(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリウレタン樹脂が、ポリイソシアネート成分と、ポリオール成分と、加水分解性ケイ素基含有化合物との反応物である、請求項1に記載のトンネル覆工セグメントプライマー。
前記ポリイソシアネート成分が脂環族ジイソシアネートであり、前記ポリオール成分がポリエーテル系ポリオール又はポリエステル系ポリオールである、請求項2に記載のトンネル覆工セグメントプライマー。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の具体的な実施形態について、詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0020】
<構造物表層用プライマー>
本発明のプライマーは水性である。このプライマーは、分子内に少なくとも1個のシラノール基を有するポリウレタン樹脂(以下、「シラノール基含有ポリウレタン樹脂」ともいう。)を含有する。
【0021】
本発明のプライマーは構造物の表層用に適する。本明細書において、「構造物」は、一つのものを作り上げるための部分部分と、これら部分部分を組み合わせた完成体との両方を含み、例えば、トンネルを作り上げるためのトンネル覆工セグメントと、これらセグメントを組み合わせたトンネルとの両方を含む。
【0022】
[シラノール基含有ポリウレタン樹脂]
分子内に少なくとも1個のシラノール基を有するポリウレタン樹脂は、例えば、分子内に少なくとも1個以上の活性水素基を有する加水分解性ケイ素基含有化合物とポリウレタンプレポリマーとを反応させ、その後、水に分散又は溶解し、加水分解することにより形成することができる。加水分解性ケイ素基とは、水分により加水分解を受ける加水分解性基がケイ素原子に結合している基を言う。また、上記加水分解性基の具体例としては、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基等が挙げられる。これらのうち、加水分解性が比較的小さく取扱いが容易であることから、アルコキシ基が好ましい。上記加水分解性基は、通常、1個のケイ素原子に1〜3個の範囲で結合しているが、塗布後の加水分解性ケイ素基の反応性、耐水性、耐溶剤性と言った点から2〜3個程度結合しているものが好ましい。
【0023】
上記分子内に少なくとも1個以上の活性水素基を有する加水分解性ケイ素基含有化合物としては、例えば、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルジエトキシシラン等が挙げられるが、皮膜形成により効果的に寄与するという点で、ポリウレタン樹脂を構成する分子の間にシラノール基を導入するのが望ましく、2個以上の活性水素基を有する加水分解性ケイ素基含有化合物が好ましい。
【0024】
シラノール基又はシロキサン結合の含有量は、ポリウレタン樹脂に優れた架橋反応性と性能を与えるため、ポリウレタン樹脂の全固形分に対し、ケイ素量で0.1〜10質量%とする。0.1質量%未満だと適切に架橋反応に寄与しないため効果が低く、10質量%超では効果が飽和すると共に構造物表層用プライマーの安定性が低下する。好ましくは0.5〜5質量%である。
【0025】
上記ポリウレタンプレポリマーは、1分子当たり少なくとも2個の活性水素基を有する化合物と、1分子当たり少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物とを反応させることによって得ることができる。
【0026】
ポリウレタンプレポリマーを構成する1分子当たり少なくとも2個の活性水素基を有する化合物としては、例えば、活性水素基を有する化合物として、アミノ基、水酸基、メルカプト基を有する化合物が挙げられるが、イソシアネート基との反応性を考慮すると、水酸基を有する化合物が、反応速度が速いため好ましい。1分子当たり少なくとも2個の活性水素基を有する化合物としては、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、アクリルポリオール、ポリウレタンポリオール、又はそれらの混合物等が挙げられる。この中でも、耐アルカリ性の観点、及び構造物表層用プライマー表層に塗るライニング材のひび割れ追従性の向上に寄与できる点で、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールが好ましい。
【0027】
また、1分子当たり少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物としては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエート等の脂肪族イソシアネートや、例えば、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,2−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネートや、例えば、m−キシレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートや、例えば、ω,ω’−ジイソシアネート−1,3−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン等の芳香脂肪族ジイソシアネートや、例えば、トリフェニルメタン−4,4’−4’’−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、2,4,6−トリイソシアネートトルエン等のトリイソシアネートや、例えば、4,4’−ジフェニルジメチルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネート等のテトライソシアネートを含むポリイソシアネート単量体や、上記ポリイソシアネート単量体から誘導されたダイマー、トリマー、ビュウレット、アロファネート又はカルボジイミドと、上記ポリイソシアネート単量体とから得られるポリイソシアネート誘導体や、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等の分子量200未満の低分子量ポリオールの上記ポリイソシアネート単量体への付加体や、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルアミドポリオール、アクリルポリオール、ポリウレタンポリオール等の上記ポリイソシアネート単量体への付加体等が挙げられる。
