(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示における実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明する順序は、下記の通りである。
1.第1の実施の形態(半導体基板の凹部底面に隣接して電荷転送層を有する固体撮像装置の例)
2.第2の実施の形態(半導体基板の凹部底面と電荷転送層との間に暗電流抑制層を有する固体撮像装置の例)
3.第3の実施の形態(半導体基板の凹部形成前に電荷転送層を形成する固体撮像装置の例)
4.固体撮像装置の全体構成例
5.適用例1〜4(電子機器の例)
【0016】
<第1の実施の形態>
[構成]
図1は、本開示の第1の実施の形態の固体撮像装置の断面構成を模式的に表したものである。尚、
図1では、後述の画素部(
図14に示した画素部1a)のうちの1画素分の領域を示している。この固体撮像装置は、例えばn型のシリコン(Si)等からなる半導体基板21内に、1または複数のフォトダイオード(ここでは2つのフォトダイオード11A(PD1),11B(PD2))が積層されたものである。半導体基板21の一面が回路形成面S1となっており、この回路形成面S1上には図示しない多層配線層が形成される。本実施の形態では、半導体基板21の回路形成面S1と反対側の面が受光面S2となっており、いわゆる裏面照射型の素子構造を有している。受光面S2側には図示しないオンチップレンズ等が設けられている。
【0017】
フォトダイオード11A,11Bは、例えばn型の半導体基板21に形成されたp型半導体領域に形成され、例えば互いに異なる波長の光を光電変換する光電変換層を有している。例えば、フォトダイオード11Aは、赤色(R)の光を選択的に吸収する光電変換層を有し、フォトダイオード11Bは、青色(B)の光を選択的に吸収する光電変換層を有する。これらのフォトダイオード11A,11Bはそれぞれ、例えば信号電荷を蓄積する光電変換層として、n型またはp型の半導体層を含むものである。ここでは、一例として、フォトダイオード11A,11Bがそれぞれ、信号電荷として電子を蓄積するn型の半導体層を含んでいる。但し、p型の半導体層を含んでいてもよく、例えば、p−n接合あるいはp−n−p接合等を形成するように、p型およびn型の半導体層を積層した構造を有していてもよい。尚、本開示の「第1導電型」および「第2導電型」は、例えばp型およびn型、またはn型およびp型のいずれかの組み合わせを示すものであるが、本実施の形態では、一例として、
「第1導電型
」が「n型」であり、「第2導電型」が「p型」である場合を例に挙げて説明する。
【0018】
これらのフォトダイオード11A,11Bは、信号電荷転送用のトランジスタに接続されている。これらのうち、例えば半導体基板21の深い位置(半導体基板21の回路形成面S1から離れた位置)に形成されたフォトダイオード(ここではフォトダイオード11B)には、縦型トランジスタ10が接続される。
【0019】
縦型トランジスタ10は、電荷転送トランジスタであり、少なくとも一部が半導体基板21に埋設されたゲート電極14を有している。具体的には、半導体基板21は、凹部Hを有しており、この凹部Hにゲート絶縁膜34を介して、ゲート電極14が埋め込み形成されている。尚、回路形成面S1には、図示しない他の画素トランジスタ(例えば、増幅トランジスタ、リセットトランジスタおよび選択トランジスタ等)が形成されている。尚、この縦型トランジスタ10では、例えばフォトダイオード11Bがソース、例えばFD12がドレインとして機能し、ゲート絶縁膜34下の領域に図示しないチャネル(活性層)が形成されている。
【0020】
ゲート電極14は、例えばn型またはp型の不純物が高濃度でドープされたポリシリコン等の導電膜材料により構成されており、回路形成面S1上に形成される配線層(図示せず)に接続されている。ゲート絶縁膜34は、例えばシリコン酸化膜等の絶縁膜材料により構成されている。
【0021】
凹部Hは、半導体基板21の一部に、その深さ方向(縦方向、厚み方向)に沿って掘り込み形成されたものであり、例えば角柱状または円柱状等の溝を構成するものである。この凹部Hは、その底面Sbが例えばフォトダイオード11Bの一部に対向するように設けられている。凹部Hの底面Sbは、フォトダイオード11Bと接していてもよいし、フォトダイオード11B内に位置していてもよい。あるいは、フォトダイオード11Bから離隔して形成されていてもよい。ここでは、一例として、凹部Hの底面Sbがフォトダイオード11Bから所定の距離離隔している場合を図示している。この凹部Hの底面Sbにおいて、ゲート電極14とフォトダイオード11Bとが、電荷転送層13を介して接続されている。
【0022】
