である。壁掛けフック1は、表面10と、裏面20とを備える。表面10は、吊下部材11を有する。裏面20は、表面10に対して略平行である水平面21と、この水平面21の境界Bから端Eに向けて、水平面21から表面10の方向に傾斜する傾斜面22とを有する。
【0015】
壁掛けフック1の材質は、特に限定されるものでなく、例えば、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)等の合成樹脂、アルミニウム等の金属、合成樹脂被覆金属等が挙げられる。また、壁掛けフック1の形状も特に限定されるものでなく、例えば、長方形のほか、正方形、ひし形、円形、楕円形等が挙げられる。
【0016】
吊下部材11の形状についても、物品を吊り下げることができる形状であれば特に限定されるものでない。
【0017】
傾斜面22の水平方向(表面10に対して平行な方向)の長さL
2は、2mm以上8mm以下であることが好ましく、4mm以上6mm以下であることがより好ましい。L
2が2mm未満であると、傾斜面22と被取付面との間に剥離部材を挿入しようとしても、剥離部材が傾斜面22と被取付面との間に引っかからない可能性があるため、好ましくない。また、L
2が8mmを超えると、傾斜面の厚みが薄くなり、強度不足による亀裂が発生することがあるため、好ましくない。
【0018】
傾斜面22は、この水平面21の境界Bから端Eに向けて、水平面21から表面10の方向に傾斜するものであれば特に限定されるものでない。例えば、端Eは、壁掛けフック1の長手方向の端部であってもよいし、短手方向の端部であってもよい。また、壁掛けフック1の周囲全体にわたる端であってもよい。しかしながら、傾斜面22と被取付面との間に剥離部材を挿入した際に、壁掛けフック1を被取付面から容易に剥がすことができるようにするため、端Eは、少なくとも、壁掛けフック1の長手方向の端部(すなわち、壁掛けフック1を被取付面に取り付けたときの上端又は下端)を含むものであることが好ましい。特に、デザイン性及び実用上の観点(端Eが上端にある場合、荷物を吊下部材11にではなく端Eに吊り下げてしまう可能性があること)を踏まえると、端Eは、少なくとも、下端(壁掛けフック1を被取付面に取り付けたときの下端)を含むものであることが好ましい。
【0019】
壁掛けフック1の水平面21に対する傾斜角θについて、壁掛けフック1の厚さが広く一般に用いられるフックの厚さ(2mm程度)と同じである場合、水平面21に対する傾斜角θは20度以上40度以下であることが好ましく、20度以上30度以下であることがより好ましく、25度であることが特に好ましい。傾斜角θが20度未満であると、傾斜面22と被取付面との間に剥離部材を挿入できない可能性がある。傾斜角θが40度を超えると、傾斜面22と被取付面との間に剥離部材を挿入したときに、剥離部材が滑る場合がある。
【0020】
<壁掛けフックの取り付け>
図7は、壁掛けフック1を被取付面30に取り付けたときの一例である。壁掛けフック1において、水平面21が被取付面30に沿って取り付けられている。
【0021】
壁掛けフック1を被取付面30に取り付けた際、端Eが被取付面30から離れている。これによって、壁掛けフック1を被取付面30から剥がす際、傾斜面22と被取付面との間に剥離部材を挿入できる。
【0022】
壁掛けフック1の取り付けは次のようにして行う。まず、水平面21に貼合手段を設ける。液状接着剤、液状粘着剤、液状充填剤等を塗布することによって貼合手段を設けてもよいし、両面テープを貼り付けることによって貼合手段を設けてもよいが、被取付面30が凹凸又は曲面であっても壁掛けフック1を好適に取り付けできる点で、液状接着剤等を塗布することによって貼合手段を設けることが好ましい。
【0023】
続いて、水平面21に液状接着剤等を塗布した場合は液状接着剤等が硬化する前に、水平面21を被取付面30に沿って取り付ける。また、水平面21に両面テープを貼り付けた場合は剥離シートを剥がした後に、水平面21を被取付面30に沿って取り付ける。このようにすることで、壁掛けフック1を被取付面30に取り付けできる。
【0024】
<壁掛けフックの剥離>
図8は、壁掛けフック1を被取付面30から剥がすときの一例である。本発明の剥離方法は、水平面21が被取付面30に沿って取り付けられた壁掛けフック1の傾斜面22と被取付面30との間に剥離部材40を挿入する剥離部材挿入工程S1と、剥離部材40を操作して壁掛けフック1を被取付面30から剥離する剥離工程S2とを含む。
【0025】
剥離部材40の形状は、傾斜面22と被取付面30との間に挿入したときの被取付面30との接点をてこの支点とし、剥離部材40の被取付面30と接する部分をてこの作用点とすることができ、支点から作用点までの距離よりも支点からの距離が長い力点を有するものであれば、特に限定されるものではない。例えば、一般家庭に広く流通し、新たに準備する必要がない点で、スプーンを剥離部材40にすることが好ましい。
【0026】
剥離部材40の材質も特に限定されるものではないが、剥離部材40をてことして用いるため、使用者が力点に力を加え、剥離部材40を被取付面30に向かって
図8の矢印方向に回動させたときに、剥離部材40の形状が変形しない程度に硬いことが好ましい。
【0027】
本発明によると、不要になった際、壁掛けフック1の傾斜面22と被取付面30との間に剥離部材40を被取付面30との接点がてこの支点となり、剥離部材40の被取付面30と接する部分がてこの作用点となるように挿入し、使用者が力点に力を加え、剥離部材40を被取付面30に向かって回動させるだけで、壁掛けフック1を被取付面30から容易に剥離できる。その際、水平面21に貼合手段を再び設けるだけで、壁掛けフック1を再利用できる。また、壁掛けフック1は、切欠を有することが必須ではないため、表面のデザインを自由自在に変更できる。
【0028】
<変形例>
本実施形態によると、壁掛けフック1の表面10と、傾斜面22とによって尖った形状がなされているが、これに限るものではない。例えば、
図9の(a)〜(d)に示すように、傾斜面22を、表面10に接するまで設けないようにすることで、壁掛けフック1の先端を尖らせないようにしてもよい。また、傾斜面22は平面に限るものでなく、
図9の(b)、(d)に示すように、傾斜面22を曲面にしてもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 壁掛けフック
10 表面
11 吊下部材
20 裏面
21 水平面
22 傾斜面