【0028】
また、ポリウレタン樹脂を水中に分散させるために、ポリウレタンプレポリマー中に親水性基を導入する。親水性基を導入するには、例えば、分子内に少なくとも1個以上の活性水素基を有し、かつ、カルボキシル基、スルホン酸基、スルホネート基、ポリオキシエチレン基等の親水性基を含有する化合物の少なくとも1種以上を、上記ポリウレタンプレポリマー製造時に共重合させればよい。上記親水性基含有化合物としては、例えば、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロール吉草酸、ジオキシマレイン酸、2,6−ジオキシ安息香酸、3,4−ジアミノ安息香酸等のカルボキシル基含有化合物もしくはこれらの誘導体、又はこれらを共重合して得られるポリエステルポリオール、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水コハク酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等無水基を有する化合物と活性水素基を有する化合物とを反応させてなるカルボキシル基含有化合物もしくはこれらの誘導体、例えば、2−オキシエタンスルホン酸、フェノールスルホン酸、スルホ安息香酸、スルホコハク酸、5−スルホイソフタル酸、スルファニル酸等のスルホン酸含有化合物もしくはこれらの誘導体、又はこれらを共重合して得られるポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0029】
[中和剤]
上記ポリウレタン樹脂において、水中に良好に溶解又は分散させるために、中和剤を使用してもよい。中和において使用できる中和剤としては、例えば、アンモニア、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリメチルアミン、ジメチルエタノールアミン等の第3級アミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の水酸化物等の塩基性物質が挙げられるが、溶接性、耐溶剤性、溶接時の臭気の点から、沸点120℃以上の第3級アミンを使用するのが好ましい。これら中和剤は、単独で、又は2種以上を混合して使用してもよい。中和剤の添加方法としては、上記ポリウレタンプレポリマーに直接添加してもよいし、水中に溶解又は分散させる時に水中に添加しても良い。中和剤の添加量は、カルボキシル基に対して0.1〜2.0当量、より好ましくは0.3〜1.3当量である。
【0030】
[界面活性剤]
また、上記カルボキシル基を含有するポリウレタンプレポリマーの水溶解又は分散性をさらに良くするため、界面活性剤を使用してもよい。このような界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−オキシプロピレンブロック共重合体のようなノニオン系界面活性剤、又は、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムのようなアニオン系界面活性剤が用いられる。ただし、耐水性、耐溶剤性等の性能から、界面活性剤を含まないソープフリー型が好ましい。
【0031】
[有機溶剤]
また、上記ポリウレタンプレポリマーを合成する際には、有機溶剤を使用することも可能である。有機溶剤を使用する場合、水への溶解度が比較的高いものが好ましい。このような有機溶剤の具体例としては、例えば、アセトン、エチルメチルケトン、アセトニトリル、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
【0032】
[硬化触媒]
また、本発明のポリウレタン樹脂が有するシラノール基のシロキサン結合形成促進のために、硬化触媒を添加しても良い。本発明に係るポリウレタン樹脂においては、強塩基性第3級アミンが、このポリウレタン樹脂を皮膜化した際に、耐水性、耐溶剤性を悪化させることなく、特異的にシロキサン結合の形成触媒として働くことにより、効率よく架橋構造を導入することが可能となる。この強塩基性第3級アミンは、pKaが11以上であることを特徴とし、特に、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)又は1,6−ジアザビシクロ[3.4.0]ノネン−5が好適に用いられる。この硬化触媒である強塩基性第3級アミンは、ポリウレタンプレポリマー合成時、ポリウレタンプレポリマー合成後、あるいはポリウレタンプレポリマーを水に分散又は溶解した後に添加することができる。
【0033】
シラノール基含有ポリウレタン樹脂としては,タケラック(登録商標)WS−6021,WS−5000,WS−5100,WS−4000(いずれも三井化学社製)等が例示される。
【0034】
[分散安定剤]
また、本発明では、本発明の効果を阻害しない範囲で、各種の分散安定剤を使用してもよい。分散安定剤としては、例えばポリビニルアルコール、繊維素エーテル、澱粉、マレイン化ポリブタジエン、マレイン化アルキッド樹脂等や、水溶性ポリエステル樹脂、水溶性ポリアミド樹脂、水溶性ポリウレタン樹脂、水溶性アクリル樹脂、等を単独で使用又は2種以上併用して使用することができる。これらは、ポリウレタン樹脂の製造途中に添加し使用してもよく、反応終了後に混合してもよい。