電荷転送層13は、ゲート電極14とフォトダイオード11Bとの間に形成され、フォトダイオード11Bからゲート電極14およびFD12までの信号電荷の転送経路の一部を構成するものである。この電荷転送層13は、例えば半導体基板21内において、例えばフォトダイオード11Bの光電変換層と同一の導電性を有する、即ちn型の不純物拡散層である。このため、電荷転送層13は、信号電荷の転送経路として機能すると共に、光電変換層としての機能をも有している。この電荷転送層13の厚みtは、例えば50nm〜2000nm程度であり、少なくとも一部がフォトダイオード11Bの光電変換層(n型半導体層)に接続されている。
【0023】
本実施の形態では、この電荷転送層13が、凹部Hの底面Sbに隣接して形成されている。詳細は後述するが、電荷転送層13は、凹部Hを形成後、いわゆるセルフアラインにより底面Sbへイオン・インプラを行うことにより形成されるものである。
【0024】
[製造方法]
図1に示した固体撮像装置の素子構造は、例えば次のようにして製造することができる。即ち、まず
図2Aに示したように、フォトダイオード11A,11B等が形成された半導体基板21上に、例えば窒化シリコン(SiN)等よりなるマスク120を、例えばCVD法等により形成し、このマスク120を用いたドライエッチングまたはウェットエッチングにより、半導体基板21に、凹部Hを形成する。この際、凹部Hの底面Sbの位置d0(基準位置,設計中心となる位置)は、特に限定されず、フォトダイオード11Bの表面位置と合うように設定されてもよいし、表面位置からずれていてもよい。後述するように、電荷転送層13により、この凹部Hの底面Sbの深さ位置の自由度が高まるためである。例えば、本実施の形態のように、凹部Hが深く形成される場合(後述)を考慮して、位置d0をフォトダイオード11Bの表面F1よりも浅い側(回路形成面S1側)に設定しておくことができる。尚、凹部Hを形成する前に、半導体基板21の凹部形成領域に、レジストマスクを用いて例えばp型の不純物をドープし、予めp型領域(図示せず)を形成しておく。このため、縦型トランジスタ10では、凹部Hの側面(ゲート電極14の側面)がp型領域で覆われた構成となる。
【0025】
続いて、
図2Bに示したように、凹部Hの底面Sbに対し、例えばイオン・インプラ法により、例えばフォトダイオード11Bと同一の導電性(ここでは、n型)を示す不純物Dを注入する。この後、
図2Cに示したように、マスク120を半導体基板21から除去する。これにより、半導体基板21において、凹部Hの底面Sbに隣接して、例えばn型の半導体領域となる電荷転送層13を、セルフアラインにより形成することができる。尚、電荷転送層13の厚みtは、イオン・インプラによるドーズ量および注入エネルギー等の諸条件を適宜設定することにより調整可能である。
【0026】
この後、
図2Dに示したように、凹部Hの底面Sbおよび側面を覆うように、上述した材料よりなるゲート絶縁膜34を、例えばシリコン酸化膜を熱酸化することによって形成する。但し、これに限らず、他の手法、例えばCVD法やスパッタ法等を用いてもよい。
【0027】
次いで、
図2Eに示したように、上述した材料等よりなるゲート電極14を形成する。具体的には、まず、半導体基板21上に、凹部Hを埋め込むように、例えばLP−CVD(Low Pressure-Chemical Vapor Deposition:減圧化学気相堆積)法等により、ポリシリコン膜を成膜中に、例えばp型またはn型の不純物を、高濃度でドープする。この後、不純物がドープされたポリシリコン膜を、例えばフォトリソグラフィ法を用いたエッチングにより所定の形状にパターニングすることにより、ゲート電極14を形成する。このようにして、縦型トランジスタ10を形成する。
【0028】
最後に、半導体基板21の回路形成面S1に配線層を形成した後、半導体基板21を所望の厚みとなるように研削して受光面S2を形成し、この受光面S2側にオンチップレンズ等を必要に応じて形成する。以上により、
図1に示した固体撮像装置を完成する。
【0029】
[作用・効果]
本実施の形態の固体撮像装置では、受光面S2から光Lが入射すると、光Lのうち選択的な波長の光(例えば青色光)がフォトダイオード11Bにおいて吸収され、光電変換される。フォトダイオード11Bを通過した光のうち選択的な波長の光(例えば赤色光)はフォトダイオード11Aにおいて吸収され光電変換される。光電変換によって発生した信号電荷(例えば電子)は、所定のタイミングで、例えばフォトダイオード11A,11B毎にFD(フローティング・ディフュージョン)へ転送され、後述の信号線(垂直信号線Lsig)へ読み出される。これらのうちフォトダイオード11Bにおいて発生した信号電荷は、縦型トランジスタ10のゲート電極14を介してFD12へ転送される。
