(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6221360
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】ステータ
(51)【国際特許分類】
H02K 1/18 20060101AFI20171023BHJP
【FI】
H02K1/18 C
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-119043(P2013-119043)
(22)【出願日】2013年6月5日
(65)【公開番号】特開2014-236657(P2014-236657A)
(43)【公開日】2014年12月15日
【審査請求日】2016年5月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】吉川 浩
【審査官】
三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−065833(JP,A)
【文献】
特開2013−038853(JP,A)
【文献】
特開2002−233086(JP,A)
【文献】
特開2008−118838(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0026873(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層板を積層した分割コアにコイルがそれぞれ巻回され、前記コイルが巻回された前記分割コアを互いに組み付けることで組み立てられるステータにおいて、
前記分割コアには、隣り合う分割コア同士が重なり合うオーバーラップ部が設けられ、
前記分割コアは、前記オーバーラップ部が互いに嵌め合わされた状態、かつ隣り合う分割コアに互いの前記積層板が重なり合った状態に設けられており、
前記分割コアを構成する前記積層板の重なり合うラップ枚数は不均一であり、
前記ラップ枚数は、前記コイルの巻回による前記分割コアの前記積層板の積層方向における円弧状の変形に応じて設定される
ことを特徴とするステータ。
【請求項2】
請求項1に記載のステータにおいて、
前記分割コアを構成する前記積層板の積層方向の上端側及び下端側のラップ枚数は、前記分割コアを構成する前記積層板の積層方向の中央のラップ枚数よりも多い
ことを特徴とするステータ。
【請求項3】
請求項2に記載のステータにおいて、
前記分割コアを構成する前記積層板の積層方向の中央のラップ枚数は均一である
ことを特徴とするステータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータのステータに関する。
【背景技術】
【0002】
モータのステータは、巻回するコイルの占積率を上げるために分割コアを用いている(例えば、特許文献1参照)。ステータコアは、電磁鋼板等の積層板を積層して形成されている。
【0003】
ステータの分割コアは、互いに重なり合うオーバーラップ部を備えている。分割コアは、このオーバーラップ部が互いに嵌め合わされることによってステータが形成される。オーバーラップ部は、隣り合う積層板側に突出する凸部と、隣り合う積層板の凸部が嵌合する凹部とから構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−65833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のステータでは、分割コアにコイルを巻回すると、ステータコアの軸方向において円弧状に変形することがある。分割コアが変形すると、分割コア同士を嵌め合わせてステータコアを組み立てる際に、組み立てが難しくなるおそれがある。
【0006】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、組み立て性の良いステータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
上記課題を解決するステータは、積層板を積層した分割コアにコイルがそれぞれ巻回され、前記コイルが巻回された前記分割コアを互いに組み付けることで組み立てられるステータにおいて、前記分割コアには、隣り合う分割コア同士が重なり合うオーバーラップ部が設けられ、
前記分割コアは、前記オーバーラップ部
が互いに嵌め合わされた状態、かつ隣り合う分割コアに互いの前記積層板が重なり合
った状態に設けられており、前記分割コアを構成する前記積層板の重なり合うラップ枚数は不均一であ
り、前記ラップ枚数は、前記コイルの巻回による前記分割コアの前記積層板の積層方向における円弧状の変形に応じて設定されることをその要旨としている。
【0008】
同構成によれば、分割コアを構成する積層板のラップ枚数を不均一とした。