【0035】
[充填剤]
また、得られるプライマー層を強靭にし、又プライマー層表面の粘着性の低減、施工性を向上させるために、構造物表層用プライマー組成物に充填材を配合することもできる。充填材の配合量は、シラノール基含有ポリウレタン樹脂(固形分)100重量部に対して、充填材を300重量部以下、好ましくは100重量部程度配合することが好ましい。充填材の配合量が300重量部を超えると、プライマー層のコンクリートに対する付着性、伸び及び防水機能を損なう場合がある。充填材の具体例としては、硅砂、タルク、炭酸カルシウム、カオリン、石膏、珪藻土、酸化チタン、並びに各種ポルトランドセメント、高炉セメント及びアルミナセメント等のセメント類の一種又は2種以上が用いられる。尚、充填材としてセメントを配合する場合、その配合量は、シラノール基含有ポリウレタン樹脂(固形分)100重量部に対して、30重量部程度までが好ましい。また、必要に応じて、シラノール基含有ポリウレタン樹脂(固形分)100重量部に対して5重量部程度までの界面活性剤、粘度安定剤等を配合することができる。
【0036】
[難燃性付与剤]
また、プライマー層に難燃性を付与するため、塩化ビニリデンの重合体又は/及び塩化ビニリデンの共重合体を配合したり、トリアジン環を有する化合物を配合することもできる。
【0037】
[消泡剤]
さらに、本発明においては、構造物表層用プライマーに消泡剤を配合することが、得られるプライマー層をピンホール及び泡のない良好なプライマー層とすることができるため好ましい。消泡剤の配合割合は、構造物表層用プライマー100重量部に対して、消泡剤を0.1〜1重量部であることが好ましく、より好ましくは0.3重量部程度である。消泡剤の具体例としては、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリエーテル変性シロキサン等が挙げられる。
【0038】
[プライマーの製造方法]
プライマーの製造においては、これら化合物の反応順序、及び硬化触媒としての強塩基性第三級アミンの添加時期は特に限定されるものではないが、例えば以下のような製造方法が挙げられる。
【0039】
活性水素基含有化合物、ポリイソシアネート化合物、及び分子内に親水性基を有し、少なくとも1個の活性水素基を有する化合物を反応させ、ポリウレタンプレポリマーを製造する。次に、ポリウレタンプレポリマー中の親水性基を中和剤により中和し、硬化触媒として強塩基第三級アミンを添加し、この中和剤、強塩基性第三級アミンの加えられたポリウレタンプレポリマーを加水分解性ケイ素基含有化合物及び他の鎖伸長剤を溶解した水中に溶解、又は分散させることにより、ポリウレタン樹脂の水性組成物を製造することができる。
【0040】
<トンネル覆工セグメント>
本発明のトンネル覆工セグメントは、トンネル覆工セグメント本体の少なくとも一部に、上記構造物表層用プライマーからなるプライマー層が形成され、該プライマー層の表面に、ライニング材からなるライニング層が形成される。
【0041】
[ライニング層]
ライニング層は、ライニング材からなる。ライニング材の種類は特に限定されるものでなく、例えば、変性シリコーン系組成物、変性シリコーン/エポキシ樹脂系組成物、又はポリウレタン系組成物等が挙げられる。
【0042】
〔変性シリコーン系組成物〕
本発明に用いられる変性シリコーン系組成物は、変性シリコーンを必須成分として含有する硬化性組成物を指称する。
【0043】
この変性シリコーンとしては、特公昭58−41291号公報の3ページの6欄29行〜6ページの11欄2行、特開昭52−73998号公報、特開昭58−10418号公報、特開昭62−230822号公報、特開昭63−12677号公報で示されるような加水分解可能な基が結合した珪素原子を分子中に少なくとも2個以上有する有機シリコン系化合物や、特開昭60−228516号公報、特開昭63−112642号公報、特開平1−131271号公報で提案された珪素基を有するオキシアルキレン重合体と珪素基を有する(メタ)アクリレート(共)重合体よりなる組成物のようなものがある。
【0044】
特に特開昭63−112642号公報に開示されている(イ)反応性珪素基を有し、分子鎖が実質的に(1)炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル単量体単位及び(又は)メタクリル酸アルキルエステル単量体単位と、(2)炭素数10以上のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル単量体単位及び(又は)メタクリル酸アルキルエステル単量体単位とからなる共重合体、(ロ)架橋性珪素基を有するオキシアルキレン重合体からなる硬化性組成物を用いると、接着特性(例えば、タックレンジ等)の優れたものが得られる。
【0045】
ここで架橋性珪素基とは、シロキサン結合を形成することによって架橋しうる珪素含有官能基であり、代表例は、下記の一般式(1)で表される。
【化1】
【0046】
式(1)中、R
1は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基又はR
13SiO−(R
1は、前記と同じ)で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、R
1が2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。Xは水酸基又は加水分解性基を示し、Xが2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。dは0、1、2又は3を、eは0、1又は2を、それぞれ示す。またp個の下記一般式(2)におけるeは同一である必要はない。pは0〜19の整数を示す。但し、d+(eの和)≧1を満足するものとする。