【0030】
このように、半導体基板21内において複数のフォトダイオード11A,11Bが積層された素子構造では、より深い位置(回路形成面S2から離れた位置)に配置されたフォトダイオード11Bからの信号電荷の読み出しが、縦型トランジスタ10を用いて行われる。例えば、
図3Aに示したように、縦型トランジスタ10の底部(凹部Hの底面Sb)において、ゲート電極14とフォトダイオード11Bとが接続されることにより、ゲート電極14を介してフォトダイオード11BからFD12へ信号電荷が転送される。
【0031】
ところが、このような縦型トランジスタ10では、ゲート電極14に深さ方向におけるばらつき(凹部Hの底面位置のばらつき)が生じ、このばらつきに起因して転送不良が発生し易い。具体的には、
図3Aに示したように、製造プロセスにおいて、凹部Hの底面Sbの位置d
100(基準位置、設計中心位置)がフォトダイオード11Bとちょうど接する位置に設定された場合であっても、実際には、凹部Hが浅く(
図3B)、あるいは深く(
図3C)、形成されることがある。そして、
図3Bに示したように、凹部Hが位置d
100よりも浅く形成された場合(底面Sbの位置d
101の場合)には、フォトダイオード11Bと縦型トランジスタ10とが離れてしまい、転送経路にいわゆるポテンシャルバリアが発生して、電荷転送不良となる。一方、
図3Cに示したように、凹部Hが位置d
100よりも深く形成された場合(底面Sbの位置d
102の場合)、フォトダイオード11Bと縦型トランジスタ10との接触部分が大きくなり過ぎて、いわゆるポテンシャルディップが発生し、この場合も転送不良となってしまう。
【0032】
本実施の形態では、このような縦型トランジスタ10(ゲート電極14)とフォトダイオード11Bとの間に、電荷転送層13を有する。これにより、上記のようなゲート電極14の深さ方向のばらつきに起因して生じる転送不良を抑制することができる。即ち、
図4Aに示したように、凹部Hが位置d0よりも浅く形成された場合(底面Sbの位置d1の場合)であっても、フォトダイオード11Bと縦型トランジスタ10とが電荷転送層13を介して接続されることから、信号電荷の転送不良が抑制される。一方、
図4Bに示したように、凹部Hが位置d0よりも深く形成された場合(底面Sbの位置d2の場合)であっても、上記のようなポテンシャルディップによる信号電荷の転送不良が抑制される。例えば、凹部
Hの底面Sbの基準となる位置d0を予めより浅い側に設定しておくことで、凹部Hが深く形成された場合の転送不良を抑制可能である。
【0033】
以上のように、本実施の形態では、半導体基板21内に形成されたフォトダイオード11A,11Bと、半導体基板21内に少なくとも一部が埋設されたゲート電極14を有する縦型トランジスタ10とを備える。フォトダイオード11Bとゲート電極14との間に電荷転送層13を有することにより、ゲート電極14の深さ方向のばらつきに起因する信号電荷の転送不良を抑制できる。よって、縦型トランジスタによる転送不良を抑制し、歩留まりを向上させることが可能となる。
【0034】
また、本実施の形態では、縦型トランジスタ10の底部にのみ電荷転送層13を形成するので、例えば積層されたフォトダイオード
11A,11Bにおける分光特性が改善されるという効果もある。これは、例えば、赤色光を光電変換するフォトダイオード11Aの形成領域をより大きく確保し易くなるためである。
【0035】
尚、上述の電荷転送層13は、半導体基板内のフォトダイオードから信号電荷を読み出すために縦型トランジスタを用いる、様々なタイプの素子構造に適用可能である。例えば、
図5に示したように、半導体基板21内に赤色光(Lr),緑色光(Lg),青色光(Lb)をそれぞれ光電変換可能な3つのフォトダイオード(PD3,PD4,PD5)を積層し、各フォトダイオードに縦型トランジスタ(Tr1,Tr2,Tr3)を接続する構造にも適用可能である。また、
図6に示したように、積層された2つのフォトダイオード(PD6,PD7)に対して、1つの(共通の)縦型トランジスタ(Tr4)が設けられた構造であってもよい。このように、上述の電荷転送層13は、様々なタイプの縦型トランジスタを用いた素子構造に適用可能である。
【0036】
次に、上記第1の実施の形態の固体撮像装置の他の実施の形態および変形例について説明する。以下では、上記第1の実施の形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、適宜その説明を省略する。
【0037】
<第2の実施の形態>
[構成]
図7は、本開示の第2の実施の形態の固体撮像装置の断面構成を模式的に表したものである。尚、
図7では、後述の画素部(