このラップ枚数は、コイルの巻回によって生じる分割コアの積層板の円弧状の変形に応じて設定されている。このため、分割コアにコイルを巻回した際に、巻回による応力が積層板に均一に発生せず、積層板の積層方向における円弧状の変形を抑制することができる。よって、分割コア同士を組み付ける際に、組み付けが難しくなることを抑制して、組み立て性の良いステータとすることができる。
【0009】
上記ステータについて、前記分割コアを構成する前記積層板の積層方向の上端側及び下端側のラップ枚数は、前記分割コアを構成する前記積層板の積層方向の中央のラップ枚数よりも多いことが好ましい。
【0010】
同構成によれば、分割コアを構成する積層板の積層方向の上端側及び下端側のラップ枚数を、分割コアを構成する積層板の積層方向の中央のラップ枚数よりも多くした。このため、分割コアにコイルを巻回した際に、積層板の積層方向の上端側及び下端側における巻回による応力の発生が抑制され、積層板の積層方向における円弧状の変形をさらに抑制することができる。よって、分割コア同士を組み付ける際に、組み付けが難しくなることをさらに抑制して、組み立て性の良いステータとすることができる。
【0011】
上記ステータについて、前記分割コアを構成する前記積層板の積層方向の中央のラップ枚数は均一であることが好ましい。
同構成によれば、分割コアを構成する積層板の積層方向の中央のラップ枚数を均一とした。このため、分割コアにコイルを巻回した際に、積層板の積層方向の中央における巻回による応力のばらつきが抑制され、積層板の積層方向における円弧状の変形をさらに抑制することができる。よって、分割コア同士を組み付ける際に、組み付けが難しくなることをさらに抑制して、組み立て性の良いステータとすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、組み立て性を良くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】ステータコアの分割された分割コアを示す上面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、
図1〜
図5を参照して、ステータの一実施形態について説明する。
図1及び
図2に示されるように、ステータコア1は、円環状に組み付けられた複数の分割コア10によって構成されている。ステータは、コイルが巻回された分割コア10を隣り同士で組み付けることによって組み立てられる。
【0015】
ステータの分割コア10は、T字状の積層板12を積層することによって形成されている。分割コア10は、互いに重なり合うオーバーラップ部11を備えている。分割コア10は、このオーバーラップ部11が互いに嵌め合わされることによってステータが形成される。オーバーラップ部11は、隣り合う積層板12側に突出する凸部13と、隣り合う積層板12の凸部13が嵌合する凹部14とから構成されている。一枚の積層板12の左右には、凸部13と凹部14とのうち異なる一方が設けられている。よって、積層板12は、左右逆の形状となる2種類ある。すなわち、積層板12は、積層板12のT字の右腕側に凸部13を有し、左腕側に凹部14を有する第1積層板12aと、積層板12のT字の右腕側に凹部14を有し、左腕側に凸部13を有する第2積層板12bとがある。
【0016】
図3に示されるように、分割コア10は、2種類の積層板12を積層してかしめることで形成されている。分割コア10は、下から順に、第2積層板12bを6枚、第1積層板12aを2枚、第2積層板12bを2枚、第1積層板12aを2枚、第2積層板12bを2枚、第1積層板12aを2枚、第2積層板12bを2枚、第1積層板12aを6枚積層されている。積層した積層板12が重なり合う枚数をラップ枚数という。すなわち、分割コア10は、積層板12のラップ枚数が一定ではなく、不均一である。そして、分割コア10は、積層板12の積層方向の上端側及び下端側のラップ枚数が中央のラップ枚数よりも多くなっている。さらに、分割コア10は、積層板12の積層方向の中央のラップ枚数は2枚ずつで均一である。なお、各分割コア10は、互いに共通の構成となっている。
【0017】
図4に示されるように、隣り合う分割コア10のオーバーラップ部11を構成する凸部13と凹部14とは、対向して位置し、組み付けが可能となっている。しかしながら、分割コア10に、コイルを巻回すると分割コア10が積層板12の積層方向において円弧状に変形することがある。
【0018】
図5に示されるように、分割コア10は、凸部13と凹部14とから構成されるオーバーラップ部11を重ね合わせることで組み付けられ、ステータが組み立てられる。
次に、
図4及び
図5を参照して、上記ステータの作用について説明する。
【0019】
図5に示されるように、分割コア10は、ステータコア1に相当する円環に予め形成された鋼板を1枚ずつ打ち抜いて円環状に分割コア10が並んだ状態となる円環打ち抜き法によって形成される。打ち抜かれた積層板12は、1枚ずつかしめられて分割コア10を構成する。
【0020】