【0048】
該加水分解性基や水酸基は1個の珪素原子に1〜3個の範囲で結合することができ、d+(eの和)は1〜5の範囲が好ましい。加水分解性基や水酸基が架橋性珪素基中に2個以上結合する場合には、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0049】
架橋性珪素基を形成する珪素原子は1個でもよく、2個以上であってもよいが、シロキサン結合等により連結された珪素原子の場合には、20個程度あってもよい。
【0050】
上記架橋性珪素基としては、下記一般式(3)で示される架橋性珪素基が、入手が容易である点から好ましい。
【0052】
式(3)中、R
1、Xは前記に同じ。dは1、2又は3の整数である。
【0053】
上記R
1の具体例としては、たとえばメチル基、エチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基や、R
13SiO−で示されるトリオルガノシロキシ基等があげられる。これらの中ではメチル基が好ましい。
【0054】
上記Xで示される加水分解性基としては、特に限定されず、従来公知の加水分解性基であればよい。具体的には、たとえば水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基等があげられる。これらの中では、水素原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基及びアルケニルオキシ基が好ましく、アルコキシ基、アミド基、アミノオキシ基がさらに好ましい。加水分解性が穏やかで取扱やすいという観点からアルコキシ基が特に好ましい。アルコキシ基の中では炭素数の少ないものの方が反応性が高く、メトキシ基>エトキシ基>プロポキシ基の順のように炭素数が多くなるほどに反応性が低くなる。目的や用途に応じて選択できるが通常メトキシ基やエトキシ基が使用される。
【0055】
上記式(3)で示される架橋性珪素基の場合、硬化性を考慮するとdは2以上が好ましい。通常、dが3の場合、dが2の場合に比較し、硬化速度が大きくなる。
【0056】
架橋性珪素基の具体的な構造としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基等のトリアルコキシシリル基[−Si(OR)
3]、及びメチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基等のジアルコキシシリル基[−SiR
1(OR)
2]が挙げられる。ここでRはアルキル基であり、炭素数10以下のアルキル基が好ましく、メチル基やエチル基がさらに好ましい。
【0057】
また、架橋性珪素基は1種で使用しても良く、2種以上併用してもかまわない。架橋性珪素基は、主鎖又は側鎖あるいはいずれにも存在しうる。硬化物の引張特性等の硬化物物性が優れる点で架橋性珪素基が分子鎖末端に存在するのが好ましい。
【0058】
架橋性珪素基を形成する珪素原子は1個以上であるが、シロキサン結合等により連結された珪素原子の場合には、20個以下であることが好ましい。
【0059】
これらのポリマー中に塩ビ(共)重合体等のビニル系化合物、フェノール樹脂系化合物、石油樹脂、テルペン−フェノール樹脂、ロジンエステル樹脂等の粘着付与剤、特開昭63−291918号公報に提案されたような予め反応したエポキシ樹脂、ブチルアクリレート(共)重合体等の(メタ)アクリレート化合物等を必要に応じて添加しても良い。
【0060】
〔変性シリコーン/エポキシ系組成物〕
本発明に用いられる変性シリコーン/エポキシ系組成物は、上記した変性シリコーンの他に、エポキシ樹脂及びアミンを必須成分として含有する硬化性組成物を指称する。
【0061】
このエポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂等や水素添加したエポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、含窒素エポキシ樹脂、アルコール類から誘導されるエポキシ樹脂、ポリブタジエン、NBR、末端カルボキシル基NBR等から誘導されるゴム変性エポキシ樹脂、臭素を含有する難燃型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂等が挙げられるが、これに限定されるものではなく、一般に知られているエポキシ樹脂であれば使用することができる。
【0062】
また、エポキシ樹脂の混合物及びエポキシ樹脂の粘度を低下させるためのモノエポキシ化合物との混合物も使用することができる。
【0063】
本発明に用いられるアミンとしては、一級アミン、二級アミン、三級アミン、ポリアミドアミン、水分と出会うと分解してアミンを発生させるケチミン、エナミン等が挙げられるが、これに限定されるものではなく、一般に知られている常温硬化剤であれば使用することができる。また、必要に応じて1種又は2種以上を組み合わせて用いればよく、加熱硬化する場合には高融点活性水素化合物等の潜在性硬化剤を使用することもできる。
【0064】
一級アミンとしては、ポリメチレンジアミン、ポリエーテルジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、アミノエチルエタノールアミン、トリ(メチルアミノ)ヘキサン、テトラエチレンペンタミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン等の脂肪族ポリアミン、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラスピロ〔5,5〕ウンデカン等の環状脂肪族ポリアミン、メタキシレンジアミン、キシリレンジアミン等の脂肪族芳香族アミン、ジアミノジエチルジフェニルメタン、メタフェニレンジアミン等の芳香族ジアミン等が挙げられる。