図14に示した画素部1a)のうちの1画素分の領域を示している。この固体撮像装置は、上記第1の実施の形態と同様、半導体基板21内に、1または複数のフォトダイオード(ここでは2つのフォトダイオード11A,11B)を備えたものである。また、半導体基板21の回路形成面S1上には図示しない多層配線層が形成され、半導体基板21の回路形成面S1と反対側の面を受光面S2とする、裏面照射型の素子構造を有している。受光面S2側には図示しないオンチップレンズ等が設けられている。
【0038】
本実施の形態においても、上記第1の実施の形態と同様、フォトダイオード11A,11Bは、信号電荷転送用のトランジスタに接続され、これらのうち、フォトダイオード11Bに、縦型トランジスタ10が接続されている。縦型トランジスタ10はゲート電極14を有し、このゲート電極14の少なくとも一部が半導体基板21の凹部Hにゲート絶縁膜34を介して埋設されている。また、凹部Hは、その底面Sbが例えばフォトダイオード11Bの一部に対向するように設けられ、この底面Sbにおいて、ゲート電極14とフォトダイオード11Bとが、電荷転送層13を介して接続されている。
【0039】
但し、本実施の形態では、凹部Hの底面Sbと電荷転送層13との間に、更に暗電流抑制層13aが形成されている。暗電流抑制層13aは、電荷転送層13と異なる導電性(例えばp型)を示す不純物拡散層である。この暗電流抑制層13aの厚みは、例えば5nm〜100nm程度であり、電荷転送層13の厚みtに比べて十分に薄くなっている。このように、本実施の形態では、凹部Hの底面Sb側から順に、暗電流抑制層13aおよび電荷転送層13が積層されている。このような電荷転送層13および暗電流抑制層13aは、凹部Hを形成後、いわゆるセルフアラインにより底面Sbへイオン・インプラを多段階的に行うことにより形成されるものである。
【0040】
[製造方法]
図7に示した固体撮像装置の素子構造は、例えば次のようにして製造することができる。即ち、まず
図8Aに示したように、フォトダイオード11A,11B等が形成された半導体基板21上に、上記第1の実施の形態と同様にして、例えばCVD法により形成された窒化シリコンよりなるマスク120を用いて、半導体基板21に、凹部Hを形成する。この際、凹部Hの底面Sbの位置d0は、上述したように特に限定されない。例えば、凹部Hが深く形成される場合(後述)を考慮して、位置d0をフォトダイオード11Bの表面F1よりも浅い側(回路形成面S1側)に設定しておくことができる。
【0041】
続いて、凹部Hの底面Sbに対し、例えば多段階のイオン・インプラ法により、電荷転送層13および暗電流抑制層13aを形成する。具体的には、
図8Bに示したように、まず、例えばフォトダイオード11Bと同一の導電性(例えばn型)を示す不純物D1を注入した後、それと逆の導電性(例えばp型)を示す不純物D2を注入する。この後、
図8Cに示したように、マスク120を半導体基板21から除去する。これにより、電荷転送層13および暗電流抑制層13aを、セルフアラインにより形成することができる。本実施の形態においても、電荷転送層13および暗電流抑制層13aの厚みは、ドーズ量および注入エネルギー等の諸条件を適宜設定することにより調整可能である。
【0042】
この後、
図9Aに示したように、上記第1の実施の形態と同様にして、上述した材料よりなるゲート絶縁膜34を形成する。次いで、
図9Bに示したように、上記第1の実施の形態と同様にして、上述した材料よりなるゲート電極14を形成する。このようにして、縦型トランジスタ10を形成する。最後に、半導体基板21の回路形成面S1に配線層を形成した後、半導体基板21を研削し、受光面S2側にオンチップレンズ等を必要に応じて形成することにより、
図7に示した固体撮像装置を完成する。
【0043】
[作用・効果]
本実施の形態の固体撮像装置では、上記第1の実施の形態と同様、受光面S2から光Lが入射すると、フォトダイオード11A,11B毎に所定の波長の光が光電変換され、この光電変換によって発生した信号電荷(例えば電子)が、所定のタイミングで、FDへ転送後、後述の信号線(垂直信号線Lsig)へ読み出される。これらのうちフォトダイオード11Bにおいて発生した信号電荷は、縦型トランジスタ10のゲート電極14を介してFD12へ転送される。
【0044】
本実施の形態においても、縦型トランジスタ10(ゲート電極14)とフォトダイオード11Bとの間に、電荷転送層13を有する。これにより、上記第1の実施の形態と同様、ゲート電極14の深さ方向のばらつきに起因して生じる転送不良を抑制することができる。即ち、
図10Aに示したように、凹部Hが位置d0よりも浅く形成された場合(底面Sbの位置d1の場合)であっても、フォトダイオード11Bと縦型トランジスタ10とが電荷転送層13を介して接続されることから、信号電荷の転送不良が抑制される。一方、