図4に示されるように、分割コア10にコイルを巻回する際には、円環状に並んでいる分割コア10を分離する。そして、分割コア10にそれぞれコイルを巻回する。分割コア10にコイルを巻回すると、分割コア10の上端側と下端側とにラップ枚数が多いので、上下端における変形が特に抑制されて、円弧状の変形が抑制される。また、分割コア10の積層方向の中央は、ラップ枚数が一定なので、コイルの巻回による変形のばらつきが抑制される。
【0021】
よって、
図5に示されるように、コイルが巻回された分割コア10を組み付けようとすると、分割コア10の変形が抑制されているので、容易に分割コア10同士を組み付けることができる。また、変形したとしても変形量が抑制されているので、変形があったとしても互いに変形しているので、組み付けることが可能である。
【0022】
以上、説明した実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)分割コア10を構成する積層板12のラップ枚数を不均一とした。このため、分割コア10にコイルを巻回した際に、巻回による応力が積層板12に均一に発生せず、積層板12の積層方向における円弧状の変形を抑制することができる。よって、分割コア10同士を組み付ける際に、組み付けが難しくなることを抑制して、組み立て性の良いステータとすることができる。ひいては、組み立てられるので、運搬性がよい。
【0023】
(2)分割コア10を構成する積層板12の積層方向の上端側及び下端側のラップ枚数を、分割コア10を構成する積層板12の積層方向の中央のラップ枚数よりも多くした。このため、分割コア10にコイルを巻回した際に、積層板12の積層方向の上端側及び下端側における巻回による応力の発生が抑制され、積層板12の積層方向における円弧状の変形をさらに抑制することができる。よって、分割コア10同士を組み付ける際に、組み付けが難しくなることをさらに抑制して、組み立て性の良いステータとすることができる。
【0024】
(3)分割コア10を構成する積層板12の積層方向の中央のラップ枚数を均一とした。このため、分割コア10にコイルを巻回した際に、積層板12の積層方向の中央における巻回による応力のばらつきが抑制され、積層板12の積層方向における円弧状の変形をさらに抑制することができる。よって、分割コア10同士を組み付ける際に、組み付けが難しくなることをさらに抑制して、組み立て性の良いステータとすることができる。
【0025】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
・上記実施形態では、下端側に同じ形状の第2積層板12bを6枚積層して、上端側に同じ形状の第1積層板12aを6枚積層して、中央に2枚ずつ交互に異なる形状の積層板12を積層した。しかしながら、分割コア10の上下端側と中央との間に異なるラップ枚数の積層板12を設けてもよい。
図6に示されるように、分割コア10は、下から順に、第2積層板12bを5枚、第1積層板12aを3枚、第2積層板12bを2枚、第1積層板12aを2枚、第2積層板12bを2枚、第1積層板12aを2枚、第2積層板12bを3枚、第1積層板12aを5枚積層されている。すなわち、分割コア10は、積層板12のラップ枚数が一定ではなく、不均一である。そして、分割コア10は、積層板12の積層方向の上端側及び下端側のラップ枚数が中央のラップ枚数よりも多くなっている。さらに、分割コア10は、積層板12の積層方向の中央のラップ枚数は2枚ずつで均一である。
【0026】
・上記実施形態では、下端側に同じ形状の第2積層板12bを6枚積層して、上端側に同じ形状の第1積層板12aを6枚積層して、中央に2枚ずつ交互に異なる形状の積層板12を積層した。しかしながら、分割コア10の中央の積層板12のラップ枚数を不均一に設けてもよい。
図7に示されるように、分割コア10は、下から順に、第2積層板12bを5枚、第1積層板12aを2枚、第2積層板12bを3枚、第1積層板12aを2枚、第2積層板12bを2枚、第1積層板12aを3枚、第2積層板12bを2枚、第1積層板12aを5枚積層されている。すなわち、分割コア10は、積層板12のラップ枚数が一定ではなく、不均一である。そして、分割コア10は、積層板12の積層方向の上端側及び下端側のラップ枚数が中央のラップ枚数よりも多くなっている。
【0027】
・上記実施形態では、下端側に同じ形状の第2積層板12bを6枚積層して、上端側に同じ形状の第1積層板12aを6枚積層して、中央に2枚ずつ交互に異なる形状の積層板12を積層した。しかしながら、分割コア10の積層板12のラップ枚数を不均一として、積層板12の積層方向の上端側及び下端側のラップ枚数が中央のラップ枚数よりも小さくてもよい。このようにすれば、分割コア10にコイルを巻回した際に、巻回による応力が積層板12に均一に発生せず、積層板12の積層方向における円弧状の変形を抑制することができる。
【0028】
・上記構成において、凸部13と凹部14との形状は、互いが嵌合する形状であれば、他の形状を採用してもよい。
【符号の説明】
【0029】
1…ステータコア、10…分割コア、11…オーバーラップ部、12…積層板、12a…第1積層板、12b…第2積層板、13…凸部、14…凹部。