【0065】
二級アミンとしては、N−メチルピペラジン、ヒドロキシエチルピペラジン、ピペリジン、ピロリジン、モルホリン等が挙げられる。
【0066】
三級アミンとしては、ペンジルジメチルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール(DMP−10)、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(DMP−30)、トリエタノールアミン、テトラメチルグアニジン、ピリジン、ピコリン、1,8−ジアザビスシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(DBU)、N−メチルモルホリン、トリエチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロパンジアミン、ビス(2−ジメチルジアミノエチル)エーテル等が挙げられる。
【0067】
ポリアミドアミンとしては、乾性油、半乾性油、トール油等からの精製植物油脂肪酸を熱重合して得られるダイマー酸(2量体脂肪酸)と脂肪族ポリアミンとの反応によって作られるのが代表的で、官能基がアミドとアミンで、末端が一級アミン又は二級アミンであれば、どのような構造のものでも使用することができる。
【0068】
ケチミンとしては下記式(4)の構造を少なくとも一個以上有するケチミンであれば、どのようなものでも使用することができる。
【化4】
【0069】
式(4)において、R
2,R
3は水素又は炭素数が1〜6のアルキル基又はフェニル基である。
【0070】
エナミンとしては下記式(5)の構造を少なくとも一個以上有するエナミンであれば、どのようなものでも使用することができる。
−CH=N− (5)
【0071】
潜在性硬化剤の高融点活性水素化合物としては、ジシアンジアミド、アジピン酸ジヒドラジド等の有機酸ヒドラジド、ジアミノマレオニトリル、メラミン等が挙げられる。
【0072】
特に、ケチミン、エナミン、高融点活性水素化合物等の潜在性硬化剤を用いる時には1液化ができる。
【0073】
上記の組成物に必要に応じて、希釈剤、充填剤、接着付与剤、縮合触媒、揺変剤、安定剤、水分吸収剤、発泡剤等が配合できる。
【0074】
希釈剤としては、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル等のフタル酸エステル、アジピン酸ジ2エチルヘキシル等のアジピン酸エステル、フタル酸ブチルベンジル等のフタル酸アルキルベンジル、トリメリット酸エステル、燐酸エステル、安息香酸エステル、フタル酸ポリエステル、アジピン酸ポリエステル、エポキシ化大豆油等の可塑剤、メタノール、エタノール、トルエン等の溶剤、又は高沸点溶剤、反応性希釈剤等があげられる。
【0075】
充填剤としては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、膠質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、シリカ、酸化チタン、ケイ酸アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、カーボンブラック、ガラスバルーン、プラスチックバルーン等があげられる。
【0076】
接着性付与剤としては、各種チタネート系或いは、シラシ系カップリング剤(アミノシラン、エポキシシラン等)、カップリング剤とイソシアネート化合物との反応生成物、2種類以上のカップリング剤の反応生成物(例えば、各種アミノシランとエポキシシランの反応生成物、2分子以上のカップリング剤アルコキシ基の縮合反応生成物)等が挙げられ、これらは単独又は混合して使用する事ができる。
【0077】
〔ポリウレタン系組成物〕
本発明に用いられるポリウレタン系組成物は、活性のポリイソシアネート及びイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを必須成分として含有する硬化性組成物を指称する。
【0078】
これらの活性のポリイソシアネート及びイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーは、一般に知られているものであれば使用することができ、特に限定されるものではない。
【0079】
ポリウレタンプレポリマーの一方の製造原料であるポリヒドロキシル化合物としては、一般にウレタン化合物の製造に用いられる種々のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオール等が挙げられる。
【0080】
ポリエーテルポリオールとは、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン等のアルキレンオキサイドの1種又は2種以上を2個以上の活性水素を有する化合物に付加重合させた生成物である。ここで、2個以上の活性水素を有する化合物としては、例えば、多価アルコール類、アミン類、アルカノールアミン類、多価フェノール類が挙げられる。
【0081】
多価アルコール類としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等が、アミン類としては、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等が、アルカノールアミン類としては、エタノールアミン、プロパノールアミン等が、また、多価フェノール類としてはレゾルシン、ビスフェノール類等が挙げられる。
【0082】