図10Bに示したように、凹部Hが位置d0よりも深く形成された場合(底面Sbの位置d2の場合)であっても、上記のようなポテンシャルディップによる信号電荷の転送不良が抑制される。例えば、凹部の底面Sbの基準となる位置d0を予めより浅い側に設定しておくことで、凹部Hが深く形成された場合の転送不良を抑制可能である。
【0045】
また、本実施の形態では、凹部Hの底面Sbと電荷転送層13との間に、暗電流抑制層13aが形成されている。これにより、例えば凹部Hの彫り込みダメージ(エッチング時に底面Sb等に生じる損傷)が生じた場合等においても、その掘り込みダメージに起因する暗電流の発生を抑制することができる。
【0046】
以上のように、本実施の形態では、半導体基板21内に形成されたフォトダイオード11A,11Bと、半導体基板21内に少なくとも一部が埋設されたゲート電極14を有する縦型トランジスタ10とを備える。フォトダイオード11Bとゲート電極14との間に電荷転送層13を有することにより、ゲート電極14の深さ方向のばらつきに起因する信号電荷の転送不良を抑制できる。よって、上記第1の実施の形態と同等の効果を得ることができる。また、暗電流抑制層13aにより、凹部Hの彫り込みダメージに起因する暗電流の発生を抑制することが可能となる。
【0047】
<第3の実施の形態>
[構成]
図11は、本開示の第3の実施の形態の固体撮像装置の断面構成を模式的に表したものである。尚、
図11では、後述の画素部(
図14に示した画素部1a)のうちの1画素分の領域を示している。この固体撮像装置は、上記第1の実施の形態と同様、半導体基板21内に、1または複数のフォトダイオード(ここでは2つのフォトダイオード11A,11B)を備えたものである。また、半導体基板21の回路形成面S1上には図示しない多層配線層が形成され、半導体基板21の回路形成面S1と反対側の面を受光面S2とする、裏面照射型の素子構造を有している。受光面S2側には図示しないオンチップレンズ等が設けられている。
【0048】
本実施の形態においても、上記第1の実施の形態と同様、フォトダイオード11A,11Bは、信号電荷転送用のトランジスタに接続され、これらのうち、フォトダイオード11Bに、縦型トランジスタ10が接続されている。縦型トランジスタ10はゲート電極14を有し、このゲート電極14の少なくとも一部が半導体基板21の凹部Hにゲート絶縁膜34を介して埋設されている。また、凹部Hは、その底面Sbが例えばフォトダイオード11Bの一部に対向するように設けられ、この底面Sbにおいて、ゲート電極14とフォトダイオード11Bとが、電荷転送層13を介して接続されている。
【0049】
但し、本実施の形態では、凹部Hの形成タイミングと、電荷転送層13の形成タイミングとが、上記第1の実施の形態と異なっている。具体的には、本実施の形態では、電荷転送層13を形成後、凹部Hを形成する。このため、素子構造としては、電荷転送層13が、凹部Hの底面Sbだけでなく側面の一部をも覆って形成される。但し、電荷転送層13は、必ずしも凹部Hの側面の一部を覆っていなくともよく、即ち底面Sbにのみ接した構造であってもよい。この場合には、上記第1の実施の形態の素子構造(
図1)と略等しくなる。
【0050】
[製造方法]
図11に示した固体撮像装置の素子構造は、例えば次のようにして製造することができる。即ち、まず
図12Aに示したように、フォトダイオード11A,11B等が形成された半導体基板21上に、例えばフォトレジスト121を成膜し、パターニングする。この後、
図12Bに示したように、フォトレジスト121をマスクとして、半導体基板21内に、電荷転送層13を形成する。具体的には、半導体基板21の所定の深さ位置に(凹部Hの深さ方向のばらつきを考慮した位置に)、イオン・インプラを行うことにより不純物Dを注入する。その後、フォトレジスト121を半導体基板21から剥離する。続いて、
図12Cに示したように、上記第1の実施の形態と同様にして、半導体基板21に凹部Hを形成する。この際、凹部Hの底面Sbの位置d0は、上述したように特に限定されないが、本実施の形態では、位置d0をフォトダイオード11Bの表面F1よりも浅い側(回路形成面S1側)に設定するとよい。
【0051】
この後、
図12Dに示したように、上記第1の実施の形態と同様にして、上述した材料よりなるゲート絶縁膜34を形成する。次いで、
図12Eに示したように、上記第1の実施の形態と同様にして、上述した材料よりなるゲート電極14を形成する。このようにして、縦型トランジスタ10を形成する。最後に、半導体基板21の回路形成面S1に配線層を形成した後、半導体基板21を研削し、受光面S2側にオンチップレンズ等を必要に応じて形成することにより、