また、ポリエステルポリオールとは、多価アルコールと多塩基性カルボン酸の縮合物、ヒドロキシカルボン酸と多価アルコールの縮合物、ラクトンの重合物等であり、これらに使用される多価アルコールとしては、先にポリエーテルポリオールの項で例示した化合物等が、多塩基性カルボン酸類としては、例えばアジピン酸、グルタール酸、アゼライン酸、フマール酸、マレイン酸、テレフタール酸、ダイマー酸等が挙げられる。
【0083】
さらに、ヒドロキシカルボン酸と多価アルコールの縮合物として、ヒマシ油、ヒマシ油とエチレングリコールの反応生成物も有用である。
【0084】
また、ラクトン重合物とはε−カプロラクトン、α−メチル−ε−カプロラクトン等を適当な重合開始剤で開環重合させたものをいう。
【0085】
ポリマーポリオールとは、例えば、ポリエーテルポリオールないしはポリエステルポリオールにアクリロニトリル、スチレン、メチル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和化合物をグラフト重合させたものや、1,2−若しくは1,4−ポリブタジエンポリオール、又はこれらの水素添加物をいう。
【0086】
ポリウレタンプレポリマーの製造原料であるポリヒドロキシル化合物として、上記のものが例示され、1種類単独でも、2種類以上を併用してもよいが、重量平均分子量100〜10000程度のものが好ましく、500〜5000程度のものがさらに好ましい。ポリウレタンプレポリマーの他方の製造原料であるポリイソシアネート化合物としては、通常のポリウレタン樹脂の製造に用いられる種々のものが例示される。
【0087】
具体的には、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、及び、これらを水添した化合物、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロジンイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等が挙げられる。
【0088】
これらのポリイソシアネート化合物は、1種単独でも、2種以上を併用してもかまわない。
【0089】
また、ポリウレタンプレポリマーの製造条件は、特に限定されず、通常のポリウレタンプレポリマーの製造条件でよい。すなわち、反応温度50〜100℃程度、常圧下で反応させれば良い。
【0090】
縮合触媒としては、ウレタンプレポリマーに対しては、N−メチルモルホリン、トリエチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロパンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル等の第3級アミン類、及びオクタン酸鉛、ナフテン酸鉛、オクタン酸錫、ジブチル錫ジラウレート等の有機金属化合物を単独又は混合して使用する。
【0091】
変性シリコーンに対しては、例えば、有機スズ化合物、酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステルとアミンとの反応物、飽和又は不飽和の多価カルボン酸、又はその酸無水物、アルミニウムキレート化合物、有機チタネート化合物等の公知のシラノール縮合触媒が挙げられ、1種又は2種以上を必要に応じて用いればよい。
【0092】
有機スズ化合物の具体例としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫マレエート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジネオデカネート(ジオクチル錫ジバーサテート)、ジオクチル錫オキサイド、ジオクチルスズ塩と正珪酸エチルとの反応物、ジブチル錫オキサイドとフタル酸エステルとの反応物等の4価錫化合物、オクチル酸錫、ナフテン酸錫、ステアリン酸錫、ジネオデカン酸錫(バーサチック酸錫)等の2価錫化合物等が挙げられる。
【0093】
有機チタネート化合物としては、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、トリエタノールアミンチタネート等のチタン酸エステルが挙げられる。
【0094】
揺変剤としては、例えば、コロイド状シリカ、水素添加ヒマシ油、有機ベントナイト、トリベンジリデンソルビトール、表面処理した沈降炭酸カルシウム等を使用する。
【0095】
また安定剤としては、例えば商品名イルガノックス1010及び1076(チバガイギー社製)、ヨシノックスBHT、BB等の位置障害型フェノール類、チヌビン327、328(チバガイギー社製)等のベンゾトリアゾール類、サノールLS−770及び744(チバガイギー社製)等の位置障害型アミン類、トミソープ800〔吉富製薬(株)製〕等のベンゾフェノン類を使用する。
【0096】
水分吸収剤は、特に活性のポリイソシアネート及びイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー、変性シリコーンの貯蔵安定剤の作用があり、シラン化合物等の水分を吸収するものであればどのようなものでも使用することが可能で、特に限定するものでない。
【0097】
この他、活性のポリイソシアネート及びイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー、エポキシ樹脂、変性シリコーン、アミン、又は縮合触媒等に対する公知の貯蔵安定剤又は公知の不活性防止剤の働きを持つものも必要に応じて使用できる。
【0098】
上記した各成分の配合割合は、活性のポリイソシアネート及びイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー100部に対して、それぞれ独立に、エポキシ樹脂10〜1000部、変性シリコーン10〜1000部の配合量が適用できる。
【0099】
縮合触媒は、主に活性のポリイソシアネート及びイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー又は変性シリコーンに対して作用するが、その種類によりエポキシ樹脂に対しても作用する場合がある。その配合量は、0〜10部程度であることが好ましく、その種類により、また、硬化組成物の組合せにより配合量も変わる。それ故、好ましい配合量は、その都度性能を確認して決めればよい。
【0100】
アミンは、硬化剤、硬化助剤、又は硬化促進剤として、場合によっては接着付与剤としても作用する場合がある。
【0101】
その配合量は、その種類により、また、その働きにより、さらに、硬化組成物の組合せにより配合量も変わる。それ故、好ましい配合量は、その都度性能を確認して決めればよい。
【0102】
活性のポリイソシアネート及びイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー、エポキシ樹脂、変性シリコーン、アミン、又は縮合触媒、いずれも、それぞれ独立に、1種又は2種以上組合せることができ、好ましい組合せは、その都度性状又は性能を確認して決めればよい。
【0103】
〔膜厚〕
ライニング層の乾燥後における膜厚は0.20〜1.00mmであることが好ましい。ライニング層の膜厚が0.20mm未満であると、十分な防水性能を得られない可能性がある点で好ましくない。一方、ライニング層の膜厚が1.00mmを超えると、塗装の手間が煩雑になり、しかも、塗装材の原材料費が増加するため、好ましくない。
【0104】
〔粘度〕
ライニング材の粘度は特に限定されるものではないが、23℃における粘度が5Pa・s以上であることが好ましく、10Pa・s以上であることがより好ましい。5Pa・s以上であることで、ライニング材を塗布する回数が少なくても(1回や2回であっても)、ライニング層の厚さを好適な厚さにすることができるので、トンネル覆工セグメントの製造時間を短縮できる。
【0105】
23℃における粘度の上限は特に限定されるものではないが、ライニング材の塗工器具として想定されるローラー刷毛、コテなどで塗布しやすい傾向にあることから30Pa・s以下であることが好ましく、20Pa・s以下であることがより好ましい。
【0106】
〔ガスバリア性〕
また、ライニング層はガスバリア性に優れているので、塩素イオン等の遮断性、酸素ガスの透過阻止性、水蒸気の透過阻止性、及び二酸化炭素ガスの透過阻止性による中性化阻止性を併せ持つ。
【0107】
<トンネル覆工セグメントの製造方法>
本発明の製造方法は、トンネル覆工セグメント本体の少なくとも一部に、上記構造物表層用プライマーを塗布し、プライマー層を形成するプライマー層形成工程と、このプライマー層の表面にライニング材を塗布し、ライニング層を形成するライニング層形成工程と、を含む。
【0108】
プライマー層形成工程で塗布するプライマーは、上記した構造物表層用プライマーであるため、アルカリ成分に触れても、プライマー層及びライニング層からなる塗膜の膨れを防止できる。また、ライニング材の粘度が高くても、構造物表層用プライマーがトンネル覆工セグメント本体の凹凸に浸透しているため、ライニング材のピンホールの発生を抑制し、続くライニング層形成工程で高粘度のライニング材を用いても、塩分、水分、酸素等がピンホールから浸入するのを防止できる。
【0109】
プライマー層の塗布量(DRY)は、5g/m
2〜50g/m
2であることが好ましく、5g/m
2〜30g/m
2であることがより好ましい。塗布量(DRY)が5g/m
2未満であると、プライマー層が環境遮断性に劣る点で好ましくない。塗布量(DRY)が50g/m
2を超えると、トンネル覆工セグメント本体にプライマーを塗布する手間が煩雑になり、また、プライマーの使用量が多大になるため、好ましくない。
【0110】
プライマーの粘度は特に限定されるものではないが、23℃における粘度が5mPa・s〜250mPa・sであることが好ましく、15mPa・s〜200mPa・sであることがより好ましい。プライマーの粘度が低すぎると、有効な塗布厚を確保できない可能性があるので好ましくない。プライマーの粘度が高すぎると、コンクリート等の表面の凹凸にプライマーが浸透せず、プライマー層にライニング材を塗布し、乾燥する際、ライニング材にピンホールが発生し得るため、好ましくない。
【0111】
上記構造物表層用プライマーは、冬場であっても塗布後約1時間程度で乾燥する。そして、本発明においては、構造物表層用プライマーを用いて好適に保護しているため、高粘度のライニング材を用いても、ピンホールの発生を抑えることができ、十分な防水性能を有する。したがって、本発明によると、トンネル覆工セグメントの製造時間を大幅に短縮できる。
【0112】
<トンネル>
本発明のトンネルは、上記トンネル覆工セグメントを複数配置することによって得られる。
【実施例】
【0113】
以下、実施例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に何ら制限を受けるものではない。
【0114】
<構造物表層用プライマー>
【表1】
【0115】
表1において、実施例及び比較例は次のとおりである。
実施例1:分子内に少なくとも1個のシラノール基を有するポリウレタン樹脂の水分散体(製品名:タケラックWS−6021,固形分:約30%,粘度:160mPa・s(23℃),三井化学社製)
実施例2:上記ポリウレタン樹脂を同体積の水で希釈したもの(粘度:17.5mPa・s(23℃))
比較例1:一液型アクリル系水性シーラー(製品名:ジョリパット下塗材JS−500,粘度:1570mPa・s(23℃),アイカ工業社製)
比較例2:一液水性多機能型カチオンシーラー(製品名:ミラクシーラーエコ,粘度:60mPa・s(23℃),エスケー化研社製)
比較例3:水性弾性シーラー(製品名:弾性シーラークリヤー,粘度:30mPa・s(23℃),エスケー化研社製)
比較例4:一液型エポキシ変性アクリル系水性シーラー(製品名:スーパーE,粘度:590mPa・s(23℃),菊水化学工業社製)