図11に示した固体撮像装置を完成する。
【0052】
このように、凹部Hの深さばらつきが想定される領域に、イオン・インプラにより電荷転送層13を予め形成しておいてもよい。
【0053】
[作用・効果]
本実施の形態の固体撮像装置では、上記第1の実施の形態と同様、受光面S2から光Lが入射すると、フォトダイオード11A,11B毎に所定の波長の光が光電変換され、この光電変換によって発生した信号電荷(例えば電子)が、所定のタイミングで、FDへ転送後、後述の信号線(垂直信号線Lsig)へ読み出される。これらのうちフォトダイオード11Bにおいて発生した信号電荷は、縦型トランジスタ10のゲート電極14を介してFD12へ転送される。
【0054】
本実施の形態においても、縦型トランジスタ10(ゲート電極14)とフォトダイオード11Bとの間に、電荷転送層13を有する。これにより
、ゲート電極14の深さ方向のばらつきに起因して生じる転送不良を抑制することができる。特に、
図13に示したように、凹部Hが位置d0よりも浅く形成された場合(底面Sbの位置d1の場合)であっても、フォトダイオード11Bと縦型トランジスタ10とが電荷転送層13を介して接続されることから、信号電荷の転送不良が抑制される。一方、凹部Hが位置d0よりも深く形成される場合(底面Sbの位置d2の場合)には、例えば電荷転送層13の不純物濃度(ドーズ量)等を調整することにより、ポテンシャルディップによる影響を軽減することができる。
【0055】
以上のように、本実施の形態では、半導体基板21内に形成されたフォトダイオード11A,11Bと、半導体基板21内に少なくとも一部が埋設されたゲート電極14を有する縦型トランジスタ10とを備える。フォトダイオード11Bとゲート電極14との間に電荷転送層13を有することにより、ゲート電極14の深さ方向のばらつきに起因する信号電荷の転送不良を抑制できる。よって、上記第1の実施の形態と同等の効果を得ることができる。
【0056】
<装置構成>
図14は、上記各実施の形態において説明した固体撮像装置(以下、固体撮像装置1とする)の全体の構成を表したものである。固体撮像装置1は、撮像エリアとしての画素部1aを有すると共に、この画素部1aの周辺領域に、例えば行走査部131、水平選択部133、水平選択部134およびシステム制御部132からなる周辺回路部130を有している。
【0057】
画素部1aは、例えば行列状に2次元配置された複数の単位画素(画素P)を有している。この画素Pには、例えば画素行ごとに画素駆動線Lread(具体的には行選択線およびリセット制御線)が配線され、画素列ごとに垂直信号線Lsigが配線されている。画素駆動線Lreadは、画素からの信号読み出しのための駆動信号を伝送するものである。画素駆動線Lreadの一端は、行走査部131の各行に対応した出力端に接続されている。
【0058】
行走査部131は、シフトレジスタやアドレスデコーダ等によって構成され、画素部1aの各画素Pを、例えば行単位で駆動する画素駆動部である。行走査部131によって選択走査された画素行の各画素Pから出力される信号は、垂直信号線Lsigの各々を通して水平選択部133に供給される。水平選択部133は、垂直信号線Lsigごとに設けられたアンプや水平選択スイッチ等によって構成されている。
【0059】
水平選択部134は、シフトレジスタやアドレスデコーダ等によって構成され、水平選択部133の各水平選択スイッチを走査しつつ順番に駆動するものである。この水平選択部134による選択走査により、垂直信号線Lsigの各々を通して伝送される各画素の信号が順番に水平信号線135に出力され、当該水平信号線135を通して基板11の外部へ伝送される。
【0060】
行走査部131、水平選択部133、水平選択部134および水平信号線135からなる回路部分は、基板11上に直に形成されていてもよいし、あるいは外部制御ICに配設されたものであってもよい。また、それらの回路部分は、ケーブル等により接続された他の基板に形成されていてもよい。
【0061】
システム制御部132は、外部から与えられるクロックや、動作モードを指令するデータなどを受け取り、また、固体撮像素子1の内部情報などのデータを出力するものである。システム制御部132はさらに、各種のタイミング信号を生成するタイミングジェネレータを有し、当該タイミングジェネレータで生成された各種のタイミング信号を基に行走査部131、水平選択部133および水平選択部134などの周辺回路の駆動制御を行う。
【0062】
<適用例1>
上述の固体撮像装置1は、例えばデジタルスチルカメラやビデオカメラ等のカメラシステムや、撮像機能を有する携帯電話など、撮像機能を備えたあらゆるタイプの電子機器に適用することができる。
図15は、適用例1に係る撮像装置(撮像装置2)の全体構成を表す機能ブロック図である。撮像装置2は、例えばデジタルスチルカメラまたはデジタルビデオカメラであり、光学系221と、シャッタ装置222と、固体撮像装置1(画素部1a)と、駆動回路224と、信号処理回路223と、制御部225とを備えている。
【0063】
光学系221は、被写体からの像光(入射光)を固体撮像装置1の画素部1aへ導くものである。シャッタ装置222は、固体撮像装置1への光照射期間(露光期間)および遮光期間を制御するものである。駆動回路224は、シャッタ装置222の開閉駆動を行うと共に、固体撮像装置1(画素部1a)における露光動作および信号読み出し動作を駆動するものである。信号処理回路223は、固体撮像装置1からの出力信号に対して、所定の信号処理、例えばデモザイク処理やホワイトバランス調整処理等の各種補正処理を施すものである。制御部225は、例えばマイクロコンピュータから構成され、駆動回路224におけるシャッタ駆動動作およびイメージセンサ駆動動作を制御すると共に、信号処理回路223における信号処理動作を制御するものである。
【0064】
この撮像装置2では、入射光が、光学系221、シャッタ装置222を介して固体撮像装置1(画素部1a)において受光されると、各画素Pには、その受光量に基づく信号電荷が蓄積される。駆動回路224により、各画素Pに蓄積された信号電荷が読み出され、読み出された電気信号は信号処理回路223へ出力される。固体撮像装置1から出力された出力信号は、信号処理部23において所定の信号処理が施され、映像信号Doutとして外部(モニタ等)へ出力されるが、あるいは、図示しないメモリ等の記憶部(記憶媒体)に保持される。
【0065】
<適用例2
−1,2−2>
図16は、適用例2
−1に係る内視鏡カメラ(カプセル型内視鏡カメラ3A)の全体構成を表す機能ブロック図である。カプセル型内視鏡カメラ3Aは、光学系231と、シャッタ装置232と、固体撮像装置1(画素部1a)と、駆動回路234と、信号処理回路233と、データ送信部235と、駆動用バッテリー236と、姿勢(方向、角度)感知用のジャイロ回路237とを備えている。これらのうち、光学系231、シャッタ装置232、駆動回路234および信号処理回路233は、上記撮像
装置2において説明した光学系221、シャッタ装置222、駆動回路224および信号処理回路223と同様の機能を有している。但し、光学系231は、3次元空間における複数の方位(例えば全方位)での撮影が可能となっていることが望ましく、1つまたは複数のレンズにより構成されている。但し、本例では、信号処理回路233における信号処理後の映像信号D1およびジャイロ回路237から出力された姿勢感知信号D2は、データ送信部235を通じて無線通信により外部の機器へ送信されるようになっている。
【0066】
尚、上記実施の形態における固体撮像装置1を適用可能な内視鏡カメラとしては、上記のようなカプセル型のものに限らず、例えば
図17に示したような挿入型の内視鏡カメラ(挿入型内視鏡カメラ3B)
(適用例2−2)であってもよい。挿入型内視鏡カメラ3Bは、上記カプセル型内視鏡カメラ3Aにおける一部の構成と同様、光学系231、シャッタ装置232、固体撮像装置1(画素部1a)、駆動回路234、信号処理回路233およびデータ送信部235を備えている。但し、この挿入型内視鏡カメラ3Bは、更に、装置内部に格納可能なアーム238aと、このアーム238aを駆動する駆動部238とが付設されている。このような挿入型内視鏡カメラ3Bは、駆動部238へアーム制御信号CTLを伝送するための配線239Aと、撮影画像に基づく映像信号Doutを伝送するための配線239Bとを有するケーブル239に接続されている。
【0067】
<適用例3>
図18は、適用例3に係るビジョンチップ(ビジョンチップ4)の全体構成を表す機能ブロック図である。ビジョンチップ4は、眼の眼球E1の奥側の壁(視覚神経を有する網膜E2)の一部に、埋め込まれて使用される
人工網膜である。このビジョンチップ4は、例えば網膜E2における神経節細胞C1、水平細胞C2および視細胞C3のうちのいずれかの一部に埋設されて使用され、例えば固体撮像装置1と、信号処理回路241と、刺激電極部242とを備えている。これにより、眼への入射光に基づく電気信号を固体撮像装置1において取得し、その電気信号を信号処理回路241において処理することにより、刺激電極部242へ所定の制御信号を供給する。刺激電極部242は、入力された制御信号に応じて視覚神経に刺激(電気信号)を与える機能を有するものである。
【0068】
<適用例4>
図19は、適用例4に係る生体センサ(生体センサ5)の全体構成を表す機能ブロック図である。生体センサ5は、例えば指Aに装着可能な血糖値センサであり、半導体レーザ251と、固体撮像装置1と、信号処理回路252とを備えたものである。半導体レーザ51は、例えば赤外光(波長780nm以上)を出射するIR(infrare