比較例5:エポキシ樹脂エマルジョン系二液形プライマー(製品名:EPプライマーEM,粘度:30mPa・s(23℃),セメダイン社製)
比較例6:シラノール基を有しないポリウレタン樹脂の水分散体(製品名:ハイドランHW−112,粘度:150mPa・s(23℃),DIC社製)
【0116】
<ライニング材>
[重合体P1の合成]
ポリオキシプロピレンジオールにナトリウムメトキシド(NaOMe)のメタノール溶液を添加してメタノールを留去し、更に塩化アリルを添加して末端の水酸基をアリル基に変換した。未反応の塩化アリルを減圧脱揮により除去し、さらに生成した金属塩を水により抽出除去して、末端にアリル基を有するポリオキシプロピレンを得た。得られたアリル基末端ポリオキシプロピレンに対し、白金ビニルシロキサン錯体のイソプロパノール溶液を添加し、メチルジメトキシシランを反応させ、PPG(ポリプロピレングリコール)換算の数平均分子量が約38000、1分子当たり2.0個の末端メチルジメトキシシリル基を有するポリオキシプロピレン系重合体P1を得た。
【0117】
[ライニング材の調製]
【表2】
【0118】
表2において、各種材料は次のとおりである。
・重合体P1:上記[重合体P1の合成]によって得られた重合体
・脂肪酸表面処理炭酸カルシウム(製品名:カルファイン200,丸尾カルシウム社製)
・重質炭酸カルシウム(製品名:ホワイトンSB,白石工業社製)
・ウレタン樹脂用着色剤(製品名:FTR5570ブラック,大日精化社製)
・テトラエトキシシラン(製品名:エチルシリケート28,コルコート社製)
・3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(製品名:KBM−403,信越化学工業社製)
・MIBK(メチルイソブチルケトン)と3−アミノプロピルトリメトキシシランとの反応物(製品名:X12−812H,信越化学工業社製)
・ジオクチルスズ塩と正珪酸エチルとの反応生成物(製品名:ネオスタンS−1,日東化成社製)
【0119】
重合体P1、脂肪酸表面処理炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、及びウレタン樹脂用着色剤を表2に記載の量だけ仕込み、混合撹拌した。該混合物を100℃に加熱し、減圧混合撹拌を2時間することによって混練及び脱水をした。室温に冷却後、テトラエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、MIBK(メチルイソブチルケトン)と3−アミノプロピルトリメトキシシランとの反応物、及びジオクチルスズ塩と正珪酸エチルとの反応生成物を表2に記載の量だけ仕込み、混合攪拌することにより、ライニング材を得た。粘度計を用いてライニング材の23℃における粘度を測定したところ、13Pa・sであった。
【0120】
[耐アルカリ性試験の条件]
〔試験の場所〕
試験の場所(試験室)は、JIS K 5600−1−1:1999 3.1項による。
【0121】
〔試験板〕
(1)試験板の材質・寸法
試験板は、JIS R 5201:1997 10.4項により作製したセメントモルタル板であり、その寸法は150mm×70mm×20mmである。
(2)試験板の前処理
試験に用いる面をJIS R 6253:2006に規定する耐水研磨紙150番を用いて、脆弱物、粉化物を十分取り除き、柔らかい清潔な布で拭く。このとき、表面の含水率の指標が10%以下であることを確認する。
【0122】
〔試験片の作製〕
試験板、プライマー及びライニング材は、塗り付け前に温度による変動の影響を受けなくなるまで、上記試験室内に置いて調整する。
そして、塗布量(DRY)が15g/m
2になるように上記プライマーを上記試験板の片面に塗布し、23℃50%RHで24時間乾燥し、プライマー層を形成した。
続いて、乾燥後における厚さが0.27mmになるように上記ライニング材をプライマー層上に塗布し、23℃50%RHで1週間乾燥し、ライニング層を形成した。この試験片を3枚用意した。
【0123】
〔耐アルカリ性試験〕
上記試験片を養生室内に7日間養生した後、JIS K 8575:1994(水酸化カルシウム(試薬))に規定する水酸化カルシウムを用いて調整した水酸化カルシウム飽和溶液(23±2℃)中に30日間浸漬した。試験方法は、JIS K 5600−6−1:1999 7項による。フクレがない場合を“○”とし、直径3mm未満の微小なフクレがある場合を“△”とし、直径3mm以上の大きなフクレがある場合を“×”とした。結果を表3に示す。
【0124】
【表3】
【0125】
分子内に少なくとも1個のシラノール基を有するポリウレタン樹脂を含有する構造物表層用プライマーを用いると、アルカリ成分に晒されても、塗膜の膨れを好適に防止できる(実施例1及び2)。
【0126】
一方、分子内に少なくとも1個のシラノール基を有するポリウレタン樹脂とは異なる組成物をプライマーとして用いると、塗膜がアルカリ成分に晒されると、塗膜が膨れ、この膨れによりライニング材が割れ得る。そして、この割れた部分から塩分、水分、酸素等が浸入してコンクリート内部の鋼材が腐食し得る(比較例1〜6)。
【0127】
[ひび割れ追従性試験]
また、実施例2に係るプライマー及び上記ライニング材を用い、ひび割れ追従性を評価した。ひび割れ追従性の評価は、コンクリート標準示方書(土木学会編)に記載のJSCE−K 532−2010法(表面被覆材のひび割れ追従性試験方法)にしたがって行った。プライマー層、ライニング層の塗布量及び養生期間は、上記[耐アルカリ性試験の条件]と同じである。実施例2に記載のプライマーを用いた場合のひび割れ追従性は0.64mmであった。したがって、実施例に記載のプライマーを用いると、良好なひび割れ追従性が得られ、結果として、トンネル覆工セグメントに好適であることが確認された。