d)レーザである。このような構成により、血中のグルコース量に応じたレーザ光の吸収具合を固体撮像装置1によりセンシングし、血糖値を測定するようになっている。
【0069】
以上、実施の形態および変形例を挙げて説明したが、本開示内容は上記実施の形態等に限定されるものではなく、種々変形が可能である。例えば、上記実施の形態等では、半導体基板21内に2つのフォトダイオード11A,11Bを積層した素子構造を例示したが、この半導体基板21上に、例えば有機光電変換膜を用いた光電変換素子が積層されていてもよい。また、半導体基板21内に形成されるフォトダイオードの数は3つ以上であってもよいし、1つであってもよい。フォトダイオードからの信号電荷の読み出しを、縦型トランジスタを用いて行うものであれば、本開示内容を適用可能である。
【0070】
また、上記実施の形態では、裏面照射型の固体撮像装置を例に挙げたが、本開示内容は、表面照射型の固体撮像装置にも適用可能である。
【0071】
尚、本開示は、以下のような構成であってもよい。
(1)
半導体基板と、
前記半導体基板内に形成されたフォトダイオードと、
前記半導体基板内に少なくとも一部が埋設されたゲート電極を有し、前記ゲート電極を介して前記フォトダイオードから信号電荷を読み出すためのトランジスタと、
前記ゲート電極と前記フォトダイオードとの間に設けられた電荷転送層と
を備えた固体撮像装置。
(2)
前記フォトダイオードは、前記半導体基板の厚み方向に沿って複数積層して形成されている
上記(1)に記載の固体撮像装置。
(3)
前記フォトダイオードは、第1導電型の光電変換層を含み、
前記電荷転送層は、前記光電変換層の一部と接続された、第1導電型の不純物拡散層である
上記(1)または(2)に記載の固体撮像装置。
(4)
前記ゲート電極の一部は、前記半導体基板に形成された凹部に埋設されており、
前記電荷転送層は、前記凹部の少なくとも底面において前記ゲート電極と接続されている
上記(1)〜(3)のいずれかに記載の固体撮像装置。
(5)
前記電荷転送層は、前記凹部の底面に隣接して形成されている
上記(4)に記載の固体撮像装置。
(6)
前記電荷転送層と前記凹部の底面との間に、第2導電型の暗電流抑制層を更に備えた
上記(4)または(5)に記載の固体撮像装置。
(7)
前記電荷転送層は、前記凹部の底面と側面の一部とを覆って形成されている
上記(4)〜(6)のいずれかに記載の固体撮像装置。
(8)
フォトダイオードを有する半導体基板内に少なくとも一部が埋設されたゲート電極を有し、前記ゲート電極を介して前記フォトダイオードから信号電荷を読み出すためのトランジスタを形成する工程と、
前記ゲート電極と前記フォトダイオードとの間に電荷転送層を形成する工程と
を含む固体撮像装置の製造方法。
(9)
前記フォトダイオードは、前記半導体基板の厚み方向に沿って複数積層して形成される
上記(8)に記載の固体撮像装置の製造方法。
(10)
前記フォトダイオードは、第1導電型の光電変換層を含み、
前記電荷転送層は、前記光電変換層の一部と接続された、第1導電型の不純物拡散層である
上記(8)または(9)に記載の固体撮像装置の製造方法。
(11)
前記トランジスタを形成する工程では、前記半導体基板に凹部を形成した後、前記凹部に埋め込むように前記ゲート電極を形成する
上記(8)〜(10)のいずれかに記載の固体撮像装置の製造方法。
(12)
前記電荷転送層を形成する工程では、前記凹部の形成後かつ前記ゲート電極の形成前に、前記凹部の底面へのイオン・インプラにより前記電荷転送層を形成する
上記(11)に記載の固体撮像装置の製造方法。
(13)
前記電荷転送層を形成する工程では、前記凹部の形成後かつ前記ゲート電極の形成前に、前記凹部の底面へのイオン・インプラにより前記電荷転送層を形成し、
前記電荷転送層の形成後かつ前記ゲート電極の形成前に、前記凹部の底面へのイオン・インプラにより、第2導電型の暗電流抑制層を形成する工程を更に含む
上記(11)に記載の固体撮像装置の製造方法。
(14)
前記電荷転送層を形成する工程では、前記フォトダイオードの形成後かつ前記凹部の形成前に、前記半導体基板内の選択的な領域にイオン・インプラを行うことにより前記電荷転送層を形成する
上記(11)に記載の固体撮像装置の製造方法。
(15)
半導体基板と、
前記半導体基板内に形成されたフォトダイオードと、
前記半導体基板内に少なくとも一部が埋設されたゲート電極を有し、前記ゲート電極を介して前記フォトダイオードから信号電荷を読み出すためのトランジスタと、
前記ゲート電極と前記フォトダイオードとの間に設けられた電荷転送層と
を備えた固体撮像装置を有する電子機器。